- 1 - 主文 1 被告は,原告に対し,1186万5852円及びこれに対する令和元年11月8日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを100分し,その43を被告の負担とし,その余を原告の 負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,2765万6640円及びこれに対する令和元年11月8日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,消費生活協同組合法に基づいて設立された消費生活協同組合である原告が,被告の実施する「キャッシュレス・消費者還元事業」に係る補助金の交付事業(以下「本件事業」という。)に関し加盟店登録の登録申請(以下「本件登録申請」という。)を行ったところ,被告は,当初,原告のような消費生活協同 組合についても加盟店として登録する旨の方針を示していたにもかかわらず,本件事業開始の直前に至って上記方針を撤回し,原告を加盟店として登録しないものとしたことは,原告と被告との間に形成された信頼関係を不当に破壊するものであって国家賠償法(以下「国賠法」という。)上違法であり,これにより,原告は,本件事業開始に向けて拠出した費用相当額の損害を被ったと主張して,被 告に対し,同法1条1項による損害賠償請求権に基づき,損害金合計2765万6640円及びこれに対する令和元年11月8日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲書証[枝番のあるものは枝番も含む。 以下同じ。]及び弁論の全趣旨により容易に認定することのできる事実。) る遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲書証[枝番のあるものは枝番も含む。 以下同じ。]及び弁論の全趣旨により容易に認定することのできる事実。)- 2 - ⑴ 当事者等ア原告は,消費生活協同組合法に基づいて設置された消費生活協同組合(以下「生協」という。)であり,兵庫県内において店舗を構え,小売業等を営んでいる者である。 イ被告(経済産業省)は,本件事業を企画・立案し,同事業の円滑な実施を 監督する者である(なお,後記のとおり,被告が本件事業の実施主体か否かには争いがある。)。 ⑵ 本件事業の目的本件事業は,中小・小規模事業者等(以下「中小事業者」という。)におけるキャッシュレス決済手段を使ったポイント還元等を実施するための決済事業 者等の事業費等の経費の一部を補助することにより,令和元年10月1日の消費税率引上げに伴い,需要平準化対策として,中小事業者における消費喚起を後押しするとともに,事業者・消費者双方におけるキャッシュレス化を推進することを目的としている。(甲3,4,乙3,4)⑶ 本件事業の概要 ア本件事業の概要は,消費者が補助の対象となる中小事業者において商品を購入し,購入代金をクレジットカード,デビットカード,電子マネー,QRコード決済等の一般的な購買に繰り返し利用できる電子的決済手段を使用して支払った場合,決済事業者が,決済額に応じたポイント又は前払式支払手段(以下「ポイント等」という。)を消費者に付与する方法により消費者還 元を行うとともに,ポイント還元に要した費用を補助するため,被告が決済事業者に補助金を交付するというものである。この消費者還元期間は,令和元年10月1日から令和2年6月30日までの間とされてい 元を行うとともに,ポイント還元に要した費用を補助するため,被告が決済事業者に補助金を交付するというものである。この消費者還元期間は,令和元年10月1日から令和2年6月30日までの間とされている。 (甲1,2)イ本件事業に関し,消費者に対するポイントの付与等がなされる過程及び本件事業に関する補助金交付がなされる仕組みは,以下のようなものである。 (甲1ないし4,乙1ないし4及び後掲の証拠)- 3 - 一般社団法人キャッシュレス推進協議会(以下「本件協議会」という。)は,国(経済産業省)から本件事業の業務(事務局業務に限られるかには争いがある。)を委託されている。本件協議会は,キャッシュレス・消費者還元事業費補助金交付要綱(乙1。以下「交付要綱」という。)にいう「補助事業者」であり,補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(以 下「補助金適正化法」という。)2条3項にいう「補助事業者等」に該当する。 キャッシュレス決済の決済手段を提供する決済事業者(カード会社等)は,本件協議会に対し,キャッシュレス決済事業者登録要領(甲3,乙2,3)等に沿って登録申請を行い,本件協議会から登録を受ける(以下本件 協議会により登録を受けた決済事業者を「登録決済事業者」という。)。登録決済事業者は,補助金適正化法2条6項にいう「間接補助事業者」に該当する。 キャッシュレス決済を取り扱っている中小事業者は,自店舗で取り扱っている決済手段を提供する登録決済事業者を通じ,本件協議会に加盟店登 録申請を行い,本件協議会から,加盟店登録を受ける(以下本件協議会により加盟店登録を受けた事業者を「登録加盟店」という。)。 消費者が,登録加盟店において,上記消費者還元期間内に登録決済事業者の提供する決済 ,本件協議会から,加盟店登録を受ける(以下本件協議会により加盟店登録を受けた事業者を「登録加盟店」という。)。 消費者が,登録加盟店において,上記消費者還元期間内に登録決済事業者の提供する決済手段を使用して商品を購入すると,登録決済事業者が,消費者に対して,利用額の5%(フランチャイズチェーン等に属する中小 事業者にあっては2%)の還元率によりポイント等を付与する。 登録決済事業者が受ける補助としては,①決済端末補助(登録決済事業者が登録加盟店に対して決済端末を無償提供した場合の必要経費の補填),②加盟店手数料補助(登録決済事業者と登録加盟店との間で期間中に発生する加盟店手数料の3分の1相当額の補填),③消費者還元補助(消費者 に対してポイント等の還元を行った場合の必要経費の補填),④事務経費- 4 - 補助(登録決済事業者が,本件事業実施するに当たって発生した人件費・事業経費(広報費用等)・システム開発費の補填)がある。そして,登録決済事業者が上記①ないし④の補助を受けるためには,原則として,あらかじめ,本件協議会に対して補助金交付申請を行い,本件協議会から補助金交付決定を受けた後に,具体的な経費の支出等を行う必要がある。登録決 済事業者は,経費の支出等が完了したときは,本件協議会に対し,一定の期間内に実績報告書を提出し,これを受けた本件協議会は,審査等を行って,補助金の交付額を確定し,登録決済事業者に対して通知した後,補助金の交付を行う(ただし,必要があると認められる経費は概算払いが可能である。)。(乙7ないし乙10) 本件協議会は,被告(経済産業省)に対し,本件協議会が登録決済事業者に対して行った補助について,補助金の交付申請を行い,被告のうち経済産業大臣が相当と認める額について補助 し乙10) 本件協議会は,被告(経済産業省)に対し,本件協議会が登録決済事業者に対して行った補助について,補助金の交付申請を行い,被告のうち経済産業大臣が相当と認める額について補助金を交付する。 ⑷ 加盟店登録の要件等に関する登録要領等の規定の概要 ア加盟店登録要領の作成等前提事実⑶のとおり,本件事業を実施するに際しては,本件協議会が,本件事業の対象となる決済事業者や加盟店の登録を行うものであるところ,本件協議会は,これらの登録業務に関する手続や,登録の基準等を定めたものとして,平成31年4月版の「キャッシュレス決済事業者登録要領」(乙3), 「加盟店登録要領」(乙4)をそれぞれ作成した。 イ中小事業者の定義等加盟店登録要領は,加盟店として登録の対象となる「中小事業者」の定義に関し,製造業その他,卸売業,小売業及びサービス業に分類した上で,それぞれの業種ごとに規定しているところ,小売業に関し,登録の対象と なる中小事業者の定義としては,「資本金の額又は出資の総額が5000- 5 - 万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人事業主」をいうとされている(甲4[5頁],乙4[同頁])。 他方で,上記登録要領によれば,上記のとおり定義された中小事業者に該当する事業者であっても,「登録申請時点において,確定している(申告済みの)直近過去3年分の各年又は各事業年後の所得の金額の年平均額が 15億円を超える事業者」に該当する事業者については,加盟店登録の対象外とする旨が定められている(4.1.2「課税所得」,甲4[5頁],乙4[同頁])。 ウ協同組合等の取扱いについて加盟店登録要領には,会社形態以外の事業者である農業協同組合(以下「農 とする旨が定められている(4.1.2「課税所得」,甲4[5頁],乙4[同頁])。 ウ協同組合等の取扱いについて加盟店登録要領には,会社形態以外の事業者である農業協同組合(以下「農 協」という。)や生協等(以下「農協・生協等」という。)が加盟店登録の対象となる中小事業者に該当するか否かについて,「特別の法律によって設立された組合又はその連合会」についても,加盟店登録要領4.1.2に該当しない限り,加盟店登録の対象とする旨が定められている(4.1.3「会社形態以外の事業者について」①,以下,この定めを「課税所得要件」とい う。甲4[5,6頁]乙4[同頁])。 エ登録対象外となる中小事業者加盟店登録要領によれば,上記の要件を満たし,同要領にいう「中小事業者」に該当したとしても,下記のいずれかに該当する場合には,登録の対象外とする旨が定められている(加盟店登録要領4.3。以下,下記の各規定 を総称して,「本件登録除外規定」という。)。 (甲4[6,7頁],乙4[同頁])記① 国,法人税法別表第一に規定する公共法人② 金融商品取引法に規定する金融商品取引業者③ 資金決済に関する法律第2条第17項に規定する銀行等(同項第8号か ら第14号までに掲げる者を除く。),同条第8項に規定する仮想通貨交換- 6 - 業者,信用保証協会法に規定する信用保証協会,農業信用保証保険法に規定する農業信用基金協会,中小漁業融資保証法に規定する漁業信用基金協会,信託業法に規定する信託会社,保険業法に規定する保険会社④ 健康保険法,国民健康保険法,労災保険,自賠責保険の対象となる医療等の社会保険医療の給付等を行う保険医療機関及び保険薬局 ⑤ 介護保険法 会社,保険業法に規定する保険会社④ 健康保険法,国民健康保険法,労災保険,自賠責保険の対象となる医療等の社会保険医療の給付等を行う保険医療機関及び保険薬局 ⑤ 介護保険法に基づく保険給付の対象となる居宅サービス施設や施設サービスを提供する介護サービス事業者⑥ 社会福祉法に規定する第一種社会福祉事業,第二種社会福祉事業及び更生保護事業法に規定する更生保護事業を行う事業者⑦ 学校教育法に規定する学校,専修学校,修業年限が1年以上などの一定 の要件を満たす各種学校⑧ 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に規定する「風俗営業」(一部例外を除く),「性風俗関連特殊営業」,「接客業務受託営業」を営んでいる事業者⑨ 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に規定する暴力団等 の反社会的勢力に関係する事業者⑩ 宗教法人⑪ 関税法第42条に規定する保税蔵置場の許可を受けた保税売店⑫ 法人格のない任意団体⑬ その他,本事業の目的・趣旨から適切でないと経済産業省及び補助金事 務局が判断する者以上⑸ 登録決済事業者の類型(甲3,13)アキャッシュレス発行事業者(A型決済事業者)消費者に対してキャッシュレス決済手段を提供する事業者であり,登録加 盟店でキャッシュレス決済で商品を購入した消費者に対し,ポイント等の付- 7 - 与を行う事業者イキャッシュレス加盟店支援事業者(B型決済事業者)中小事業者に対して,必要に応じてキャッシュレス決済手段を提供し,加盟店申請を受け付け,本件協議会に対して加盟店申請を行う事業者なお,自らの店舗で使用できるハウスカードについては 者)中小事業者に対して,必要に応じてキャッシュレス決済手段を提供し,加盟店申請を受け付け,本件協議会に対して加盟店申請を行う事業者なお,自らの店舗で使用できるハウスカードについては,消費者にキャッ スレス決済のためのICカードや電子マネーアプリ等を提供するとともに,事業者としての自らの店舗における決済手段を提供することになるため,A型兼B型決済事業者で登録される。 