主文 1 被告は,原告株式会社Aに対し,1130万6234円及びうち1111万6020円に対する平成24年10月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告株式会社Aのその余の請求並びに原告B及び原告Cの請求をいずれも棄 却する。 3 訴訟費用は,これを10分し,その1を被告の負担とし,その余を原告らの連帯負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告株式会社Aに対し,1億2499万8534円及びこれに対する平成24年10月10日から支払済みまで年5分の割による金員を支払え。 2 被告は,原告Bに対し,200万円及びこれに対する平成24年8月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は,原告Cに対し,200万円及びこれに対する平成24年8月14日か ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告株式会社A(以下「原告会社」という。)が運営する旅館(以下「本件旅館」という。)が平成24年8月13日から同月14日にかけての豪雨(以下「本件豪雨」という。)の際に床上浸水(以下「本件浸水」という。)の被 害を受けたのは,本件旅館の近傍を流れる河川に設置されたスクリーンの構造や本件旅館に隣接する排水機場の運用方法に設置又は管理の瑕疵があったからであるとして,原告らが,上記河川及び排水機場を管理する地方公共団体である被告に対し,国家賠償法2条1項に基づき,原告会社については1億2499万8534円の損害賠償金及びこれに対する原告会社が損害保険金の支払を受けた 日の翌日である平成24年10月10日から支払済みまで民法(平成29年法律 第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合 びこれに対する原告会社が損害保険金の支払を受けた 日の翌日である平成24年10月10日から支払済みまで民法(平成29年法律 第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,原告B及び原告C(以下,原告Bと併せて「原告Dら」という。)については各200万円の慰謝料及びこれに対する本件浸水の日である同年8月14日から支払済みまで上記同旨の遅延損害金の各支払を求める事案である。 1 前提事実 争いがない事実,後掲の証拠(枝番があるものは,特記しない限り枝番を含む。 以下同じ。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる(なお,証拠等を掲記していない事実は,当事者間に争いがないか弁論の全趣旨により容易に認められる。)。 当事者 ア原告会社は,その肩書地において本件旅館を経営する株式会社であり,原告Bは原告会社の代表取締役,原告Cは原告会社の取締役である。 なお,原告Dらは,本件浸水当時,本件旅館に居住していた。 イ被告は,本件旅館に隣接して設置されているE排水機場(以下「本件排水機場」という。)及び本件排水機場の近傍を流れる普通河川であるF川(別紙 1の青線で表記された河川。以下「本件河川」という。)を管理する地方公共団体である。 本件旅館及び本件排水機場周辺の位置関係本件旅館及び本件排水機場周辺の位置関係は別紙1のとおりであり,本件旅館及び本件排水機場は,宇治川の左岸(上流から下流に向かって左手側の河岸) に隣接して位置し,その南西方面の山林を流域とする本件河川が本件旅館と本件排水機場の間を通って宇治川に流入している。 なお,宇治川には,別紙1に表示されている地区よりも上流側に,洪水調節等を目的とする天ヶ瀬ダムが設置されて 方面の山林を流域とする本件河川が本件旅館と本件排水機場の間を通って宇治川に流入している。 なお,宇治川には,別紙1に表示されている地区よりも上流側に,洪水調節等を目的とする天ヶ瀬ダムが設置されている(乙28)。 本件河川の構造等 ア本件河川は,別紙1の「スクリーン」と記載された地点から暗渠となり(以 下,本件河川の暗渠部分を「本件暗渠」といい,その入口部を「本件暗渠入口部」という。),自然排水により宇治川に直接流入する構造となっている。 また,本件河川には,別紙1の「治山えん堤1」,「治山えん堤2」及び「治山えん堤3」と記載された場所に,京都府が設置管理する3つの治山えん堤(山地の荒廃を未然に防止し,災害の防止と軽減を図る目的で築造されてい る構造物。以下,上記の各治山えん堤を,別紙1に記載のとおり「治山えん堤1」のように表記し,これらを併せて「本件各治山えん堤」という。)が設けられている。 イ本件暗渠入口部は,下底が約140cm,上底が約170cm,高さが約85cmの台形になっており,本件豪雨(後記⑸参照)当時,暗渠内部に, 堆積すると取り除くことが困難となる流木等の異物が入り込まないように,被告の管理に係る約10cm四方の格子状(網目状)の構造をしたスクリーン(以下「本件スクリーン」といい,上記の約10cm四方の格子状の構造を「本件格子状構造」という。)が設置されていた(証人G〔29頁〕,弁論の全趣旨)。 本件排水機場周辺の排水設備等の概要ア流域の区分本件排水機場が設置されているE排水機場流域(以下「本件排水機場流域」という。)は,別紙2の緑色の地域であり,H橋の橋台下から宇治川に排水されるI流域(別紙2のピンク色の地域),本件排水機場下流側(西側)から宇 されているE排水機場流域(以下「本件排水機場流域」という。)は,別紙2の緑色の地域であり,H橋の橋台下から宇治川に排水されるI流域(別紙2のピンク色の地域),本件排水機場下流側(西側)から宇 治川に排水されるF川流域(別紙2のクリーム色の地域。以下「本件河川流域」という。)及びJ観測所付近から宇治川に排水されるK川流域(別紙2の水色の流域)に囲まれた流域である。 イ本件排水機場の構造本件排水機場は,本件排水機場流域内の排水を目的とし,強制排水のため にポンプ3台を有する施設であり,その構造は,別紙3のとおりである。 すなわち,本件排水機場流域内の雨水は,周辺道路に設けられている側溝や集水桝等から暗渠管を通じて本件排水機場の集水桝(以下「本件集水桝」という。)に流入するほか,地表に設置されている導水路から本件集水桝の地表部分に設置された縦約20cm,横約80cmの呑込口(以下「本件呑込口」という。)を通じて本件集水桝に流入し,自然排水の場合は,別紙3の 「電動ゲート」と記載されたゲート(以下「本件電動ゲート」という。)を通ってフラップゲートが設置された放流口(以下「本件放流口」という。)から宇治川に放水され,ポンプによる強制排水の場合は,本件集水桝に流入した雨水がスクリーン(以下「本件排水機場スクリーン」という。)を通ってポンプが設置されている貯水槽(以下「本件貯水槽」という。)に流入し,ポンプ の動力で排水されて本件電動ゲートの外側で自然排水と同じ水路に合流し,本件放流口から宇治川に放水される。 なお,本件排水機場において強制排水を行う場合には,本件電動ゲートの外側で自然排水の水路と強制排水の水路が合流するという上記構造から,本件電動ゲートを全閉とする必要がある。 (甲31,乙 なお,本件排水機場において強制排水を行う場合には,本件電動ゲートの外側で自然排水の水路と強制排水の水路が合流するという上記構造から,本件電動ゲートを全閉とする必要がある。 (甲31,乙6,9,10,12)ウ本件排水機場における強制排水の運用等本件排水機場の操作要領には,本件排水機場の運転方法につき,総則として「天ヶ瀬ダムの400 ㎥/sec 放流時に排水機場の操作を行うものとする」との記載に加え,「常時電動バルブは全開にしておく。 (通常は自然流下の為)」, 「天ヶ瀬ダムの放流量が400 ㎥/Sを越えた場合,電動バルブを全閉にし,No.1,No.2 ポンプ,もしくはNo.3 ポンプを自動に切替ておきます」との記載がされているが,平成20年頃から,「出水期(6月16日~10月15日) 自動運転を行う。(状況により変更するものとする。)」との運用が示され,出水期は原則として強制排水により運用されるようになった。 なお,本件排水機場に設置されている3台のポンプは,宇治川の水位を基 準として自動運転時の起動水位が設定されており,本件貯水槽の水位が一定の高さに達すると1台目が起動し,水位の上昇に応じて,2台目及び3台目が順次起動するように設定されていた。 (甲7,25,28)本件豪雨の発生 ア平成24年8月13日の夜から同月14日未明にかけて,宇治市を含む京都府南部を中心に猛烈な雨が降り,宇治市役所近傍(宇治市宇治下居13-2)に設置された雨量計において,同月13日午前7時から同月14日午前7時までの24時間の総雨量が309.5mm,同月13日午後8時から同月14日午前3時00分までの7時間の連続降雨量が137.5mm,1時 間当たりの最大雨量(最大時間雨量)が同日午前3時 前7時までの24時間の総雨量が309.5mm,同月13日午後8時から同月14日午前3時00分までの7時間の連続降雨量が137.5mm,1時 間当たりの最大雨量(最大時間雨量)が同日午前3時00分から午前4時00分までの78.5mmを記録した(乙44)。 イ本件排水機場は,本件豪雨が発生した当時,強制排水により運転されており,本件電動ゲートは全閉とされていた。 本件旅館の浸水(本件浸水) 本件豪雨の際,本件スクリーンが土砂や枝葉等によって閉塞したことにより本件暗渠入口部から土砂や枝葉等を含んだ濁水が溢水するとともに(以下,この溢水を「本件溢水」という。),本件旅館及び本件排水機場周辺が冠水し,本件旅館の1階及び地階が床上浸水した。 本件スクリーンの改修 被告は,平成25年7月頃,本件スクリーンの改修工事を行い,本件暗渠入口部に設置されていた本件スクリーンを縦方向のバーのみで構成されたスクリーン(以下,このような構造のスクリーンを「縦縞スクリーン」という。)に変更するとともに,その上流側に新たに縦縞スクリーン(以下「本件追加スクリーン」という。)を設置した。 なお,改修後の各スクリーンのバーとバーとの間隔(以下「目幅」という。) は,本件暗渠入口部に設置されたスクリーンが10cm,本件追加スクリーンが20cmとされた。 (甲22,乙76,77) 原告会社に対する保険金の支払原告会社は,東京海上日動火災保険株式会社(以下「本件保険会社」という。) との間で,契約者及び被保険者を原告会社とする企業総合保険(以下「本件保険」という。)に加入していたところ,平成24年10月9日,本件浸水によって本件旅館が受けた被害に対する保険金として,以下のとおり,合計20 約者及び被保険者を原告会社とする企業総合保険(以下「本件保険」という。)に加入していたところ,平成24年10月9日,本件浸水によって本件旅館が受けた被害に対する保険金として,以下のとおり,合計2018万2624円の保険金の支払を受けた(甲95,142。以下,原告会社に支払われた本件保険に基づく保険金を併せて「本件保険金」という。)。 ア損害保険金 1281万0003円イ残存物取片づけ費用保険金 128万1001円ウ修理付帯費用保険金 509万1620円エ臨時費用保険金 100万円 2 争点 営造物の瑕疵の有無ア本件スクリーンの瑕疵(争点①)本件スクリーンの本件格子状構造が,本件暗渠入口部に設置されるスクリーンとして通常有すべき安全性を欠いており,この瑕疵によって本件浸水が発生したといえるか(なお,本件スクリーンの閉塞によって本件溢水が発生 したこと自体は,当事者間に争いがない。)。 イ本件排水機場の運用方法に関する管理の瑕疵(争点②)本件電動ゲートを全閉として強制排水に切り替えていた本件豪雨当時の本件排水機場の運用方法が,排水機場として通常有すべき安全性を欠いており,この瑕疵によって本件浸水が発生したといえるか。 本件浸水の回避可能性の不存在ないし不可抗力(争点③) 仮に,本件スクリーンが通常有すべき安全性を備えていたとしても,本件浸水の発生という結果を回避することは不可能であったといえるか(なお,被告は,争点③に関する主張を,争点①における本件スクリーンの瑕疵を判断する要素としても,不可抗力を理由とする免責の抗弁としても主張するものと解される。)。 損害の有無及び額(争点④)本件浸水に る主張を,争点①における本件スクリーンの瑕疵を判断する要素としても,不可抗力を理由とする免責の抗弁としても主張するものと解される。)。 損害の有無及び額(争点④)本件浸水によって原告らにどのような損害が生じたといえるか。また,その額はいくらか。 3 争点に関する当事者の主張 争点①(本件スクリーンの瑕疵)について (原告らの主張)ア一般に1時間に20mm以上又は連続した100mm以上の降雨を記録した場合には土砂崩れに特に注意が必要とされているところ,この程度の大雨は本件豪雨以前から繰り返し発生していたし,本件スクリーンの上流は両岸が護岸されていない自然斜面となっていたのであるから,本件河川流域に おいて集中豪雨が発生すれば,これに伴う土砂崩れ等により土砂や枝葉等が本件河川に流入するおそれがあることは,被告において容易に予測可能であった。 ところが,本件スクリーンは,本件格子状構造という土砂や枝葉等を捕捉することで容易に閉塞する構造をしていたのであるから,集中豪雨に伴う土 砂崩れ等により本件河川に土砂や枝葉等が流入した場合,本件スクリーンが閉塞して溢水が生じる危険があることも,被告において当然に予測できた。 そして,実際に,本件豪雨において本件スクリーンのすぐ上流(治山えん堤1よりも下流)の左岸で山腹崩壊による土砂崩れが発生し,これによって土砂や枝葉等が本件暗渠入口部にまで流入して本件スクリーンが閉塞し,本件 溢水が発生した。 イ本件暗渠入口部にスクリーンを設置する目的は,本件暗渠内に土砂や枝葉等の流下物が流入することで本件暗渠の水流が阻害されることを防止することにあるが,本件スクリーンが流下物を捕捉することによって閉塞すると,かえって本件河川 ンを設置する目的は,本件暗渠内に土砂や枝葉等の流下物が流入することで本件暗渠の水流が阻害されることを防止することにあるが,本件スクリーンが流下物を捕捉することによって閉塞すると,かえって本件河川の水流が阻害されることになるのであるから,上記の設置目的に沿った本件暗渠入口部のスクリーンとするには,本件暗渠内の水流を 阻害するおそれのある30cm以上の流木や岩石等の流下物を除去しつつ,スクリーン自体が閉塞するということがないよう,本件暗渠自体を閉塞するおそれのない土砂や枝葉等の流下物は捕捉しない構造とする必要がある。 