令和6(わ)135 傷害、監禁、殺人被告事件

裁判年月日・裁判所
令和7年6月13日 静岡地方裁判所 浜松支部
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判決文本文6,116 文字)

令和6年(わ)第135号判決 主文 被告人を懲役17年に処する。 未決勾留日数中370日をその刑に算入する。 理由 (犯罪事実)被告人は第1 Eと共謀の上、令和6年2月5日午前3時30分頃から同日午前4時4分頃までの間に、浜松市(住所省略)所在のD方において、F(当時17歳)に対し、 被告人及びEがFの頭部、顔面及び体等を多数回にわたって拳で殴るとともに足で蹴り、EがFの頭部付近をガラス製の空の酒瓶で2回殴るなどの暴行を加え、引き続き、その頃、前記D方玄関付近及び同駐車場において、Fに対し、被告人及びEがFの頭部、顔面及び体等を多数回にわたって拳等で殴るとともに足で蹴り、EがFの後頭部を地面に打ち付け、被告人が仰向けに倒れていたFの髪の毛を手でつか んで引きずり、EがFの体を数回にわたって十字レンチで殴るとともに足で蹴り、Fの後頭部をコンクリート製の輪留めに打ち当てるなどの暴行を加え、よって、前記一連の暴行により、同人に全治まで約2週間を要する右上眼瞼打撲傷、左眉毛部打撲傷、前額部皮膚擦過傷及び皮膚剥脱創、腰背部擦過創及び皮膚剥脱創、全治不詳の意識障害の傷害を負わせ 第2 E、A、B及びCと共謀の上、同日午前4時4分頃、A、B及びCらがFの体を持ち上げて前記駐車場に駐車中のEが使用する普通乗用自動車の後部トランク内に押し込み、Eが同車の助手席に乗車し、被告人が同車を運転して発進させ、その頃から同日午前4時51分頃までの間、静岡県湖西市(住所省略)所在の公園付近路上まで同車を走行させ、Fを前記トランク内から脱出することを不能にし、も って同人を不法に監禁し 第3 Eと共謀の上、同日午前4時51分頃から同日午前4時58分頃までの間に、 公園付近路上まで同車を走行させ、Fを前記トランク内から脱出することを不能にし、も って同人を不法に監禁し 第3 Eと共謀の上、同日午前4時51分頃から同日午前4時58分頃までの間に、前記公園及び同付近路上において、前記第1の暴行により意識障害等の傷害を負っていたFに対し、殺意をもって、被告人及びEがFの体を前記自動車の後部トランク内から引きずり出して地面に落下させ、被告人がFの上衣を両手でつかんで引きずり、EがFの顔面等を足で数回蹴るとともに、その髪の毛等を両手でつかんで引 きずり、被告人がFの体を足で蹴るなどし、その頃、同公園内2級河川都田川水系準用河川浜名川付近の岸壁において、EがFの髪の毛を両手でつかんでその頭部を地面に3回打ち付け、Eがほぼ全裸のFの両手を、被告人がFの両足を、それぞれ両手で持ち上げ、前記浜名川に向けてその体を左右に振るなどして同人を同川に落とそうとした上、EがFの背中を手で押して同人を同川に転落させて水没させ、よ って、その頃、同川又はその付近において、同人を溺死させて殺害したものである。 (量刑の理由)第1 事案の概要被告人と共犯者であるEは友人関係であったところ、本件は、被害者がEの知人 であるDを倒したことなどを契機にして、被告人が、Eと共謀し、被害者に対して継続的な暴行を加えて傷害を負わせ、E、A、B及びCと共謀し、同暴行により意識障害に陥った被害者を、自動車のトランクに押し込み、同車を運転して被害者を殺害現場まで移動させて監禁し、被告人及びEが共謀し、前記意識障害が継続している被害者に暴行を加えた上、同人を浜名湖付近の浜名川(以下、殺害現場周辺を、 単に「浜名湖」という。)に突き落として水没させ、溺死により殺害した事案である。 第2 犯情の評価 継続している被害者に暴行を加えた上、同人を浜名湖付近の浜名川(以下、殺害現場周辺を、 単に「浜名湖」という。)に突き落として水没させ、溺死により殺害した事案である。 第2 犯情の評価 1 本件の犯行態様及び殺意について被告人及びEは、被害者の頭部、胸部、腹部など、身体の枢要部に対し、多数回、 殴る蹴るなどの暴行を加え、Eは、酒瓶で被害者の頭部を殴打する、自転車のタイ ヤを被害者の腹部に叩きつける、十字レンチやワイヤー錠で被害者を叩く、被害者の後頭部をコンクリート製の輪留めに打ち当てるなどの暴行を加えた。その結果、被害者は、多数の皮下出血や打撲傷、擦過傷等の傷害を負い、浜名湖まで継続する意識障害に陥った。その後、被告人らは、自動車の狭いトランク内に被害者を押し込んだ上、約50分間、自動車を走行させて監禁し、浜名湖に到着後は、意識障害 に陥ったままの被害者に対して更に暴行を加えて、冬の浜名湖にほぼ全裸の被害者を突き落として溺死させた。このような被告人らが行った身体の枢要部に対する強度の暴行、危険な態様による監禁及び残酷な殺害方法に鑑みれば、被告人らの各犯行態様は総じて極めて悪質なものである。 