平成14(ワ)428 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成18年10月3日 甲府地方裁判所
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判決文本文29,720 文字)

平成18年10月3日判決言渡平成14年(ワ)第428号損害賠償請求事件【事案の概要】社会福祉法人である原告の設立や施設の建設等に関わった元理事らが,県等から交付される補助金を不正に受給し,私的に流用したとして,原告が,元理事ら6名を被告として,共同不法行為等を主張して損害賠償を求めた事案(一部認容)。 主文 被告Y1,被告Y2及び被告Y3は,原告に対し,連帯して金7604万9446円及びこれに対する平成14年11月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,原告に生じた費用の6分の1を被告Y1,被告Y2及び被告Y3の負担とし,被告Y1に生じた費用の3分の1を被告Y1の負担とし,被告Y2に生じた費用の3分の1を被告Y2の負担とし,被告Y3に生じた費用の3分の1を被告Y3の負担とし,原告,被告Y1,被告Y2及び被告Y3に生じたその余の費用並びに被告Y4,被告Y5及び被告Y6に生じた費用を原告の負担とする。 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求 被告らは,原告に対し,連帯して1億4050万円及びこれに対する平成14年11月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告Y1,被告Y2,被告Y3及び被告Y4は,原告に対し,連帯して5991万1925円及びこれに対する平成14年11月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要 本件は,原告が,被告Y1,被告Y2及び被告Y3が原告の軽費老人ホームの建設及び施設整備工事に関し,共謀の上,山梨県から補助金を不正に受給して私的に流用し,被告Y4が原告の銀行預金の出入を担当しながら上記私的流用に加担し,上記により び被告Y3が原告の軽費老人ホームの建設及び施設整備工事に関し,共謀の上,山梨県から補助金を不正に受給して私的に流用し,被告Y4が原告の銀行預金の出入を担当しながら上記私的流用に加担し,上記により原告に損害が生じたと主張して,被告Y1ら4名に対し,共同不法行為(民法719条1項)に基づき,連帯して2億0041万1925円(私的流用金1億9691万2479円と原告が山梨県に延滞金等として支払った349万9446円の合計)及びこれに対する本訴状送達の日の翌日以降である平成14年11月24日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うことを求めるとともに,被告Y5が虚偽の建物請負契約書を作成し上記私的流用に加担したから,被告Y5も被告Y1らとの共同不法行為責任を負い,また,被告Y5及び被告Y3の使用者である被告Y6は使用者責任(民法715条)を負うとして,原告に対し,被告Y1らと連帯して,1億4050万円(私的流用金のうち不正に受給した建設事業費の補助金に係る部分)及びこれに対する本訴状送達の日の後である平成14年11月24日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うことを求めるという事案である。 争いのない事実(1)原告は,軽費老人ホーム,老人デイサービスセンター及び在宅介護支援センターの設置経営等の社会福祉事業を行うことを目的として平成8年1月16日に設立された社会福祉法人である。 (2)被告Y1は,原告の設立当時の理事であり,原告の業務全般を統括していた。 (3)被告Y2は,原告の設立当時の評議員であり,原告の事業計画立案等の業務を委託されたA社の代表取締役として,原告の施設の設置事務等に従事していた。 (4)被告Y3は,原告の設立当時,被告Y6の常務取締役であったが,原告の施設 評議員であり,原告の事業計画立案等の業務を委託されたA社の代表取締役として,原告の施設の設置事務等に従事していた。 (4)被告Y3は,原告の設立当時,被告Y6の常務取締役であったが,原告の施設の設置事務等に関与した。 (5)B(平成14年死亡)は,原告の監事であり,原告の会計等の監査をしていた。 (6)被告Y4は,原告の設立当時,Bの経営するB会計事務所の職員であったが,原告の預金口座の通帳を預かって出入金の事務手続きを行っていた。 (7)被告Y6は,土木建築請負設計施工等を業とする株式会社であり,被告Y5は,その代表者である。 (8)被告Y6は,平成8年,原告から軽費老人ホーム(以下「本件施設」という。)建設工事を請け負った。 (9)被告Y1,被告Y2及び被告Y3は,本件施設の建設等をめぐる山梨県等からの補助金に関し,不正に補助金の交付を受けたとして,平成13年,補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律違反,詐欺被告事件で起訴されて,同年中に執行猶予付きの有罪判決を受け,この判決は確定した。 本件の争点(1)本件訴訟は,訴訟代理権を欠く者が提起したものか,社会福祉法人の訴訟提起の法定の要件を欠く瑕疵あるもので不適法といえるか。 (2)被告Y1,被告Y2及び被告Y3は原告の軽費老人ホームの建設及び施設整備工事に関し,共謀の上,山梨県から補助金を不正に受給し私的に流用したか(共同不法行為の成否)。 (3)被告Y4は,上記私的流用に加担したか(共同不法行為の成否)。 (4)被告Y5は,上記私的流用に加担したか(共同不法行為の成否)。被告Y5の加担が認められる場合,あるいは,被告Y3の共謀が認められる場 合,被告Y6は使用者責任を負うか。 (5)原告の被った損害第3争点に対する当事者の申立て及び主張 争点(1 否)。被告Y5の加担が認められる場合,あるいは,被告Y3の共謀が認められる場 合,被告Y6は使用者責任を負うか。 (5)原告の被った損害第3争点に対する当事者の申立て及び主張 争点(1)(本件訴訟は,訴訟代理権を欠く者が提起したものか,社会福祉法人の訴訟提起の法定の要件を欠く瑕疵あるもので不適法といえるか)について(1)被告Y1の申立て及び主張ア本件訴訟を提起したC(平成15年死亡)は,原告の乗っ取りを企図するDによって理事として仮装登記されたものにすぎず,定款に定める手続を経て選任された原告の理事でも理事長でもない。したがって,本件訴訟は,原告の代表者でない者,すなわち,訴訟代理権を欠く者が提起したものであり,不適法却下すべきである。 (ア)山梨県知事が平成12年9月21日にした仮理事の選任は,重大かつ明白な瑕疵があり無効である。 a山梨県知事に対し仮理事選任の申立てをしたEは,原告の事務局長ではなく(当時原告に事務局長という役職はなかった。),仮理事選任の申立てができる利害関係人ではない。 bまた,そもそも,被告Y1及びFが原告の理事あるいは理事長を辞任したことはなく,理事あるいは理事長の権利義務を有する者である。 cEが仮理事の候補者として選任したD,C及びGは,いずれも,原告の債権者であるHと原告との金融仲介人であるDの指示により,Hに対する債務弁済までの担保として,平成10年4月13日,原告の当時の理事長Fが理事を委嘱したものであり,理事として原告の社会福祉事業を確実,効果的かつ適正に行う意思もなければ,原告が提供する福祉サービスの質の向上を図る意思もなく,単に原告の乗っ取りを目論む者たちである。山梨県知事はこのような事情を 知らされないまま,原告の状況について虚偽の説明を受けた結果,錯誤により 告が提供する福祉サービスの質の向上を図る意思もなく,単に原告の乗っ取りを目論む者たちである。山梨県知事はこのような事情を 知らされないまま,原告の状況について虚偽の説明を受けた結果,錯誤により,仮理事としてD,C及びGを選任した。 d上記のように仮理事選任手続は無効であるところ,被告Y1を原告とし,山梨県知事を被告とする仮理事選任取消訴訟を提起する必要があるとはいえない。 (イ)平成12年9月25日に開催されたとされる第20回理事会における理事長の選任は手続上の瑕疵があり無効である。 aDが理事長に就任したのは,登記簿上平成12年12月28日であるから,Dには平成12年9月25日に開催されたとされる第20回理事会を招集する権限がなく,そこでされた理事の選任(委嘱)も手続上の瑕疵がある。 b上記のとおり,山梨県知事がした仮理事選任が無効であるから,D,C及びGが仮理事としてした一切の行為は無効である。