令和5(ヨ)9 佐賀空港自衛隊駐屯地建設工事差止仮処分命令申立事件

裁判年月日・裁判所
令和6年3月21日 佐賀地方裁判所 却下
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判決文本文17,953 文字)

主文 1 本件各申立てをいずれも却下する。 2 申立費用は債権者らの負担とする。 理由 第1 申立ての趣旨債務者は、別紙2物件目録記載1ないし32の土地における別紙3工事目録1及び2記載の各工事を続行してはならない。 第2 事案の概要等 1 事案の要旨 本件は、別紙2物件目録記載1ないし32の土地(以下「本件各土地」という。)を債務者がA漁業協同組合(以下「A漁協」という。)から買い受け(本件売買)、債務者が本件各土地において行っている自衛隊駐屯地新設工事(本件工事)について、債権者らが、①本件各土地の共有持分権に基づく妨害排除請求権及び妨害予防請求権としての本件工事の差止請求権、及び、②人格権に基づく妨害排除請 求権及び妨害予防請求権としての本件工事の差止請求権をそれぞれ被保全権利として、本件工事を仮に差し止める仮処分命令を申し立てた事案である。 2 前提事実(争いのない事実並びに掲記の疎明資料及び審尋の全趣旨から容易に認められる事実)⑴ 当事者 債権者らは、本件各土地の近隣に居住しており、有明海で海苔の養殖業を営む者である。債権者らは本件各土地の共有持分権を有すると主張している。 債務者は、国であり、本件各土地に自衛隊駐屯地(「本件駐屯地」という。)を新設するために本件工事を行っている。 ⑵ 国造干拓造成事業(甲3) 昭和30年から昭和47年頃にかけて、債務者は有明海の干拓を行い、本件 各土地を含む約240ヘクタールの土地を造成した(この干拓事業を「国造干拓(こくぞうかんたく)」といい、国造干拓により造成された土地を「国造搦(こくぞうがらみ)」という)。 、本件 各土地を含む約240ヘクタールの土地を造成した(この干拓事業を「国造干拓(こくぞうかんたく)」といい、国造干拓により造成された土地を「国造搦(こくぞうがらみ)」という)。 佐賀県は、九州佐賀国際空港(以下「佐賀空港」という。)の建設用地とするため、債務者から国造搦を取得し、本件各土地について、いずれも昭和48年 7月24日付けで所有者を佐賀県とする所有権保存登記がされた(甲1の1~32)(なお、その後、国造搦に佐賀空港を建設する計画はとん挫した)。 ⑶ 昭和56年覚書(甲6)昭和56年6月9日、佐賀県知事とB漁業協同組合(以下「B漁協」ともいう。)組合長理事との間で「国造干拓建設事業に伴う漁業補償に関する覚書」が 締結された(甲6。以下「昭和56年覚書」という。)。 昭和56年覚書には、「国造干拓建設事業に伴う漁業補償の締結に当たつてB漁業協同組合の漁業権者の入植増反希望者に対して国造干拓の農地60ヘクタールを配分することについて、昭和38年3月29日申合せがあつたことを確認する。」との記載がある(以下、昭和38年3月29日申合せを「昭和3 8年申合せ」という。)。 ⑷ 昭和60年協定書(甲7)昭和60年10月2日、佐賀県知事とB漁協組合長理事との間で「国造干拓建設事業に伴う漁業補償に関する覚書に基づく協定書」が締結された(甲7。 以下「昭和60年協定書」という。)。昭和60年協定書においては、昭和56 年覚書の履行に当たり配分する土地の場所及び価格が定められている。 ⑸ 昭和63年の国造搦の土地の売買ア佐賀県とB漁協との売買(乙3の1)昭和63年2月10日、本件各土地を含む国造搦の60ヘクタールの土地につき、売主を佐賀県、買主 。 ⑸ 昭和63年の国造搦の土地の売買ア佐賀県とB漁協との売買(乙3の1)昭和63年2月10日、本件各土地を含む国造搦の60ヘクタールの土地につき、売主を佐賀県、買主をB漁協とする売買契約が締結され(乙3の1。 以下「昭和63年売買」という。)、同年3月25日、佐賀県議会はB漁協に 同土地を売却する旨の議決をした(乙4。以下、昭和63年売買の目的となった土地を「国造搦60ヘクタールの土地」という。)。その後、同年5月31日付けで、国造搦60ヘクタールの土地につき、所有者を佐賀県からB漁協とする所有権移転登記がされた(乙6の1~53)。 イ佐賀県と他の漁協との売買(乙3の2~4) 昭和63年2月10日、国造搦の15ヘクタールの土地につき、売主を佐賀県、買主をC漁業協同組合(以下「C漁協」という。)とする売買契約が締結され(乙3の2)、同年3月25日、佐賀県議会はC漁協に同土地を売却する旨の議決をした(乙4)。その後、同年5月31日付けで、同土地につき、所有者を佐賀県からC漁協とする所有権移転登記がされた(乙8 の1~16)。 昭和63年2月10日、国造搦の10ヘクタールの土地につき、売主を佐賀県、買主をD漁業協同組合(以下「D漁協」という。)とする売買契約が締結され(乙3の3)、同年3月25日、佐賀県議会はD漁協に同土地を売却する旨の議決をした(乙4)。その後、同年6月6日付けで、同土地に つき、所有者を佐賀県からD漁協とする所有権移転登記がされた(乙10の1~10)。 昭和63年2月10日、国造搦の10ヘクタールの土地につき、売主を佐賀県、買主をE漁業協同組合(以下「E漁協」という。)