平成23(行ケ)10155 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成24年2月15日 知的財産高等裁判所 4部 判決 請求棄却
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平成24年2月15日判決言渡同日原本受領裁判所書記官平成23年(行ケ)第10155号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成24年1月25日判決原告マイクロソフトコーポレーション同訴訟代理人弁理士阿部豊隆谷義一阿部和夫梅田幸秀新開正史藤原弘和窪田郁大被告特許庁長官同指定代理人加内慎也小曳満昭樋口信宏板谷玲子 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 請求特許庁が不服2008-26114号事件について平成22年12月22日にし た審決を取り消す。 第2 事案の概要本件は,原告が,下記1のとおりの手続において,特許請求の範囲の記載を下記2とする本件出願に対する拒絶査定不服審判の請求について,特許庁が同請求は成り立たないとした別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記3のとおり)には,下記4の取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。 1 特許庁における手続の経緯(1) 原告は,平成12年12月7日,発明の名称を「注釈を付ける文書処理装置」とする特許を出願したが(特願2001-544198。パリ条約による優先権主張日:平成11年12月7日(米国)。甲4),平成20年7月7日付けで拒絶査定を受けたので(甲12),同年10 書処理装置」とする特許を出願したが(特願2001-544198。パリ条約による優先権主張日:平成11年12月7日(米国)。甲4),平成20年7月7日付けで拒絶査定を受けたので(甲12),同年10月9日,これに対する不服の審判を請求した(甲13)。 (2) 特許庁は,前記請求を不服2008-26114号事件として審理し,平成22年12月22日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との本件審決をし,その謄本は,平成23年1月7日,原告に送達された。 2 特許請求の範囲の記載本件審決が審理の対象として認定した特許請求の範囲は,平成20年4月18日付け手続補正書(甲11)に記載のものであって,次のとおりである。以下,当該特許請求の範囲に属する発明を「本願発明」といい,本願発明に係る明細書(甲5)を,「本願明細書」という。なお,以下の「/」は,原文における改行箇所である。 【請求項22】ディスプレイデバイス,コンピュータ,入力デバイスおよび記憶デバイスを有する文書処理システムにおいて注釈を付けるためのコンピュータ実施方法であって,前記コンピュータは,/ファイルの中の修正不可の部分の中のユーザが選択可能な複数のオブジェクトのページの第1の表示部分を前記ディスプレイデバイスの表示画面上に表示するステップと,/ユーザが選択可能な複数のオブジェ クトのページからの選択に関するユーザ入力を前記入力デバイスから受け取るステップと,/選択の前記オブジェクトに関連する注釈を作成するステップと,/前記ファイルの修正不可の部分の中の前記選択のオブジェクトのファイル位置を決定するステップと,/前記位置と前記注釈を前記ファイルの修正不可の部分とは別個に前記記憶デバイスに記憶するステップと,/その後,前記注釈が選択された時に,前記表示画面上の第2の表示部 ァイル位置を決定するステップと,/前記位置と前記注釈を前記ファイルの修正不可の部分とは別個に前記記憶デバイスに記憶するステップと,/その後,前記注釈が選択された時に,前記表示画面上の第2の表示部分を前記位置に基づいて前記選択のオブジェクトにナビゲートするステップと/を実行することを特徴とするコンピュータ実施方法 3 本件審決の理由の要旨(1) 本件審決の理由は,要するに,本願発明が米国特許第5146552号明細書(甲1。以下「引用例」という。)に記載された発明及び周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。 (2) なお,本件審決が認定した引用例に記載された発明(以下「引用発明」という。)並びに本願発明と引用発明との一致点及び相違点は,以下のとおりである。 