主文 1 被告は、原告Aに対し、6421万7798円及びこれに対する令和▲年▲月▲日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 2 被告は、原告Bに対し、3210万8899円及びこれに対する 令和▲年▲月▲日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 3 被告は、原告Cに対し、3210万8899円及びこれに対する令和▲年▲月▲日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 4 被告は、原告Aに対し、186万0144円及びうち別紙2「 遅延損害金内訳表」の原告A相続分」欄記載の各金員に対する遅延損害金起算日」欄記載の各日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 5 被告は、原告Bに対し、93万0071円及びうち別紙2「 遅延 損害金内訳表」の原告B相続分」欄記載の各金員に対する遅延損害金起算日」欄記載の各日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 6 被告は、原告Cに対し、93万0071円及びうち別紙2「 遅延損害金内訳表」の原告C相続分」欄記載の各金員に対する遅延 損害金起算日」欄記載の各日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 7 被告は、原告Aに対し、186万0144円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 8 被告は、原告Bに対し、93万0071円及びこれに対する本判 決確定の日の翌日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 9 被告は、原告Cに対し、93万0071円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 10 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 11 訴訟費用は、これを100分し、その3を原 71円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 10 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 11 訴訟費用は、これを100分し、その3を原告らの負担とし、その余は被告の負担とする。 12 この判決は、第1項ないし第6項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は、原告Aに対し、6438万8786円及びこれに対する令和▲年▲月▲日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 2 被告は、原告Bに対し、3218万9393円及びこれに対する令和▲年▲ 月▲日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 3 被告は、原告Cに対し、3218万9393円及びこれに対する令和▲年▲月▲日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 4 被告は、原告Aに対し、248万4006円及びうち別紙3 遅延損害金内訳表」の原告A相続分」欄記載の各金員に対する遅延損害金起算日」欄記 載の各日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 5 被告は、原告Bに対し、124万2003円及びうち別紙3 遅延損害金内訳表」の原告B相続分」欄記載の各金員に対する遅延損害金起算日」欄記載の各日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 6 被告は、原告Cに対し、124万2003円及びうち別紙3 遅延損害金内 訳表」の原告C相続分」欄記載の各金員に対する遅延損害金起算日」欄記 載の各日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 7 被告は、原告Aに対し、248万4006円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 8 被告は、原告Bに対し、124万2003円及びこれに対する 。 