平成30年11月15日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成29年(ワ)第22922号著作権に基づく差止等請求事件口頭弁論終結日平成30年9月13日判決 原告株式会社三京房 同訴訟代理人弁護士益満清輝同提中智士 被告株式会社筑摩書房 同訴訟代理人弁護士亀井弘泰同近藤美智子同北村行夫同大井法子同杉浦尚子同雪丸真吾同芹澤繁同名畑淳同宮澤真志同吉田朋同福市航介同杉田禎浩同廣瀬貴士 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,別紙目録記載の書籍及びソフトウェアを複製し,頒布してはならない。 2 被告は,別紙目録記載の書籍,ソフトウェア及び印刷用原版を廃棄せよ。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,原告が,質問紙法人格検査(ミネソタ多面的人格目録)の日本語翻訳版 2 被告は,別紙目録記載の書籍,ソフトウェア及び印刷用原版を廃棄せよ。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,原告が,質問紙法人格検査(ミネソタ多面的人格目録)の日本語翻 訳版につき出版権を有し,被告による書籍等(ハンドブック,質問項目記載の冊子,マークカード及び診断用ソフトウェア)の出版及び頒布が同出版権を侵害すると主張して,被告に対し,著作権法112条1項及び2項に基づき,同書籍等の複製及び頒布の差止め,同書籍等及びその印刷用原版の廃棄をそれぞれ求める事案である。 2 前提事実(以下の各事実については,当事者間に争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる。)⑴ 当事者等ア原告は,出版を業とする株式会社であり,心理検査の出版を専門に手がける。 イ被告は,出版等を業とする株式会社である。 ⑵ 原告及び被告による人格検査日本語翻訳版の出版アミネソタ多面的人格目録(MinnesotaMultiphasicPersonalityInventory,以下「MMPI」という。)は,昭和14〔1939〕年,アメリカ合衆国の心理学者S.R.Hathaway 及び精神科医J.C.Mckinley によって考 案された質問紙法の人格検査である。MMPIは,人間生活の様々な局- 3 -面に関連する550項目の英文の質問(重複を含めれば566項目)から構成されていて,その回答を分析することによって,人格の成熟度や社会適応度,精神障害の病名や重症度を判定する目安とすることができる(乙1,争いのない事実)。 イ MMPIについては,昭和25年に日本女子大学等の研究者が中心と なり日本女子大学版と呼ばれる翻訳がされ,その後,昭和28年に九州大学医学部の臨床心理研究部会 る(乙1,争いのない事実)。 イ MMPIについては,昭和25年に日本女子大学等の研究者が中心と なり日本女子大学版と呼ばれる翻訳がされ,その後,昭和28年に九州大学医学部の臨床心理研究部会により九大版と呼ばれる翻訳がされたり,昭和30年に東京大学の研究者により東大版と呼ばれる翻訳がされたりするなど,複数の翻訳が出された。(乙1,4)ウ原告は,昭和44年3月21日,日本MMPI研究会編「日本版MM PIハンドブック」及び英語から日本語に翻訳されたMMPIの質問が掲載された「日本版MMPI質問票」(以下,これらを併せて「旧三京房版」という。)を出版した。A(以下「A」という。)は,日本MMPI研究会の会長であり,上記「日本版MMPI質問票」に,その構成を行った者として記載されていた(甲21,24,乙6)。 旧三京房版は,平成2年ないし平成3年当時,日本国内において,MMPIの事実上の標準として使用されていた(甲3,乙2の3,4)。 エ原告は,平成5年10月1日,MMPI新日本版研究会編「新日本版MMPIマニュアル」及び英語から日本語に翻訳されたMMPIの質問が掲載された「質問票」(以下,これらを併せて「新日本版」という。) を出版した(甲9,13,40,乙13)。 オ被告は,平成29年4月1日,B及びC(以下「Bら」という。)共著による,別紙目録記載の書籍である「MMPI-1/MINI/MINI−124ハンドブック改訂版」,「MMPI−1性格検査,同回答用マークカード」,「MINI性格検査,同回答用マークカード」,「MINI−1 24性格検査,同回答用マークカード」及びソフトウェア「MMPI−1- 4 -性格検査自動診断システム」(以下,これらを併せて「本件出版物」という。)