令和3(行ウ)120 行政文書不開示決定取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年9月14日 大阪地方裁判所
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判決文本文36,771 文字)

- 1 -主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 財務大臣が令和3年10月11日付けで原告に対してした行政文書不開示決定(財理第3473号)を取り消す。 2 近畿財務局長が令和3年10月11日付けで原告に対してした行政文書不開示決定(近財総第212号)を取り消す。 第2 事案の概要 本件は、原告が、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という。)に基づき、財務大臣及び近畿財務局長に対し、学校法人A(以下「A」という。)に対する国有地の売却に関連する被疑事件の捜査について、財務省及び近畿財務局が東京地方検察庁(以下「東京地検」という。)又は大阪地方検察庁(以下「大阪地検」という。)に対して任意提出した一切の文 書ないし準文書の開示請求をしたところ、財務大臣及び近畿財務局長から、当該行政文書の存否を答えるだけで情報公開法5条4号の不開示情報(以下「4号不開示情報」という。)を開示することになるとして、同法8条に基づき当該行政文書の存否を明らかにしない(存否応答拒否)で不開示とする各決定を受けたため、被告を相手に、同各決定の取消しを求める事案である。 1 情報公開法の定め(1) 5条情報公開法5条柱書きは、行政機関の長は、開示請求があったときは、開示請求に係る行政文書に同条各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き、開示請求者に対し、当該行政文書 を開示しなければならない旨定める。 - 2 -同条4号は、「公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつ ない旨定める。 - 2 -同条4号は、「公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」を不開示情報として掲げる。 (2) 8条 情報公開法8条は、開示請求に対し、当該開示請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるときは、行政機関の長は、当該行政文書の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができる旨定める。 2 前提事実(当事者間に争いがないか、掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容 易に認められる事実)(1) 財務大臣の不開示決定に至る経緯等ア財務大臣に対する開示請求原告は、令和3年8月11日、財務大臣に対し、情報公開法4条1項に基づき、別紙2開示請求文書目録1記載の文書(以下「本件大臣請求対象 文書」という。)の開示請求(以下「本件大臣開示請求」という。)をした(甲5)。 イ財務大臣による不開示決定財務大臣は、令和3年9月10日、本件大臣開示請求に係る開示決定等の期間を延長した上、同年10月11日、本件大臣開示請求について、「本 件開示請求は、特定事件の捜査に関するものであり、その行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、特定事件における捜査機関の活動内容を明らかにしあるいは推知させることになるため、公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある法5条第4号の不開示情報を開示す ることになることから」との理由で、情報公開法8条に基づき、本件大臣- 3 -請求対象文書の存否を明らかにしないで不開示とする決定(以下「本件大 それがある法5条第4号の不開示情報を開示す ることになることから」との理由で、情報公開法8条に基づき、本件大臣- 3 -請求対象文書の存否を明らかにしないで不開示とする決定(以下「本件大臣不開示決定」という。)をした(甲10、12)。 (2) 近畿財務局長の不開示決定に至る経緯等ア近畿財務局長に対する開示請求原告は、令和3年8月12日、近畿財務局長に対し、情報公開法4条1 項に基づき、別紙3開示請求文書目録2記載の文書(以下「本件局長請求対象文書」といい、本件大臣請求対象文書と併せて「本件各請求対象文書」という。)の開示請求(以下「本件局長開示請求」といい、本件大臣開示請求と併せて「本件各開示請求」という。)をした(甲6)。 イ近畿財務局長による不開示決定 近畿財務局長は、令和3年9月10日、本件局長開示請求に係る開示決定等の期間を延長した上、同年10月11日、本件局長開示請求について、「本件開示請求は、特定事件の捜査に関するものであり、その行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、特定事件における捜査機関の活動内容を明らかにしあるいは推知させることになるため、公にすることにより、 犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある法5条第4号の不開示情報を開示することになることから」との理由で、情報公開法8条に基づき、本件局長請求対象文書の存否を明らかにしないで不開示とする決定(以下「本件局長不開示決定」といい、本件大臣不開示決定と併せて「本件各不開示決 定」という。)をした(甲11、13)。 (3) 本件訴訟の提起原告は、令和3年10月29日、本件訴えを提起した。 3 争点本件の争点は、本件各不開示決定が情報公開法8条の存 開示決 定」という。)をした(甲11、13)。 (3) 本件訴訟の提起原告は、令和3年10月29日、本件訴えを提起した。 3 争点本件の争点は、本件各不開示決定が情報公開法8条の存否応答拒否の要件を 満たすか否か、すなわち、本件各請求対象文書が存在しているか否かを答える- 4 -だけで、4号不開示情報を開示することになるとした財務大臣及び近畿財務局長の判断に相当の理由があるか(裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるか)否かである。 4 争点に関する当事者の主張(被告の主張) (1) 情報公開法8条の存否応答拒否の要件(判断枠組み)ア情報公開法8条の「開示請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるとき」とは、開示請求に係る行政文書が具体的にあるかないかにかかわらず、開示請求された行政文書の存否について回答すれば、不開示情報を開示することとなる場合をい う。 また、開示請求された行政文書の存否に関する情報と開示請求に含まれる情報とが結合することにより、開示請求された行政文書の存否について回答すれば、不開示情報を開示することとなる場合も、「開示請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示するこ ととなるとき」に該当する。 イ情報公開法8条にいう「開示請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるとき」に該当するか否かの判断に関し、「当該開示請求に係る行政文書が存在しているか否か」(いわゆる存否情報)には、開示請求に係る行政文書(以下「対象文書」と いうことがある。)が存在する場合の対象文書の特定に関する情報も当然に含まれ、これらを回答することによる支障を情報公開法8条該当性 る存否情報)には、開示請求に係る行政文書(以下「対象文書」と いうことがある。)が存在する場合の対象文書の特定に関する情報も当然に含まれ、これらを回答することによる支障を情報公開法8条該当性の判断において考慮することができるものと解される。 ウ情報公開法8条に基づく存否応答拒否が適法と認められるか否かの判断に当たっては、当該行政文書の存否を回答すること自体から不開示情報を 開示したこととなるか否か、又は、当該行政文書の存否に関する情報と開- 5 -示請求に含まれる情報とが結合することにより、当該行政文書の存否を明らかにするだけで情報公開法5条各号の不開示情報を開示することとなるか否かという観点から、同条各号該当性(本件でいえば4号不開示情報該当性)の判断枠組みに従って判断されるべきである。 (2) 4号不開示情報該当性の判断枠組み ア 4号不開示情報の意義情報公開法5条4号は、公共の安全と秩序を維持することは国民全体の基本的利益を擁護するために政府に課せられた重要な責務であることから、国の安全等に関する情報(同条3号)と同様に、刑事法の執行を中心とした公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の 長が認めることにつき相当の理由がある情報を不開示情報としたものである。同号に列挙されている「犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行」は、飽くまで「公共の安全と秩序の維持」の例示であり、この「公共の安全と秩序の維持」とは、列挙された事由に代表される刑事法の執行を中心としたものを意味する。 イ 4号不開示情報該当性の判断については行政機関の長に裁量が認められること情報公開法5条4号は、不開示の要件について、「おそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」 イ 4号不開示情報該当性の判断については行政機関の長に裁量が認められること情報公開法5条4号は、不開示の要件について、「おそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」と規定しており、「おそれ」の存在そのものを要件とする同条5号及び6号と規定振りを異にし ていることからすると、同条4号は、行政機関の長の裁量を尊重する趣旨と解するのが相当である。すなわち、公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧、捜査等の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれのある情報については、その性質上、開示・不開示の判断に犯罪等に関する将来予測等についての専門的・技術的な情報と経験に基づく判断を要し、公共の安 全と秩序の維持という国民全体の基本的利益を守るための高度の政策的判- 6 -断を伴うことなどの特殊性があることから、裁判所は、同号に規定する情報に該当するかどうかについての行政機関の長の第一次的な判断を尊重し、その判断が合理性を持つ判断として許容される限度内のものであるか(「相当な理由」があるか)否かについて審理・判断するのが適当であり、その意味で、同号は、行政機関の長に広範な裁量権を付与したものと解さ れる。 