平成26(ワ)21249 商標権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成27年4月27日 東京地方裁判所
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平成27年4月27日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成26年(ワ)第21249号商標権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成27年3月6日判決奈良県桜井市<以下略>原告株式会社イングス同訴訟代理人弁護士竹村公利同佐藤裕紀同岡本順一同石塚司同塚松卓也横浜市<以下略>被告日産自動車株式会社同訴訟代理人弁護士森脇章同岩瀬吉和同川端康弘同岡浩喜同補佐人弁理士北口貴大 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,自動車に関するポスター,チラシ,パンフレット,又はウェブサイト等の広告,価格表,及び取引書類に別紙被告標章目録1記載ないし3の各標章(以下,それぞれ同目録の番号に対応して「被告標章1」などといい,これ らを併せて「被告各標章」とい ,又はウェブサイト等の広告,価格表,及び取引書類に別紙被告標章目録1記載ないし3の各標章(以下,それぞれ同目録の番号に対応して「被告標章1」などといい,これ らを併せて「被告各標章」という。)を付し,又は同標章を付したポスター,チラシ,パンフレット,ウェブサイト等の広告,価格表,及び取引書類を展示し,頒布し,又は提供してはならない。 2 被告は,被告各標章を付したポスター,チラシ,パンフレット等の広告に用いる書類,価格表,及び取引書類を廃棄せよ。 3 被告は,インターネット上の,別紙ウェブサイト目録記載1のウェブサイト(以下「被告ウェブサイト1」という。)から被告標章1及び被告標章2を,同目録記載2のウェブサイト(以下「被告ウェブサイト2」という。)から被告標章2を,同目録記載3及び4の各ウェブサイト(以下,それぞれ,「被告ウェブサイト3」,「被告ウェブサイト4」といい,これらと被告ウェブサイト1,被告ウェブサイト2を併せて「被告各ウェブサイト」という。)から被告標章3を,それぞれ削除せよ。 4 被告は,原告に対し,5000万円及びこれに対する平成26年3月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,原告が,被告に対し,商標権侵害を主張して,前記第1の1ないし3のとおり,差止め等を求めるとともに,前記第1の4のとおり,平成24年11月29日から平成26年8月15日(本件訴訟の提起日)までの期間に係る不法行為による損害賠償金9億7396万7612円の一部である5000万円及びこれに対する同年3月4日(被告各標章の使用停止等を求める原告の通告書が被告に到達した日。なお,原告は,同日後の不法行為につき同日からの遅延損害金を請求できる理由を述べていない。)から支払済みまでの民法所定年5 年3月4日(被告各標章の使用停止等を求める原告の通告書が被告に到達した日。なお,原告は,同日後の不法行為につき同日からの遅延損害金を請求できる理由を述べていない。)から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実等(争いのない事実以外は,証拠等を末尾に記載する。)(1)ア原告は,自動車部品,自動車用品の販売等を業とする株式会社である。 イ被告は,自動車,船舶の製造,販売等を業とする株式会社である。 (2) 原告の商標権原告は,別紙「商標権目録」記載1及び2の各商標権(以下,それぞれ同目録の番号に対応して「本件商標権1」などといい,これらを併せて「本件各商標権」という。また,その登録商標をそれぞれ「本件商標1」などといい,これらを併せて「本件各商標」という。)を有している。 (3) 被告の行為ア被告は,被告ウェブサイト1を平成24年11月29日頃以降,被告ウェブサイト2を平成24年11月29日頃から平成25年12月25日頃まで,被告ウェブサイト3を平成25年6月26日頃以降,被告ウェブサイト4を平成25年6月26日頃から同年12月25日頃まで,被告の販売に係る自動車(以下「被告商品」という。)の需要者,取引者が容易にアクセスし得る状態にしていた(乙14)。 イ被告各ウェブサイトには,次のとおり,別紙被告表示目録記載の各表示がある(甲4の1ないし甲4の4)。 (ア) 被告ウェブサイト1の「全国希望小売価格(消費税込み)」との表の「グレード」欄には,別紙被告表示目録記載1の表示(以下「被告表示1」という。)がある(甲4の1・2頁目)。 (イ) 被告ウェブサイト1の上方の四輪自動車画像の直下には,別紙被告表示目録記載2(1)の表示(以下「被告表示2(1)」という。 の表示(以下「被告表示1」という。)がある(甲4の1・2頁目)。 (イ) 被告ウェブサイト1の上方の四輪自動車画像の直下には,別紙被告表示目録記載2(1)の表示(以下「被告表示2(1)」という。)がある(甲4の1・1頁目)。 (ウ) 被告ウェブサイト1の「全国希望小売価格(消費税込み)」との表の「グレード」欄には,別紙被告表示目録記載2(2)の表示(以下「被告表示2(2)」という。)がある(甲4の1・2頁目)。 (エ) 被告ウェブサイト2の左上欄の四輪自動車画像の直上には,別紙被告表示目録記載2(3)アの表示(以下「被告表示2(3)ア」という。)がある(甲4の2・1頁目)。 (オ) 被告ウェブサイト2の左上欄の四輪自動車画像の直下には,別紙被告表示目録記載2(3)イの表示(以下「被告表示2(3)イ」といい,被告表示2(3)アと併せて「被告表示2(3)」という。また,被告表示2(1)ないし(3)を併せて「被告表示2」という。)がある(甲4の2・1頁目)。 (カ) 被告ウェブサイト3の「全国希望小売価格(消費税込み)」との表の「グレード」欄には,別紙被告表示目録記載3(1)の表示(以下「被告表示3(1)」という。)がある(甲4の3・2頁目)。 (キ) 被告ウェブサイト4の左上欄の四輪自動車画像の直上には,別紙被告表示目録記載3(2)アの表示(以下「被告表示3(2)ア」という。)がある(甲4の4・1頁目)。 (ク) 被告ウェブサイト4の左上欄の四輪自動車画像の直下には,別紙被告表示目録記載3(2)イの表示(以下「被告表示3(2)イ」といい,被告表示3(2)アと併せて「被告表示3(2)」という。また,被告表示3(1)及び(2)を併せて「被告表示3」といい,被告表示1ないし3を併せて「被告各表示」という。)がある(甲4の4・ 」といい,被告表示3(2)アと併せて「被告表示3(2)」という。また,被告表示3(1)及び(2)を併せて「被告表示3」といい,被告表示1ないし3を併せて「被告各表示」という。)がある(甲4の4・1頁目)。 3 争点(1) 本件各商標と被告各標章との類否等(2) 損害額等第3 争点に対する当事者の主張 1 争点(1)(本件各商標と被告各標章の類否等)について(原告の主張)(1) 本件各商標についてア外観(ア) 本件商標1は,別紙「商標権目録」記載1の「商標」欄のとおり,「HYBRID」及び「AERO」の文字をそれぞれ上下二段に配し,かつ,これらの背後に四輪自動車の輪郭を模した図形を配して成る。 (イ) 本件商標2は,別紙「商標権目録」記載2の「商標」欄記載のとおり,「ハイブリッドエアロ」の標準文字で構成される。 イ称呼本件各商標は,いずれも「ハイブリッドエアロ」との称呼を生じる。 ウ観念本件各商標は,ハイブリッド素材を使用したエアロパーツ,及びハイブリッド車用のエアロパーツなどの観念を生じるほか,原告の製造・販売するエアロパーツ「ハイブリッドエアロ」の販売数量及び販売期間,宣伝広告によって少なくともカーパーツ市場において周知・著名となっていることから,原告の製造・販売するカーパーツという観念を生じる。 (2) 被告各標章についてア外観被告標章1は,「ハイウェイスター S-HYBRID エアロモード」の標準文字で構成される。 被告標章2は,「ハイウェイスターGS-HYBRID エアロモード」の標準文字で構成される。 被告標章3は,「ハイウェイスター S-HYBRIDVエアロモード」の標準文字で構成される。 イ称呼被告標章1は,「ハイウェイスターエスハイブリッドエア モード」の標準文字で構成される。 被告標章3は,「ハイウェイスター S-HYBRIDVエアロモード」の標準文字で構成される。 イ称呼被告標章1は,「ハイウェイスターエスハイブリッドエアロモード」との称呼を生じる。 被告標章2は,「ハイウェイスタージーエスハイブリッドエアロモード」との称呼を生じる。 被告標章3は,「ハイウェイスターエスハイブリッドブイエアロモード」との称呼を生じる。 