令和5(わ)1325 入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反被告事件

裁判年月日・裁判所
令和6年7月19日 京都地方裁判所
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判決文本文3,475 文字)

令和6 年7 月19 日宣告令和5 年(わ)第1325 号入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反被告事件判決 主文 被告人を懲役1 年6 月に処する。この裁判が確定した日から3 年間その刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、平成31 年4 月1 日から令和3 年3 月31 日までの間、京都府土地開発公社新名神事務所(以下「新名神事務所」という。)所長として、新名神事務所の事務を掌理し、新名神事務所が発注する近畿自動車道建設事業に関する物件調査業務に係る発注内容の策定及び入札者指名内申・協議書の作成等の職務に従事していたものであるが、新名神事務所が令和2 年10 月16 日に執行した「近畿自動車道名古屋神戸線(大津~城陽)物件再調査業務(略)」(以下「本件再調査業務」という。)の指名競争入札(以下「本件入札」という。)に関し、前記職務に従事する者として適正に入札等に関する職務を行う義務があるのに、その職務に反し、測量業務等を業とする株式会社A(以下「A」という。)に本件再調査業務を落札させようと考え、同年6 月30 日、京都府京田辺市(以下略)所在の新名神事務所において、本件再調査業務に先行して実施された「近畿自動車道名古屋神戸線(大津~城陽)物件調査再算定業務(略)」等の受注業者であるB株式会社(以下「B」という。)の技術担当者であるCらが同席する場で、当時のA取締役Dに対し、Aが本件再調査業務をBから引き継いで受注するように指示するとともに、同年8月11日、新名神事務所において、同人に対し、談合に応じない業者を尋ねて、同人から、当時のE株式会社(現E’株式会社)(以下「E 件再調査業務をBから引き継いで受注するように指示するとともに、同年8月11日、新名神事務所において、同人に対し、談合に応じない業者を尋ねて、同人から、当時のE株式会社(現E’株式会社)(以下「E」という。)及び株式会社F(以下「F」という。)が談合に応じない業者である旨聞き取るなどした上、同年9 月29 日頃、新名神事務所において、E及びFを除外した10 業者を指名競争入札参加業者とする入札者指名内申・協議書を作成して、同日、京都市上京区(以下略)の京都府土地開発公社において、当時の同公社業務第一部長Gに同入札者指名内申・協議書を提出し、同人に、同入札者指名内申・協議書に基づく審査表等を同公社工事指名選考委員会に提出させて、同年10 月5 日、同委員会に、同入札者指名内申・協議書記載の10 業者を指名競争入札参加業者として決定させるなどし、同月16 日、新名神事務所において執行された本件入札に際し、A京都営業所に本件再調査業務を落札させ、もって事業者に談合を唆すこと及びその他の方法により入札等の公正を害すべき行為を行った。 (証拠の標目)略(事実認定の補足説明) 1 判示事実について、被告人は、Aが、本件再調査業務をBから引き継いで受注できるよう、本件入札の指名競争入札参加業者からEとFを除外したことを認める一方、当時のA取締役D(以下「D」という。)に対し、談合に応じない業者を尋ね、同人から、EとFの2 社であることを聞き取ったことはなく、同人に対し、技術力がないのに入札に応じてくる業者があるかと聞いたところ、同人から上記2 社を挙げられたと供述し、弁護人も、被告人は、入札業者による談合を認識していなかったと主張する。 2 しかしながら、被告人は、①本件再調査業務の対象となる土地について従前調査業務(その後の再調 2 社を挙げられたと供述し、弁護人も、被告人は、入札業者による談合を認識していなかったと主張する。 2 しかしながら、被告人は、①本件再調査業務の対象となる土地について従前調査業務(その後の再調査業務を含む。)