したがって,平成12年9月25日選任されたとされる理事12名も,正当な理事選任権者(理事長)でない者によって選任されたものであり,また,理事長選任について正当な同意権者(8名以上の理事)の同意を欠くものであって理事長就任は無効である。 c原告定款によれば,理事の定員は12名である(定款4条1項)。 原告には平成12年9月21日当時,外形上12名の理事がおり(被告Y1及びFが理事あるいは理事長の権利義務を有する者であったことは,上記(ア)bのとおりである。),その点でも仮理事選任の必要はなかった。 もし山梨県知事が仮理事を選任する以上,定款所定の定員数である理事12名を選任し,原告法人組織として適切な体制を整えさせるべきであった。 3名の仮理事を選任したとしても,原告法人の組織上まったく不 備である。 社会福祉法36条も「理事又 所定の定員数である理事12名を選任し,原告法人組織として適切な体制を整えさせるべきであった。 3名の仮理事を選任したとしても,原告法人の組織上まったく不 備である。 社会福祉法36条も「理事又は監事のうち,その定数の三分の一を超える者が欠けたときは,遅滞なくこれを補充しなければならない」と規定し,役員につき一定の定数を保つよう要請している。 以上,本件3名の仮理事選任は,無効である。 (ウ)Dは,社会福祉法36条4項4号所定の役員欠格者であり,原告の理事長,理事になり得ない。 Dは,平成13年1月10日,(省略:刑事裁判で執行猶予付き懲役刑の)有罪判決を受け,この判決は同月25日確定した。したがって,Dは,平成13年1月25日から,役員欠格者であった。 (エ)しかしながら,Dは,平成13年11月28日に開催された第27回理事会につき理事長として招集し,議長として会議を主催した。したがって,上記理事会は無効である。 イ本件訴訟提起は,原告の定款に定められた,評議員の同意(定款13条2項),理事会の決議による決定(定款5条1項)を欠くものであり,社会福祉法人の訴訟提起の法定の要件を欠く瑕疵あるものであるから,不適法却下すべきである。 (ア)平成14年6月20日に開催された第29回理事会における決議は,上記のとおり理事欠格者であるDや上記仮理事により選任された正当かつ有効な資格を欠く理事により行われたものであり,原告の定款5条1項で定められた決議とはいえない。 (イ)また,同意をした評議員もDが理事長として選任した者であるから,正当かつ有効な資格を欠く評議員であり,これらの評議員による同意も無効である。 (2)原告の反論ア原告の本件訴訟提起時の理事長はCである。その選任の経緯は以下の とおりである。 (ア)平成10年4月 効な資格を欠く評議員であり,これらの評議員による同意も無効である。 (2)原告の反論ア原告の本件訴訟提起時の理事長はCである。その選任の経緯は以下の とおりである。 (ア)平成10年4月13日開催の第11回理事会において,D及びCが理事に選任されたが,その後,理事の選任,辞任等について紛糾し,理事会が正常に運営できない状態になった。 (イ)その後,原告は,山梨県から本件の補助金不正受給について是正を求められたが,理事会が上記のような状態であったので,理事は任期切れで全員退任し,社会福祉法45条で読み替えて準用する民法56条により山梨県知事が仮理事を選任するための申立てをせよとの指示を受けた。 原告の事務局長Eは,上記指示に従い仮理事選任の申立てをし,山梨県知事は,平成12年9月21日,D,C及びGを仮理事に選任した。 仮理事に就任したD,C及びGは,直ちにDを理事長に選任した(登記がないからといって理事長としての権限がないわけではない。)。Dは,平成12年9月25日に第20回理事会を開催して理事を選任し,同年12月28日に第21回理事会を開催し,理事会の同意を得て,評議員を選任した。 平成13年11月28日に第27回理事会が開催され,Dが理事長及び理事を辞任し,Cが理事長に選任された。 なお,仮理事の選任無効については,本件訴訟で審理することはできず,山梨県知事を被告として仮理事選任処分取消訴訟を提起すべきである。 (ウ)Dは,理事長に就任中の平成13年1月10日に(省略:刑事裁判で執行猶予付き懲役刑の)有罪判決を受け,同月25日にこれが確定したため,社会福祉法36条4項4号により役員の欠格事由に該当することとなったが,Dは上記条項を知らなかったため理事長の職務を 続けたものである。Dは,同年11月ころには欠格事由に 日にこれが確定したため,社会福祉法36条4項4号により役員の欠格事由に該当することとなったが,Dは上記条項を知らなかったため理事長の職務を 続けたものである。Dは,同年11月ころには欠格事由に該当することを知ったので,後任の理事長を選任するため,同月28日,第27回理事会を召集して開催した。上記理事会にはDを含め9名の理事が出席し,その席でDは理事長等の辞任を申し出,後任の理事長には出席理事全員の賛成でCが選任された。また,上記の議案に関しては,Dを除いても8名の理事の賛成が得られているので,決議は実質的にも有効といえる。 (エ)仮に,第27回理事会の召集手続に瑕疵があり,その結果,当該理事会で決議された事項が無効であったとしても,適正に開催された平成14年3月28日の第28回理事会においてCが適正に理事長に選任された。すなわち,定款によれば,理事長に事故あるときは,理事長があらかじめ指名する他の理事が順次に理事長の職務を代理するとされているところ(定款6条),Dからあらかじめ指名されていたCが第28回理事会を召集し,委任状による出席理事をも含め9名の理事により,第27回理事会で決議されたCを理事長とする決議の追認ないしは同一内容の決議が適正に行われた。 以上のとおり,Cが理事長としてなした行為はすべて有効であり,C以降の理事長が行った手続も有効である。 イ本件訴え提起については法定手続を履践している。 平成14年6月20日に第29回理事会及び第13回評議員会が適正に開催され,本件訴えを提起することが同意,承認されている。 争点(2)(被告Y1,被告Y2及び被告Y3は原告の軽費老人ホームの建設及び施設整備工事に関し,共謀の上,山梨県から補助金を不正に受給し私的に流用したか(共同不法行為の成否))について(1)原告の主張 2)(被告Y1,被告Y2及び被告Y3は原告の軽費老人ホームの建設及び施設整備工事に関し,共謀の上,山梨県から補助金を不正に受給し私的に流用したか(共同不法行為の成否))について(1)原告の主張ア被告Y1,被告Y2及び被告Y3(なお,被告Y3は,被告Y6の常 務取締役であるとともに,原告の事務局長として原告の施設設置事務等に従事していた。)は,共謀して,原告の本件施設の建設工事(以下「本件工事」という。なお,請負人は被告Y6である。)に関し,山梨県から国庫補助金を財源の一部とする社会福祉施設等施設整備費補助金及び山梨県独自の財源による山梨県老人福祉施設等施設整備費補助金(以下これらを合わせて「本件補助金」という。)を受給する際,建設事業費が実際には6億7980万円しか要していないのに8億2030万円を要したと申請し,また設備整備費が実際には3614万5121円しか要していないのに9255万7600円を要したと申請するなどして,山梨県から,建設事業費の差額1億4050万円と設備整備費の差額5641万2479円の合計1億9691万2479円を不正に受給した(以下「本件不正受給」という。)。 原告は,山梨県に対し,本件不正受給に関し,1360万9000円を返還したほか延滞金等として349万9446円を支払った。 イ被告Y1,被告Y2及び被告Y3は,本件不正受給金の合計額を不正かつ私的に流用した。 なお,本件不正受給に関する刑事裁判において,被告Y1自ら1億2000万円を個人的に流用した旨供述している。 (2)被告Y1の主張ア被告Y1が本件不正受給金を私的に流用したとの事実は否認する。 本件不正受給金額は,原告の補助金交付申請の額と山梨県の再査定額との差額にすぎず,原告が現実に保有していた資産とは無関係であり,これを被告Y1らが 本件不正受給金を私的に流用したとの事実は否認する。 本件不正受給金額は,原告の補助金交付申請の額と山梨県の再査定額との差額にすぎず,原告が現実に保有していた資産とは無関係であり,これを被告Y1らが流用したなどとはいえない。 イ被告Y1が,差額1億9691万2479円を私的に流用したことはない。 原告の資金運営は,主として被告Y2,被告Y3が行っていた。既に 陳述したとおり,原告において,本件流用の年月日,金額,銀行口座などを明らかにすべきである。 原告において,私的流用,損害額につき主張,立証すべきである。 (3)被告Y2の主張ア被告Y2が本件不正受給金を私的に流用したとの事実は否認する。 