とする売買契約が締結され(乙3の4)、同年3月 乙10の1~10)。 昭和63年2月10日、国造搦の10ヘクタールの土地につき、売主を佐賀県、買主をE漁業協同組合(以下「E漁協」という。)とする売買契約が締結され(乙3の4)、同年3月25日、佐賀県議会はE漁協に同土地を 売却する旨の議決をした(乙4)。その後、同年6月6日付けで、同土地につき、所有者を佐賀県からE漁協とする所有権移転登記がされた(乙12の1~10)。 ⑹ C漁協及びD漁協が買い受けた土地の共有持分権移転登記ア前記⑸イでC漁協が佐賀県から買い受けた国造搦の15ヘクタールの 土地につき、平成2年7月24日付けで、平成元年12月1日売買を原因と して、C漁協の単独所有から同漁協の組合員61名の共有とする持分一部移転登記がされた(乙8の1~16)。 イ前記⑸イでD漁協が佐賀県から買い受けた国造搦の10ヘクタールの土地につき、平成元年12月19日付けで、平成元年12月1日売買を原因として、D漁協の単独所有から同漁協の組合員127名の共有とする持分一 部移転登記がされた(乙10の1~10)。 ⑺ 本件協議会及びその組織ア本件協議会の規約(甲10)遅くとも平成元年5月頃までに、国造搦60ヘクタールの土地の管理運営のため、国造搦60ha管理運営協議会(国造搦60町歩管理運営委員会及 び国造搦60ha管理運営委員会と同じ。以下「本件協議会」という。)が組織された(甲10参照)。 本件協議会の規約第2条柱書には「協議会は、旧B漁業協同組合組合員に配分された国造搦60haの有効適正、且つ、円滑な管理運営を行うため、・・・」との記載がある(甲10)。 平成元年頃、本件協議会は各会員との間で「国造搦60haの取り扱いに関す 配分された国造搦60haの有効適正、且つ、円滑な管理運営を行うため、・・・」との記載がある(甲10)。 平成元年頃、本件協議会は各会員との間で「国造搦60haの取り扱いに関する協定書」を取り交わした(以下「本件協定書」という。なお、本件協定書は平成4年と平成19年に一部改正されている)。同協定書の1項には「土地は一括登記をし、会員に持分を配分する。」との記載がある。 (甲11)イ国造搦持分証券(以下「持分証券」という。)の存在 持分証券には、本件協議会会長及び持分証券発行当時のA漁協組合長の記名押印があり、「上記記名者に当国造搦60ha管理運営協議会の規約(協定書)により国造搦60ha内の持分面積の証として本券を交付する。」と記載されている。 債権者F名義の持分証券(甲9の1) 平成19年10月5日付けのものであり、持分面積は2,133㎡とさ れている。 債権者G名義の持分証券(甲9の2)平成19年10月5日付けのものであり、持分面積は2,233㎡とされている。 債権者H名義の持分証券(甲9の3) 平成27年2月18日付けのものであり、持分面積は1,533㎡とされている。 債権者I名義の持分証券(甲38)令和5年8月28日付けのものであり、持分面積は2,133㎡とされている。 ⑻ A漁協の設立ア平成19年4月2日、B漁協を含む佐賀県有明海地区の18の漁協が合併し、A漁協が設立され(乙14)、B漁協の権利義務はA漁協に包括承継された。これに伴い、本件各土地を含む国造搦60ヘクタールの土地について、所有者をB漁協からA漁協とする所有権移 の18の漁協が合併し、A漁協が設立され(乙14)、B漁協の権利義務はA漁協に包括承継された。これに伴い、本件各土地を含む国造搦60ヘクタールの土地について、所有者をB漁協からA漁協とする所有権移転登記がされた(乙5の1~5 3)。 イ A漁協の設立に先立つ平成19年3月28日、B漁協の当時の顧問弁護士であったJ弁護士は、B漁協に対して、本件協議会との間で「国造搦60haについては、乙(B漁協)が登記上所有名義人となっているが、これは、甲(本件協議会)及び上記共有者団が法人格を有しないことから、甲(本件 協議会)が乙(B漁協)に対し、登記名義面における管理を委託したことによるものであり、乙(B漁協)は実体上の所有権者ではない。」との条項を含む覚書を締結するよう助言した(甲55、56)。 ⑼ 平成26年の第4駐車場用地の売買平成26年6月4日、本件協議会の総会が開催され、国造搦60ヘクタール の土地の一部(現在の佐賀空港第4駐車場の用地。以下「第4駐車場用地」と いう。)を佐賀県に売却することが決議された。当該決議は、特別議決(本件協議会の会員の2分の1以上の出席により成立し、出席者の3分の2以上の賛成により決定する方法)により行われ、2名の反対者がいたが、売却が可決された(なお、後に2名の反対者も第4駐車場用地の売却を追認した)。 平成26年6月5日、第4駐車場用地につき、売主をA漁協、買主を佐賀県 とする売買契約が締結された(乙18)。 平成26年6月9日、A漁協が理事会を開催し、第4駐車場用地を佐賀県に売却することを決定した。 平成26年7月4日、佐賀県議会はA漁協から第4駐車場用地を買い受ける旨の議決をした(乙19)。その後、第4駐車場用地について、所有 催し、第4駐車場用地を佐賀県に売却することを決定した。 平成26年7月4日、佐賀県議会はA漁協から第4駐車場用地を買い受ける旨の議決をした(乙19)。