主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 原告が原被告間の平成6年10月1日付け売買基本契約に基づく販売店たる地位にあることを確認する。 2 被告は,原告に対し,8億3356万円及びこれに対する平成12年5月26日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告との間の売買基本契約に基づき,販売店として被告からセメントの供給を受けてきた原告が,セメントの供給を被告に一方的に止められ,そのことにより損害を被ったとして,被告に対し,上記売買基本契約に基づく販売店たる地位の確認と,債務不履行に基づく損害賠償として8億3356万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成12年5月26日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 1 争いのない事実等(争いのない事実のほかは,各項に掲記の各証拠に弁論の全趣旨を総合して認める。)(1) 当事者ア原告は,昭和30年5月2日に設立された,セメント販売,生コンクリート(以下「生コン」ともいう。)の製造販売及びコンクリート製品の販売等を業とする株式会社であり,愛知県内においては,大府生コン工場及び本地生コン工場を持ち,また,子会社の三好生コン株式会社(以下「三好生コン」という。)が三好生コン工場を持ち(以下,それぞれ「大府工場」,「本地工場」及び「三好工場」という。),生コンの製造・販売を行っていた。 イ被告は,平成10年10月1日,日本セメント株式会社を吸収合併するとともに旧商号秩父小野田株式会社を現商号に変更した株式会社であり,セメント,レディーミクストコンクリート及びセメントを使用する製品の製造・販売等を業としてい 日,日本セメント株式会社を吸収合併するとともに旧商号秩父小野田株式会社を現商号に変更した株式会社であり,セメント,レディーミクストコンクリート及びセメントを使用する製品の製造・販売等を業としている。(甲2)(2) 売買基本契約の締結等ア平成6年10月1日,原告は,被告との間で,以下の内容の売買基本契約を締結し(以下「本件基本契約」という。),被告のセメントの販売店の指定を受けた。 (ア) 被告は,セメントを継続して原告に売り渡し,原告はこれを買い受けて販売を行う。 (イ) 被告は,原告の販売を促進するため,サービス・ステーション等の供給拠点の整備,技術サービス,その他の協力を誠意を持って行い,また,双方の利益のために,原告の営業所・流通施設,販売地域,セメントの使用方法について,必要な諸指示をなし,助言をすることができる。 (ウ) セメントの種類,販売数量,販売価格,納期,引渡条件,その他売買に関する必要な事項は,その都度締結される個別契約ごとにこれを定めるものとし,個別契約は,原告において口頭又は書面で申し込み,被告がこれを承諾することにより成立する。 (エ) 本件基本契約の有効期間は,平成6年10月1日から平成9年9月30日までとするが,期間満了3か月前までに,双方のいずれかが書面で契約の終了又は変更の申入れをしない場合には,本件基本契約は1か年自動延長されるものとし,以後もこの例による。 イ原告は,本件基本契約に基づき,被告から,平成6年10月1日から平成8年10月末日までの間,セメントを購入し,生コンに加工して販売していた。 ウところが,秩父小野田は,平成8年11月1日から,原告に対するセメント販売を中止した(以下「本件販売中止」という。)。 2 争点(1) 本件販売中止に先立ち, コンに加工して販売していた。 ウところが,秩父小野田は,平成8年11月1日から,原告に対するセメント販売を中止した(以下「本件販売中止」という。)。 2 争点(1) 本件販売中止に先立ち,本件基本契約について,原告と被告との間で合意解約がなされたか。 ア被告の主張本件基本契約は,合意解約された。 (ア) 解約の申入れ及び承諾の意思表示平成8年10月3日,原告代表者は,電話で,被告の名古屋支店長であったA常務取締役(以下「A」という。)に対し,「セメントはもういらない。すぐに書類を持っていく。」と述べた。 