イ被告Y2らが山梨県から補助金を不正に原告宛支出させたことと受給した補助金を原告内部で実際にどのように使ったかは別問題である。 (4)被告Y3の主張ア被告Y3は,原告の施設設置事務等を手伝っていただけであって,原告の事務局長ではない。 イ被告Y3が本件不正受給金を私的に流用したとの事実は否認する。 なお,設備整備費として実際に要した費用は6372万9000円である。 争点(3)(被告Y4は,上記私的流用に加担したか(共同不法行為の成否))について(1)原告の主張被告Y4は,原告の会計を担当し,原告の預金通帳3通を預かるなどして補助金等が振り込まれてくる原告の預金の入出金を管理し,必要な帳簿書類を作成するなどの業務に従事していたが,被告Y3に指示されるまま,原告の預金口座から被告Y1の借金返済などのために出金手続をした。 被告Y4は,補助金や医療事業団からの貸付金は,施設の建設と備品の整備のためだけに使途が限定されていることを知りながら,不正な支出との疑問を持ちつつも,Bの指示により被告Y3の言うがままに原告の預金口座から金員を 金や医療事業団からの貸付金は,施設の建設と備品の整備のためだけに使途が限定されていることを知りながら,不正な支出との疑問を持ちつつも,Bの指示により被告Y3の言うがままに原告の預金口座から金員を引き出し,被告Y1,被告Y2及び被告Y3の上記私的流用に加担したし,少なくとも重過失があると認められる。 (2)被告Y4の主張 被告Y4は,B会計事務所の職員として,所長であったBから原告の3通の預金通帳を預かり(なお,印鑑は当時の原告理事長Iが管理していた。),出入金するようにとの指示を受け,被告Y3の指示に従いIに出金手続に必要な書類に押印をもらった上で出金手続を行い,そのための決裁書を作成し,出納帳に記帳するなど原告の預金の入出の機械的な事務をしていただけであって,原告の会計を担当していない。 争点(4)(被告Y5は,上記私的流用に加担したか(共同不法行為の成否)。 被告Y5の加担が認められる場合,あるいは,被告Y3の共謀が認められる場合,被告Y6は使用者責任を負うか)について(1)原告の主張ア被告Y5は,本件工事について,不正な目的で使用されることを認識し得るのにもかかわらず,虚偽の工事請負契約書(甲4)の作成をし,被告Y1,被告Y2及び被告Y3の建設事業費の不正受給及びその私的流用に加担した。 イ被告Y3は,被告Y6が原告から建築工事等を受注するのに有利になるようにするため,原告に事務局長として派遣されていたものであり,もっぱら施設の設置事務等に従事していたが,本件工事請負契約については,原告の事務局長としての役割のみならず,被告Y6の常務取締役としての役割も果たし,虚偽の工事請負契約書作成に関与した。 ウ被告Y5及び被告Y3は,いずれも被告Y6の取締役であり,虚偽の工事請負契約書作成への関与は,その業務の執行につ ,被告Y6の常務取締役としての役割も果たし,虚偽の工事請負契約書作成に関与した。 ウ被告Y5及び被告Y3は,いずれも被告Y6の取締役であり,虚偽の工事請負契約書作成への関与は,その業務の執行につきなされたものであるから,被告Y6は使用者責任を負う。 (2)被告Y5及び被告Y6の主張ア被告Y6は,原告との間で,平成8年1月,本件工事について,代金8億2030万円とする請負契約を締結し,工事請負契約書を作成した。 その後,被告Y6は,原告から代金減額の申入れを受けて交渉した結 果,同年4月ないし5月ころ,1億4050万円の減額をする旨合意したので,上記契約書を破棄することとし,工事請負減額契約書(乙ヘ2)を作成し,更に新たな工事請負契約書(甲3)を作成した(なお,甲4の成立は争う。)。 本件不正受給は,上記の経緯で工事代金が減額されたにもかかわらず,原告がこれを山梨県に届け出ずにしたことであって,被告Y5及び被告Y6は何ら関与していない。 イ仮に被告Y3に不法行為責任が認められるとしても,本件不正受給及びその私的流用は,被告Y6の業務執行とは何ら関係がなく,被告Y6が使用者責任を負うことはない。 争点(5)(原告の被った損害)について(1)原告の主張ア被告Y1,被告Y2及び被告Y3は,本件不正受給について刑事裁判で有罪判決を受けているが,被告Y1らが山梨県に対して水増しした金額を申請した理由は,その差額を私的に流用する目的であったことが推認される。したがって,上記被告3名及び私的流用に関わった被告Y4については,山梨県に対して水増し請求をした差額等の合計に相当する額である2億0041万1925円(建設整備費の差額1億4050万円+設備整備費の差額5641万2479円+延滞金等349万9446円)の損害を原告に負わせ て水増し請求をした差額等の合計に相当する額である2億0041万1925円(建設整備費の差額1億4050万円+設備整備費の差額5641万2479円+延滞金等349万9446円)の損害を原告に負わせたものである。 また,被告Y6及び被告Y5は,上記のうち,建設整備費の水増し請求に関与していることから,上記損害額のうち,1億4050万円について,損害発生に加担したといえる。 イなお,被告Y1は,自らの刑事事件において,建設費用等の浮かせた分を,自らの借入金(合計1億2000万円)の返済に充てた旨述べていたのであって,上記金額が私的流用に当たることは明らかである。 また,少なくとも,下記記載の出金(甲21)は,原告の預金口座から被告Y1の個人債務の返済に充てられたものであり,その合計7327万2195円は原告の被った損害である。また,被告Y5からの借入金1000万円が原告の資金から返済されたことも明らかであるから,これを加えると損害額の合計は少なくとも8327万2195円である。 そして,原告が,本件不正受給に関して,山梨県に対し,延滞金等349万9446円を要したことは既に述べたとおりである。 記平成8年3月1日の出金1000万円同月26日の出金1600万円同年7月31日の出金600万0721円同年8月1日の出金60万0721円同月2日の出金11万2032円同年12月26日の出金4055万8721円ウ本件については,原告設立当時の会計処理を被告Y1らが行っていた上,建設整備費等に要した費用の算出は山梨県において行われているため,原告の手元に資料が存在せず,損害額の私的流用を正確に主張立証するのが困難な事案といわざるを得ない。 仮に,原告の主張立証に不十分な点があるとしても,原告の被った損害については,民事訴訟法2 ため,原告の手元に資料が存在せず,損害額の私的流用を正確に主張立証するのが困難な事案といわざるを得ない。 仮に,原告の主張立証に不十分な点があるとしても,原告の被った損害については,民事訴訟法248条によって認定されるべきである。 (2)被告らの主張ア原告の損害の主張については争う。 原告は,被告らの私的流用の事実につき何ら証拠に基づく立証を行わない。 イ被告Y1の主張上記アに加え,原告が山梨県に補助金の一部1360万9000円を 返還する際に支払った延滞金等の349万9446円が原告に生じた損害としているがこれは誤りであるし,仮に,延滞金等の支払が事実であり,これが原告の被った損害であるとしても,原告は,補助金を返還するまでの間は,補助金相当額を運用できたのであるから,上記運用利益相当額は控除(例えば,被告Y1がDを介してHから借り入れた金銭に対する年3パーセントの利息,仲介手数料130万円,交通費等20万円等)すべきである。 ウ被告Y2及び被告Y3の主張上記アに加え,原告は,自らに帰属し得ない金員を原告の財産と誤解し,本来原告が負担すべき支払を私的流用と誤解して損害を主張するものである。 すなわち,本件工事は当初8億2000万円を請負代金として請負契約が締結され,実際に完成された建物の価値も上記金額に相応するものであったところ,被告Y2らの強い要請に応じて6億8000万円の金額にまで減額させることができたのであって,原告は,その減額分の使途を被告Y2らに委ねたといえる。したがって,減額により生じた差額は,実質的には被告Y6から被告Y2らに贈与されたと評価し得る金員であり,原告に帰属し得る金員ではなかった。 第3当裁判所の判断 上記前提となる事実に,証拠(証人F,原告代表者,被告Y1,被告Y2,被告Y3,被告 6から被告Y2らに贈与されたと評価し得る金員であり,原告に帰属し得る金員ではなかった。 第3当裁判所の判断 上記前提となる事実に,証拠(証人F,原告代表者,被告Y1,被告Y2,被告Y3,被告Y4,被告Y6代表者兼被告Y5,甲1ないし3,5ないし34,乙イ1ないし5,9ないし17,19,20,乙ロ1,2,乙ハ1ないし3,乙ニ1,乙ヘ1ないし4。書証は枝番を含む。ただし,証人F,被告Y1,被告Y2,被告Y3,乙イ11,乙イ16,乙ロ1及び乙ハ1は下記認定に反する部分を除く。