情報公開法8条の適用場面における4号不開示情報該当性判断についても、上記と異なる解釈を採るべき事情はない。裁判所は、同条の適用が問題となる場面においても、開示請求された行政文書の存否に関する情報と開示請求に含まれる情報とが結合することで4号不開示情報に該当するか どうかについて、行政機関の長の第一次的な判断を尊重し、その判断が合理性を持つものとして許容される限度内のものであるかどうか、すなわち、当該判断の基礎とされた重要な事実に誤認があることなどによりその判断が事実の基礎を欠くか、事実に対する 判断を尊重し、その判断が合理性を持つものとして許容される限度内のものであるかどうか、すなわち、当該判断の基礎とされた重要な事実に誤認があることなどによりその判断が事実の基礎を欠くか、事実に対する評価が明白に合理性を欠くことなどにより、当該処分につき社会通念上著しく妥当性を欠いた裁量権の範囲の 逸脱又はその濫用があると認められるかどうかを審査することになるというべきである。 (3) 本件各不開示決定をした財務大臣及び近畿財務局長の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用がないことア本件各請求対象文書の存否に関する情報と本件各開示請求に含まれる情 報との結合(本件各請求対象文書の存否を明らかにすることにより推知可能となる情報の範囲)本件各開示請求は、開示請求の相手方の事務又は事業の性質や内容とは関連性がない、捜査機関による捜査活動の対象となったか否かという事項をもって対象文書の範囲を画定するものであるから、本件各請求対象文書 の存否が明らかになれば、これが本件各開示請求に含まれる情報と結合す- 7 -ることによって、財務省や近畿財務局が、別紙2開示請求文書目録1の1ないし3(別紙3開示請求文書目録2の1ないし3も同じ。)に掲記された各被疑事件(以下「本件各被疑事件」という。)の捜査に関し、東京地検又は大阪地検に対し、任意提出をしたか否か、また、還付されているか否かが明らかにされることになり、そうなれば、捜査機関の具体的な活動内 容が相当程度推知されることになる。すなわち、(ア) 本件各請求対象文書の存在が明らかになれば、① 本件各被疑事件について、開示請求日までに、財務省や近畿財務局から東京地検又は大阪地検に対し、行政文書が任意提出されたこと及び ② 当該行政文書について、開示請求日まで になれば、① 本件各被疑事件について、開示請求日までに、財務省や近畿財務局から東京地検又は大阪地検に対し、行政文書が任意提出されたこと及び ② 当該行政文書について、開示請求日までに、財務省や近畿財務局に還付されたこと(若しくは、③当該行政文書について、捜査機関に任意提出した際に、その控えとして写しを作成しており、それらが、開示請求日まで財務省や近畿財務局の手元に保存されていたこと、又は②と③の両方の事 実)を推知することができる。 (イ) 本件各請求対象文書の不存在が明らかになれば、① 本件各被疑事件について、開示請求日までに、財務省や近畿財務局から東京地検又は大阪地検に対し、行政文書が任意提出されていない こと又は② 任意提出は行われたが、開示請求日までに、当該行政文書について還付されておらず、③ 当該行政文書について控え(写し)を作成した事実もないこと を推知することができる。 - 8 -(ウ) さらに、本件各開示請求は、「任意提出した一切の文書ないし準文書」として、その対象文書を概括的・包括的に特定するものであることから、このような開示請求を受けた行政機関の長は、仮に、存否応答拒否をすることが許されないとした場合、当該行政文書が存在するのであれば、(一部)開示又は不開示の決定を行う前提として、対象文書に該当する 行政文書を特定して、どの部分が開示又は不開示となるかを個別に明らかにしなければならず、また、当該文書が存在しないのであれば、不存在を理由とする不開示決定を行わなければならない。そのため、①本件各被疑事件についてどのような内容の行政文書がどの程度の範囲や通数で捜査機関に対して任意提出されたのかが推知され、反対に、②どのよ うな内容の行政文書が任意 なければならない。そのため、①本件各被疑事件についてどのような内容の行政文書がどの程度の範囲や通数で捜査機関に対して任意提出されたのかが推知され、反対に、②どのよ うな内容の行政文書が任意提出されていないのかも推知される可能性がある(以下、被告が、本件各請求対象文書の存否を明らかにすることにより推知される可能性がある情報として、上記(ア)ないし(ウ)において主張する情報のことを、併せて「本件推知可能情報」という。他方、本件各請求対象文書が存在するか否かに係る情報を「本件存否情報」という。)。 イ刑事事件に関する文書についての法令の定めを参考にすべきこと(ア) 本件推知可能情報の範囲及び内容は、財務省や近畿財務局の所掌事務又は事業の性質や内容等に係る情報にとどまらず、捜査機関による捜査活動の対象となったか否かという刑事事件に関する情報としての性質をも有するものとなっている。特に、本件各請求対象文書の存否を明らか にした場合には、捜査機関がいかなる行政文書を任意提出により入手したのか又はそれらが既に還付されているのか否かに係る具体的な情報にほかならず、行政文書に関する範囲に限ってではあるものの、捜査機関が押収をした場合に作成する押収品目録(刑事訴訟法120条、刑事訴訟規則96条)等に記載され得る情報と実質的に同内容の情報となり得 る。 - 9 -(イ) 押収品目録を含む「訴訟に関する書類」について、刑事訴訟法は、これらの文書の類型的な秘密性等に着目し、その開示によって、犯罪の捜査、公訴の維持その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれが大きいものであることを認めて、情報公開法を適用しないこととするなど開示に慎重な立場をとっている(刑事訴訟法53条の2第1項、同 法47条本文)。仮に本件各請 と秩序の維持に支障を及ぼすおそれが大きいものであることを認めて、情報公開法を適用しないこととするなど開示に慎重な立場をとっている(刑事訴訟法53条の2第1項、同 法47条本文)。仮に本件各請求対象文書が存在する場合には、その存否を応答することによって本件各請求対象文書が特定され、その限りで、押収品目録と実質的に同内容の情報となり得る本件推知可能情報も、類型的に犯罪の捜査、公訴の維持その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある情報としての性質を持つというべきであって、そ う解することが、上記で述べた刑事訴訟法の立場にも整合するということができる。本件存否情報の不開示情報該当性を判断するに当たっては、本件推知可能情報がこのような「訴訟に関する書類」に該当する行政文書の目録と実質的に同内容の情報となり得るという特質を有することを十分に踏まえる必要がある。 ウ本件各不開示決定をした財務大臣及び近畿財務局長の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用がないこと次の(ア)ないし(オ)のとおり、本件各請求対象文書の存否が明らかになることで、捜査等への支障を及ぼすおそれがあり、4号不開示情報を開示することになるとして、本件各請求対象文書について存否応答拒否をした本 件各不開示決定に係る財務大臣及び近畿財務局長の判断に、社会通念上著しく妥当性を欠くなどの裁量権の範囲の逸脱又はその濫用はない。 (ア) まず、本件各請求対象文書の存否を明らかにすることで、財務省又は近畿財務局が、本件各被疑事件の捜査について、東京地検又は大阪地検に対し、行政文書を任意提出したか否か、任意提出した行政文書が還付 されたか否か等が明らかになる上、本件各被疑事件について、どのよう- 10 -な内容の行政文書がどの程度の分量で捜査機 地検に対し、行政文書を任意提出したか否か、任意提出した行政文書が還付 されたか否か等が明らかになる上、本件各被疑事件について、どのよう- 10 -な内容の行政文書がどの程度の分量で捜査機関に対して任意提出されたのかが推知され、反対にどのような内容の行政文書が任意提出されていないのかという情報を明らかにすることになり、行政文書の名称次第では聴取した関係者の範囲なども推知される可能性がある。 このように、本件各請求対象文書の存否を明らかにすることで、本件 各被疑事件の捜査における捜査手法や、捜査対象の範囲といった、正に捜査機関の手の内情報というべき具体的な捜査の内容や捜査機関の関心事項が推知されかねず、将来発生し得る同種事件において、それを企図する者等が、捜査機関が関心を有するであろう資料を把握し、押収されることを回避しようとしたり、取調べの対象となり得る関係者に働きか けたりするなどの罪証隠滅行為に及び、犯罪行為を潜在化・巧妙化させるおそれ、更には、参考人等の関係者が、同種の開示請求によって捜査機関から聴取を受けたことが明らかになり得ることを危惧し、捜査への協力をちゅうちょするなど、将来の捜査機関による捜査に支障を及ぼすおそれが正に認められることになる。 (イ) また、捜査の内容や捜査における関心事項が推知されることにより、行政機関から証拠収集がされ得る刑事事件一般の捜査に支障が及ぶおそれが生じることも挙げられる。すなわち、特定の行政機関から証拠収集がされた可能性のある刑事事件について、当該行政機関に対し、本件各開示請求と同様の開示請求が行われた場合に、対象文書の存否を応答す ることで、当該行政機関に被疑者が所属する場合に限らず、当該行政機関が捜査に協力した場合も含め、広く捜査の内容等が推知される 開示請求と同様の開示請求が行われた場合に、対象文書の存否を応答す ることで、当該行政機関に被疑者が所属する場合に限らず、当該行政機関が捜査に協力した場合も含め、広く捜査の内容等が推知されることになりかねず、押収の有無に係る情報が集積されることにより、行政機関から証拠収集がされ得る刑事事件一般の捜査に支障を及ぼすおそれがある。 (ウ) さらに、不起訴記録は刑事訴訟法47条本文の「訴訟に関する書類」- 11 -に該当することから、同条ただし書の定める「公益上の必要その他の事由があって、相当と認められる場合」に当たらない限り、開示されないことが予定されているといえる。不起訴処分となった事件に関し、「(行政機関が捜査機関に対して)任意提出した一切の文書ないし準文書」の開示を求める本件各開示請求と同様の開示請求について、対象文書の存 否を明らかにする処分をせざるを得ないとすると、当該事件記録の原本の保管者である検察官による同条ただし書についての判断を介さず、当該事件の事件記録中に存在する当該行政機関に係る行政文書の原本ないし写しが含まれ得る点で、刑事訴訟法が開示を認める情報の範囲を優に超える情報を得られることとなり、同種事件の捜査等に支障を及ぼすお それがある。 (エ) また、情報公開法に基づく開示請求は、何人も(情報公開法3条)、権利濫用に当たるような場合でない限り何度でも、時期を変えて同様の請求ができるということにも留意する必要がある。すなわち、本件各開示請求と同様の請求について、請求がされるたびに存否を明らかにした 上で開示又は不開示の処分を行わなければならないことになれば、本件各開示請求と同様の開示請求を複数の時期に繰り返し行うことによって、捜査機関が、どの時点で、どのような内容・範囲・通数の行 た 上で開示又は不開示の処分を行わなければならないことになれば、本件各開示請求と同様の開示請求を複数の時期に繰り返し行うことによって、捜査機関が、どの時点で、どのような内容・範囲・通数の行政文書の任意提出を受け、提出者である行政機関にその控えの作成を許し、還付を行ったのかを推知することができることとなり、捜査の密行性等が害 されるおそれがある。 (オ) 加えて、本件存否情報のうち任意提出に係る行政文書の控え(写し)の存否の点については、本件各被疑事件に関し、捜査機関が、財務省又は近畿財務局に対し、押収した(任意提出を受けた場合を含む)行政文書の控えの作成を許した事実、あるいは同控えの作成を許さなかった事 実(任意提出を受けた場合については、控えの作成を了承した事実、あ- 12 -るいは提出者を説得して控えの作成をせずに速やかに提出するよう促した事実)を明らかにすることとなる。押収した行政文書について控えを作成することを許すか否かは、正に捜査機関による証拠の収集活動の中での一場面というべきものであるところ、この点を明らかにすることは、捜査機関における押収した証拠物に関する取扱いという捜査活動の細か な部分まで公にすることとなるものであり、捜査機関における将来の刑事事件における証拠の収集活動を含めた捜査活動に支障を及ぼすおそれがある。 (4) 公知の情報である旨の原告の主張について原告は、開示請求の対象文書の存在が公知の事実となっていれば存否応答 拒否はできないとし、①内閣が、第196回国会(常会)において、近畿財務局が決裁文書の原本として保有していたAへの大阪府豊中市a町b番所在の土地の管理処分に係る売払決議書及び貸付決議書(以下、上記売払決議書及び貸付決議書を併せて「本件近畿財務局決裁文書」と 、近畿財務局が決裁文書の原本として保有していたAへの大阪府豊中市a町b番所在の土地の管理処分に係る売払決議書及び貸付決議書(以下、上記売払決議書及び貸付決議書を併せて「本件近畿財務局決裁文書」という。)を大阪地検に対し平成30年3月2日より前に提出した旨答弁していることをもって、本 件近畿財務局決裁文書が本件各請求対象文書に該当することが公知の事実になっている旨、②近畿財務局の職員であったBが整理してファイルに綴じた文書(以下「Bファイル」という。)が、原告が国及び財務省理財局長であったCを被告として提起した損害賠償請求訴訟(以下「別件訴訟」という。)において証拠提出され、その存在が広く報道されていることや、原告ほか1名 が執筆した書籍(以下「本件書籍」という。)において、Bファイルの存在やこれが検察庁に任意提出されたことなどが明記されていることをもって、Bファイルが本件各請求対象文書に該当することが公知の事実になっている旨、③財務省ウェブサイトにおいて決裁文書等が掲載されていることをもって、決裁文書等が本件各請求対象文書に該当することが公知の事実になって いる旨主張する。 - 13 -しかし、①について、本件推知可能情報の範囲及び内容は、本件各被疑事件について、開示請求日までに財務省や近畿財務局が、東京地検又は大阪地検に対し、行政文書を任意提出したか否かということに限られるものではなく、当該行政文書が開示請求日までに還付されているか否か(又は当該行政文書について控えとして写しを作成しているか否か)といった情報も含まれ るところ、前記答弁からは行政文書の還付や写し作成の有無は明らかでないから、本件近畿財務局決裁文書が本件各請求対象文書に該当することが明らかになったとは認められない。 また、②について、B るところ、前記答弁からは行政文書の還付や写し作成の有無は明らかでないから、本件近畿財務局決裁文書が本件各請求対象文書に該当することが明らかになったとは認められない。 また、②について、Bファイルは、被告が、別件訴訟において、原告による文書提出命令の申立てに係る文書を識別するに資する情報が相当程度具体化 されたことを受けて、被告において探索を行った結果、特定に至り、その写しを書証として提出したものであり、被告が、検察庁に任意提出し、還付された資料としてのBファイルを提出したものではない。したがって、本件書籍において、Bファイルの存在や、それが検察庁に任意提出されたことなどが記載されていることをもって、Bファイルが本件各請求対象文書に該当す ることが明らかになったとは認められない。 さらに、③について、財務省ウェブサイトに掲載された各決裁文書は、財務省が、決裁文書に関する調査を通じて把握したものとして公表したものであって、財務省又は近畿財務局が、東京地検又は大阪地検に対して本件各被疑事件の捜査の証拠として任意提出したものであるとか、任意提出をした際 に作成した控えであるとして公表したものではないから、各決裁文書が本件各請求対象文書に該当することが明らかになったとは認められない。 (原告の主張)(1) 情報公開法8条の存否応答拒否の要件(判断枠組み)情報公開法8条の存否応答拒否を行う前提として、仮に開示請求に係る行 政文書が存在する場合には、当該行政文書が情報公開法5条各号の不開示情- 14 -報に該当することが必要である。 そして、情報公開法8条にいう「開示請求に対し、当該開示請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるとき」とは、当該行政文書の存否を回 ることが必要である。 そして、情報公開法8条にいう「開示請求に対し、当該開示請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるとき」とは、当該行政文書の存否を回答すること自体から不開示情報を開示したこととなる場合や、当該行政文書の存否に関する情報と開示請求に 含まれる情報が結合することにより、当該行政文書は存在するが不開示とする、又は当該行政文書は存在しないと回答するだけで、不開示情報を開示したことになる場合に限られると解するのが相当である。 すなわち、情報公開法8条に基づく存否応答拒否が認められるのは、①仮に当該行政文書が存在する場合は、情報公開法5条各号の不開示情報に該当 する(当該行政文書に情報公開法5条各号の不開示情報が記録されていると判断される)ことを前提に、②当該行政文書の存否を回答すること自体から不開示情報を開示したこととなる場合、又は③当該行政文書の存否に関する情報と開示請求に含まれる情報とが結合することにより、当該行政文書は存在するが不開示とする、又は当該行政文書は存在しないと回答するだけで、 不開示情報を開示したことになる場合に限られる。 (2) 本件各不開示決定が情報公開法8条の存否応答拒否の要件を満たしていないこと本件各不開示決定は、情報公開法8条の存否応答拒否の要件を満たしておらず、不適法である。 ア本件各請求対象文書の情報は4号不開示情報に該当しないこと(上記(1)①の要件を満たさないこと)(ア) 情報公開法5条4号が、いわゆる司法警察や刑事手続などの刑事法の執行を念頭に置いた規定であると解されることからすれば、同号に基づき開示を拒否することができる場合とは、同号の「行政機関の長」が、 刑事法の執行、すなわち「犯罪の予防、鎮圧又 続などの刑事法の執行を念頭に置いた規定であると解されることからすれば、同号に基づき開示を拒否することができる場合とは、同号の「行政機関の長」が、 刑事法の執行、すなわち「犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の- 15 -執行その他の公共の安全と秩序の維持」という公務の執行のために作成又は収集した行政文書を所持している場合に限られるべきである。 本件において、財務省及び近畿財務局は、少なくともAの案件において自ら「捜査」等の刑事法を執行する立場にあったわけではなく、検察からの「捜査」等を受ける立場にあったことから、本件各被疑事件の「捜 査」等という公務の執行のために各文書を作成又は収集して所持していたと評価することはできない。したがって、本件各請求対象文書は、4号不開示情報には該当しない。 (イ) 「行政機関の保有する情報の公開に関する法律に基づく処分に係る審査基準」(以下「本件審査基準」という。甲15)によれば、情報公開法 5条4号における犯罪の「捜査」とは、「捜査機関が犯罪があると思料するときに、公訴の提起(検察官が裁判所に対し、特定の刑事事件について審判を求める意思表示をすることを内容とする訴訟行為をいう。)等のために犯人及び証拠を発見、収集又は保全することをいう。」とされている(甲15・9頁)。 本件においては、大阪第一検察審査会が、平成31年3月15日、背任罪について、D及びEに対する各不起訴処分はいずれも不当であるとの決議を、有印公文書変造・同行使罪について、C、F及びGに対する各不起訴処分はいずれも不当であるとの決議を、公用文書毀棄罪について、C、F及びGに対する各不起訴処分はいずれも不当であるとの決議 を行ったが、大阪地検は、令和元年8月9日、Cら10人について不起訴処分とし ずれも不当であるとの決議を、公用文書毀棄罪について、C、F及びGに対する各不起訴処分はいずれも不当であるとの決議 を行ったが、大阪地検は、令和元年8月9日、Cら10人について不起訴処分とした。したがって、Aの案件に関する捜査は既に終了しており、「公訴の提起等のために犯人及び証拠を発見、収集又は保全」する必要性はないから、本件各請求対象文書は、4号不開示情報には該当しない。 (ウ) 被告は、令和3年6月21日、別件訴訟において、本件各請求対象文 書の一部と思われるBファイルを既に証拠として提出しており、その理- 16 -由は、情報公開法5条4号に該当しないと判断したためだと思われる。 また、Bファイルが証拠として提出され、その内容が広く報道されたことによって、「公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれ」が生じたという事実は存在しない。 イ 「当該行政文書の存否を回答すること自体から不開示情報を開示したこととなる場合」に該当しないこと(上記(1)②の要件を満たさないこと)(ア) 存否応答拒否が許されるのは、「開示請求に対し、当該開示請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるとき」(情報公開法8条)に限定される。そうだとすれば、 開示請求対象文書の存否が明らかでない場合にのみ存否応答拒否が可能であることから、開示請求対象文書の存在が公知の事実となっていれば存否応答拒否はできないというべきである。 