同日,原告代表者の実子であり,原告の子会社である三好生コンの代表取締役であったBは,「弊社は,貴社と取引してまいりましたが,10月末を以って取引を中止させて頂きたく存じます。」等と記載された原告名義(原告代表者により押印もなされている。)の文書(以下「本件文書」という。)を被告に持参して,被告名古屋支店のC課長に渡し,もって,原告は,被告に対し,同月末をもって本件基本契約を解約する旨の意思表示をした。 これに対し,Aは,同月30日,部下を連れて原告の本店事務所を訪れ,原告代表者と話合いを持ち,再度,本件文書どおりであるかただしたところ,原告代表者からそのとおりである旨の回答が返ってきたので,本件基本契約は解約によって消滅したと確信し,「長い間のお取引,大変ありがとうございました。」と言って,原告事務所を辞去した。 これにより,本件基本契約は合意解約されるに至った。 (イ) 原告による解約申入れの背景原告もその組合員であった名古屋生コン協同組合(以下「本件協同組合」という。)は,平成8年春ころ,各組合員の出荷数量の調整協議によって,三好工場に対するシェアを月間3000立方メートルとす 景原告もその組合員であった名古屋生コン協同組合(以下「本件協同組合」という。)は,平成8年春ころ,各組合員の出荷数量の調整協議によって,三好工場に対するシェアを月間3000立方メートルとすることとしたが,原告は,これを月間7000立方メートルに倍増することを強硬に主張して譲らず,ついに,同年10月15日,本件協同組合の責任者であるD渉外副委員長に対して脱退の意思表示を行い,さらに,同月21日には,本件協同組合の最高責任者であるE理事長及びF副理事長の両名と面談し,再度脱退の意思表示を行った。これに対し,本件協同組合は,E理事長名義で,原告の脱退の承認書を,同月24日ころ,原告に届けた。 すなわち,原告は,原告の各生コン工場が相当多額の赤字を出していたにもかかわらず,出荷数量の増加の見込みが立たないことから,本件協同組合を脱退したものであり,脱退する以上,セメントを購入する必要がなくなるので,被告に対してセメントの取引を解約する旨の申入れを行ったものと考えられる。 (ウ) 根抵当権設定登記抹消登記手続被告は,本件基本契約締結当時,その売買代金債権を担保するため,原告所有の不動産について根抵当権の設定を受けていたが,本件基本契約解約後,この根抵当権の抹消登記手続に関する原告の委任状が送られてきたので,平成9年2月初旬,被告の知り合いの司法書士に同登記手続を依頼した。その結果,同月24日,同登記手続がなされた(以下「本件登記手続」という。)。 原告は,本件登記手続が原告に無断でなされたと主張するが,本件登記手続によって利益を受けるのは原告であって,被告にはそのようなことをする利益も必要性もない。 そして,被告は,本件登記手続完了後の平成9年3月ころ,その登記簿謄本を原告に送付しているのであるが,仮に被告が偽造 を受けるのは原告であって,被告にはそのようなことをする利益も必要性もない。 そして,被告は,本件登記手続完了後の平成9年3月ころ,その登記簿謄本を原告に送付しているのであるが,仮に被告が偽造により本件登記手続をしたのであれば,登記簿謄本を原告に送付することなどあり得ない。 イ原告の主張本件基本契約が合意解約された事実はない。 (ア) 原告による解約申入れの意思表示の不存在被告が原告に対して本件基本契約の解約を申し入れたことはなく,本件文書も,本件基本契約の解約を申し入れたものではない。 a 原告による本件文書提出の経緯本件協同組合において,生コン工場のテリトリーの編成替えの際に,三好工場を冷遇する措置があった。 ところで,セメントないし生コン業界においては,各地に生コン製造業者による協同組合が設立されており,本件協同組合もその一つであるが,これらの協同組合の執行部である理事長や副理事長のほとんどは,セメントメーカーの子会社である直系生コン工場の社長が占めていることや,各協同組合の基幹をなす共同販売事業の開始にあたって,当初はセメントメーカーのシェアを基に各組合員のシェアが決められたこと等からも明らかなとおり,セメントメーカーのうち,当時でも最大手であった被告は,各協同組合について極めて強い影響力を持っていた。 