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1)原告の設立過程 ア被告Y1は,平成2年ころ,周囲からの働きかけ等により,自己所有地を利用した高齢者向けの福祉施設の建設を考えるようになり,平成5年ころには,社会福祉法人の設立や施設の建設に向けた具体的な取り組みをはじめた。被告Y1は,施設建設の企画などを手がけるA社の代表者である被告Y2,建設業者である被告Y6の取締役を務める被告Y3及び会計事務所を経営する公認会計士であるBらとともに計画を具体化し,山梨県への認可申請など法人の設立と施設の建設に向けた準備を行うようになった。 イ法人設立に向けた準備には,企画会社への報酬や近隣対策費など多額の準備資金が必要であったところ,被告Y1には,福祉施設の建設予定地であった(省略:山梨県内)所在の自己所有地(乙イ9の1ないし3。 以下「被告Y1所有地」という。)があるものの,自らが経営する他の事業が振るわず,自己資金が用意できなかった。そこで,被告Y2やBが交渉に入るなどして,平成5年10月ころに,被告Y1がJ銀行から個人債務として6500万円を借り入れることとし,これを法人設立の準備資金とすることとした。 また,被告Y1は,過去に,被告Y1所有地を用いて 入るなどして,平成5年10月ころに,被告Y1がJ銀行から個人債務として6500万円を借り入れることとし,これを法人設立の準備資金とすることとした。 また,被告Y1は,過去に,被告Y1所有地を用いて,知人であったKを代表者とする老人福祉施設の建設を考えたものの計画が頓挫したことがあったところ,その過程で,被告Y1所有地に付いていた抵当権を解除するために,実質的にはKから6500万円の借入れをしたことがあった。 平成6年6月ころ,被告Y1の上記債務の支払が滞ったことで,Kにより被告Y1所有地に仮差押えがされたため,そのままでは,社会福祉法人の財産として認められず,山梨県からの認可を受けることが困難な事態となった。そこで,被告Y1らは,上記仮差押登記を解除させるべく,同年9月ころ,被告Y1がKに対し,5500万円を支払う旨の和 解を成立させ,同月22日,上記仮差押登記は取下げにより抹消された。 なお,この和解金の支払には,上記J銀行からの借入金の一部(被告Y1によれば700万円)が充てられたほか,被告Y1の義兄であり,後に法人設立時の理事長となるIがL信用組合やM信用金庫から個人で融資を受けた合計3000万円,被告Y6の代表者である被告Y5から借入れた1000万円などが使われた。 ウ結局,法人を設立するまでの間に,寄附予定地の仮差押えの解除や,設立準備資金等のため,被告Y1が個人で負担した債務は,上記J銀行からの借入金6500万円と,Kに対する5500万円の和解金との合計1億2000万円に上った。しかし,被告Y1は,収益を見込んでいた自らの健康飲料事業等で利益を上げることができないでいたため,上記債務の返済の目処も立たない状態であった。そして,上記J銀行からの借入金の一部は,A社への契約手付金支払(被告Y1によれば700万円)や近 健康飲料事業等で利益を上げることができないでいたため,上記債務の返済の目処も立たない状態であった。そして,上記J銀行からの借入金の一部は,A社への契約手付金支払(被告Y1によれば700万円)や近隣対策費(被告Y1によれば720万円),登記料等に加え,被告Y1個人の生活費や貸付金利息返還等(被告Y1によれば719万1483円)にも充てられた(本件訴訟において被告Y1が自ら認めたものである。なお,被告Y1は,自らの刑事事件に関わる警察官面前調書では,J銀行から借り入れた6500万円は,平成6年8月22日に,法人設立準備資金用の自分名義の専用預金口座を作るまでは,被告Y1の個人使用口座に振り込まれていたため,相当額を生活費や他者への利息返済等の用途で個人的に用いたとしており,その額は2851万5852円になる旨供述していた(甲30)。)。 エなお,設立予定の法人では,土地や準備資金等を寄附することとなる被告Y1が理事長となることを予定していたが,被告Y1に資金がなく,個人債務が多いことなどの理由から,結局,Iが理事長になることとされた。 オ原告は,平成8年1月16日,Iを理事長として設立され,同月18日,被告Y1は,被告Y1所有地を原告に贈与した(同年2月5日付け登記)。 (2)本件施設の建設工事をめぐる請負契約の経緯等についてア平成5年秋ころ,被告Y3は,被告Y1や被告Y2の要望に応じて,本件施設の建設費用の見積りを算出することとなった。 被告Y2は,自らが関わってきた法人企画業の経験から,社会福祉法人の設立やその施設の建設に要する費用は,出資者からの寄附のほか,申請に応じて交付される都道府県や国からの補助金,社会福祉・医療事業団(以下「事業団」という。)からの借入金でまかなうことが通常であるとの認識をもっていた。本件の る費用は,出資者からの寄附のほか,申請に応じて交付される都道府県や国からの補助金,社会福祉・医療事業団(以下「事業団」という。)からの借入金でまかなうことが通常であるとの認識をもっていた。本件の法人設立には,被告Y1による土地や資金の寄附が予定されていたが,上記のとおり,被告Y1には自己資金がなく,法人設立準備資金等も個人債務を負担して捻出している状態であるとともに,自ら経営に当たる事業が不信のため個人債務の返済をすることができない状態であった。被告Y2は,法人に交付される補助金や事業団からの借入金の中から,被告Y1の上記個人債務の返済を行う方法を採ることを提案し,被告Y1及び被告Y3もこれに同調した。 被告Y1,被告Y2及び被告Y3は,上記方法を実行するために,補助金を最大限交付されるように本件施設の請負代金額を申請し,実際に支出する請負代金額を建設会社との間で減額する方法で差額を生じさせ,この差額をもって,上記被告Y1の個人債務の返済に用いる計画を企てた。 イ被告Y3は,当初,本件施設の建設には敷地面積や予定施設の規模からして約9億円の費用を要すると概算し,その後,積算を重ねた結果,平成7年ころには,被告Y6として工事を受注する場合,請負代金額は8億2000万円くらいが相当と試算した。 平成7年の半ばころには法人の設立の認可が出される見込みが明らかとなり,上記建設費用を基準額として施設建設等を行った場合の補助金支給予定額や事業団からの借入可能額も判明した。その合計額は約9億円余りであったところ,法人設立後,法人に帰属する契約関係で生ずる債務や登記等の事務手続費用,本件施設の設備の整備などの必要費に加えて,被告Y1の個人債務をも支払うためには,本件施設の建設費用を相当額減らす必要があったため,被告Y3は,被告Y1や被告Y で生ずる債務や登記等の事務手続費用,本件施設の設備の整備などの必要費に加えて,被告Y1の個人債務をも支払うためには,本件施設の建設費用を相当額減らす必要があったため,被告Y3は,被告Y1や被告Y2からの強い要望を受け,実際に被告Y6に支払うこととなる請負代金の減額を試みた。被告Y3は,設計を依頼していた設計事務所の担当者Nに施主の予算が足りないなどの説明をして,施設の規模や設備に変更を加えさせるなどし,同年11月ころには,請負代金額を6億8000万円くらいにまで減額することができるとの回答を得,さらに,施設の設備整備費も補助金の申請額より減額することができると試算して,その旨被告Y1及び被告Y2に報告し,了承を得た。 ウ原告が社会福祉法人として設立された後の平成8年1月,本件施設の建設に関し,原告を発注者,被告Y6を請負者とし,両者の間で,請負代金額を8億2030万円とする工事請負契約を締結し(以下「本件第1契約」という。),その旨の契約書を作成した(乙ヘ3。なお,甲4は,原告提出にかかる本件第1契約の契約書写しであるが,工期の記載が異なっており,契約当事者である被告Y6(及びその代表者被告Y5)において成立を争うものであり,真正なものとは認められない。)。 被告Y3は,本件工事の開始後,被告Y1及び被告Y2と企てた計画どおり,請負代金の減額を行うこととし,被告Y6代表者被告Y5に,発注者の希望があること,施設の規模や設備の変更など現場の取り組みによって減額が可能な金額であるなどと説明をし,請負代金を約6億8000万円とする旨の了承を得た。 そして,原告と被告Y6との間で,請負代金額を6億7980万円とする工事請負契約を締結し(以下「本件第2契約」という。),その旨の契約書を作成した(甲3,乙ヘ1の1)。なお,被告Y6にお た。 そして,原告と被告Y6との間で,請負代金額を6億7980万円とする工事請負契約を締結し(以下「本件第2契約」という。),その旨の契約書を作成した(甲3,乙ヘ1の1)。なお,被告Y6においては,原告との間で,上記減額の経緯を明らかにするために工事請負減額契約書を作成した(乙ヘ2)。 