7 被告は、原告Aに対し、248万4006円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 8 被告は、原告Bに対し、124万2003円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 9 被告は、原告Cに対し、124万2003円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は、D警部補の相続人である原告らが、それぞれ法定相続分に応じ(なお、法定相続分は、原告Aが2分の1であり、原告B及び同Cが各4分の1で ある。)、D警部補が所属していた長崎県警察の設置者である被告に対し、次のとおりの請求をする事案である。 ⑴ 第1、1~3の各請求について原告らが、D警部補の自死は、D警部補が、上司によるパワーハラスメント被害に晒されながら、過酷な長時間労働に従事した結果であり、これにつ いて、D警部補の職務を管理監督すべき長崎県警察の公務員は、職員がその業務の遂行に伴い疲労や心理的負荷等が過度に蓄積してその心身の健康を損なうことがないよう配慮すべき安全配慮義務に違反したものであると主張して、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償金及びこれに対するD警部補の死亡日である令和▲年▲月▲日から支払済みまで民法所定の年 3%の割合による遅延損害金の各支払を求めるもの。 ⑵ 第1、4~6の各請求について原告らが、D警部補は、令和2年3月23日から同年10月2日までの間、時間外労働、休日労働及び深夜労働を行ったにもかかわらず、割増賃金が一部しか支払われていないとして、被告に対し、労働基準法(以下労基法」 という。)37条に基づき、割増賃金及びこれに対する各支 間外労働、休日労働及び深夜労働を行ったにもかかわらず、割増賃金が一部しか支払われていないとして、被告に対し、労働基準法(以下労基法」 という。)37条に基づき、割増賃金及びこれに対する各支給日の翌日から支 払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の各支払を求めるもの。 ⑶ 第1、7~9の各請求について原告らが、被告に対し、労基法114条所定の付加金として、割増賃金及びこれに対する判決確定日の翌日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の各支払を求めるもの。 2 前提事実⑴ 当事者等ア原告Aは、D警部補の妻であり、原告B及び同Cは、D警部補の子らである。 イ被告は、D警部補が所属していた長崎県警察の設置者である。 ⑵ D警部補の経歴等D警部補(昭和54年生まれ)は、平成13年4月1日、長崎県警察において採用され、その後、a警察署、長崎県警察本部(以下警察本部」という。)、b警察署、c警察署、d警察署、b警察署、e警察署勤務を経て、令和2年3月23日、警部補としてa警察署に赴任し、その後、同署の交通課 交通捜査係長として稼働した。 (以上、甲B2の2、同7)⑶ a警察署におけるD警部補の勤務状況等ア D警部補のa警察署における勤務実態は、別紙4 時間外勤務一覧」の網掛け部分(県警作成分)のとおりである。 イなお、D警部補は、有給休暇又は夏季休暇の申請をしながらa警察署に登庁して勤務していたことがあるところ、当該日は、令和2年4月30日、同年5月28日、同年6月16日、同年7月8日、同年9月18日及び同月24日である。 (以上、弁論の全趣旨) ⑷ D警部補の自死 ア D警部補は、令和▲年▲月▲日、単身赴任先の自宅アパートにお 日、同年6月16日、同年7月8日、同年9月18日及び同月24日である。 (以上、弁論の全趣旨) ⑷ D警部補の自死 ア D警部補は、令和▲年▲月▲日、単身赴任先の自宅アパートにおいて自死した。 イなお、D警部補の自死につき、D警部補の職務を管理監督すべき長崎県警察の公務員に安全配慮義務違反があることにつき、当事者間に争いがない。 (以上、争いがない) 3 関係条例等の定め関係条例及び規則の定めは、別紙5 関係条例等の定め」記載のとおりである。 4 争点 ⑴ D警部補死亡に伴う損害の額(争点1)⑵ 勤務時間条例7条の2第1項及び宿日直規則2条が法令に違反し無効であるか(争点2)⑶ a警察署における宿日直勤務に関する人事委員会の許可の有無(争点3)⑷ 年次休暇又は夏季休暇を取得して正規の勤務時間に稼働した場合に時間外 手当等の支払を要するか否か(争点4)⑸ 付加金請求の当否(争点5) 5 争点に関する当事者の主張⑴ 争点1(D警部補死亡に伴う損害の額)(原告らの主張) 原告らの主張は、別紙6 損害額一覧表」の原告主張額」及び原告の主張の要旨」欄記載のとおりである。 (被告の主張)弁論の全趣旨により争うものと認める。 ⑵ 争点2(勤務時間条例7条の2第1項及び宿日直規則2条が法令に違反し 無効であるか) (原告らの主張)ア地方警察職員の任用及び給与、勤務時間その他の勤務条件などは条例で定めるものであるところ(警察法56条2項、地方公務員法(以下地公法」という。)24条5項)、労基法112条、地公法58条3項によれば、条例による勤務関係にも労基法32条及び37条が適用される。 イ給与条例18条2項は、宿日直勤務(給与条例1 以下地公法」という。)24条5項)、労基法112条、地公法58条3項によれば、条例による勤務関係にも労基法32条及び37条が適用される。 イ給与条例18条2項は、宿日直勤務(給与条例18条1項にいう宿日直勤務をいう。以下同じ。)について、 第14条から第16条までの勤務には含まれないものとする。」と規定し、時間外勤務手当等の支払対象となる勤務時間に含まないことを定めている。しかし、このような定めが労基法違反とならないのは、宿日直勤務が労基法41条3号の断続的労働に該当 することが前提である。 また、労基法41条3号に基づき、宿日直勤務が労基法で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定の適用除外として認められるためには、断続的労働という実体的要件が充足されるだけでは足りない。労基法41条3号に基づく行政官庁の許可を受けることが必要である。 ウしかるに、任命権者が職員に断続的な勤務を命じることができる旨を定めた勤務時間条例7条の2第1項本文には、総務省の条例案や近隣県(熊本県)の条例にみられるような人事委員会の許可を受けて」との文言が規定されていない。 エ憲法27条2項は、 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基 準は、法律でこれを定める。」と規定し、労基法13条は、 この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。」と規定する。 これらによれば、地公法上の職員に適用される労基法の規定は最低基準であり、労基法の規定を緩和する条例又は規則は効力を有しない(地公法 58条3項は労基法13条を適用除外していない。)。 オまた、地方公共団体は、法令の明文の規定又はその趣旨に反する条例を制定することは許されず、そのような法令の明文の規定又 (地公法 58条3項は労基法13条を適用除外していない。)。 オまた、地方公共団体は、法令の明文の規定又はその趣旨に反する条例を制定することは許されず、そのような法令の明文の規定又はその趣旨に反する条例は、たとえ制定されたとしても、条例としての効力を有しないものと解される。 カ以上によれば、勤務時間条例7条の2第1項及び宿日直規則2条は、法 令に違反するものであるから、いずれも条例又は規則としての効力を有さず、無効である。 (被告の主張)争う。平成10年法律第112号による改正前の地公法58条4項(平成10年法律第112号による改正後の地公法58条5項)によれば、地公法 上の職員に労基法の規定を適用する場合における職員の勤務条件に関する労働基準監督機関の職権は、人事委員会が行うものとされている。 そうすると、勤務時間条例7条の2第1項本文に人事委員会の許可を受けて」との文言がなくとも、何ら法令に抵触するものではない⑶ 争点3(a警察署における宿日直勤務に関する人事委員会の許可の有無) (原告らの主張)ア被告は、a警察署における宿日直勤務に関し長崎県人事委員会(以下県人事委」という。)から労基法41条3号の許可を得ていると主張するが、県人事委の許可そのものを証する文書は、証拠として提出されていない。 警察本部から県人事委に宛てた本県警察に係る宿日直勤務の許可申請、 不許可、許可の取消し、指導、勧告の文書の存在の有無、あればその内容について回答をお願いします。」との照会に対し、県人事委が照会対象の文書は存在しません」と回答していることからしても「(乙12の1及び2)、a警察署における宿日直勤務に関し県人事委の許可を受けていないことが裏付けられる。 イ被告は、乙 委が照会対象の文書は存在しません」と回答していることからしても「(乙12の1及び2)、a警察署における宿日直勤務に関し県人事委の許可を受けていないことが裏付けられる。 