その後、第4駐車場用地について、所有者をA漁協 から佐賀県とする所有権移転登記がされた(乙5の1ないし3)。 ⑽ 佐賀空港へのオスプレイ配備計画ア V―22オスプレイV-22オスプレイ(以下単に「オスプレイ」という。)とは、回転翼機と固定翼機の特徴を併せ持つとされる航空機であり、部隊輸送が主な用途とさ れている。 イ佐賀空港へのオスプレイの配備平成26年7月、債務者は、佐賀県及び佐賀市に対して、日本国の島嶼防衛強化のための取組みとして、陸上自衛隊が導入を予定しているオスプレイを佐賀空港に配備すること等を要請した。当該要請においては、オスプレイ を佐賀空港に配備するため、佐賀空港の西側に20から30ヘクタールの駐機場等の関連施設を整備すること等が想定されていた。(甲19の1、2)平成30年8月、佐賀県は、佐賀空港の隣に駐屯地を新設し、オスプレイを配備する計画を受け入れることを表明した(甲21)。 令和5年2月、佐賀市は、佐賀空港の隣に駐屯地を新設し、オスプレイを 配備する計画を受け入れることを表明した(甲24)。 ⑾ 本件売買に先立つ本件各土地の関係者に対するアンケート及び個別訪問令和3年7月頃、債務者は、本件売買に先立ち、本件各土地の関係者に対して本件各土地の売却に関するアンケートを行った(甲13参照)。 また、令和5年3月頃、債務者は、本件売買に先立ち、本件各土地の関係者に対して戸別訪問を行った(甲14参照)。 ⑿ 本件売買令和5年5月1日、本 るアンケートを行った(甲13参照)。 また、令和5年3月頃、債務者は、本件売買に先立ち、本件各土地の関係者に対して戸別訪問を行った(甲14参照)。 ⑿ 本件売買令和5年5月1日、本件協議会が臨時総会を開催し、本件各土地を債務者に売却することを特別議決の方法で決議した(乙20参照)。 令和5年5月15日、A漁協が理事会を開催し、本件各土地を債務者に売却することを決定した。 令和5年5月18日、本件各土地につき、売主をA漁協、買主を債務者とする売買契約が締結され(甲12。以下「本件売買」という。)、本件各土地について、同月25日付けで所有者を防衛省とする所有権移転登記がされた(甲2)。 なお、本件売買に係る売却代金は、債務者から本件協議会の各会員に直接振り込まれることとされた(甲16)。 ⒀ 本件工事の開始令和5年6月12日、本件各土地において、別紙3工事目録1記載の工事が着工した。同年8月1日、別紙3工事目録2記載の工事が着工した。(争いがない。別紙3工事目録1及び2記載の各工事を併せて「本件工事」という。)債務者は、令和7年6月末までにオスプレイ等の配備に最低限必要な施設の 工事を完了すると公表している(甲36)。 3 主要な争点⑴ 被保全権利についてア債権者らが本件各土地の共有持分権を有するか(争点1)イ人格権に基づく差止請求の可否(争点2) ⑵ 保全の必要性について 保全の必要性の有無(争点3) 4 主要な争点に関する当事者の主張の要旨⑴ 争点1(債権者らが本件各土地の共有持分権を有するか)について(債権者らの主張)昭和63年売買は昭和38年申合せの履行として行われたものであるから、 昭 主張の要旨⑴ 争点1(債権者らが本件各土地の共有持分権を有するか)について(債権者らの主張)昭和63年売買は昭和38年申合せの履行として行われたものであるから、 昭和63年売買の買主はB漁協ではなく、B漁協の個々の漁業者である。B漁協の個々の漁業者は、昭和63年売買により、佐賀県から直接に本件各土地を含む国造搦60ヘクタールの土地の共有持分権を取得した。 債権者Iは昭和63年売買により佐賀県から直接に持分証券記載の面積に対応する本件各土地の共有持分権を取得した。 債権者F及び同Gの実父は昭和63年売買により佐賀県から直接に持分証券記載の面積に対応する本件各土地の共有持分権を取得した。債権者F及び同Gは、それぞれの実父から当該共有持分権を取得した。 債権者Hは、本件協議会から持分証券記載の面積に対応する本件各土地の共有持分権を取得した。 ア昭和38年申合せの内容は「国造干拓建設事業に伴う漁業補償の締結に当たつてB漁業協同組合の漁業権者の入植増反希望者に対して国造干拓の農地60ヘクタールを配分すること」であり、昭和56年覚書でもその旨が確認されている。昭和60年協定書も昭和56年覚書の内容を履行することが前提とされている。 国造干拓は国営の土地改良事業として行われており、造成された土地の所有権は土地改良法(昭和39年法律第94号による改正前のもの。以下単に「土地改良法」という。)所定の手続に準じて配分されることになっていたところ、昭和38年申合せは、国造干拓による造成地の所有権の配分をめぐって取り交わされたものであって、その内容からすれば、昭和38年申合せ に基づく造成地の配分は、B漁協の漁業権者に対して行われる漁業補償その ものではなく、土地改 の所有権の配分をめぐって取り交わされたものであって、その内容からすれば、昭和38年申合せ に基づく造成地の配分は、B漁協の漁業権者に対して行われる漁業補償その ものではなく、土地改良法所定の手続に準じて、個々の組合員の生活再建策として個々の組合員に対して造成地の共有持分権を優先的に配分するというものである。 