ウ観念 (ア) 被告標章1は,様式を示す「モード」という語を末尾に用いており,かつ,「エス」という称呼を生じる「S-」の部分は,「special」,「super」,又は「small」などの頭文字によってその直後に続く「HYBRID」という語の性質を示した記号にすぎないと理解されることから,原告の製造・販売するカーパーツを装着した様式の自動車,又は,ハイブリッドエアロというカーパーツを装着した様式の自動車という観念を生じる。 (イ) 被告標章2は,被告標章1と比較して「ハイウェイスター」という車種を示す語の末尾に「G」というグレードを示す記号が付されているか否かにおいてのみ差異があるにすぎないため,原告の製造・販売するカーパーツを装着した様式の自動車,又は,ハイブリッドエアロというカーパーツを装着した様式の自動車という観念を生じる。 (ウ) 被告標章3は,様式を示す「モード」という語を末尾に用いており,かつ,「ブイ」という称呼を生じる「V」の部分は,その直後に続く「エアロ」という語の性質を示した記号にすぎないと理解されることから,原告の製造・販売するカーパーツを装着した様式の自動車,又は,ハイブリッドエアロというカーパーツを装着した様式の自動車という観念を生じる。 (3) 本件各商標と被告各標章との類否被告標章1,被 原告の製造・販売するカーパーツを装着した様式の自動車,又は,ハイブリッドエアロというカーパーツを装着した様式の自動車という観念を生じる。 (3) 本件各商標と被告各標章との類否被告標章1,被告標章2,及び被告標章3と本件商標1及び本件商標2とは,外観,称呼,及び観念のそれぞれにおいて同一ないし類似であって,それぞれ類似する関係にある。 (4) 本件各商標の指定商品と被告商品との対比被告商品は,本件各商標の指定商品である第12類の「自動車」に当たる。 (被告の主張)(1) 類否判断の対象について アそもそも,被告は,被告各標章そのものは,使用していない(被告が実際に使用したのは,被告各表示である。)。 また,被告が使用しているのは3つの独立した標章であって,一つのまとまった結合商標であるとした原告の主張は誤りである。 したがって,類否判断は被告の使用する標章である「ハイウェイスター」と本件各商標,「S-HYBRID」と本件各商標,「エアロモード」と本件各商標とを,それぞれ対比して行わなければならない。 イ仮に,被告各標章と本件各商標とを対比しても,次の(2)において述べるとおり,いずれも類似せず,また,被告各表示と本件各商標とを対比しても,いずれも類似しない。 (2) 被告標章1等についてア本件商標1との対比について(ア) 被告標章1の外観が,本件商標1の外観とは類似しないことは一見して明らかである。 また,被告表示1の外観は,「ハイウェイスター S-HYBRID」で改行され,下の行に「エアロモード」と表示されるもので,本件商標1の外観と類似しないことは明らかである。 (イ) 被告標章1又は被告表示1は,「ハイウェイスター」標章,「S-HYBRID」標章及び「エアロモード」標章からなる。よ 」と表示されるもので,本件商標1の外観と類似しないことは明らかである。 (イ) 被告標章1又は被告表示1は,「ハイウェイスター」標章,「S-HYBRID」標章及び「エアロモード」標章からなる。よって,この表示は,「ハイウェイスター」,「エスハイブリッド」及び「エアロモード」という3つの称呼を生じる。 「ハイウェイスター」と「ハイブリッドエアロ」とは,冒頭の2文字以外の音は異なり,互いに類似しない。 「エスハイブリッド」と「ハイブリッドエアロ」とは,前者の冒頭に「エス」の音が存し,また,後者の末尾に「エアロ」の音が存する点で異なり,互いに類似しない。 「エアロモード」と「ハイブリッドエアロ」とは,「エアロ」の音が共通するが,前者の末尾に「モード」の音が存し,後者の冒頭に「ハイブリッド」が存する点で異なり,互いに類似しない。 (ウ) 本件商標1は造語であり,特段の観念を生じない。これに対し,被告標章1又は被告表示1のうち,「ハイウェイスター」の部分からは,被告の製造等にかかる自動車その他自動車に関連する商品役務という観念が生じるから,これと本件商標1の観念は類似しない。被告標章1又は被告表示1のうち,「S-HYBRID」の部分からは,スマートシンプルを具現化した被告独自の考案にかかる被告の技術との観念が生じるから,これと本件商標1の観念は類似しない。被告標章1又は被告表示1のうち,「エアロモード」の部分は,「空気のように清涼感のあるモデル」,「流線型のスタイリッシュなモデル」といった観念が生じるから,これと本件商標1の観念は類似しない。 イ本件商標2との対比について(ア) 被告標章1の外観は,「ハイウェイスター S-HYBRID エアロモード」であり,これと本件商標2の外観とは類似しない。