平成19(行ケ)10022 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成19年11月29日 知的財産高等裁判所 2部 判決 請求棄却
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判決文本文18,487 文字)

- 1 -判決言渡平成19年11月29日平成19年(行ケ)第10022号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成19年11月22日判決原告ヒューレット・パッカード・カンパニー訴訟代理人弁理士古谷聡同溝部孝彦同西山清春被告特許庁長官肥塚雅博指定代理人中澤俊彦同山口由木同岡田和加子同徳永英男同内山進主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 事実 及び理由第1請求特許庁が不服2004-2457号事件について平成18年9月4日にした審決を取り消す。 第2事案の概要本件は,原告が後記発明につき特許出願をしたところ,拒絶査定を受けたの- 2 -で,これを不服として審判請求をしたが,特許庁が請求不成立の審決をしたことから,原告がその取消しを求めた事案である。 争点は,本願発明が,先願発明である特願平4-328116号(発明の名称「インクジェット記録方法,出願人キャノン株式会社,出願日平成4年」12月8日,公開日平成6年6月21日〔特開平6-171208号公報)〕と同一であるかどうか(特許法29条の2参照)である。 第3当事者の主張 請求の原因(1)特許庁における手続の経緯原告は,平成6年1月18日(優先権主張1993年〔平成5年〕1月19日,米国,発明の名称を「インクジェット・プリント方法およびイン)ク組成物」とする発明について,特許出願(特願平6-17931号,請求項の数19,以下「本願」という。公開特許公報は特開平7-1837号)し,その間2度にわたり手続補正をしたが,平成15年10月31日付けで拒絶査 発明について,特許出願(特願平6-17931号,請求項の数19,以下「本願」という。公開特許公報は特開平7-1837号)し,その間2度にわたり手続補正をしたが,平成15年10月31日付けで拒絶査定を受けた。 そこで原告は,平成16年2月6日,不服の審判請求をするとともに,特許請求の範囲の変更を内容とする手続補正(第3次補正。請求項の数11。 以下「本件補正」という。甲2)をし,特許庁は同請求を不服2004-2,,「,457号事件として審理したが平成18年9月4日本件審判の請求は成り立たない」との審決をし,その謄本は平成18年9月19日原告に送。 達された。 (2)発明の内容本件補正後の特許請求の範囲は,前記のとおり請求項1ないし11から成,(「」。),るがそのうち請求項1に記載された発明以下本願発明というは次のとおりである。 「請求項1】pH感応性分散剤を配合し,顔料が分散されている第1のイ【- 3 -ンクでプリント媒体上にプリントし,次に,前記第1のインクの分散された顔料を前記プリント媒体上で析出させるのに適切なpHの第2のインクでプリントし,第2のインクを第1のインクに隣接してプリントすることで,第1及び第2のインクの境界において1つの色が他の色へ侵入する二色間にお。」けるにじみを減少させることを特徴とするインクジェット・プリント方法(3)審決の内容ア審決の詳細は,別添審決写しのとおりである。 その要点は,本願発明は,その出願日前である平成4年12月8日に出願され平成6年6月21日に出願公開(特開平6-171208号)された特願平4-328116号の願書に最初に添付した明細書(以下「先願明細書」という。甲3)に記載された発明(発明の名称「インクジェッ。 ト記録方法,出願人キャノン株式会 開平6-171208号)された特願平4-328116号の願書に最初に添付した明細書(以下「先願明細書」という。甲3)に記載された発明(発明の名称「インクジェッ。 ト記録方法,出願人キャノン株式会社。以下「先願発明」という)と」。 同一であるから,特許法29条の2の規定により特許を受けることができない,等というものであった。 イなお,審決は,先願発明を下記のように認定し,本願発明と対比した一致点と一応の相違点を,次のように認定した。 〈先願発明〉カラー記録を行うインクジェット記録方法において,スチレン-アクリル酸-アクリル酸ブチル共重合体を含む分散剤を配合し,顔料としてカーボンブラックを分散させたpH8~10の顔料ブラックインクを被記録材上に印字し,次に,pHを4以下に調製したシアン,マゼンタまたはイエローいずれかの染料系インクを同一地点に着弾させ,顔料ブラックインクを凝集させ,被記録材表面に固着させる,インクジェット記録方法。 〈一致点〉「pH感応性分散剤を配合し,顔料が分散されている第1のインクでプリント媒体上にプリントし,次に,前記第1のインクの分散された顔料を- 4 -前記プリント媒体上で析出させるのに適切なpHの第2のインクでプリントするインクジェット・プリント方法」である点。 。 〈一応の相違点〉本願発明は「第2のインクを第1のインクに隣接してプリントするこ,とで,第1及び第2のインクの境界において1つの色が他の色へ侵入する二色間におけるにじみを減少させる」ものであるのに対し,先願発明は,第2のインクを第1のインクと同一地点に着弾させ,顔料ブラックインクを凝集させ,被記録材表面に固着させるものであり,第2のインクを第1のインクに隣接してプリントすることは明示されていない点。 (4)審決の取消事由しかしながら, 地点に着弾させ,顔料ブラックインクを凝集させ,被記録材表面に固着させるものであり,第2のインクを第1のインクに隣接してプリントすることは明示されていない点。 (4)審決の取消事由しかしながら,本願発明は先願発明と同一のものではないから,審決は特許法29条の2の規定を誤って適用したものであり,以下に述べる次第により,違法として取り消されるべきである。 なお,審決の認定に係る先願発明の内容,本願発明と先願発明との〈一致点〉及び〈一応の相違点〉は認める。 ア本願発明は,第2のインクを第1のインクに隣接してプリントすることで,第1及び第2のインクの境界において,1つの色が他の色へ侵入する二色間におけるにじみを減少させるものである。これは,第1のインクと第2のインクとの間に境界が生ずるように第1及び第2のインク領域をプリントすることを前提とするものである。 これに対し,先願発明は,黒色画像の発色及び堅牢性を高めることを目的として,顔料系ブラックインク(第1インク)のプリント領域全面にカラーの染料系インク(第2インク)がプリントされる。これはカラー記録を行う場合にも当てはまり,カラーの染料系インク(第2インク)は,必ず顔料系ブラックインク(第1インク)のプリント領域全面にプリントされ,その上で,所望のカラー画像を実現するために,顔料系ブラックイン- 5 -ク(第1インク)のプリント領域と隣接する領域(別の領域)にもプリン。 ,,()トされるこのように先願発明は顔料系ブラックインク第1インクとカラーの染料系インク(第2インク)との間に境界を設けることなく,顔料系ブラックインク(第1インク)のプリント領域全面にカラーの染料系インク(第2インク)をプリントすること(第1のインクと第2のインクが重複すること)を必須の工程として含む 境界を設けることなく,顔料系ブラックインク(第1インク)のプリント領域全面にカラーの染料系インク(第2インク)をプリントすること(第1のインクと第2のインクが重複すること)を必須の工程として含むものである。 そうすると,先願発明においては,本願発明の特定事項である「第2のインクを第1のインクに隣接してプリントすることで,第1及び第2のインクの境界において1つの色が他の色へ侵入する二色間におけるにじみを減少させる」ことを実施ないし達成することはできないというべきであるから,本願発明と先願発明は一致しない。 ,()【】イ審決は本願明細書甲1の図1aないし図1c及び段落0038ないし段落【0042】の記載に基づき,本願発明の実施例中にインクが重なり合う態様のもの(図1aないし図1cにおける「+1「+2」参」,照)が含まれていることから,本願発明は第2のインクを第1のインクの一部と同一地点に着弾させる態様をも含む旨認定する(4頁下5行~5頁19行。 )しかし,本願発明における「第2のインクを第1のインクに隣接してプリントする」とは,両カラーが「隣接」しており,重なり合わないもの,すなわち,本願明細書の図1aないし図1cでいえば「-2「-1,,」,」「0「+1「+2」の態様のうち「0」の態様のもののみを意味す」,」,,るものである。このことは,本願明細書(甲1)における「0015】,【…比較的低いpH,例えば,約4.0のpHを有する他のインクによって形成されるドットが,最初のインクのドットの隣になるように配置させる… (3頁下7行~下6行「0022】…二つの異なる色のインクが近」),【接して,続けてプリントされたとき(5頁9行)との記載から明らかで」- 6 -ある。 ,,【】【 置させる… (3頁下7行~下6行「0022】…二つの異なる色のインクが近」),【接して,続けてプリントされたとき(5頁9行)との記載から明らかで」- 6 -ある。 ,,【】【】,この点被告は上記段落0015及び段落0022の記載は第1のインクによるインクドットと第2のインクによるインクドットとが隣接することでにじみが減少することを説明したものであり,第1のインクのインクドットと第2のインクのインクドットの間での位置関係を示す,。 ものにすぎずインクの色領域の位置関係を示すものではないと主張するしかし,本願発明の目的が,二つの異なる色のインク(第1のインクと第2のインク)の間の境界において起こるにじみ(ブリード)の防止にあることに鑑みれば,インクドットが隣接することでにじみが減少するという説明は,にじみが問題となる二つの色(第1のインクの色と第2のインクの色)の間の境界について記載したものと解するのはごく自然なことである。 したがって,本願発明が第2のインクを第1のインクの一部と同一地点に着弾させる発明を含んでいるとの審決の認定は誤りである。 また,仮に,本願発明において上記「+2」及び「+1」の態様が排除されていないと解したとしても,上記態様はごく一部の重なり合いにすぎないのに対し,先願発明は顔料系ブラックインク(第1のインク)のプリント領域全面について重なり合いを有し,両者の態様は全く異なるから,本願発明と先願発明とは全く異なるインクジェット・プリント方法を規定したものである。 