そして、昭和63年売買によりB漁協の個々の漁業者に対して国造搦60ヘクタールの土地の配分(=共有持分権の分配)が行われた。 イ本件協定書の第1項は「土地は一括登記をし、会員に持分を配分する。」となっており、これは本件協議会の会員が本件各土地の共有持分権を有することを確認したものである。 また、本件協議会の規約第2条柱書の記載も、B漁協の組合員が本件各土地の共有持分権を有することを前提としたものとなっている。 ウ本件協議会の個々の会員に対して具体的な持分面積が記載された持分証券が本件協議会とB漁協の名義で発行されたことは、当該会員らが本件各土地の共有持分権を有することを裏付けるものである。 エ本件売買に先立ち、債務者は本件各土地の地権者に対して本件各土地の売却に賛成するか否かのアンケート調査を行ったり、本件協議会の会員の自宅 を訪問して土地の売却交渉を行ったりした。これは、債務者が、本件協議会の会員である個々の地権者が本件各土地の共有持分権を有すると認識していたことを示すものである。 オ本件各土地の売却代金は債務者から個々の地権者に直接的に支払われることになっており、これは、債務者が、本件協議会の会員である個々の地権 者が本件各土地の共有持分権を有すると認識していたことを示すものである。 カ昭和63年売買でB漁協名義での買受 ことになっており、これは、債務者が、本件協議会の会員である個々の地権 者が本件各土地の共有持分権を有すると認識していたことを示すものである。 カ昭和63年売買でB漁協名義での買受け及び所有権移転登記がされたのは、①個々人が土地を利用するよりも全員で営農する方が高い収益が見込まれたこと、②全体での営農をするために無関係の第三者の介入を防止する目 的があったこと、③分配費用や分配の公平性の問題があったことの3点によ る便宜的な措置にすぎず、昭和63年売買により佐賀県からB漁協への所有権移転登記がされたことは、昭和63年売買の買主がB漁協であることを示すものではない。 本件各土地の登記名義人であったB漁協の顧問弁護士であったJ弁護士は、平成19年にB漁協がA漁協へと合併するに際し、覚書(甲56)を交 わすよう助言しており、このことも、本件各土地の登記名義人がB漁協とされたことは便宜的な措置であり、B漁協が本件各土地の所有者ではないことを裏付けている。 キ債務者は、本件各土地の売却交渉の段階においては、防衛大臣ほか債務者の担当者らが本件協議会の個々の会員を本件各土地の「地権者」と表現する など、本件協議会の個々の会員を本件各土地の共有持分権者として取り扱っていたにもかかわらず、本件の審理においては債権者らが本件各土地の共有持分権を有することを争っており、このような債務者の態度は訴訟上の信義に反するというべきである。 (債務者の主張) 昭和63年売買の買主はB漁協の個々の漁業者ではなく、B漁協であるから、債権者らは本件各土地の共有持分権を有していない。 ア昭和63年売買に係る売買契約書には売払人が佐賀県、買受人がB漁協と記載され、両者の記名押印がされている 業者ではなく、B漁協であるから、債権者らは本件各土地の共有持分権を有していない。 ア昭和63年売買に係る売買契約書には売払人が佐賀県、買受人がB漁協と記載され、両者の記名押印がされていることからすれば、昭和63年売買の買受人がB漁協であったことは明らかである。 昭和63年売買についてされた佐賀県議会の議決においても売却先がB漁協と明示されており、議決と異なる相手方と締結した契約が無効になることからすると、佐賀県があえて議決と実体と異なる契約を行っているとは考え難く、昭和63年売買の買受人がB漁協であることはより一層明らかである。 イ昭和63年売買は、当時B漁協が有していた共同漁業権の補償として行わ れたものであるところ、共同漁業権の補償は漁業協同組合の組合員ではなく漁業協同組合に対して行われるべきとされていることからすれば(最高裁判所平成元年7月13日第一小法廷判決・民集43巻7号866頁参照)、昭和63年売買の買受人はB漁協であったと考えるのが自然かつ合理的である。 ウ佐賀県は、昭和63年売買と同日に、C漁協、D漁協及びE漁協との間で国造搦の土地の売買契約を締結しているところ、その後C漁協とD漁協が佐賀県から取得した土地の共有持分を個々の組合員に対して売却していることからすれば、昭和63年に佐賀県と各漁協との間で行われた国造搦の土地の売買契約の当事者は各漁協であったと考えるべきである。 エ平成26年の第4駐車場用地の売買契約に先立って行われた本件協議会の総会の議決においては少数の反対者がいたものの、出席者の3分の2以上の賛成により売却の議決がされ、第4駐車場用地が佐賀県に売却されている。 仮に国造搦60ヘクタールの土地が債権者らが主張するように本 の総会の議決においては少数の反対者がいたものの、出席者の3分の2以上の賛成により売却の議決がされ、第4駐車場用地が佐賀県に売却されている。 仮に国造搦60ヘクタールの土地が債権者らが主張するように本件協議会の会員の狭義の共有に属するのであれば、その売却には共有者全員の同意が 必要となるが、第4駐車場用地の売買においては共有者全員の同意がないにもかかわらず売買契約が行われ、それに対して異議があったことを窺わせる疎明資料はない。