ウキャッシュレス加盟店管理事業者(準B型決済事業者)キャッシュレス決済サービスの提供を主たる事業とはしないものの,B型 決済事業者と連携し,ショッピングモール等自社の関連商業施設等のテナント等とのみ加盟店契約を締結し,立替払い等を行う事業者であって,加盟店申請を受け付け,本件協議会に対し加盟店申請を行う事業者エコンソーシアム代表申請事業者(代表申請事業者)上記アないしウの複数の事業者を代表し,それらの登録申請を取りまとめ て行う事業者⑹ 原告による本件登録申請等の経緯ア原告は,食材や日用品を供給する店舗を自ら運営するほか,原告の店舗のみで利用できる電子マネー「COPICA(コピカ)」(以下「コピカ」という。)を発行している。 イ原告は,令和元年6月18日,株式会社バリューデザイン(以下「VD社」という。)を本件事業の登録申請手続の代表申請事業者として委託した上で,本件協議会に対し,本件事業のコピカを決済手段とする決済事業者としての登録を申請し,同年8月2日,A型兼B型決済事業者として登録を受けた。 (甲12,35,36) ウ原告は,同年8月29日,VD社に委託して,本件協議会に対し,本件事- 8 - 業に関する加盟店登録申請を行った(以下「本件登録申請」という。)。 た。 (甲12,35,36) ウ原告は,同年8月29日,VD社に委託して,本件協議会に対し,本件事- 8 - 業に関する加盟店登録申請を行った(以下「本件登録申請」という。)。 ⑺ 本件登録拒否通知ア原告は,令和元年9月11日,被告において,生活協同組合コープさっぽろの本件事業に関する加盟店登録が認められなかった旨の報道が同月6日にされたことを受け,被告に対し,原告を加盟店登録から除外しないように 求める申し入れ書を送付した。(甲14,33)イ被告(経済産業省キャッシュレス推進室)は,同月27日,原告に対し,加盟店登録要領のうちの,課税所得要件及び本件登録除外規定⑬の各規定を掲げた上で,本件事業は消費税引き上げ後の需要平準化の観点から,自らの経営資源を活用して価格の引下げを実施できない場合があると考えられる 体力の弱い中小事業者への支援を実施することを目的としていること,原告は,実質的に大企業と同視できるような事業規模と考えざるを得ないことから,加盟店としての登録は認められないと判断する旨を書面で通知した(以下「本件登録拒否通知」という。)。(甲15)⑻ 原告の事業規模等 ア原告の小売業等の売上高は,平成28年度(平成28年4月1日から平成29年3月31日まで)で2389億7300万円,平成29年度(同年4月1日から平成30年3月31日まで)で2424億6500万円,平成30年度(平成30年4月1日から平成31年3月31日まで)で2440億9100万円であり(乙12[2頁]),店舗数は,平成31年3月31日時 点で,141店舗であり(同[16ないし19頁]),従業員数は,同日付で2109人(同[13頁])であって,平成30年度の売上高及び平成31年3月31日時点の店舗 は,平成31年3月31日時 点で,141店舗であり(同[16ないし19頁]),従業員数は,同日付で2109人(同[13頁])であって,平成30年度の売上高及び平成31年3月31日時点の店舗数は,いずれも兵庫県内における小売業の中で最多であった。 イ他方で,原告の課税所得は,平成28年度で10億6074万0934円, 平成29年度で10億0945万5582円,平成30年度で8億6491- 9 - 万2674円であり,直近3年間の課税所得の平均は,課税所得要件を満たしているものであった。(甲27)⑼ 本件訴訟の提訴原告は,令和元年10月28日,神戸地方裁判所に対して本件訴訟を提起し,本件訴状は,同年11月7日被告に送達された。 3 争点及び争点に関する当事者の主張⑴ 争点1(被告が原告の加盟店登録を認めないこととしたことは,国賠法上違法か。)について【原告の主張】ア被告の注意義務の内容 国が一旦決定した政策を撤回し又は修正すること(いわゆる政策変更)には裁量が認められる。しかしながら,国の政策変更の是非と,それにより損害を受けた事業者の救済は別の問題であり,国の政策変更が適法であるとしても,信頼保護の観点から,民間事業者との関係ではこれを違法として不法行為と評価する余地がある。すなわち,その政策変更自体が公益的視点から みて適法であったとしても,①変更前の決定が単に一定内容の継続的な施策を定めるにとどまらず,施策に適合する特定内容の活動をすることを促す個別的・具体的な勧誘を伴うものであり,②上記勧誘に動機づけられて上記活動に入った者がその信頼に反して所期の活動を妨げられ,社会通念上看過することのできない程度の損害を被った場合には,③それがやむを得ない客観 的 伴うものであり,②上記勧誘に動機づけられて上記活動に入った者がその信頼に反して所期の活動を妨げられ,社会通念上看過することのできない程度の損害を被った場合には,③それがやむを得ない客観 的事情によるものでない限り,当該損害を補償する等の代償的措置を講ずることなく施策を変更することは,当事者間に形成された信頼関係を不当に破壊するものとして違法性を帯びるというべきである(最高裁判所昭和56年1月27日民集35巻1号35頁。以下「昭和56年判決」という。)。そしてこのことは,国の行う補助金政策についても妥当するものである。 イ被告の注意義務違反を基礎付ける事情- 10 - 加盟店として登録されるとの原告の信頼が保護されるべきであることa 加盟店登録要領における加盟店登録の要件の解釈本件事業の主眼は,キャッシュレス化を推進するとともに消費税率引上げに伴う消費の低迷を回避してGDP成長率を達成することにある。本件事業の対象加盟店をできるだけ広げるべき要請がある一方 で,財源は限られているため,本件事業では対象加盟店を中小事業者に限定することとし,調整が図られている。このような調整の中で,農協・生協等の取扱いが問題となったものの,被告は,中小企業や個人商店との公平性の確保やキャッシュレス決済の普及という政策効果を地域に行き渡らせるため,課税所得の基準を満たす農協・生協等 についてはすべて本件事業の対象に含めることを決定し,その旨は,加盟店登録要領にも,一義的かつ明確な形で記載されている。 ⒝ 他方で,本件登録除外規定⑬は,事業者の事業内容に着眼して設定された加盟店登録除外事由に関する規定として列挙されていることからすれば,他の加盟店登録除外事由と同様,本件事業の対象とする ⒝ 他方で,本件登録除外規定⑬は,事業者の事業内容に着眼して設定された加盟店登録除外事由に関する規定として列挙されていることからすれば,他の加盟店登録除外事由と同様,本件事業の対象とする にそぐわない性質の事業を営む者を排除する趣旨で設けられた規定というべきであって,同⑬のみ,売上高その他の事業規模の要件を含むと解釈することはできないというべきである。 これに加え,①加盟店登録マニュアル(甲6)において,ⅰ 加盟店の要件を満たす中小事業者に該当するか否かを判断するに当たり, 農協・生協等については,出資金・従業員数のいずれも「確認不要」と記載され(同32頁),ⅱ 判断チェックフローにおいて,「加盟店登録要領4.3の除外業種に該当しますか?」などと,本件登録除外規定が業種に着目して設けられていることが明らかにされており,更に「中小企業組合・団体等に該当しますか?」の設問に「はい」と答 えると,業種・従業員数・資本金は問われずに直ちに課税所得要件ま- 11 - で飛び,課税所得要件を満たせば,「還元率5%の加盟店です」と記載されていること,ⅲ 「課税所得の要件を満たしていれば,資本金・従業員数・業種等に関係なく加盟店登録が可能となる中小業組合や中小団体の具体例」として,原告のような生協が列挙されていること,②本件事業の加盟店登録予定事業者向けの説明資料(甲31)におい ても,本件登録除外規定⑬は,「補助の対象外となる業種・取引」の枠の中に記載されていること(3頁)からしても,同⑬について,事業規模に着目して加盟店登録申請を排除する目的で置かれたと読み取るのは不可能である。 ⒞ 以上のとおり,被告は,本件事業の目的を念頭に置きつつ,生協に ついては,資本金等に関係なく加盟店登録が可能である 店登録申請を排除する目的で置かれたと読み取るのは不可能である。 ⒞ 以上のとおり,被告は,本件事業の目的を念頭に置きつつ,生協に ついては,資本金等に関係なく加盟店登録が可能であるとの一義的な要件を設定しており,これを設定した時点では,文字通り,生協については,課税所得要件を満たせば全て加盟店登録を認める方針であったはずである。 b 原告が加盟店登録を除外されるべきではないこと ⒜ 本件事業は,令和元年10月1日以降における消費税率引上げが決定された後に,その実施が決定されたものであり,小売店舗においては,消費増税や軽減税率導入のための経理システムやレジシステムの改修作業に追われる中で,本件事業に伴うシステム変更を行わなければならない状態であり,本件事業の開始に間に合わせるためのスケジ ュール上の余裕は全くなかった。加盟店登録申請者としては,加盟店登録が認められるのを待って準備を開始する余裕など全くなく,加盟店登録要領等から登録の可否を判断して準備を進めざるを得なかったのであり,これは原告も同様であって,原告の担当者らとしても,生協について,課税所得以外の要件が課されることなど誰も予想して いなかった。そして,原告は,前提事実⑻のとおり,加盟店登録要領- 12 - における課税所得要件を満たしていたのであるから,本件事業の加盟店として登録されなければならないものであった。 ⒝ 他方で,被告は,原告の店舗数等が他の大規模小売事業者と同等かそれ以上のものであるとして,本件登録拒否通知を行っている。しかしながら,被告が比較対象としているのは,全国展開している大規模 小売事業者における,兵庫県内の売上高及び店舗数であり,これらの事業者の国内全体の売上高及び店舗数等と比較しているも ている。