平成16(行コ)357 不開示決定取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成15年(行ウ)第396号)

裁判年月日・裁判所
平成17年7月14日 東京高等裁判所 情報公開
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判決文本文6,189 文字)

主文 1 原判決中平成11年度論文式試験の総合順位に係る不開示決定処分取消請求に関する部分を取り消す。 2 司法試験管理委員会委員長が控訴人に対して平成15年4月23日付けでした,処理情報の一部不開示決定処分(ただし,平成16年3月26日付け処理情報の一部開示決定処分による一部取消し後のもの)のうち,平成11年度論文式試験の総合順位を開示しないとした部分を取り消す。 3 その余の本件控訴を棄却する。 4 訴訟費用は,第1,2審を通じて2分し,その1を控訴人の負担とし,その余を被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を次のとおり変更する。 2 司法試験管理委員会委員長が控訴人に対し平成15年4月23日付けでした,処理情報の一部不開示決定処分(ただし,平成16年3月26日付け処理情報の一部開示決定処分による一部取消し後のもの)を取り消す。 第2 事案の概要 1 本件は,平成9年度から平成11年度までの各年度の司法試験第二次試験の受験者である控訴人が,司法試験管理委員会委員長に対し,行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第58号による全部改正前の昭和63年法律第95号。ただし,平成15年法律第119号による改正前のもの。以下「行政機関個人情報保護法」という。)第13条第1項に基づき,司法試験第二次試験ファイルに記録された自己の試験成績等の処理情報の開示を請求したところ,司法試験管理委員会委員長が,行政機関個人情報保護法第14条第1項第1号ニ及び第3号に該当することを理由として,請求を受けた処理情報の一部につき不開示決定処分(以下「本件不開示決定処分」という。)をしたため,これを不服とする控訴人が,上記不開示とされた処理 1項第1号ニ及び第3号に該当することを理由として,請求を受けた処理情報の一部につき不開示決定処分(以下「本件不開示決定処分」という。)をしたため,これを不服とする控訴人が,上記不開示とされた処理情報のうち,平成9年度から平成11年度までの司法試験第二次試験論文式試験の科目別得点,平成11年度の同論文式試験の総合順位,平成11年度の司法試験第二次試験口述試験の科目別得点及び総合順位を不開示とした部分につき,その取消しを求めた事案である。 なお,平成16年1月1日,司法試験法及び裁判所法の一部を改正する法律(平成14年法律第138号。以下「改正法」という。)が施行され,国家行政組織法第3条第2項に基づく委員会であった司法試験管理委員会は,同法第8条に基づく合議制の機関である司法試験委員会に改組された。これに伴い,改正法の施行前に,法令の規定により司法試験管理委員会の委員長がした処分その他の行為は,改正法の施行後は,当該法令の相当規定により法務大臣がした処分その他の行為とみなされることとなったため(改正法附則第3条第2項),法務大臣は,本件訴訟を承継した。 2 原判決は,控訴人が不開示決定の取消しを求めた処理情報のうち,平成11年度の司法試験第二次試験口述試験の総合順位については,これを不開示としたことが違法であるが,その余の情報を不開示としたことは適法である旨を判示して,平成11年度の司法試験第二次試験口述試験の総合順位を不開示とした限度で,本件不開示決定処分を取り消し,控訴人のその余の請求を棄却したので,これを不服とする控訴人が控訴を申し立てた。なお,被控訴人は,上記敗訴部分につき,不服申立てをしていないから,本件請求のうち,平成11年度の司法試験第二次試験口述試験の総合順位を不開示とした点については,当審における審判の対象 を申し立てた。なお,被控訴人は,上記敗訴部分につき,不服申立てをしていないから,本件請求のうち,平成11年度の司法試験第二次試験口述試験の総合順位を不開示とした点については,当審における審判の対象から除外された。 3 法令の定め,前提となる事実,争点及び争点に関する当事者の主張の要旨は,原判決「事実及び理由」欄「第二事案の概要」の一ないし四(原判決3頁5行目から40頁18行目まで。ただし,平成11年度の司法試験第二次試験口述試験の総合順位を不開示とした点に関する部分を除く。)に記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,原判決6頁17行目,7頁9行目から10行目,同頁14行目,同頁18行目の各「司法試験法」をいずれも「旧司法試験法」に訂正する。)。