このことは、平成26年の時点で、本件各土地を含む国造搦60ヘクタールの土地が本件協議会の会員の狭義の共有に属するものではなく、A漁協の単独所有であったことを裏付ける。 オ昭和56年覚書は、昭和38年申合せがあったことを確認するものであるが、昭和56年覚書は、その内容及び体裁からして、佐賀県知事とB漁協組合長の間で漁業補償についての方針を確認するものにすぎず、昭和60年協定書が締結されたことを踏まえても、その後にされた昭和63年売買の内容を決するものではない。 債権者らは、昭和56年覚書、昭和60年協定書、本件協議会の規約、及 び本件協定書等によれば、国造搦の「持分」が本件協議会の会員に「配分」されるものとされており、これは共有持分権を物権的に配分することを意味している旨主張するが、ここにいう「持分」の「配分」とは、B漁協又はA漁協と本件協議会の会員との間の債権的な合意として、本件協議会の会員が本件各土地から生じる収益の配分を受けることを意味し、持分証券に記載さ れた割合は収益の配分の割合を定めたものと理解されるから、債権者らの主張は本件協議会の会員が本件各土地の共有持分権を有することを積極的に裏付けるとはいえない。 カアンケート調査は公害防止協定の見 合は収益の配分の割合を定めたものと理解されるから、債権者らの主張は本件協議会の会員が本件各土地の共有持分権を有することを積極的に裏付けるとはいえない。 カアンケート調査は公害防止協定の見直しに係るA漁協の判断の一助として、A漁協から示された対象者に対して行ったものにすぎず、また、本件各 土地の売却交渉はA漁協の意向を踏まえて、漁協内部の手続を円滑に進めるための一助として、A漁協から示された対象者に対し本件各土地の売買について説明したものにすぎず、いずれも債務者が本件協議会の会員が本件各土地の共有持分権を有するとの認識を示すものではない。 キ本件各土地の売却代金が債務者から本件協議会の会員らに直接支払われ ることとなったのは、売主であるA漁協からそのように指定されたためであり、債務者が本件協議会の会員が本件各土地の共有持分権を有すると認識していたからではない。 ク債権者らは、防衛大臣ほか債務者の担当者らが本件協議会の個々の会員を本件各土地の「地権者」と表現するなどしたことを指摘するが、「地権」とい う言葉は多義的なものであって、本件協議会の個々の会員が本件各土地の共有持分権者であることを認めるものではない。 ⑵ 争点2(人格権に基づく差止請求の可否)について(債権者らの主張)生命を守り生活を維持するという人格権の根幹部分に対する具体的な侵害 のおそれがあるときは、人格権そのものに基づいて侵害行為の差止めを請求す ることが可能である。 ア戦争時の被害について債務者は、日本国の島嶼防衛を強化するため本件駐屯地を新設しオスプレイを配備する必要があるとしており、日本国と諸外国との間で戦争が勃発した場合、本件駐屯地が建設途中であっても、島 ついて債務者は、日本国の島嶼防衛を強化するため本件駐屯地を新設しオスプレイを配備する必要があるとしており、日本国と諸外国との間で戦争が勃発した場合、本件駐屯地が建設途中であっても、島嶼防衛の要となる部隊が利用 する施設として攻撃目標となることは容易に想定でき、本件各土地の近隣地域に居住する債権者らが戦争に巻き込まれる可能性が増大しているから、債権者らの人格権が侵害される危険性が切迫している。 イ平常時の被害についてオスプレイは過去に何度も墜落事故を起こしており、オスプレイに欠陥が あることは明らかである。佐賀空港付近の有明海海上でオスプレイの墜落事故が起きれば債権者らの生命身体に直接危険が及びかねず、生業である漁業にも深刻な被害を及ぼすことになることから、戦争が勃発するに至らなくとも、債権者らの人格権が侵害される危険性が切迫している。 (債務者の主張) 最高裁判所昭和61年6月11日大法廷判決・民集40巻4号872頁(いわゆる北方ジャーナル事件上告審判決)によれば、人格権に基づく差止請求の根拠となる被保全権利は、少なくとも物権類似の排他性(不可侵性)を持った支配権であって、生命、身体に比肩し得るような重大な保護法益に係るものに限定されるというべきである。 ア戦争時の被害について債権者らが主張する戦争時の被害の内容は、日本国が戦争の当事者となれば建設中の本件駐屯地が相手国の攻撃目標となり危険にさらされるのではないかといった漠然とした不安感を抱いたという域を超えるものではなく、生命、身体に比肩し得るような重大な保護法益とはいえないし、また、その ような重大な保護法益が具体的に侵害されるおそれについての疎明はない。 イ いう域を超えるものではなく、生命、身体に比肩し得るような重大な保護法益とはいえないし、また、その ような重大な保護法益が具体的に侵害されるおそれについての疎明はない。 イ平常時の被害について債権者らが主張する平常時の被害についても、抽象的な被害の可能性を述べるものにとどまり、事故が起きるのではないかという漠然とした不安感を抱いたという域を超えるものではなく、生命、身体に比肩し得るような重大な保護法益とはいえないし、また、そのような重大な保護法益が具体的に侵 害されるおそれについての疎明はない。 