しかしながら,被告が比較対象としているのは,全国展開している大規模 小売事業者における,兵庫県内の売上高及び店舗数であり,これらの事業者の国内全体の売上高及び店舗数等と比較しているものではないから,このような比較には意味がない。また,兵庫県内における原告の食品販売高に関するシェアは15.4%であるところ,宮城県内において,上記原告の兵庫県内におけるシェアを3%程度上回るみや ぎ生協は加盟店登録を認められており,県内の売上高や店舗数のシェアに着目して加盟店登録の可否を判断することに合理性はないし,そもそも,上記原告のシェアは,店舗事業と宅配事業を併せたシェアであり,本件事業の対象となる店舗事業に限れば,そのシェアは9%程度に過ぎない。さらに,原告の事業規模に照らしてその課税所得が少 ないのは,一般企業のように営利のみを追求する組織ではなく,地域を支える活動を行っているからであり,むしろそのような生活協同組合こそ,本件事業の対象に組み入れられるべきである。 c 本件事業のための準備を促す個別具体的な要請があったこと被告は,自らポータルサイトを立ち上げ,消費者,決済事業者,加盟 店向けに情報を発信するとともに,ポイント還元対象店舗であることを示すチラシのデザインを指定し,登録された加盟店に発送して店頭への掲示を求め,その広報に係った費用についても補助金を出すこととして加盟店に積極的な対応を求めたほか,各地で被告自ら説明会を開催し,加盟店としての登録を促した。また,被告は,加盟店を増やすため,決 済事業者に対し,個別に催促状を送り,原告の経営陣に対し積極的に加- 13 - 盟店情報の登録を進めるように要請する旨の通知を発出した(甲10,11)。 このように,被告の原告に対 済事業者に対し,個別に催促状を送り,原告の経営陣に対し積極的に加- 13 - 盟店情報の登録を進めるように要請する旨の通知を発出した(甲10,11)。 このように,被告の原告に対する要請は,キャッシュレス決済を推進し,消費喚起を行うという政策を実現するために行われたものであり,その要請内容も,加盟店登録申請することを促すとともに,レジの改修 や消費者向けの広報を求めるなど個別的かつ具体的なものであった。 d 原告は,決済事業者として登録されていること原告は,前提事実⑹イのとおり,自ら発行するコピカについて,決済事業者としての登録を受けているところ,コピカは,原告の店舗のみで利用することのできる決済手段である(同ア)。しかも,原告は,上記登 録に係る申請に当たり,その申請書等の様式に従い,コピカが原告店舗のみで利用することのできる電子マネーであることや,原告店舗における売上高や営業利益等の金額も本件協議会に伝えている。本件協議会は,上記各情報等についても審査対象とした上で,原告を決済事業者として登録したのであって,それにもかかわらず,原告が,店舗売上高や従業 員数等を理由として,加盟店登録を拒絶されることは,まったく想定し得なかったというべきである。 e 小括以上によれば,原告には本件事業の加盟店として登録されるとの信頼が生じており,この信頼は,法的保護に値するものというべきである。 原告が社会通念上看過できない損害を被っていること原告は,本件事業に関して,加盟店として登録した店舗が直ちに公表され,消費者に対するポイント還元を開始することになるから,決済事業者として加盟店登録がされる前に準備行為を行わなければならず,加盟店登録の可否については して,加盟店として登録した店舗が直ちに公表され,消費者に対するポイント還元を開始することになるから,決済事業者として加盟店登録がされる前に準備行為を行わなければならず,加盟店登録の可否については,被告が定めた加盟店登録要領や加盟店登録マニュア ルに従ってこれを判断するしかなかったところ,原告は,これらを精査し- 14 - た上で,令和元年10月1日の本件事業開始日から本件事業に係る制度の適用を受けることができるように入念に準備行為を進めた。にもかかわらず,被告の本件登録拒否通知により,原告が上記準備行為により意図した事業活動は不能となり,原告には,後記⑵【原告の主張】のとおり,多額の損害が発生しており,これらは社会通念上看過することができないもの である。 本件登録拒否通知がやむを得ない事由によるものではないことやむを得ない客観的事情とは,政治的ないし財政的事情などは含まれず,天災その他不可抗力によって政策変更が余儀なくされたような場合のみをさすと解される。しかし,被告が農協・生協等について課税所得要件を 満たせば全て加盟店登録を認める方針を決定した際の政策判断の背景事情は,本件登録拒否通知の時点のものと全く変動しておらず,また,公表済みの加盟店登録要件に付加して新たな要件を追加すべき客観的事情は何ら存在しないにも関わらず,恣意的かつ場当たり的に,原告のような生協を加盟店から除外する旨の判断をしているものであって,やむを得ない 客観的事情があったとは到底いえない。 ウ本件事業の実施主体の点について被告は,本件事業の実施主体は本件協議会であり,被告ではないと主張する。しかしながら,本件協議会の所在地は,2坪ほどの狭小なレンタルオフィスであり,同所に職員は常駐しておらず,本 ついて被告は,本件事業の実施主体は本件協議会であり,被告ではないと主張する。しかしながら,本件協議会の所在地は,2坪ほどの狭小なレンタルオフィスであり,同所に職員は常駐しておらず,本件事業を行うだけの人的・物 的体制が具備されていたとは思われないのであって,このような実体のない本件協議会を介在させることによって国家賠償責任を免れるという帰結は,到底許容されるものではない。そもそも,原告は,被告が加盟店登録要領を公表して加盟店の要件を明らかにし,これを満たせば加盟店として登録されるとの信頼を原告に与えたにも関わらず,原告の加盟店申請を認めず,原告 に準備のために費やした費用相当額の損害を与えた行為が違法であると主- 15 - 張しているものであり,本件事業の実施主体が本件協議会であったとしても,加盟店申請を認めるか否かの判断権限は被告に帰属しているのであるから,違法行為の主体が被告であることを争う余地はない。 エ被告による違法な加害行為上記イのとおり,被告は,加盟店登録要領を策定した時点では,課税所得 要件を満たした全ての生協の加盟店登録を認める方針であったのに,原告の加盟店登録申請を受け,上記要領の明文に反してまで運用を変更した行為は,原告に対する違法な加害行為に当たる。 仮に,被告が,当初から,課税所得要件を満たしていたとしても,一定の規模以上の生協について加盟店登録を認めない方針だったのであれば,被告 としては,出資金額や従業員数等,事業規模に着目する要件を設定することは十分に可能であったのであるから,加盟店登録要領の記載に関する事業者の信頼を保護するため,事業規模について判断する際の具体的な判断要素と判断基準を登録要領等に明示すべきであった。しかるに,被告は,このよ に可能であったのであるから,加盟店登録要領の記載に関する事業者の信頼を保護するため,事業規模について判断する際の具体的な判断要素と判断基準を登録要領等に明示すべきであった。しかるに,被告は,このような明記をしない加盟店登録要領等を用いて,原告に課税所得要件を満たせば 加盟店として登録されるとの信頼を与えて本件事業への参加を呼びかけ,その結果原告に損害を与えたのであるから,上記行為は違法な加害行為に当たる。 【被告の主張】ア本件登録拒否通知は原告の法律上保護された利益を侵害するものではな いこと本件事業は,個別の法令上の規定に基づく事業ではなく,加盟店登録申請についても法令上の根拠はない。そして,本件事業に関し,加盟店の登録は,交付要綱(乙1)第2条にいう「補助事業者」たる本件協議会が行うものであり,被告は,本件協議会が行う補助金事業に対して,本件協議会に補助金 を交付しているものである。また,本件事業に関しては,本件協議会が,間- 16 - 接補助事業者である登録決済事業者に対して,各種費用等を補助することになるが,登録加盟店は,本件協議会から直接補助を受ける地位にもない。被告は,補助事業者等である本件協議会との関係では,補助金適正化法に基づく法律関係を有するものの,間接補助事業者にも当たらない加盟店登録申請者である原告との関係で,同法による法律関係を有するものではない。これ らによれば,本件事業につき,加盟店登録が認められる利益は,補助金適正化法等の法令が保護の対象としているとは解されないから,法律上保護された利益とはいえない。 また,本件登録拒否通知は,原告から被告(経済産業省)に対し,加盟店登録から除外することのないようにとの申入れがあったことに関し,経済産 業省として,原告 律上保護された利益とはいえない。 また,本件登録拒否通知は,原告から被告(経済産業省)に対し,加盟店登録から除外することのないようにとの申入れがあったことに関し,経済産 業省として,原告が加盟店として認められない根拠を事実上説明したもので,被告が加盟店登録を拒否したものではない。加盟店登録要領も法令上の根拠に基づくものではなく,本件協議会が登録の要件等を記載したに過ぎないものであって,本件登録拒否通知が原告の法律上保護された利益を侵害するものともいえない。 イ原告の加盟店登録を認めなかったことは,本件事業の趣旨及び目的に照らして相当であること本件事業の目的は,消費税の増税に伴い,大規模事業者と比較して体力が弱く,自らの経営資源で価格の引下げ等の対応措置を採ることに限界がある中小事業者に対して,需要平準化対策として,消費喚起を後押しすることに ある。そのため,実質的に大企業と同視できる事業規模の事業者は支援の対象外とすることとした。また,農協・生協等について加盟店登録の対象となり得る中小事業者に含めていたのは,原告が主張するような中小企業や個人商店との公平性の確保やキャッシュレス決済の普及という政策効果を地域に行き渡らせるためではなく,農協・生協等にも主として登録の対象となる 中小事業者(中小企業基本法2条にいう中小企業者等)に類する事業規模の- 17 - ものが多く存在することや,こうした農協・生協等が特定の地域の消費の大部分を支えている場合に,これらを一律に対象外とすると,当該地域では本件事業の恩恵を受けられない消費者が生じる可能性があったためであって,実質的に大企業と同視できるような農協・生協等を加盟店の登録対象として予定していたわけではない。 そして,原告は,兵庫県内の小 業の恩恵を受けられない消費者が生じる可能性があったためであって,実質的に大企業と同視できるような農協・生協等を加盟店の登録対象として予定していたわけではない。 そして,原告は,兵庫県内の小売業の中で,売上高及び店舗数のいずれにおいても1位であるし,出資総額360億円,従業員数2109人という点からみても,本件事業が対象とする中小事業者とはいえないことは明らかである。 さらに,本件協議会は,加盟店登録の要件に関して加盟店登録要領(乙4) を定めているところ,そこでは,「本事業の目的・趣旨から適切でないと経済産業省及び補助金事務局が判断する者」は,登録の対象外となることが明記され(本件登録除外規定⑬),加盟店登録に当たっては,登録申請を行う店舗が,上記加盟店登録要領に則って,制度に参加することが可能な中小事業者かどうかを確認することとされ,これらの事項は,あらかじめ周知されてい たものである。