エ本件工事は,設計及び監理を担当したNや,被告Y6の工事部長であった現場担当者Oにおいて現場を確認しながら進められたが,施設の目的や利便性向上等のため,本件第2契約の見積内容を変更し,本件第1契約での見積内容の工事が行われた部分もあった。本件工事は,平成9年3月ころ完了したが,このころ,工事部長Oは,被告Y3の指示に基づき,本件第1契約に沿うよう8億2030万円相当の工事内訳明細書を作成し,また,Nは,上記書類に基づいて完了検査に必要な工事内訳明細書や実施設計図を作成するなどした。 (3)本件補助金の支給とその後の調査,監査の結果ア原告は,本件施設の建設等に関わる本件補助金(以下,本件補助金のうち,建設工事等に対して交付される補助金を「建設整備費補助金」と,物品納入等に対して交付される補助金を「設備整備費補助金」という。)の申請に当たって,施設整備費補助金の算出基準となる実績報告建設事業費(以下「建設事業費」という。)を本件第1契約の8億2030万円として,設備整備費補助金の算出基準となる実績報告事業費(以下「設備事業費」という。)を9255万7600円として,それぞれの申請手続等を行った。その結果,平成8年3月中には建設整備費補助金及び設備整備費補助金の交付決定がされ,同年4月及び平成9年5月にそれぞれ補助金の額も確定し,建設整備費補助金計4億6294万2000円,設備整備費補助金計1751万6000円の合計4億8045万8000円 備費補助金の交付決定がされ,同年4月及び平成9年5月にそれぞれ補助金の額も確定し,建設整備費補助金計4億6294万2000円,設備整備費補助金計1751万6000円の合計4億8045万8000円の補助金が原告に支払われた。 イしかし,平成9年11月ころ,一般指導監査に際して本件施設建設等の契約事務に疑念が生じたため,平成10年7月ころから,山梨県が本件施設の建設工事及び物品納入等にかかる契約額,入金状況及び納品状況等の照会を行ったところ,本件施設の建設工事等に関して二重契約のあったことが判明し,平成11年4月ころから,特別指導監査が実施され,事業費の再算定を行うこととなった。その結果,建設事業費が6億7980万円,設備事業費が3614万5121円であると再算定され,建設整備費補助金のうち1360万9000円,設備整備費補助金のうち32万5000円が過払であるとして,平成11年5月24日,原告に対して通知がなされた(本件不正受給の事実)。 ウ上記通知を受けた原告は,山梨県等に対し,少なくとも過払とされた建設整備費補助金1360万9000円を返還したほか,延滞金等として349万9446円を支払った(甲22ないし24)。 (4)被告Y1,被告Y2及び被告Y3の刑事裁判等ア山梨県は,本件不正受給に関し,原告のほか,原告設立に携わった被告Y1,I,被告Y2,被告Y3及び被告Y4につき,補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律違反,詐欺罪及び背任罪の疑いで,告発する方針とした(甲26)。 その後,被告Y1,被告Y2及び被告Y3は,平成13年,補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律違反及び詐欺罪の各事件で起訴され,同年6月26日,有罪判決を受け,上記判決は,同年7月11日に確定した(省略)。 イ認定された事実は,被告Y1 3年,補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律違反及び詐欺罪の各事件で起訴され,同年6月26日,有罪判決を受け,上記判決は,同年7月11日に確定した(省略)。 イ認定された事実は,被告Y1,被告Y2及び被告Y3が,共謀して,原告の業務に関し,本件施設等の新設に際し,新築工事請負代金を水増しし,山梨県から不正に建設整備費補助金を受けようと企て,平成8年(省略)ころ,山梨県の担当者に,本件施設の新築工事請負代金が6億 7980万円であるのに,8億2030万円であると仮装するなどし,水増しした工事代金に基づき算出されることとなる補助金額に対応した虚偽の概算払請求書等を提出するなどし,(省略)山梨県の支出権者に上記概算払支出決定をさせ,(省略)補助金の一部として当時の原告代表者名義の普通預金口座に1億7124万円を振込入金させ,さらに,上記同様に仮装するなどし,平成9年(省略)ころ,虚偽の事業実績報告書等を提出し,(省略)山梨県の決定権者に上記水増しした工事代金額に応じた補助金額確定決定をさせ,(省略)上記口座に補助金の残金2億9170万2000円を振込入金させ,もって,間接補助金3億9680万7000円,山梨県単独補助金6613万5000円の合計4億6294万2000円を詐取したというものである。 ウなお,被告Y2の背任罪については,平成13年3月30日,嫌疑不十分により不起訴処分とされ(乙ロ2),被告Y1らについても背任罪の起訴がされたとの事実は認められない。 (5)被告Y4の役割と本件補助金等の使途等ア原告法人設立後,Bが原告の監事となったため,法人保有の金員の管理や入出金事務に関し,Bの経営する会計事務所職員であった被告Y4が担当することとなった。被告Y4は,Bの指示で原告名義の預金口座の預金通帳3通を預かり保管 告の監事となったため,法人保有の金員の管理や入出金事務に関し,Bの経営する会計事務所職員であった被告Y4が担当することとなった。被告Y4は,Bの指示で原告名義の預金口座の預金通帳3通を預かり保管することとなり,具体的には,主に被告Y3の,時に被告Y1や被告Y2の指示を受けて上記預金口座の入出金業務に当たった。被告Y3は,原告設立準備の段階から事務局の一員として加わり,原告会計の収入(本件補助金及び事業団からの借入金)及び支出(建設工事費の支払等)のほとんどを把握していたところ,収支計算をもとに支払予定の一覧表を作成するなどし,これに基づき被告Y4の入出金業務が行われていた。 イ被告Y4は,出金の際には,原告代表者Iの印をもらうなどしていた ほか,出金先を明らかにしておくために,預金通帳の余白部分に支払先を手書きで書き入れていた(甲21)。 これによれば,原告から被告Y1名義の預金口座へ支払われた金額は,少なくとも,①平成8年3月1日の1000万円,②同月26日の1600万円,③同年7月31日の600万0721円,④同年8月1日の60万0721円,⑤同月2日の11万2032円,⑥同年12月26日の4055万8721円の合計7327万2195円に上る。また,税務署による税務調査の結果,上記のうち①及び②の全額と,③のうち600万円並びに⑥のうち4055万円については,原告から被告Y1への給与に当たるとの指摘を受け,原告に対して重加算税が課せられた(甲19,20)。 (6)原告理事会決議の経緯ア原告は,上記のとおり,平成8年1月16日に設立されたところ,その定款によれば,役員として理事12名,監事2名を置き,理事のうち1名は,理事の互選により理事長となり,理事長のみが法人を代表することとされた(定款4条以下)。また,予算,決 に設立されたところ,その定款によれば,役員として理事12名,監事2名を置き,理事のうち1名は,理事の互選により理事長となり,理事長のみが法人を代表することとされた(定款4条以下)。また,予算,決算,事業計画や定款の変更その他運営に関する規則の制定及び変更等の事項を審議する評議員会を設け,評議員会は25名の評議員をもって組織されることとなっており,その選任は,理事会の同意を得て,理事長がこれを委嘱するものとされていた(定款12条以下)。 理事会は,理事総数の3分の2以上が出席しなければ議事を開き,議決することができず(定款5条5項),決議は原則として理事総数の過半数で決定することとされ(定款5条6項),特別利害関係を有する理事は当該議事の議決に加わることができない(定款5条7項)とされており,また,理事の選任については,理事総数の3分の2以上の同意を得て理事長が委嘱することとされていた(定款7条)。 イFは,平成9年7月22日,原告の理事長に就任し(同年8月29日登記),この当時,被告Y1は原告の理事に就任し,かつ,評議員の地位にあった。 ウ平成11年1月21日開催の第13回理事会では,当時の理事12名(被告Y1及びFのほか,C,Dら10名)のうち,被告Y1及びFを含み8名が出席し,Cを議長として議事が進行した。当該理事会では,出席理事8名の同意により,理事2名の辞任の承認と,新理事2名の就任の承認が決議されたほか,被告Y1が,自らの進退処遇をDに任せる旨の発言があったとして,被告Y1及びFを除く,出席理事6名及び新理事2名によって,被告Y1及びFの辞任を承認する決議がなされた。 