そこで,原告代表者は,平成8年7月19日及び同年9月17日,Aに対し,電話で,上記冷遇の理由についての説明を求め,かつ,改善を要求した。しかし,状況は改善されないばかりか,被告から納得のいく説明も受けられなかった。 このような状況において,原告としては,本件文書により,原告がこの問題を重大に受け止めていることを被告に知らしめ,そのことにより,上記問題について十分誠意を持って話し合う場 明も受けられなかった。 このような状況において,原告としては,本件文書により,原告がこの問題を重大に受け止めていることを被告に知らしめ,そのことにより,上記問題について十分誠意を持って話し合う場が設けられることを企図したのである。 セメントないし生コン業界において,処遇等の不服について話合いを求める趣旨で,本件文書のような書面を出したり,そのような内容のことを伝えることは,しばしば行われることであり,この業界にいた被告は,当然このことを知っていたところである。 b 本件文書の記載内容等仮に本件文書が本件基本契約の正式な解約の申入れであれば,原告は,「名古屋生コンクリート協同組合への対応は弊社独自の考え方によって遂行してまいりたいと存じます。」などと,本件協同組合への対応(進退)に関することなどを記載することはない。また,仮に同協同組合を脱退するのであれば,組合の理事長あてに正式な文書で行うものである。このような記載をした趣旨は,まさに,被告に誠意を持って話合いに応じてもらうことを意図したものであり,これが正式な解約の申入れであるはずはない。 また,仮に上記冷遇を理由とした正式な解約申入れであれば,既に電話で2度のやり取りをしていることに鑑みても,即日の解約申入れとしたはずである。 そして,何の肩書も記載されていないGを連名差出人とするような書面とするはずもない(Gは,当時,取締役総務部長であったが,既に退職の意思が示されていた。)。 さらに,本件文書には,「取引」の「中止」という記載があるだけで,本件基本契約の効力に関係するとの記載は全くなく,また,文書の体裁も,本件基本契約の解約の申入れというようなものとして受け取れるものではなく,これが本件基本契約の解約の申入れではないことは だけで,本件基本契約の効力に関係するとの記載は全くなく,また,文書の体裁も,本件基本契約の解約の申入れというようなものとして受け取れるものではなく,これが本件基本契約の解約の申入れではないことは,被告にとっても明らかであった。 c 本件協同組合からの脱退について被告は,平成8年10月に原告が本件協同組合に対して脱退の意思表示をし,本件協同組合からこれに対する承認を受けたとするが,原告がそのような意思表示をした事実はない。同月21日の本件協同組合との面談は,原告に対する不平等で不当な扱いに対して,不満を強く申し入れたものであり,このようなことは,他の組合や組合員においても見られることである。 d 以上のように,本件文書は,原告の上記冷遇措置問題に対する受け止め方を知らしめ,双方での話合いをすることを意図したものであり,本件基本契約の解約を申し入れたものではない。 (イ) 被告による承諾の意思表示の不存在仮に原告による解約の申入れがあったとしても,これに対して被告が承諾した事実はない。 a 平成8年10月30日,被告から,A,H名古屋支店副支店長及びCの3名が原告の本社に出向き,原告代表者,I常務取締役(以下「I」という。)及びBと話し合う場が持たれた。 その際,原告代表者が,「なぜ原告が3000立方メートルの低いシェアなのか。協同組合の運営として妥当性を欠いているのではないか。」,「(平成8年に組合加入した)東海三谷生コンには,7000立方メートルを与えているのだから,原告についても相応のシェアであってしかるべきではないか。」とただしたところ,Cは,「原告のシェアが3000立方メートルなのは,自分でシェアをほかに売ったからだ。」と返答した。この被告の返答は,それまでに全くなされたことのない唐 てしかるべきではないか。」とただしたところ,Cは,「原告のシェアが3000立方メートルなのは,自分でシェアをほかに売ったからだ。」と返答した。この被告の返答は,それまでに全くなされたことのない唐突なもので,生コン業界や協同組合の適正な運営に協力を惜しまなかった原告にとっては,事実無根の言いがかりというべきものであったが,被告は,上記のような返答に終始した。 