さらに、被告人は、被害者に意識障害があり、湖面に被害者を落としたら死亡す ることを確実に認識しながら、Eと共に被害者を湖面に落としたのであるから、殺意の程度は強いものであり、弁護人が指摘するような未必的なものとは到底いえない。 2 本件各犯行における被告人の意思決定に対する非難について⑴ 被告人は、本件に先立ち、被害者がEに対して敬語を使わないことに苦言を 呈したCと被害者とが諍いになり、それを止めに入ったDを被害者が倒したことや友人であるEを失望させたくないという思いなどから、Eの被害者に対する 、被害者がEに対して敬語を使わないことに苦言を 呈したCと被害者とが諍いになり、それを止めに入ったDを被害者が倒したことや友人であるEを失望させたくないという思いなどから、Eの被害者に対する暴行に加勢して意識障害を生ずるほどの傷害を負わせ、その犯行を隠すために被害者を自動車のトランク内に監禁し、運転中Eが被害者を殺害しようとしていることを認識してからも同車の運転を継続した。また、浜名湖に到着してからも、Eに対して被 害者への暴行を指示したり、湖面に被害者を投げ入れる方法を提案したりするなどしており、主体的に本件各犯行を行ったと評価できる。 このように、本件各犯行は、Eと共に被告人が自ら主体的に意思決定をした結果として遂行されたものであり、被害者に制裁を加え、その犯行を隠す動機で行われた一連のもので、極めて身勝手と言わざるを得ないのであるから、被告人の各犯行 を遂行する意思決定に対する非難の程度は強いというべきである。 ⑵ この点、弁護人は、被告人は、友人であるEを失望させたくないなどの思いから本件各犯行に加わったことなどからすれば、被告人の意思決定に対する非難の程度は小さい旨主張し、被告人は当公判廷において、本件各犯行時、Eに対する恐怖心や前記弁護人が指摘する心理状態によりEの指示に従う外なかった旨供述する。 確かに、本件各犯行の最中、Eは被害者に対して前記のように強度な暴行を加え、 被害者を浜名湖に水没させて殺害することまで決めているのであるから、被告人にEに対する恐怖心が芽生えたとしても必ずしも不自然とは言い難い。しかし、被告人はEよりも年上であり、Eから兄のように慕われる関係であったことや、被告人らが撮影した動画に記録された被告人らの会話の内容からすれば、被告人の抱いた恐怖心の程度はそれほど大 言い難い。しかし、被告人はEよりも年上であり、Eから兄のように慕われる関係であったことや、被告人らが撮影した動画に記録された被告人らの会話の内容からすれば、被告人の抱いた恐怖心の程度はそれほど大きいものとはいえず、Eに従わなければ自身が加害され るおそれがあるという程度の恐怖心を抱いていたとは認められない。そうすると、本件各犯行中、Eに対する恐怖心から、被告人がEに従うほかなかったとはいえない。また、Eを失望させたくないという被告人の思いは、被害者からすれば身勝手な考えであり、被告人の意思決定に対する非難の程度を弱める事情とはいえない。 ⑶ また、弁護人は、被告人には、積極的に被害者を殺害しようとする意図はな く、Eが最初に被害者へ暴行を加えようとした時点、Eが被害者に暴行を加えるためにD方のフォークを持ち出した時点及びEが被害者の後頭部を駐車場の輪留めにぶつけようとした各時点において、被告人はEの行動を止めるなどしていて、これらの行為は被告人の攻撃意思が、当初から消極的なものであること示しているという趣旨の主張をし、被告人もこれに沿う供述をしている。 まず、Eの最初の暴行とフォークを持ち出した行動を止めたとの被告人の供述は、傷害事件の現場にいた複数の関係者の供述と相反することや、被告人もDが被害者から倒されたことから感情的になり被害者に対する暴行を開始したという被告人の供述と整合せず、不自然であるから信用することができない。Eが被害者の後頭部を駐車場の輪留めにぶつけようとしたところを止めた、との被告人供述は信用でき ないものとはいえないが、他方で、被告人は、暴行の最中に被害者をなじるような 言葉を弄しながら自ら暴行に及び、道具を使ったEの暴行のほとんどを黙認していることからすれば、傷害の最終段階で ないものとはいえないが、他方で、被告人は、暴行の最中に被害者をなじるような 言葉を弄しながら自ら暴行に及び、道具を使ったEの暴行のほとんどを黙認していることからすれば、傷害の最終段階で、Eを言葉で制した事実があったとしても、このことが被告人の攻撃意思が消極的なものであったことを示すとはいえないし、被告人に対する非難を弱める事情として考慮することはできない。 ⑷ したがって、弁護人が指摘する前記事情は、本件各犯行における被告人の意 思決定に対する非難の程度を弱めるものとは評価できない。 