令和6年2月22日判決言渡 令和4年(ネ)第10121号特許権移転登録手続請求控訴事件(原審・東京地方裁判所令和元年(ワ)第31684号) 口頭弁論終結日令和5年11月22日判決 控訴人株式会社MTG 同訴訟代理人弁護士櫻林正己 同補佐人弁理士小林徳夫 被控訴人翰沃生電科技股份有限公司 同訴訟代理人弁護士椙山敬士 片山史英 同補佐人弁理士牛久健司 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は、控訴人の負担とする。 事実及び理由 用語の略称及び略称の意味は、本判決で付するもののほかは、原判決に従う。 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人の請求を棄却する。 第2 事案の概要 1 事案の要旨 本件は、被控訴人(1審原告)が、発明の名称を「筋肉電気刺激装置」とする特許に係る特許権を有する控訴人(1審被告)に対し、同特許権に係る発明の特許を受ける権利を有する者は被控訴人であるとして、特許法74条1項、123条1項6号に基づき、同特許権の移転登録手続を請求する事案である。原判決は、上記請求を認容したところ、控訴人は、これを不服として、本件控訴をした。 2 前提事実本件の前提事実(当事者間に争いがない事実並びに証拠(以下、書証番号は特記しない限り る。 原判決は、上記請求を認容したところ、控訴人は、これを不服として、本件控訴 をした。 2 前提事実本件の前提事実(当事者間に争いがない事実並びに証拠(以下、書証番号は特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨から認められる事実)は、以下のとおり訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の第2の2記載のとおりであるから、こ れを引用する。 (1) 原判決2頁18行目の「その後、」の後に「控訴人が出願人である特願2017―501829(以下「本件原出願」という。)を原出願とする分割出願に係る」を加える。 (2) 原判決2頁19行目の「明細書を」を「明細書及び図面を併せて」と改める。 3 争点(1) 本件発明の特徴的部分はどこか(争点1)(2) 被控訴人が本件発明の特許を受ける権利を有する者であるか否か(争点2)(3) 控訴人が本件発明の特許を受ける権利を共有する者であるか否か(争点3)(4) 本件原出願の特許出願人ではない被控訴人が、本件原出願の分割出願である 本件特許に係る本件特許権の移転請求を行うことができるか否か(争点4) 4 争点に関する当事者の主張(1) 争点1(本件発明の特徴的部分はどこか)について原判決6頁1行目の「技術的な本質は、」の後に「電極から延びるリード部と制御基板との間の」を加えるほか、原判決の「事実及び理由」の第2の4(1)記載のとお りであるから、これを引用する。 (2) 争点2(被控訴人が本件発明の特許を受ける権利を有する者であるか否か)及び争点3(控訴人が本件発明の特許を受ける権利を共有する者であるか否か)について(被控訴人の主張)以下のア~サによると、被控訴人代表者のX1が発明者ではあることは明らかで あり、また 及び争点3(控訴人が本件発明の特許を受ける権利を共有する者であるか否か)について(被控訴人の主張)以下のア~サによると、被控訴人代表者のX1が発明者ではあることは明らかで あり、また、控訴人の従業員等は共同発明者ではないから、控訴人の主張は理由がない。 ア被控訴人は、平成22年1月、2枚電極(2枚羽根)の身体貼着型コードレスEMS(Pennypad)を開発し、これにかかる実用新案登録第3158303号を出願した(同年3月3日登録)。 イ被控訴人は、平成24年7月頃、横通電の4枚電極EMSであるSPOPADを開発した。SPOPADではその構造上、制御基板と電極を同一平面上に設けることが困難であり、制御基板と電極の間に段差が生じていたが、この段差の間に金属弾片を設けることで制御基板と電極を導通させることとした。 この時点で、構成要件C及びDに現れる「横通電」の構成も含め、本件発明の構 成要件A~Fまでを被控訴人が開発した。 