この日に,被告の3名の出席者のいずれからも,上記のやり取りとは別の,セメントの取引契約を終わりにするとか,原告の解約の申入れに応ずるとかの発言がなされたことは全くない。 これは,そもそも,原告の申出が話合いの場を求める意味のものであることが,被告にとっても明白であったからにほかならないのである。 b また,Aは,帰り際に,「セメントの供給はどうしますか。」,「員外社(協同組合に属さないこと)になるのか。」と言った。これに対し,原告代表者は,シェアを売ったとの言いがかりの上に,「員外社になるのか。」という不穏当なことを言われては,原告の名誉のために,操業を止めてでも社内外を調査してそのような事実がないことを示して正当性を明らかにする必要があると考え,「1,2年はセメントは要らない。」と言った。 このAの「セメントの供給はどうするのか。」との発言も,原告と被告の間の本件基本契約が解約・終了していないことを示している。なぜなら,被告が,本件基本契約の解約の申入れがなされていると考え,それに応じる(承諾する)べき対応をしたというのであれば,セメントがいるか否かを尋ねる必要は全くないはずだからである。 (ウ) 本件販売中止後の原告の被告に対する申入れ及びこれに対する被告の対応a 原告は,上記のように,建設的な話合いの場を求めて本件文書を出したのであっ る必要は全くないはずだからである。 (ウ) 本件販売中止後の原告の被告に対する申入れ及びこれに対する被告の対応a 原告は,上記のように,建設的な話合いの場を求めて本件文書を出したのであって,本件基本契約の解約の意思はなかったし,また,すでに受注していた公共工事分については,社会的責任上生コンの納入義務があったことから,当然被告からセメントの供給を受けるつもりであった。 そこで,平成8年11月5日に,BがAに対してセメントの納入を要請し,同月20日に,B,J大府工場工場長,K本地工場工場長が,Cに対してセメントの納入を要請する等,原告から被告に対し何度かセメントの納入を要請したが,被告はこれに応じなかった。 b そのため,原告は,他のセメントメーカーにセメントの供給を依頼したが,供給を受けることはできなかった。平成11年3月ころに,それまでの他のセメントメーカーへの供給依頼の経過について,社内の各担当者からの情報を集めたところ,その内容はいずれも,原告への供給を妨害しようとするAの意向によって,供給を受けることができないというものであった。 この情報の集約と並行して,原告は,Aに対して,同年2月24日付け内容証明郵便で,「セメントメーカー各位に,原告には(愛知3工場)セメントを売るなと指示されたのはいかがなものか。回答されたし。」との内容の質問書を出したところ,Aからは,同年3月5日付け内容証明郵便で,「他のセメントメーカーに対して,貴社の愛知3工場にセメントを売るなと言った事は一切有りません。」との内容の回答があった。 そこで,原告は,上記回答を受け,以後は,少なくとも他社からのセメントの供給は受けられると考え,再稼働に向けて,相応の費用をかけて設備投資をし,日本工業規格の監督官庁である通産局に連絡をしてJIS そこで,原告は,上記回答を受け,以後は,少なくとも他社からのセメントの供給は受けられると考え,再稼働に向けて,相応の費用をかけて設備投資をし,日本工業規格の監督官庁である通産局に連絡をしてJIS表示の許可の確認を取り,態勢を整えて,同年4月19日に住友商事物資部(L課長),同月23日に住友大阪セメント(M支店長)を訪ねて,セメントの供給依頼をしたが,いずれもかなわなかった。 以上の経過は,Aの妨害の意図によるものであるとしか考えられないところであり,この状態は現在まで継続している。 c このほか,原告は,三好工場のシェアが3000立方メートルとされていた件につき,関係機関と折衝を続けた。そして,2年が経過するころから,被告に対して,内容証明郵便で申入れや質問等をしてきた。 原告は,平成10年12月9日付けの被告のN取締役中部支店長宛の書面で,「貴殿が書かれた平成8年10月3日付け取引中止申込うんぬんと言われているが何んの事か回答されたし。」と質問したが,その回答はなされていない。