そうすると,本件暗渠入口部には,本件暗渠内に流下させるべき土砂や枝葉等の流下物までも容易に捕捉してしまう本件格子状構造をした本件スク リーンではなく,目幅20cmの縦縞スクリーンを設置すべきであったといえる。 なお,被告は,目幅20cmの縦縞スクリーンでは子供等が容易に本件暗渠内に進入できるため,安全性に欠ける旨を主張するが,子供等が本件暗渠に進入することを防止するには,本件暗渠入口部の周囲に柵を設けたり進入 禁止の看板を設けたりすることで対応すれば足りるのであり,子供等が進入する危険性は,本件スクリーンを本件格子状構造とする理由にはならない。 ウしかも,被告は,本件豪雨後である平成25年7月頃,本件スクリーンを改修し,本件暗渠入口部に設置するスクリーンを目幅10cmの縦縞スクリーンに変更した上,その上流側に更に目幅20cmの縦縞スクリーンである 本件追加スクリーンを設置しているのであり,このような改修が行われたこと自体が,被告において本件スクリーンの問題性を認識した証左といえる。 エ以上によれば,本件スクリーンは,本件暗渠入口部に設置されるべきスクリーンとして,通常有すべき安全性 改修が行われたこと自体が,被告において本件スクリーンの問題性を認識した証左といえる。 エ以上によれば,本件スクリーンは,本件暗渠入口部に設置されるべきスクリーンとして,通常有すべき安全性を欠いていたものといえる。 (被告の主張) ア本件溢水は,想定を超える記録的な豪雨となった本件豪雨により,本件河 川の上流で土砂崩れが発生し,多量の土砂や流木等が濁水と共に土石流となって本件河川に流入し,これによって本件スクリーンが閉塞したため発生したものであるが,平成5年頃に本件スクリーンが設置されて以降,本件スクリーンが流下物を捕捉して閉塞したり,本件暗渠入口部から溢水が生じたりしたことはなかったのであるから,被告において,本件スクリーンの閉塞や そこからの溢水が発生する危険を予測することはできなかった。 イまた,本件スクリーンは,その底部に10cmほどの隙間が設けられており,その隙間を土砂や枝葉等の流下物が通過する構造になっていたし,一般に暗渠の入口にスクリーンを設置する場合,その目幅に特段の基準は設けられていない。 他方,目幅20cmの縦縞スクリーンが適切であるとの原告らの主張の根拠は不明であるし,後記の争点③において主張するとおり,仮に本件スクリーンが目幅20cmの縦縞スクリーンであったとしても,本件溢水の発生を回避することはできなかったといえる。 しかも,目幅20cmの縦縞スクリーンの場合,子供等が容易に進入する ことができることとなるため,安全性が確保できない。 したがって,本件暗渠入口部に設置すべきスクリーンとして,本件スクリーンが不適切であり,目幅20cmの縦縞スクリーンが適切であるとはいえない。 ウ被告は,本件豪雨後の平成25年7月頃,スクリーンに捕捉された流下物 部に設置すべきスクリーンとして,本件スクリーンが不適切であり,目幅20cmの縦縞スクリーンが適切であるとはいえない。 ウ被告は,本件豪雨後の平成25年7月頃,スクリーンに捕捉された流下物 の除去や清掃を容易にするため,本件スクリーンを縦縞スクリーンに変更するとともに,その上流において流木等を受け止め,本件河川の水流を確保できるようにするため,本件追加スクリーンを設置したが,この改修は,本件豪雨を教訓として,将来の豪雨に対応するため,設備の改善を行ったものにすぎない。 エ以上によれば,本件スクリーンが,本件暗渠入口部に設置すべきスクリー ンとして通常有すべき安全性を欠いていたとはいえない。 争点②(本件排水機場の運用方法に関する管理の瑕疵)について(原告らの主張)ア一般に,内水(堤防の内側での浸水)の排水方法は,自然排水を優先するのが原則である。また,本件旅館及び本件排水機場周辺は,山側の断崖と宇 治川沿いのパラペット(壁状の構造物)に囲まれ,地表面に滞留する雨水が宇治川に排水されにくい構造となっている上,本件排水機場は本件電動ゲートを全閉として自然排水ができない状態にしなければ強制排水を実施できない構造となっていたのであるから,強制排水中にポンプ等に何らかの問題が生じると,それだけで一切の排水ができない事態に陥ることとなる。した がって,本件排水機場において強制排水を実施することは,その周辺において冠水等を発生させる危険性が飛躍的に高まることとなる。 そのため,本件排水機場の操作要領では,本件電動ゲートを常時全開にして自然排水を行うことを前提に,天ヶ瀬ダムが毎秒400㎥の放流を行う際に強制排水に切り替える旨が定められていたのであり,被告は,上記操作要 領に 場の操作要領では,本件電動ゲートを常時全開にして自然排水を行うことを前提に,天ヶ瀬ダムが毎秒400㎥の放流を行う際に強制排水に切り替える旨が定められていたのであり,被告は,上記操作要 領に従い,本件豪雨時においても,本件電動ゲートを全開にしておかなければならなかった。 なお,本件電動ゲートを全開にして自然排水を実施している際に宇治川の水位が本件放流口まで上昇すると,排水自体ができなくなるおそれがあるが,天ヶ瀬ダムから本件排水機場までの宇治川の支流の流域面積は小さいため, 天ヶ瀬ダムからの放流がない限り,宇治川の水位が急激に上昇することはないし,天ヶ瀬ダムから放流が開始される場合には,時間的な余裕をもって下流の関係機関に連絡がされるのであるから,仮に本件電動ゲートを全開にして自然排水を実施している際に天ヶ瀬ダムから放流が開始されることとなったとしても,これに対応して本件排水機場を管理することは可能である。 ところが,被告は,本件豪雨当時,本件電動ゲートを常に全閉として強制 排水を実施するという誤った運用方法を根拠なく行っていた。 イ本件溢水によって本件排水機場流域に流入した濁水は,本件旅館前の道路に達した後,本件旅館に直接流入するのではなく,上記道路に沿って標高の低いH橋方面(西方向)に流下するとともに,側溝等を通じて本件集水桝に流入したが,本件豪雨当時,本件電動ゲートが全閉とされていたため,本件 集水桝に流入した濁水の自然排水ができない状態となっていた。しかも,濁水に含まれていた土砂や枝葉等により本件排水機場スクリーンの大部分が閉塞したため,本件集水桝の雨水が本件貯水槽に十分には流れ込まず,強制排水も機能しなかった。 そのため,本件排水機場流域内に流入した濁水は,排水されることなく地 本件排水機場スクリーンの大部分が閉塞したため,本件集水桝の雨水が本件貯水槽に十分には流れ込まず,強制排水も機能しなかった。 そのため,本件排水機場流域内に流入した濁水は,排水されることなく地 表に滞留することとなり,本件旅館周辺が冠水して本件浸水が発生したが,その後,被告の災害対策本部が派遣した調査班(以下「本件調査班」という。)が本件排水機場に到着し,本件電動ゲートを開放して自然排水に切り替えたところ,冠水は速やかに解消した。なお,被告は本件呑込口の閉塞を除去することで冠水が解消した旨を主張するが,本件呑込口が閉塞していた事実は なく,その閉塞を除去することで冠水が解消したものではない。 そうすると,本件豪雨時に本件電動ゲートを全開にしていれば,本件旅館周辺が冠水して本件浸水が発生することもなかったといえ,本件浸水は,本件電動ゲートを全閉とする被告の誤った運用方法によって発生したものといえる。 ウ以上によれば,被告が本件豪雨当時に行っていた出水期に本件電動ゲートを全閉とする本件排水機場の運用方法は,排水機場の管理として通常有すべき安全性を欠くものであり,この管理の瑕疵によって本件浸水が発生したといえる。 (被告の主張) ア本件排水機場は,宇治川の水位が本件放流口まで上昇すると自然排水が困 難になるが,平成20年以降,局地的豪雨が顕著に発生するようになり,宇治川の急な水位上昇や,水位上昇の目安となる天ヶ瀬ダムからの毎秒400㎥を超える放流が急に行われることが想定されるようになった。 他方,本件排水機場における強制排水は,自動運転が可能であり,かつ,10年に1回程度起こる大雨に対して十分な排水能力を有していた。 そこで,本件排水機場においては,毎年6月16日から10月1 他方,本件排水機場における強制排水は,自動運転が可能であり,かつ,10年に1回程度起こる大雨に対して十分な排水能力を有していた。 そこで,本件排水機場においては,毎年6月16日から10月15日までの出水期に本件電動ゲートを常に全閉として強制排水に切り替える運用とすることが,夜間や休日等で緊急対応が困難な場合であっても宇治川の急な増水に対応できる最善の方法であると判断されたのであり,このような本件排水機場の運用方法は適切なものであった。 イ本件溢水により本件排水機場流域内に流入した濁水は,本件旅館周辺の道路に設置されている既存の側溝や集水桝の排水能力を大幅に超える水量であった上,その濁水には多量の土砂や枝葉等が含まれていたため,上記の側溝や集水桝のグレーチング(格子状の蓋)が直ちに閉塞し,これらの排水設備から暗渠管に雨水が流入しにくい状況となった。 そのため,本件排水機場流域に流入した濁水は,本件排水機場に流れ込まずに,本件暗渠入口部周辺から本件旅館にかけての地形に沿って地表面を排水されることなく流下し,本件旅館を直撃したものと考えられ,本件排水機場の運用方法と本件浸水の発生は無関係である。なお,本件暗渠入口部周辺と本件旅館の位置関係及び地形に照らせば,H橋方面の標高が本件旅館より 低いからといって,上記濁水が本件旅館を避けるようにしてH橋方面に流下するとは考えにくい。また,本件排水機場や本件旅館周辺の冠水が,本件呑込口の閉塞が除去されて本件集水桝に地表面の雨水が流入するようになったことで解消したことからすると,本件排水機場流域全体に冠水が広がった主な原因は,本件溢水に伴って本件排水機場流域に流入してきた流下物が本 件呑込口等の排水設備を閉塞したことによるものと考えられるのであり,本 と,本件排水機場流域全体に冠水が広がった主な原因は,本件溢水に伴って本件排水機場流域に流入してきた流下物が本 件呑込口等の排水設備を閉塞したことによるものと考えられるのであり,本 件電動ゲートが全閉となっていたことと本件浸水の発生とは無関係である。 ウ以上によれば,出水期に本件電動ゲートを全閉とする本件排水機場の運用方法が通常有すべき安全性を欠いていたとはいえないし,上記運用方法によって本件浸水が発生したともいえない。 争点③(本件浸水の回避可能性の不存在ないし不可抗力)について (被告の主張)本件豪雨は,総雨量が311.0mm,最大時間雨量が78.5mmに達する記録的な豪雨であり,宇治市内の東宇治地域の複数の中小河川で氾濫や溢水が同時多発的に発生し,多くの地域が浸水被害を被った自然災害であった。そして,本件河川流域においても,土砂崩れや多量の土砂や流木等を含んだ激し い洪水が発生し,本件河川に土砂や流木等が大量に流れ込んだのであり,本件スクリーンの閉塞は,本件河川において発生した土砂災害により予想できない量の土砂や流木等が流出し,これが堆積したことによって発生したものである。 実際に,本件スクリーンに堆積した流木や枝葉等の長さや大きさと本件暗渠入口部の大きさを比較すると,本件暗渠入口部には,本件暗渠そのものを閉塞さ せるに十分な流木や枝葉等が流入していたものといえる。 また,スクリーンに流木等が数本でも堆積すると,後続の流木や枝葉等が絡み合い,スクリーンの目幅にかかわらず溢水が生じることとなる。実際に,本件豪雨では,宇治市内の複数の中小河川において,上流の山林から流出した流木等が橋脚に引っ掛かって集積し,橋脚の上流で水位が上昇したことを主な原 因として氾濫や溢水が同時多発的に発 。実際に,本件豪雨では,宇治市内の複数の中小河川において,上流の山林から流出した流木等が橋脚に引っ掛かって集積し,橋脚の上流で水位が上昇したことを主な原 因として氾濫や溢水が同時多発的に発生したのであり,本件溢水も橋梁で発生した氾濫や溢水と同様の現象によって発生したものと考えられるが,橋梁にはスクリーンなど設置されていないのであるから,スクリーンの目幅は溢水の発生に影響するものではない。 以上によれば,本件スクリーンが目幅20cmの縦縞スクリーンであったと しても,本件溢水及び本件浸水の発生を回避することはできなかったといえる。 (原告らの主張)本件スクリーンは,大きな流木等によって閉塞したのではなく,主に土砂や細かい枝葉によって閉塞したのであるから,本件スクリーンが目幅20cmの縦縞スクリーンであれば,本件暗渠自体を閉塞させるような大きな流下物が本件暗渠内に進入することを防ぎつつ,細かい土砂や枝葉等を捕捉することで本 件スクリーン自体が閉塞することを回避することができ,本件溢水の発生を回避することができたものと考えられる。 なお,被告は,流木等が数本でも堆積すると,後続の流木や枝葉等が絡み合ってスクリーンが閉塞する旨を主張するが,そもそもスクリーンは暗渠を閉塞させるおそれがある流下物を捕捉して暗渠内に流入しないようにするために 設置されるものであり,スクリーンが一定の流下物を捕捉することは当然に予定されているのであって,流木等が数本でも堆積すると閉塞に至るとの経験則があるとは考えにくい。実際に,目幅20cmの縦縞スクリーンである本件追加スクリーンでは,その縦縞スクリーンが枝葉等の流下物を捕捉した状態で水流が保たれている状況が確認されている。 したがって,本件スクリーンが目幅20cm 20cmの縦縞スクリーンである本件追加スクリーンでは,その縦縞スクリーンが枝葉等の流下物を捕捉した状態で水流が保たれている状況が確認されている。 したがって,本件スクリーンが目幅20cmの縦縞スクリーンであれば,本件溢水及び本件浸水の発生を回避することができたといえる。 