平成17(行コ)18 生活保護費不正受給返還履行請求控訴事件(原審 仙台地方裁判所平成16年(行ウ)第4号)

裁判年月日・裁判所
平成17年11月30日 仙台高等裁判所 住民訴訟
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判決文本文4,497 文字)

主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実 及び理由第1控訴の趣旨 原判決を取り消す。 本件を仙台地方裁判所に差し戻す。 第2事案の概要等 本件の事案の概要等は,原判決の「事実及び理由」欄の「第2事案の概要等」に記載のとおり(ただし,後記2のとおり,当審における控訴人らの主張を付加する)であるから,これを引用する。 。 ,,,,なお原審は法78条に基づく費用徴収は4号訴訟の対象とならずまた被控訴人には不法行為に基づく損害賠償請求権の行使権限がなく被告適格がない旨の理由で,本訴を不適法として却下したものであり,控訴人らが,これを不服として控訴を提起したので,当審における争点は,本訴の適法性,殊に,①法78条に基づく費用徴収の4号訴訟対象性,②被控訴人の損害賠償請求権等の行使権限の有無である。 上記争点に関する当審における控訴人らの主張は,次のとおりである。 ( )法78条に基づく費用徴収の4号訴訟対象性について まず,法78条に基づく費用徴収が不法行為に基づく損害賠償請求権及び不当利得返還請求権の性質を有することは,原判決の「事実及び理由」欄の「第2事案の概要等」の4( )ア記載のとおりであるところ,原判決はこ の点につき判断をしていない。そして,不当利得制度が利得の保有が正義,公平の基本原理に照らし是認できない場合における個別的救済のための公法,私法を通ずる基本法理であるとすれば,法78条に係る請求権が公法上の請求権であっても,その理が当てはまり,4号訴訟の対象となると解すべ きである。 また原判決は徴収権者の裁量相手方の地位等を強調して法7,,「」,「」,8条に基づく費用徴収の4号訴訟対象性を否定するが,そのような解釈は,仮に 象となると解すべ きである。 また原判決は徴収権者の裁量相手方の地位等を強調して法7,,「」,「」,8条に基づく費用徴収の4号訴訟対象性を否定するが,そのような解釈は,仮に,重大な保護の不正受給があったとしても,徴収権者が権利を行使しない限り,普通地方公共団体の損害を回復することができなくなり,地方自治。 「」法が定める住民訴訟制度の趣旨を没却することになる特に相手方の地位,「」,についてはおよそ4号訴訟の場合には常に相手方が存在するのでありそれを理由に4号訴訟を排斥することはできない。 さらに,法の支配の下では違法な状態は正すのが当然であるから,法78条に基づく費用徴収は全部の徴収が原則であって,法78条が一部の徴収を規定する趣旨は,被保護者等の経済事情を考慮する点にあるので,そのような例外は法の趣旨の範囲内で限定的に認められるべきである。このように,法78条は徴収権者に無制限な自由裁量を認めているわけではなく,裁量権の濫用及び逸脱の問題を内包するから,裁量権の一事をもって法78条に基づく費用徴収の4号訴訟対象性を否定することはできない。 ( )被控訴人の損害賠償請求権等の行使権限の有無について 被控訴人は,多賀城市長から一般的な損害賠償請求権の行使権限につき委任を受けていないが,法78条に基づく費用徴収に関することについては委任を受けており,その徴収に当たりどのような法律構成によるかは被控訴人に委ねられていると解されるから,被控訴人が不法行為に基づく損害賠償請求権という法律構成により,法78条の目的を達することは許される。 また,平成16年法律84号による行政事件訴訟法改正において,取消訴訟の被告が行政庁から国又は公共団体に変更されたところ,これは,従前,,,国民の側から見て被告を正 目的を達することは許される。 また,平成16年法律84号による行政事件訴訟法改正において,取消訴訟の被告が行政庁から国又は公共団体に変更されたところ,これは,従前,,,国民の側から見て被告を正確に特定することが困難なことが多くそのため国民に大きな負担をかけていたことから,これを見直し,国民の提訴を容易にしたものであるが,そのような改正の趣旨にかんがみれば,本訴において も,原審は,控訴人らに対し被告を変更する機会を与えるべきであったのであり,それをしなかった訴訟指揮は適正手続違反である。 第3当裁判所の判断 法78条に基づく費用徴収の4号訴訟対象性について法78条は不実の申請その他不正な手段により保護を受け又は他人をし,「,て受けさせた者があるときは,保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は,,。」。 その費用の全部又は一部をその者から徴収することができると規定するこのような規定の内容にかんがみると,法78条に基づく費用徴収の根底には,被保護者等に対する不当利得返還請求権又は不法行為に基づく損害賠償請求権と同様の趣旨があるというべきではあるが,これが敢えて法78条として立法された趣旨は,本来,普通地方公共団体は不正な手段により受けた保護に要した費用は全額徴収すべきであるところ,被保護者の困窮状態,不正の程度等の事情によっては,全額を徴収するのが適当でない場合があることから,このような非財務会計的要素に関する第1次的判断を普通地方公共団体の長に委ね,裁量に基づく行政処分により普通地方公共団体と被保護者等との具体的な(,,債権債務関係を形成する権限を与えたものと解されるもとより法78条は普通地方公共団体の長に対し無制限の裁量権を与えるものではないが,上記要素の性質上,徴収額の決定に際し,各要素をどの程度考 ,,債権債務関係を形成する権限を与えたものと解されるもとより法78条は普通地方公共団体の長に対し無制限の裁量権を与えるものではないが,上記要素の性質上,徴収額の決定に際し,各要素をどの程度考慮すべきかにつき相応の裁量権があることは否定できない。