また,被告表示1は,「 似しない。 イ本件商標2との対比について(ア) 被告標章1の外観は,「ハイウェイスター S-HYBRID エアロモード」であり,これと本件商標2の外観とは類似しない。また,被告表示1は,「ハイウェイスター S-HYBRID」で改行され,下の行に「エアロモード」と表示されており,「ハイブリッドエアロ」という本件商標2の外観とは類似しない。 (イ) 称呼及び観念については,本件商標1との対比において述べたのと同様類似しない。 (3) 被告標章2等についてア本件商標1との対比(ア) 被告標章2又は被告表示2の外観が,本件商標1のそれと類似しないことは,一見して明らかである。 (イ) 被告標章2又は被告表示2は,「ハイウェイスターG」標章,「S-H YBRID」標章及び「エアロモード」標章からなる。よって,この表示は,「ハイウェイスタージー」,「エスハイブリッド」及び「エアロモード」という3つの称呼を生じる。 「ハイウェイスタージー」と「ハイブリッドエアロ」とは,冒頭の2文字以外の音は異なり,互いに類似しない。 「エスハイブリッド」と「ハイブリッドエアロ」とは,前者の冒頭に「エス」の音が存し,また,後者の末尾に「エアロ」の音が存する点で異なり,互いに類似しない。 「エアロモード」と「ハイブリッドエアロ」とは,「エアロ」の音が共通するが,前者の末尾に「モード」の音が存し,後者の冒頭に「ハイブリッド」が存する点で異なり,互いに類似しない。 (ウ) 本件商標1は,特段の観念を生じない。被告標章2又は被告表示2のうち,「ハイウェイスター」の部分からは,被告の製造等にかかる自動車その他自動車に関連する商品役務という観念が生じる。「ハイウェイスターG」はこれに「G」が付されたものであるから,「ハイウェイスター」と同様 イウェイスター」の部分からは,被告の製造等にかかる自動車その他自動車に関連する商品役務という観念が生じる。「ハイウェイスターG」はこれに「G」が付されたものであるから,「ハイウェイスター」と同様に,被告の製造等にかかる自動車その他自動車に関連する商品役務という観念が生じる。これと本件商標1の観念は類似しない。被告標章2又は被告表示2のうち,「S-HYBRID」の部分からは,スマートシンプルを具現化した被告独自の考案にかかる被告の技術との観念が生じる。これと本件商標1の観念は類似しない。被告標章2又は被告表示2のうち,「エアロモード」の部分は,「空気のように清涼感のあるモデル」,「流線型のスタイリッシュなモデル」といった観念が生じる。これと本件商標1の観念は類似しない。 イ本件商標2との対比(ア) 被告標章2又は被告表示2は,「ハイウェイスターG」,「S-HYBRID」及び「エアロモード」の3つの独立した標章として認識される ところ,これらの標章は,いずれも,本件商標2の「ハイブリッドエアロ」と,外観上,類似しない。特に,被告表示2のうち,被告表示2(2)は,「ハイウェイスターGS-HYBRID」で改行され,下の行に「エアロモード」と表示されるものについては,「ハイブリッドエアロ」という本件商標2の外観と類似しない。 (イ) 称呼及び観念については,本件商標1との対比において述べたのと同様類似しない。 (4) 被告標章3等についてア本件商標1との対比(ア) 被告標章3又は被告表示3の外観が,本件商標1のそれと類似しないことは,一見して明らかである。 (イ) 被告標章3は,「ハイウェイスター」標章,「S-HYBRID」標章及び「Vエアロモード」標章からなる。よって,この表示は,「ハイウェイスター」,「 似しないことは,一見して明らかである。 (イ) 被告標章3は,「ハイウェイスター」標章,「S-HYBRID」標章及び「Vエアロモード」標章からなる。よって,この表示は,「ハイウェイスター」,「エスハイブリッド」及び「ブイエアロモード」という3つの称呼を生じる。 「ハイウェイスター」と「ハイブリッドエアロ」とは,冒頭の2文字以外の音は異なり,互いに類似しない。 「エスハイブリッド」と「ハイブリッドエアロ」とは,前者の冒頭に「エス」の音が存し,また,後者の末尾に「エアロ」の音が存する点で異なり,互いに類似しない。 「ブイエアロモード」と「ハイブリッドエアロ」とは,「エアロ」の音が共通するが,前者の冒頭に「ブイ」の音が存し,かつ,末尾に「モード」の音が存し,さらに,後者の冒頭に「ハイブリッド」が存する点で異なり,互いに類似しない。 (ウ) 本件商標1は,特段の観念を生じない。