争点④(損害の有無及び額)について(原告らの主張)ア原告会社の損害 修繕費等 6780万4479円a 庭園修繕等 101万6400円b 消火設備等の修復 40万2150円c 内装等のデザイン料 315万円d 濾過機周りの改修 167万3700円 e 油水処分等 66万0975円 f 畳の取替え 75万4215円g 浄化槽清掃等 26万4200円hLAN工事一式 13万4000円i エントランス改装工事 3202万5000円j 1階廊下改装工事 157万5000円 k 1階喫煙コーナー追加工事 100万円l 1階及び地階修理 100万円m 地階改修工事 150万円n エントランス周り電気工事 108万2949円o 101号室及び102号室改修工事 493万5980円 p 105号室入口周り改修工事 178万5000円q 105号室改修工事 823万4810円r 地階休憩室改修工事 571万0100円s 温蔵庫のリース契約 90万円t 合計 6780万4479円 休業損害及び逸失利益 7627万1441円原告会社の本件浸水前5年間の月ごとの売上総利益の平均額は,別表1の「本件水害前平均」の欄に記載のとおりであった 780万4479円 休業損害及び逸失利益 7627万1441円原告会社の本件浸水前5年間の月ごとの売上総利益の平均額は,別表1の「本件水害前平均」の欄に記載のとおりであった。 ところが,本件旅館は,本件浸水の日である平成24年8月14日から同年12月30日にリニューアルオープンするまで,例外的な臨時の開業 を除いて休業を余儀なくされるとともに,上記リニューアルオープンの後も,少なくとも平成26年8月に至るまで,本件浸水の影響で売上の減少が継続した。 したがって,原告会社は,休業損害及び逸失利益として,別表2の「損害」の欄に記載の本件浸水前5年間の月ごとの売上総利益の平均額と平成 24年8月から平成26年8月までの月ごとの売上総利益との差額に相 当する損害を被ったのであり,その合計額は7627万1441円となる。 本件保険金による填補原告会社は,平成24年10月9日,本件保険金として,2018万2625円の支払を受けたが,本件保険金を本件浸水の日から本件保険金の支払日までの遅延損害金から填補されたものとすると,その残額は,以下 の計算式のとおり1億2499万8534円となる(円未満は切捨て。以下同じ。)。 なお,以下の計算式では,本件保険金の支払日までを56日間として遅延損害金を算定し,本件保険金の全額を原告会社の全損害額から控除しているが,原告らは,遅延損害金の起算日は本件浸水の日である平成24年 8月14日であると主張するものである(そうすると,本件保険金の支払日までの期間は57日間となる。)。また,原告らは,以下の計算式にかかわらず,本件保険金の支払による保険代位の対象は,原告会社が被告に対して有する損害賠償請求権のうち修繕費等に係るものに限られ,このう までの期間は57日間となる。)。また,原告らは,以下の計算式にかかわらず,本件保険金の支払による保険代位の対象は,原告会社が被告に対して有する損害賠償請求権のうち修繕費等に係るものに限られ,このうち残存物取片づけ費用及び修理付帯費用については,それに相当する損害に 係る請求権のみが保険代位の対象となり,臨時費用保険金については,保険代位の効果が生じないので原告会社の損害額から控除することはできない旨を主張するものである。 (計算式)a 遅延損害金の算定 1億4407万5920円×0.05×56日/365日=110万5239円b 保険金充当後の残額1億4407万5920円+110万5239円-2018万2625円=1億2499万8534円 イ原告Dらの損害各200万円 原告Dらは,本件浸水により,原告会社の代表取締役及び取締役として様々な対応に追われるとともに,生命の危機に直面して恐怖を感じた。さらに,本件浸水によって,本件旅館は長期間の休業を余儀なくされ,存続が危ぶまれる経営危機に陥ったのであり,原告Dらは,生活上の不安にも悩まされることとなった。 したがって,本件浸水によって原告Dらが被った精神的苦痛は甚大であり,その慰謝料の額は各200万円を下回らない。 (被告の主張)ア原告会社の損害 修繕費等 修繕費等に関する主張は,いずれも不知であるが,以下の点には特に留意すべきである。 a エントランス改装工事(前記原告らの主張),1階廊下改装工事(同j),1階喫煙コーナー追加工事(同k),105号室入口周り改修工事(同p)及び105号室改修工事(同q)には,天井部分の修繕 等に関す ス改装工事(前記原告らの主張),1階廊下改装工事(同j),1階喫煙コーナー追加工事(同k),105号室入口周り改修工事(同p)及び105号室改修工事(同q)には,天井部分の修繕 等に関する費用が含まれているが,本件浸水は床上浸水であり,これによって天井部分が汚損することはないのであるから,天井部分の修繕等に関する費用は本件浸水と無関係である。 b 修繕費等の損害は,本件浸水による損傷ないし汚損等からの復旧に必要な範囲で認められるべきものであるところ,本件旅館は,建築後47 年が経過しており,法定の耐用年数は既に経過し,残存価値は相当程度低下していたと考えられるから,修繕等によって新しくなった部分については,損害額の算定において考慮すべきである。 また,本件浸水による損傷ないし汚損等からの復旧のため新たに内装のデザインを行う必要はないから,内装等のデザイン料(同c)は,本 件浸水とは無関係である。 c 本件旅館の105号室が本件浸水によって被害を受けたか否かは明らかではないから,105号室入口周り改修工事(同p)及び105号室改修工事(同q)の費用を本件浸水によって生じた損害ということはできない。 また,浄化槽清掃等(同g)は,浄化槽の維持管理契約に基づいて支 出されたものにすぎないし,温蔵庫のリース契約(同s)は,温蔵庫の新品を購入・設置した費用と解されるが,原告会社では温蔵庫についてリース契約を締結していたのであり,本件浸水時において温蔵庫は原告会社の資産ではなかったのであるから,これらの費用を本件浸水によって生じた損害ということはできない。 d 原告らが主張する修繕費等には消費税が含まれているが,原告会社は課税事業者であるから,修理業者等に支払った消費税は差引控除されるこ を本件浸水によって生じた損害ということはできない。 d 原告らが主張する修繕費等には消費税が含まれているが,原告会社は課税事業者であるから,修理業者等に支払った消費税は差引控除されることになる。 そうすると,原告会社は,修繕費等に対する消費税に相当する金額を実質的には負担していないものと考えられるのであるから,修繕費等に 対する消費税相当額の損害は発生していない。 休業損害及び逸失利益a 本件浸水によって本件旅館に生じた被害は,主に1階の一部の客室への床上浸水であるから,これによって一部の客室の使用が制約されたとしても,本件旅館全体を休業する必要はない。また,平成24年8月か ら同年11月までの本件旅館の売上は,直近5年の平均と比較して減少しているが,原告会社は,同年10月以降は本件旅館に宿泊客を受け入れているし,同年12月には,おせち料理の売上により直近5年の平均と遜色ない売上を確保している。 したがって,本件浸水によって原告会社に休業損害が発生したとして も,その休業期間は,平成24年8月から同年11月までに限られる。 b 本件旅館のリニューアルオープン後の売上の減少は,本件浸水との相当因果関係を欠くものであるから,上記リニューアルオープン後につき,原告会社に逸失利益が発生したとはいえない。 本件保険金による填補原告会社に生じた修繕費等の損害については,本件保険金のうち臨時費 用保険金100万円を除く1918万2625円により填補されている。 イ原告Dらの損害本件浸水によって生じた損害は,原告会社に生じた財産的損害を主たる内容とするものであり,原告Dらに独自の慰謝料が発生することはない 25円により填補されている。 イ原告Dらの損害本件浸水によって生じた損害は,原告会社に生じた財産的損害を主たる内容とするものであり,原告Dらに独自の慰謝料が発生することはない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 本件河川及びその周辺の状況ア本件河川流域は,宇治川の左岸(南側)の15.51haの地域であり,その大部分を山間部が占めている。また,本件河川流域は,別紙2のとおり, 宇治川との間に本件排水機場流域があって宇治川に直接面してはいないが,本件河川流域内の雨水は,本件河川を通じて,本件排水機場を経由することなく直接宇治川に排水される構造となっている。 (乙2,4,6,73,証人G〔6~8頁〕,証人L〔2,3頁〕)イ本件河川は,本件河川流域の山間部を上流としており,山間部を抜けてか ら本件暗渠入口部に至るまでの区間についてはコンクリートないし石垣による護岸工事がされていたが,治山えん堤1の上流側はもとより,その下流側においても,山間部を抜けるまでの区間は護岸工事がされていなかった(乙1,2,11〔写真A~D〕,12〔写真㉙~㉜〕)。 本件豪雨以前の降雨被害の状況 ア宇治市内では,本件豪雨以前から降雨による浸水被害が発生しており,昭 和61年7月21日から同月22日にかけて,総雨量が321.0mm,最大時間雨量が64.00mmの降雨を記録し,35戸の床上浸水と604戸の床下浸水が発生した。なお,この降雨の実績が本件排水機場を整備するに当たっての計画降雨とされた。 また,平成20年以降も,たびたび降雨による家屋の浸水被害が発生して おり,同年6月20日には,総雨 浸水が発生した。なお,この降雨の実績が本件排水機場を整備するに当たっての計画降雨とされた。 また,平成20年以降も,たびたび降雨による家屋の浸水被害が発生して おり,同年6月20日には,総雨量が130.5mm,最大時間雨量が52. 5mmの降雨により8戸の床上浸水と189戸の床下浸水が発生し,平成21年6月16日には,総雨量が87.5mm,最大時間雨量が77mmの降雨により27戸の床上浸水と256戸の床下浸水が発生し,平成23年7月28日には,総雨量が118.5mm,最大時間雨量が94mmの降雨によ り7戸の床上浸水と41戸の床下浸水が発生した。 (乙27,32,43,71)イ本件スクリーンは,平成5年頃に設置されたものであるが,本件溢水が発生するまで,本件スクリーンの閉塞や本件暗渠入口部からの溢水が発生したことはなかった(乙73,証人G〔34頁〕)。 本件浸水時の状況ア本件豪雨は,平成24年8月13日から始まっていたが,同月14日の未明から降雨が激しさを増し,同日午前3時から最大時間雨量を記録する激しい降雨となった。 この頃,本件暗渠入口部において本件溢水が発生し,これによって本件排 水機場流域内に流入した濁水は,地形に沿って本件旅館及び本件排水機場付近に流入し,同日午前4時頃から本件浸水が始まった。 その後,同日午前5時頃にかけて本件旅館の地下にも濁水が流入し,本件旅館の1階及び地階が床上浸水した。 (甲1~3,11~13,122,142,乙7,13〔4 8頁〕,原告B本人〔2,3頁〕) イ被告は,平成24年8月14日午前5時30分頃,被告の職員から,本件旅館周辺の道路が冠水しており,本件排水機場のポンプを動かしてほしいとの要請がされたことを受け,被告の ,3頁〕) イ被告は,平成24年8月14日午前5時30分頃,被告の職員から,本件旅館周辺の道路が冠水しており,本件排水機場のポンプを動かしてほしいとの要請がされたことを受け,被告の別の職員を本件調査班として本件排水機場付近に派遣した。 本件調査班として派遣されたMは,同日午前6時20分頃,本件排水機及 び本件旅館周辺が濁水により冠水している状況を確認するとともに,本件排水機場の状態を確認したところ,本件排水機場のポンプのうち1号機及び2号機は作動していたが,3号機は,本件貯水槽の水位が起動に必要な水位に達していないため作動しておらず,手動で起動しても空回りして排水しない状態であった。また,本件排水機場スクリーンには土砂や枝葉等が詰まり, 大部分が閉塞した状態となっていた。 そこで,Mは,同日午前6時35分頃,宇治川の水位が高くなかったことから,本件排水機場の電動ゲートを全開とし,自然排水に切り替えたが,なおも冠水が解消されなかったため,バールを使用して手探りで本件呑込口の状況を確認したところ,本件呑込口に異物が詰まっている感触が得られ,そ の詰まりが除去された感触が得られると同時に,地表面に貯留していた濁水が本件集水桝に流入し,同日午前6時45分頃には本件排水機場周辺の冠水が解消された。 (乙11〔写真①,②,④,⑤,⑩〕,19〔写真1~10,18〕,72,証人M〔2~8,27頁〕) ウなお,本件調査班は,本件排水機場周辺の冠水が解消した後も,本件旅館より西側の冠水が解消しなかったことから,道路側溝等のグレーチングの閉塞の有無を確認しながらH橋方面(西方向)に移動したところ,H橋付近の道路集水桝のグレーチングが枝葉等の異物により閉塞している状況を確認し,当該グレーチングを外した。その 路側溝等のグレーチングの閉塞の有無を確認しながらH橋方面(西方向)に移動したところ,H橋付近の道路集水桝のグレーチングが枝葉等の異物により閉塞している状況を確認し,当該グレーチングを外した。その結果,本件旅館の西側においても冠水 が解消し始め,平成24年8月14日午前7時30分頃,本件排水機場流域 の冠水が完全に解消した。 (乙19〔写真11~17〕,72,証人M〔8~11頁〕) 本件豪雨後の状況ア本件河川の水位は,平成24年8月14日午前10時頃には本件スクリーンの下部まで低下し,本件スクリーンの下部から濁水が本件暗渠内に流入し ていたが,本件格子状構造の部分は,その上端に至るまで泥状の土砂や枝葉等が堆積し,目詰まりを起こすようにして閉塞していた。 また,本件スクリーンの上流側には,葉の茂った枝や丸太状の流木等を中心とする流下物が残留しており,その更に上流では,治山えん堤1より下流の護岸工事が行われていない区間において,左岸の山腹が崩壊し,土砂や樹 木が本件河川内に崩落している状況が確認された。 さらに,被告の職員が同月18日に治山えん堤1周辺を確認したところ,治山えん堤1の下流側では左岸の山腹の崩壊により樹木や枝葉が散乱し,治山えん堤1の上流側では濁水と流木ないし枝葉等が貯留している状況が確認された。 (甲27〔資料②,③〕,乙11〔写真③,⑧,⑨〕,39〔写真①~⑦〕,74)イ本件暗渠入口部には,本件豪雨後,流木や枝葉等の流下物が残留していたが,これらの流下物は,平成24年8月15日ないし同月16日頃,四,五人の作業員が,一,二時間程度の作業を行うことによって取り除かれ,2ト ントラックの荷台に積載されて撤去された(原告B本人〔26,27頁〕)。 成24年8月15日ないし同月16日頃,四,五人の作業員が,一,二時間程度の作業を行うことによって取り除かれ,2ト ントラックの荷台に積載されて撤去された(原告B本人〔26,27頁〕)。 ウ本件暗渠については,平成24年9月下旬頃,二日間にわたって内部の清掃作業が実施された。その際,本件暗渠内に複数設置されていた直径2m程度の大型の桝(土砂だまり)に土砂が貯留して満杯になっていたため,その桝の清掃作業が行われたが,本件暗渠の水流を阻害するような異物の存在は 確認されなかった。 (甲134,原告B本人〔22,23,27~29頁〕) 本件豪雨以降に発生した主な豪雨の状況ア宇治市においては,平成25年9月15日から16日にかけて,台風18号に伴う豪雨が発生し,宇治市内に設置された雨量計において,同月15日午前1時10分から同月16日午前8時40分までの総雨量が281.0m m,最大時間雨量が同日午前3時50分から同日午前4時50分までの33. 5mmを記録した(以下,この豪雨を「平成25年豪雨」という。)。なお,平成25年豪雨時には,天ヶ瀬ダムから計画最大放流量を超える放流が行われ,宇治川が計画高水位を超える水位にまで上昇し,宇治市内の各地で浸水被害が発生した。 また,平成30年7月4日から発生した集中豪雨(いわゆる西日本豪雨)では,宇治市役所近傍に設置された雨量計において,同日午後11時50分から同月8日午前4時00分までの総雨量が279.5mm,最大時間雨量が同月5日午後10時20分から同日午後11時20分までの33.0mmを記録した(以下,この豪雨を「平成30年豪雨」という。)。 (乙32,62の1,78)イ平成25年豪雨及び平成30年豪雨の際には 10時20分から同日午後11時20分までの33.0mmを記録した(以下,この豪雨を「平成30年豪雨」という。)。 (乙32,62の1,78)イ平成25年豪雨及び平成30年豪雨の際には,本件追加スクリーンに濁水が押し寄せ,枝葉等が本件追加スクリーンに捕捉されることにより,その上流側の水位が下流側よりも上昇する状況となったが,枝葉等を捕捉した縦縞スクリーンの隙間から濁水が流下することにより,本件追加スクリーンの閉 塞やそこからの溢水は生じなかった(乙62〔写真②〕,75,79〔2-17頁〕,84)。 2 事実認定の補足説明原告らは,前記1,本件呑込口を閉塞していた異物が除去されたことで本件排水機場周辺の冠水が解消された旨の事実につき,本件呑込口が閉塞し ていた事実はなく,その閉塞を除去することで冠水が解消したものではないと主 張する。 そこで検討すると,本件調査班として本件排水機場に派遣され,実際に冠水の原因を調査したMは,自身の体験として,本件呑込口の閉塞を除去することで冠水が解消した旨の陳述(乙72)ないし証言(証人M〔6~8頁〕)をするところ,証拠(乙11,19)によれば,本件旅館及び本件排水機場周辺は,平成24年 8月14日午前6時22分ないし24分時点で広く冠水して濁水が貯留していたこと(乙11〔写真④〕,19〔写真2,6,7〕),同日午前6時40分頃には濁水が本件呑込口に勢いよく流入し,その5分後には冠水が解消したこと(乙11〔写真⑤〕,19〔写真8~10〕)が認められるのであり,これらの冠水の解消に至る経過は,Mの体験に基づく上記陳述ないし証言と整合するものといえる。 他方で,Mの上記陳述ないし証言の信用性に疑問を生じさせるような具体的事情を認めるに足りる証拠は ,これらの冠水の解消に至る経過は,Mの体験に基づく上記陳述ないし証言と整合するものといえる。 他方で,Mの上記陳述ないし証言の信用性に疑問を生じさせるような具体的事情を認めるに足りる証拠はない。 したがって,本件溢水に伴う冠水が発生した当時,本件呑込口は本件溢水によって流下してきた異物によって閉塞していたものと認めるのが相当であり,冠水の解消に至る経緯については,前記のとおりと認めるのが相当である。 3 争点①(本件スクリーンの瑕疵)について 本件溢水の発生原因(本件スクリーン閉塞の原因)本件河川は,山間部を抜けるまでの区間については護岸工事がされていなかったところ(),本件豪雨の直後に,治山えん堤1より下流の左岸で山腹の崩壊が発生し,土砂と樹木が本件河川に崩落するとともに,樹木や枝 葉が散乱している状況が確認されたのであるから(),本件暗渠入口部には,本件豪雨の際,上記の山腹崩壊に伴って流出した土砂,枝葉,流木等が流入したものと認められる。 また,証拠(甲107〔4~8頁〕)によれば,平成29年5月時点において,治山えん堤2及び治山えん堤3の周辺の本件河川の河岸に連なる山腹に土 砂が崩落した痕跡が複数個所にわたって確認されたこと,治山えん堤1の上流 側に貯留していた土砂の高さは,えん堤中央の低くなっている部分(以下「放水路」という。)の上端まで約1.9mの余裕が確認されたことが認められ,かつ,本件豪雨後に治山えん堤1の上流側に貯留した土砂を除去する工事が行われたとは証拠上認められないことからすると,仮に,本件豪雨時に,本件河川の治山えん堤1よりも上流の河岸で土砂崩れが発生していたとしても,治山 えん堤1により,下流への土砂の流出は相当程度抑制されたものと考えるのが られないことからすると,仮に,本件豪雨時に,本件河川の治山えん堤1よりも上流の河岸で土砂崩れが発生していたとしても,治山 えん堤1により,下流への土砂の流出は相当程度抑制されたものと考えるのが自然である。 もっとも,本件豪雨から4日が経過した平成24年8月18日時点でも治山えん堤1の上流側では濁水が貯留している状況が確認されていること(前記1)や, 証拠(乙62の3〔写真①〕)によれば,平成25年豪雨時には治 山えん堤1の放水路から濁水が越流していたことが認められることからすると,平成25年豪雨よりも総雨量及び最大時間雨量が多い本件豪雨時においても,治山えん堤1より上流の河岸等から流出した流木,土砂や枝葉等を含む濁流が,治山えん堤1の放流路を越流して流下していたものと考えるのが自然である。 以上によれば,本件溢水は,治山えん堤1の下流で発生した左岸の山腹崩壊によって流出した土砂,枝葉,流木等の流下物とともに治山えん堤1を越流してきた濁流が本件暗渠入口部に流入し,本件スクリーンの本件格子状構造が土砂や枝葉等の流下物を捕捉して閉塞したことにより発生したものと認められる。 本件スクリーンの構造上の危険性 危険性について検討すると,本件格子状構造は,その外形上,縦縞スクリーンと比較すると,より小さい枝葉や泥等を捕獲する構造であり,これらがスクリーンを閉塞することにより,更に細かい土砂や枝葉等を容易に捕捉し得ること が明らかというべきであり,集中豪雨時に本件暗渠入口部にまで土砂や枝葉等 の異物を含んだ濁流が流下してくると,本件スクリーンの本件格子状構造をした部分が土砂や枝葉等を捕捉し,さらに,そこに流下物が堆積するなどして目詰まりを起こすようにして閉塞するおそれがあることは,想 の異物を含んだ濁流が流下してくると,本件スクリーンの本件格子状構造をした部分が土砂や枝葉等を捕捉し,さらに,そこに流下物が堆積するなどして目詰まりを起こすようにして閉塞するおそれがあることは,想像に難くないものといえる。 しかも,本件河川流域の雨水は,専ら本件河川を通じて宇治川に排水される ことが想定されており,本件暗渠入口部には本件河川流域の雨水が集中することになるのであるから,集中豪雨等の際に本件スクリーンが閉塞して本件暗渠入口部の水流が阻害されれば,本件暗渠入口部に集中した本件河川流域の雨水が行き場を失うことになる。 そうすると,本件スクリーンは,その構造上,土砂や枝葉等を含む濁流が本 件暗渠入口部に流入してきた際に閉塞する危険性があり,かつ,この危険性は,これが一たび現実化すれば,行き場を失った雨水が溢水して周辺地域に浸水等の被害を引き起こすなど,重大な結果を生じさせ得るものであったといえる。 なお,本件豪雨直後である平成24年8月14日午前10時頃の時点で,本件格子状構造をした部分は目詰まりを起こすようにして閉塞していたが,本件 スクリーン下部から本件暗渠内に濁水が流入していたのであるから(ア),本件豪雨の際も本件スクリーン下部は完全には閉塞していなかったものと認められ,これは,被告が主張するように本件スクリーン下部に存在した一定の隙間(乙12〔写真㉜〕)によるものとも考えられる。しかし,そもそも,本件スクリーン下部からどのように濁水が流下していたかは証拠上明らかで はなく,仮に,本件スクリーン下部の隙間が閉塞せずに,そこから濁水が流下していたとしても,集中豪雨等により本件河川の水位が上昇した際に本件スクリーンの本件格子状構造をした部分が目詰まりを起こすようにして閉塞すれば,本件暗渠 ン下部の隙間が閉塞せずに,そこから濁水が流下していたとしても,集中豪雨等により本件河川の水位が上昇した際に本件スクリーンの本件格子状構造をした部分が目詰まりを起こすようにして閉塞すれば,本件暗渠入口部の水流が大幅に阻害されることになるのであり,これによって溢水や周辺地域の浸水等が発生する危険性が高まることは明らかという べきであるから,本件スクリーン下部に隙間が設けられており,本件豪雨時に も当該隙間自体は閉塞しなかったとしても,このような隙間の存在によって本件スクリーンの構造上の危険性が軽減されていたと評価することはできない。 危険発生の予見可能性宇治市においては,昭和61年7月に本件排水機場の設計上の計画雨水量とされた豪雨が発生し,平成20年以降も,本件豪雨が発生するまでに複数回に わたって家屋の浸水被害を伴う豪雨が発生しており,最大時間雨量が本件豪雨を超えるような集中豪雨も発生していたのであるから(前記1,被告は,本件豪雨の発生前においても,本件河川流域において土砂災害を引き起こすような集中豪雨が発生することを容易に想定できたといえる。 また,本件河川には,別紙1のとおり,本件各治山えん堤が設けられており, 治山えん堤1が本件豪雨時に下流への土砂等の流出を相当程度抑制したと考。もっとも,そもそも治山えん堤は,山地の荒廃を未然に防止し災害の防止と軽減を図る目的で設置されるものであり(前記前提事実⑶ア),土砂災害の完全な防止を図るための設備とまではいえないのであるから,本件各治山えん堤が設置されていることを もって,集中豪雨時に発生し得る土砂災害を防止できるものと期待することはできないというべきである。しかも,本件河川は,その流域の大部分が山間部を占めている上,山間部では,治山えん堤 ることを もって,集中豪雨時に発生し得る土砂災害を防止できるものと期待することはできないというべきである。しかも,本件河川は,その流域の大部分が山間部を占めている上,山間部では,治山えん堤1より下流も護岸工事がされていない区間があるのであるからが本件暗渠入口部に直接流入する可能性があることも十分に考えられるとこ ろである。したがって,被告は,本件河川流域において土砂災害を引き起こすような集中豪雨が発生すれば,治山えん堤1より下流も含めた山間部の河岸で土砂崩れが発生し,これによって流出した土砂,枝葉,流木等を含んだ濁流が本件暗渠入口部に流入し得ることを十分に想定できたといえる。 以上に加え,本件スクリーンの構造及び本件河川流域の排水経路といった客 観的・外形的な事情からして,本件スクリーンには土砂や枝葉等を捕捉するこ とによる閉塞の危険性があり,かつ,これが現実化した場合には周辺地域の浸水等の重大な結果が生じ得るであることも併せ考慮すれば,本件豪雨以前には本件スクリーンの閉塞や本件暗渠入口部からの溢水が発生したことはなかったとしても土砂災害を発生させるような集中豪雨が発生することで,本件暗渠入口部に土砂や枝葉等 が流入することにより本件格子状構造をした本件スクリーンが閉塞し,本件暗渠入口部において溢水が発生して周辺地域に浸水等の被害が生じるおそれがあることは,本件河川及び本件スクリーンを管理する被告において,十分に予見可能であったというのが相当である。 講ずべき対策とその容易性 さらに,本件スクリーンに対して講ずべきであった対策について検討すると,原告らは,目幅20cmの縦縞スクリーンに改修すべきであった旨を主張するところ,目幅20cmの縦縞スクリーンの方が本件格子状構造 さらに,本件スクリーンに対して講ずべきであった対策について検討すると,原告らは,目幅20cmの縦縞スクリーンに改修すべきであった旨を主張するところ,目幅20cmの縦縞スクリーンの方が本件格子状構造よりも土砂や枝葉等を捕捉しにくいことは明らかであり,スクリーンの閉塞に起因する本件暗渠入口部からの溢水が生じにくくなることも明らかというべきである。そして, 本件豪雨時に本件スクリーンが目幅20cmの縦縞スクリーンに改修されていれば,本件溢水及び本件浸水の発生を回避することができた可能性が相応にあったといえることは,後記争点③において説示するとおりである。 他方で,本件豪雨後に設置された本件追加スクリーンは目幅20cmであるところ(前記前提事実⑺),本件追加スクリーンによっても,枝葉等が補足され ていること(前記1⑸イ)からすると,本件スクリーンとして目幅20cmの縦縞スクリーンを設置することによっても,本件暗渠に堆積すると取り除くことが困難となる流木等の異物が流入することを防ぐという本件スクリーンの目的(前記前提事実⑶イ)は十分に達成することができるものといえ,本件スクリーンに本件格子状構造を採用すべき必要性はおよそ認め難い。なお,被告 は,原告らが主張する目幅20cmの縦縞スクリーンでは,子供等の進入の危 険があり,安全性が確保されない旨を主張するが,子供等の進入を防止するには,本件暗渠入口部の周囲に進入防止のための柵や進入禁止を警告する看板を設置するなどの対策を講じれば足りるのであるから,子供等の進入の危険があることをもって,本件スクリーンに本件格子状構造を採用することの合理性を基礎付けることはできないし,本件スクリーンを目幅20cmの縦縞スクリー ンに改修することが不合理であるということもできない。 