ア引用発明:ディスプレイ,プロセッサ,キーボードおよびディスクドライブを有する文書処理システムにおいて注釈を付けるためのコンピュータ実施方法であって,前記コンピュータは,ファイルの中のコンテキスト部分の中のユーザが選択可能な複数のオブジェクトのページの表示対象部分をディスプレイの表示画面上に表示するステップと,ユーザが選択可能な複数のオブジェクトのページからの選択に関するユーザ入力を前記キーボードから受け取るステップと,選択の前記オブジェクトに関連する注釈を作成するステップと,前記ファイルのコンテキスト部分の中の前記選択のオブジェクトのコーディネートを決定するステップと,前記コーディネートと前記注釈を前記ファイルのコンテキスト部分とは別個に前記ディスクドライブに記憶するステップと,を実行するコンピュータ実施方法イ一致点:ディスプレイデバイス,コンピュータ,入力デバイス ィネートと前記注釈を前記ファイルのコンテキスト部分とは別個に前記ディスクドライブに記憶するステップと,を実行するコンピュータ実施方法イ一致点:ディスプレイデバイス,コンピュータ,入力デバイスおよび記憶デバイスを有する文書処理システムにおいて注釈を付けるためのコンピュータ実施方 法であって,前記コンピュータは,ファイルの特定部分の中のユーザが選択可能な複数のオブジェクトのページの表示部分を前記ディスプレイデバイスの表示画面上に表示するステップと,ユーザが選択可能な複数のオブジェクトのページからの選択に関するユーザ入力を前記入力デバイスから受け取るステップと,選択の前記オブジェクトに関連する注釈を作成するステップと,前記ファイルの特定部分の中の前記選択のオブジェクトのファイル位置を決定するステップと,前記位置と前記注釈を前記ファイルの特定の部分とは別個に前記記憶デバイスに記憶するステップと,を実行するコンピュータ実施方法ウ相違点1:本願発明の「ファイルの特定部分」は,「ファイルの中の修正不可の部分」であるのに対し,引用発明の「ファイルの特定部分」(ファイルのコンテキスト部分)は,「ファイルの中の修正不可の部分」の中とは限らない(引用例には「修正不可の部分」に関する記載がない。)点エ相違点2:本願発明は,「その後,前記注釈が選択された時に,前記表示画面上の第2の表示部分を前記位置に基づいて前記選択のオブジェクトにナビゲートするステップ」を有しているのに対し,引用発明は,それに相当するステップを有しない(引用例にはそれに相当するステップに関する記載がない。)点 4 取消事由本願発明の容易想到性に係る判断の誤り(1) 相違点1に係る判断の誤り(取消事由1)(2) 相違点2の認定及び判断の誤り(取消事由2)第3 ステップに関する記載がない。)点 4 取消事由本願発明の容易想到性に係る判断の誤り(1) 相違点1に係る判断の誤り(取消事由1)(2) 相違点2の認定及び判断の誤り(取消事由2)第3 当事者の主張 1 取消事由1(相違点1に係る判断の誤り)について〔原告の主張〕(1) 本件審決は,相違点1について,①文書処理システム一般において,扱う文書ファイルをだれもが自由に修正できるよう設定したり,特別な権限等を有しない者に対してはファイルの一部又は全部を修正不可として文書を保護したりできる ことは,周知の技術である,②引用発明も文書処理システムであり,そこにおいても上記周知の技術を用いてファイルの一部又は全部を修正不可とするのが有用な場合があることは,当業者に自明である,③引用発明は,もともと注釈等をファイルの特定部分とは別個に記憶するものであり,注釈等を付加しても文書のオリジナル部分は何ら変更されないから,上記周知の技術を用いてファイルの一部又は全部を修正不可にできない理由がない,④以上のことは,とりもなおさず引用発明について本願発明の相違点1に係る構成を採用する当業者にとって容易であったことを意味している旨を説示する。 (2) しかしながら,本件審決は,前記(1)①に記載の周知技術の認定に当たり,何らの根拠文献を示しておらず,その存在を立証していないから,当該周知技術が存在するとの前提において誤っている。 次に,本件審決は,前記(1)②の説示に当たり,上記周知技術を適用した場合に引用発明の注釈付与技術がそのまま適用できるのかどうか,仮に,これが可能であるとして,そのような適用が有用であるかどうか,また有利であるとすればどのような点において有利であるかについて何ら検討していない。例えば,引用例には,ユーザ1が付与 のかどうか,仮に,これが可能であるとして,そのような適用が有用であるかどうか,また有利であるとすればどのような点において有利であるかについて何ら検討していない。例えば,引用例には,ユーザ1が付与した注釈をユーザ2がレビューした上で,コンテキストを修正する方法について記載があるが,上記周知技術を適用すると,このような修正方法は,実行できなくなるという不利益がある。本件審決は,このような不利益を凌駕するほどの有用な場合があることについて何ら説示していない。 