ウ平成25年7月頃までに、被控訴人が開発した横通電の4枚電極EMSであるSPOPADをドイツのBeurer社に提供し、同社がこれを「EM20」として一般向けに販売した。 この時点で、構成要件C及びDに現れる「横通電」の構成も含め、本件発明の構 成要件A~Fが公知公用となった。 エ被控訴人は、平成26年4月、リード部と制御基板との接続について、弾片による接続とは異なる、ねじ止めによる接続であって、リード部がカバーの内壁に沿って折り曲げられ、さらに制御基板と平行に折り曲げられ底板の突起にねじ止めされ固定される構造(いわゆるZ型構造)を発明した。 SPOPADの販売開始後、金属弾片を介した導通では、数は多くないものの、 ユーザが使用を続けているうちに電気的な接触 にねじ止めされ固定される構造(いわゆるZ型構造)を発明した。 SPOPADの販売開始後、金属弾片を介した導通では、数は多くないものの、 ユーザが使用を続けているうちに電気的な接触不良が起こり得ることが被控訴人に判明したところ、上記Z型構造の採用により、前述の段差の問題を解決しながら、電気的接触の問題を解決し、さらに金属弾片を用いるよりも安価な材料を用いる方法が実現した。 被控訴人は、この機構を、新たに設計したEP-200という製品(以下「EP -200」という。)に適用し、その3Dデータを作成した(甲44の1及び2、甲45、甲63、原審におけるX1供述)。この時点で、本件発明の構成要件G~Jのもととなる基本構成(いわゆるZ型構造)は完成していた。 オ ●(省略)●(甲3、10、11、13、63、原審におけるX1供述)。 カ ●(省略)●(甲3、4、10、11)。 キ ●(省略)●ク同月15日、被控訴人代表者のX1は、リード部をケース内壁に沿わせて折り曲げ、ケースと制御基板の間にねじ止めで接続する構造(いわゆるZ型構造)を被控訴人関係者のX2に指示し、3Dデータを作成させた(甲32、34、63)。 このようにして、EP-200で採用したZ型構造を●●●●●適用することに より、リード部と制御基板との段差の解消を図りながら、電気的接触の問題を解決し、さらに金属弾片を用いるよりも安価な材料を用いる方法を実現した。この時点で、構成要件G、H、Jを含め、本件発明は完成した。 ●(省略)●ケ ●(省略)● コ ●(省略)●サ以上によると、被控訴人は、委託生産における製品の設計や開発を行うODM企業であって、開発及び製造を業務としている会社であるのに対し、控訴人は、製品製造のための自社 コ ●(省略)●サ以上によると、被控訴人は、委託生産における製品の設計や開発を行うODM企業であって、開発及び製造を業務としている会社であるのに対し、控訴人は、製品製造のための自社工場を持たないファブレスメーカーであって、工場を持たず、主として外観デザインとブランド戦略の立案等を業務の中心としている会社である こと、身体貼着型コードレスEMSに関し、被控訴人は、開発と製造の長い経験を 有するのに対し、控訴人は、●(省略)●たこと、●(省略)●遅くとも同月19日以前(15日)に本件発明は完成したものであって、●(省略)●、控訴人は、本件発明を控訴人が行ったということを証明するための設計図面等の客観的証拠を一切提出していないことからすると、本件発明の発明者はX1であって、控訴人の従業員等が本件特許に係る発明者又は共同発明者ではない。 (控訴人の主張)以下のア~カの各事実によると、被控訴人の従業員等が発明者ではないことは明らかであるほか、仮に被控訴人の従業員等が発明者であったとしても、控訴人の従業員等も共同発明者といえるから、被控訴人の本件特許権の移転登録手続の請求は理由がない。 ア控訴人による先行した製品開発と課題及び解決手段の認識控訴人は、平成23年頃からEMSの研究開発をスタートし、平成26年にEMSを使った商品である「EMSBody」を発売した。控訴人は、「EMSBody」の開発において、平成25年9月に控訴人社内において商品の設計に関する会議(設計審査会)を行い、電気の接触抵抗を小さくするための設計を検討し、実 際に接触圧を高めることによって接触抵抗を小さくする設計とした。すなわち、控訴人は●(省略)●、EMSにおける課題と解決手段を認識していた。 イ ●●●●●●● くするための設計を検討し、実 際に接触圧を高めることによって接触抵抗を小さくする設計とした。