また,同日付けのA宛の書面で,「C営業課長が再々にわたって三好生コンのシェアーが3000立方メートルなのは原告がシェアーを売ったからだと言われたのは何をもって言われたのか。」と質問したが,この点についての回答もなされていない。 d 以上の事実は,原告に本件基本契約を解約する意思がなかったことを示すとともに,被告による本件販売中止が不当なものであることを示すものである。 すなわち,被告は,原告との取引の中止が原告に与える影響が甚大であることを容易に推測できたにもかかわらず,原告と被告が原告の三好工場のシェア等について折衝をする中で,原告が交付した本件文書の記載に「取引の中止」の表現があることを奇貨として,本件基本契約が解約されたと主張 容易に推測できたにもかかわらず,原告と被告が原告の三好工場のシェア等について折衝をする中で,原告が交付した本件文書の記載に「取引の中止」の表現があることを奇貨として,本件基本契約が解約されたと主張しているのである。 (エ) 本件登記手続について本件登記手続は,原告に無断でなされたものであり,「根抵当権設定契約解除の件」と題する文書も,本件訴訟以前に原告に示されることのなかったものである。原告は,上記根抵当権設定契約の解除の処理に応じたことはない。 本件登記手続がなされた平成8年2月当時は,原告が被告に対して再三にわたって出荷要請を続けたにもかかわらず,被告が不当にもこれを拒否したことにより,原告としては,やむなく3工場の操業をストップせざるを得ないという全社的な非常事態にあったものであって,こうした時期に,原告が取引の終了を意味する本件登記手続に応じるわけがない。 被告は,本件登記手続について,被告には利益も必要性もないとするが,まさに,このような被告にとって本来経済的には特に意味のない行為を,被告が自ら行ったこと(本件登記手続は,被告が従前から依頼していたO司法書士によりなされたものであり,原告の担当者は,同司法書士と会ってもいない。)自体,不自然・不合理である。そして,被告にとって何の利益もないはずのこの行為は,被告の原告に対する出荷停止という不当な行為を正当化し,既成状況を作るという意味では,非常に大きな意味があったわけである(現に,本件訴訟で,被告は,上記のように原告に無断で作出されたこの状況を,自らの主張の裏付けとして援用している。)。被告の,利益がないとの主張が,実質を正しく表していないことは明らかである。 (2) 原告の地位確認につき,確認の利益があるか。 ア原告の主張本件基本契約には自動 て援用している。)。被告の,利益がないとの主張が,実質を正しく表していないことは明らかである。 (2) 原告の地位確認につき,確認の利益があるか。 ア原告の主張本件基本契約には自動延長の条項があり,被告から書面による契約終了の通知がなされていないから,現在なおその効力を有していると解すべきところ,被告においてこれを争うことが明らかであるので,原告には,契約上の販売店たる地位にあることの確認を求める利益が存する。 イ被告の主張争う。 (3) 損害ア原告の主張(ア) 被告の損害賠償責任被告は,前記のとおり,本件基本契約に違背して,平成8年11月1日からのセメント販売を一方的に中止してしまったのであるから,原告に対するセメントの販売を再開するまでの間,原告に発生した契約不履行による損害を賠償する責任がある。 (イ) 原告の損害被告が原告に対するセメントの供給を停止せずに継続していたなら,原告は,これを生コンに加工して販売し,供給停止期間の3年6か月間(平成8年11月1日から訴訟提起前の平成12年4月30日まで)で総額8億3356万円の利益を上げることができたのであって,この金額が原告に生じた損害額となる。 すなわち,原告において,セメントの供給が停止される直前の2年間(平成6年11月1日から平成8年10月31日まで)における年間平均利益(輸送費を控除し,セメントの供給の有無に関係なく計上できる営業外収益,建材販売の粗利分及び自動販売機販売の粗利分を差し引いたもの)は,三好工場が6858万6500円,本地工場が7206万3000円,大府工場が9751万0500円であったから,これら3工場の3年6か月分の利益は合計8億3356万円となる。 (ウ) 被告以外からのセメ が6858万6500円,本地工場が7206万3000円,大府工場が9751万0500円であったから,これら3工場の3年6か月分の利益は合計8億3356万円となる。 (ウ) 被告以外からのセメントの調達についてなお,原告が,セメントを他社から仕入れるなどというのは,現実的には不可能なことであった。 すなわち,本件の被告の取引拒絶は不当なものではあるが,被告が業界で最大手であり,当地において絶大な影響力を持っていたAが意向を示していた以上は,他社からの購入は実際には不可能だったのである。 また,外国セメントの供給を受けるとの方策についても,外国セメントでは,「普通セメント」しか供給されないこと(「早強セメント」や「高炉セメント」の供給が受けられない。),品質や供給の安定等について必ずしも十分に確認されていない面があり,これを原料とする生コンは,役所への納入の際に認められない可能性があること,外国セメントを使用している場合,事実上生コン協同組合への加入ができないこと等,多くの問題があり,安易にそのような選択をすることはできない。 さらに,仮に原告が外国セメント等他社からの供給を受ければ,それは,結果的にはセメントメーカーが一方的に取った行動を認めることになり,事実上,大きく名誉を損なう結果となるおそれが強かった。 イ被告の主張(ア) 損害賠償責任について前記のとおり,本件基本契約は平成8年10月31日をもって終了しているのであるから,同年11月1日以降,被告が原告にセメントの供給を行わなかったのは,原被告間に契約関係が存在しなかったからであり,被告には,原告に対する債務不履行は存在しない。 (イ) 原告の損害についてまた,そもそも,原告の3工場は,被告がセメ わなかったのは,原被告間に契約関係が存在しなかったからであり,被告には,原告に対する債務不履行は存在しない。 (イ) 原告の損害についてまた,そもそも,原告の3工場は,被告がセメントの供給を行っていた最後の2年間においてすら,5152万3000円から1億1130万5000円の大幅な赤字であり,原告の主張する利益など,もともと存在しない。 (ウ) 被告以外からのセメント調達についてさらに,原告は,平成8年11月以降,その気になれば,海外等,被告以外からセメントを調達することが可能であったにもかかわらず,自らの意思によりそれを行わなかったのである。 したがって,仮に原告の3工場の操業停止により損害が生じたとしても,それは,原告自らの責任によって生じたものであって,他者に請求すべき筋合いのものではない。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)について(1) 前記争いのない事実等に,証拠(甲8~11,39,41~43,45,47,乙1の1,10の1・2,11,13の1~3,証人B,同A,同P,原告代表者)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。 ア平成4年11月1日,原告は,秩父セメント株式会社(以下「秩父セメント」という。)との間で,継続的にセメントの供給を受けることを内容とする売買基本契約を締結し,秩父セメントとの取引を開始した。 平成6年10月1日,秩父セメントと小野田セメント株式会社が合併し,被告となったのに伴い,原告は,被告との間で,上記と同様の売買基本契約を締結した(本件基本契約)。 イ原告は本件協同組合に加入していた(形式上は子会社の安田生コンクリート株式会社(以下「安田生コン」という。)として加入)ところ,平成8年春以降,本件協同組合は,協同 した(本件基本契約)。 イ原告は本件協同組合に加入していた(形式上は子会社の安田生コンクリート株式会社(以下「安田生コン」という。)として加入)ところ,平成8年春以降,本件協同組合は,協同組合間のテリトリーの変更に伴い,各組合員のシェアを新たに決定したが,原告は,この割当てについて強い不満を持った。 そのため,原告は,本件協同組合とシェアについて交渉したが,進展はなかった。 ウそこで,同年10月3日,原告代表者は,被告の常務取締役名古屋支店長であり,本件協同組合に強い影響力を持つAに架電し,本件協同組合の運営について不満を述べ,ついに,「セメントはもういらない。すぐに書類を持っていく。」と述べた。 