しかるところ,本件登録拒否通知は,経済産業省として,原告を加盟店登録することは適切ではないと判断する旨を原告に対し連絡するものであり,本件協議会は,当該意見を踏まえ,原告を加盟店として登録しないこととしたものである。そうすると,被告の行った本件登録拒否通知は,本件事業の目的・趣旨に照らし,相当であるし,加盟店登録要領にも沿 ったものであり,何ら違法と評価されるものではない。 ウ原告の主張について 以上に対し,原告は,昭和56年最高裁判決を引用した上で,被告は,原告に対し,加盟店登録を促すとともに,レジの改修や消費者向けの広報を求めるなど個別的かつ具体的に要請していたにもかかわらず,その後の 政策変更によってその態度を翻すに至った旨主張する。しかし,原告の指- 18 - 摘する被 ジの改修や消費者向けの広報を求めるなど個別的かつ具体的に要請していたにもかかわらず,その後の 政策変更によってその態度を翻すに至った旨主張する。しかし,原告の指- 18 - 摘する被告による通知(甲10,11)は,被告が,原告のみならず登録決済事業者全てに向け発出した一般的な通知文書に過ぎず,原告に対し,加盟店登録が認められることを前提に,個別的かつ具体的に加盟店登録申請を促した事実などない。 原告は,本件登録除外規定⑬は,事業内容に着眼した規定であって,事 業規模に着眼した規定とはいえない旨を主張する。 しかし,加盟店登録要領が,農協・生協等に関して,会社及び個人事業者とは異なり,一律かつ形式的な資本金等の額等の除外規定を定めていないのは,農協・生協等は,会社及び個人事業者とは異なり,中小企業基本法2条の中小企業者等に含まれず,会社とは資本構成や構成員等も全く異 なる生協等に同条の要件を流用することが妥当でない上,他に上記協同組合等に関して一律かつ形式的な除外要件を定めるに当たって参照すべき法令等が見当たらなかったことによるものであり,被告としては,上記のとおり,本件事業の制度趣旨に反する者については,本件登録除外規定を適用し,補助対象としないことを当初から予定していたものである。 また,本件登録除外規定のうち,①ないし⑦及び⑪は,そもそも消費税非課税の取引については,本件事業の制度趣旨が妥当しないため登録対象外とするという基本的考え方に基づくもの,⑧ないし⑩は公的資金を投入するにふさわしくない者は補助対象から除外するとの考え方に基づくもの,⑫は実態の確認が困難で不正の誘発につながるおそれがあるものは補 助対象から除外するという考え方に基づくものであり,こ 投入するにふさわしくない者は補助対象から除外するとの考え方に基づくもの,⑫は実態の確認が困難で不正の誘発につながるおそれがあるものは補 助対象から除外するという考え方に基づくものであり,このように,本件登録除外規定は,様々な観点から,本件事業の制度趣旨に反するものを列挙した規定である。これに加え,⑬の文言上も,事業内容のみに限定した規定となっていないこと,仮に⑬の適用に当たり,事業規模を一切考慮することができないとすれば,法人の種類が会社ではないというのみで実質 的に大企業と同視し得る事業規模の事業者をも補助対象とすることとな- 19 - ってしまい,本件事業の制度趣旨に反することとなる。 したがって,本件登録除外事由⑬は,事業規模の要件を含めて本件事業の制度趣旨に反する者の登録拒否事由を定めた規定であることは明らかというべきである。 原告は決済事業者として登録されたことも,加盟店登録がされるという 信頼を生じさせる事情として主張する。 しかし,本件事業において,登録決済事業者と登録加盟店は別個の存在であり,それぞれの登録要領(甲3,4)に基づいて,別途審査されるのであって,審査基準・審査部門も異なる。また,決済事業者の申請上,登録する加盟店向けサービスの数につき,「自社サービス」と「それ以外」を 分けて記載することは,申請者が,前提事実⑸の決済事業者いずれであるかの識別に必要だからである。さらに,キャッシュレスサービスにつき,「ハウスカード」であるか等の確認欄が設けられているのは,申請者の決済手段が真にキャッシュレス決済手段に当たるか否か,すなわち,当該申請者が真にキャッシュレス決済事業者に該当するか否かの判別に必要な ためである。そして,申請者の従業員数,資本金,売 請者の決済手段が真にキャッシュレス決済手段に当たるか否か,すなわち,当該申請者が真にキャッシュレス決済事業者に該当するか否かの判別に必要な ためである。そして,申請者の従業員数,資本金,売上高等を記載する欄を設けているのは,決済事業者登録要領の要件である安定的な財務基盤を有しているか否かの審査に必要なためである。 そのため,原告が上記記載のある必要書類を提出し決済事業者として登録されたことをもって,原告の加盟店登録されることについての信頼が醸 成されることにはならない。 エ以上によれば,被告の行った本件登録拒否通知が,国家賠償法上違法であるということはできない。 ⑵ 争点2(原告の加盟店登録が認められなかったことと相当因果関係のある損害の発生及びその数額)について 【原告の主張】- 20 - 被告の上記違法な加害行為により,原告は,以下の損害を被った。 アコピカの増刷費用合計2429万3520円 本件事業の準備行為としての増刷令和元年7月当時,原告の店舗を利用した3か月間の絶対客数(延べ人数ではない)は約100万人と推定され,そのうちキャッシュレス決済を 使用した客数は約22万人であり,うち78万人が現金決済であると推定された。そして,本件事業が開始された場合,既にコピカを保有している組合員であっても,その家族が自分用のコピカを所持することも想定されたため,新たにコピカを配布する対象層は,現金決済をしていた78万人の組合員のほか,原告店舗を利用する100万人の組合員の家族であった。 そこで,原告は,需要の予測が困難な中,平成30年度末当時の在庫が約13万枚であったこと,在庫切れとなれば入荷までに3か月を要すること,増刷枚数を多少減らしても費用が大きく変わらない った。 そこで,原告は,需要の予測が困難な中,平成30年度末当時の在庫が約13万枚であったこと,在庫切れとなれば入荷までに3か月を要すること,増刷枚数を多少減らしても費用が大きく変わらないことも踏まえて,必要かつ十分な枚数として増刷枚数を70万枚と決定した。 しかし,上記のとおり,原告が加盟店登録をされなかったことにより, 増刷した分の大半は利用される可能性がなくなった。そのため,後記とおり原告が当初から増刷予定であった10万枚を控除した分の増刷費用は,相当因果関係のある損害に当たる。 なお,当初の予定どおり,コピカについて,新カードの発行を令和3年8月から開始し,概ね令和4年3月までに旧カードとの切り替えを完了さ せ,旧カードの運用は同年6月で完全に停止することに決まった。そして,増刷したコピカについては,保管費用が嵩むことから,一定の在庫を残し,44万枚を令和3年3月10日に廃棄したため(甲39),その増刷費用については損害が確定している。 当初の増刷予定枚数 以下の交付実績・予測から平成31年度は10万枚を増刷予定であった。 - 21 - 平成29年度交付(実績) 約8万枚平成30年度交付(実績):約8万枚,期末在庫:約13万枚平成31年度交付(予測):約10万枚,期末在庫:約3万枚令和2年度交付(予測):約10万枚,期末在庫:約△7万枚令和3年度第一四半期 交付(予測):約2.5万枚,期末在庫:約△9.5万枚 計算式37.49円(1枚当たりの増刷費用)×60万枚(70万枚[実際に原告が増刷した枚数]―10万枚[本件事業と関係なく増刷予定であった枚数])×1.08(税)=2429万3520 計算式37.49円(1枚当たりの増刷費用)×60万枚(70万枚[実際に原告が増刷した枚数]―10万枚[本件事業と関係なく増刷予定であった枚数])×1.08(税)=2429万3520円 イチラシ作成費用合計179万7120円原告は,組合員に対して,現金決済からコピカ利用への移行を促すため,レジ通過時にチラシを配布することとし,被告が指定した書式に沿ってチラシを作成した。そして,週末(金曜日から日曜日)の総客数が50万人から55万人であることから,令和元年9月13日から同年10月13日までの 間,これらの組合員に5回配布することとし,同年8月13日に260万枚のチラシを発注した。 また,上記期間経過後も各店舗において継続的に配布することも想定されたため,本件事業が終了する3か月前までに不足が生じないように,同年9月3日,80万枚を追加発注した。 そのため,チラシ作成費用は,相当因果関係のある損害に当たる。 ウレジシステムの改修費用合計156万6000円POSレジシステムの改修費も,被告が加盟店登録する事業者に対して改修を求めていたものであるし,原告が令和元年10月1日から運用を開始するためには,本件登録申請に先立って準備を進めざるを得ないのであるから, 同費用は相当因果関係のある損害に当たる。 - 22 - 【被告の主張】争う。 ア原告は,本件登録申請すらしておらず,本件協議会による加盟店登録の可否の審査も開始していない段階において,自らの判断で,その主張する各費用を支出したものに過ぎない。また,上記⑴【被告の主張】のとおり,被告 は,原告に対し,原告の加盟店登録が認められるかのような言動をしたことはないし,加盟店登録を前提 の判断で,その主張する各費用を支出したものに過ぎない。また,上記⑴【被告の主張】のとおり,被告 は,原告に対し,原告の加盟店登録が認められるかのような言動をしたことはないし,加盟店登録を前提とした準備を進めるように個別的に促したものでもない。そうすると,上記各費用は,原告が,加盟店登録が認められる以前に,自らの判断で拠出したものであって,加盟店登録が認められなかったことによって生じた費用とはいえないから,本件登録拒否通知と因果関係を 有する損害とはいえない。 イコピカの増刷分について,コピカは,原告の各店舗で使用可能な電子マネーであり,本件事業の加盟店登録がされなかったとしても,今後,原告の各店舗で電子マネーでの支払いを希望する顧客によって上記増刷分が使用される可能性があるのであるから,そもそも損害とはいえない。また,原告は, 決済事業者として登録された後,消費者還元補助事業への交付申請に際しては,本件事業の実施で増加すると想定されるコピカ所有者(想定会員数の増加分)を約21万人と見込んでいた。さらに,本件事業の実施の有無にかかわらず,原告は,従前からコピカを年間約10万枚交付する予測の下に増刷予定を立てていたのであるから,70万枚の増刷は明らかに過大である。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実第2の2の前提事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ⑴ 「消費税率の引き上げに伴う価格設定について(ガイドライン)」の発出 令和元年10月1日に消費税が10%に増税されることを受けて,平成30- 23 - 年11月28日,内閣官房等は上記ガイドラインを発出した。同ガイドラインにおいては,消費税率引上げ後の一定期間に本件事業を行う方針であること,これにより中小 とを受けて,平成30- 23 - 年11月28日,内閣官房等は上記ガイドラインを発出した。