債権者らが指摘する過去に発生したオスプレイの事故は、オスプレイの搭載システム、機械系統及び機体構造を原因とするものではない事故、適切な部品交換等により極めて安全な水準を保つことができる事故であり、今後オスプレイの運用によって事故が起きることを具体的に導き出すものではな い。 ⑶ 争点3(保全の必要性の有無)について(債権者らの主張)債務者は令和7年6月末までにオスプレイ等の移駐に最低限必要な施設の工事を完了する旨公表しており、本案判決を待っていたのでは本件工事が原状 回復困難なほどに進行し、債権者らに著しい損害が生じることは明らかであるから、保全の必要性がある。 (債務者の主張)本件各申立ては保全の必要性は認められない。 ア共有持分権に基づく主張について 債権者らは、本件駐屯地の建設が進行することにより事後の損害賠償によって償えないほどのいかなる内容及び程度の損害が発生するのかについての具体的な主張及び疎明をしていない。 また、債権者らが被保全権利として主張する本件各土地の共有持分権の実質は、国 によって償えないほどのいかなる内容及び程度の損害が発生するのかについての具体的な主張及び疎明をしていない。 また、債権者らが被保全権利として主張する本件各土地の共有持分権の実質は、国造搦60ヘクタールの土地における農作業を業者に委託し、当該農 作業による収入の分配を受ける債権的な権利又は利益であり、仮に本件工事 により債権者らに何らかの損害が発生したとしてもそのような損害は事後的な金銭賠償により回復可能である。 イ人格権に基づく主張について債権者らが主張する戦争時の被害及び平常時の被害はいずれも漠然とした不安感を抱き得るという程度のものにとどまり、その発生の危険性が現実 化しているものでも、差し迫っているものでもない。 ウ債務者が被る損害について仮の地位を定める仮処分の保全の必要性の判断においては、仮処分が認められた場合に債務者が被る損害の内容及び程度も考慮されるべきところ、仮に本件各申立てが認められると、債務者は本件駐屯地の新設工事を中断する ことが余儀なくされ、工事の工程が大幅に遅滞することは確実であり、これにより工事費用が増大するという損害を被る上、日本国の安全保障に重大な影響が生じ得ることになるから、保全の必要性を減ずる事情となる。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(債権者らが本件各土地の共有持分権を有するか)について 当裁判所は、昭和63年売買によりB漁協の個々の漁業者が本件各土地を含む国造搦60ヘクタールの土地の共有持分権を取得したことは疎明されておらず、そのため、債権者らが本件各土地の共有持分権を承継取得したことも疎明されていないと判断した。以下詳述する。 ⑴ 昭和63年売買によりB漁協の個々の漁業者が本件各土地を含 ことは疎明されておらず、そのため、債権者らが本件各土地の共有持分権を承継取得したことも疎明されていないと判断した。以下詳述する。 ⑴ 昭和63年売買によりB漁協の個々の漁業者が本件各土地を含む国造搦6 0ヘクタールの土地の共有持分権を取得したことは疎明されていないことア昭和63年売買の位置づけ昭和38年申合せそのものは疎明資料として提出されていないが、昭和56年覚書の内容からすれば、昭和38年申合せは、佐賀県知事とB漁協との間で「国造干拓建設事業に伴う漁業補償の締結に当たつてB漁業協同組合の 漁業権者の入植増反希望者に対して国造干拓の農地60ヘクタールを配分 すること」を合意するものであったと認められる。そして、昭和56年覚書及び昭和60年協定書の内容からすれば、昭和63年売買は、昭和38年申合せの合意内容の履行として行われたものと考えるのが相当である。 そして、債権者らは、上記理解を前提として、昭和38年申合せに基づく造成地の配分は、漁業補償そのものではなく、個々の組合員の生活再建策と して個々の組合員に対して造成地の共有持分権を優先的に配分するものであるから、昭和38年申合せの履行として行われた昭和63年売買によって、B漁協の個々の漁業者が本件各土地を含む国造搦60ヘクタールの土地の共有持分権を取得したと主張している。 しかしながら、以下のとおり、昭和63年売買が昭和38年申合せの履行 として行われたという事実から、昭和63年売買によりB漁協の個々の漁業者が本件各土地を含む国造搦60ヘクタールの土地の共有持分権を取得したことが導かれるということはできないものと考えるのが相当である。 昭和38年申合せに基づく造成地の配分の性質債権者らは、昭和38年申 地を含む国造搦60ヘクタールの土地の共有持分権を取得したことが導かれるということはできないものと考えるのが相当である。 昭和38年申合せに基づく造成地の配分の性質債権者らは、昭和38年申合せに基づく造成地の配分は漁業補償そのも のではない旨主張するが、昭和63年売買が行われるに至った経緯(前提事実⑵~⑸)、昭和56年覚書及び昭和60年協定書の内容等を踏まえれば、昭和63年売買は国造干拓により消滅したB漁協の漁業権に対する漁業補償そのものとして行われたものと理解するのが相当であり、この点についての債権者らの主張は採用できない。 