ウ被告は,先願発明において,第1(ブラック)及び第2(カラー)のインクが重複してプリントされた部分の色領域と第2のインクがプリントされた部分の色領域との間の境界が「色と色の境目」であるとの理解を前,提に,本願発明 おいて,第1(ブラック)及び第2(カラー)のインクが重複してプリントされた部分の色領域と第2のインクがプリントされた部分の色領域との間の境界が「色と色の境目」であるとの理解を前,提に,本願発明の「第1及び第2のインクの境界」との構成が,先願発明においても同様に達成されていると認定するが,このような被告の主張は前提に誤りがある。 - 7 -すなわち「第1及び第2のインクの境界」との本願発明の特定事項が,意図する「色と色の境目」とは「第1のインクの色」と「第2のインク,の色」の境目をいうものと考えるべきであって,このことは,本願の請求項1の記載及び本願明細書(甲1)の段落【0004】における「…本願明細書では『にじみ(ブリード』を次のように定義する。二つの異なる,)色のインクを互いに隣接するようにプリントする場合,二つの色の間の境界は鮮明で,一方の色が他方の色に侵入しないことが望まれている。一方,()の色が他方の色にはいりこむと二つの色の間の境界がぎざぎざraggedとなり,これをにじみ(ブリード)という(1頁下6行~下2行)との。」記載からも明らかである。 被告の上記解釈では色と色の境目には第1のインクの色と第,「」,「」「2のインクの色」との境目のみならず「第1のインクの色と第2のイン,クの色の混色」と「第2のインクの色」との境目もまた包含されるものと解釈すべきことになるが,本願発明では第1のインクはブラックに限定されるものではなく,ブルーやレッドの場合もある。第1のインクをブルーとし,第2のインクをイエローとすると,第1及び第2のインクが重複してプリントされた部分の色領域はグリーンであって,もはや第1のインクの色でも第2のインクの色でもない領域が形成されることになる。このグリーンの色領 クをイエローとすると,第1及び第2のインクが重複してプリントされた部分の色領域はグリーンであって,もはや第1のインクの色でも第2のインクの色でもない領域が形成されることになる。このグリーンの色領域に隣接して第2のインク(イエロー)を印刷しても,グリーンとイエローとが隣接して存在することになりこの態様について第,,「1(ブルー)及び第2(イエロー)のインクの境界」が形成されていると考える者はいないと解される。 また,段落【0008】の「…異なる色の境目… (2頁15行,段落」)【0038】の「…カラー間… (7頁20行)は,いずれも本願が対象」「()」,とするにじみブリードの起こり得る位置に関し述べたものでありその意味するところは,上記段落【0004】の「二つの異なる色のイン- 8 -クを互いに隣接するようにプリントする場合」に生じる「二つの色の間の境界,すなわち,第1のインクの色と第2のインクの色との境界を指す」ものであって,そのことは,本願明細書の段落【0038】の記載と,図1a~図1cとを共に考慮すれば明らかである。 ちなみに,本願発明では,第1のインクと第2のインクとを重ねることにより生成された混色(グリーン)領域においては,それに隣接して印刷される周囲領域(第2のインク単独で形成)との間においてブリードを起こさない。これに対し,先願発明では,上記の場合,ブルーインクもイエローインクも第2のインク(染料系インク)の構成を有するものであり,生じたグリーン領域は,その周囲の色領域(第2のインク単独で形成)との間においてブリードを起こすはずである。したがって,混色を再現する実際の態様を考慮しても,本願発明と先願発明とは異なるインクジェット・プリント方法を規定したものである。 請求原因に対する認否 の間においてブリードを起こすはずである。したがって,混色を再現する実際の態様を考慮しても,本願発明と先願発明とは異なるインクジェット・プリント方法を規定したものである。 請求原因に対する認否請求原因(1)ないし(3)の各事実はいずれも認めるが,同(4)は争う。 被告の反論審決の認定判断は正当であり,原告の主張は理由がない。 (1)本願明細書(甲1)の発明の詳細な説明の記載(段落【0004【00】, 【0038)によれば,本願発明は,異なる色の境界に生じる「に】,】じみ(ブリード」の発生を防止することを目的としており,発明の詳細な)説明の記載では,図1aないし図1cの四角形で表される色の領域が「第1又は第2のインク」と称され,カラー(色)の境界において見られるにじみの程度が検討されていることが認められる。このように本願明細書の記載にあっては「にじみ」とは異なる色間の境目に生じる現象を指しているもの,と認めることができるから,本願発明の「第1及び第2のインクの境界」とは,色と色の境目を意味するものと解するのが自然である。 - 9 -,,一方先願発明におけるインクのプリントされる領域について検討すると(),【】,,先願明細書甲3によれば先願発明の請求項7はブラックインクシアンインク,マゼンタインク及びイエローインクをインク滴として吐出させ,当該インク滴を被記録材上に着弾させてカラー記録を行うインクジェット記録方法を前提とするものであるから(2頁左欄25行~32行,カラ)ー染料を含有する第2のインクは,ブラック顔料を含有する第1インクと同一地点に重ねてプリントされるほかに,カラー画像を形成するため,第1インクに隣接する領域にもプリントされることは明らかである。 そして,先願発明において インクは,ブラック顔料を含有する第1インクと同一地点に重ねてプリントされるほかに,カラー画像を形成するため,第1インクに隣接する領域にもプリントされることは明らかである。 