本件各請求対象文書は、Aの案件に関連した本件各被疑事件の捜査について、「財務省及び近畿財務局が東京地方検察庁又は大阪地方検察庁 に対して任意提出した文書」であるところ、その一部である、本件近畿 件各請求対象文書は、Aの案件に関連した本件各被疑事件の捜査について、「財務省及び近畿財務局が東京地方検察庁又は大阪地方検察庁 に対して任意提出した文書」であるところ、その一部である、本件近畿財務局決裁文書が存在していることは既に公知の事実となっている(甲20、21)。また、本件各請求対象文書の一部であるBファイルは、既に別件訴訟において証拠として提出され、その存在が広く報道されている上に、本件書籍(甲22・154~155頁)によって、その存在は公 知の事実となっている。加えて、財務省ウェブサイトには、本件各請求対象文書である決裁文書等が公開されている。 以上のとおり、本件各請求対象文書の存在が公知の事実となっていることから、被告が本件各請求対象文書について存否応答拒否を行うことはできない。 (イ) 本件審査基準は、情報公開法5条4号に関して存否応答拒否ができる- 17 -具体例として、「犯罪の内偵捜査に関する情報」を挙げている(甲15・18頁)。これは、犯人が無関係の第三者に依頼して内偵捜査に関する行政文書の開示請求をしたような場合に、当該文書の存在を知られると、捜査の密行性が損なわれたり、証拠隠滅を容易にしたりするからだと考えられる。 本件においては、本件各被疑事件に関する捜査が既に終了していることや、本件各請求対象文書の一部と思われるBファイルが別件訴訟において証拠として提出され、その内容が広く報道されていることを踏まえると、本件各被疑事件に関する捜査の密行性が損なわれたり、証拠隠滅を容易にしたりすることは考えられない。 また、本件各開示請求に係る行政文書の存否が明らかになれば、検察庁が本件各被疑事件と同種の事件において、Bファイルに綴られたようなメールやその添付ファイルを証拠として入 とは考えられない。 また、本件各開示請求に係る行政文書の存否が明らかになれば、検察庁が本件各被疑事件と同種の事件において、Bファイルに綴られたようなメールやその添付ファイルを証拠として入手しようとすることが明らかになるものの、そのような事実が明らかになったとしても、捜査の手法としては社会通念に照らして一般的かつ常識的なものであるから、「公 にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれ」が生ずることは考えられない。 ウ 「当該行政文書の存否に関する情報と開示請求に含まれる情報とが結合することにより、当該行政文書は存在するが不開示とする、又は当該行政 文書は存在しないと回答するだけで、不開示情報を開示したことになる場合」に該当しないこと(上記(1)③を満たさないこと)そもそも、本件各請求対象文書の存否に関する情報と開示請求に含まれる情報とがどのように結合するか明らかではない。 また、仮に結合したとしても、本件各被疑事件に関する捜査は既に終了 し、本件各開示請求に係る行政文書の一部と思われるBファイルは証拠と- 18 -して提出された上、その内容について広く報道され、本件各開示請求に係る行政文書の存否が明らかになったとしても、社会通念に照らして一般的かつ常識的な捜査手法が明らかとなるにすぎないことから、「公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれ」が生ずることは考えられな い。 (3) 被告の主張についてア刑事事件に関する文書についての法令の定めについて刑事訴訟法53条の2の第1項が「訴訟に関する書類及び押収物」について情報公開法等の規定を適用し な い。 (3) 被告の主張についてア刑事事件に関する文書についての法令の定めについて刑事訴訟法53条の2の第1項が「訴訟に関する書類及び押収物」について情報公開法等の規定を適用しないこととした趣旨は、①刑事訴訟に関 する書類及び押収物に含まれる情報は、類型的に秘密性が高く、その大部分が個人に関する情報であるとともに、開示により、犯罪の捜査、公訴の維持その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれが大きいものであり、情報公開法の不開示情報に該当することが多いこと、②「訴訟に関する書類及び押収物」は、刑事司法手続の一環である捜査・公判の過程 において取得されたものであるが、捜査・公判に関する国の活動の適正確保は、公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする情報公開法ではなく、司法機関である裁判所により図られるべきであることにある。そして、「訴訟に関する書類及び押収物」については、刑事訴訟法(40条、47条、53条、299条)及び刑事確定訴訟記録法等により、その取扱 いや、開示・不開示の要件、手続等が定められている。 これに対し、行政文書を含む「訴訟に関する書類」以外の書類については、そのような類型的取扱いは必要でもなければ適切とされているわけでもない。また、「訴訟に関する書類」は、刑事司法手続の一環である捜査・公判の過程において取得されたものであり、捜査・公判に関する国の活動 の適正確保は、公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする情報- 19 -公開法ではなく、司法機関である裁判所により図られるべきであるが、「訴訟に関する書類」ではない行政文書については、「司法機関である裁判所」が関与しない以上、その趣旨は及ばない。 本件開示請求対象文書は、類型的取扱いをすべき「訴訟に関する り図られるべきであるが、「訴訟に関する書類」ではない行政文書については、「司法機関である裁判所」が関与しない以上、その趣旨は及ばない。 本件開示請求対象文書は、類型的取扱いをすべき「訴訟に関する書類及び押収物」には該当しない。したがって、上記①及び②の趣旨からすれば、 「訴訟に関する書類」ではない行政文書については、行政文書ごとに4号不開示情報を開示することとなるか否かのみを検討すれば足りる。 イ存否応答拒否の要件と開示請求対象文書の特定の問題について被告は、本件各開示請求に対し、仮に、存否応答拒否をすることが許されないとした場合、当該文書が存在するのであれば、(一部)開示又は不 開示の決定を行う前提として、対象文書に該当する行政文書を特定して、どの部分が開示又は不開示となるかを個別に明らかにしなければならず、そのような特定を行うことによって不開示情報を開示することになる旨主張する。 しかし、被告の主張は、存否応答拒否の要件と開示請求対象文書の特定 の問題を混同している。仮に被告が主張するように、開示又は不開示の決定において具体的に文書を特定することによって不開示情報を開示することになるのであれば、当該開示又は不開示の決定において、不開示情報を開示したことにならない程度に対象文書を概括的に特定して記載するに止めれば足りる。 ウ 4号不開示情報該当性の判断における行政機関の長の裁量について4号不開示情報該当性の判断につき行政機関の長に裁量が認められる理由は、情報公開法5条3号の場合と同じく、開示・不開示に高度な政策的判断が伴い、専門的、技術的判断を要するという特殊性が認められると判断されるからである。 本件については、被告行政機関の長は司法警察活動を所掌する行政機関- 20 -の長では 度な政策的判断が伴い、専門的、技術的判断を要するという特殊性が認められると判断されるからである。 本件については、被告行政機関の長は司法警察活動を所掌する行政機関- 20 -の長ではなく、4号不開示情報該当性の判断につき専門的、技術的な知識は一切持ち合わせていない。したがって、本件においては、行政機関の長の広範な裁量を認める必要はないし、認めるべきでもない。 さらに本件において被告が行った処分は存否応答拒否処分である。本件における存否応答拒否は、文書の内容に関わらず文書の存否を答えること で4号不開示情報を開示することになるか否かの判断である。すなわち、本件においては、文書の内容とは無関係に文書の存否が明らかになれば4号不開示情報を開示することになるか否かを判断すればいいのであって、その判断に特段の専門的、技術的知識は不要である。そうであれば、被告行政機関の長に広範な裁量を認める必要もなければ認めるべきでもない。 加えて、本件における「行政機関の長」は、本件被疑事件が起こった「行政機関」である財務省、近畿財務局の長であり、いわば被疑者自身である。 通常、犯罪の被疑者であれば、自身が関与した犯罪に関する情報は、どのような些細な情報であっても明らかにしたくないと考える。そうすると、本件においては、被疑者自身と同視できる「行政機関の長」は、どのよう な些細な情報も明らかにしないために、不開示情報該当性について過大な評価を行い、不開示と決定するおそれがあり、特に存否応答拒否の要件について過大な評価を行い、文書の存否すら明らかにしないおそれがある。 したがって、本件においては、被疑者自身と同視できる「行政機関の長」に広範な裁量を認めることは適切でも妥当でもない。 エ本件各不開示決定をした財務大臣及び近畿 明らかにしないおそれがある。 したがって、本件においては、被疑者自身と同視できる「行政機関の長」に広範な裁量を認めることは適切でも妥当でもない。 エ本件各不開示決定をした財務大臣及び近畿財務局長の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用がない旨の被告の主張に理由がないこと(ア) 被告は、本件各請求対象文書の存否を明らかにすることで、財務省又は近畿財務局が、本件各被疑事件の捜査について、東京地検又は大阪地検に対し、行政文書を任意提出したか否か、任意提出した行政文書が還 付されたか否か等が明らかになる上、本件各被疑事件について、どのよ- 21 -うな内容の行政文書がどの程度の分量で捜査機関に対して任意提出されたのかが推知され、反対にどのような内容の行政文書が任意提出されていないのかという情報(本件推知可能情報)を明らかにすることになり、行政文書の名称次第では聴取した関係者の範囲なども推知される可能性がある旨主張する。 しかし、本件各請求対象文書の存否を明らかにするだけで、なぜ本件推知可能情報を明らかにすることとなるのか、被告の主張には具体性がなく、根拠がない。また、財務省及び近畿財務局が検察庁に本件各被疑事件に関し文書を任意提出していること自体は公になっていることから、被告の主張は前提を欠く。 (イ) 被告は、捜査の内容や捜査における関心事項が推知されることにより、行政機関から証拠収集がされ得る刑事事件一般の捜査に支障が及ぶおそれが生じる旨主張する。 