を出版し クカード」,「MINI−1 24性格検査,同回答用マークカード」及びソフトウェア「MMPI−1- 4 -性格検査自動診断システム」(以下,これらを併せて「本件出版物」という。)を出版した。 本件出版物には,いずれも英語から日本語に翻訳されたMMPIの質問が掲載されている(甲3ないし8。以下,本件出版物中のこれらの質問が記載された部分について,「本件出版物の質問票」ということがあ る。)。 3 争点⑴ 出版権の存否及び対象物⑵ 被告による出版権侵害行為の有無 4 争点についての当事者の主張 ⑴ 争点⑴(出版権の存否及び対象物)について(原告の主張)MMPIは,質問紙法の人格検査であり,その心理検査に用いられる550項目の質問の総体が,心理検査の目的を達成するために創作的に表現された著作物である。旧三京房版及び新日本版は,日本語に翻訳された上記質問 により構成された書籍及び冊子式質問票であるから,MMPIの二次的著作物である。Aは,MMPIについて,旧三京房版に係る翻訳や新日本版に係る再翻訳等をした者であり,旧三京房版及び新日本版の著作権者である。 原告は,昭和37年12月15日,Aとの間で,出版権設定契約(以下「本件出版権設定契約」という。)を締結した。本件出版権設定契約の時点 で未だ旧三京房版及び新日本版は存在しなかったため,本件出版権設定契約は,完成した特定の出版物を対象とした契約ではないが,今後日本国内で出版される日本語のMMPIについて,原告が,無期限に独占的・排他的な出版権を取得するという内容の契約であった。なお,原告とAは,昭和46年1月1日付けで本件出版権設定契約を確認する趣旨で出版権設定契約書(甲 17)を作成した。 - 5 -したがって 版権を取得するという内容の契約であった。なお,原告とAは,昭和46年1月1日付けで本件出版権設定契約を確認する趣旨で出版権設定契約書(甲 17)を作成した。 - 5 -したがって,原告は,本件出版権設定契約に基づき,旧三京房版及び新日本版の出版権を有する。 被告は,著作権法83条を根拠に無期限の出版権設定契約は3年の経過で消滅すると主張するが,同条にいう「存続期間につき取り決めがない場合」とは存続期間について定めなかった場合をいうところ,本件出版権設定契約 は存続期間を無期限とする旨を取り決めており,このような場合には契約当事者の合意に基づき出版権設定契約は無期限に有効である。 (被告の主張)原告が本件出版権設定契約締結の根拠とする契約書(甲12)は,「著作権使用契約書」という標題の下に権利者をAとし,使用者を原告と表示した もので出版権の設定を内容とするものではなく,本件出版権設定契約が存在したことを裏付けるものではない。なお,昭和46年1月1日付けの出版権設定契約書(甲17)は,A本人は署名せず,Aの印影は同人の印章によって顕出されたものとは認められないから,成立の真正は推定されず,本件訴訟提起後相当経過してから提出された等の経緯の不自然さ等からしても真正 に成立したものとは認められない。 仮に本件出版権設定契約の成立が認められるとしても,原告の出版権は旧三京房版の出版後3年の経過により消滅した(著作権法83条2項)。 仮に同契約による出版権が存続しているとしても,出版権の設定には原作となる著作物が特定されている必要があり,契約締結時点において存在しな い旧三京房版及び新日本版は出版権の対象となり得ない。 また,Aは新日本版の執筆メンバーでなく,Aは新日本版の は原作となる著作物が特定されている必要があり,契約締結時点において存在しな い旧三京房版及び新日本版は出版権の対象となり得ない。 また,Aは新日本版の執筆メンバーでなく,Aは新日本版の著作権者ではないから,新日本版について原告がAから出版権の設定を受けることは不可能である(著作権法79条1項)。なお,原告は,新日本版がAとDの共同著作物であるとも主張するが,原告とAとの間の出版権設定契約の効力が第 三者との共同著作物について及ぶことはない。 - 6 -⑵ 争点⑵(被告による出版権侵害行為の有無)について(原告の主張)ア新日本版の質問票(甲9)には,1ないし19頁にわたり,別紙対比表「三京房」欄記載のとおりの550項目の質問が記載されている。 本件出版物の質問票「MMPI−1性格検査」(甲4の1)には,別紙 対比表「筑摩書房」欄記載のとおりの550項目(全体は566項目であるが16項目は重複)の質問が記載されている。