すなわち、控訴人は●(省略)●、EMSにおける課題と解決手段を認識していた。 イ ●●●●●●●当初の流れ●(省略)●ウ ●(省略)● エ ●(省略)●オ ●(省略)●カ ●(省略)●発明の完成●(省略)●(3) 争点4(本件原出願の特許出願人ではない被控訴人が、本件原出願の分割出 願である本件特許に係る本件特許権の移転請求を行うことができるか否か)につい て(控訴人の主張)本件特許権の出願経過によると、本件特許出願が本件原出願からの分割出願である以上、本件原出願の出願人である控訴人以外の者は、本件原出願から分割出願をすることはできない。 原出願手続による発明と分割出願手続による発明について特許を受ける権利を有する者が異なってしまうという事態はそもそも想定されていないから、本件原出願の出願人ではない被控訴人に本件特許権の移転請求を認める余地はない。 (被控訴人の主張)特許法74条1項の移転請求の要件は、「当該特許に係る発明について特許を受 ける権利を有する者(特許法74条1項)」であること及び「その特許がその発明について特許を受ける権利を有しない者の特許出願に対してされたとき(123条1項6号)」であることであり、特許を受ける権利を有する者とは当該特許発明の真の発明者であり、特許を受ける権利を有しない者とは冒認出願者であって、真の発明者は、冒認出願者に対し、冒認出願者の出願に係る特許の移転請求を求めることが できるから、控訴人が主張するような特許の出願経過は、移転請求の消極的要件とはならない。 第3 当裁判所の判断 1 本件明細書の記載以下のとおり訂正す る特許の移転請求を求めることが できるから、控訴人が主張するような特許の出願経過は、移転請求の消極的要件とはならない。 第3 当裁判所の判断 1 本件明細書の記載以下のとおり訂正するほか、原判決第3の1記載のとおりであるからこれを引用 する。 (1) 原判決10頁19行目の「(甲1)」を「(下記記載中に引用する図4(b)については別紙のとおりである。甲1)」と改める。 (2) 原判決15頁23行目末尾の行途中における改行を取り消す。 (3) 原判決26頁18行目の「愛印象」を「印象」と改める。 (4) 原判決28頁17行目末尾に行を改めて以下のとおり加える。 「【0296】図30に示すように、リード部としての第1リード部38は、第1制御部側接続部群380と、第1端子接続部383と、第1電極接続部群384とを有する。第1制御部側接続部群380は、第1端子群45に属する複数の端子(第1端子451、第2端子452)に接続される複数の制御部側接続部(第1制御部側接続部3 81、第2制御部側接続部382)からなる。第1制御部側接続部381、第2制御部側接続部382は、それぞれ本体部10側に突出している。そして、実施例1における図4(b)に示したのと同様に、第1制御部側接続部381及び第2制御部側接続部382は、それぞれ第1ケース111の内壁に沿って厚さ方向に折り曲げられるとともに、その先端が制御基板41と平行に折り曲げられる。そして、第 1制御部側接続部381及び第2制御部側接続部382の先端が上述の如く、ボス116と制御基板41との間に挟み込まれている。」 2 認定事実以下のとおり訂正し、当審において補足して判断するほかは、原判決第3の2記載のとおりであるからこれを引用する。 の如く、ボス116と制御基板41との間に挟み込まれている。」 2 認定事実以下のとおり訂正し、当審において補足して判断するほかは、原判決第3の2記載のとおりであるからこれを引用する。 (1) 原判決の訂正ア原判決28頁24行目及び同29頁9行目の各「バウアー社」をいずれも「Beurer社」に改める。 イ原判決29頁9行目の「開始された」を「開始され」に改める。 ウ原判決29頁10行目の「EMS-PAD」を「EMS-Pad」に改める。 エ原判決29頁10行目の「クルールラブ株式会社」を「クルールラボ株式会社」に改める。 オ原判決29頁12行目の「2組の2枚1組の電極」を「2枚1組の電極」に改め、同頁13行目の「左右に配置して」を「左右に1組ずつ配置して」に改める。 カ原判決29頁19行目から20行目にかけての「原告に判明した」を「被控 訴人において判明した」に改める。 