そして,先願発明において,顔料系ブラックインク(本願発明における第1のインクに対応)がプリントされ,さらにカラーの染料系インク(同第2のインクに対応)が重ねてプリントされた色領域,すなわち黒色領域に隣接して,カラーの染料系インクのプリントされたカラー色領域が存在すると,黒色領域とカラー色領域の境目には,目視により明確に判別できる色と色の境目,すなわち「第1及び第2のインクの境界」が存在することは明らかである。 しかも,先願明細書(甲3)には「0019】…分散安定性のよい顔料,【系インクが,酸性もしくは塩を含有する染料系インクと被記録材上で交わることによって,安定な分散状態がくずれ,瞬時に凝集し,被記録材表面に固着することにより充分な画像濃度が得られるものである。… (3頁右欄1」7行~21行)と記載され,段落【0058】~【0082】には,pH8~10に調整した顔料系ブラックインクと,pH4以下のイエロー,マゼンタ,シアンの染料系インクを使用し,顔料系ブラックインクと同一地点に染料系インクを付着させた実施例が記載されている。このpH4以下の染料系インクは,pH8~10の顔料系インクと接触することにより,顔料系インクを瞬時に凝集させるものであるから,顔料系ブラックインクと同一地点に染料系インクを付着させる場合に限らず,顔料系ブラックインクと染料系イ- 10 -ンクとが接触すれば,顔料系インクは瞬時に凝集することは明らかであるところ,インクジェットプリンタ方法にあっては,隣接したドット同士は重なりを有するのが普通であるから(例えば,特開平6-8476号公報,発明 接触すれば,顔料系インクは瞬時に凝集することは明らかであるところ,インクジェットプリンタ方法にあっては,隣接したドット同士は重なりを有するのが普通であるから(例えば,特開平6-8476号公報,発明の名称「インクジェットプリンタ,出願人シチズン時計株式会社,公開日」平成6年1月18日,乙1,段落【0011】参照,先願発明のインクジ)ェット・プリント方法においても,顔料系ブラックインク(第1のインク)とカラーの染料系インク(第2のインク)とが隣接してプリントされている場合,第1のインクに隣接してプリントされた第2のインクのインクドットは,第1のインクのインクドットと接触することにより第1のインクを凝集させ,第1及び第2インクの境界において1つの色が他の色へ侵入する二色間におけるにじみを減少させているものと認められる。 以上のとおり,先願発明にあっても,顔料系ブラックインク(第1のインク)とカラー色領域中に存在するカラーの染料系インク(第2のインク)との間には境界が存在し,第1及び第2のインクの境界において1つの色が他の色へ侵入する二色間におけるにじみを減少させているものと認められる。 したがって,本願発明は先願発明と同一である旨の審決の認定に誤りはない。 (2)原告は,本願明細書(甲1)の段落【0015】及び【0022】の記載に基づき,本願発明における「第2のインクを第1のインクに隣接してプリントする」とは,両カラーが重なり合わないもの,すなわち,本願明細書の図1aないし図1cでいえば「-2「-1「0「+1「+2」の,」,」,」,」,態様のうち「0」の態様のもののみを意味するものであると主張する。 ,しかし,本願発明の「第1及び第2のインクの境界」とは,色と色との境目を意味するものと解されるところ本願明細書の段落 」,」,態様のうち「0」の態様のもののみを意味するものであると主張する。 ,しかし,本願発明の「第1及び第2のインクの境界」とは,色と色との境目を意味するものと解されるところ本願明細書の段落0015及び ,【】【022】の記載は,第1のインクによるインクドットと第2のインクによるインクドットとが隣接することでにじみが減少することを説明したもので,- 11 -第1のインクのインクドットと第2のインクのインクドットの間の位置関係を示すものにすぎず,インクの色領域の位置関係を示すものではない。 したがって,本願明細書の上記記載が,本願発明の「第2のインクを第1のインクに隣接してプリントする」の意味内容を表すものであるとはいえない。 しかも,本願明細書の【発明の実施例】の項の記載(段落【0038】~【】),「」,「」,0042にあっては図1aないし図1cに記載される +1「+2」のいずれの態様も,本願発明に係る第1のインク及び第2のインクを用いることにより,にじみが改善されたプリント・サンプルとして記載されているのであるから,それら態様が本願発明に係るインクジェット・プリント方法に包含されない旨の原告の主張は,本願明細書の記載に基づかない不自然な解釈というべきである。 (3)また原告は,本願明細書の「+2「+1」の態様であっても,先願発明」,の態様とは全く異なる旨主張する。 しかし,審決は本願明細書に記載された「+2「+1」の態様と先願発」,明の態様とがすべて同じであると認定したものではない。先願発明は,顔料系インク(本願発明の第1のインク)がプリントされ,さらに染料系インク(本願発明の第2のインク)が重ねてプリントされた色領域に隣接して,染料系インク(本願発明の第2のインク)のプリントされた ,顔料系インク(本願発明の第1のインク)がプリントされ,さらに染料系インク(本願発明の第2のインク)が重ねてプリントされた色領域に隣接して,染料系インク(本願発明の第2のインク)のプリントされた色領域が存在する実施の態様を含むものであり,このような場合,第1及び第2のインクの境界,すなわち第1のインクの色領域と第2のインクの色領域の境界に着目すると,その境界の片側にあっては,第1のインクと第2のインクとが重なって存在している点で,先願発明の態様と本願明細書に実施例として記載された上記態様と異なるものではない。 