イ被告は、乙第4号証の存在からして、a警察署における宿日直勤務に関 し県人事委の許可を得ていることが推認されると主張する。しかし、乙第4号証は、単なる警察内部の伺い文に過ぎない。 また、労基法施行規則23条所定の様式第10号断続的な宿直又は日直勤務許可申請書」には勤務の態様」欄が設けられているが、乙第4号証には勤務の態様」が記載されていないのであるから、乙第4号証に基 づいて申請や許可がされたとは考えられないし、仮に、申請や許可がされていたとしても無効である。 ウまた、労基法41条3号の許可は、許可後、申請事項に変更があった場合には許可の再申請を要する。仮に、被告において労基法41条3号の許可を得ていたのであれば、乙第4号証が作成された昭和42年から54年 後に乙第6号証が作成されるまでの間、再度の申請及び許可が一度もなかったとは考えられないし(a警察署は改築もされており宿日直の設備等にも変更があったと思われる。)、乙第6号証記載の許可」が乙第4号証当時の許可を指すとも考えられない。 (被告の主張) ア a警察署における宿日直勤務に関する県人事委の許可そのものを証する文書は存在しないが、そもそも県人事委は、宿日直手当規則の制定権者であるから、県人事委が労基法41条3号の許可を与えていなかったとは考えられない。 イまた、乙第4号証は、昭和48年、長崎県警察の断続的な宿直又は日直 勤務について労基法施行規則23条所定の許可を受けるべく県人事委に一括申請する目的で起案された文書である。この起案日から間もなくa警 乙第4号証は、昭和48年、長崎県警察の断続的な宿直又は日直 勤務について労基法施行規則23条所定の許可を受けるべく県人事委に一括申請する目的で起案された文書である。この起案日から間もなくa警察署を含む管内各警察署における宿日直勤務に関し許可を受けたものと推測される。 ウ県人事委からa警察署を含む管内各警察署における宿日直勤務に関し労 基法41条3号の許可を得ていることは、県人事委の認識とも合致してい る上、長崎県警察において宿日直勤務の運用を変更するに当たり県人事委と協議していることや、県人事委から各種調査を受けていることからも裏付けられる。 ⑷ 争点4(年次休暇又は夏季休暇を取得して正規の勤務時間に稼働した場合に時間外手当等の支払を要するか否か) (原告らの主張)ア勤務時間条例8条は、職員は、祝日法による休日には、正規の勤務時間においても勤務することを要しないことを定めているところ、給与条例15条1項は、「 祝日法による休日等・・・及び年末年始の休日等において、正規の勤務時間中に勤務することを命ぜられた職員には、正規の勤務時間 中に勤務した全時間に対して、・・・勤務1時間当たりの給与額に100分の125から100分の150までの範囲内で人事委員会規則で定める割合を乗じて得た額を休日勤務手当として支給する」旨規定する。 すなわち、給料は、正規の勤務時間による勤務に対する報酬である(給与条例4条1項)ところ、休日に勤務した場合には、正規の勤務時間中の 勤務であるにもかかわらず休日勤務手当が支払われるのである。 この理からすれば、年次休暇又は夏季休暇を取得した日も、職員が勤務した場合には、給料とは別に、給料に対する加算額が支払われるというのが給与条例の趣旨である。 イまた、年次休暇 れるのである。 この理からすれば、年次休暇又は夏季休暇を取得した日も、職員が勤務した場合には、給料とは別に、給料に対する加算額が支払われるというのが給与条例の趣旨である。 イまた、年次休暇及び夏季休暇は、いずれもその取得の効果が労働日を非 労働日に転換する、あるいは本来存在する労働義務を一義的に消滅させるというものであるから、年次休暇又は夏季休暇を取得した日の所定労働時間はゼロである。 したがって、D警部補が年次休暇又は夏季休暇を取得しつつ勤務した日の法定時間内労働は全て所定時間外労働であるといえ、通常の労働に対す るのと同一の賃金が支払われるべきである。 (被告の主張)ア時間外勤務手当は、給与条例14条1項により、正規の勤務時間外に勤務することを命ぜられた職員に、正規の勤務時間外に勤務した時間に対して支給する手当である。 イ他方、年次休暇及び夏季休暇は、いずれも正規の勤務時間に正当に勤務 しないことが認められている状態であるが、勤務しなくても給料に反映されている。 ウしたがって、D警部補が年次休暇又は夏季休暇を取得しつつ勤務した日の午前9時から午後5時45分までの間(正規の勤務時間)は時間外勤務として取り扱うことができない。 ⑸ 争点5(付加金請求の当否)(原告らの主張)ア a警察署のE署長及びF課長は、D警部補をして心身の健康を損なう危険がある過重な業務に従事させ、心身の健康を損なわせて自死させたところ、その態様は重過失による極めて悪質なものである。 以上によれば、被告に対しては、割増賃金と同一額の付加金の支払を命ずることが相当である。 イまた、付加金請求の当否においては、a警察署における宿日直勤務に関し労基法41条3号所定の許可を受けていなかったこと 、被告に対しては、割増賃金と同一額の付加金の支払を命ずることが相当である。 イまた、付加金請求の当否においては、a警察署における宿日直勤務に関し労基法41条3号所定の許可を受けていなかったことも考慮すべきである。 (被告の主張)否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(D警部補死亡に伴う損害の額)について当裁判所の認定・判断は、別紙6 損害額一覧表」の認定額」及び認定 判断の理由」欄記載のとおりである。 2 争点2(勤務時間条例7条の2第1項及び宿日直規則2条が法令に違反し無効であるか)について⑴ 憲法94条は、 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。」と規定し、地方公共団体が条例制定権を有すること、及び当該条例制定権は 法律の定める成約に服することを定めている。また、地方自治法14条1項も、 普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第二条第二項の事務に関し、条例を制定することができる。」と規定するところ、これも憲法94条と同じく、条例制定権の根拠であるとともに、その範囲と限界を定めた規定であると解される。 以上によれば、普通地方公共団体は、法令の明文の規定又はその趣旨に反する条例を制定することは許されず、そのような法令の明文の規定又はその趣旨に反する条例は、たとえ制定されても、条例としての効力を有しないものといわなければならないところ、条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく、それぞれの趣旨、目的、 内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾抵触があるかどうかによってこれを決するのが相当である。 ⑵ これを本件につきみると、勤務時 象事項と規定文言を対比するのみでなく、それぞれの趣旨、目的、 内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾抵触があるかどうかによってこれを決するのが相当である。 ⑵ これを本件につきみると、勤務時間条例7条の2第1項本文は、「 任命権者は、第2条から第5条までに規定する勤務時間(以下正規の勤務時間」という。)以外の時間において職員に設備等の保全、外部との連絡及び文書の収 受を目的とする勤務その他の断続的な勤務をすることを命ずることができる。」と規定し、宿日直規則2条は、その柱書において「 宿日直勤務とは、正規の勤務時間(職員の勤務時間、休暇等に関する条例第7条の2に規定する正規の勤務時間をいう。)外の時間、職員給与条例第13条に規定する祝日法による休日等及び年末年始の休日等並びに国の行事の行われる日等で人事委 員会が指定する日に行う次の各号に掲げる勤務をいう。」と規定し、その4号 において、 警察本部又は警察署における警備又は事件の捜査、処理等のための当直勤務」と規定するものである。 ⑶ そこで検討するに、確かに、勤務時間条例7条の2第1項本文には、総務省が示す同趣旨の条例案にみられるような人事委員会の許可を受けて」との文言が存在しない。 しかし、勤務時間条例7条の2第1項本文にいう断続的な勤務」が、労基法41条3号の断続的労働」を意味することは、その内容からして明らかである。そして、労基法112条は、 この法律及びこの法律に基いて発する命令は、国、都道府県、市町村その他これに準ずべきものについても適用あるものとする。」と規定し、一般職地方公務員については、地公法58条3 項に基づき、いくつかの労基法上の規定が適用除外とされる以外には、労基法の規定が直接適用されることを定めている。 加え るものとする。」と規定し、一般職地方公務員については、地公法58条3 項に基づき、いくつかの労基法上の規定が適用除外とされる以外には、労基法の規定が直接適用されることを定めている。 加えて、労基法13条は、 この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。」