被告標章3又は被告表示3のうち,「ハイウェイスター」の部分からは,被告の製造等にかかる自動車 その他自動車に関連する商品役務という観念が生じる。これと本件商標1の観念は互いに類似しない。 被告標章3又は被告表示3のうち,「S-HYBRID」の部分からは,スマートシンプルを具現化した被告独自の考案にかかる被告の技術との観念が生じる。これと本件商標1の観念は互いに類似しない。 被告標章3のうち,「Vエアロモード」の部分は,「空気のように清涼感のあるモデル」,「流線型のスタイリッシュなモデル」といった観念が生じる。これと本件商標1の観念は互いに類似しない。 イ本件商標2との対比(ア) 被告標章3又は被告表示3は,上記アのとおり,3つの独立した標章からなるものであり,「ハイウェイスター」,「S-HYBRID」及び「Vエアロモード」の3つの標章 イ本件商標2との対比(ア) 被告標章3又は被告表示3は,上記アのとおり,3つの独立した標章からなるものであり,「ハイウェイスター」,「S-HYBRID」及び「Vエアロモード」の3つの標章として認識されるところ,これらの標章は,いずれも,本件商標2の「ハイブリッドエアロ」と,外観上,類似しない。 (イ) 称呼及び観念については,本件商標1との対比において述べたのと同様類似しない。 (5) 仮に,被告各標章が,原告が主張するような形で使用されていると認識されるとしても,それらと本件各商標とは非類似である。 ア複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないというべきである。 しかるに,原告は,被告各標章について,その一部が支配的な印象を与えることや,他の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないこ とをなんら主張立証していない。 イ(ア) 被告標章1が,原告が主張するように,結合標章として,一体として認識されるとすると,「ハイウェイスター S-HYBRID エアロモード」という外観を有するものであり,図形に特徴を有する本件商標1はもとより,「ハイブリッドエアロ」の標準文字である本件商標2とも,外観上,明らかに異なる。 被告標章2及び被告標章3についても同様である。 (イ) 被告標章1が結合標章として一体として認識されるものとすると,「ハイウェイスターエスハイブリッドエアロモード」という称 ,明らかに異なる。 被告標章2及び被告標章3についても同様である。 (イ) 被告標章1が結合標章として一体として認識されるものとすると,「ハイウェイスターエスハイブリッドエアロモード」という称呼を生ずる。 よって,「ハイブリッドエアロ」との称呼を生ずる本件各商標とは明らかに異なる。 被告標章2及び被告標章3についても同様である。 (ウ) 被告標章1が結合商標として一体として認識されるものとしても,被告標章1の語頭にある「ハイウェイスター」は周知著名であり,被告標章1からは,被告の製造等にかかる自動車その他自動車に関連する商品役務という観念が生じる。よって,特段の観念を生じない本件各商標とは明らかに異なるものである。 被告標章2及び被告標章3についても同様である。 ウ以上のとおり,仮に,被告各標章が,結合標章として,一体として認識されるとしても,本件各商標と,外観,称呼,観念のいずれにおいても類似せず,需要者がその出所を誤認混同するような事情は存在しない。 よって,被告各標章と本件各商標とは類似しない。 2 争点2(損害額等)について(原告の主張)(1) 原告は,平成14年以降,本件各商標を付したエアロパーツを製造し,販売している。 (2) 被告は,平成24年11月29日から平成26年8月15日(本件訴訟の提起日)までの間に,被告商品の販売により,少なくとも8億8542万5102円の利益を得たものであり,商標法38条2項により,原告の損害額は,これと同額と推定される。 (3) 原告は,本訴の遂行を原告訴訟代理人弁護士に委任した。弁護士費用のうち,被告の商標権侵害行為による不法行為と相当因果関係のある額は,上記(2)の損害額8億8542万5102円の1割に相当する8854万2510円である。 (4) 以 護士に委任した。弁護士費用のうち,被告の商標権侵害行為による不法行為と相当因果関係のある額は,上記(2)の損害額8億8542万5102円の1割に相当する8854万2510円である。 (4) 以上より,原告は,被告に対し,民法709条及び商標法38条2項に基づき,損害賠償金9億7396万7612円(上記(2)及び(3)の合計)の一部である5000万円及びこれに対する平成26年3月4日(被告各標章の使用停止等を求める原告の通告書が被告に到達した日)から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 (被告の主張)争う。 商標法38条2項は,侵害商品と市場において競合する商品について商標権者等が当該商標を使用している場合に適用される規定である。しかるに,原告は,被告商品(自動車)と競合する商品を販売している旨の主張すらしないのであるから,本件は,商標法38条2項の適用の前提を欠くものであり,原告の主張は,主張自体失当である。 第4 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件各商標と被告各標章との類否等)について(1) 類否判断の対象についてア原告は,被告が被告商品の宣伝,広告に被告各標章を使用したことが本件各商標権の侵害を構成する旨主張しているものと解される。 そこで,本件各商標と被告各標章との類否について,検討する。 イ前記前提事実等のほか,後掲各証拠等によれば,次の事実が認められる。 (ア) 本件商標1は,「HYBRID」及び「AERO」の黒色(ただし,「AERO」の「R」のみ赤字)のゴシック調文字を上下二段に配置し,これらの文字を囲むように,略三角形で自動車の輪郭が紫色(この点は,当事者間に争いがない。)で表示され,車体のリア部分にはウィングのようなものが配置されるとともに ゴシック調文字を上下二段に配置し,これらの文字を囲むように,略三角形で自動車の輪郭が紫色(この点は,当事者間に争いがない。)で表示され,車体のリア部分にはウィングのようなものが配置されるとともに,「AERO」の「R」の文字と重なるように車体の車輪がそれぞれ配置された図形と文字の結合商標である。 本件商標2は,「ハイブリッドエアロ」の文字を標準文字で横書きして成るもので,各文字の大きさ及び書体は同一であり,全体は等間隔に一行でまとまりよく表されているものである。 (イ) 原告は,エアロパーツと呼ばれる自動車部品の製造,販売を行っているところ,エアロパーツの種類として,「FRP(FiberReinforcedPlastic)」と「ハイブリッドエアロ」の2タイプを設定して製造,販売している(甲11ないし22)。 (ウ) 被告が製造,販売する「セレナ」,「エルグランド」,「ラフェスタ」などの車名を有する自動車には,そのグレードを表示するものとして,「ハイウェイスター」との表示が使用されている(乙1ないし9)。 また,被告は,燃費のよさとコンパクト性を両立した新しいタイプのハイブリッドシステムを開発し,同システムを搭載する車両の広告等に「S-HYBRID」(「S」は,スマートシンプルの意味である。)を使用している(乙14)。 (エ) 「エアロ」には,「空気」などの意味のほか,「(デザインなどが)空気力学的な[流線型の]」といった意味があり,被告は,ベースとする標準モデルの装備に加えてスタイリッシュで魅力的な装備を採用することとした特別仕様車につき,「エアロモード」や「Vエアロモード」の名称を付して販売していた(甲4の1及び3,乙7,15,16)。 ウ商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観 につき,「エアロモード」や「Vエアロモード」の名称を付して販売していた(甲4の1及び3,乙7,15,16)。 ウ商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであり(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照),複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁,最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。 そうすると,本件商標1は,文字と図形の組合せからなる結合商標であるから,全体を一体のものとしてとらえた上,被告各標章と類否を判断すべきである。また,本件商標2の「ハイブリッド」や「エアロ」にそれぞれ独自の意味があるとしても,これらは一般的,普遍的な文字であり,自他商品を識別する機能はないというべきであるから,「ハイブリッドエアロ」の構成部分全体を,被告各標章と対比して,その類否を判断すべきである。 