なお,当該理事会において,Fは,新理事として別の人物を推薦していたものの,就任承諾書が得られていなかったことから,継続審議扱いとされていた。そし て,被告Y1及びFの辞任を承認する決議がなされた。 なお,当該理事会において,Fは,新理事として別の人物を推薦していたものの,就任承諾書が得られていなかったことから,継続審議扱いとされていた。そして,空席となった理事長については,Dが理事長代理をつとめる旨の議案が出され,残る理事の全員一致で承認がなされた。 エ同年3月26日開催の第14回理事会は,Dが理事長代理として開催したが,Fは理事として出席し,被告Y1は肩書きを暫定理事としたまま,欠席者として扱われた。この際,被告Y1及びFが前回第13回理事会において理事長及び理事を辞任したことが確認され,出席理事7名及び委任状を提出した理事1名により承認決議がなされた。また,この際,被告Y1及びFが原告の理事長印を改印し,原告所有不動産上に無断で抵当権を設定したとの問題が議案として取り上げられ,これにつき,Fが説明をするなどした。そして,Fを除いた出席理事らは,新理事長をDとすることを承認したとされた。 オしかしながら,Fは,上記理事長及び理事の辞任の効果を争ったため,同年5月13日の第15回理事会には,被告Y1及びFを含め,Cら12名が理事として出席したほか,監事2名に加え,山梨県から当時の課 長補佐ほか2名,○○町から課長1名が立会人として出席した上で理事会が開催され,Fは,理事長挨拶を行った。当該理事会では,本件不正受給に関し,社会福祉事業法(平成12年法律第111号による改正・改称前の社会福祉法。以下同じ。)54条2項に基づく是正措置命令が出されたことが事案となり,法人運営の正常化に向けた活動をすることが承認されたほか,第13回理事会における被告Y1及びFの辞任確認決議及び第14回理事会におけるFの辞任確認決議が議事に付され,賛成理事9名によって承認の決議がされた。 また, 向けた活動をすることが承認されたほか,第13回理事会における被告Y1及びFの辞任確認決議及び第14回理事会におけるFの辞任確認決議が議事に付され,賛成理事9名によって承認の決議がされた。 また,上記是正措置命令に関し,Fが報告を行い,法人運営の正常化に向けた活動をすることも承認された。 Fは,上記理事会以降も辞任の意思がないとして辞任決議の効力を争うなどして理事会は混乱し,本件不正受給に関する是正措置命令についても具体的方策が採られなかったため,原告の当時の事務局長Eは,山梨県と協議をし,現理事全員が任期満了により退任し,その後,社会福祉事業法あるいは社会福祉法に基づく仮理事選任の手続を採るよう指導がなされた。 カ平成12年1月16日,理事長の立場にあったとされるDをはじめ,その他の理事ら全員が任期満了により退任し,その後,同年9月21日,山梨県知事は,社会福祉法45条で読み替えて準用する民法(平成16年法律第147号による改正前のもの。)56条の規定により,D,C及びGの3名を原告の仮理事に選任し,同日その旨通知した。 Dは,ほか2名との互選により仮の理事長に就任し,同月25日,第20回理事会を開催し,同理事会において,Dら3名を含む合計12名の新理事が選任された。 さらに,その後,同年12月28日,Dが代表して第21回理事会を開催し,出席した理事9名全員の賛成により,同理事会においてDが理 事長に就任することが承認された(登記は平成13年2月26日付け)ほか,新たに評議員を選出する旨が決議された。 キなお,被告Y1及びFが理事等に在任していた平成10年2月ころから4月ころ,原告は,経営が厳しく資金繰りに窮していた上,被告Y1にも個人債務が多数残存し,その返済に窮する状態であった。そこで,被告Y1は,Dに依頼し,その知人で 在任していた平成10年2月ころから4月ころ,原告は,経営が厳しく資金繰りに窮していた上,被告Y1にも個人債務が多数残存し,その返済に窮する状態であった。そこで,被告Y1は,Dに依頼し,その知人であるHから5000万円以上もの融資を受けるなどした。しかし,被告Y1は,同年8月ころにも,再度Dに金策を依頼することとなったため,被告Y1の金員の使途やFの保有する理事長印の不正利用を疑ったDは,自ら原告の収支会計に携わるようになり,Fから理事長印を預かるなどしたことがあった。 DとFとの間では,このころから,被告Y1及びFが理事長や理事等の役職を離れる旨の話が出るようになっており,平成11年1月ころには,被告Y1が,Dに対し,進退処遇を任せる旨の発言をしたこともあった。 クところで,Dは,平成12年12月28日に理事長に就任していたものの,平成13年1月10日,(省略:刑事裁判で執行猶予付き懲役刑)の有罪判決を受け,上記判決は同月25日確定した。これにより,Dは同日をもって理事の資格を失った(社会福祉法36条4項3号)が,これに気づかず理事長職を継続し,その後の同年11月28日開催の第27回理事会を召集し,同理事会の議事進行を行うなどした。上記理事会において,Dは,理事長,理事及び評議員を辞退し,次期理事長にCを推薦する旨発言し,出席した9名(D及びCを含む。)の理事によりCを理事長として選出する旨が承認された。また,その後の議案として,本年開催の理事会と評議会決議の成立の再確認をする旨が上記出席理事9名が賛成し,承認された。 ケ平成14年6月20日開催の第29回理事会には,Dを除いても,7 名の理事が実際に出席し,委任状により2名の理事が出席した。上記理事会では,事業報告や定款変更について決議が行われたほか,被告Y1に対する原 月20日開催の第29回理事会には,Dを除いても,7 名の理事が実際に出席し,委任状により2名の理事が出席した。上記理事会では,事業報告や定款変更について決議が行われたほか,被告Y1に対する原告の対処として貸付の処理を行い,貸付金として返済を求める方針とし,被告Y1のほか,被告Y2及び被告Y3に対しても,被告Y1に対する原告の貸付金の返還請求訴訟を行う旨の決議がなされた(Dを除いても賛成理事は8名)。 また,同日開催の原告評議員会においても,15名の評議員が出席し,委任状出席による評議員が4名であったところ,評議員会の成立が宣言され,理事会と同様,被告Y1らに3名に対する貸付金返還請求訴訟の提訴をすることが賛成者14名により承認された。 コ原告は,平成14年11月12日,被告Y1ら6名に対し,本件不正受給に関わる共同不法行為等を主張して損害賠償請求事件(本件訴訟)を提起した。 上記の認定事実に基づき,以下,各争点につき検討する。 (1)争点(1)(本件訴訟は,訴訟代理権を欠く者が提起したものか,社会福祉法人の訴訟提起の法定の要件を欠く瑕疵あるもので不適法といえるか)についてア被告Y1は,本案前の主張として,本件訴訟は訴訟代理権を欠く者が提起したか,社会福祉法人の訴訟提起の法定の要件を欠く不適法な訴えであると主張するが,これは,要するに,被告Y1及びFの理事・理事長等辞任が無効であることをはじめ,山梨県知事による仮理事選任が無効であり,その後現在に至るまで原告理事会における理事長の選任決議等が無効または不存在であり,本件訴訟を提起した当時の理事長Cも権利を有しない者である旨いうものと解される。 イそこで検討するに,この点,被告Y1及びFの辞任の効力については,同人らの辞任の有無やその確認決議の効力が問題とされた第13回な した当時の理事長Cも権利を有しない者である旨いうものと解される。 イそこで検討するに,この点,被告Y1及びFの辞任の効力については,同人らの辞任の有無やその確認決議の効力が問題とされた第13回ない し第15回理事会の議事内容や経緯等にかんがみると,同人らが,自ら理事や理事長,評議員の地位を辞任したと認めるのは困難というほかなく,上記辞任に関する確認決議も有効な効力を有するものとは考え難い(F名義の辞任届(乙イ18)は,真正に成立した文書とは認められない。)。 しかしながら,原告理事会においては,その後,社会福祉事業法あるいは社会福祉法上の一般的監督権限を有する山梨県知事によって,平成12年9月1日,Dをはじめ3名の仮理事が選任された。本件訴訟において当該仮理事選任の効果を問題とすることは相当でないといわざるを得ないが,手続の経緯に限ってみても,上記のとおり,原告理事会では,平成11年ころからの被告Y1及びFの理事等辞任をめぐる混乱があったこと,本件不正受給に関する山梨県からの調査や監査が行われ,是正措置命令が出されていた状況などに照らせば,被告Y1及びFを含め,任期が満了していた当時の理事全員を退任させた上,社会福祉法45条が準用する民法56条に基づき行われた所轄庁である山梨県知事による仮理事選任手続の経緯に何らかの問題があったとは認められない。 