とをもって,本件スクリーンに本件格子状構造を採用することの合理性を基礎付けることはできないし,本件スクリーンを目幅20cmの縦縞スクリー ンに改修することが不合理であるということもできない。 また,被告は,実際に,本件豪雨後の平成25年7月に,本件スクリーンを目幅10cmの縦縞スクリーンに改修するとともに,その上流に目幅20cmの縦縞スクリーンである本件追加スクリーンを設置しているのであるから(前提事実),本件豪雨前においても,本件スクリーンを目幅20cmの縦縞ス クリーンに改修するとの対策を講じることは,十分に実現可能であったというべきであるし,他にこのような対策を講じることが困難であったことを認めるに足りる証拠はない。 小括以上の事情を総合すると,本件スクリーンについては,本件暗渠入口部に土 砂や枝葉等が流入することにより本件スクリーンが閉塞する危険を回避すべく,本件スクリーンを目幅20cmの縦縞スクリーンに改修するなどの対策を講じることが法的に期待されていたものというのが相当であり,本件格子状構造をした本件スクリーンは,本件暗渠入口部に設置すべきスクリーンとして通常有すべき安全性を欠いていたというべきである。したがって,本件スクリー ンには,設置又は管理の瑕疵があったものと認めるのが相当である(以下,この瑕疵を「本件瑕疵」という。)。 そうすると,本件豪雨時に発生した本件スクリーンの閉塞は,本件瑕疵の危険性が現実化したものといえる。そして,本件スクリーンの閉塞によって本件溢水が発生したことは当事者間に争いがないところ,本件呑込口の閉塞が除去 されることで本件排水機場周辺の冠水が解消され,その後,周辺の道路に設置 されているグレーチングを閉塞していた異物等を除去する とは当事者間に争いがないところ,本件呑込口の閉塞が除去 されることで本件排水機場周辺の冠水が解消され,その後,周辺の道路に設置 されているグレーチングを閉塞していた異物等を除去することで本件排水機場流域全体の冠水が解消したという一連の経過(前記,ウ)からすれば,本件浸水は,本件溢水によって本件排水機場流域に濁水が流入するとともに,上記濁水に含まれていた流下物によって本件呑込口等の本件排水機場流域に設置されていた排水設備が閉塞し,本件集水桝への水流が阻害されるなどして, 本件排水機場における排水ができない状態に陥ったことにより発生したものと認めるのが相当であるから,本件溢水が発生した以上は,本件排水機場の運用方法にかかわらず,本件浸水の発生は避けられなかったものといえる。 したがって,本件浸水は本件瑕疵によって発生したものといえ,被告は,回避可能性の不存在ないし不可抗力を理由として免責されない限り,争点②(本 件排水機場の運用方法に関する管理の瑕疵)について判断するまでもなく,本件浸水によって生じた損害について賠償する義務を負うものと認められる。 4 争点③(本件浸水の回避可能性の不存在ないし不可抗力)について被告は,本件スクリーンが原告らの主張するような目幅20cmの縦縞スクリーンであったとしても,本件浸水の発生を回避することはできなかった旨を 主張するので検討すると,本件溢水は,本件スクリーンが土砂や枝葉等の流下物を捕捉して閉塞したことにより発生したものであるが証拠(甲27〔資料②,③〕,乙11〔写真③〕,74)によれば,本件豪雨後に本件暗渠入口部に残留していた流下物には比較的大きな丸太状の流木や葉の茂った木の枝等が含まれていたものの,本件格子状構造には木の葉を含んだ泥状の堆 積物 写真③〕,74)によれば,本件豪雨後に本件暗渠入口部に残留していた流下物には比較的大きな丸太状の流木や葉の茂った木の枝等が含まれていたものの,本件格子状構造には木の葉を含んだ泥状の堆 積物が隙間なく詰まっていたことが認められる。そうすると,本件スクリーンの本件格子状構造の部分が木の葉を含んだ泥状の堆積物を流下させることなく捕捉したことが,本件スクリーンを閉塞させ,本件溢水を発生させた主な要因になったものと考えるのが自然である。 他方,平成25年豪雨及び平成3 0年豪雨は,総雨量及び最大時間雨量がいずれも本件豪雨よりも少なかったこ とが認められるのであるから,本件豪雨の際とは状況を異にするものの,平成25年豪雨及び平成30年豪雨の際には,本件追加スクリーンが枝葉等の流下物を捕捉しつつも,目幅20cmの縦縞スクリーンの隙間から濁水が流下することにより,スクリーンの閉塞や溢水には至っていないのであり(),この状況は,目幅20cmの縦縞スクリーンであれば,枝葉等の流下物を捕捉 した状態でも,細かい土砂等がスクリーンの隙間から流下されていくことを裏付けているものといえる。 そうすると,仮に本件豪雨時に本件スクリーンが目幅20cmの縦縞スクリーンに改修されていれば,本件スクリーンを閉塞させた木の葉を含んだ泥状の堆積物の多くを流下できた可能性が相応にあったというべきである。 そして,本件豪雨後に本件暗渠内の清掃作業が行われた際には,本件暗渠内の土砂だまりに土砂が貯留していたことは確認されたが,本件暗渠の水流自体を阻害するような異物の存在は確認されなかったのであり本件豪雨時に宇治川自体の水位は上昇していなかったことも併せ考慮すれば,本件スクリーンを閉塞させた木の葉を含んだ泥状の堆積物が本件 暗渠 阻害するような異物の存在は確認されなかったのであり本件豪雨時に宇治川自体の水位は上昇していなかったことも併せ考慮すれば,本件スクリーンを閉塞させた木の葉を含んだ泥状の堆積物が本件 暗渠内に流下されていれば,本件河川の水流により宇治川まで排水されたものと考えるのが自然である。 また,被告は,本件暗渠入口部には,本件暗渠そのものを閉塞させるに十分な流木や枝葉等が流入していた旨を主張するので検討すると,本件暗渠入口部治山えん堤 1の下流で発生した左岸の山腹崩壊によって発生した流下物に加え,治山えん堤1を越流してきた濁流が流入したものと考えられるが,治山えん堤1より上流からの流下物については,治山えん堤1によって下流への流出が相当程度抑制されたものと考えられる。 これに加え,証拠(甲27〔資料③〕,乙12〔写真㉜〕,39〔写真①,②, ⑦〕,61〔写真①〕,74)によれば,本件暗渠入口部は,本件河川の法面及 び本件スクリーンの上部の地表面に,溢水しやすい部分を取り囲むようにして高さ1m程度の柵が設置されていたこと,上記柵の目幅は10cm程度であったこと,上記柵は,本件豪雨後も倒壊したり大きく破損したりはしていなかったこと,本件暗渠入口部に残留したもののうち,折れた長い枝や流木は一部にとどまり,大部分が小さな枝葉等であったことが認められるのであり,本件溢 水の際,比較的大きな流下物は上記柵により流出を阻まれ,本件溢水後も本件暗渠入口部に残留したものと考えられるところ,このように比較的大きな流下物が本件暗渠入口部に残留した状態でも,本件河川の水位が低下すれば,本件スクリーン下部から本件暗渠内への水流が維持されており(前記1ア),上記の流下物を除去する際も,作業時間は一,二時間程度であり,その量も2ト 部に残留した状態でも,本件河川の水位が低下すれば,本件スクリーン下部から本件暗渠内への水流が維持されており(前記1ア),上記の流下物を除去する際も,作業時間は一,二時間程度であり,その量も2ト ントラック1台に収まる程度であった(前記)というのであり,このような本件豪雨後の状況も併せ考慮すれば,本件暗渠自体を閉塞させるような大量の流下物が本件暗渠入口部にまで到達していたとは考えにくいというべきである。 したがって,本件暗渠そのものを閉塞させるに十分な流木や枝葉等が流入し ていた旨の被告の主張は採用できない。 さらに,被告は,本件豪雨では,宇治市内の複数の中小河川において,流木等が橋脚に引っ掛かって集積することにより氾濫や溢水が同時多発的に発生したことを根拠に,スクリーンに流木等が堆積すれば,その目幅は溢水の発生に影響するものではない旨を主張し,これに沿う証拠(乙50)を提出する。 しかし,河川の橋梁部のような比較的川幅が大きく水量の多い箇所では,橋脚に流木等が引っ掛かることを契機として河川全体の流れが阻害され,溢水にまで至ることがあり得るとしても,平成25年豪雨及び平成30年豪雨の際には,本件追加スクリーンに枝葉等の流下物が捕捉されながらも,縦縞スクリーンの隙間から濁水が流下することで溢水には至っていないこと() を考慮すると,被告が主張する橋梁部での溢水の発生機序が直ちに本件河川に 妥当するとは考えにくい。 したがって,この点の被告の主張は採用できない。 また,証拠(乙79~82)によれば,被告が提出する河川計画や河川構造物等に関する建設コンサルタント業者が作成した報告書(以下「被告報告書」という。)には,本件豪雨及び平成25年豪雨における本件河川の流量をそれ ぞ 2)によれば,被告が提出する河川計画や河川構造物等に関する建設コンサルタント業者が作成した報告書(以下「被告報告書」という。)には,本件豪雨及び平成25年豪雨における本件河川の流量をそれ ぞれ算定した上で,平成25年豪雨において,本件追加スクリーンに堆積した枝葉や草木等を濁水が越流していると想定し,本件追加スクリーンの上流側でスクリーンの上端から25cmの位置まで水位が上昇することにより本件追加スクリーンの上流側の水深が90cmに達していたことを前提に再現計算を行うと,本件追加スクリーンが枝葉等を捕捉することにより,約62cmの 仮想堰が形成されたのと同等と評価されるとした上で(なお,被告報告書においては,仮想堰が水を通さないことを前提に計算されているものと解される(乙79〔2-19頁〕)。),このような仮想堰が本件豪雨時に本件スクリーンにおいて形成されたとすると,本件豪雨時の流量に照らし,溢水の発生は回避できない旨の意見が述べられていることが認められる。 しかしながら,平成25年豪雨時の本件追加スクリーンの状況について見ると,証拠(乙62の3〔写真②〕,75〔写真③〕,79〔2-17頁〕,84)及び弁論の全趣旨によれば,平成25年9月16日午前5時34分頃,同日午前6時9分頃及び午前6時30分頃には,本件追加スクリーンの上流側に濁水が押し寄せており,その間も本件追加スクリーンに堆積した枝葉等の隙間から 濁水が勢いよく流下し続けることで本件追加スクリーンの閉塞及びそこからの溢水には至らなかったことが認められる。そうすると,平成25年豪雨の際に,本件追加スクリーンに堆積した枝葉等により,濁流は越流しておらず,水を通さない堰は形成されていなかったということができ,平成25年豪雨の際に約62cmの水を通さない仮想 ると,平成25年豪雨の際に,本件追加スクリーンに堆積した枝葉等により,濁流は越流しておらず,水を通さない堰は形成されていなかったということができ,平成25年豪雨の際に約62cmの水を通さない仮想堰が形成されることを前提とする被告報告 書は,そもそも,その前提が平成25年豪雨時の状況とは異なる以上,本件溢 水についても,実際の発生機序を反映したものといえるのかは疑問があり,被告報告書の上記意見を直ちに採用することはできない(なお,原告らが提出する河川工学及び河川計画に関する専門家が作成した意見書(甲162)には,仮に本件暗渠入口部の護岸部分まで水位が上昇すれば,水深が大きくなることで水圧が大きくなり,枝葉の間からの流出量は増加するのであるから,被告報 告書が提示する仮想堰の仮定は一般的には成り立たない旨の指摘がされているところである。)。 以上によれば,本件豪雨自体が,宇治市内の東宇治地域の複数の中小河川で氾濫や溢水を同時多発的に発生させ,多くの地域に浸水被害を発生させた自然災害であったことは被告主張のとおりではあるが,本件スクリーンを目幅20 cmの縦縞スクリーンに改修する対策が講じられていれば,本件スクリーンの完全な閉塞や本件暗渠入口部からの大規模な溢水を免れることにより,本件溢水及び本件浸水の発生を回避することができた可能性が相応にあったというのが相当である。 したがって,本件浸水の回避可能性が不存在であった,あるいは,本件浸水 が不可抗力によるものであるということはできない。 5 争点④(損害の有無及び額)について争点①及び③について説示したところによると,被告は,本件浸水によって生じた損害を賠償する義務を負うものと認められ,かつ,回避可能性の不存在ないし不可抗力を理由に免責される の有無及び額)について争点①及び③について説示したところによると,被告は,本件浸水によって生じた損害を賠償する義務を負うものと認められ,かつ,回避可能性の不存在ないし不可抗力を理由に免責されることもないこととなる。 そこで,以下,本件浸水によって原告らに生じた損害,すなわち本件瑕疵と相当因果関係のある損害の有無及び額について検討する。 認定事実前記前提事実,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件浸水によって生じた損害に関連して,以下の事実が認められる。 ア本件浸水の内容 本件浸水により1階及び地階が,泥水により床上浸水し,1階については,地盤面から45ないし47cm程度,場所によっては54cmの高さまで浸水し,地階については,上階からの落水及び階段を通じての流入によって床面から45cm程度の高さまで浸水した。 本件旅館の1階にはエントランスや客室のほか大浴場が設けられており, 地階には厨房,機械室,従業員の部屋等が設けられていたが,本件浸水によって,床面及び壁面が汚損したほか,濾過機等の機械類が損傷した。 また,本件旅館の庭園部分も泥にまみれ,植栽の植替えが必要となった。 (甲1~3,11~13,122,142,原告B本人〔2,3,23,24頁〕) イ本件浸水後の本件旅館の稼働状況本件旅館は,本件浸水の日である平成24年8月14日から休業を余儀なくされ,同年8月及び9月は完全休業の状態が続き,同年10月5日には93人の利用客を17室の客室で受け入れることにより72万7500円の売上が発生したが,その後,同月20日までは利用客がない状態が続いた。 もっとも,本件旅館では,同月21日から断続的に利用客を受け入れるようになり,本件旅館の売上は,同年1 2万7500円の売上が発生したが,その後,同月20日までは利用客がない状態が続いた。 