本件出版物の質問は新日本版の質問の順序を入れ替えたり,表現を一部で「ですます調」に変えたりしている部分はあるが,新日本版の質問とおおよそ同一の表現で構成されている。 本件出版物の質問票「MINI性格検査」(甲5の1)には250項目(ただし1項目は重複)の質問が記載されている。これらの質問は新日本版の550項目の質問を250項目に絞り,その順序を入れ替えたり,表現を一部「ですます調」に変えたりしている部分はあるが,新日本版の質問とおおよそ同一の表現で構成されている。 本件出版物の質問票「MINI−124性格検査」(甲6の1)には124項目の質問が記載されている。これらの質問は新日本版の550項目の質問を124項目に絞り,その順序を入れ替えたり,表現を一部「で 本件出版物の質問票「MINI−124性格検査」(甲6の1)には124項目の質問が記載されている。これらの質問は新日本版の550項目の質問を124項目に絞り,その順序を入れ替えたり,表現を一部「ですます調」に変えたりしている部分はあるが,新日本版の質問とおおよそ同一の表現で構成されている。 イ Bらが本件出版物の質問票掲載の新訳を日本心理学会で公開したとする昭和63年には既に新日本版の第一段階の質問票の作成は完成していて,本件出版物の質問票は,新日本版の質問票に依拠して作成された。 ウしたがって,被告による本件出版物の出版・頒布は,原告が有する出版権を侵害する。 (被告の主張)- 7 -ア Bらは,昭和63年10月10日の日本心理学会において,後に本件出版物に掲載するMMPIの新訳を公開し,学会の会場で全項目の翻訳を配布した。新日本版は,同翻訳が学会で発表された5年後に原告から出版されたものであり,本件出版物は新日本版に依拠して作成されたものではない。 イ仮に本件出版物と新日本版の表現が類似しているのであれば,新日本版が本件出版物に依拠して作成されたからである。 第3 当裁判所の判断 1 争点⑵(被告による出版権侵害行為の有無)について事案に鑑み,争点から判断する。 ⑴ 出版権者は,設定行為で定めるところにより,頒布の目的をもって,その出版権の目的である著作物を,原作のまま印刷その他の機械的又は科学的方法により文書又は図画として複製する権利を専有し(著作権法80条1項1号),被告が,原告の出版権を侵害したというためには,被告が,頒布の目的をもって,その出版権の目的である著作物を複製したことが必要である。 また,原告が出版権を有する著作物について,被告が本件出版物において複 告の出版権を侵害したというためには,被告が,頒布の目的をもって,その出版権の目的である著作物を複製したことが必要である。 また,原告が出版権を有する著作物について,被告が本件出版物において複製したというためには,本件出版物が,被告によって,原告が出版権を有する著作物に依拠して作成されたことを要する。 原告は,本件においてAを著作者とする著作物の出版権侵害を主張するところ,本件出版物の質問票における質問の表現と新日本版の質問票における 質問の表現とを比較し,その類似性に基づいて上記出版権侵害を主張しており,本件出版物の質問票に記載された質問が,新日本版の質問票に記載された質問に依拠して作成され,本件出版物の質問票が,原告が出版権を有する新日本版の質問票を複製していると主張していると解されの主張),まず,この点について判断する。 ⑵ 掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実を認めることができ- 8 -る。 ア Bらは,昭和63年10月10日,日本心理学会第52回大会において,「MMPI自動診断システム(1)翻訳,標準化,および,実施プログラム」と題する発表を行った。 この発表において,Bらは,旧三京房版におけるMMPIの質問の翻 訳には多数の誤訳などの問題が存在し,これが日本においてMMPIが活用されていない原因であるから,MMPIの質問の翻訳と標準化をやり直すべきであると考え,Bがまず翻訳の下訳を作成し,それにEとCがそれぞれ手を加えた2種類の訂正原稿を比較しながら,3名で最終原稿をまとめたと発表した(以下,この翻訳を「Bら新訳」という。)。ま た,Bらは,Bら新訳につき,標準化作業を継続中であると発表した。 (乙2の1,乙4,10)なお,心理検査は測定値(得点)によって特定の性格 (以下,この翻訳を「Bら新訳」という。)。ま た,Bらは,Bら新訳につき,標準化作業を継続中であると発表した。 (乙2の1,乙4,10)なお,心理検査は測定値(得点)によって特定の性格特性を測定するが,その測定値(得点)に基づいて測定事項を正しく判断するためには,個人が所属する準拠集団ごとに,当該心理検査を相当数の被験者に対し て実施したデータを集積し,得点の分布を調べ,当該心理検査の測定値(得点)を解析する基準(尺度)を明らかにする作業が必要であり,これを標準化という。(甲3)イ Bらは,昭和63年12月15日発行の「なぞときロールシャッハロールシャッハ・システムの案内と展望」において,昭和62年11月 7日当時には,Bら新訳は完成していなかったこと,昭和63年6月当時にはBら新訳に基づく検査を実施したことを記載した(乙9)。 ウ Bらは,平成元年11月30日の同学会第53回大会において「MMPI自動診断システム(2)暫定的標準化と自動解釈について」と題する発表を行った。この発表において,Bらは,Bら新訳は翻訳の誤りが 多い旧三京房版とはほとんど一致しないこと,及びBら新訳について標- 9 -準化作業を継続中であることを発表した。(乙2の2)エ Bらは,平成2年11月30日の同学会第53回大会において「MMPI自動診断システム(3)新版,三京房版,メイヨウ新基準との比較」と題する発表を行った。この発表において,Bらは,Bら新訳につき標準化作業を行い,「現在までに参加した被験者は男性113名,女性15 6名である。」と発表した。(乙2の3)オ Bらは,平成4年3月25日,Bら新訳を付録として付した「コンピュータ心理診断法 MINI,MMPI−1自動診断システムへの招待」と題する書籍 6名である。」と発表した。(乙2の3)オ Bらは,平成4年3月25日,Bら新訳を付録として付した「コンピュータ心理診断法 MINI,MMPI−1自動診断システムへの招待」と題する書籍を出版した(乙4)。 カ平成13年1月1日発行のF編著「国際的質問紙法心理テストMMP I−2とMMPI−Aの研究 MinnesotaMultiphasicPersonalityInventory 2 & AStudy(北里大学看護学部精神保健学教授平成12年3月退任記念論集)」には,MMPIには旧三京房版も含めて15種類の翻訳があったが,それらには誤訳があるほか恣意的な意訳などの疑問点があった旨の記載があり,また,「1992年(判決注:平成4年):富山大学の Bらが,これ等の疑問点を訂正する形のMMPI−1新訳版を作成。」との記載があり,また,「1993年(判決注:平成5年):Dらがこれまでの翻訳を修正し,再標準化しMMPI-1新日本版を作成。」との記載がある(乙1)。 キ Bらは,平成18年,Bら新訳の質問項目92の「看護婦」との訳語 について,「看護師」と変更した(乙7,10〔17頁〕)。 ク被告は,平成29年,Bら新訳のうち上記キの部分を変更した質問が掲載された本件出版物を出版した(前提事実オ)。 ケ新日本版について,以下の事実が認められる。(乙13)新日本版は,平成5年10月1日,MMPI新日本版研究会を編者と して原告から出版された(前記前提事実⑵エ)。同研究会の代表はDであ- 10 -り,同研究会のメンバーにAは含まれていない。 新日本版の前書きには,旧三京房版は改訂の必要性が痛感されていたこと,Aらは改訂に着手したが完成しなかったこと,Aから依頼を受けて平成2年にMM り,同研究会のメンバーにAは含まれていない。 新日本版の前書きには,旧三京房版は改訂の必要性が痛感されていたこと,Aらは改訂に着手したが完成しなかったこと,Aから依頼を受けて平成2年にMMPI新日本版研究会が旧三京房版の改定作業を引き受けたこと,MMPI新日本版研究会は,より適切な日本語版を作成する という目的からMMPI原版を最も適切と思われる日本語に移して適切な標準化作業を行うという条件の下でこの作業に取り組み,項目の配列順序は旧三京房版を踏襲するがそれ以外の点では全く独自の観点から作業を進め,新日本版を作成したことなどが記載されている。 ⑶ 以上の事実によれば,Bらは,昭和62年11月7日から昭和63年6月 までに間にBら新訳を完成させ,これを前提として,学会での発表を行うと共に標準化作業を進め,平成4年3月25日にBら新訳を掲載した書籍を出版したと認められる。前記前提事実⑵エのとおり,新日本版は平成5年10月1日に出版されたものであるから,Bらが,Bら新訳を作成した昭和62年から昭和63年当時,新日本版に接し,これを用いてBら新訳を作成する ことは不可能であったといえる。 