しかし、本件各請求対象文書の存否が判明したとしても、開示請求の対象文書である行政文書の存否が判明するだけで、捜査機関に任意提出 された文書全てが判明するわけではなく、任意提出された文書の一部が分かったとしても、捜査の内容や捜査における関心事項は判明 の対象文書である行政文書の存否が判明するだけで、捜査機関に任意提出 された文書全てが判明するわけではなく、任意提出された文書の一部が分かったとしても、捜査の内容や捜査における関心事項は判明せず、仮に判明したとしても限定的であるから、行政機関から証拠収集がされ得る刑事事件一般の捜査に支障が及ぶおそれがあるとはいえない。 (ウ) 被告は、存否応答拒否が許されないとすると、事件記録の原本の保管 者である検察官による刑事訴訟法47条ただし書についての判断を介さず、刑事訴訟法が開示を認める情報の範囲を優に超える情報を得られることとなり、同種事件の捜査等に支障を及ぼすおそれがある旨主張する。 しかし、本件開示請求対象文書は不起訴記録ではなく、仮に本件開示請求対象文書が不起訴記録に含まれていたとしても、不起訴記録自体は 一切明らかにならないのであるから、不起訴記録の一部と同内容の情報- 22 -が明らかになるとしても、それによる弊害は情報公開法の不開示情報に該当するか否かを検討すれば足りる。 (エ) 被告は、本件各開示請求と同様の開示請求を複数の時期に繰り返し行うことによって、捜査機関が、どの時点で、どのような内容・範囲・通数の行政文書の任意提出を受け、提出者である行政機関にその控えの作成 を許し、還付を行ったのかを推知することができることとなり、捜査の密行性等が害されるおそれがある旨主張する。 しかし、本件各請求対象文書の存否により判明するのは、本件各請求対象文書が任意提出という方法で検察庁に提供されたことのみであり、それ以上の捜査手法や捜査対象(行政文書以外の文書が検察庁に提出さ れたのか、本件各被疑事件について誰に話を聞いたのか等)などは、本件各請求対象文書の存否が明らかになったとしても判明せず、具体的な 以上の捜査手法や捜査対象(行政文書以外の文書が検察庁に提出さ れたのか、本件各被疑事件について誰に話を聞いたのか等)などは、本件各請求対象文書の存否が明らかになったとしても判明せず、具体的な捜査の内容や捜査機関の関心事項を推知することなど不可能である。 (オ) 被告は、本件推知可能情報により、捜査機関における押収した証拠物に関する取扱いという捜査活動の細かな部分まで公にすることとなるた め、捜査機関における将来の刑事事件における証拠の収集活動を含めた捜査活動に支障を及ぼすおそれがある旨主張する。 しかし、任意提出がされた場合に、元の所持者が当該文書の写しを所持したり公開したりすることは何ら禁止されていないことから、公開により捜査に支障が生ずることはない。仮に、公開により捜査に支障が生 じ得るとしても、「訴訟に関する書類」以外の書類については、刑事訴訟法を含め、法は公開を容認しているのであり、行政文書については、不開示情報が記録されているか否かによって開示・不開示を決定すれば足りる。 (カ) 以上のとおり、本件各不開示決定をした財務大臣及び近畿財務局長の 判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用がない旨の被告の主張には理由- 23 -がなく、本件各不開示決定は不適法である。 第3 当裁判所の判断 1 本件各不開示決定の適法性に係る判断枠組み(1) 情報公開法8条の存否応答拒否の判断枠組みア存否応答拒否の要件について (ア) 情報公開法8条は、「開示請求に対し、当該開示請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるときは、行政機関の長は、当該行政文書の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができる。」と規定しているところ、同条に基づき行政文書の 否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるときは、行政機関の長は、当該行政文書の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができる。」と規定しているところ、同条に基づき行政文書の存否を明らかにしないで開示請求を拒否することが できるのは、「当該開示請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるとき」、すなわち、当該行政文書の存否を回答すること自体から不開示情報を開示したこととなる場合や、当該行政文書の存否に関する情報と開示請求に含まれる情報とが結合することにより、当該行政文書の存否を明らかにするだけで、 不開示情報を開示したこととなる場合であると解される(総務省行政管理局編「詳解情報公開法」94頁参照)。 (イ) これに対し、原告は、情報公開法8条の存否応答拒否を行う前提要件として、仮に開示請求に係る行政文書(対象文書)が存在する場合には、当該行政文書が情報公開法5条各号の不開示情報に該当すること(ただ し、当該行政文書の記載内容自体に不開示情報が含まれている必要はなく、開示請求に含まれる情報と結合することによって当該行政文書に不開示情報が記録されていると判断されることで足りる。)が必要である旨主張する。 しかし、このような前提要件を付け加えるべき法令上の根拠は見当た らない上(なお、情報公開法5条柱書きは、対象文書の存在を前提とす- 24 -る規定であって、同法8条の存否応答拒否の前提要件を定める趣旨のものとは解されない。)、原告が主張するところを踏まえてもなお、この前提要件を付け加えることにより、どのような事案で結論に差異が生じ得るのかも判然としない。また、仮に結論に差異が生じ得る場合があるとすれば、対象文書の存否を明らかにするだけで不開示情報 もなお、この前提要件を付け加えることにより、どのような事案で結論に差異が生じ得るのかも判然としない。また、仮に結論に差異が生じ得る場合があるとすれば、対象文書の存否を明らかにするだけで不開示情報を開示した ことになると認められるにもかかわらず、上記の前提要件(仮に対象文書が存在するとした場合における不開示情報該当性)を満たさないために、行政機関の長において、対象文書の存否を明らかにしなければならないという結論になるものと解されるが、そのような結論は、対象文書の存否を明らかにすることによる不開示情報の開示を義務付けることに ほかならないのであり、各種の保護すべき利益に着目して不開示情報を定めた情報公開法の趣旨に反する結果となるものと解される。原告の上記主張は採用することができない。 イ概括的な開示請求における対象文書の特定情報は、情報公開法8条にいう「当該開示請求に係る行政文書が存在しているか否か」という存否情報 に含まれるか(ア) 情報公開法によれば、行政機関の長は、開示請求に係る行政文書が存在している場合、当該行政文書に情報公開法5条各号に定める不開示情報が含まれていなければ、その全部を開示する旨の決定をし、開示請求者に対し、その旨を書面により通知しなければならない(同法9条1項)。 また、当該行政文書に不開示情報が含まれているため、その一部を開示する場合には、一部を開示する旨の決定をし、開示請求者に対し、その旨を書面により通知しなければならない(同項)。そして、かかる全部又は一部の開示決定の内容としては、当該行政文書について、全部開示か一部開示かの別(一部開示の場合には、開示する部分と開示しない部 分との区別)が明らかにされている必要がある(前掲「詳細情報公開法」- 25 -98頁)。 当該行政文書について、全部開示か一部開示かの別(一部開示の場合には、開示する部分と開示しない部 分との区別)が明らかにされている必要がある(前掲「詳細情報公開法」- 25 -98頁)。 他方、行政機関の長は、開示請求に係る行政文書(対象文書)に不開示情報が含まれているため、その全部を開示しない場合、開示をしない旨の決定をし、開示請求者に対し、その旨を書面により通知しなければならない(情報公開法9条2項)。かかる不開示決定の内容としては、 不開示決定に係る行政文書の表示、不開示決定をした者の名称、不開示決定の日付等が含まれる(前掲「詳細情報公開法」100頁)。 (イ) 上記のとおり、行政文書の開示請求を受けた行政機関の長は、対象文書が存在する場合には、全部開示又は一部開示のときはもとより、全部不開示のときであっても、いかなる行政文書について開示又は不開示と したのかを開示請求者に通知しなければならないものと解される。 このことは、本件各開示請求のような概括的な開示請求がされた場合(開示請求の対象文書が概括的に特定されているため、開示決定等の前提として行政機関の長による対象文書の特定を要する場合)についても同様であって、開示請求を受けた行政機関の長は、開示請求に係る行政 文書(対象文書)が存在する場合には、対象文書をその名称により特定した上で、どの行政文書について開示又は不開示としたのかを通知する必要があるものと解される(なお、総務省行政管理局情報公開・個人情報保護推進室「情報公開事務処理の手引」の標準様式第2号及び第3号においても、開示又は不開示の決定においては、開示又は不開示とした 「行政文書の名称」を記載するものとされている(乙8)。)。 (ウ) 以上のとおり、概括的な開示請求に対する開示又は不 第3号においても、開示又は不開示の決定においては、開示又は不開示とした 「行政文書の名称」を記載するものとされている(乙8)。)。 (ウ) 以上のとおり、概括的な開示請求に対する開示又は不開示の決定においては、その前提として対象文書の特定とその通知が必要となるものと解されることに加え、保有していない行政文書を特定する必要はないため、対象文書の特定情報は当該文書の存在を前提とする情報であること も考慮すると、概括的な開示請求がされた場合における情報公開法8条- 26 -にいう「当該開示請求に係る行政文書が存在しているか否か」という存否情報には、開示請求に係る行政文書(対象文書)の総体としての存否情報(何らかの対象文書が1通でも存在するか否かという純然たる存否情報)のみならず、対象文書が存在する場合のその特定情報(対象文書の名称等の情報)も含まれ得ると解するのが相当である。 したがって、行政機関の長は、対象文書が存在する場合のその特定情報を回答することによる支障を、情報公開法8条該当性の判断において考慮することができるというべきである。 (エ) これに対し、原告は、仮に開示又は不開示の決定において具体的に対象文書を特定することによって不開示情報を開示することになるのであ れば、当該開示又は不開示の決定において、不開示情報を開示したことにならない程度に対象文書を概括的に特定して記載するに止めれば足りるとして、対象文書の特定情報を存否応答拒否の判断において考慮すべきではない旨主張する。 