むしろ,引用例の記載によれば,引用発明の目的は,テキスト本文が修正可能という前提のもとで,テキスト本文の特定の部分に注釈を付けること及びテキスト本文が修正された場合であっても,注釈とそれに関連付けられたテキスト本文の特定の部分との対応関係を保つことにある。しかしながら,引用発明においてファイルの一部又は全部を修正不可にすると,テキスト本文が変更可能であるという前提が崩れてしまい,引用発明の目的も達成できなくなる。したがって,引用例には阻害事由があり,当業者は,引用発明に基づき,ファイルの一部又は全部を修正不可と することを容易に想到できないというべきである。 (3) また,本件審決は,本願発明の効果が引用発明及び周知の事項から予測される範囲内のものにすぎない旨を説示する。 しかしながら,引用発明は,内容の編集が可能な文書を表示することとされている一方,本願発明は,ファイルの中に修正不可の部分を含み,この部分に注釈を作成するようにしたものであって,「ユーザによる,作品をアクティブ実際に読み,注釈を付けたいという希望は,出版社による,著作権保護された作品をそれらの未修正の状態に維持するための目標とぶつか」っていた(本願明細書【0007】)という課題を解決するという格別の効果を奏す み,注釈を付けたいという希望は,出版社による,著作権保護された作品をそれらの未修正の状態に維持するための目標とぶつか」っていた(本願明細書【0007】)という課題を解決するという格別の効果を奏するものである。そして,本願発明は,ファイルが修正不可である以上,選択のオブジェクトのファイル位置も固定されており,注釈の記憶手段への記憶をより簡潔に行い得ることが明らかであるし,ファイルを修正不可とすることが容易に想到できるからといって,注釈の作成及び記憶方法までもが容易に想到できるものではないから,引用発明のファイルの一部を修正不可とすることが容易に想到できるからといって,本願発明の作用効果を否定することはできない。 (4) 以上のとおり,本件審決は,相違点1について前記(2)及び(3)に記載の検討を怠っており,審理不尽であるほか,本願発明の作用効果の評価を誤るものであるから,違法として取り消されるべきである。 〔被告の主張〕(1) 周知技術については,必ずしも根拠文献を示す必要はない。なお,扱う文書ファイルを誰もが自由に修正できるように設定したり,特別な権限等を有しない者に対してはファイルの一部又は全部を修正不可として文書を保護したりできるという周知技術(前記〔原告の主張〕(1)①参照)は,原告作成の文書を含めて根拠文献が存在する(乙1~4)。 上記周知技術は,不正又は意図しない修正が文書にされることを防止するための技術であるということができるところ,引用発明が扱う文書についても当該技術を 利用できるのが望ましいことは,当然である。むしろ,引用例には,ユーザ2がコンテキストを修正する方法について記載があるとは解されないし,仮に記載があるとしても,引用例にはコンテキストの修正を前提としない発明も含まれているから,そのような発明 しろ,引用例には,ユーザ2がコンテキストを修正する方法について記載があるとは解されないし,仮に記載があるとしても,引用例にはコンテキストの修正を前提としない発明も含まれているから,そのような発明に上記周知技術を適用しても,不利益は生じない。 また,本件審決は,上記周知技術を用いた場合に引用発明の注釈付与技術がそのまま適用できるかどうかについても検討していることが明らかであるし(前記〔原告の主張〕(1)③参照),上記のようなユーザ2によるコンテキストの修正に関する引用例の記載を勘案すると,上記周知技術を適用した場合であっても引用発明の注釈付与技術がそのまま適用できることが明らかである。 さらに,引用例には,本文の修正の際にも対応関係を保つことを目的とするとの記載はないから,当業者は,引用例から,引用発明が本文が修正されることを前提としない発明であることを把握可能である。仮に,引用発明が本文の修正を前提としているとしても,そのことから,引用発明の本文を修正不可とすると,注釈を付けることができなくなるということにはならない。 (2) 引用発明は,注釈をファイルと別個に保存することで,ファイルには何らの修正も加えずに注釈を付けることを可能としているから,本願発明の解決すべき課題は,既に引用発明のみで解決できるものである。 また,本願発明の特許請求の範囲は,原告主張に係る「注釈の記憶手段への記憶を簡潔に行い得る」といった効果を奏するための記憶手段への具体的記憶方法について何ら規定していないし,ファイルが修正可能な発明を排除していないから,当該原告の主張は,特許請求の範囲に基づかないものである。