また,上記イの認定事実によっても,被告各 字であり,自他商品を識別する機能はないというべきであるから,「ハイブリッドエアロ」の構成部分全体を,被告各標章と対比して,その類否を判断すべきである。 また,上記イの認定事実によっても,被告各標章の一部分だけが商品の出所を示す識別標識として強く支配的な印象を与えるとまでは認められないから,被告各標章は,それぞれその全体を一つのまとまった標章として捉え,本件各商標と対比すべきである。 (2) 本件商標1と被告各標章との対比についてア被告標章1について被告標章1の外観は,「ハイウェイスター S-HYBRID エアロモード」を標準文字で横一列に並べて表示したもので,文字と図形の結合標章たる本件商標1とは明らかに異なる。 また,被告標章1の称呼は「はいうぇいすたーえすはいぶりっどえあろもーど」であり,本件商標1のうちの文字部分の称呼である「はいぶりっどえあろ」とは明らかに異なる。 さらに,前記(1)イの認定事実によれば,被告標章1からは,被告商品のグレードや搭載されている装備のタイプなどの意味を生じると解されるのに対し,本件商標1では,原告の主張どおり,原告が販売するエアロパーツとして「ハイブリッドエアロ」が周知であるとしても,単に自動車に付属して使用する部品としてのエアロパーツの意味を生じるにすぎないから,その観念も異なる。 この点,原告は,「HYBRID」と「エアロ」の文字が近接して並べて表示されることにより,原告が販売するエアロパーツを観念し得る旨主張するが,被告標章1のうち,「HYBRID」と「エアロ」の部分のみが識別標識として強く支配的な印象を与え,この点に観念を生じるとは認められないから,原告の上記主張は採用することができない。 したがって,被告標章1と本件商標1は,外観,称呼,観念もいずれ 部分のみが識別標識として強く支配的な印象を与え,この点に観念を生じるとは認められないから,原告の上記主張は採用することができない。 したがって,被告標章1と本件商標1は,外観,称呼,観念もいずれも異なるというべきで,類似しない。 イ被告標章2について被告標章2は,被告標章1の「ハイウェイスター」の末尾に「G」が加わっただけであって,被告標章2の外観は,「ハイウェイスターGS-HYBRID エアロモード」を標準文字で横一列に並べて表示したものであり,被告標章2の称呼は,「はいうぇいすたーじーえすはいぶりっ どえあろもーど」である。したがって,被告標章1と同様,文字と図形の結合標章たる本件商標1の外観及び称呼はいずれも明らかに異なる。また,前記(1)イの認定事実によれば,被告標章2についても,被告商品のグレードや搭載されている装備のタイプなどの意味を生じると解されるから,原告の主張を前提としても原告の販売するエアロパーツの意味を生じるにすぎない本件商標1とはその観念も異なる。 したがって,被告標章2と本件商標1は,外観,称呼,観念もいずれも異なるというべきで,類似しない。 ウ被告標章3について被告標章3は,被告標章1の「エアロモード」の冒頭に「V」が加わっただけであって,被告標章3の外観は,「ハイウェイスター S-HYBRIDVエアロモード」を標準文字で横一列に並べて表示したものであり,被告標章3の称呼は,「はいうぇいすたーえすはいぶりっどぶいえあろもーど」である。したがって,被告標章1と同様,文字と図形の結合標章たる本件商標1の外観及び称呼とはいずれも明らかに異なる。また,前記(1)イの認定事実によれば,被告標章3についても,被告商品のグレードや搭載されている装備のタイプなどの意味を生じると 形の結合標章たる本件商標1の外観及び称呼とはいずれも明らかに異なる。また,前記(1)イの認定事実によれば,被告標章3についても,被告商品のグレードや搭載されている装備のタイプなどの意味を生じると解されるから,原告の主張を前提としても,原告の販売するエアロパーツの意味を生じるにすぎない本件商標1とはその観念も異なる。 したがって,被告標章3と本件商標1は,外観,称呼,観念もいずれも異なるというべきで,類似しない。 (3) 本件商標2と被告各標章との対比についてア被告標章1について被告標章1の外観は,「ハイウェイスター S-HYBRID エアロモード」を標準文字で横一列に並べて表示したもので,「ハイブリッドエアロ」の標準文字と比較しても,「エアロ」の部分しか一致せず,本件商 標2とは明らかに異なる。 また,被告標章1の称呼は「はいうぇいすたーえすはいぶりっどえあろもーど」であり,本件商標2の称呼である「はいぶりっどえあろ」のうち,「はいぶりっど」と「えあろ」について同一の部分は認められるとしても,全体としての称呼は明らかに異なる。 