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は,本件不開示処分のうち,平成9年度から平成11年度までの司法試験第二次試験論文式試験の科目別得点及び平成11年度の司法試験第二次試験口述試験の科目別得点を不開示とした部分は適法であるが,平成11年度の司法試験第二次試験論文式試験の総合順位を不開示とした部分は違法であると判断する。 その理由は,次のとおり補正し,後記2において,控訴人の当審における主張に対する判断を付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄「第三争点に対する判断」の一ないし三(原判決40頁20行目から62頁3行目まで。ただし,平成11年度の司法試験第二次試験口述試験の総合順位を不開示とした点に関する部分を除く。)に説示するとおりであるから,これを引用する。 ただし,原判決49頁4行目から50頁3行目までを次のとおり改める。 「(三) これに対し,論文式試験合格者の総合順位を開示した場合においては,そもそも総合順位の高順位者であったとしても,その者が当然に各科目にお 4行目から50頁3行目までを次のとおり改める。 「(三) これに対し,論文式試験合格者の総合順位を開示した場合においては,そもそも総合順位の高順位者であったとしても,その者が当然に各科目における高得点を取得したとの前提が成り立ち得ないことを考えれば,論文式試験受験者の科目別得点が開示されない以上,総合順位の高順位者が再現した答案であることから,直ちにそれが各科目における高得点答案であったということにはならないから,仮に,論文式試験合格者の総合順位を開示し,司法試験予備校が受験者から募集した多数の再現答案を分析する際にその開示結果を利用したとしても,その再現答案が実際に考査委員から高い評価を受けたものであるか否かは不明であって,再現答案にランクを付けて受験情報誌等に掲載したとしても,それは,当該司法試験予備校の主観的評価を示したものにすぎないというべきことになる。すなわち,論文式試験合格者の総合順位を開示した場合,司法試験予備校等がその開示結果を利用することにより,合格者の作成した再現答案が高得点答案であるかどうかを判断する際の一資料にはなり得るとしても,科目別得点が開示されなければ,総合順位についての開示結果を利用することによって,ある再現答案がその科目における高得点答案であるといえるかどうかについて,現状よりもより精度の高い分析が可能になるとは考え難く,この点において,論文式試験合格者の科目別得点を開示する場合の予想される弊害との間には大きな隔たりがあると解するのが相当である。確かに,現在でも,本人の請求があれば,論文式試験の科目別順位ランクが開示されていることは前記のとおりであるが,順位ランクでは,1位から2000位までがAランクとされているから,Aランクに属する答案の中にも相当ばらつきがあるはずであることも前記のとおり 順位ランクが開示されていることは前記のとおりであるが,順位ランクでは,1位から2000位までがAランクとされているから,Aランクに属する答案の中にも相当ばらつきがあるはずであることも前記のとおりであり,したがって,科目別得点が開示されなければ,科目別順位ランクが開示されたとしても,再現答案等を基礎として,現状より精度の高い分析が可能となるとはいい難い。以上の事情に加えて,現在においても,司法試験第二次試験論文式試験得点別人員表の開示を受け,この表と自分の総合得点とを照合することによって,おおよその総合順位を推測することが可能であることをも考え併せれば,論文式試験合格者の総合順位を開示することによって,直ちに司法試験に関する事務の適正な遂行に支障を及ぼすということはできないし,被控訴人において,他に上記支障が生じることについての主張,立証をしないのであるから,本件不開示処分のうち,論文式試験合格者の総合順位を不開示とした部分は違法といわざるを得ない。 (四) 以上のとおり,論文式試験の科目別得点を開示することにより,受験者らは,ますます,高得点を得たとされる答案の書きぶり,論述の運びなどの外形を模倣することに力を注ぐようになり,その結果として,答案のパターン化,画一化に一層の拍車がかかることは明らかであって,論文式試験を通して各受験者の理解力,推理力,判断力,論理的思考力,説得力,文章作成能力等を総合的に評価して採点をするという論文式試験の選抜機能が一層低下し,司法試験事務の適正な遂行に支障が及ぶものと認められるが,論文式試験合格者の総合順位を開示したとしても,上記のような弊害が発生するとはいえない。 したがって,論文式試験の科目別得点の開示は,司法試験に関する事務の適正な遂行に支障を及ぼすものということが 者の総合順位を開示したとしても,上記のような弊害が発生するとはいえない。 したがって,論文式試験の科目別得点の開示は,司法試験に関する事務の適正な遂行に支障を及ぼすものということができるから,本件不開示決定のうち,これらを不開示とした部分は適法というべきであるが,論文式試験合格者の総合順位を不開示とした部分は違法であるといわざるを得ない。」 