もっとも,本件旅館では,同月21日から断続的に利用客を受け入れるようになり,本件旅館の売上は,同年10月が合計246万0933円(10月5日の売上を含む。),同年11月が663万5135円となった。また,同年12月は利用客を受け入れたのは6日であったが,おせち料理の販売により,売上が合計1407万2792円となった。 なお,本件旅館は,同年12月30日に改修工事が完了し,リニューアルオープン(以下「本件営業再開」という。)をした。 (甲122,128,143~146,152,原告B本人〔8,9頁〕)ウ原告会社の売上総利益及び営業利益の推移原告会社における平成19年度(原告会社の会計年度である当年1月から 12月までをいう。以下同じ。)から平成26年度までの各年度における売 上総利益と営業利益は,以下のとおりであった(なお,以下において「-」の表記は赤字を意味する。)。 平成19年度売上総利益 1億0656万9836円営業利益 -908万3432円平成20年度売上総利益 1億0903万4257円 営業利益 -1444万5536円平成21年度売上総利益 1億0547万9415円営業利益 -1975万2745円平成22年度売上総利益 1億2754万3864円営業利益 445万2344円 平成23年度売上総利益 1億0222万6644円営業利益 -452万9289円 営業利益 445万2344円 平成23年度売上総利益 1億0222万6644円営業利益 -452万9289円平成24年度売上総利益 7104万6213円営業利益 -1617万8680円平成25年度売上総利益 8142万9885円 営業利益 -108万2338円平成26年度売上総利益 9206万9731円営業利益 -411万5725円(甲56~63,123~130,147~154)修繕費等について ア庭園修繕等 101万6400円本件浸水によって本件旅館の庭園は泥にまみれ,植栽の植替えが必要になるなどしたのであるから,旅館の庭園という性質上,本件浸水による汚損ないし損傷からの復旧のため相応の修繕が必要になったものと認めるのが相当である。 そして,証拠(甲40,41,68)によれば,原告会社は,平成24年 12月22日,本件旅館の庭園の修繕工事のために合計101万6400円(消費税込み)を支払ったことが認められるから,これを本件瑕疵と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である(なお,被告は,上記修繕工事の内容及び価格の相当性について具体的な反論をしていない。)。 イ消火設備等の修復 22万3650円 ア),その際に本件旅館に設置されていた消火設備等も損傷したものと認めるのが相当である。 そして,原告会社は,消火設備等の修復に係る損害額が40万2150円であると主張するところ,証拠(42,43)によれば,原告会社は に設置されていた消火設備等も損傷したものと認めるのが相当である。 そして,原告会社は,消火設備等の修復に係る損害額が40万2150円であると主張するところ,証拠(42,43)によれば,原告会社は,平成 24年9月頃,消火栓設備の各種部品の取替えのため22万3650円(消費税込み)を要したことが認められるから,これを本件瑕疵と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。 他方,証拠(甲44,45)によれば,原告会社が主張する上記損害額のうち17万8500円については,本件豪雨前である平成24年7月分の点 検費用であることがうかがわれ,他にこれが本件浸水に関連する費用であったことを認めるに足りる証拠はないから,これを本件瑕疵と相当因果関係のある損害と認めることはできない。 ウ内装等のデザイン料 0円証拠(甲46,96,原告B本人〔24頁〕)によれば,原告会社は,平成 24年11月頃,建築設計事務所に対し,本件旅館の1階の玄関,ロビー,客室及び廊下等のデザイン料として315万円を支払ったことが認められるが,本件浸水による損傷ないし汚損等からの復旧には,清掃及び損傷ないし汚損部分の修繕を要し,かつ,それで足りるのが通常なのであって,本件旅館1階のデザインを変更する必要が生じたとは,にわかには認め難いとい うべきである。 なお,原告Bは,本件浸水によって汚損ないし損傷した箇所は使用できなくなったため,抜本的な改装が必要と判断した旨の供述(原告B本人〔24頁〕)をするが,原告Bの上記供述を踏まえても,本件浸水を契機として,原告会社ないし原告Bの経営判断として,本件浸水による損傷ないし汚損等からの復旧を超えて全面的な改装を行うこととした可能性は否定できないし, 他に,本件浸水によ まえても,本件浸水を契機として,原告会社ないし原告Bの経営判断として,本件浸水による損傷ないし汚損等からの復旧を超えて全面的な改装を行うこととした可能性は否定できないし, 他に,本件浸水による損傷ないし汚損等につき,清掃や修繕では復旧できない合理的な理由を認めるに足りる的確な証拠はない。 したがって,上記内装等のデザイン料に係る費用を本件瑕疵と相当因果関係のある損害と認めることはできない。 エ濾過機周りの改修 152万2500円 本件浸水は本件旅館の1階及び地階の床上浸水を伴うものであり,濾過機等の機械類が損傷したのであるから,その際に本件旅館に設置されていた濾過機及びその周辺にも損傷等が生じたものと認めるのが相当である。 そして,原告会社は,濾過機周りの改修に係る損害額が167万3700 円であると主張するところ,証拠(甲47)によれば,原告会社は,平成24年9月4日頃に行われた濾過機周りの改修費用として152万2500円(消費税込み)を要したことが認められるから,これを本件瑕疵と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である(なお,被告は,濾過機周りの改修の必要性及びその額について具体的な反論をしていない。)。 他方,証拠(甲48)によれば,原告会社が主張する濾過機周りの改修に係る損害のうち15万1200円は,同年12月14日及び16日に行われた制御盤漏電,ボイラー漏電及び給湯配管漏れの調査ないし修理に要した費用であることが認められるところ,上記調査ないし修理の具体的内容は必ずしも明らかではないし,本件旅館では同年10月21日から断続的に利用客 を受け入れるようになっていたのであり(前記イ),その2か月近くも後 (濾過機周りの改修からは3か月以上も後)になって, ではないし,本件旅館では同年10月21日から断続的に利用客 を受け入れるようになっていたのであり(前記イ),その2か月近くも後 (濾過機周りの改修からは3か月以上も後)になって,上記調査ないし修理が必要となった理由ないし経緯も明らかではないのであるから,これらの費用を本件瑕疵と相当因果関係のある損害と認めることはできない。 オ油水処分等 59万4825円証拠(甲49)によれば,原告会社は,平成24年9月1日頃に行われた 油水処分の費用として4万2500円(消費税別)を支払うとともに,同月7日頃に行われたサービスタンク通気管工事及び送油ポンプ更新工事の費用として49万7000円(消費税別),同月13日頃に購入した重油の代金として9万円(消費税別)を支払ったことが認められる。 そして,証拠(甲49,122,原告B本人〔6,19頁〕)によれば,本 件浸水の影響により本件旅館の地下室のサブタンクから重油が噴き出ていたことが認められ,これにより油水の処分及びサブタンクの修理が必要になったものといえるから,油水処分の費用及びサブタンクの修理費用であることが明確な53万9500円(消費税込みの金額は56万6475円)については,本件瑕疵と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である(なお, 被告は,サブタンクの修理の必要性について具体的な反論をしていない。)。 他方,重油の代金は,1000リットルの購入がされているところ(甲49),原告Bは,300リットル程度のサブタンクから重油が流出した旨供述していること(原告B本人〔19頁〕)からすると,300リットルを超える重油の購入は,本件浸水とは無関係に購入された重油の代金である可能性 が否定できず,本件浸水との関連性は不明といわざるを得ない。したがっ 原告B本人〔19頁〕)からすると,300リットルを超える重油の購入は,本件浸水とは無関係に購入された重油の代金である可能性 が否定できず,本件浸水との関連性は不明といわざるを得ない。したがって,重油の代金については,300リットルに相当する代金(2万7000円(消費税込みの金額は2万8350円))の範囲で本件瑕疵と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。 カ畳の取替え 75万4215円 ア),その際に本件旅館の浸水箇所で使用されていた畳にも汚損が生じたものと認めるのが相当である。 そして,浸水によって畳が汚損した場合には,取替えによって修復せざるを得ないというべきところ,証拠(甲50)によれば,原告会社は,本件旅館の畳の取替えのために75万4215円(消費税込み)の費用を要したこ とが認められるから,これを本件瑕疵と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である(なお,被告は,畳の取替えの単価や枚数の合理性について具体的な反論をしていない。)。 キ浄化槽清掃等 0円原告会社は,浄化槽清掃等に係る損害額が26万4200円であると主張 するが,証拠(甲51)によれば,原告会社が主張する上記26万4200円のうち6万8000円は,原告会社と水道工事業者との間での維持管理契約に基づく支出であることがうかがわれ,浄化槽清掃費とされる19万6200円についても,これが行われた日は,本件浸水より1か月以上後である平成24年9月27日であり,原告会社が本件浸水とは無関係に,定期的に 負担していた費用である可能性が否定できない。 したがって,上記浄化槽清掃等の費用を本件瑕疵と相当因果関係のある損害と認めることはできず,他に,原告会社が本件浸水によって浄化槽に関する損害 負担していた費用である可能性が否定できない。 したがって,上記浄化槽清掃等の費用を本件瑕疵と相当因果関係のある損害と認めることはできず,他に,原告会社が本件浸水によって浄化槽に関する損害を被ったことを認めるに足りる証拠はない。 ク LAN工事一式 0円 原告会社は,LAN工事一式に係る損害額が13万4000円であると主張するが,原告会社が上記主張の根拠として提出する証拠(甲52,53)によれば,原告会社が平成24年12月ないし平成25年1月頃にLAN工事一式として上記費用を支出したことがうかがわれるものの,その具体的内容は明らかではなく,本件浸水と上記LAN工事との関連性を認めるに足り る的確な証拠はないのであり,本件旅館の改装に際し,本件浸水とは無関係 にLAN工事が行われた可能性も否定できない。 したがって,上記LAN工事の費用を本件瑕疵と相当因果関係のある損害と認めることはできない。 ケエントランス改装工事 0円原告会社は,エントランス改装工事に係る損害額が3202万5000円 であると主張するが,原告会社が上記主張の根拠として提出する証拠(甲89)によれば,原告会社の主張するエントランス改装工事は,本件浸水による損傷ないし汚損等からの復旧に必要な範囲を超えて,本件旅館のエントランス全体を改装するための工事であることがうかがわれるのであり,他に,本件浸水による損傷ないし汚損等からの復旧のために上記改装工事が必要 となったことを認めるに足りる的確な証拠はない。 したがって,上記改装工事の費用を本件瑕疵と相当因果関係のある損害と認めることはできない(なお,本件浸水は本件旅館の1階の床上浸水を伴う本件旅館のエントランスにも一定の損傷ないし汚損等が生じたものと認めるのが相当 改装工事の費用を本件瑕疵と相当因果関係のある損害と認めることはできない(なお,本件浸水は本件旅館の1階の床上浸水を伴う本件旅館のエントランスにも一定の損傷ないし汚損等が生じたものと認めるのが相当であるが,1階廊下改装工事 (後記コ)及び1階及び地階修理(後記シ)を超えて,エントランスに関する損害を認めるに足りる証拠はない。)。 コ 1階廊下改装工事 79万6005円の際に本件旅館1階廊下の床及び壁面に損傷ないし汚損等が生じたものと 認めるのが相当である。他方,原告Bは,雨水が本件旅館1階の天井まで浸潤した旨の陳述(甲122)ないし供述(原告B本人〔17頁〕)をするが,床上浸水において天井にまで損傷ないし汚損等が生じるとは考えにくいし,本件浸水によって本件旅館1階の天井に損傷ないし汚損等が生じたことを裏付ける的確な証拠はない。 そして,原告会社は,本件旅館の1階廊下改装工事に係る損害額が157 万5000円であると主張するので検討すると,証拠(甲90,93)及び弁論の全趣旨によれば,原告会社の主張する1階廊下改装工事には,床カーペット及び壁面クロスの張替工事のほか,天井改修工事,雑工事及び電気設備工事の費用等が含まれていること,これらの工事のうち床カーペットの張替工事に54万8500円,壁面クロスの張替工事に20万9600円の費 用を要することが認められるところ,上記工事のうち床カーペット及び壁面クロスの張替工事の費用合計75万8100円(消費税込みの金額は79万6005円)については,本件浸水による床及び壁面に生じた損傷ないし汚損等からの復旧に必要な費用といえるから,本件瑕疵と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である(なお,被告は,上記各張替費用の価格の合理 性について具体的な反 床及び壁面に生じた損傷ないし汚損等からの復旧に必要な費用といえるから,本件瑕疵と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である(なお,被告は,上記各張替費用の価格の合理 性について具体的な反論をしていない。)。 他方,上記の天井改修工事,雑工事及び電気設備工事については,本件浸水による損傷ないし汚損等からの復旧に必要な工事であったか否かが判然としないものといわざるを得ないから,これらに要する費用を本件瑕疵と相当因果関係のある損害と認めることはできない。 