しかし、そもそも、行政機関の長は、一部開示又は不開示の決定にお いて、開示請求者が不開示の理由を明確に認識し得る程度の理由を付す必要があるものと解されるところ、どのような行政文書又はその部分について、どのような理由で不 は、一部開示又は不開示の決定にお いて、開示請求者が不開示の理由を明確に認識し得る程度の理由を付す必要があるものと解されるところ、どのような行政文書又はその部分について、どのような理由で不開示としたのかを示すためには、基本的に、行政文書の名称により対象文書を特定することが必要であるものと解される。また、仮に必要に応じて対象文書の概括的な特定が可能であると しても、どの程度まで許容されるのかは明らかでなく、対象文書の概括的な特定により常に不開示情報の開示を避けることができるとも解し難い。したがって、原告の上記主張は採用することができない。 (2) 4号不開示情報該当性の判断枠組みア情報公開法5条4号は、「公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は 捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及- 27 -ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」を不開示情報として定めるところ、上記「行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある」との文言は、同号の掲げるおそれの有無の判断については、当該情報の性質上、犯罪の予防等に関する将来予測としての専門的、技術的判断を要するなどの特殊性が認められることを考慮し、行 政機関の長の第一次的な判断を尊重する趣旨で定められたものと解される(前掲「詳細情報公開法」69頁参照)。 したがって、行政機関の長は、4号不開示情報に該当するか否かの判断につき、上記の見地からの裁量を有するものと解され、4号不開示情報該当性に関する行政機関の長の判断が違法となるのは、その判断が社会通念 上著しく不合理であるなど、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たると認められる場合に限られるものと解するのが相当である。 イ原告の主張について(ア) 違法となるのは、その判断が社会通念 上著しく不合理であるなど、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たると認められる場合に限られるものと解するのが相当である。 イ原告の主張について(ア) 原告は、情報公開法5条4号はいわゆる司法警察や刑事手続などの刑事法の執行を念頭に置いた規定であるとした上で、同号に基づき開示を 拒否することができるのは、行政機関の長が、「犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持」という刑事法の執行に係る公務のために作成又は取得した行政文書を所持している場合に限られるべきである(本件各請求対象文書はこのような場合に当たらないから4号不開示情報には該当しない)旨主張する。 しかし、情報公開法5条4号は、4号不開示情報該当性の判断主体である行政機関の長の所掌事務や、判断対象である行政文書の作成目的等について何ら限定も区別もしていない。また、「犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持」に支障が生じ得るのは、必ずしも当該行政機関が捜査等の公務の執行のために 行政文書を作成又は取得した場合に限られないと考えられるから、4号- 28 -不開示情報該当性につき上記のような限定を設けるのは、同号の趣旨にも反するというべきである。原告の上記主張は採用することができない。 (イ) 原告は、4号不開示情報該当性の判断につき行政機関の長に裁量が認められる理由は、開示・不開示に高度な政策的判断が伴い、専門的、技術的判断を要するという特殊性が認められると判断されるからであっ て、司法警察活動を所掌する行政機関の長ではない場合は、専門的、技術的な知識は一切持ち合わせていないから、広範な裁量を認める必要はなく、認めるべきでもない旨主張する れると判断されるからであっ て、司法警察活動を所掌する行政機関の長ではない場合は、専門的、技術的な知識は一切持ち合わせていないから、広範な裁量を認める必要はなく、認めるべきでもない旨主張する。 しかし、上記(ア)のとおり、情報公開法5条4号は、4号不開示情報該当性の判断を行う行政機関の長をその所掌事務により区別しておらず、 その裁量の範囲に原告主張のような差異を見出すことは困難である。実際にも、公にすることにより公共の安全等に支障を及ぼすおそれのある情報は、司法警察活動を所掌する行政機関だけではなく、その他の行政機関が保有することもあり得るのであり、例えば、捜査に関する同一内容の文書(原本と控え)をそれぞれ保有しているような場合に、司法警 察活動を所掌する行政機関であるかないかによって4号不開示情報該当性の結論が分かれることがあるとすれば、同号の趣旨に反する不合理な結果となるものと解される。原告の上記主張は採用することができない。 (ウ) さらに、原告は、本件における存否応答拒否の判断に特段の専門的、技術的知識は不要であるとか、本件における「行政機関の長」は本件各 被疑事件が起こった財務省や近畿財務局の長であり、いわば被疑者自身であるなどとして、広範な裁量を認めるべきでないとも主張するが、本件の個別事情により4号不開示情報該当性の判断に係る裁量権の範囲を限定ないし制限すべき根拠は見出し難い。原告の上記主張は採用することができない。 2 本件各不開示決定の適法性- 29 -(1) 情報公開法8条の存否応答拒否の要件を満たすか否かについてア存否応答拒否をしない場合に推知される情報(本件推知可能情報)について本件各開示請求は、財務省又は近畿財務局が、本件各被疑事件の捜査について、東京地検又 答拒否の要件を満たすか否かについてア存否応答拒否をしない場合に推知される情報(本件推知可能情報)について本件各開示請求は、財務省又は近畿財務局が、本件各被疑事件の捜査について、東京地検又は大阪地検に対して任意提出した一切の文書ないし準 文書の開示を求めるものであるから、本件各請求対象文書の存在が明らかになれば、本件各開示請求に含まれる情報と結合することにより、財務省又は近畿財務局が、本件各被疑事件の捜査について、東京地検又は大阪地検に対し、行政文書を任意提出したことや、当該行政文書が還付されたこと(又は、当該行政文書の任意提出の際に控えとして写しが作成されたこ と)が推知されることとなる。また、本件各請求対象文書の不存在が明らかになれば、財務省又は近畿財務局が、本件各被疑事件の捜査について、東京地検又は大阪地検に対し、行政文書を任意提出しなかったこと(あるいは、任意提出はされたものの、当該行政文書が還付されておらず、任意提出の際に写しも作成されていないこと)が推知されることとなる。 また、本件各開示請求は、「…任意提出した一切の文書ないし準文書」という、対象文書が具体的に特定されていない概括的な開示請求であるから、前述のとおり、財務大臣及び近畿財務局長は、情報公開法8条の存否応答拒否をしない場合には、開示又は不開示の決定を行う前提として、対象文書を特定する必要があると解される。そのため、本件各請求対象文書 が存在する場合には、開示又は不開示の決定通知書に記載された対象文書の特定情報(行政文書の名称等の情報)により、本件各被疑事件の捜査について、財務省又は近畿財務局が、どのような内容や形式の行政文書を、どの程度の範囲(時間的範囲、人的範囲等)で、どの程度の通数にわたり、東京地検又は大阪地検に任意提出 により、本件各被疑事件の捜査について、財務省又は近畿財務局が、どのような内容や形式の行政文書を、どの程度の範囲(時間的範囲、人的範囲等)で、どの程度の通数にわたり、東京地検又は大阪地検に任意提出したのかが推知されることとなる。 イ公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると認めることにつ- 30 -き相当の理由があるか(裁量権の範囲の逸脱又はその濫用の有無)について上記アのとおり、本件各請求対象文書の存否を明らかにして開示又は不開示の決定をした場合には、財務省又は近畿財務局が、本件各被疑事件の捜査について、東京地検又は大阪地検に対し、行政文書を任意提出したこ とや、当該行政文書が還付されたことなどが推知されることとなり、また、対象文書の特定情報により、本件各被疑事件の捜査について、財務省又は近畿財務局が、どのような内容や形式の行政文書を、どの程度の範囲(時間的範囲、人的範囲等)で、どの程度の通数にわたり、東京地検又は大阪地検に任意提出したのかが推知されることとなる。 そうすると、これらの情報を分析することにより、本件各被疑事件の捜査における捜査手法(いかなる内容又は形式の資料をいかなる方法で入手したか)や、捜査対象の範囲(任意提出された行政文書の内容、範囲、通数等)といった、具体的な捜査の内容や捜査機関の関心事項が推知されるおそれがあり、ひいては、将来、本件各被疑事件と同種の刑事事件のみなら ず、行政機関が捜査対象となる刑事事件一般の捜査についても、そのような情報や分析を踏まえて、捜査手法や捜査対象の範囲といった具体的な捜査の内容や捜査機関の関心事項が推知されるおそれがないとはいえない。 そうすると、将来の刑事事件の捜査において、捜査の内容や捜査機関の関心事項を事前に推知し、それを踏まえた罪 の範囲といった具体的な捜査の内容や捜査機関の関心事項が推知されるおそれがないとはいえない。 そうすると、将来の刑事事件の捜査において、捜査の内容や捜査機関の関心事項を事前に推知し、それを踏まえた罪証隠滅(例えば、捜査機関が関 心を有するであろう書類の廃棄や隠匿、電磁的記録であればその消去、重要視されるであろう関係者への働きかけなど)が容易となる可能性があるなど、将来の刑事事件の捜査に支障が及ぶおそれがあるということができ、少なくとも、そのようなおそれがあると判断することが社会通念上著しく妥当性を欠くなどということはできず、その裁量権の範囲を逸脱し又はこ れを濫用するものとはいえない。 - 31 -したがって、本件においては、刑事訴訟法の関係規定の趣旨や被告主張のその他の支障の有無について詳細に検討するまでもなく、本件各請求対象文書の存否を回答すれば、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由があるものといえるから、本件各不開示決定は、情報公開法8条の存否応答拒否の要件を満 たすものといえる。 ウ原告の主張(後記3の主張を除く。)について(ア) 原告は、本件審査基準によれば、情報公開法5条4号における犯罪の「捜査」とは、「捜査機関が犯罪があると思料するときに、公訴の提起(検察官が裁判所に対し、特定の刑事事件について審判を求める意思表 示をすることを内容とする訴訟行為をいう。)等のために犯人及び証拠を発見、収集又は保全することをいう。」