同ガイドラインにおいては,消費税率引上げ後の一定期間に本件事業を行う方針であること,これにより中小事業者は,消費税率引上げ前後の需要に応じて柔軟に価格設定できる幅が広がるようになること,大企業においても,消費税率引上げ後に自らの経営資源を活用して値引きなど自由に価格設定を行うことに制約はない こと等,価格設定に関する考え方が示された。(乙6)⑵ 決済事業者登録要領,加盟店登録要領等の作成・公表アキャッシュレス決裁事業者登録要領の公表等被告(経済産業省)は,平成31年3月12日,本件事業を企画・立案する中で,キャッシュレス決済事業者の登録要件を予め明らかにし,その仮登 録を行えるようにして,予算成立後の制度の執行を円滑かつ迅速に行うため,キャッシュレス決済事業者登録要領(乙2)を作成・公表した。そして,同要領においては,公表後に変更される可能性があることを留保した上で,本件事業の内容,キャッシュレス決済事業者登録要件,対象となる中小事業者が定められていたが,この時点では,農協・生協等が対象となるかは明らか ではなかった。(乙2,弁論の全趣旨)イ加盟店登録要領,加盟店登録マニュアルの公表本件協議会は,前提事実⑶アのとおり,平成31年4月版のキャッシュレス決済事業者登録要領(乙3)及び加盟店登録要領(乙4)を作成し,同月12日,被告(経済産業省)が,経済産業省ホームページに開設された本件 事業の特設ページにおいて各要領を公表した。また,本件協議会は,令和元年5月16日,上記加盟店登録要領の要件・登録フローを具体化した加盟店登録マニュアルを作成し,同マニュアルも上記登録要領と同様に公表された。 その後, いて各要領を公表した。また,本件協議会は,令和元年5月16日,上記加盟店登録要領の要件・登録フローを具体化した加盟店登録マニュアルを作成し,同マニュアルも上記登録要領と同様に公表された。 その後,キャッシュレス決済事業者登録要領の8月版(甲3)及び加盟店登録要領の7月版(甲4)が公表され,加盟店登録マニュアルについても改訂 版が公表された(甲6,乙5,弁論の全趣旨)- 24 - ⑶ 加盟店登録要領及び加盟店登録マニュアルの内容ア加盟店登録申請を行う登録決済事業者に対する要請加盟店登録要領及び加盟店登録マニュアルでは,加盟店登録の申請に当たっては,キャッシュレス決済事業者登録要領や加盟店登録要領等の内容を確認して,よく理解し,申請を行う登録決済事業者は,中小事業者の判定及び 基本情報登録を行うために必要な情報を収集して,加盟店登録要領に則り,本件事業の制度に参加可能か否かを判定することとされており,決済事業者向け説明会資料(甲13[40頁])にも,同様の記載がある。(甲4[13頁],6[9頁],乙4[13頁],5[6頁])イ農協・生協等の中小事業者の該当要件に関する記載 加盟店登録要領には,加盟店登録の対象となり得る農協・生協等の中小事業者の該当要件として,前提事実⑷ウの内容の課税所得要件が明記されている。 加盟店登録マニュアルにおいては,「【STEP2】対象加盟店となりうるかの確認」の項目において,中小事業者の該当性につき,農協・生協等 は,「課税所得」の欄にのみ「○」があり,「資本金・出資金」,「従業員数」,「大企業資本」の欄が,加盟店業態が中小企業,個人事業主,一般社団法人等及び公益財団法人等である場合とは異なって,いずれも「確認不要」とされている(甲6[32頁])。 上記 金」,「従業員数」,「大企業資本」の欄が,加盟店業態が中小企業,個人事業主,一般社団法人等及び公益財団法人等である場合とは異なって,いずれも「確認不要」とされている(甲6[32頁])。 上記項目には,加盟店に該当するか否かの確認を行う際に用いる「中小 事業者判断チェックフロー」が掲載されている。同チェックフローにおいては,「加盟店登録要領4.3の除外業種に該当しますか?」として本件登録除外規定に該当するかを確認する質問から始まり,これに「いいえ」と答えると,「中小企業組合・団体等に該当しますか?」の質問があり,これに「はい」と答えると,「業種・従業員数・資本金は登録要件を満たします か?」の質問を飛ばして,「課税所得直近3年平均は15億円未満ですか?」- 25 - の質問に移行し,これに「はい」と答えれば,「還元率5%の加盟店です」に達して,加盟店の対象であることが確認できるようになっている(甲6[33頁])。 上記項目中,「⑧中小事業組合・中小団体等」には,課税所得要件を満たせば,資本金・従業員数・業種等に関係なく加盟店登録が可能となる中小 事業組合や中小団体等の具体例として,農協や生協が挙げられている(甲6[45頁])。 上記項目中,本件登録除外規定の説明では,本件登録除外規定の⑬については,その文言のみが挙げられており,注釈欄には何ら記載がない(甲6[56頁])。 ウ本件登録除外規定⑬が記載された項目等本件登録除外規定⑬は,加盟店登録要領及び加盟店登録マニュアルでは,「4.3 登録の対象外となる中小事業者」の項及び「4.4 消費者還元の対象外となる取引」の項に挙げられており,国(経済産業省)が作成した加盟店登録予定事業者向けの説明資料では,業種・取引の欄に記載されてい 録の対象外となる中小事業者」の項及び「4.4 消費者還元の対象外となる取引」の項に挙げられており,国(経済産業省)が作成した加盟店登録予定事業者向けの説明資料では,業種・取引の欄に記載されてい る。(甲4,6,31)⑷ 本件事業の実施スケジュール消費者還元期間は,前提事実⑶アのとおり,令和元年10月1日から令和2年6月30日までであるところ,加盟店登録申請受付期間は,令和元年5月中旬から令和2年4月下旬までと予定されていた。そして,原告のようなハウス カードの発行者は,A型兼B型決裁事業者として,各決裁事業者の登録を受けた後で,加盟店の登録を申請する必要があり,A型決裁事業者の登録審査は令和元年7月から行われることとなっていた。また,同年7月版の加盟店登録要領では,原則的な申請者とされるB型又は準B型決済事業者からの加盟店登録申請に対する同事業開始前の本件協議会による加盟店情報の審査は,同月から 順次行うことが予定されていた。さらに,同年9月に被告(経済産業省商務・- 26 - サービスグループキャッシュレス推進室)が作成した中小・小規模店舗向け説明資料では,同月6日までに登録決済事業者から加盟店登録の必要情報が不備なく提出されれば,同年10月1日から消費者還元の開始が可能であるが,間に合わなかった場合は,10月1日から開始できない場合があると記載されていた(甲4[16頁],13[14頁,21頁],31[8頁])。 そして,加盟店として登録された店舗は,登録決定通知後,ホームページ及び本件協議会が情報提供を行う第三者のホームページ等に掲載されて公表されることとされた。(甲4[16頁],31[7頁])⑸ 本件事業への参加決定及び本件登録申請ア原告が本件事業への参加を決定した経緯 供を行う第三者のホームページ等に掲載されて公表されることとされた。(甲4[16頁],31[7頁])⑸ 本件事業への参加決定及び本件登録申請ア原告が本件事業への参加を決定した経緯 原告は,日本生活協同組合連合会(以下「日生協」という。)の会員であるところ,日生協は,平成31年3月26日,農協・生協等についても本件事業の対象になると報道されたことを受けて,経済産業省へ情報提供を要請するなどして,情報収集を行っていた。そして,同年4月12日,日生協から原告ら会員に対して,上記⑵イのとおり,本件事業の対象範囲や加盟店登録 要領が公表され,協同組合等の登録要件が明らかになった旨の報告があったため,原告の本件事業の担当者であるZは,同月13日に経済産業省のホームページを閲覧し,前提事実⑷ウの登録要件を確認した。Zは,原告の経理担当者に問い合わせて,原告の直近過去3年度分の課税所得が15億円を下回っており,課税所得要件を満たしていることを確認して,原告の役員らと 情報共有を行った。その後,同月26日には,原告として本件事業に参加することが原告の政策検討会に上程され,令和元年5月7日には,常勤理事会に上程されて,本件事業に参加する方針が決定された。(甲5,33,弁論の全趣旨)イ説明会への参加及びその内容 Zは,同年5月20日,本件協議会が大阪で開催したキャッシュレス決済- 27 - 事業者向けの説明会に参加した。その際,加盟店に登録される要件につき,農協・生協等でも,その規模によっては本件事業の対象外となる旨の説明がされることはなかった。また,Zは,同年7月22日,本件協議会が大阪で開催した説明会に参加し,同説明会では個別相談も実施されため,Zも原告の名刺を渡して,個別相談を受けた。しかし, となる旨の説明がされることはなかった。また,Zは,同年7月22日,本件協議会が大阪で開催した説明会に参加し,同説明会では個別相談も実施されため,Zも原告の名刺を渡して,個別相談を受けた。しかし,同説明会及び個別相談のいず れにおいても,農協・生協等でも,その規模によっては本件事業の対象外となる旨の説明がされることはなかった。 (甲13,18,33,弁論の全趣旨)ウ本件登録申請原告は,同年7月24日改訂版の加盟店登録マニュアルにおいて,コンソーシアム代表申請者がコンソーシアム傘下のB型決済事業者の加盟店登録 を代行できる機能について追加予定と記載されていたため,当該機能が追加されるのを待っていた。しかし,同マニュアルの改訂により,同機能の追加時期は未定と変更になり,コンソーシアム代表申請者が傘下のB型決済事業者のID・パスワードを使用して加盟店登録を進めるようにと記載されていたため,原告は,前提事実⑹ウのとおり,同年8月29日,本件登録申請を 行った。(甲6[85頁],33,弁論の全趣旨)⑹ 本件事業に向けた原告の準備行為アレジシステム改修の経緯等 原告は,令和元年5月頃,本件事業に参加するに当たり,どのようなキャッシュレス決済の手段を採用して,その場合の準備やコスト等を検討し ていたところ,原告の本件事業に関するシステム構築を担当していたYが,本件協議会担当者に電話で確認した際,システム構築はクレジットデータを処理している業者に依頼するように言われたため,原告のレジシステムを構築している東芝テック株式会社(以下「東芝テック」)と打ち合わせを行った。もっとも,同社が本件事業の対象決済事業者ではなかったため, 原告が本件事業に参加するには,新たに登録決済事業者と契約をして,1- ク株式会社(以下「東芝テック」)と打ち合わせを行った。もっとも,同社が本件事業の対象決済事業者ではなかったため, 原告が本件事業に参加するには,新たに登録決済事業者と契約をして,1- 28 - 000台を超える店内のレジにクレジットカード読取り端末を設置しなければならないことが判明したが,これは難易度が高いことから,原告は,クレジットカードを追加することは断念し,本件事業の対象となる決済手段をコピカに一本化することを決定した。(甲32,弁論の全趣旨)原告は,電子マネーのシステム運用をVD社に委託していたところ,本 件事業開始前の原告のレジシステムでは,レジの売上情報がVD社に送信され,売上がコピカの利用による場合には,VD社が5%相当のボーナスバリュー(次回の買い物に使えるポイント)を付与する機能が備わっていたことから,令和元年5月23日,上記機能を本件事業でもそのまま使用できるか確認した。この結果,コピカには売上金額の5%相当のポイント が付与され,ポイント残額は確認できるが,一度の買物でいくらのポイントが付与されたのか還元額が表示されないことが判明した。