サ 1階喫煙コーナー追加工事 0円原告会社は,本件旅館の1階喫煙コーナーの追加工事に係る損害額が100万円であると主張するが,原告会社が上記主張の根拠として提出する証拠(甲91)によれば,原告会社の主張する追加工事は,既存の天井,壁及び床を解体した上で,新たな喫煙コーナーを構築することを目的とする工事で あることがうかがわれるのであり,他に本件浸水による損傷ないし汚損等からの復旧のために上記追加工事が必要となったことを認めるに足りる的確な証拠はない。 したがって,原告会社の主張する上記費用を本件瑕疵と相当因果関係のある損害と認めることはできない(なお,本件浸水は本件旅館の1階の床上浸 仮に,1階に既存の喫煙コーナーがあった 場合には,一定の汚損等が生じた可能性は否定できないが,前記コ(1階廊下改装工事)及び後記シ(1階及び地階修理)のほかに,本件旅館の1階喫煙コーナーに関する損害を認めるに足りる証拠はない。)。 シ 1階及び地階修理 100万円 ア),これによって1階及び地階について復旧作業が必要になったことは明らかというべきである(なお,地階の天井部分については,被告は具体的な反論をしていないところ,1階が浸水していることからす ア),これによって1階及び地階について復旧作業が必要になったことは明らかというべきである(なお,地階の天井部分については,被告は具体的な反論をしていないところ,1階が浸水していることからすると,地階については,天井部分を含め復旧作業が必要と認められる。)。 そして,証拠(甲92)によれば,本件浸水に対する本件旅館1階及び地 階の復旧作業に要する費用が100万円(消費税込み)であることが認められるから,これを本件瑕疵と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である(なお,被告は,上記費用の合理性について具体的な反論をしていない。)。 ス地階改修工事 0円原告会社は,本件旅館の地階改修工事に係る損害額が150万円であると 主張するが,原告会社が上記主張の根拠として提出する証拠(甲137)によっても,原告会社の主張する上記地階改修工事の内容は不明というほかないし,本件浸水による損傷ないし汚損等からの復旧のため,前記シにおいて認定した1階及び地階修理のほかに150万円もの費用を要する地階改修工事が必要となったことを認めるに足りる証拠もないから,これを本件瑕疵 と相当因果関係のある損害と認めることはできない。 セエントランス周り電気工事 0円原告会社は,本件旅館のエントランス周りの電気工事に係る損害額が108万2949円である旨を主張する。 しかし,原告会社が上記主張の根拠として提出する証拠(甲94)によれ ば,原告会社が主張する上記電気工事は,本件営業再開後である平成25年 2月12日に見積書が作成されたBGM設備に関する工事,防災照明器具及び自動火災報知機に関する工事であることが認められるところ,仮に本件浸水によって上記各工事が必要となったのであれば,本件営業再開後になって見積書が が作成されたBGM設備に関する工事,防災照明器具及び自動火災報知機に関する工事であることが認められるところ,仮に本件浸水によって上記各工事が必要となったのであれば,本件営業再開後になって見積書が作成されるのは不自然であり,上記各工事は,本件浸水とは無関係に行われたエントランスの改装工事(前記ケ)の一環として追加的に見積も られた工事である可能性も否定できないというべきであるし,他に,本件浸水による損傷ないし汚損等からの復旧のために上記各工事が必要となったことを裏付ける的確な証拠はない。 そうすると,本件浸水は本件旅館の1階の床上浸水を伴うものであり(前損傷ないし汚損等が 生じたものと認められることを考慮しても,原告会社が主張する上記エントランス周り電気工事の費用を本件瑕疵と相当因果関係のある損害と認めることはできない。 ソ 101号室及び102号室改修工事 493万5980円そ の際に本件旅館の101号室及び102号室が浸水被害を受けたものと認めるのが相当である(なお,被告は,上記各客室が浸水被害を受けたことにつき,具体的な反論をしていない。)。 そして,旅館の客室が浸水被害を受けた場合,その性質上,全面的な修繕が必要になるのが通常というべきところ,証拠(甲64)によれば,上記各 客室の修繕工事に要する費用が493万5980円であることが認められる(なお,被告は,上記費用の合理性について具体的な反論をしておらず,上記費用が上記各客室の改修工事として相当性を欠くことを認めるに足りる証拠もない。)。 したがって,上記各客室の改修工事に係る費用として上記493万598 0円(消費税別)を本件瑕疵と相当因果関係のある損害と認めるのが相当で ある(なお,原告会社は,上記改修工事に係る損害につ て,上記各客室の改修工事に係る費用として上記493万598 0円(消費税別)を本件瑕疵と相当因果関係のある損害と認めるのが相当で ある(なお,原告会社は,上記改修工事に係る損害については消費税別の金額を主張しているものと解されることから,その限度で損害と認める。)。 タ 105号室入口周り及び同室改修工事 246万7990円原告会社は,本件旅館の105号室の入口周りの改修工事に係る損害が178万5000円,同室の改修工事に係る損害が823万4810円である と主張する。 これに対し,被告は,105号室が浸水したか否かは不明である旨を主張するが,ア),本件浸水により本件旅館1階の105号室が浸水被害を受けた旨の原告Bの供述(原告B本人〔4頁〕)は,本件浸水の内容と整合する自然なもの といえるから,本件浸水の際に105号室も浸水したものと認めるのが相当である。 もっとも,原告会社が上記主張の根拠として提出する証拠(甲65,66)によれば,105号室に関する改修工事としては,既存の内装を解体した上で,室内の改修のみならず,その入口周りの改修工事も併せて行うことが想 定され,その費用は合計すると1001万9810円に上ることが認められるのであるから,原告会社の主張する105号室に関する改修工事は,本件浸水による損傷ないし汚損等からの復旧に必要な範囲を超えて,客室を全面的に新調することが想定されているものと考えるのが自然である。 そうすると,原告会社が主張する105号室に関する損害額を直ちに採用 することはできないというべきであり,本件浸水と相当因果関係のある105号室に関する損害額としては,101号室及び102号室改修工事の1室当たりの金額である246万7990円(=493万5980円÷2)の とはできないというべきであり,本件浸水と相当因果関係のある105号室に関する損害額としては,101号室及び102号室改修工事の1室当たりの金額である246万7990円(=493万5980円÷2)の限度で認めるのが相当である。 チ地階休憩室改修工事 0円 原告会社は,本件旅館の地階休憩室の改修工事に係る損害が571万01 00円であると主張する。 しかし,原告会社が上記主張の根拠として提出する証拠(甲67)によれば,原告会社が主張する上記改修工事は,本件営業再開から2年近くが経過した平成26年11月13日に作成された見積書に基づくものであることが認められるのであり,本件浸水による損傷ないし汚損等からの復旧のため に上記改修工事が必要になったというには,見積書の作成時期が不自然というほかないし,原告会社は,上記改修工事に関する見積書が本件営業再開から2年近くが経過してから作成されたことにつき,合理的な理由を主張立証していない。 したがって,上記改修工事に要した費用を本件瑕疵と相当因果関係のある 損害と認めることはできず,他に地階休憩室に関する損害を認めるに足りる証拠はない。 ツ温蔵庫のリース契約 0円原告会社は,本件浸水により支払総額90万円の温蔵庫のリース契約の締結を余儀なくされた旨を主張するところ,本件旅館の厨房は,本件浸水の際 に泥水でア),本件旅館に設置されていた温蔵庫も本件浸水により損傷したものと認めるのが相当である。 しかし,原告会社が上記主張の根拠として提出する証拠(甲54,55)によれば,原告会社は,本件営業再開から約1年10か月が経過した平成26年9月ないし10月に温蔵庫に関するリース契約を締結したことが認め られるのであり,契約締結時期からして,上 54,55)によれば,原告会社は,本件営業再開から約1年10か月が経過した平成26年9月ないし10月に温蔵庫に関するリース契約を締結したことが認め られるのであり,契約締結時期からして,上記リース契約と本件浸水との関連性は不明というほかないし,原告会社は,本件営業再開から約1年10か月も経過してから上記リース契約を締結した点につき,合理的理由を具体的に主張立証していない。 また,本件浸水によって本件旅館の温蔵庫が損傷したとしても,当該温蔵 庫が原告会社の所有物ではないなどの事情により,原告会社に財産的損害が 生じなかった可能性もあながち否定できない。 したがって,上記リース契約の費用を本件瑕疵と相当因果関係のある損害と認めることはできないというべきであり,他に温蔵庫に関する損害を認めるに足りる証拠はない。 テ小括 以上によれば,本件瑕疵と相当因果関係のある修繕費等の損害は,合計1331万1565円と認められる。 なお,被告は,本件旅館は建築後47年が経過しており,残存価値は相当程度低下していたと考えられるところ,修繕によって新品になった部分は損害額の算定において考慮すべきである旨を主張するが,本件浸水によって本 件旅館に損傷ないし汚損等が生じた以上,その復旧のために必要かつ相当な修繕費等は本件瑕疵によって通常生ずべき損害というべきであるし,前記アないしテにおいて認定した修繕費等に係る損害の合計額が,本件旅館の時価額を上回ると認めるに足りる証拠もないのであるから,本件旅館の残存価値が低下していることを根拠に,前記アないしテにおいて認定した修繕費等を 更に減額する必要はないというべきである。 また,被告は,原告会社が消費税の課税事業者であることを根拠に,原告会社に修繕費等に いることを根拠に,前記アないしテにおいて認定した修繕費等を 更に減額する必要はないというべきである。 また,被告は,原告会社が消費税の課税事業者であることを根拠に,原告会社に修繕費等に対する消費税相当額の損害が生じていない旨を主張するが,単に課税事業者であることのみをもって当然に消費税相当額の負担を免れるものとはいえないのであり,修繕等のために消費税相当額の支出を余儀 なくされた以上は,消費税相当額の損害の発生を否定することはできないというべきであるから,上記被告の主張は採用できない。 休業損害及び逸失利益についてア算定方法の検討本件旅館が平成24年8月14日に本件浸水による被害を受けて以降, 原告会社の売上総利益は減少しており,少なくとも平成19年度から平成 23年度までは1億円を超えていた原告会社の売上総利益は,本件浸水が発生した平成24年度が約7105万円となり,本件営業再開後である平成25年度及び平成26年度も1億円を下回っていたのであるから(前記,原告会社では,本件浸水から平成26年度に至るまで,本件浸水前より売上総利益の減少傾向が続いていたことがうかがわれる。 しかし,証拠(甲103~106,乙23~25,85~87)及び弁論の全趣旨によれば,宇治市への観光客数(観光入込客数)は,平成20年が556万2851人,平成21年が500万8975人,平成22年が511万0783人,平成23年が486万4099人,平成24年が472万2651人,平成25年が394万7844人,平成26年が5 20万1764人であったこと,宇治市の主要な観光資源である平等院鳳凰堂では,平成24年6月から平成26年4月にかけて修理事業のため観光客の内部拝観を停止していたこと,京都府商 成26年が5 20万1764人であったこと,宇治市の主要な観光資源である平等院鳳凰堂では,平成24年6月から平成26年4月にかけて修理事業のため観光客の内部拝観を停止していたこと,京都府商工労働観光部作成の京都府観光入込客調査報告書(甲104~106)では,平成24年の宇治市の観光客の減少要因として本件豪雨の影響が指摘されていたが,平成25年 の観光客の減少要因としては宇治市の主要観光地及び宇治川の改修工事や台風災害の影響が指摘され,平成26年の観光客の増加要因としては,主要観光地の改修完了のほか,木津川運動公園の新規開園や天候に恵まれたことによる屋外観光地の集客の伸びが指摘されていたことが認められる。 そうすると,本件営業再開後である平成25年度以降の原告会社の売上総利益の減少は,宇治市への観光客数自体が減少したことの影響を受けた可能性や,宇治市内での屋外観光地の集客の伸びが本件旅館の売上に結びつかなかった可能性など,様々な可能性が想定できるのであり,平成25年度以降の原告会社の売上総利益の減少をもって,直ちに本件営業再開後 も本件浸水の影響によって原告会社に減収が生じていたと認めることは できない。 また,原告会社の平成19年度以降の営業利益について見ると,平成22年度を除いて全て赤字となっており,平成20年度及び平成21年度の赤字額は1000万円を優に超えていたのに対し,平成25年度の赤字額は108万2338円,平成26年度の赤字額は411万5725円にと どまっている。 このような平成25年度以降の営業利益の推移からすると,本件営業再開後である平成25年度以降は,原告会社の赤字がやや改善傾向にあったといえなくもないのであるから,本件営業再開後も本件浸水の影響によって ような平成25年度以降の営業利益の推移からすると,本件営業再開後である平成25年度以降は,原告会社の赤字がやや改善傾向にあったといえなくもないのであるから,本件営業再開後も本件浸水の影響によって原告会社に減収が生じていたとは,直ちには認め難い。 なお,原告Bは,本件浸水により,休業による客離れや風評被害の影響によって,原告会社の営業努力にもかかわらず,本件旅館の売上が本件浸水前の水準に戻るのに三,四年を要した旨の陳述(甲122)ないし供述(原告B本人〔9~11頁〕)をするが,原告Bが売上の減少要因として指摘する客離れや風評被害の影響を裏付ける客観的な証拠はなく,他に,本 件旅館につき,本件営業再開後も,本件浸水の影響により旅館としての稼働に支障が生じていたことを認めるに足りる客観的な証拠はない。 