3 本件各犯行における被告人の果たした役割について⑴ 被告人は、Eと共に被害者を暴行し、自ら自動車を運転し、人気がない場所をEと共に探しながら、被害者を殺害現場まで運んだ。浜名湖においても、被告人は、被害者を湖面に転落させる場所やその方法をEと話し合い、被害者に暴行を加 えるようEに指示したり、Eと共に被害者を岸壁まで引きずったりした。被告人が行ったこれらの行為は、被害者を犯行現場に移動させ、被害者を湖面に突き落とすことを容易にさせるものであり、本件各犯行において重要な役割を果たしたものと評価できる。 ⑵ この点、弁護人は、傷害結果はそのほとんどがEの暴行によるものと推測さ れ、被告人が行った暴行は強度なものではないこと、被害者をトランクに詰め込んだ時点で被害者の行動の自由は奪われており、被告人は、Eから頼まれて自動車を運転したに過ぎないこと、被告人は被害者の殺害に関しては終始消極的であり、被害者を実際に浜名湖に落としたのはEであることなどを指摘して、被告人の本件各犯行における役割は必ずしも大きいものではない旨主張する。 確かに、被告人が行った暴行は、Eが行った暴行と比べて、その程度は強くない。 また、被 はEであることなどを指摘して、被告人の本件各犯行における役割は必ずしも大きいものではない旨主張する。 確かに、被告人が行った暴行は、Eが行った暴行と比べて、その程度は強くない。 また、被告人は、Eが被害者を湖面に突き落とす直前には、被害者を突き落とすのではなく「ここに置いておけばいい、E」などと提案していることからすれば、被害者を湖面に突き落とすことについては最終的には消極的であったといえる。しかしながら、その前の、被告人らが被害者を湖面に転落させる場所及び方法を話し合 っている場面では、被告人は、「だめ、だめ、だめ。」「ここだと体がこのまま残る。」 と言っており、「私の考え、分かるよね」などと言って両手を振る動作をしているところ、被告人らが撮影した動画に記録された被告人らの会話の内容に鑑みれば、これらの行動は自ら被害者を転落させる方法を提案しているとみるのが自然であり、Eの行動を遠まわしに諫めたり、Eの考えを単に確認しているだけと理解することはできない。また、被害者を湖面に突き落とすためには、自動車を運転して被害者 を殺害現場へ移動させる役割は欠くことのできない重要なものであるし、身長177センチメートル、体重67.9キログラムの被害者を自動車のトランクから出し、40メートル余りの距離を引きずって、浜名湖面近くまで運び、湖面に突き落とすことはE一人では困難であるから、被告人の協力は殺害の遂行に必要不可欠なものであった。さらに、被告人は、Eが最終的に被害者を湖面に突き落とす場面も含め て本件各犯行の状況をEの要望に応えて撮影するなどしており、Eの各行為を精神的に支えていたといえる。そうすると、Eが被害者を突き落とす直前までは、被告人は被害者の殺害について消極的な対応であったとはいえないし、それまでに被告人 応えて撮影するなどしており、Eの各行為を精神的に支えていたといえる。そうすると、Eが被害者を突き落とす直前までは、被告人は被害者の殺害について消極的な対応であったとはいえないし、それまでに被告人が本件各犯行において果たした役割の具体的な内容を踏まえれば、被害者を湖面に転落させる最終局面において、被告人が消極的な態度を示したとしても、本件各 犯行において、被告人は、被害者を殺害するために重要な役割を果たしたとの評価は揺るがない。 したがって、この点に関する弁護人の主張に理由はない。 4 小括以上のとおり、前記各犯情を踏まえれば、本件は同種の殺人(共犯関係:共犯、 被害者の立場:知人・友人・勤務先関係、処断罪と同一又は同種の罪の件数:1件、被害者の落ち度:あり以外、示談又は宥恕:すべてなし、前科等:すべてなし)のうち中程度の事案の中では、重い部類に属する。 第3 一般情状及び処断刑の決定その上で一般情状についてみると、当時17歳であった被害者が、被告人らから 前記のような激しい暴行を受け、冬の浜名湖に突き落とされて殺害されたのである から、被害者の遺族である両親が被告人に対して厳しい処罰感情を有していることは当然で、このことは量刑上考慮すべき事情である。他方、被告人が本件各公訴事実を認め、反省の弁を述べていることは被告人に有利な情状として一定程度考慮できる。 そこで、上記第2で検討した犯情を前提に、以上の一般情状を考慮して被告人を 主文のとおりの刑に処するのが相当であると判断した。 (求刑-懲役18年弁護人の科刑意見-懲役8年)令和7年6月13日静岡地方裁判所浜松支部刑事部 裁判長裁判官來司直美裁判官大村明菜 弁護人の科刑意見-懲役8年)令和7年6月13日静岡地方裁判所浜松支部刑事部 裁判長裁判官來司直美裁判官大村明菜裁判官志村敬一

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