そして,本件事業においては,決済事業者向け説明資料(甲13[43頁])にも記載のある通り,還元額をレシートに表示することを求められていたことから,レジシステムの改修が必要になった。(甲32,33,弁論の全趣旨) 原告は,令和元年10月1日からの消費税率引上げにおける軽減税率導入に対応するとともに,同日から本件事業を開始するためには,同年8月には一通りのレジシステムを完成させてテスト段階に入り,同年9月中旬に完成したレジシステムを1店舗に導入して動作確認を行い,同月25日までに全店舗に導入してレジシステムを更新する必要があった。そこで, のレジシステムを完成させてテスト段階に入り,同年9月中旬に完成したレジシステムを1店舗に導入して動作確認を行い,同月25日までに全店舗に導入してレジシステムを更新する必要があった。そこで, 原告は,東芝テックから上記改修の見積もりを取得の上,同年6月20日,同社に対して,本件事業に係るPOSシステム対応につき,①軽減税率対応ボーナスバリューテスト作業を27万円(税込み),納入期日を同年9月30日まで,②ボーナスバリュー印字対応を129万6000円(税込み),検収期日を同日までとして発注した。(甲23の1・2) イコピカカード増刷の経緯等- 29 - 原告は,本件事業に関する会議を行っていたところ,令和元年7月8日,直近3か月間の絶対客数(延べ人数ではない)は約100万人と推定され,そのうちキャッシュレス決済を使用した客数は約22万人(うちコピカ利用の組合員は11万2000人)であり,利用客のうち78万人が現金決済であったことから,コピカの新規利用数を最大78万人と期待した。そこで, 原告は,平成30年度末のカード在庫が約11万枚であったことも踏まえ,在庫切れをさせないことを最優先とし,強めの発注起案として増刷枚数を70万枚と決定した。(甲37)そして,原告は,もともと発注予定であった10万枚と併せて,同月19日,大日本印刷株式会社に対し,コピカカード70万枚を代金2847万2 040円(税込み)で注文した。(甲21)ウ本件事業のチラシ発注の経緯等原告は,本件事業開始に当たって,コピカの利用を組合員に促すため,令和元年9月13日から同年10月13日までの間,買い物客にチラシを配布することとし,株式会社甲南堂に対して,同年8月13日,レジで配布する 「ポイント還元実施お知らせ」のチラ 員に促すため,令和元年9月13日から同年10月13日までの間,買い物客にチラシを配布することとし,株式会社甲南堂に対して,同年8月13日,レジで配布する 「ポイント還元実施お知らせ」のチラシ260万枚を101万4000円で発注し,同年9月3日には,同チラシ(改訂版)80万枚を60万円で発注し,デザイン・製作費5万円を含め,合計166万4000円(税込み179万7120円)を要した。(甲22の3,37,38,弁論の全趣旨)⑺ 原告の決済事業者としての登録等 ア決裁事業者としての登録,補助金交付決定原告は,前提事実⑹イのとおり,令和元年8月2日,原告店舗のみで利用できるコピカについて決済事業者として登録を受けたところ,この申請の際に提出した申請書等には,その様式に従い,コピカが原告店舗のみで利用できる自社サービス及びハウスカードの電子マネーであることや,原告店舗に おける売上高や営業利益等の金額も記載した。また,原告は,登録決済事業- 30 - 者として,同年9月7日,本件協議会に対し,本件事業の補助金交付申請を行い,その後,書類不備を是正して同月25日に再度交付申請を行った。本件協議会は,同月30日,登録決済事業者としての原告に対して,交付予約額として補助金21億1658万0379円(消費者還元補助のみ)を決定した。(甲20,35,36,乙22,弁論の全趣旨) イコピカ利用会員数の想定原告においてコピカを利用する会員数については,本件事業開始前の令和元年9月の実績値は11万4708人であったところ,原告は,本件事業終了時の令和2年6月時点における想定会員数を32万3976人として上記補助金交付申請を行った。(乙22,弁論の全趣旨) ⑻ 被告(経済産業省)の登録決済事業者に対する通 ,原告は,本件事業終了時の令和2年6月時点における想定会員数を32万3976人として上記補助金交付申請を行った。(乙22,弁論の全趣旨) ⑻ 被告(経済産業省)の登録決済事業者に対する通知被告(経済産業省)は,令和元年8月15日,原告を含む登録決済事業者に対して,「注意喚起とご協力依頼」と題するメールおよび文書を送付し,登録決済事業者による必要情報の提出やシステムテストの実施の遅れに伴い,一部の加盟店登録が進められない状況にあるとして,加盟店登録に必要な情報提出や システムテストなどの環境整備等,制度の円滑な実施への協力を依頼した。また,被告(経済産業省)は,同月19日,原告を含む登録決済事業者に対して,上記同様の協力を依頼したほか,加盟店からの登録決済事業者に制度申し込みを受け付けてもらえないといった声が多くなっているため,制度参加の問い合わせがあった場合には,迅速かつ丁寧な対応を依頼した。(甲10,11,乙2 1)⑼ 被告による本件登録拒否通知の送付被告は,加盟店登録要領等を公表した時点では,課税所得要件を満たした全ての協同組合等の加盟店登録を認める方針であったところ,原告の加盟店登録申請後,売上高など事業規模に関する事情を考慮する方針に変更し,原告に対 して,前提事実⑺イのとおり,本件登録拒否通知を送付し,これにより本件協- 31 - 議会は,原告を加盟店として登録しなかった。(甲15,弁論の全趣旨)⑽ みやぎ生協の加盟店登録等兵庫県内における原告の食品販売高に関するシェアは15.4%で2位であるところ,みやぎ生協の宮城県内におけるシェアは,原告と比較して3%程度上回っているが,みやぎ生協については,加盟店登録が認められた。(甲33, 34,弁論の全趣旨) 2 争点 4%で2位であるところ,みやぎ生協の宮城県内におけるシェアは,原告と比較して3%程度上回っているが,みやぎ生協については,加盟店登録が認められた。(甲33, 34,弁論の全趣旨) 2 争点1(被告が原告の加盟店登録を認めないこととしたことは,国賠法上違法か。)について⑴ 判断枠組みア原告は,上記第2の3⑴【原告の主張】アのとおり,昭和56年判決を引 用して,被告が加盟店登録の対象となる要件を変更したことは,原告の信頼を破壊するものとして国賠法上違法である旨を主張する。ところで,昭和56年判決は,地方公共団体が定めた一定内容の継続的な施策が,特定の者に対して上記施策に適合する特定内容の活動をすることを促す個別的,具体的な勧告ないし勧誘を伴うものであり(①),かつ,その特定内容の活動が相当 長期間にわたる上記施策の継続を前提としてはじめてこれに投入する資金又は労力に相応する効果を生じうる性質のものである場合(②)において,上記勧告等に動機づけられて上記活動又はその準備活動に入った者が上記施策の変更により社会観念上看過することができない程度の積極的損害を被ることとなるときは,これにつき補償等の措置を講ずることなく上記施策 を変更した地方公共団体は,それがやむを得ない客観的事情によるのでない限り,上記の者に対する不法行為責任を免れないと判示して,村が特定の者に対し工場誘致を決定した後に,新たに工場建設に反対する住民の支持を得て当選した新村長が,工場建設の途中でこれに対する協力を拒否したことにつき,違法な加害行為に当たるとしたものである。 これに対して,本件では,消費税率の引上げに伴う施策として全国的に展- 32 - 開される本件事業の加盟店登録要件に関して,原告は,被告が一般的に加盟店登録 当たるとしたものである。 これに対して,本件では,消費税率の引上げに伴う施策として全国的に展- 32 - 開される本件事業の加盟店登録要件に関して,原告は,被告が一般的に加盟店登録要領等を公表してその内容を明らかにし,原告に対し加盟店登録が行われるとの期待ないし信頼を惹起する行為をしたにもかかわらず,その後,被告が方針を変更して,原告の加盟店登録を認めないと判断したことにより,上記信頼に基づき支出した準備費用が無駄になったとして,その費用相当額 の賠償を求めるものであるから,上記判決とは事案が異なり,その示す規範がそのまま妥当するものとは解されない。そして,行政主体が一定内容の施策を決定した場合でも,その施策が社会情勢の変動等に伴って変更されることがあることは当然であって,かかる施策が私企業の活動の前提になる場合でも,私企業は,将来の諸情勢について自ら立てた見通しに基づいて経済活 動を行うものであり,単なる投機上の見込み違いの場合について法的救済を与える必要はない。しかしながら,昭和56年判決は,行政主体がその判示するような具体的な動機づけを行い,そのような動機づけによって行政主体が実施する施策に適合する活動やその準備に入った者の当該施策が維持されるという信頼に対しては法的な保護が与えられなければならず,かかる信 頼を破壊してその者に対し損害を与える行為については違法性が認められるというものである。そして,行政主体が行う施策は多種多様であり,その趣旨・目的,内容,対象・範囲等の違いから,私人の経済活動との関わり方も施策ごとに異なるものと考えられるから,上記判決のいう法的保護に値すべき私人の信頼は,同判決が判示する上記①,②の事情が存する場合に限っ て形成され得るものとは解されない。そこで,本件で 方も施策ごとに異なるものと考えられるから,上記判決のいう法的保護に値すべき私人の信頼は,同判決が判示する上記①,②の事情が存する場合に限っ て形成され得るものとは解されない。そこで,本件では,上記判決が示す考慮すべき事情を参考にして,原告について,被告の本件事業に適合する特定内容の活動や準備を促す動機づけによって,法的保護に値する信頼を形成するに至ったか否か,かかる信頼に基づいて本件事業に適合するために相当の費用負担等を伴う活動又は準備を行ったか否かをまず検討し,次いで,本件 事業の加盟店登録要件に関する被告の方針変更の有無及びその点が国賠法- 33 - 上違法といえるか否かについて検討することとする。 イなお,被告は,上記第2の3⑴【被告の主張】アのとおり,原告が加盟店として登録される利益は法律上保護された利益ではない上,本件登録拒否通知も法令上の根拠規定はなく,被告が原告を加盟店として認められない理由を事実上説明しただけのもので,法律上保護された利益を侵害するものでは ない旨を主張する。 しかしながら,原告は,上記のとおり,被告が原告に対し加盟店登録が行われるとの期待ないし信頼を惹起する行為をしたにもかかわらず,その信頼を破壊して原告に損害を与えた行為をもって,国賠法上の違法行為と主張するものであるから,その主張する被侵害利益は,加盟店として登録される利 益ではなく,被告が原告に与えた信頼である。したがって,加盟店として登録される利益の要保護性等は問題となるものではなく,上記被告の主張は理由がない。 ⑵ 本件についての検討ア原告の加盟店登録の対象であるという信頼の程度 本件事業において,中小事業者が加盟店の登録申請を行うに当たっては,同申請を行う登録決済事業者において,キャ ⑵ 本件についての検討ア原告の加盟店登録の対象であるという信頼の程度 本件事業において,中小事業者が加盟店の登録申請を行うに当たっては,同申請を行う登録決済事業者において,キャッシュレス決済事業者登録要領や加盟店登録要領を十分に確認して本件事業に参加可能か否かを判定することとされているから(前記1⑶ア),登録を受けようとする中小事業者としては,被告が公表した同要領の記載内容を信用して,加盟店登録 の対象となるか否かを判断するほかない。