キ原判決30頁7行目から8行目にかけての「●(省略)●と改める。 ク原判決31頁16行目の「以下の記載」の前に「中国語で」を加える。 ケ原判決32頁2行目の「電極電動部」を「電極導電部」に改める。 コ原判決32頁9行目の末尾に行を改めて「(9) X2は、平成26年11月15日、X1に対し、「新しい920の構造図面を添付いたします。どうぞご確認く ださい。」という内容の文章と添付ファイルとして以下の(10)に記載した内容のEMSの3Dデータファイルをメールで送信した(甲32、34)。 サ原判決32頁10行目の●(省略)●と改める。 シ原判決32頁19行目の「打合わせ」を「打合せ」に改める。 ス原判決32頁26行目の「甲33」を「甲31、33」と改める。 セ原判決33頁 32頁10行目の●(省略)●と改める。 シ原判決32頁19行目の「打合わせ」を「打合せ」に改める。 ス原判決32頁26行目の「甲33」を「甲31、33」と改める。 セ原判決33頁1行目の「(10)」を「(11)」に改める。 ソ原判決33頁3行目から4行目にかけての「その国内移行出願(特願2017-501829。以下「本件原出願」という。)」を「その国内移行出願である本件原出願」と改める。 (2) 当審における補足的判断 ア控訴人は、被控訴人が●●●●●●●●●横通電の製品(SPOPAD)を製造販売していた事実につき、被控訴人が掲げる裏付けとなる証拠は信用性を欠くから、当該事実は認定できない旨の主張をする。しかしながら、Beurer社向けのSPOPAD(EM20 Sixpack)が横通電であるといえること(甲50、54~57)、本件原出願は、構成要件C、Dに相当する構成につき、引用文 献に記載された発明及び周知技術に基づき、当業者であれば容易に想到し得たとして、拒絶理由通知を受けており(甲35)、その後この点について異なる判断がされた事実もうかがわれないことに照らすと、被控訴人が●●●●●●●●●横通電の製品を製造販売していた旨のX1の供述は信用できる。控訴人は、被控訴人の提出した証拠の評価について、るる主張するが、これらを考慮しても上記認定を左右す るものとはいえない。 ●(省略)● 3 争点1(本件発明の特徴的部分はどこか)について以下のとおり訂正するほか、原判決第3の3記載のとおりであるからこれを引用する。 (1) 原判決34頁2行目の「本件特許は、」から同頁4行目末尾までを「本件特許 は、訂正して引用する原判決第3の2(11)の経緯で出願されており、本件明細書の りであるからこれを引用する。 (1) 原判決34頁2行目の「本件特許は、」から同頁4行目末尾までを「本件特許 は、訂正して引用する原判決第3の2(11)の経緯で出願されており、本件明細書の記載(【0296】、図4(b)など)によると、構成要件G、H、Jの上記構成が従前の技術的課題の解決手段に係る本件発明の特徴的部分であるといえる(この点につき、当事者間に争いがない)。」に改める。 (2) 原判決34頁7行目の「電極の数が」を「電極の数を」と改める。 (3) 原判決34頁15行目の「なお、被告は、」から同頁16行目「受け取っていた。」までを削る。 (4) 原判決34頁19行目から20行目にかけての「本件発明の」から同頁21行目末尾までを削る。 4 争点2(被控訴人が本件発明の特許を受ける権利を有する者であるか否か) 及び争点3(控訴人が本件発明の特許を受ける権利を共有する者であるか否か)について(1) 前記2の認定事実によると、①被控訴人は、平成26年以前から、EMSのODM企業であって、EMSの開発及び製造を業務としており、SPOPADやEM20の開発や製造を行っていたのに対し、控訴人は、ファブレスメーカーであっ て、工場を持たず、EMSの製造を業務としておらず、また、平成26年11月初旬頃までにおいてEMSの開発を行っていなかったこと、②被控訴人は、SPOPADの販売開始後、SPOPADに使用されていた金属弾片を介した導通では、ユーザが使用を続けているうちに電気的な接触不良が起こり得ることが被控訴人において判明したため、平成26年4月頃、EMSのリード部と制御基板との接続につ いて、弾片による接続とは異なる、ねじ止めによる接続であって、リード部がカバ ーの内壁に沿って折り曲げられ、更 