そうすると,原告Bの上記陳述ないし供述をもって,本件営業再開後も本件浸水の影響によって原告会社に減収が生じていたとは認められない。 以上によれば,原告会社につき本件営業再開後の逸失利益を認めるのは 困難というべきであり,原告会社の消極的損害としては,本件浸水の日から本件営業再開の前日までの休業損害の範囲で認めるのが相当である。 もっとも,原告Bは,本件浸水により,200組ないし300組の予約を取り消し,宿泊客の総数にして4000人ないし5000人の予約を断らざるを得なくなった旨の陳述(甲122)ないし供述(原告B本人〔8 頁〕)をするものの,上記陳述ないし供述に係る事実関係及びこれによっ て原告会社に生じた具体的な減収額を裏付ける客観的な証拠はなく,本件浸水の日から本件営業再開の前日までの原告会社の得べかりし利益を直接把握するのは困難というべきである。 そこで,原告会社の休業損害については,相当な 具体的な減収額を裏付ける客観的な証拠はなく,本件浸水の日から本件営業再開の前日までの原告会社の得べかりし利益を直接把握するのは困難というべきである。 そこで,原告会社の休業損害については,相当な基礎収入の額並びに休業期間及び休業割合をそれぞれ認定し,基礎収入の日額に休業日数及び休 業割合を乗じることによって算定することとする。 イ基礎収入本件浸水の前年である平成23年度の原告会社の売上総利益(1億0222万6644円)及び営業利益(-452万9289円)は,その前年である平成22年度と比較すると,売上総利益(平成22年度 は1億2754万3864円)が約2500万円減少し,営業利益(平成22年度は445万2344円)が約900万円減少して赤字となっているが,平成19年度から平成21年度までの期間における売上総利益は約1億0500万円から1億1000万円の間で推移し,同期間における営業利益は約1000万円から2000万円の赤字で推移していたことが認められる のであるから,平成23年度の原告会社の売上総利益及び営業利益は,平成22年度よりは減少しているものの,平成19年度から平成21年度までと比較すると,売上総利益はおおむね同水準にあり,営業利益の赤字は縮小しているといえる。 そうすると,平成23年度の原告会社の売上総利益及び営業利益が,原告 会社にとって特に過小な数値になっているとはいえないから,原告会社の本件浸水による休業損害を算定するに当たっての基礎収入としては,本件浸水の前年である平成23年度の営業利益に固定経費と評価できる勘定科目の経費を加えた額とするのが相当である。 そして,証拠(甲60,127,151)によれば,原告会社は,平成2 3年度の販売費及び一般管理費として,役員報酬 業利益に固定経費と評価できる勘定科目の経費を加えた額とするのが相当である。 そして,証拠(甲60,127,151)によれば,原告会社は,平成2 3年度の販売費及び一般管理費として,役員報酬840万円,給料1598 万2634円,法定福利費279万8804円,賃借料353万3428円,修繕費294万6900円,諸会費116万3700円,保険料83万6760円,減価償却費1022万1505円及び租税公課830万7450円を計上したことが認められるが,これらの経費については,各勘定科目の性質からして,休業時にも本件旅館における事業を継続するために必要となる 固定経費と認めるのが相当である。 したがって,原告会社の休業損害を算定するための基礎収入は,平成23年の営業利益である-452万9289円に上記各固定経費の合計額(5419万1181円)を加えた4966万1892円(日額13万6059円)と認める。 ウ休業期間及び休業割合本件旅館は,本件浸水の日である平成24年8月14日から同年9月末日までの48日間にわたって完全休業の状態が続いたイ),この間は100%の休業を余儀なくされたものと認める。 その後,本件旅館は,同年10月5日に93人の利用客を受け入れ,同月 21日以降は断続的に利用客を受け入れていたのであり,同月には一定の範囲で稼働が可能になっていたものといえるが,証拠(甲60,61,151,152)によれば,原告会社の売上は,平成23年10月が919万7366円であったのに対し,平成24年10月は246万0933円にとどまっていたことが認められることも考慮すれば,同月の31日間 については,休業割合を70%と認めるのが相当である。 さらに,本件旅館は同年11月も断続的に 246万0933円にとどまっていたことが認められることも考慮すれば,同月の31日間 については,休業割合を70%と認めるのが相当である。 さらに,本件旅館は同年11月も断続的に利用客を受け入れており(前記,旅館として相応に稼働できる状態にあったことがうかがわれるが,証拠(甲60,61,151,152)によれば,原告会社の売上は,平成23年11月が1222万2099円であったのに対し,平成24年11月 は663万5135円にとどまっていたことが認められることからすると, 一定の営業上の制約が継続していたものと考えるのが相当であるから,同月の30日間については,その休業割合を40%と認めるのが相当である。 他方,同年12月1日から本件営業再開後の前日までの期間については, 証拠 (甲60,61,151,152)によれば,原告会社の12月の売上は, 平成23年が1415万0610円,平成24年が1407万2792円であったことが認められるのであり,同年12月の売上は本件浸水前である前年同月と同程度の水準に達していたといえる。これに加え,本件浸水の日から本件営業再開に至るまでの期間には,本件浸水とは無関係に実施された1階エントランスの改装工事に要した期間が含まれているものと 考えられるのであり,上記改装工事に要した期間及びその間の本件旅館の利用状況は証拠上明らかではないが,上記改装工事による休業を本件瑕疵と相当因果関係のある休業と評価するのは相当ではないことも併せ考慮すれば,同月1日から本件営業再開までの期間については,休業損害算定の基礎となる休業期間に含めないこととするのが相当である。 エ休業損害の額の算定以上によれば,原告会社に生じた本件瑕疵と相当因果関係のある休業損害の の期間については,休業損害算定の基礎となる休業期間に含めないこととするのが相当である。 エ休業損害の額の算定以上によれば,原告会社に生じた本件瑕疵と相当因果関係のある休業損害の額は,以下の計算式のとおり,1111万6020円となる。 (計算式)13万6059円×(48日+31日×0.7+30日×0.4) =1111万6020円 本件保険金による填補についてア証拠(甲138〔主に58,65,92頁〕)及び弁論の全趣旨によれば,本件保険の約款(企業総合保険普通保険約款。以下「本件約款」という。)には,本件保険会社は,水災等によって保険の対象について生じた損害につい て被保険者に損害保険金を支払うとともに,費用保険金として,保険の対象 の残存物の取片づけに必要な取壊し費用,取片づけ清掃費用及び搬出費用に対する残存物取片づけ費用保険金,並びに保険の対象の復旧に当たり発生した費用のうち必要かつ有益な費用に対する修理付帯費用保険金を支払う旨,保険の対象について損害又は損失が生じたことにより被保険者が損害賠償請求権その他の債権を取得した場合において,本件保険会社が,その損害又 は損失の全額を保険金として支払った場合は,被保険者が取得した債権の全額について,その債権が本件保険会社に移転する旨が定められていること,保険代位の対象が費目ごとに特定される旨の定めはないこと,本件保険会社が損害金元本に対する遅延損害金について保険金を支払う旨は定められていなかったことが認められる。 そして,原告会社が支払を受けた本件保険金のうち臨時費用保険金100万円については本件約款に定められた保険代位に関する定めが適用されないこと,本件保険金の支払により本件保険会社が保険代位により取得す そして,原告会社が支払を受けた本件保険金のうち臨時費用保険金100万円については本件約款に定められた保険代位に関する定めが適用されないこと,本件保険金の支払により本件保険会社が保険代位により取得する債権が修繕費等に係る損害賠償請求権に限られることは,いずれも当事者間に争いがない。 そうすると,本件保険会社が,原告会社に対し,本件保険金として,損害保険金1281万0003円,残存物取片づけ費用保険金128万1001円及び修理付帯費用保険金509万1620円の合計1918万2624円を支払ったこと(前記前提事実⑻)費等に係る損害金元本の全額(合計1331万1565円)が填補されるこ ととなり,上記損害金元本の支払請求権が全て本件保険会社に移転することとなる(なお,原告らは,残存物取片づけ費用保険金及び修理付帯費用保険金については,それに相当する損害に係る請求権のみが保険代位の対象となる旨主張するが,本件保険金は,損害保険金及び上記各費用保険金をもって本件旅館に生じた財産的損害全体を填補する趣旨と解されるし,保険代位の 対象となる費目を特定する約款上の定めも見当たらないのであるから,臨時 費用保険金を除く本件保険金全体が,修繕費等に係る損害全体を填補し,その範囲で保険代位の対象となるものと解するのが相当である。)。 イなお,原告会社は,本件浸水の日から保険金支払日までの損害金元本に対する遅延損害金の支払を求めるとともに,本件保険金が遅延損害金を填補することを前提に請求額を算定するが,本件約款の定めからすると,本件保険 は,本件旅館自体に生じた財産的損害(物的損害)を填補するためのものと解され,遅延損害金を填補する性質のものとは解されないし,本件約款上,本件保険会社が損害金元本に対する遅延損害金につい 保険 は,本件旅館自体に生じた財産的損害(物的損害)を填補するためのものと解され,遅延損害金を填補する性質のものとは解されないし,本件約款上,本件保険会社が損害金元本に対する遅延損害金について保険金を支払う旨の定めは設けられていないのであるから,本件保険金は,損害金元本に対する遅延損害金を填補するものではないものと解するのが相当である。 ウそうすると,本件保険金の支払日は平成24年10月9日であり(前記前,原告会社は,被告に対し,修繕費等に係る損害賠償請求権の損害金元本である1331万1565円に対する本件浸水の日から本件保険金の支払日までの57日間の民法所定の年5分の割合による遅延損害金10万3655円(=1331万1565円×0.05×57日÷366日) の支払請求権を有するものと認められるが,上記損害金元本については,本件保険会社がその全額の支払請求権を代位取得する結果,原告会社が被告に対して請求できる損害金元本は存在しないこととなる。 他方,休業損害については,本件保険金によって填補される損害ではないため,原告会社は,被告に対し,休業損害に係る損害金元本1111万60 20円及びこれに対する本件浸水の日から支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求権を有するものと認められる。 原告Dらの損害について原告Dらは,本件浸水当時,本件旅館に居住していたのであるから(前提事),本件浸水の際に強い不安や恐怖を感じたものと認められるが,これ によって原告Dらの心身が現に害されたことを認めるに足りる客観的な証拠 はないし,本件浸水によって本件旅館が被害を受けることにより,原告会社の経営面や原告Dらの生活面での不利益ないし不安が生じたとしても,こうした不利益ないし不安は めるに足りる客観的な証拠 はないし,本件浸水によって本件旅館が被害を受けることにより,原告会社の経営面や原告Dらの生活面での不利益ないし不安が生じたとしても,こうした不利益ないし不安は,原告会社に生じた財産的損害(修繕費等に係る損害及び休業損害)の賠償によって填補されるべきものであるから,原告Dらが,上記の損害のほかに,金銭による慰謝を要するような精神的苦痛を被ったとまでは 認められない。 したがって,原告Dらの損害に関する主張は採用できない。 小括以上によれば,原告会社については,以下の損害につき被告に賠償を請求することができるものと認められるが,原告Dらについては,被告に賠償を請求 できる損害が発生したとは認められないこととなる。 ア休業損害に係る損害金元本 1111万6020円)イ本件浸水の日である平成24年8月14日から本件保険金の支払日である同年10月9日までの遅延損害金修理費等に係る損害金元本に対するもの 10万3655ウ) 休業損害に係る損害金元本に対するもの 8万6559円(計算式)1111万6020円×0.05×57日÷366日=8万6559円ウ休業損害に係る損害金元本に対する本件保険金の支払日の翌日である平成24年10月10日から支払済みまでの遅延損害金 第4 結論よって,原告会社の請求は,損害金元本1111万6020円及び確定遅延損害金19万0214円(=10万3655円+8万6559円)の合計1130万6234円及びうち上記損害金元本1111万6020円に対する本件保険金支払日の翌日である平成24年10月10日から支払済みまで民法所定の年 5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,その限度で 金元本1111万6020円に対する本件保険金支払日の翌日である平成24年10月10日から支払済みまで民法所定の年 5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,その限度で 認容し,その余は理由がないから棄却し,原告Dらの請求は理由がないから,これらをいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。なお,仮執行宣言は相当でないから,これを付さないこととする。 京都地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官島崎邦彦 裁判官中村修輔 裁判官松波卓也
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