第4当裁判所の判断 請求原因(1)(特許庁における手続の経緯,(2)(発明の内容,(3)(審決))- 12 -の内容)の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。 本願発明と先願発明の同一性の有無について(1)ア本願明細書(甲1,2,乙4~6。なお,以下の引用は,特に摘記したものを除き,甲1による)には以下の記載がある。 。 (ア)「請求項1】…第2のインクを第1のインクに隣接してプリントす【ることで,第1及び第2のインクの境界において1つの色が他の色へ侵」(,入する二色間におけるにじみを減少させることを特徴とする…甲21頁23行~25行)(イ)「0001【産業上の利用分野】本発明は,インクジェット・プリ【】ンティングに関し,特にサーマル・インクジェット・プリンティングに使用されるインク組成物に関し,さらに特定すれば,色にじみ(ブリード,colorbleed)を実質的に減少させ,さらには,除去するカラーインク組成物および黒色インク組成物に関するものである」。 「【】,(ウ)0004多くのサーマル・インクジェット・インクはボンド紙コピー用紙および他の媒体上に,種々の色で印刷する場合,に インク組成物および黒色インク組成物に関するものである」。 「【】,(ウ)0004多くのサーマル・インクジェット・インクはボンド紙コピー用紙および他の媒体上に,種々の色で印刷する場合,にじみ(ブリード,bleed)が生ずる可能性がある。本願明細書では『にじみ(ブ,リード』を次のように定義する。二つの異なる色のインクを互いに隣)接するようにプリントする場合,二つの色の間の境界は鮮明で,一方の色が他方の色に侵入しないことが望まれている。一方の色が他方の色にはいりこむと,二つの色の間の境界がぎざぎざ(ragged)となり,これをにじみ(ブリード)という」。 (エ)「0005】この定義は,従来よりしばしばにじみ(ブリード)を【紙の繊維にそってにじむ単色インクとして定義して用いているものと異なるものである」。 (オ)「0007】インクジェット・プリンティング,特に,サーマル・【インクジェット・プリンティングに用いられるインク組成物において,- 13 -ヒータを用いないで普通紙にプリントする際比較的長い貯蔵時間long,(shelflife)と他の望ましいインク特性を維持しつつ,本願明細書に定義したにじみのないインク組成物が依然(判決注:以前」は誤記)と「して要求されている」。 (カ)「0008【発明の目的】本発明の目的は異なる色の境目に生じる【】にじみを減少させるインクジェット・プリント方法とインク組成物を提供することにある」。 (キ)「0009【発明の概要】本発明では,染料と顔料を備えるインク【】を含む着色剤(colorants)を用いる。このような着色剤は,特定の,。 (),あらかじめ決められたpH条件下で不溶性となる用紙面page上で着色剤を不溶化させることによって,着色剤の 含む着色剤(colorants)を用いる。このような着色剤は,特定の,。 (),あらかじめ決められたpH条件下で不溶性となる用紙面page上で着色剤を不溶化させることによって,着色剤の移動(migration)を抑え,よって,異なる色のあいだのにじみの減少を助ける。着色剤の不溶化は,着色剤を溶液から析出させるか,沈殿させることによって実現することができ,これはpH感応性着色剤を含むインクを適切なpHの他のインクと接触させることによって行われる」。 (ク)「0013】特定の理論に基づくものではないが,本願出願人は着【色剤を紙面上で不溶化させることによって,着色剤の移動を抑え,よって異なる色の間のにじみを最小にすることを助けることを見出した。着『()』色剤を溶液から析出させるか沈殿させるために用いられる力forceは着色剤を適切なpHを有する他のインクと接触させることである」。 (ケ)「0015】上記のインク中の染料は,pHが約6.5~7.0に【低下すると溶液から析出することが知られている。比較的低いpH,例,. ,えば約40のpHを有する他のインクによって形成されるドットが最初のインクのドットの隣になるように配置させることによって,最初のインク中の染料が溶液より析出(沈殿)する。この点での考えは,染料の移動(migration)の速度を低下させ,したがって二つのインク間- 14 -のにじみを減少させることを助ける」。 「【】,,(コ)0022…耐にじみ性は二つの異なる色のインクが近接して続けてプリントされたとき,一方の色が他方の色と混合することに抵抗するインクの力である。…」イ上記記載によれば,インクジェット・プリンティングにおいて,二つの異なる色のインクを互いに隣接するように けてプリントされたとき,一方の色が他方の色と混合することに抵抗するインクの力である。