と規定し、労基法上の規定が最低基準であることを定めるところ、このような関係法令の建て付けを 考慮すれば、勤務時間条例7条の2第1項本文が、労基法41条の適用を除外する趣旨で制定されたものとは到底解されない。 ⑷ また、地公法58条5項によれば、地公法上の職員に労基法の規定を適用する場合における職員の勤務条件に関する労働基準監督機関の職権は、人事委員会が行うものとされている。このことからすれば、勤務時間条例7条の 2第1項本文に人事委員会の許可を受けて」との文言が存在しなくても、同条同項がいう断続的な勤務」に労基法41条3号にいう行政官庁の許可」として人事委員会の許可が必要であることは明らかといえる。 ⑸ 以上によれば、勤務時間条例7条の2第1項は、法令に違反するものとはいえないし、宿日直規則2条が法令に違反するものともいえない。 3 争点3(a警察署における宿日直勤務に関する人事委員会の許可の有無)に ついて⑴ 被告は、a警察署における宿日直勤務に関し県人事委から労基法41条3号の許可を受けていると主張するところ、許可証の原本又は写しなど、当該許可そのものを客観的に示す文書そのものの証拠提出はない。 ⑵ しかし、後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ア県人事委は、令和3年3月24日、県人事委の事務局職員課長名義の断続的な宿直又は日直勤務にかかる調査について(依頼) しかし、後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ア県人事委は、令和3年3月24日、県人事委の事務局職員課長名義の断続的な宿直又は日直勤務にかかる調査について(依頼)」と題する文書をもって、警察本部やa警察署を含む警察署等の各事業所の長に対し、 貴事務所における断続的な宿直又は日直に勤務につきましては、労働基準法施行規則第23条に基づき、当局にて許可を行っておりますが、許可後、一定 期間を経過しているため、現時点(令和3年3月31日)における実態調査を実施したいと考えております。つきましては、許可申請書に準じた別添調査票により令和3年4月28日(水)までにご回答いただきますようお願いします。」として、宿日直体制に関し、「 総員数」 1回の宿直員(日直員)数」 宿直(日直)勤務の開始及び終了時刻」 一定期間における1 人の宿直(日直)回数」 1回の宿直(日直)手当」 就寝設備(当直のみ)」勤務の態様」につき回答を求めた。 (乙6)イ県人事委は、令和6年6月27日、警察本部からの照会に対し、上記アの調査は、調査対象事業所について県人事委が宿日直勤務の許可を行って いるという認識のもとに調査を行ったものである旨の回答をするとともに、調査対象事業所の選定に利用した資料として宿日直がある職場」の一覧表(以下本件一覧表」という。)を送付した。 (乙8の1及び2)ウこれに対し、警察本部が、令和6年12月4日、県人事委に対し、本件 一覧表は、いつから県人事委において保存されているものであるかを照会 したところ、県人事委は、少なくとも平成29年度には同様の資料があった旨の回答をした。 (乙11の1及び2)エこれに対し、警察本部は、令和6年12月4日、県人事委に対し、 あるかを照会 したところ、県人事委は、少なくとも平成29年度には同様の資料があった旨の回答をした。 (乙11の1及び2)エこれに対し、警察本部は、令和6年12月4日、県人事委に対し、本件一覧表については、少なくとも平成29年度には同様の資料があったとの ことであるが、県人事委が保有する平成29年度以降の文書において、長崎県警察に係る宿日直勤務の許可申請、不許可、許可の取消し、指導、勧告の文書の存在の有無、あればその内容について照会したところ、県人事委は、照会対象の文書は存在しない旨の回答をした。 (乙12の1及び2) ⑶ 以上によれば、a警察署における宿日直勤務に関する県人事委の許可日は判然としないが、警察内部において管内の各警察署における断続的な宿日直勤務に関し県人事委に対し許可申請を行うための起案文書が残存していること(乙4)をも加味すると、遅くともD警部補がa警察署に赴任して宿日直業務を行った時点までには、a警察署における宿日直勤務に関し、県人事委 が労基法41条3号の許可を与えていたことが認められる。 ⑷ この点、原告らは、労基法41条3号の許可は、許可後、申請事項に変更があった場合は許可の再申請を要する上、仮に、被告において労基法41条3号の許可を得ていたのであれば、乙第4号証が作成された昭和42年から54年後に乙第6号証が作成されるまでの間、再度の申請及び許可が一度も なかったとは考えられない(a警察署は改築もされており宿日直の設備等にも変更があったと思われる。)などと主張するところ、前記のとおり、県人事委の許可日は判然としない。 しかし、そのことの当否はともかく、遅くともD警部補がa警察署に赴任して宿日直業務を行っていた時点までには、a警察署における宿日直勤務に 関し のとおり、県人事委の許可日は判然としない。 しかし、そのことの当否はともかく、遅くともD警部補がa警察署に赴任して宿日直業務を行っていた時点までには、a警察署における宿日直勤務に 関し県人事委が労基法41条3号の許可を与えていたとの認定・判断は揺る がず、当該許可が無効であるともいえない。 4 争点4(年次休暇又は夏季休暇を取得して正規の勤務時間に稼働した場合に時間外手当等の支払を要するか否か)⑴ 年次休暇に関し、勤務時間条例11条1項本文は、「 年次休暇は、一の年ごとにおける休暇とし、その日数は、一の年において、次の各号に掲げる職員 の区分に応じて、当該各号に掲げる日数とする。」と規定し、年次休暇の制度を定めている。同条3項は、 任命権者は、年次休暇を職員の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に年次休暇を与えることが公務の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。」と規定し、年次休暇について、職員が時季指定権を有することを定 めている。 また、夏季休暇に関し、勤務時間条例16条は、 特別休暇は、選挙権の行使、結婚、出産、交通機関の事故その他の特別の事由により職員が勤務しないことが相当である場合として人事委員会規則で定める場合における休暇とする。この場合において、人事委員会規則で定める特別休暇については、人 事委員会規則でその期間を定める。」と規定し、特別休暇の制度を定めるところ、勤務時間規則13条15号において、特別休暇の一種として夏季休暇が定められている。これによれば、夏季休暇は、 職員が夏季における盆等の諸行事、心身の健康の維持及び増進又は家庭生活の充実のために請求した場合」に一の年の6月から9月(任命権者が特に必要と認める場合にあっては いる。これによれば、夏季休暇は、 職員が夏季における盆等の諸行事、心身の健康の維持及び増進又は家庭生活の充実のために請求した場合」に一の年の6月から9月(任命権者が特に必要と認める場合にあっては1 0月)までの期間内における原則として連続する5日の範囲内の期間」付与される、というものである。 年次休暇及び夏季休暇は、いずれも勤務時間条例10条所定の休暇のひとつであり、給与条例13条によれば、職員が年次休暇又は夏季休暇を取得して勤務しないときであっても給与の減額は行われない建て付けとなっている。 ⑵ この点、原告らは、年次休暇及び夏季休暇は、いずれもその取得の効果が 労働日を非労働日に転換する、あるいは本来存在する労働義務を一義的に消滅させるというものであるから、年次休暇又は夏季休暇を取得した日の所定労働時間はゼロであり、これらを取得しつつ勤務した日の法定時間内労働は全て所定時間外労働となるから、通常の労働に対するのと同一の賃金が支払われるべきである旨主張する。 また、原告らは、休日勤務手当との平仄も主張するが、年次休暇及び夏季休暇は、いずれも職員の申請に基づくものであることからすれば、休日とは異なる制度であるというべきものであることに加え、社会通念に照らすと、年次休暇又は夏季休暇を申請しつつ職員が勤務した場合には、当該勤務状況に応じ当該申請を撤回したものとみるのが相当である。 ⑶ 以上によれば、D警部補が有給休暇又は夏季休暇の申請をしつつ出勤した令和2年4月30日、同年5月28日、同年6月16日、同年7月8日、同年9月18日及び同月24日の正規の勤務時間内(午前9時から午後5時45分まで)の勤務は、時間外勤務とは認められない。 5 小括 ⑴ 以上によれば、各日のD警部補の時間外勤 年7月8日、同年9月18日及び同月24日の正規の勤務時間内(午前9時から午後5時45分まで)の勤務は、時間外勤務とは認められない。 5 小括 ⑴ 以上によれば、各日のD警部補の時間外勤務の合計は、別紙4 時間外勤務一覧」の残業(時間外)合計」欄記載のとおりとなり、その割増賃金毎の内訳も、同一覧記載のとおりとなる。 また、弁論の全趣旨によれば、勤務1時間当たりの給与額(給与条例17条に規定する勤務1時間当たりの給与額をいう。