とされているところ(甲15・9頁)、本件各被疑事件の捜査が既に終了していることからすれば、「公訴の提起等のために犯人及び証拠を発見、収集又は保全」する必要性はなく、本件各被疑事件に関する捜査の密行性が損なわれたり、証拠隠滅 頁)、本件各被疑事件の捜査が既に終了していることからすれば、「公訴の提起等のために犯人及び証拠を発見、収集又は保全」する必要性はなく、本件各被疑事件に関する捜査の密行性が損なわれたり、証拠隠滅 を容易にしたりすることも考えにくく、本件各請求対象文書は4号不開示情報には該当しない旨主張する。 しかし、仮に本件各請求対象文書が存在するとした場合の4号不開示情報該当性は、存否応答拒否の前提要件となるものではないが(前記1(1)ア(イ)参照)、そのことをひとまず措くとしても、本件各請求対象文 書の存否を明らかにして開示又は不開示の決定をする場合に、将来の刑事事件の捜査に支障が及ぶおそれがあると認めることにつき相当の理由があることは上記アで述べたとおりであって、本件各被疑事件の捜査が終了していることは、4号不開示情報該当性を左右するものではない。 原告の上記主張は採用することができない。 (イ) 原告は、本件各開示請求に係る行政文書の存否が明らかになれば、検- 32 -察庁が本件各被疑事件と同種の事件において、Bファイルに綴られたようなメールやその添付ファイルを証拠として入手しようとすることが明らかになるものの、そのような事実が明らかになったとしても、捜査の手法としては社会通念に照らして一般的かつ常識的なものであるから、「公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の 執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれ」が生ずることは考えられない旨主張する。 しかし、本件各対象文書の存否を明らかにして開示又は不開示の決定をする場合に、そのことから推知され得る捜査の手法等が常に想定の範囲内のものであるとは限らないし、捜査の内容や捜査機関の関心事項等 が推知されることにつき何らの問題も生じな 示又は不開示の決定をする場合に、そのことから推知され得る捜査の手法等が常に想定の範囲内のものであるとは限らないし、捜査の内容や捜査機関の関心事項等 が推知されることにつき何らの問題も生じないと断ずることは困難である。また、仮に実際の捜査の手法が「社会通念に照らして一般的かつ常識的」なものであったとしても、捜査がそのような範囲内にとどまることが明らかになれば、そのことが明らかになっていない場合と比較して、将来の刑事事件において、罪証隠滅等を企図する者にとってその罪証隠 滅等がより容易なものとなる可能性も否定し難い。本件各被疑事件の捜査において任意提出された文書という情報の性質に照らしても、将来の刑事事件の捜査に支障を及ぼすおそれがあると認めることにつき相当の理由があることは前述のとおりであって、原告の上記主張は採用することができない。 なお、原告は、以上のほかにも、①本件各被疑事件について任意提出された全ての文書の存否が明らかになるわけではないとか、②本件各被疑事件と同種の事件が将来生じ得る可能性があるとする前提は誤りであるなどと主張するが、①については、本件各被疑事件について任意提出された一部の文書が明らかになることによっても、公共の安全と秩序の 維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相- 33 -当の理由があるというべきであるし、②については、本件各被疑事件と同種の事件が将来生じ得る可能性が全くないとはいえないから、いずれも採用することができない。 3 本件各請求対象文書が存在することが公知の事実であった旨の原告の主張について 原告は、存否応答拒否が許されるのは、情報公開法8条にいう「開示請求に対し、当該開示請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、 ことが公知の事実であった旨の原告の主張について 原告は、存否応答拒否が許されるのは、情報公開法8条にいう「開示請求に対し、当該開示請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるとき」であるから、開示請求に係る行政文書(対象文書)の存否が不明である場合にのみ存否応答拒否が可能であり、その存在が公知の事実となっている場合には、当該行政文書について存否応答拒否をす ることはできないと主張し、その上で、本件各開示請求については、本件各不開示決定の時点で、①本件近畿財務局決裁文書(Aに係る売払決議書及び貸付決議書)、②Bファイル及び③財務省ウェブサイトに掲載されている決裁文書等といった本件各請求対象文書の存在が公知の事実であったから、本件各請求対象文書につき存否応答拒否をすることはできないと主張する。 そこで、以下、上記①ないし③の各文書につき、本件各請求対象文書として存在することが公知の事実であったか否か(あるいは、公にされていたか否か)について、関連する事実関係を認定した上で、検討する。 (1) 認定事実前記前提事実に加え、掲記の各証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実 が認められる。 ア第196回国会における質問主意書に対する答弁(ア) 質問主意書の提出(甲20)H参議院議員は、第196回国会(常会)の会期中である平成30年3月14日、参議院議長に対し、「Aへの国有地貸付・売却に関する決 裁文書原本の大阪地方検察庁への任意提出に関する質問主意書」として、- 34 -次の内容の質問主意書(以下「本件質問主意書」という。)を提出した。 「 Aへの国有地貸付・売却問題に関する公文書から、安倍総理夫人であるI氏の名前が削除されていたことが報じられるなど、 34 -次の内容の質問主意書(以下「本件質問主意書」という。)を提出した。 「 Aへの国有地貸付・売却問題に関する公文書から、安倍総理夫人であるI氏の名前が削除されていたことが報じられるなど、当該公文書の改ざんをめぐって、行政に対する国民の信頼が失墜している。同問題については、2015年の貸付契約に関する決裁文書並びに201 6年の売買契約に関する決裁文書(以下「両決裁文書」という。)の原本の所在をめぐって、財務省の説明が二転三転している。 J財務省理財局次長は3月2日夕方の野党合同ヒアリングにおいて、両決裁文書の原本は、近畿財務局にある旨明言した。また、同次長は、3月5日正午に開かれた参議院予算委員会理事会と同日午後4 時に開かれた野党国会対策委員会においても、両決裁文書の原本は近畿財務局にある旨説明した。 しかし、私を含む国会議員5人が、3月5日午後3時半過ぎに近畿財務局を訪れたが、午後4時50分ごろ、財務省理財局のF総務課長から私たちに電話があり、「原本は近畿財務局にありません。捜査当 局に任意提出しています」という趣旨の説明があった。そこで、以下質問する。 一 3月5日正午時点で両決裁文書の原本をすでに大阪地方検察庁に任意提出していたのであれば、参議院予算委員会理事会で虚偽の説明をしたことになる。両決裁文書の原本は同日正午時点でどこに存 在していたのか明らかにされたい。 二両決裁文書の原本を大阪地方検察庁に任意提出したのはいつか、日時を明らかにされたい。 三財務省は3月2日の「A文書書き換えの疑い」とする朝日新聞朝刊の報道を受け、両決裁文書の原本がどこに存在しているのか確 認したのか明らかにされたい。確認した場合、確認した日時、両決- 35 -裁文書の原本は確認時点でどこに存 疑い」とする朝日新聞朝刊の報道を受け、両決裁文書の原本がどこに存在しているのか確 認したのか明らかにされたい。確認した場合、確認した日時、両決- 35 -裁文書の原本は確認時点でどこに存在していたのか、その原本は国会に提出したものと同じであるのか、それぞれ明らかにされたい。 四両決裁文書の原本を近畿財務局が大阪地方検察庁に任意提出したことを財務省本省が知ったのはいつか、日時を明らかにされたい。」(イ) 質問主意書に対する答弁(甲21) 安倍晋三内閣総理大臣(当時)は、平成30年3月23日、参議院議長に対し、本件質問主意書への回答として、次の内容の答弁書(以下「本件答弁書」という。)を提出した。 「一から四までについて御指摘の「両決裁文書の原本」の意味するところが必ずしも明らか ではないが、財務省近畿財務局において決裁文書の原本として保有していた、学校法人Aへの大阪府豊中市a 町b番所在の土地の管理処分に係る売払決議書及び貸付決議書については、同局は大阪地方検察庁に対し、平成30年3月2日より前に提出しており、提出する際に、財務省本省にも同局から提出について報告がなされている。これらの 文書の内容は、財務省本省から平成30年3月12日より前に、国会や求めのあった議員に提出した写しと同様の内容である。」イ本件書籍の出版(甲22)原告ほか1名が執筆した「私は真実が知りたい夫が遺書で告発『A』改ざんはなぜ?」と題する書籍(本件書籍)が、令和2年7月に出版され た。本件書籍(154~155頁)には、次の記載がある。 「 ここでE氏は、改ざんの実態を示す、知られざる重要証拠をBさんが残していたことを、初めて明かした。 「Bさんはきっちりしているから、文書の修正、改ざんについて、ファイルに 、次の記載がある。 「 ここでE氏は、改ざんの実態を示す、知られざる重要証拠をBさんが残していたことを、初めて明かした。 「Bさんはきっちりしているから、文書の修正、改ざんについて、ファイルにして、きちっと整理していたんです。パソコンのデスクトップかな にかにあって。検察がガサ入れに来た時(注:実際は捜索は受けていない- 36 -ので任意提出と思われる)、Bさんは『これも出していいですか?』と聞いてきた。パラっと見たら、めっちゃきれいに整理してある。全部書いてある。どこがどうで、何がどういう本省の指示かって。修正前と修正後、何回かやり取りしたような奴がファイリングされていて、パッと見ただけでわかるように整理されている。これを見たら我々がどういう過程で改ざ んをやったのかが全部わかる。Bさんもそこは相手が検察なんで気になって『出しますか?』って。僕は『出しましょう、全部出してください』と言って持っていってもらったんです。全部見てもらって全部判断してもらったらいいという思いですから。僕ら的には改ざんなんかする必要はまったくなかったですし」 (中略)そしてもう一つ、この証言で重要な事実が浮かび上がっている。Bさんが残したという改ざんについての詳細なファイルの存在だ。これまで一切知られていなかった〝新事実〟だ。 E氏の言うとおりなら、それは大阪地検特捜部に提出されたはずだ。」 