判明したため、平成26年4月頃、EMSのリード部と制御基板との接続につ いて、弾片による接続とは異なる、ねじ止めによる接続であって、リード部がカバ ーの内壁に沿って折り曲げられ、更に制御基板と平行に折り曲げられ底板の突起にねじ止めされ固定される機構を開発していたこと、③被控訴人は、この機構をEP-200に適用していたこと、●(省略)●以上によると、EMSにおける制御基板と電極の段差を解消しつつ安定した導通を確保する手段として、電極のリードを折り曲げて制御基板に接続してネジで固定 するという手法をとることは、●(省略)●被控訴人の代表者であるX1が着想していたものであり、それに基づき●(省略)●構成要件G、H、Jの構成を有する本件発明を、当業者が実施できる程度にまで具体的かつ客観的なものとしたと認められる。また、本件発明の内容や出願の時期、被控訴人と控訴人の関係等からすると、控訴人は、●(省略)●と認められる。 そして、前記2の認定事実及び弁論の全趣旨によると、X1は、被控訴人代表者として製品開発等を行っていたことなどから、上記の特許を受ける権利を自身が代表者を務める被控訴人に対し譲渡したものと認められる。 そうすると、本件発明は被控訴人代表者のX1が創作を行い、本件発明について、被控訴人が特許を受ける権利を有するものと認めることができ、また、控訴人の従 業員等が本件発明に係る共同発明者ではないものといえる。 (2) 控訴人の主張について●(省略)●オ以上によると、本件発明の特徴的部分である構成要件G、H、Jの各構成について、控訴人が着想又は具体化したとはいえず、控訴人の従業員等が本件発明の 発明者であるとする控訴人の主張及び控訴人の従業員等が本件発明の共同発明者であるとする控訴人の G、H、Jの各構成について、控訴人が着想又は具体化したとはいえず、控訴人の従業員等が本件発明の 発明者であるとする控訴人の主張及び控訴人の従業員等が本件発明の共同発明者であるとする控訴人の主張はいずれも理由がない。 5 争点4(本件原出願の特許出願人ではない被控訴人が、本件原出願の分割出願である本件特許に係る本件特許権の移転請求を行うことができるか否か)について 被控訴人の請求は特許法74条1項に基づく請求であるところ、同項は「特許が 第123条第1項第2号に規定する要件に該当するとき(その特許が第38条の規定に違反してされたときに限る。)又は同項第6号に規定する要件に該当するときは、当該特許に係る発明について特許を受ける権利を有する者は、・・・その特許権者に対し、当該特許権の移転を請求することができる。」と規定し、同規定は、特許出願につき何ら規定しておらず、真の発明者の保護を目的とした規定と解されるこ とからしても、請求権者が特許出願したことを要件とするものではない。 また、特許法44条1項は、その柱書において「特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。」と規定し、分割出願手続において、原出願の出願人と分割出願の出願人とが一致していることを前提としていると解されるが、その文言上、分 割出願手続を経て一旦発生した特許権につき、その移転請求を行う場合において、その時点における原出願の出願人と分割出願の出願人との一致についてまで要求しているとまでは解されない。 したがって、被控訴人が本件原出願の特許出願人でないという事実は、本件において、被控訴人が控訴人に対し、本件特許権につき特許法74条1項に基づく移転 請求を行 しているとまでは解されない。 したがって、被控訴人が本件原出願の特許出願人でないという事実は、本件において、被控訴人が控訴人に対し、本件特許権につき特許法74条1項に基づく移転請求を行うに当たって、何ら妨げになるものではない。よって、この点に関する控訴人の主張は理由がない。 第4 結論 以上のとおり、被控訴人の控訴人に対する本件請求は理由があり、被控訴人の請求を認容した原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官 本多知成 裁判官 遠山敦士 裁判官 天野研司 別紙図4
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