そして、漁業協同組合の有する漁業権の消滅に対して行われる漁業補償は、現実に漁業を営むことができなくなることによって損失を被る組合員に配分されるべきものであるが、第一次的には漁業協同組合に帰属し、その後に組合員への配分が予定されているものと解される(最高裁判所平成元年7月13日第一小法廷判決・民集43巻7号866頁参照)。 そうすると、本件においても、漁業補償として行われた昭和63年売買 の目的物である国造搦60ヘクタールの土地は、第一次的にはB漁協に帰属していたと考えるのが自然であり、昭和63年売買により本件各土地の所有権を取得したのはB漁協であることを推認させる。 昭和38年申合せ等のいう「配分」の意味内容債権者らは、昭和38年申合せ等のいう「配分」とは、個々の組合員に 対して国造干拓による造成地の共有持分権を帰属させることを意味するという理解を前提として、昭和38年申合せの履行として行われた昭和63年売買によって個々の組合員が本件各土地を含む国造搦60ヘクタールの土地の共有持分権を取得した旨主張する。 この点、債権者らが主張するように、昭和38年 38年申合せの履行として行われた昭和63年売買によって個々の組合員が本件各土地を含む国造搦60ヘクタールの土地の共有持分権を取得した旨主張する。 この点、債権者らが主張するように、昭和38年申合せ、昭和56年覚 書、昭和60年協定書、本件協定書及び本件協議会の規約第2条からすれば、個々の組合員に対して国造搦60ヘクタールの土地を配分することが合意されていたと認められる。しかしながら、そこにいう「配分」という文言が、必ずしも個々の組合員に対して国造搦60ヘクタールの土地の共有持分権を帰属させることを意味すると考えることは困難と言わざるを 得ない。漁業補償として土地を取得した場合、個々の組合員に対して当該土地の所有権を分配する方法だけでなく、当該土地を漁協等が一括管理して当該土地からの収益を個々の組合員に分配するという方法も漁業補償として合理的な手段と考えられるためである。 以上によれば、昭和38年申合せ等にいう「配分」が、必ずしも個々の 組合員に対して本件各土地を含む国造搦60ヘクタールの土地の共有持分権を帰属させることを意味するとは考えることはできず、この点についての債権者らの主張は採用できない。 本件各土地の配分手続債権者らも自認するように、本件各土地の配分手続が当時の土地改良法 に従って行われたとは認められない(令和5年11月22日の審尋期日に おける債権者らの陳述)。すなわち、土地改良法の手続が履践される場合、選定された者に対して配分通知書が交付され、配分通知書の交付を受けた者は、土地改良事業の完了の期日において、造成された土地の所有権を原始取得する(土地改良法94条の8第3項、第4項参照)ことになるが、本件でそのような手続が行われたとは認められない。このような本件各土 、土地改良事業の完了の期日において、造成された土地の所有権を原始取得する(土地改良法94条の8第3項、第4項参照)ことになるが、本件でそのような手続が行われたとは認められない。このような本件各土 地の配分手続は、昭和63年売買によりB漁協の個々の漁業者が本件各土地の共有持分権を取得することとは整合しないものというべきである。 小括以上によれば、昭和63年売買が昭和38年申合せの履行として行われたという事実から、昭和63年売買によりB漁協の個々の漁業者が本件各 土地を含む国造搦60ヘクタールの土地の共有持分権を取得したと考えることはできない。 イ昭和63年売買に関する事実関係昭和63年売買に係る売買契約書には、売払人が佐賀県、買受人がB漁協と記載されており、その後、佐賀県議会は昭和63年売買について承認する 旨の議決をしている。そして、同年5月31日付けで、本件各土地につき、所有者を佐賀県からB漁協とする所有権移転登記がされている(以上につき、前提事実⑸ア)。このことは、昭和63年売買により本件各土地の所有権を取得したのはB漁協であることを強く推認させる。 債権者らは、昭和63年売買において、個々の組合員の名義ではなく、B 漁協名義での買受け及び所有権移転登記が行われた理由について、前記第2の4⑴(債権者らの主張)カのとおり主張するが、C漁協及びD漁協においては現にその後に個々の組合員らの共有の名義になっているのであるから(前提事実⑹)、個々の組合員の名義での買受け及び所有権移転登記をしなかった理由として必ずしも説得的であるとはいえない。 ウ他の漁協との売買との整合性 昭和63年売買の同日、佐賀県はC漁協、D漁協及びE漁協に対して国 登記をしなかった理由として必ずしも説得的であるとはいえない。 ウ他の漁協との売買との整合性 昭和63年売買の同日、佐賀県はC漁協、D漁協及びE漁協に対して国造搦の土地を売却している(前提事実⑸イ)。これらの売買は、昭和63年売買と同様、国造干拓により消滅した各漁協の漁業権に対する漁業補償として行われたものであると考えられる。そして、C漁協及びD漁協は、佐賀県より買い受けた国造搦の土地について、各漁協名義での所有権移転登記を経由し た後、それぞれ、各漁協の組合員の共有とする持分一部移転登記がされている(前提事実⑸イ及び⑹)。これは、昭和63年売買と同日に行われた佐賀県とC漁協及びD漁協との間での国造搦の土地の売買契約により国造搦の土地の所有権を取得したのがC漁協及びD漁協であることを前提として、各漁協が組合員に対して漁業補償として漁協が取得した国造搦の土地の所有権 を分配したものと考えられる。 