その後の手続をみても,仮理事らの互選により仮の理事長にDが選出され,Dにおいて,平成12年9月25日,第20回理事会を開催し,Dら3名の仮理事を含め定款所定の12名の新理事が就任する決議がされた上,同年12月28日開催の第21回理事会では上記理事らによる互選でDを理事長に選出することが承認されたことが認められ,上記手続に法令や定款の趣旨に反する違法があるともみられない。 ウ被告Y れた上,同年12月28日開催の第21回理事会では上記理事らによる互選でDを理事長に選出することが承認されたことが認められ,上記手続に法令や定款の趣旨に反する違法があるともみられない。 ウ被告Y1は,仮理事選任後の原告理事会においてなされた理事長の選任決議はすべて無効であり,理事長Cには代表権がなく,また,本件訴訟提起に関する原告理事会の正当な決議がなされたこともないから,本件訴訟提起自体が問題であると主張するが,そもそも理事を退任した被 告Y1は原告理事会との関係では第三者にすぎず,上記のような理事会決議の不存在や無効を主張すべき法律上の利益が認められるか否かが問題となり得るし,仮に本件においてそのような法律上の利益が認められるとしても,上記認定事実に照らせば,上記被告Y1の主張を認めるに足りる理事会決議の不存在や無効事由にかかる的確な証拠は認められないというほかない。 エなお,Dが役員欠格事由に該当していながら原告の理事長に就任し続け,その間の平成13年11月28日に第27回理事会を召集し,開催した事実が認められるところ,上記手続には看過し難い違法があったといえる。 しかし,上記認定事実によれば,当該理事会では,Dを除外しても,理事会開催に必要な8名の理事が出席して議事を進行し,Cを除外しても理事総数の過半数である7名の賛成により,新たな理事長としてCを選任している。役員欠格者であるDが開催された理事会に瑕疵があったとしても,その瑕疵が重大で,理事会が不存在であったともいうべき事情があるとは認められない。また,その後の第28回理事会において,上記第27回理事会決議事項が,再度必要数の賛成を得て承認決議されている。 これらの状況に照らせば,原告理事会をめぐっては,一時,役員欠格者が理事及び理事長を務めるなど理事会開催の手 事会において,上記第27回理事会決議事項が,再度必要数の賛成を得て承認決議されている。 これらの状況に照らせば,原告理事会をめぐっては,一時,役員欠格者が理事及び理事長を務めるなど理事会開催の手続に違法があった経緯も認められるものの,事後的にせよ,適正な手続により理事会が開催され,適正な決議を経たことが認められるのであるから,Cが理事長として選任された決議に何ら問題があるとは認められない。 オ本件訴訟提起に至る経緯については,第29回理事会において,被告Y1に対する原告としての対処として,貸付の処理を行いその返済を求める方針とし,原告から,被告Y1,被告Y2及び被告Y3に対し,被 告Y1に対する貸付金返還訴訟を提起する旨決議された(甲12)ところ,上記決議内容が,本件不正受給をめぐり,原告が被告Y1に対して有していると考えられる金銭債権を行使する趣旨であることは明らかである。本件訴訟が損害賠償請求であることや,被告が上記3名のみに留まらなかったとしても,それは,原告が被告Y1に対して有する債権の性質をどのように解するかの相違にすぎず,被告Y1らに対する金員請求を行うという意味で決議の内容に反するものとはいえない。 こうしてみると,本件訴訟提起が法定の要件を欠いた不適法なものであるとは認められないし,そもそも,被告Y1において,上記のような不適法を主張し得る法律上の利益があるといえるか否かについても問題がある。 カいずれにしても,上記のとおり,本件訴訟提起の不適法を問題とする被告Y1の主張は何ら理由がないといわざるを得ない。 (2)争点(2)(被告Y1,被告Y2及び被告Y3は原告の軽費老人ホームの建設及び施設整備工事に関し,共謀の上,山梨県から補助金を不正に受給し私的に流用したか(共同不法行為の成否))についてア本件不正 争点(2)(被告Y1,被告Y2及び被告Y3は原告の軽費老人ホームの建設及び施設整備工事に関し,共謀の上,山梨県から補助金を不正に受給し私的に流用したか(共同不法行為の成否))についてア本件不正受給の事実については,当事者に争いはないが,本件では,被告Y1,被告Y2及び被告Y3が,本件補助金の不正受給にとどまらず,共同して本件補助金を私的に流用したといえるか,上記被告3名の行為が共同不法行為に当たるかが問題となる。 イこの点,本件不正受給の経緯やその目的及び使途は,上記認定事実のとおりと認められるところ,具体的な金額はおくとしても,上記3名は,法人設立以前から,法人設立後,原告会計に帰属することとなる補助金や事業団からの借入金の一部を,被告Y1の個人債務の返済に充てようと企て,実際にもその返済に用いたことが明らかである。被告Y1,被告Y2及び被告Y3の主張するところは,設立前段階の法人は,法人名 義での借入れができないことから,被告Y1が設立準備等のために要する費用を法人のために個人名義で借入れしたものにすぎず,被告Y1の個人債務の返済に本件補助金や上記借入金を充てても,私的流用には当たらないというものである。 ウ確かに,設立前の法人は,権利主体たり得ず,契約の効果帰属主体とはなり得ないものの,法人設立過程には種々の契約関係が生じ得るのであり,法人設立前の段階においても,設立後の法人に対する契約効果の帰属を前提とする類型のものがあることは否定し難い。本件のように,法人の設立計画をはじめ,法人設立後に予定される施設建設地の確保,施設の設計や建設計画など,法人のために行うことを目的とし,法人が設立された後に,法人との契約締結を行うことを前提として,設立前から準備が進められる必要のある契約関係が多数みられるところ,これらに関し の設計や建設計画など,法人のために行うことを目的とし,法人が設立された後に,法人との契約締結を行うことを前提として,設立前から準備が進められる必要のある契約関係が多数みられるところ,これらに関し,法人の設立後に法人を主体として契約を締結し,法人においてその履行債務を負担することになるとしても,直ちに法人の利益に反するとは認められない。 エしかしながら,上記被告3名は,相互に意思を通じて,本件不正受給によって得られた金員を用いて被告Y1の個人債務の返済に充てることを企て,現に実行したものである。 これに関し,被告Y1が法人設立前に負担した個人債務は1億2000万円に上っており,このうち,平成15年10月にJ銀行から設立準備資金等として借り入れた金員のうち719万1483円については被告Y1自身が個人の生活費や貸付金利息返還等に用いた旨認めている(乙イ11)し,被告Y1の刑事事件における警察官面前調書によれば,平成6年8月22日に法人の設立準備資金の保管用口座をつくるまでの間に,個人名義の口座であることを奇貨として,2851万5852円を個人として使用したというのである(甲30)。 また,5500万円については,法人に寄附(贈与)するための被告Y1所有地の仮差押えを解除する費用であったが,そもそも上記仮差押えの原因となった債務は,被告Y1が,原告設立計画とは無関係に進めていた老人施設や個人事業に関してKに対して負担していた,きわめて個人的な借財といわざるを得ない。 オ被告Y1は,上記仮差押えが解除され,原告が法人として設立された後は,被告Y1所有地を原告に贈与しているほか,個人名義で負担した借入金の大部分を法人設立に向けた準備資金として使ったことは認められる。 しかし,原告は,社会福祉の実現を目的として存在することが予定され 被告Y1所有地を原告に贈与しているほか,個人名義で負担した借入金の大部分を法人設立に向けた準備資金として使ったことは認められる。 しかし,原告は,社会福祉の実現を目的として存在することが予定される社会福祉法人であるところ,その設立目的は制限され,設立に必要とされる認可の要件は,利益追及を目的とする法人とは異なるものである。また,その設立における資力の確保においては,寄附を前提とするものであり,設立に関わった者が不動産や資金など,いわゆる私財を投入したとしても,法人の本質に照らし,その見返りや対価を設立後の法人から当然に得ることを期待することは相当でなく,特段の事情がない限り認められないものというべきである。 被告Y1,被告Y2及び被告Y3は,社会福祉法人が上記のような趣旨の法人であることを承知しつつ,被告Y1が個人で借り入れた金員を資金としながら認可が得られるよう手続を進めたが,原告設立段階において,上記個人債務が問題とされて被告Y1の理事長就任が見送られた経緯もあった。