…」イ上記記載によれば,インクジェット・プリンティングにおいて,二つの異なる色のインクを互いに隣接するようにプリントする場合,二つの色の間の境界が鮮明で一方の色が他方の色に侵入しないことが望まれているにもかかわらず,一方の色が他方の色に入り込み,二つの色の間の境界がぎざぎざになる(にじむ)という課題があるところ(上記ア(イ)~(エ) ,本)願発明はこのにじみを減少させることを目的とするものであり(上記ア(ア),(オ) ,そのための課題解決手段として,特定のpH条件下で不溶性)となるpH感応性着色剤を含むインクを使用しつつ,このインクのドットを近接して隣りになるように配置させるという方法を採用し(上記ア(カ)~(コ) ,これによりpH感応性着色剤を含むインクを適切なpHの他のイ)ンクと接触させ,最初のインク中の着色剤が溶液から析出(沈殿)して着色剤の移動を抑え,二つのインク間のにじみを減少させるという作用効果を有するものであること(上記ア(オ)~(コ))が認められる。 そうすると,本願発明は,二つの色の領域が隣接する場合に,当該色領域の間の境界において双方の色を生成するインクが接触し,相互に入り込むことによって生じるにじみを防ぐため,使用するインクにつき,一方をpH感応性着色剤を含むもの,他方を適切なpHの他のインクとし,これを接触させることによってにじみを抑えるという技術的意義を有するものということができるから,本願発明において「第2のインクを第1のインクに隣接してプリントする(前記〈一応の相違点〉参照)ことの意義も」また,異なる色領域が接することにより,当該色領域を生成するインクが接触し得る状態でプリントする場合を指すものと理解すべきこ インクに隣接してプリントする(前記〈一応の相違点〉参照)ことの意義も」また,異なる色領域が接することにより,当該色領域を生成するインクが接触し得る状態でプリントする場合を指すものと理解すべきこととなる。 - 15 -(2)アこれに対し,先願明細書(甲3)には,以下の記載がある。 (ア)「0002【従来の技術】…染料系インクによる記録画像は,耐光【】性及び耐水性等の堅牢性がしばしば問題になっていた。…顔料系インクは,耐水性及び耐光性に共に格段に優れる…」(イ)「0003【発明が解決しようとする課題】しかしながら,…顔料【】系インクの場合には,顔料が被記録材の表面に凝集し,固着することにより発色するため,被記録材の表面状態が画像濃度に与える影響は大きい」。 (ウ)「0004】そのため,顔料系インクは,被記録材の種類によって【は,画像濃度が著しく劣化し,画像品位が損なわれるという不都合が生じていた。…」(エ)「0007】従って,本発明は,上記諸問題を解決して,…顔料系【インクの被記録材表面での凝集性を高めることにより,普通紙を含むあらゆる紙において充分な印字濃度を持ち,堅牢性に優れた記録画像を提供することを目的とする。…」(オ)「0008【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため【】の本発明は,インクにエネルギーを付与して吐出口からインク滴として吐出させて,該インク滴を被記録材上に着弾させて記録を行うインクジェット記録方法において,顔料系インクと,pHを4以下に調製した染料系インクとを同一地点に着弾させることを特徴とするインクジェット記録方法である」。 (カ)「0012】更に,本発明は,ブラックインク,シアンインク,マ【ゼンタインク及びイエローインクにエネルギーを付与して吐出口からインク ることを特徴とするインクジェット記録方法である」。 (カ)「0012】更に,本発明は,ブラックインク,シアンインク,マ【ゼンタインク及びイエローインクにエネルギーを付与して吐出口からインク滴として吐出させて,該インク滴を被記録材上に着弾させてカラー,,記録を行うインクジェット記録方法において顔料系ブラックインクとpHを4以下に調製したシアン,マゼンタまたはイエローいずれかの染- 16 -料系インクとを同一地点に着弾させることを特徴とするインクジェット記録方法である」。 (キ)「0019】上記のごとく構成した本発明は,それ自体では,分散【安定性のよい顔料系インクが,酸性もしくは塩を含有する染料系インクと被記録材上で交わることによって,安定な分散状態がくずれ,瞬時に凝集し,被記録材表面に固着することにより充分な画像濃度が得られるものである。…更に,顔料系ブラックインクと,シアン,マゼンタ及びイエロー3色の染料系インクを使用することによって,カラー画像においても画像濃度,堅牢性に優れた黒色画像を得ることができる」。 イ上記記載によれば,先願発明は,耐水性等の堅牢性が劣るという染料系インクの課題を前提に,堅牢性に優れた記録画像を提供することを目的とするものであり(上記ア(ア)~(エ) ,その課題解決手段として,本願発明)と同様のインクを使用し,これを同一地点に着弾させ(上記ア(オ) ,被記)録材上で両インクが交わることによって顔料系インクが凝集し,被記録材表面に固着することによって,堅牢性に優れた画像を得るという作用効果を有するものであること(上記ア(カ),(キ))が認められる。 ,〈〉(3)そこで検討するに本願発明と先願発明が前記第3の1(3)イの一致点及び〈一応の相違点〉のとおり一致ないし一応相違する 有するものであること(上記ア(カ),(キ))が認められる。 ,〈〉(3)そこで検討するに本願発明と先願発明が前記第3の1(3)イの一致点及び〈一応の相違点〉のとおり一致ないし一応相違することは当事者間に争いがなく,これによれば,先願発明におけるpH値を異にする組成からなる顔料系及び染料系インクの使用という課題解決手段の点及び被記録材上で両インクが交わることによって顔料系インクが凝集し,被記録材表面に固着するという作用効果の点については,実質的にみて本願発明と差異がないと理解できるものの,両インクを同一地点に着弾させるという先願発明の課題解決手段は,本願発明における両インクを隣接させる方法と同一であるとはいえない。 