前記のとおり、C漁協、D漁協及びE漁協に対する国造搦の土地の売買は、昭和63年売買と同日に、同目的で行われたと考えられるから、昭和63年売買についても、国造搦の土地の所有権を取得したのはB漁協であると考えるのが整合的である。 エ小括以上によれば、昭和63年売買により本件各土地を含む国造搦60ヘクタールの土地の所有権を取得したのはB漁協であって、B漁協の個々の漁業者ではないと強く推認される。 ⑵ 債権者らのその他の主張の検討 ア持分証券の存在について債権者らは、持分証券の存在を根拠に、持分証券に記載のとおりの国造搦60ヘクタールの土地の共有持分権を有している旨主張するが、持分証券の記載のみではそのように認めるに足りない。 ついて債権者らは、持分証券の存在を根拠に、持分証券に記載のとおりの国造搦60ヘクタールの土地の共有持分権を有している旨主張するが、持分証券の記載のみではそのように認めるに足りない。 イ A漁協の設立に先立つJ弁護士からの助言について 債権者らは、A漁協の設立に先立つJ弁護士からの助言(前提事実⑻イ) を根拠に、B漁協は本件各土地の所有者ではなく、本件協議会の会員が本件各土地の共有持分権を有する旨主張する。 もっとも、債権者らが自認するように、覚書(甲56)は真正に成立したものではなく、同覚書に基づき本件各土地の当時の権利関係を推認することは困難である。また、J弁護士からの助言がされたのはA漁協の設立直前で ある平成19年3月28日であること、及び、J弁護士による回答書(甲55)の内容によれば、同覚書は、A漁協の設立によりB漁協がA漁協に組み込まれた後も国造搦60ヘクタールの土地の権利をB漁協の関係者のみが保持し続ける旨をA漁協に対して主張することを目的として作成されたものであると考えられることからすれば、同覚書が本件協議会の個々の会員が 本件各土地の共有持分権を有することを裏付けるものとはいえない。 ウ債務者の行動について債権者らは、債務者が本件協議会の会員に対して本件各土地の売却に関するアンケート調査や戸別訪問を行っていたこと、本件各土地の売却代金が本件協議会の会員に直接支払われることになっていたこと、防衛大臣ほか債務 者の担当者らが本件協議会の会員を「地権者」と表現するなど共有持分権者として扱っていたことは、債務者が本件協議会の会員が本件各土地の共有持分権を有すると認識したことを示すものであり、また、そのような態度をとっていた債務者が本件の審 地権者」と表現するなど共有持分権者として扱っていたことは、債務者が本件協議会の会員が本件各土地の共有持分権を有すると認識したことを示すものであり、また、そのような態度をとっていた債務者が本件の審理において債権者らが本件各土地の共有持分権を有することを争うことは訴訟上の信義に反すると主張する。 しかしながら、債権者の指摘する事情を踏まえても、債務者が本件協議会の会員が本件各土地の共有持分権を有すると認識していたとは認められず、本件の審理において債権者らが本件各土地の帰属について争うことが訴訟上の信義に反するとはいえない。 ⑶ まとめ 以上によれば、債権者らの主張によっても、昭和63年売買によりB漁協の 個々の漁業者が本件各土地を含む国造搦60ヘクタールの土地の共有持分権を取得したことが疎明されているとはいえない。 2 争点2(人格権に基づく差止請求の可否)について人の生命・身体はそれ自体が極めて重要な保護法益であるから、個人の生命・身体が違法に侵害される具体的危険がある場合には、当該個人は、違法な侵害行 為を排除・予防するため、人格権に基づく妨害排除請求及び妨害予防請求として、当該侵害行為の差止めを求めることができると解される。 ⑴ 戦争時の被害について債権者らの主張を踏まえても、日本国と諸外国との間で戦争が勃発し債権者らの生命・身体が侵害される具体的危険性が疎明されているとはいえず、債権 者らの主張はその前提を欠き、採用することができない。 ⑵ 平常時の被害について債権者らが指摘するように、オスプレイは過去に数度の墜落事故を起こしている。しかしながら、オスプレイに欠陥があることや、再度オスプレイの墜落事故が生じる可能性が高いことについて疎 について債権者らが指摘するように、オスプレイは過去に数度の墜落事故を起こしている。しかしながら、オスプレイに欠陥があることや、再度オスプレイの墜落事故が生じる可能性が高いことについて疎明されているとはいえず、それゆえ、 債権者らの生命・身体が侵害される具体的な危険性が疎明されているともいえない。 ⑶ まとめ以上によれば、債権者らの人格権が違法に侵害される具体的危険性は疎明されていないというべきである。 第4 結論以上によれば、被保全権利の疎明があるとはいえないから、保全の必要性について判断をするまでもなく、債権者らの本件各仮処分命令申立ては理由がない。 よって、本件各申立てをいずれも却下することとし、主文のとおり決定する。 令和6年3月21日 佐賀地方裁判所民事部 裁判長裁判官三井教匡 裁判官福本晶奈 裁判官神尾元樹

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