そうすると,法78条に係る普通地方。)公共団体の被保護者等に対する請求権は,その長による法78条に基づく処分がなければ具体的に発生しない,換言すれば,普通地方公共団体がそのような請求権を行使するためには,前提として,その長において法78条に基づく処分をする必要があるということができる。また,以上のような法78条に基づく費用徴収の構造及び非財務会計的要素の存在にかんがみると,法78条に係る請求権は,法が特別に定めた公法上の請求権であり,4号訴訟の対象となる一般の損害賠償請求権又は不当利得返還請求権とは相当異質な面を有すると解 されるのである。 そして,本訴のような民衆訴訟は,法律に定める場合において法律に定める者に限り提起することができる(行政事件訴訟法42条)ところ,4号訴訟の前提となる住民監査請求においては違法若しくは不当に公金の賦課若しくは,「徴収若しくは財産の管理を怠る事実」について「当該怠る事実を改め,又は当該行為若しくは怠る事実によって当該普通地方公共団体のこうむった損害を補填するために必要な措置を講ずべきことを請求すること」ができる(地方自治法242条1項)にもかかわらず,4号訴訟においては,その対象が「怠る事実に係る相手方に損害賠償又は不当利得返還の請求をすること」又は「243条の2第3項の規定による賠償の命令の対象となる者である場合にあっては,当該賠償の命令をすること」に限定されているのである(同法242条の2第1項4号このように4号訴訟は普通地方公共団 条の2第3項の規定による賠償の命令の対象となる者である場合にあっては,当該賠償の命令をすること」に限定されているのである(同法242条の2第1項4号このように4号訴訟は普通地方公共団体の執行機関に対し地方)。 ,,自治法243条の2第3項所定の賠償命令以外の行政処分を義務付けることを予定していないことが明らかであるから,被控訴人に法78条に基づく処分を義務付けることとなる本訴は不適法といわざるを得ないし,仮に,法78条に係る請求権が具体的に発生したとしても,それ自体は,その性質に照らし,4号訴訟の対象として限定列挙された損害賠償請求権又は不当利得返還請求権に含まれると解することはできず,この点からも本訴は不適法といわなければならない。 なお,控訴人らは,法78条に基づく費用徴収の4号訴訟対象性を認めないと住民訴訟制度の趣旨を没却する旨主張するが,民衆訴訟をどの範囲で認めるかはまさに立法政策の問題であって,控訴人らが主張するような極端な事例については,4号訴訟としては,職務懈怠を理由とし執行機関自体を相手方とする損害賠償により対応することが予定されているというべきである。 被控訴人の損害賠償請求権等の行使権限の有無について一般に,普通地方公共団体が有する損害賠償請求権等を行使する権限は,法 律,条例等に権限の委任に関する特段の定めがない限り,その代表者たる長に属するところ,法律にはもとより,多賀城市の条例等においても,このような権限を被控訴人に委任する特段の定めは見当たらず,かえって,多賀城市福祉事務所長事務委任規則(乙16)2条に列挙された多賀城市長から被控訴人に委任された権限の中には,法78条に基づく費用徴収に関する権限はあるものの,損害賠償請求権等を行使する権限はないことが認められる。 したがって,仮に,多 16)2条に列挙された多賀城市長から被控訴人に委任された権限の中には,法78条に基づく費用徴収に関する権限はあるものの,損害賠償請求権等を行使する権限はないことが認められる。 したがって,仮に,多賀城市が訴外A及び被控訴人補助参加人らに対し損害,,賠償請求権等を有するとしても被控訴人にはこれを行使する権限がないから被控訴人は4号訴訟の被告適格を欠くというべきである。 なお,控訴人らは,法78条に基づく費用徴収の目的を達するための法律構成は被控訴人に委ねられている旨主張するが,法78条に基づく費用徴収が不法行為に基づく損害賠償請求と相当異質な面を有することは上記1のとおりであるから,控訴人らの主張は採用の限りでない。 また,控訴人らは,原審が控訴人らに対し被告を変更する機会を与えなかった旨主張するところ,その趣旨は必ずしも明らかではないが,控訴人ら指摘の行政事件訴訟法改正の前後を通じ,本訴のような民衆訴訟には,被告を誤った訴えの救済に関する同法15条は準用されていないし,仮に控訴人らの解釈を前提にするとしても,被控訴人が被告適格に関する主張をした平成16年10月21日の原審第5回口頭弁論期日から弁論が終結された平成17年4月4日の原審第9回口頭弁論期日までの間,控訴人らに被告を変更する機会が十分あったことは記録上明らかである。 よって,本訴を不適法として却下した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 仙台高等裁判所第3民事部 裁判長裁判官佐藤康裁判官浦木厚利裁判官畑一郎 一郎

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