しかし,先願発明におけるカラー画像(上記(2)ア(キ))の記録を実施した- 17 -場合,通常,当該カラー画像は黒色領域とカラー領域との混交により形成されるものであるから,その形成過程において,顔料系ブラックインクと染料系カラーインクとを同一地点に着弾させる場合だけでなく,顔料系ブラックインクの着弾地点と異なる地点に染料系カラーインクを着弾させる場合があり,そのカラー画像の内容によっては,両インクが隣接して着弾され,その結果両インクの接触に至ることは,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)の技術常識に照らして自明の事項である。そして,顔料系ブラックインクと染料系カラーインクの両インクが上記のように接触した場合,必然的に顔料系インクが凝集し,被記録材表面に固着するという作用効果が得られることは,上記の先願発明の作用効果に照らして明らかである。 以上のとおり,当業者の技術常識を参酌すれば「第2のインクを第1の,インクに隣接してプリントすること」は先願明細書に記載されているに等しい事項で 上記の先願発明の作用効果に照らして明らかである。 以上のとおり,当業者の技術常識を参酌すれば「第2のインクを第1の,インクに隣接してプリントすること」は先願明細書に記載されているに等しい事項であると認められ,このことに,先願発明に関する上記課題,課題解決手段,作用効果を併せ考慮すれば「第2のインクを第1のインクに隣接,してプリントすることで,第1及び第2のインクの境界において1つの色が他の色へ侵入する二色間におけるにじみを減少させる」という発明を把握することができる。そうすると,このような発明と本願発明は実質的に同一であるということができるから,本願発明は特許法29条の2の規定により,特許を受けることができないというべきである。 (4)アこれに対し原告は,本願発明は,第1のインクと第2のインクとの間に境界が生じるように第1及び第2のインク領域をプリントすることを前提とするものであるのに対し,先願発明においてはこのような境界が存在せ,,「,ずまた第2のインクを第1のインクに隣接してプリントすることで第1及び第2のインクの境界において1つの色が他の色へ侵入する二色間におけるにじみを減少させる」ことを実施ないし達成することはできない- 18 -旨主張する。 確かに,上記(2)イに述べたとおり,先願発明は,両インクを重複してプリントすることにより,顔料系ブラックインクが被記録材表面に固着するという作用効果を有するものであって,第1のインクと第2のインクとを平面的に隣接してプリントすることをその構成に当然に含むものではない。 しかし,上記(3)に述べたとおり,当業者の技術常識に照らせば,顔料系ブラックインクと染料系カラーインクとを隣接してプリントするという事項もまた先願明細書に記載されているに等しいものと認められるのであっ ,上記(3)に述べたとおり,当業者の技術常識に照らせば,顔料系ブラックインクと染料系カラーインクとを隣接してプリントするという事項もまた先願明細書に記載されているに等しいものと認められるのであって,このような事項から把握される発明においては,第1のインク(顔料系ブラックインク)と第2のインク(染料系カラーインク)との間に本願発明と同様の境界が生じることは明らかであるし,隣接する色領域を生,,,成するインク同士の接触により一方のインクを凝集固着させその結果両インクにより生成される色領域の間の境界におけるにじみの発生が抑制されることもまた明らかであるから,原告の上記主張は採用することができない。 なお,原告の上記主張は,にじみの抑制という作用効果は,先願発明に必須の工程として含まれる「両インクを重複してプリントすること」自体により生ずる結果であって,その後に両インクが隣接してプリントされたとしても上記結果が左右されるものではないとの趣旨をいうものとも理解できる。しかし,先願発明はもとより,上記のようにして把握される発明においても,カラー画像を作成する場合に,まず両インクの重複部分をプリントした後に隣接部分をプリントするというような先後の手順を採用すべきことが当業者の技術常識であると認めることはできないから,いずれにせよ原告の上記主張は採用することができない。 イ次に原告は,本願発明は第1のインクと第2のインクとの間に境界が生- 19 -ずるように第1及び第2のインク領域をプリントすることを前提とするものであり,第1のインクと第2のインクが重複することは予定されていないから,本願発明が第2のインクを第1のインクの一部と同一地点に着弾させる発明を含んでいるとの審決の認定は誤りである旨,また,仮に,本願発明において,インクが重複 ンクが重複することは予定されていないから,本願発明が第2のインクを第1のインクの一部と同一地点に着弾させる発明を含んでいるとの審決の認定は誤りである旨,また,仮に,本願発明において,インクが重複する態様は排除されていないと解したとしても,その重なり合いはごく一部にすぎないのに対し,先願発明は顔料系ブラックインク(第1のインク)のプリント領域全面について重なり合いを有する点で,両者の態様は全く異なる旨主張する。 