そして,加盟店登録要領等には,加盟店登録の対象となる中小事業者の要件に関して,事業者の類型ごとに詳細に記載されているところ,農協・生協等については,課税所得要件を満たす限り,加盟店登録の対象となる旨が明確かつ具体的に記載されている(前記。また,加盟店登録マニュアルにおいても,農協・生協 等については,資本金・出資金,従業員数,大企業資本の確認は要求され- 34 - ず,課税所得要件を満たせば,加盟店登録の対象となると記載されている(同さらに,本件登録除外規定⑬は,事業の主体や内容の観点から本件事業の加盟店の登録対象外とする旨を定める規定(①~⑫)に続けて置かれており,本件登録除外規定⑬を適用することにより,店舗を構えて小売業を営む農協・生協等が,その事業規模の観点から,加盟店 登録の対象外となる旨の記載は,加盟店登録要領及び加盟店登録マニュアルのいずれにも存在しない。 このような記載は,一般人の普通の注意と読み方を基準とすれば,農協・生協等が,登録加盟店となり得る中小事業者に該当するか否かは,専ら課税所得要件によって判定され,これを満たす以上は,加盟店登録の対象と なることが定められていると理解されるものといえ,本件登録除外規定⑬が存在することで, 中小事業者に該当するか否かは,専ら課税所得要件によって判定され,これを満たす以上は,加盟店登録の対象と なることが定められていると理解されるものといえ,本件登録除外規定⑬が存在することで,農協・生協等についても,その事業規模を理由として,登録の対象外となる可能性があると読み取ることはできないものということができる。また,その他の資料や本件協議会による説明会の内容も,上記の加盟店登録要領等の記載内容と異なるものではなかったのであり (前記1⑸イ),原告をして,本件登録拒否通知を受けるまで間,その事業規模の観点から,加盟店登録の対象外となり得るとの疑いを生じさせるような事情はなかったことが認められる。 そして,被告は,経済産業省の特設ホームページにて加盟店登録要領等を広く公表し,その内容等に関して本件協議会が全国各地で行う説明会を 告知したほか,原告を含む登録決済事業者に対して,加盟店登録に必要な情報の提出や環境整備依頼している(前記1⑻)ところ,これらは,一般的に本件事業の対象となり得る全事業者や登録決済事業者の全体に対して行われたものであるから,被告が原告に対して,個別的に加盟店登録申請等を促したとまでみることはできない。 しかし,のとおり,被告による加盟店登録- 35 - 要領等の公表後は,同要領等の記載に従って,事業者側で自ら資料を確認して加盟店登録の対象となるか否かを判断することが予定されており,また,本件事業は,その内容上,当然に,これに参加する事業者において,ポイント還元に必要な決済システムの新設や改修,利用客への広報等の準備を行うことを予定するものであったから,原告としては,上記の加盟店 登録要領等の記載を踏まえて課税所得要件を満たすことを確認し,加盟店登録を受けられるものと の新設や改修,利用客への広報等の準備を行うことを予定するものであったから,原告としては,上記の加盟店 登録要領等の記載を踏まえて課税所得要件を満たすことを確認し,加盟店登録を受けられるものと信頼した上で,後記イのとおり,本件事業開始に向けて必要な準備を進めていくほかなかったものといえる。そして,上記のとおり,加盟店登録要領等の記載内容からは,原告をして加盟店登録の対象外となることを疑わせる余地が全くなかったことも踏まえると,被 告が,そのような記載のある加盟店登録要領等の公表をしたことをもって,原告が加盟店登録の対象であると信頼することにつき,相当の根拠を付与したものといえ,この点は,施策に適合する特定内容の活動や準備を促す個別的な勧誘等があった場合と同視し得るような事情ということができる。 さらに,原告は,売上高や営業利益等の情報も記載した上で,原告店舗でのみ利用できるコピカについて決済事業者(A型兼B型決済事業者)として申請して,本件協議会から決済事業者として登録され,補助金交付予約決定も受けている(前提事実⑹イ,認定事実⑺ア)。これらの事情は,上 ぞれ登録要件が異なり,審査も別途行われることから,そのことから直ちに原告が加盟店登録を受けることが確定していたとまでいうことはできない。もっとも,原告の立場としてみれば,原告は,コピカの利用店舗としての原告が加盟店登録を受けることについての信頼を有した上で,決裁事業者の登録を申請しており,加盟店登録が受けられ なければ,決裁事業者として登録を受ける意味が全くなくなるものであり,- 36 - このことを前提としてコピカによるポイント還元を可能とするために必要な準備を進めていたものであるところ,かかる経緯は,原告の上記信頼が高度なものとなって 全くなくなるものであり,- 36 - このことを前提としてコピカによるポイント還元を可能とするために必要な準備を進めていたものであるところ,かかる経緯は,原告の上記信頼が高度なものとなっていたことを基礎付ける事情といえる。そして,本件事業においては,ポイント還元に利用できる決済手段として,コピカのようなハウスカードも含まれていたのであるから(前提事実⑸),これを発 行する原告のような事業者が,決裁事業者として登録される以上は加盟店としても登録されると信頼し,本件事業に適合するための準備行為を進めていくことは,被告においても当然に想定されていたということができる。 以上によれば,加盟店登録要領等の記載によって課税所得要件を満たすことを確認した原告が,本件事業の加盟店登録の対象となると信頼し,そ れを前提とした準備を行ったことは当然の経緯ということができ,このような原告の信頼は,被告が加盟店登録要領等を公表したことに基づいて形成されたものと認められる。 そうすると,本件においては,被告から原告に対し,加盟店の登録を受けた上で本件事業に参加してポイント還元を行うための準備を行うこと に向けられた明確な動機づけ行為があり,これによって原告が加盟店登録の対象であることについて,高度の信頼を形成したものと評価できる。 イ本件事業開始に向けた原告の準備行為上記アのとおり,原告は,加盟店登録の対象であることを信頼して,本件事業開始日の令和元年10月1日から消費者還元を開始するため,同年5月 7日に本件事業への参加を決定して以降(前記1⑸ア),同年6月20日に,還元額をレシートに表示させるための改修を合計156万6000円(税込み)で発注し(同⑹),同年7月19日に,本件事業開始によるコピカの需要増に対 を決定して以降(前記1⑸ア),同年6月20日に,還元額をレシートに表示させるための改修を合計156万6000円(税込み)で発注し(同⑹),同年7月19日に,本件事業開始によるコピカの需要増に対応するため,合計2847万2040円(税込み)で70万枚を発注し(同⑹イ),コピカの利用を組合員に促すためのチラシを合計179 万7120円(税込み)で,同年8月13日に260万枚,同年9月3日に- 37 - 80万枚を発注している(同⑹ウ)。 本件事業は,消費税率引上げ後に予測される需要の落ち込みの対策として,令和元年10月1日から令和2年6月30日までの限られた期間のみの実施であったことからしても(前提事実⑵,⑶),本件事業の加盟店登録の対象であることを確認した原告が,本件事業開始日から消費者還元を開始しよう とすることは,社会経済活動を営む事業者として当然の判断といえる。また,原告が,本件事業に適合するようにポイント還元を開始するに当たっては,対象とする決済手段等を決定するだけでなく,上記のとおり,レジシステムの改修,コピカカードの増刷及びチラシ作成を行う必要があったと認められ,これらの準備はいずれも短期間で完了するものではない上(前記1⑹アない しウ),原告のようなA型兼B型決裁事業者の場合には,加盟店の登録申請は,自ら決裁事業者として登録を受けた後でこれを行う必要があり,その後の加盟店登録申請及び審査は本件事業開始前の1,2か月で行われることが予定されていたこと(同⑷)からすれば,加盟店登録後に上記準備を開始したのでは,本件事業開始日に間に合わないことは明らかであったといえ,原 告としては,加盟店に登録されるという見通しのもとで,本件事業開始日までにこれらの準備を進めるほかなかったものと認められる。 では,本件事業開始日に間に合わないことは明らかであったといえ,原 告としては,加盟店に登録されるという見通しのもとで,本件事業開始日までにこれらの準備を進めるほかなかったものと認められる。 このように本件事業の開始に向けては,原告には,加盟店登録に先立って,相応の支出を伴う準備行為が必要であったと認められるが,これらの準備行為に要した支出(ただし,後記3のとおり,コピカカード増刷費用のうち過 大と認められる部分を除く。)は,原告の加盟店登録が認められなかったことによって,本件事業への参加ができずに無駄になったものと認められ,これらの負担はその内容及び金額に照らして,社会通念上看過し得るものということはできない。 ウ被告による本件登録拒否通知の意味合い等 次に,本件登録拒否通知の点についてみると,加盟店登録要領等の資料- 38 - は本件協議会により作成されているが(前提事実⑷ア,認定事実⑵イ),その内容は被告が作成した平成31年3月版のキャッシュレス決済事業者登録要領を基にするものと認められる(前記1⑵)。そして,被告は,本件事業を企画・立案し,実施を監督する立場にあったものであり,本件協議会の発足後も,本件協議会の作成した加盟店登録要領等を自ら公表したほ か,これらの各要領に記載されている登録業務等の進捗に関して,原告を含む登録決済事業者に対し,メールや文書を送付して,加盟店登録に必要な情報の提出や環境の整備等を促すなど,本件事業の円滑な実施に向けた協力を要請していたものであり(同⑻),更には,本件登録除外規定⑬の該当性について,本件協議会と共に判断権限を有するもの(前提事実⑷)と されていたのであるから,本件協議会が作成した上記各要領等の記載内容,すなわち,加盟店登録の対象とな 本件登録除外規定⑬の該当性について,本件協議会と共に判断権限を有するもの(前提事実⑷)と されていたのであるから,本件協議会が作成した上記各要領等の記載内容,すなわち,加盟店登録の対象となる要件の定立や解釈に被告の意向が反映されていることは明らかである。 そうすると,被告は,原告に対して,原告が加盟店登録を認められるとの期待や信頼を与え得る立場にあるとともに,登録の許否についての実質 的な判断権限も有していたと評価できるところ,前記アのとおり,そのような立場にある被告が,自ら加盟店登録要領等を公表して,原告に加盟店登録の対象となるとの信頼を形成させるに至り,その後,本件登録拒否通知を送付したことによって,本件協議会も原告につき加盟店登録を行わなかったのであるから,被告の本件登録拒否通知は,原告の上記信頼を破壊 するような方針の変更に当たると解される。 これに対し,被告は,上記第2の3⑴【被告の主張】のとおり,被告は,当初から実質的に大企業と同視できる生協等は本件登録除外規定⑬で登録対象外とする方針であった旨を主張する。 