これに対し,原告は,昭和63年には既に新日本版の第一段階の質問票は完成しており,Bらがこれを参照した可能性がある旨主張するが,MMPI新日本版研究会が旧三共房版の改訂作業を引き受けたのは平成2年であり,同研究会が「MMPI原版を最も適切と思われる日本語に移」す作業を行っ たこと(前記⑵ケ)からすれば,昭和63年の段階で新日本版の質問票の質問と同内容の翻訳が完成していたと認めることは困難であるし,また同翻訳が公表され,Bら一般の研究者が参照し得たと認めるに足りる証拠もない。 そして,本件出版物の質問票の質問は,Bら新訳 問票の質問と同内容の翻訳が完成していたと認めることは困難であるし,また同翻訳が公表され,Bら一般の研究者が参照し得たと認めるに足りる証拠もない。 そして,本件出版物の質問票の質問は,Bら新訳の質問92が「看護婦になりたいと思います。」から「看護師になりたいと思います。」へと変更され た以外は,Bら新訳の質問と同一であるから(甲4の1,乙10,前記⑵- 11 -ク),本件出版物の質問票の質問が,新日本版の質問票の質問に依拠して作成されたと認めることはできない。なお,本件出版物の質問票の質問と新日本版の質問票の質問は,その内容においてほぼ重なるが,これらはいずれもMMPIを翻訳したものでその内容が共通することは当然であり,その重なりによって,本件出版物の質問票が新日本版の質問票に依拠して作成された と認めることはできない。 したがって,本件出版物は新日本版を複製したものであるとは認められず,原告主張の出版権侵害は理由がない。 ⑷ 原告は,原告が旧三京房版の出版権を有するとも主張するため,本件出版物の質問票が,旧三京房版の質問票を複製したものであるか否かについても 検討する。 本件出版物の質問票の質問は,その内容において,旧三京房版の質問票の質問と重なるものもあるが(甲3,乙6,10),これらもいずれもMMPIを翻訳したものであるから,このことをもって直ちに本件出版物の質問票が旧三京房版の質問票に依拠してこれを再製したものとはいえない。前記⑵ で認定したとおり,Bらは,旧三京房版における質問の翻訳に疑問を持ち,独自にMMPIの英文の翻訳等を行ってBら新訳を完成させたものと認められること,上記各質問票の質問の日本語の表現は同じ英文に対応するものとしてはいずれも相当に違うこと(甲3,乙6,10)などから ,独自にMMPIの英文の翻訳等を行ってBら新訳を完成させたものと認められること,上記各質問票の質問の日本語の表現は同じ英文に対応するものとしてはいずれも相当に違うこと(甲3,乙6,10)などから,本件出版物の質問票の質問が旧三京房版の質問票の質問を複製したものであると認める ことはできず,その他,本件出版物が旧三京房版を複製したことを認めるに足りる証拠はない。したがって,本件出版物が旧三京房版を複製したものであるとは認められない。 なお,原告は,原告準備書面におけるMMPIに関する契約代理部門(サイコロジカルコーポレーション)との間の契約に基づいてAがMMPIの日 本語翻訳版に係る権利を取得した旨の記載は本件の背景事情に関する記載で- 12 -あって請求原因ではないと述べ(第7回弁論準備手続調書),Aが行った翻訳(再翻訳)に基づく権利を主張している。 2 結論よって,その余の争点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官柴田義明 裁判官安岡美香子 裁判官大下良仁 - 13 -(別紙)目録 1 題号 「MMPI-1/MINⅠ/MINI-124ハンドブック(改訂版)」 著作者名 B,C発行所名株式会社筑摩書房発行年月日 2017年4月1日 2 題号 「MMPI-1性格検査、同回答用マークカード」著作者名 B,C 発行所名株式会社筑摩書房発行年月日 2017年4月1日 17年4月1日 2 題号 「MMPI-1性格検査、同回答用マークカード」著作者名 B,C 発行所名株式会社筑摩書房発行年月日 2017年4月1日 3 題号 「MINI性格検査、同回答用マークカード」著作者名 B,C発行所名株式会社筑摩書房 発行年月日 2017年4月1日 4 題号 「MINI-124性格検査、同回答用マークカード」著作者名 B,C発行所名株式会社筑摩書房発行年月日 2017年4月1日 5 題号 「MMPI-1性格検査自動診断システム」著作者名 B・C発行所名株式会社筑摩書房発行年月日 2017年4月1日
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