しかし,前記(3)に述べたところから明らかなとおり,先願明細書の記載に加えて当業者の技術常識を参酌することにより把握される発明と本願発明とが実質同一であることは,第1のインクと第2のインクが隣接し,かつ,これらが接触することで第1のインクが凝集するという本願発明の技術的特徴を前者が有していることから認められるのであって,このことは,両インクを同一地点に着弾させる(両インクが重複する)という先願発明の課題解決手段を本願発明が備えているか否かにより左右されるものではない。したがって,その余を検討するまでもなく,原告の上記主張は理由がない。 ウさらに原告は,本願発明における「色と色の境目」とは「第1のイン,クの色」と「第2のインクの色」の境目を意図しているものと考えるべきであって「第1のインクの色と第2のインクの色の混色」と「第2のイ,」。 ンクの色との境目も包含されるとの被告の解釈は誤りである旨主張するしかし,前記(1)イに述べたとおり,本願発明は,異なる色領域が隣接する場合,これらの色領域を生成するインク同士が接触するとにじみが発生することから,これを抑制するため,異なる色領域を生成する各インクの組成につき,一方をpH感応性着色剤を含むもの,他方を適切なpHの他のインクとし,これらが異なる色領域の境界において接触するこ 発生することから,これを抑制するため,異なる色領域を生成する各インクの組成につき,一方をpH感応性着色剤を含むもの,他方を適切なpHの他のインクとし,これらが異なる色領域の境界において接触することで,- 20 -,,一方のインクが凝集固着するという技術的特徴を有するものであるからこのような本願発明の技術的特徴を踏まえれば「第1及び第2のインク,の境界」とは,接触により着色剤が不溶化(着色剤が溶液から析出)するという特定の組成を有するインク同士の境界を指すものと解すべきであるし「色と色の境目」とは,接触により着色剤が不溶化(着色剤の溶液か,らの析出)するという特定の組成を含有するインクにより生成される色領域が隣接する場合の境目を指すものと解すべきである。 そして,前記アで判示したとおり,先願発明に当業者の技術常識を参酌して把握される発明においては,第1のインク(顔料系ブラックインク)と第2のインク(染料系カラーインク)との間に,上記のような意味での「第1及び第2のインクの境界(色と色との境目)が生ずることは明」「」らかである。 したがって,本願発明は,先願発明に当業者の技術常識を参酌して把握される発明と実質的に同一であるということができるのであって,原告の上記主張は前記アの認定を左右するものではない。 この点,原告は,上記主張のように解すべき根拠として,上記(1)アに認定した本願明細書(甲1)の段落【0004】の「…本願明細書では,『にじみ(ブリード』を次のように定義する。二つの異なる色のインク),,を互いに隣接するようにプリントする場合二つの色の間の境界は鮮明で一方の色が他方の色に侵入しないことが望まれている。一方の色が他方の色にはいりこむと,二つの色の間の境界がぎざぎざ(ragged)となり,これをにじみ(ブ プリントする場合二つの色の間の境界は鮮明で一方の色が他方の色に侵入しないことが望まれている。一方の色が他方の色にはいりこむと,二つの色の間の境界がぎざぎざ(ragged)となり,これをにじみ(ブリード)という」との記載を挙げるが,同記載は,それ。 に続く記載(段落【0005)に「この定義は,従来よりしばしばにじ】み(ブリード)を紙の繊維にそってにじむ単色インクとして定義して用い。」,ているものと異なるものであるとされていることから明らかなとおり従来の単色によるにじみとの差異を述べたものにすぎず,重複(混色)を- 21 -伴うプリントの場合に「色と色の境目」につき上記のように解釈することと矛盾するものではない。 また,原告は,先願発明においては,混色領域とこれに隣接する第2のインクで形成された色領域との間においてにじみ(ブリード)が生じるから,本願発明と先願発明は異なる旨主張するが,このようなにじみの発生は,上記混色領域及び隣接する領域が第2のインクのみで生成されたことの帰結にすぎない。先願明細書に「…インクジェット記録方法において,顔料系ブラックインクと,pHを4以下に調製したシアン,マゼンタまたはイエローいずれかの染料系インクとを同一地点に着弾させることを特徴とするインクジェット記録方法である(前記(2)ア(カ))とされているこ。」とから明らかなとおり,先願発明において本願発明の第1インクに対応するものは顔料系ブラックインク,第2のインクに対応するものは染料系カラーインクとされており,先願発明に当業者の技術常識を参酌して把握される発明において前提とするインクもまた,これら両インクと解すべきであって,第2のインクのみでプリントを生成するものではない。したがって,原告の上記主張は採用することができない。 結論 以上 される発明において前提とするインクもまた,これら両インクと解すべきであって,第2のインクのみでプリントを生成するものではない。したがって,原告の上記主張は採用することができない。 結論 以上によれば,原告の主張はすべて理由がない。 よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部裁判長裁判官中野哲弘裁判官森義之- 22 -裁判官澁谷勝海

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