ウ別件訴訟におけるBファイルの証拠提出(ア) 別件訴訟の提起(甲1)原告は、令和2年3月18日、国及びCを被告として、Aに対する国有地売却問題に関し、原告の夫であり近畿財務局の職員であったBが、決裁文書の改ざんを強制されたことなどによる心理的負荷の過度な蓄積 によりうつ病を発病し、平成30年3月7日に自殺した旨主張し 有地売却問題に関し、原告の夫であり近畿財務局の職員であったBが、決裁文書の改ざんを強制されたことなどによる心理的負荷の過度な蓄積 によりうつ病を発病し、平成30年3月7日に自殺した旨主張して、被告国に対し、国家賠償法1条1項に基づき損害賠償を請求するとともに、Cに対し、民法709条に基づき損害賠償を請求する訴訟(別件訴訟)を提起した。 (イ) 別件訴訟におけるBファイルの証拠提出(甲2~4) 原告は、令和3年2月8日、別件訴訟において、Bファイルの提出を- 37 -求める旨の文書提出命令の申立てをした。 被告は、上記申立てを受けて、令和3年6月21日、別件訴訟において、立証趣旨を「改ざんの過程等に関して亡Bが作成した文書」として、Bファイルを証拠として提出した。 Bファイルの存在及びその内容は、複数の報道機関によって広く報道 された。 (2) 本件近畿財務局決裁文書(①)についてア認定事実アのとおり、安倍晋三内閣総理大臣(当時)は、本件質問主意書における、「両決裁文書の原本を大阪地方検察庁に任意提出したのはいつか、日時を明らかにされたい。」という質問に対し、本件答弁書におい て、「財務省近畿財務局において決裁文書の原本として保有していた、学校法人Aへの…売払決議書及び貸付決議書については、同局は大阪地方検察庁に対し、平成30年3月2日より前に提出して」いる旨回答している。 このような本件質問主意書と本件答弁書の内容からすれば、近畿財務局が、大阪地検に対し、本件近畿財務局決裁文書を平成30年3月2日より前に 任意提出したことは、本件各不開示決定当時、現に公衆が知り得る状態に置かれているという意味で「公にされていた」ということができる(ただし、ほとんど誰でも知っている「公知の事実」であった 前に 任意提出したことは、本件各不開示決定当時、現に公衆が知り得る状態に置かれているという意味で「公にされていた」ということができる(ただし、ほとんど誰でも知っている「公知の事実」であったとまでは認め難い。 なお、被告は、本件答弁書にいう「提出」が、任意提出であるか差押えによるものであるかは明らかでない旨主張するが、本件質問主意書からの文脈 上、「提出」とは任意提出の意味であるといえ、採用し難い。)。 もっとも、本件答弁書においては、本件近畿財務局決裁文書が任意提出された経緯等は明らかにされておらず、本件質問主意書の内容を踏まえてもなお、本件近畿財務局決裁文書が、「本件各被疑事件の捜査」のために任意提出されたものであるかどうかは明らかにされていない。したがって、 「本件各被疑事件の捜査」のためであることを推認により認定し得るかど- 38 -うかは別として、少なくとも、このことが公知の事実であったとか、公にされていたとは認められない。 イまた、本件近畿財務局決裁文書が、本件局長不開示決定時点において、「本件局長請求対象文書として存在していた」といえるためには、その時点において、近畿財務局が本件近畿財務局決裁文書を保有していたことが 必要であるところ、この点については、前記認定事実や関係証拠に照らしても、公知の事実であったとはいえないし、公にされていたとも認められない。 すなわち、本件近畿財務局決裁文書が大阪地検に任意提出されていたとすると、本件局長不開示決定の時点においてこれが「本件局長請求対象文 書として存在していた」といえるためには、少なくとも、①その時点までに任意提出された原本が近畿財務局に還付されていたか、あるいは、②近畿財務局が任意提出する前に控えとして写しを作成していたことが必要で して存在していた」といえるためには、少なくとも、①その時点までに任意提出された原本が近畿財務局に還付されていたか、あるいは、②近畿財務局が任意提出する前に控えとして写しを作成していたことが必要である。しかし、上記①又は②の事実を推認により認定し得るかどうかは別として、少なくとも、これらの事実が公知の事実であったとか、公にされ ていたことを裏付けるような証拠は見当たらない。 ウ以上のとおり、本件近畿財務局決裁文書は、本件局長不開示決定の時点において、本件局長請求対象文書として存在していたことが公知の事実であったとも、公にされていたとも認められない。 なお、原告は、本件近畿財務局決裁文書が、本件各被疑事件の捜査のた め任意提出されたものであることは明らかであるとか、その原本が近畿財務局に還付されている(又は写しが作成されている)ことは明らかであるなどと主張するが、客観的で明確な根拠に基づくものではなく、飽くまでもそのような可能性ないし蓋然性が高いという主張にとどまり、これらの事実が公知の事実であったとも、公にされていたとも認められないことは 前述のとおりである。原告の上記主張はいずれも採用することができない。 - 39 -(3) Bファイル(②)及び財務省ウェブサイトに掲載されている決裁文書等(③)についてア認定事実ウのとおり、被告が、令和3年6月21日、別件訴訟において、立証趣旨を「改ざんの過程等に関して亡Bが作成した文書」として、Bファイルを証拠として提出し、そのことが複数の報道機関によって広く報道 されたことからすれば、Bファイルが文書として存在することは、本件局長不開示決定の時点において、ほとんど誰でも知っている「公知の事実」であったと認められる。 もっとも、認定事実イのとおり、本件書籍には、 ことからすれば、Bファイルが文書として存在することは、本件局長不開示決定の時点において、ほとんど誰でも知っている「公知の事実」であったと認められる。 もっとも、認定事実イのとおり、本件書籍には、「Bさんが残したという改ざんについての詳細なファイルの存在だ。これまで一切知られていな かった〝新事実〟だ。E氏の言うとおりなら、それは大阪地検特捜部に提出されたはずだ。」との記載があるにとどまり、Bファイルが大阪地検に任意提出されたか否かについては、本件書籍の記載からは明らかでなく、他にBファイルが任意提出されたことが公知の事実であったとか、公にされていたと認めるに足りる証拠はない。 しかも、本件近畿財務局決裁文書(上記(2))と同様、Bファイルが、「本件各被疑事件の捜査」のために任意提出されたものであるどうかや、本件局長不開示決定時点において、近畿財務局が保有していたかどうかも明らかでなく、これらの点が公知の事実であったとか、公にされていたとは認められない。 イまた、財務省ウェブサイトに掲載されている決裁文書等(③)についてみても、その文書としての存在は財務省ウェブサイトにより「公にされていた」ものと認められるが、これらの決裁文書等が本件各被疑事件の捜査のために任意提出されたものであるかどうかや、本件各不開示決定時点において財務省又は近畿財務局がこれを保有していたかどうかは明らかでな く、これらの点が公知の事実であったとか、公にされていたとは認められ- 40 -ない。 ウしたがって、Bファイル(②)や財務省ウェブサイトに掲載されている決裁文書等(③)についても、これらの文書が本件各請求対象文書として存在することが公知の事実であったとか、公にされていたとは認められない。これに反する原告の主張は採用 省ウェブサイトに掲載されている決裁文書等(③)についても、これらの文書が本件各請求対象文書として存在することが公知の事実であったとか、公にされていたとは認められない。これに反する原告の主張は採用することができない。 (4) 小括以上によれば、原告が掲げる①本件近畿財務局決裁文書、②Bファイル及び③財務省ウェブサイトに掲載されている決裁文書等を検討しても、本件各不開示決定の時点で、本件各請求対象文書の存在が公知の事実であったとか、公にされていたとは認められないから、原告の上記主張は、その前提を欠く ものであって採用することができない。 4 まとめ以上のとおり、本件各不開示決定は、情報公開法8条の存否応答拒否の要件を満たすものであって、いずれも適法である。 第4 結論 よって、原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官徳地 淳 裁判官太田章子 - 41 - 裁判官牛濵裕輝- 42 -(別紙1の掲載省略)- 43 -(別紙2)開示請求文書目録1 財務省が、学校法人Aに対する国有地売却問題に関連した以下の被疑事件の捜査について、東京地方検察庁又は大阪地方検察庁に対して任意提出した一切の文書な いし準文書(任意提出した際の控えないしは各検察庁から還付されたものを含む。) 1 大阪第一検察審査会が、添付資料1のとおり、平成31年3月15日付けで議決(大阪第一検審第39号)を行った被疑者K外6名に対する背任、証拠隠滅教唆被疑事件及び被疑者氏名不詳者に対す む。) 1 大阪第一検察審査会が、添付資料1のとおり、平成31年3月15日付けで議決(大阪第一検審第39号)を行った被疑者K外6名に対する背任、証拠隠滅教唆被疑事件及び被疑者氏名不詳者に対する証拠隠滅被疑事件(大阪地検平成29 年検第12218号ないし12225号)。 2 大阪第一検察審査会が、添付資料2のとおり、平成31年3月15日付けで議決(大阪第一検審第40号)を行った被疑者氏名不詳者外Cを含む9名に対する有印公文書変造・同行使、公用文書毀棄被疑事件(大阪地検平成30年検第8508号ないし8517号)。 3 大阪第一検察審査会が、添付資料3のとおり、平成31年3月15日付けで議決(大阪第一検審第41号)を行った被疑者氏名不詳者外Cを含む9名に対する公用文書毀棄被疑事件(大阪地検平成30年検第8518ないし8527号)。 - 44 -(別紙3)開示請求文書目録2 近畿財務局が、学校法人Aに対する国有地売却問題に関連した以下の被疑事件の捜査について、東京地方検察庁又は大阪地方検察庁に対して任意提出した一切の文 書ないし準文書(任意提出した際の控えないしは各検察庁から還付されたものを含む。) 1 大阪第一検察審査会が、添付資料1のとおり、平成31年3月15日付けで議決(大阪第一検審第39号)を行った被疑者K外6名に対する背任、証拠隠滅教 唆被疑事件及び被疑者氏名不詳者に対する証拠隠滅被疑事件(大阪地検平成29年検第12218号ないし12225号)。 2 大阪第一検察審査会が、添付資料2のとおり、平成31年3月15日付けで議決(大阪第一検審第40号)を行った被疑者氏名不詳者外Cを含む9名に対する有印公文書変造・同行使、公用文書毀棄被疑事件(大阪地検平成30年検第85 08号 とおり、平成31年3月15日付けで議決(大阪第一検審第40号)を行った被疑者氏名不詳者外Cを含む9名に対する有印公文書変造・同行使、公用文書毀棄被疑事件(大阪地検平成30年検第85 08号ないし8517号)。 3 大阪第一検察審査会が、添付資料3のとおり、平成31年3月15日付けで議決(大阪第一検審第41号)を行った被疑者氏名不詳者外Cを含む9名に対する公用文書毀棄被疑事件(大阪地検平成30年検第8518ないし8527号)。

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