以下同じ。)は、別紙7「 時 間外勤務手当一覧表(月毎)」の 1時間給与」記載欄のとおりと認められ、割増賃金毎に支給割合を乗じた場合の手当額は、同一覧表の手当額」記載のとおりとなるが、ここから既払い額を控除すると、割増賃金の未払額は、別紙8「 割増賃金(令和2年4月~11月)」の割増賃金(令和2年4月~11月)」欄のうちの未払額(時間外勤務手当)」欄記載のとおりとなる。 ⑵ なお、長崎県警察職員の勤務時間等に関する訓令によれば、宿直明けの正 規の勤務時間は、令和2年7月25日までが別紙9のとおりとされており、同月26日以降が別紙10のとおりとされている。 6 争点5(付加金請求の当否)について⑴ 労基法114条において、裁判所が、労働者の請求により、労基法37条等の規定に違反した使用者に対し、これらの規定により使用者が支払わなけ ればならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができるものと定められているのは、労働者の保護の観点から、上記の割増賃金等の支払義務を履行しない使用者に対し、一種の制裁として経済的な不利益を課すこととし、その支払義務の履行を促すことのより上記各規定の実効性を高めるとともに、使用者による上記の休業手当等の支払い 賃金等の支払義務を履行しない使用者に対し、一種の制裁として経済的な不利益を課すこととし、その支払義務の履行を促すことのより上記各規定の実効性を高めるとともに、使用者による上記の休業手当等の支払い 義務の不履行によって労働者に生ずる損害を填補する趣旨に基づくものであるものと解される(最高裁平成27年5月19日第三小法廷決定・民集69巻4号635頁参照)。そして、付加金の支払を命ずるべきか否か、及び命ずるとした場合の金額を決定するに当たっては、使用者による労基法違反に至る経緯、その違反の内容や程度、労働者の不利益の内容や程度等の諸般の事 情を総合的に考慮すべきであると解される。 ⑵ これを本件についてみると、①別紙4 時間外勤務一覧」のとおり、D警部補においては、自死前、月200時間前後の時間外労働が常態化しており、徹夜勤務も繰り返していたこと、②このようなD警部補の勤務実態と同人の時間外勤務、休日勤務及び夜間勤務命令簿」上の記載との間には大きな齟 齬があるところ「(甲B2の2、4枚目参照)、その理由は、当時、a警察署のE署長が、県警察の命題でもある職員のワーク・ライフ・バランスの実現のため、署員の休暇の取得の促進や時間外勤務の抑制を積極的に捉え、各課の幹部に対してその旨繰り返し指示を行っていたのを、D警部補の直属の上司であるF課長が一部曲解し、職員による時間外勤務の申告につき 45時間 以内にしろ」等の指示を行っていたことにあったものと認められ(甲B7の 1、4枚目参照)、このように、当時、a警察署においては、職員の正確な勤務実態の把握が行われていなかったばかりか、幹部からは時間外労働の過少申告を招くような不適切な指示が行われていて、D警部補以外にも、実際の勤務時間よりも短い時間外勤務を申告したり、年 職員の正確な勤務実態の把握が行われていなかったばかりか、幹部からは時間外労働の過少申告を招くような不適切な指示が行われていて、D警部補以外にも、実際の勤務時間よりも短い時間外勤務を申告したり、年休を取得したことにしたりして実際は出勤したりする職員も存在したこと(甲B7の3、1枚目)、③そ の結果、D警部補は心身に不調を来たし自死するに至ったものであるが、正確な勤務実態の把握を怠る一方で、過労死ラインの月200時間前後の時間外労働が常態化している職場の状況であれば、いつ職員が心身に不調を来たし、場合によっては死に至ることもあり得ることは、D警部補の職務を管理監督すべき立場の長崎県警察の公務員において予見可能であったといえるこ となどの本件に顕れた一切の事情を考慮すれば、被告に対しては、割増賃金と同額の付加金の支払を命じるのが相当である。 第4 結論よって、原告らの請求は主文の限度で理由があるからその限度で認容し、その余は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。 なお、仮執行免脱宣言の申立ては相当でないからこれを付さないこととする。 長崎地方裁判所民事部 裁判長裁判官松永晋介裁判官三嶋志織 裁判官吉澤孝は、転補につき、署名押印することができない。 裁判長裁判官松永晋介 (別紙5及び同6を除くその余の別紙につき掲載省略)
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