を受注していたBにおいては、専門的知見の乏しさなどから正確な補償額が算出できず、技術力のある業者に再調査業務をさせる必要があったこと、②上記の調査業務においてBが依頼したボーリング調査費用について、業務委託元であるNEXCO 西日本側の事情等によりBに負担させることが困難となり、本件再調査業務を受注する業者に負担させる必要が生じたことなどから、Aであれば、技術的に本件再調査業務を遂行してくれる上、同 社取締役とも懇意にしており上記ボーリング調査費用の負担も承諾してくれるだろうと考え、本件再調査業務をBからAに引き継いで受注させようとし、Bの担当者、AのD等が同席する中で、Aを受注予定業者として指名し、Bの担当者等にそれまでの成果物をAに引き継ぐように指示したものであり、被告人としては確実にAに本件再調査業務を受注させることを企図して行動していたものと認められる。 3 そして、Dは、被告人から談合に応じない業者名を聞かれ、上記2 社の名前を教えた旨の供述をしているところ、被告人がこのようなやり取りを経て上記2 社を指名競争入札参加業者から除外しようとしたというのは、Aに本件再調査業務を確実に受注させることを企図した行動として合理的なものである。また、上記のDの供述は、被告人の捜査段階及び被告人作成の陳述書における供述とも一致しており、十分に信用することができる。 これに対し、被告人は、公判廷において、技術力がないのに入札に応じてくる業者があるかとDに聞いたところ、同人から上記2 社を挙げられたと供述する。 しかしながら、 り、十分に信用することができる。 これに対し、被告人は、公判廷において、技術力がないのに入札に応じてくる業者があるかとDに聞いたところ、同人から上記2 社を挙げられたと供述する。 しかしながら、被告人がこのようなやり取りを経て上記2 社を指名競争入札参加業者から除外しようとしたというのは、上記2 社を除外したとしても他に参加業者がおりAが確実に本件再調査業務を受注できるとはいえない状況であるから、あえて上記2社を除外する必要があったのか不明であって不自然というほかない。 また、被告人の上記公判供述は、被告人の捜査段階及び被告人作成の陳述書における供述から変遷しているが、その理由も不明である。以上からすれば、被告人の上記公判供述を信用することはできない。 4 よって、上記のDの供述等から、判示事実を認定することができる。 (法令の適用)罰条入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律8 条刑種の選択懲役刑 刑の執行猶予刑法25 条1 項(量刑の理由) 1 被告人は、本件再調査業務をAに受注させることを企図し、従前の受注業者等にそれまでの成果物をAに引き継ぐよう指示するなどAのみに便宜を図った上、Aから談合に応じない業者を聞き取るなどして談合を唆し、さらに、Aから聞き出した2 社を指名競争入札参加業者から除外するように画策している。自らが有する指名競争入札参加業者を選定する事実上の権限を利用するなどして主体的・積極的に犯行に及んだものである。 そして、被告人がAに談合を唆したことにより、Aが談合を主導しAが落札するに至っており、指名競争入札の公正さが現実に害されており、公正さに対する社会的信用を棄損した程度も甚だしい。 さらに、 そして、被告人がAに談合を唆したことにより、Aが談合を主導しAが落札するに至っており、指名競争入札の公正さが現実に害されており、公正さに対する社会的信用を棄損した程度も甚だしい。 さらに、被告人は、新名神事務所の所長として、同事務所の事務所を掌理し、所属職員を指揮監督する立場にありながら、自ら談合を唆し、入札の公正さを害すべき行為を行ったのであり、その責任は重いものがある。 以上からすれば、被告人が自らの利益を図るために本件犯行に及んだわけではないことを考慮しても、被告人の行為責任は重く、被告人に対しては罰金刑ではなく懲役刑を選択すべきである。 2 一方、被告人には、事実を概ね認め、反省の言葉を述べていること、同種前科がないことなど、被告人にとって有利に考慮すべき事情も認められる。 そこで、これらの事情を考慮し、被告人に対しては刑の執行を猶予することとする。 (求刑懲役1 年6 月)令和6 年7 月19 日京都地方裁判所第1刑事部 裁判官棚村治邦

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