2 控訴人の当審の主張に対する判断(1) 控訴人は,平成9年度から平成11年度までの司法試験第二次試験論文式試験の科目別得点を不開示にしたことについて,このような情報が不開示とされるには,司法試験に関する事務の適正な遂行に支障を及ぼすことにつき,単なる確率的な可能性や蓋然性では足りず,そのような弊害が生じることについての確実性が立証されることが必要であるにもかかわらず,被控訴人がその立証をしていない旨を主張する。 しかしながら,司法試験は,裁判官,検察官又は弁護士といった法曹になろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的とする国家試験であるところ(司法試験法第1条第1項参照),法曹が国民の法的利益の実現等にかかわる重要な役割を担うものであることに照らすと,司法試験の選抜機能が害されれば,法曹の質の低下を招くおそれがあり,そのような事態になれば,国民全般が不利益を受けるばかりか,司法制度自体に深刻な影響を与えかねないことは容易に推測されるのであるから,司法試験の選抜機能を損なうような事態の発生は,極力回避する必要があるというべきであるところ,前記引用に係る原判決の認定事実によれば,司法試験第二次試験論文式試験の科目別得点を開示した場合は,司法試験予備校による分析等において,当該試験で高得点を得たとされる答案の再現が一層容易 ところ,前記引用に係る原判決の認定事実によれば,司法試験第二次試験論文式試験の科目別得点を開示した場合は,司法試験予備校による分析等において,当該試験で高得点を得たとされる答案の再現が一層容易になることから,各受験者が,司法試験の受験準備の過程において,ますます,高得点を得たとされる答案の書きぶり,論述の運びなどの外形を模倣することに力を注ぐこととなり,その結果として,答案のパターン化,画一化に一層の拍車がかかり,論文式試験を通して,各受験者の有する学識のみならず,その理解力,推理力,論理的思考,説得力,文章作成能力等を総合的に評価して採点するという論文式試験の選抜機能が一層低下し,司法試験事務の適正な遂行に支障を及ぼす弊害が増大するであろうことは明らかというべきであることは前記のとおりであるから,被控訴人は,平成9年度から平成11年度までの司法試験第二次試験論文式試験の科目別得点が開示されれば,司法試験に関する事務の適正な遂行に支障を及ぼすことについての立証を尽くしたということができる。よって,控訴人の上記主張は,失当であり,採用することができない。 (2) 控訴人は,さらに,平成11年度の司法試験第二次試験口述試験の科目別得点が不開示にされたことについて,考査委員に対する萎縮的効果を理由にこれらに関する情報の不開示を適法とした原判決を非難する。 しかしながら,司法試験第二次試験口述試験の科目別得点を開示することにより,司法試験予備校による個々の考査委員の採点傾向等に関する情報の公表に加え,考査委員に対する誹謗中傷やいわれのない個人攻撃が更に強まる蓋然性が高く,各考査委員の自由で公正中立な採点を行うという基本的な姿勢が萎縮的な影響を受ける可能性が大きいことは,前記引用に係る原判決が説示するとおりである上,前記 われのない個人攻撃が更に強まる蓋然性が高く,各考査委員の自由で公正中立な採点を行うという基本的な姿勢が萎縮的な影響を受ける可能性が大きいことは,前記引用に係る原判決が説示するとおりである上,前記のとおり,司法試験に関する事務の適正な遂行は,国民の利益に重大な影響を与えるものであることを考え併せれば,控訴人の上記主張は,理由がないものといわざるを得ないから,採用することはできない。 3 まとめ以上によれば,本件不開示処分のうち,論文式試験及び口述試験の科目別得点を不開示とした部分は,行政機関個人情報保護法第14条第1項第1号ニに該当するから適法であり,その違法を理由とする控訴人の取消請求は理由がない。これに対し,論文式試験合格者の総合順位を不開示とした部分は,同項第1号ニ又は第3号のいずれにも該当しないから,違法であるといわざるを得ず,その取消しを求める控訴人の請求は,その限度において,理由があるといわなければならない。 第4 結論以上のとおり,控訴人の本件請求のうち,平成11年度論文式試験の総合順位に係る不開示決定処分の取消しを求める部分については理由があるから認容し,平成9年度から平成11年度までの論文式試験及び平成11年度の口述試験の各科目別得点の不開示決定処分の取消しを求める部分については理由がないから棄却することとする。よって,本件控訴は一部理由があるから,原判決中平成11年度論文式試験の総合順位に係る不開示決定処分取消請求に関する部分を取り消した上で,本件不開示決定処分のうち同部分を不開示とした決定処分を取り消し,その余の本件控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第21民事部 裁判長裁判官濱野惺 その余の本件控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。 主文 東京高等裁判所第21民事部 裁判長裁判官 濱野惺 裁判官 高世三郎 裁判官 長久保尚善

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