原告に交付された補助金や事業団からの借入金は,設立後の法人の必要費用を支援する目的で交付あるいは貸し付けされるものであり,設立の準備資金や寄附者の負債を返済することを目的として支給されるものでないことは明らかであるところ,本件不正受給に係る刑事事件の犯行態様をみても,上記被告3名が,原告会計に帰属すること となる補助金等を被告Y1の個人債務の返済に充てることが,本件補助金等の目的外利用に該当し,社会福祉法人たる原告の利益に反するものとなり得ることを認識していたことも明らかというほかない。 そうしてみると,本件不正受給によって,原告会計に帰属することとなった補助金等の一部を,被告Y1の個人債務への返済に充てることは,特段の事情がない限り,それ自体が社会福祉法人の らかというほかない。 そうしてみると,本件不正受給によって,原告会計に帰属することとなった補助金等の一部を,被告Y1の個人債務への返済に充てることは,特段の事情がない限り,それ自体が社会福祉法人の目的に反する行為と認められるのであって,他者の利益を図る一方,原告の利益に反し,原告に損害を生じさせるものというべきである。 上記認定事実から認められる本件不正受給の経緯や補助金等の使途に照らせば,水増しして得た補助金等を被告Y1の個人債務の返済に充てる行為は,原告の利益に反し,原告帰属の金員を私的あるいは不正に流用したものというべきであるし,上記個人債務の返済を正当化し得るような特段の事情があるとも認められない(なお,被告Y1の個人債務返済に充てられた金員が原告のいかなる手続を経て支出されたかは不明であるが,下記争点(5)で検討するとおり,原告理事会において,被告Y1に対する貸付金として処理され,貸金返還請求訴訟を提起する旨の議事が持たれたことや,税務上,被告Y1に対する「給与」として税が加算された経緯等があったことに照らせば,社会福祉法人たる原告の利益とは整合しない支出であったことが明らかである。)。 したがって,被告Y1,被告Y2及び被告Y3は,上記私的あるいは不正な流用に関し,原告に対して共同不法行為責任を負うというべきである。 被告Y1,被告Y2及び被告Y3が行った上記行為により,原告にいかなる損害を生じさせたかについては,争点(5)において検討する。 (3)争点(3)(被告Y4は,上記私的流用に加担したか(共同不法行為の成否))について ア被告Y4が原告の法人として設立された後,Bの指示を受けて原告名義の預金口座の管理を担当し,入出金業務を担ったことは明らかである。 しかしながら,被告Y4は,Bの経営する会計事務所の一事務 ア被告Y4が原告の法人として設立された後,Bの指示を受けて原告名義の預金口座の管理を担当し,入出金業務を担ったことは明らかである。 しかしながら,被告Y4は,Bの経営する会計事務所の一事務職員にすぎず,上記業務も被告Y3らから個別に指示された一覧表に基づき行ったものと認められ,この点,被告Y4及び被告Y3ら関係者の供述内容はほぼ一致している。 さらに検討しても,被告Y4において,自ら認識して,被告Y1らの私的,不正流用に加担したことを認めるに足りる的確な証拠はない。 イしたがって,被告Y4に私的,不正流用への加担は認められず,不法行為責任を問うことはできないというほかない。 (4)争点(4)(被告Y5は,上記私的流用に加担したか(共同不法行為の成否)。被告Y5の加担が認められる場合,あるいは,被告Y3の共謀が認められる場合,被告Y6は使用者責任を負うか)についてア上記認定事実によれば,被告Y5は,本件工事の開始後,発注者である原告側である被告Y1らの要望に応じるためであるとして,本件工事に係る請負契約を担当していた被告Y3から請負代金額の減額の了承を求められ,本件工事開始後,請負代金額に減額に合意したというのにすぎず,これらの事実は,契約書の存在や減額契約書等の存在からも明らかである。被告Y5が,本件不正受給や私的流用に加担したとの事実は認められない。 イ一方,被告Y6の役員であった被告Y3が本件不正受給や私的流用に深く関わったことは明らかであり,被告Y3が個人として不法行為責任を負うべきことは既に述べたとおりである。 確かに,被告Y3は,被告Y6の職務執行の中で原告の設立業務に携わり,上記各不法行為に至ったことが認められる。 しかしながら,被告Y3は,原告設立前後から,給与などは支給され ていなかったとはいうもの ,被告Y3は,被告Y6の職務執行の中で原告の設立業務に携わり,上記各不法行為に至ったことが認められる。 しかしながら,被告Y3は,原告設立前後から,給与などは支給され ていなかったとはいうものの,原告の事務局の一員として行動していたのであり,その行為は,被告Y6の利益を度外視し,もっぱら設立前の原告あるいは被告Y1らの利益を図ろうとの目的のもと行われたものであり,故意に基づく不法行為というべきものである。上記行為の内容に照らしてみれば,もはや被告Y6における職務執行の範囲内のものとは認め難い。 ウ以上のとおりであって,被告Y6及び被告Y5には,本件不正受給及び私的流用に関し,不法行為に加担したとの事実は認められない。 (5)争点(5)(原告の被った損害)についてア上記検討の結果,原告に生じた損害は以下の範囲をもって相当と認める。 (ア)被告Y1個人債務への返済分7255万円既に述べたとおり,原告会計に帰属した金員の中から,被告Y1個人債務の返済に充てられた金員は,私的,不正に流用された疑いのあるものというべきところ,少なくともKに対する和解金債務5500万円と,J銀行から借入したうち,被告Y1が自身の刑事事件で私的な使用を認めていた2851万5189円,あるいは被告Y1が本件訴訟の中で私的な使用を認めている719万1483円については,私的,不正流用された疑いがきわめて強いものと認めることができる。 他方,原告会計から,被告Y1の個人名義の預金口座に支払われたことが明らかな金員は,合計7327万2195円であるが,振込手数料や一部の支出を除いたものとみられる7255万円については,税務手続の中で,被告Y1に対する給与として重加算税が課せられたことも認められる。 原告において,いかなる決議を経て,被告Y1に対する支払が行 一部の支出を除いたものとみられる7255万円については,税務手続の中で,被告Y1に対する給与として重加算税が課せられたことも認められる。 原告において,いかなる決議を経て,被告Y1に対する支払が行われたのかは明らかでなく,不明な点が多いものの,実際に,被告Y1 の個人名義の預金口座に支払われたうち,少なくとも被告Y1に対する給与として扱われた上記7255万円については,もっぱら被告Y1個人の利益を図るために用いられたものと認めるのが相当であり,当該部分は,私的,不正に流用されたことが明らかというべきである。 なお,被告Y2及び被告Y3は,被告Y1の個人債務の返済に充てた請負代金額の減額分は,被告Y6の負担のもと,被告Y2に使途を一任されたものであって,原告に帰属すべき金員ではなかった旨主張するようであるが,上記認定事実に照らし,そのような主張に理由がないのは明らかである。 よって,上記に関し,原告に生じた損害は,7255万円をもって相当と認める。 (イ)山梨県に対する延滞金等349万9446円上記延滞金等が,被告Y1,被告Y2及び被告Y3の不法な本件不正受給行為によって発生したものであることは明らかである。 なお,被告Y1は,運用利益を控除すべきと主張するが,本件不正受給によっていかなる運用利益が生じ得たかまったく証拠がなく,上記主張を認めることはできない。 (ウ)上記損害額の合計は,7604万9446円となる。 イ上記のとおり,被告Y1,被告Y2及び被告Y3には,本件補助金の使用目的や具体的な使用に当たって,当初から意思を通じていたことが認められ,共同して故意に基づく不法行為を行った結果,原告に上記損害を負わせた事実が認められる。 したがって,被告Y1,被告Y2及び被告Y3は,原告に対し,連帯して上記損害額を支払う義務を たことが認められ,共同して故意に基づく不法行為を行った結果,原告に上記損害を負わせた事実が認められる。 したがって,被告Y1,被告Y2及び被告Y3は,原告に対し,連帯して上記損害額を支払う義務を負う。 以上の次第で,原告の請求は,被告Y1,被告Y2及び被告Y3に対し,金7604万9446円及びこれに対する平成14年11月24日から支払済み まで年5分の割合遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからその限度で認容し,その余は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 甲府地方裁判所民事部裁判長裁判官新堀亮一裁判官岩井一真裁判官青木美佳

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