同日,原告の子会社である三好生コンの代表取締役であったBは,「弊社は,貴社と取引してまいりましたが,10月末を以って取引を中止させて頂きたく存じます。又,名古屋生コン協同組合への対応は弊社独自の考え方によって遂行してまいりたいと存じます。」と記載された,「秩父小野田株式会社常務取締役A殿」あての,「原告代表取締役Q,G」(原告代表者及びGの押印もなされている。)の名義による文書(本件文書)を被告に持参し,被告名古屋支店の課長であったCに渡した。 エこれに対し,Aは,同月30日,Cら部下を連れて原告の本店事務所を訪れ,原告代表者,B及びIと面会した。この席で,原告側は,上記シェアを見直すようAに求めたが,納得のいく回答は得られなかった。そして,Aが「アウト(組合外)でやるのか。そのときセメントはどうするのか。」と述べたのに対し,原告代表者は,「セメントはいらない。」と述べた。そのため,Aらは,原告事務所を退去した。 オその間,原告は,同月15日,本件協同組合渉外委員会のD副委員長に対し,口頭で本件協同組合脱退 に対し,原告代表者は,「セメントはいらない。」と述べた。そのため,Aらは,原告事務所を退去した。 オその間,原告は,同月15日,本件協同組合渉外委員会のD副委員長に対し,口頭で本件協同組合脱退の意思表示をし,さらに,同月21日,本件協同組合のE理事長及びF副理事長と面談し,同様に脱退意思を伝えた。 これに対し,本件協同組合から,安田生コンあてに,同月24日付けの脱退承認の通知書が届いた。 (2) 以上の事実によれば,本件基本契約は,原告が平成8年10月3日及び30日に解約を申し入れ,これに対して被告が同月30日に承諾したことにより,合意解約されたと解するのが相当である。 (3) これに対し,原告は,解約申入れの意思表示及びこれに対する承諾の意思表示は存在しないと主張するので,以下検討する。 ア原告は,本件文書の記載内容について,まず,本件文書が解約申入れの文書であれば,本件協同組合への対応(進退)に関することなど記載することはないし,協同組合を脱退するのであれば,組合理事長あての正式な文書で行うものであって,上記のような記載をした趣旨は,被告に誠意を持って話合いに応じてもらうことを意図したものであると主張する。しかし,そもそも,原告は,本件協同組合が原告を冷遇しているとして,その善処方を被告に求めていたのであるから,被告に対し,被告との取引を中止する旨を通告すると同時に,本件協同組合への対応は原告独自に行う旨を表明したからといって何ら不自然とはいえない。 また,原告は,解約申入れをするのであれば即日の解約申入れとしたはずであると主張するが,解約の日を切りのいい月末にしたとしても,解約申入れとして何ら不自然ではない。 さらに,原告は,解約申入れの文書であれば,何の肩書も記載されていないGを連名差出人 はずであると主張するが,解約の日を切りのいい月末にしたとしても,解約申入れとして何ら不自然ではない。 さらに,原告は,解約申入れの文書であれば,何の肩書も記載されていないGを連名差出人とするような書面とするはずもないと主張するが,同人は原告の取締役総務部長という地位にある者であるから,その名が原告代表者と連名で記載されていても,解約申入れの書面として不自然であるとはいい難い。 このほか,原告は,本件文書には,「取引」の「中止」という記載があるだけで,本件基本契約の効力に関係するとの記載がなく,その体裁も,本件基本契約の解約の申入れとして受け取れるものではなく,これが本件基本契約の解約の申入れでないことは,被告にとっても明らかであったと主張するが,上記(1)で認定した当時の事実関係の下では,「取引」の「中止」との文言が本件基本契約の解約を意味することは,当事者間において明らかというべきであり,本件文書の文言や体裁が,本件基本契約の解約の申入れの書面と解するのに不十分なものということはできない。 イそして,原告は,本件文書は,本件協同組合が原告に対してしたシェアに関する冷遇について話合いを求める趣旨で出したものであり,そのようなことはセメントないし生コン業界ではしばしば行われることであり,被告も当然このことを知っていた旨主張し,原告代表者の供述やその作成の陳述書(甲42)には,これに沿う旨の部分がある。 