さらに,被告標章1からは,被告商品のグレードや搭載されている装備のタイプなどの意味を生じると解されるのに対し,本件商標2では,原告の主張どおり,原告が販売するエアロパーツとして「ハイブリッドエアロ」が周知であるとしても,単に自動車に付属して使用する部品としてのエアロパーツの意味を生じるにすぎないから,その観念も異なる。 したがって,被告標章1と本件商標2は,外観,称呼,観念もいずれも異なるというべきで,類似しない。 イ被告標章2について被告標章2は,被告標章1の「ハイウェイスター」の末尾に「G」が加わっただけであって,被告標章2の外観は,「ハイウェイスターGS-HYBR るというべきで,類似しない。 イ被告標章2について被告標章2は,被告標章1の「ハイウェイスター」の末尾に「G」が加わっただけであって,被告標章2の外観は,「ハイウェイスターGS-HYBRID エアロモード」を標準文字で横一列に並べて表示したものであり,被告標章2の称呼は,「はいうぇいすたーじーえすはいぶりっどえあろもーど」である。したがって,被告標章1と同様,本件商標2の外観及び称呼とはいずれも明らかに異なる。また,被告標章2についても,被告商品のグレードや搭載されている装備のタイプなどの意味を生じると解されるから,原告の主張を前提としても,原告の販売するエアロパーツの意味を生じるにすぎない本件商標2とはその観念も異なる。 したがって,被告標章2と本件商標2は,外観,称呼,観念もいずれも異なるというべきで,類似しない。 ウ被告標章3について被告標章3は,被告標章1の「エアロモード」の冒頭に「V」が加わっ ただけであって,被告標章3の外観は,「ハイウェイスター S-HYBRIDVエアロモード」を標準文字で横一列に並べて表示したものであり,被告標章3の称呼は,「はいうぇいすたーえすはいぶりっどぶいえあろもーど」である。そうすると,被告標章1と同様,本件商標2の外観及び称呼とはいずれも明らかに異なる。また,被告標章3についても,被告商品のグレードや搭載されている装備のタイプなどの意味を生じると解されるから,原告の主張を前提としても,原告の販売するエアロパーツの意味を生じるにすぎない本件商標2とはその観念も異なる。 したがって,被告標章3と本件商標2は,外観,称呼,観念もいずれも異なるというべきで,類似しない。 2 以上によれば,本件各商標と被告各標章とは,いずれも類似するとは認められない。 なお, 。 したがって,被告標章3と本件商標2は,外観,称呼,観念もいずれも異なるというべきで,類似しない。 2 以上によれば,本件各商標と被告各標章とは,いずれも類似するとは認められない。 なお,原告は,被告が被告商品の宣伝,広告に被告各標章を使用したことが本件各商標権の侵害を構成する旨主張しているものと解されるが,前記前提事実等によれば,被告が被告各ウェブサイトにおいて表示したのは被告各表示であり,その構成や書体は被告各標章のとおりであるとは認められないから,被告が被告各ウェブサイトにおいて被告各標章を使用したということはできず,ほかに被告が被告各標章を使用したと認めるに足りる証拠はなく,原告の主張は,そもそも,その前提を欠くものであって,採用することができないものといえる(原告は,被告各標章が「標準文字」で構成されている旨主張しているところ,「標準文字」とは商標法5条3項に基づき特許庁長官の指定する文字,すなわち特許庁長官があらかじめ指定して公表した書体からなる文字であり,当該文字が被告各表示に用いられているといえないことは,明らかである。)。 また,仮に,原告が,被告各表示の使用が本件各商標権の侵害を構成する旨主張していると解したとしても,被告各表示の書体はゴシック体であり,その構成も横書きで上下二段に分かれて表示されているものも存することからして, 標準文字で横一列に表示された被告各標章が本件各商標と類似しない以上,被告各表示と本件各商標も類似しないことは明らかというべきである。 よって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 主文 原告の請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 嶋末和秀 裁判官 鈴木千帆 裁判官 西村康夫は,転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官 嶋末和秀

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