【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 理 由 弁護人木島次朗上告趣意書第一点は「原審判決は被告人等が共謀の上犯意継続し て昭和二十二年五月二十四日及び同三十日の二回に
主 文 本件上告を棄却する。 理 由 弁護人木島次朗上告趣意書第一点は「原審判決は被告人等が共謀の上犯意継続し て昭和二十二年五月二十四日及び同三十日の二回に渉り牝牛二頭を窃取した事実を 認め其証拠として被告人等の公廷に於ける自白と被害者の提出した被害顛末の記載 とによつて証明十分であるとしてゐる被告人の自白を唯一の証拠と為し得ないこと は申す迄もない所であるが被害者の盗難届書中の被害顛末の記載には只各被害者所 有の牝牛壱頭が窃取されたとの趣旨以外の記載はないそして右盗難届の内容に付て は公廷に於て被告人に何等の弁解をも為さしめてはないのであるから原審判決は明 かに被告人の自白を唯一の証拠として事実を認定したことに帰着し明かに違法であ ると信ずる」と言うのである。然しながら、日本国憲法施行に伴う刑事訴訟法の応 急的措置に関する法律第十条第三項に規定されて居る「本人の自白」の内には、公 判廷に於て為した被告人の自白に含まれて居らぬものだと言う事は、当裁判所判例 の示す通りであるから、仮りに上告論旨の如く被告本人の自白を唯一の証拠とした ものだとしても、論旨は理由無きものである。況んや原判決は被告人の自白の真実 性を確かめる為め、各被害者の盗難届を援用し之れと照り合せて事実を認定したも のであるから、被告人の自白を唯一の証拠としたと言う論旨の理由無き事は明白で ある。次に原判決は、各盗難届の内容について被告人に何等の弁解をさせない違法 があると言うのであるが、これは事実に反する主張である。原審公判調書を調べて 見ると、裁判長は証拠調を為す旨を告げ、証拠調として、一審公判調書中、証拠調 の部に列記してある各書類の各要旨を告げ、意見弁解の有無を問い、右各書類中其 作成者又は供述者の訊問を請求する事が出来る旨を告げた処、被告人及弁護人は何 れ を告げ、証拠調として、一審公判調書中、証拠調 の部に列記してある各書類の各要旨を告げ、意見弁解の有無を問い、右各書類中其 作成者又は供述者の訊問を請求する事が出来る旨を告げた処、被告人及弁護人は何 れも意見が無い旨を述べたものである事が明記されて居る。そして一審公判調書中 - 1 - 証拠調の部には、「盗難届各通」とあり、本件記録中には右以外の盗難届と題する 書類は無いから原審証拠調手続には論旨の如き違法はないと言はなければならない。 従つて上告趣意書第一点は何れの点から見ても理由なきものである。 同上第二点は「原審に於て弁護人は本件被告人等には何れも刑の執行を猶予せら る可き情状ある旨述べたにもかゝわらず此点に付て何等の説明する事なくして実刑 の言渡しありたることは明かに違法であると信ずる」と言うのであるが、刑事訴訟 法第三百六十条第二項に「法律上犯罪ノ成立ヲ阻却スベキ原由又ハ刑ノ加重減免ノ 原由タル事実上ノ主張アリタルトキハ之ニ対スル判断ヲ示スベシ」と規定してある が所謂「刑ノ減免ノ原由タル事実」と言うのは、刑罰法規が特定の事由ある場合に 必ず刑の減免を為すべきものとして規定した事由を指すのであつて刑の裁量の標準 となるべき諸般の情状の如き裁判所の裁量にゆだねた場合の如きは、之れに該当せ ぬものであると言う事は、大審院判例の示すところであり、今之れを改める理由は 認められない。従つて、原審に於て、刑の執行を猶予すべき情状ある旨を主張した としても、其主張の如きは刑の裁量の標準となるべき情状に関する主張であつて、 前記法条に所謂刑の減免の原由たる事実上の主張に該当せぬものである。従つて、 原審に於ては、被告人に対し執行猶予を与えぬ事に付いての特段の判断を示す必要 は無いものであるから、論旨は理由なきものであるから刑事訴訟法第四百四十六条 により主文の如く判決する。以上は ある。従つて、 原審に於ては、被告人に対し執行猶予を与えぬ事に付いての特段の判断を示す必要 は無いものであるから、論旨は理由なきものであるから刑事訴訟法第四百四十六条 により主文の如く判決する。以上は裁判官全員一致の意見である。 検察官宮本増蔵関与 昭和二十三年一月二十七日 最高裁判所第三小法廷 裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎 裁判官 井 上 登 裁判官 庄 野 理 一 - 2 - 裁判官 島 保 裁判官 河 村 又 介 - 3 -
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