しかし,セメントないし生コン業界でそのような行為がしばしば行われているとの上記供述等を裏付けるに足りる証拠はなく,かえって,証拠(甲54~59)によれば,セメント会社と生コン会社との交渉の際,セメント会社のほうからセメントの供給を中止する旨述べ,あるいは実際にセメントの供給を中止することがしばしばある なく,かえって,証拠(甲54~59)によれば,セメント会社と生コン会社との交渉の際,セメント会社のほうからセメントの供給を中止する旨述べ,あるいは実際にセメントの供給を中止することがしばしばあるというのであって,生コン会社は,セメント会社に対して供給中止を交渉の戦術として使う立場にはなかったものと認められるから,上記陳述書の記載及び供述は容易に信用できず,原告の上記主張を採用することはできない。 なお,仮に,原告が本件文書を提出した目的が,本件協同組合が原告に対してしたシェアに関する冷遇について話合いを求めることにあったとしても,本件文書が本件基本契約の解約を申し入れる趣旨の文書と解すべきものである以上,原告が本件文書をもって本件基本契約の解約を申し入れたことに変わりはなく,いずれにせよ原告の上記主張が採用できないことは明らかである。 ウさらに,原告は,本件基本契約の解約につき,被告による承諾の意思表示が存在しないと主張する。 しかし,上記(1)の事実によれば,Aは,原告から解約の申入れがあったことから,平成8年10月30日に原告事務所を訪問して原告代表者の意思を確認したところ,原告代表者が「セメントはいらない。」と述べたため,これを了承して,原告事務所を退去したものと認められ,このほか,被告が,同年11月1日以降,実際に原告に対するセメントの供給を中止するなど,本件基本契約が解約されたことを前提として行動していること(争いのない事実)等を併せ考えれば,少なくとも,被告は黙示による承諾の意思表示をしたものと解されるのであって,これに反する原告の上記主張は採用できない。 エ以上のとおりであるから,解約の申入れ及び承諾の意思表示が存在しないとの原告の主張を採用することはできず,ほかに,上記(2)の認定を覆すに足りる これに反する原告の上記主張は採用できない。 エ以上のとおりであるから,解約の申入れ及び承諾の意思表示が存在しないとの原告の主張を採用することはできず,ほかに,上記(2)の認定を覆すに足りる証拠はない。 (4) なお,証拠(乙3~9,証人O)によれば,被告は,本件基本契約締結当時,その売買代金債権を担保するため,原告所有の不動産について根抵当権の設定を受けていたが,平成9年2月,それまでにも各種登記手続を依頼していた司法書士のOに依頼して,同根抵当権の抹消登記手続を行ったものと認められるところ(本件登記手続),被告は,原告は被告に委任状を交付しており,本件登記手続を行うことを了承していたと主張し,これを合意解約がなされていたことの根拠の一つとする。 しかし,本件登記手続の際に提出された原告名義の委任状(乙4の2)は,同年12月に原告により作成された委任状(乙14の3)とも形式が異なる上,そこに押捺された印鑑の印影は,そのほかの書類(甲4,30~33,60の2・4,乙3,14の3・6)に通常見られる原告の印影と異なり,原告の社名も入っておらず,かつ,この書面にしか見られないものであって,これらのことからすれば,上記委任状が原告の作成したものであるとすることには疑問が残るといわざるを得ない。 もっとも,本件登記手続は,前記の本件基本契約の合意解約の後になされたものであるから,これが原告の了承の下になされたものであるといえないとしても,そのことによって,本件基本契約が合意解約されたとの前記認定が左右されるものではない。 2 よって,その余の点につき判断するまでもなく,原告の本訴請求はいずれも理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第7部裁判長裁判官筏津順子 よって,その余の点につき判断するまでもなく,原告の本訴請求はいずれも理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第7部裁判長裁判官筏津順子 裁判官長谷川恭弘裁判官鈴木進介
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