この点につき,政府が発出したガイドラインの内容や(前記1⑴),本件 事業の目的(前提事実⑵)に照らすと,被告は大企業たる事業者を本件事- 39 - 業の対象外としていたことが認められる。 しかし,加盟店登録要領や加盟店登録マニュアルの記載内容は,前述のとおり,これを読んだ者に対して,加盟店登録の対象となる中小事業者の要件に関して,農協・生協等については,課税所得要件を満たす限り,加盟店登録の対象となる旨を明確かつ具体的に示すものであり,農協・生協 等について,その事業規模によっては本件登録除外規定⑬の適用により加盟店登録の対象外となることは読み取れないものであるところ,被 店登録の対象となる旨を明確かつ具体的に示すものであり,農協・生協 等について,その事業規模によっては本件登録除外規定⑬の適用により加盟店登録の対象外となることは読み取れないものであるところ,被告が,加盟店登録要領等を公表した当初から課税所得要件を満たす農協・生協等についても,その事業規模によっては加盟店登録の対象外とする方針であったのであれば,本件協議会をして,加盟店登録要領等にその旨を記載さ せたり,その記載を追加する改訂等を行わせたり,その旨の説明を適宜行わせたりすることができたものと考えられるが,本件においてそのような事情は存在しない。 これらのことからすると,被告は,加盟店登録要領の公表時点において,協同組合等について,課税所得要件を設けることで本件事業の目的・趣旨 に沿わない実質的に大企業と同視できる者を選別(除外)する方針であったと考えるのが合理的である。 なお,被告は,加盟店登録要領において,農協・生協等も事業規模によっては対象外になる旨の記載をしなかった理由につき,これらが会社及び個人事業者とは異なり,中小企業基本法2条の中小企業者等に含まれず, 他に上記協同組合等に関して一律かつ形式的な除外要件を定めるに当たって参照すべき法令等が見当たらなかったためであるとする。しかしながら,当初から上記方針を有していたのであれば,農協・生協等の中小事業者該当性に関して,売上や出資金の額,従業員数,店舗数等に着目した基準を設けることは不可能ではないし,本件登録除外規定⑬に関して,課税 所得要件を満たす農協・生協等であっても,その事業規模によっては加盟- 40 - 店登録の対象外となる旨を記載した上で,事業規模の判定に当たって考慮すべき事項として上記各項目等を掲げることも可能であったといえる 協・生協等であっても,その事業規模によっては加盟- 40 - 店登録の対象外となる旨を記載した上で,事業規模の判定に当たって考慮すべき事項として上記各項目等を掲げることも可能であったといえる。そして,そのような記載がなければ,どのような事情を考慮して,どのような規模の農協・生協等であれば,実質的に大企業と同視できると判断されるのか,その基準が全くとして不明なのであって,全国的に実施され,多 数の事業者が参加する本件事業において,このような不明確で混乱を招き得る状態を被告が積極的に創出していたとは到底考えられない。 そうすると,被告は,加盟店登録要領を公表した時点では,課税所得要件を満たした全ての農協・生協等の加盟店登録を認める方針であったにもかかわらず,原告の加盟店登録申請後になって,課税所得要件以外の売上 高や店舗数などの事業規模に関する事情も,加盟店の登録要件として考慮する方針に変更したものと認めるほかない。 エまとめ以上によれば,原告は,本件事業の加盟店に登録して同事業に適合するための準備を促す被告の動機づけ行為によって,加盟店登録の対象であること について高度の信頼を有するに至り,その中で,本件事業開始に向けて相当額を支出して必要な準備を進めていたにもかかわらず,被告が加盟店登録要件に関する当初の方針を変更して,原告に対し加盟店登録を認めなかったことで,上記支出が無駄になり,社会通念上看過できない損害を被ったものといえる。その上,被告が上記加盟店登録の要件に関する方針を変更したこと について,同要件を公表した時点から社会情勢等が大きく変化したといった事情は見当たらず,そのほか公益上の必要性等も認められないことからすると,原告が事業規模を理由として加盟店登録の対象外となったことを,単なる 要件を公表した時点から社会情勢等が大きく変化したといった事情は見当たらず,そのほか公益上の必要性等も認められないことからすると,原告が事業規模を理由として加盟店登録の対象外となったことを,単なる投機上の見込み違いなどということはできず,原告の上記信頼には法的保護が与えられるべきである。そうすると,原告の加盟店登録の対象であると の信頼については,法的保護に値する利益に当たると認められ,被告が,農- 41 - 協・生協等の加盟店登録要件に関して,課税所得要件に加えて売上高等の事業規模に関する事情を考慮する方針に変更したことは,原告の上記信頼を不当に破壊するものとして,原告との関係において国賠法上違法となると認められる。 3 争点2(原告の加盟店登録が認められなかったことと相当因果関係のある損害 の発生及びその数額)について⑴ コピカカードの増刷費用 850万2732円前記1⑹イのとおり,原告は,コピカカード70万枚を代金2847万2040円(税込み)で発注しているところ,原告は,当初から発注予定だった10万枚を控除した60万枚が損害である旨主張する。 この点につき,本件事業が開始されれば,決済手段としてのコピカの需要増が見込まれ,平成30年度末の在庫が約11万枚であるのに対し,令和元年7月8日の会議時点から直近3か月間の絶対客数(延べ人数ではない)が約100万人(78万人が現金決済)と推定されていることからすると(前記1⑹イ),上記需要増に対応するため,コピカカードの増刷が必要であったと認められる 上,増刷に期間を要することからして,原告が同年10月1日の本件事業開始に間に合わせるためには,加盟店に登録される前にその増刷を発注する必要があったといえる。 もっとも,原告が,コピカの新規 上,増刷に期間を要することからして,原告が同年10月1日の本件事業開始に間に合わせるためには,加盟店に登録される前にその増刷を発注する必要があったといえる。 もっとも,原告が,コピカの新規利用の最大数を約78万人と見込んだとしても,在庫切れを生じさせないために70万枚を発注するのは,原告自身も「強 めの発注起案」としていること(同⑹イ),在庫数も含めると80万枚以上になること,原告が登録決済事業者として本件協議会に対し,消費者還元補助事業の補助金交付申請を行った際には,本件事業終了時の令和2年6月時点におけるコピカ使用者の増加数を20万9268人(=32万3976人-11万4708人)と見込んでいたことからすると(同⑺イ),本件事業を開始するに当 たっての準備行為としては過大であるといわざるを得ない。 - 42 - 他方で,消費者還元補助の補助金交付申請に当たって想定したコピカ使用者の増加数と同程度の約21万枚の発注であれば,在庫数約11万枚及び本件事業に関係なく発注予定であった10万枚と合わせても40万枚程度の在庫数となり,コピカ新規利用の最大数78万人に照らして,本件事業初期の需要増に対応するためには,必要かつ相当な範囲であると認められる。 そして,証拠(甲30,39の1ないし3)及び弁論の全趣旨によれば,原告においては,令和元年5月1日時点に予定していたとおり,コピカについて新カードの発行を令和3年8月から開始し,概ね令和4年3月までに旧カードとの切り替えを完了させ,旧カードの運用は同年6月で完全に停止することに決定したことに加え,上記の増刷したコピカカードは,一定の在庫を残し,4 4万枚を令和3年3月10日に廃棄したことが認められる。そのため,コピカカード増刷分のうち,本件事業開始の準 することに決定したことに加え,上記の増刷したコピカカードは,一定の在庫を残し,4 4万枚を令和3年3月10日に廃棄したことが認められる。そのため,コピカカード増刷分のうち,本件事業開始の準備行為として相当な範囲と認められる増刷分21万枚分の支出は,被告が方針を変更して原告について加盟店登録を認めなかったことにより無駄になったといえるから,これに相当する850万2732円を相当因果関係のある損害として認める。 (計算式)37.49円(1枚当たりの増刷費用)×21万枚×1.08(消費税)⑵ チラシの作成費用 179万7120円前記1⑹ウによれば,原告は,コピカの利用を組合員に促すためのチラシを同年9月13日から配布することとし,同年8月13日に260万枚,同年9 月3日に80万枚を発注し,合計166万4000円(税込み179万7120円)の費用を要している。 本件事業を開始するに当たっては,その開始前に,原告が加盟店登録されたこと,コピカが対象の決済手段であることを告知する必要があるから,令和元年10月1日に消費者還元を開始するためには,上記⑴と同様,加盟店に登録 される前にチラシを作成・発注しておく必要があったと認められる。そして,- 43 - 被告が方針を変更して原告について加盟店登録を認めなかったことで,上記チラシ作成費用が無駄になっているところ,260万枚の発注については,本件事業開始前後において,ポイント還元対象の決済手段であるコピカを買物客に広く周知させるため,配布期間と想定される来客数を基に枚数を決定されたものと認められ,80万枚の発注についても,発注済みの チラシの改訂版を作成したものと認められ,いずれも不必要に過大な発注を行ったものとまではいえないから,チラシ る来客数を基に枚数を決定されたものと認められ,80万枚の発注についても,発注済みの チラシの改訂版を作成したものと認められ,いずれも不必要に過大な発注を行ったものとまではいえないから,チラシ作成費用179万7120円を相当因果関係のある損害として認める。 ⑶ レジシステムの改修費用 156万6000円認定事実⑹アによれば,原告は,同年10月1日から本件事業を開始 するために,同年6月20日、145万円(税込み156万6000円)で,ポイント還元額をレシートに表示できるようにするレジシステムの改修を発注している。 上記改修は,原告が,加盟店登録を認められてから速やかに本件事業を開始するため,上記⑴⑵と同様,加盟店に登録される前に行う必要があっ たと認められる。そして,被告が方針を変更して原告について加盟店登録を認めなかったことで,上記改修が無駄になっているから,上記改修費用156万6000円を相当因果関係のある損害として認める。 ⑷ 損害合計額 1186万5852円第4 結論 以上の次第で,原告の請求は,被告に対し,国賠法1条1項に基づき,損害金合計1186万5852円及びこれに対する訴状送達の翌日である令和元年11月8日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,その限度で認容し,その余は理由がないからこれを棄却すべきである。 よって,訴訟費用の負担につき,民訴法64条本文,61条を適用し,主文の- 44 - とおり判決する。 神戸地方裁判所第4民事部 裁判長裁判官久保井恵子 裁判官姥迫浩 主文 とおり判決する。 神戸地方裁判所第4民事部 裁判長裁判官久保井恵子 裁判官姥迫浩司 裁判官山形一成
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