仮に,本願発明が,ファイルが修正可能な発明を排除しており,上記「簡潔に行い得る」ものであるとしても,そのような発明は,引用発明から容易に想到可能なもの 主張は,特許請求の範囲に基づかないものである。仮に,本願発明が,ファイルが修正可能な発明を排除しており,上記「簡潔に行い得る」ものであるとしても,そのような発明は,引用発明から容易に想到可能なものである。 (3) よって,原告の主張は,いずれも失当である。 2 取消事由2(相違点2の認定及び判断の誤り)について〔原告の主張〕 (1) 相違点2の認定の誤りについてア本件審決は,引用発明及び相違点2を前記第2の3(2)ア及びエに記載のとおり認定し,かつ,相違点2の判断に当たって,引用発明には後に「注釈」と「選択のオブジェクト」を関連付けて表示するステップを付加することの容易想到性について説示していることから,引用発明が,注釈を作成するステップ及び注釈を記憶するステップを有するものの,注釈を表示するステップを有していないものと認定していることが明らかである。 イしかしながら,およそ,注釈を作成し,かつ,記憶しているにもかかわらず,これを表示しないことはあり得ないし,引用例には,「後に「注釈」と「選択のオブジェクト」を関連付けて表示するステップ」の一形態,すなわち,ユーザ1が注釈付けを行った後,ユーザ2のワークステーションにおいて,注釈が段落の近傍に表示される旨の記載があるほか,その旨の図示がある。そして,上記「表示するステップ」を除外すると,引用例に記載の発明は,本件審決が認めた「後に「注釈」と「選択のオブジェクト」とを関連付けて表示することを可能にする」という目的を達成できなくなるから,「表示するステップ」は,必須の構成である。 したがって,引用発明及び相違点2は,それぞれ次のように認定されるべきである。なお,下線部が付加又は変更された部分である。 (ア) 引用発明:ディスプレイ,プロセッサ,キーボードおよびディスク 。 したがって,引用発明及び相違点2は,それぞれ次のように認定されるべきである。なお,下線部が付加又は変更された部分である。 (ア) 引用発明:ディスプレイ,プロセッサ,キーボードおよびディスクドライブを有する文書処理システムにおいて注釈を付けるためのコンピュータ実施方法であって,前記コンピュータは,/ファイルの中のコンテキスト部分の中のユーザが選択可能な複数のオブジェクトのページの表示対象部分をディスプレイの表示画面上に表示するステップと,/ユーザが選択可能な複数のオブジェクトのページからの選択に関するユーザ入力を前記キーボードから受け取るステップと,/選択の前記オブジェクトに関連する注釈を作成するステップと,/前記ファイルのコンテキスト部分の中の前記選択のオブジェクトのコーディネートを決定するステップと,/前記コーディネートと前記注釈を前記ファイルのコンテキスト部分とは別個に前 記ディスクドライブに記憶するステップと,/その後,前記ディスプレイの表示画面上に,前記注釈を,前記コーディネートに基づいて,前記選択のオブジェクトの近傍に表示するステップと/を実行するコンピュータ実施方法(イ) 相違点2:本願発明は,「その後,前記注釈が選択された時に,前記表示画面上の第2の表示部分を前記位置に基づいて前記選択のオブジェクトにナビゲートするステップ」を有しているのに対し,引用発明は,「その後,前記ディスプレイの表示画面上に,前記注釈を,前記コーディネートに基づいて,前記選択のオブジェクトの近傍に表示するステップ」を有している点ウしかるに,本件審決は,引用発明及び相違点2について誤った認定のもとで相違点2を容易に想到できると判断したのであるから,違法として取消しを免れない。 (2) 相違点2に係る判断の誤りについてア本 るに,本件審決は,引用発明及び相違点2について誤った認定のもとで相違点2を容易に想到できると判断したのであるから,違法として取消しを免れない。 (2) 相違点2に係る判断の誤りについてア本件審決は,①引用発明において「前記ファイルのコンテキスト部分の中の前記選択のオブジェクトのコーディネートを決定するステップ」とその「コーディネート」を「記憶するステップ」が設けられている理由が,後に「注釈」と「選択のオブジェクト」とを関連付けて表示することを可能にするためであることは,当業者に自明であり,引用発明に,「後に「注釈」と「選択のオブジェクト」を関連付けて表示するステップ」を付加することは,当業者が容易に推考し得たことである,②引用発明に「後に「注釈」と「選択のオブジェクト」を関連付けて表示するステップ」を付加する際の画面構成や所望表示情報の選択方法等のユーザインタフェースをどのように構成するかは当業者が適宜設計すべき事項である,③「「選択のオブジェクト」に相当するものといえる「ドキュメントの特定の部分」に関連付けられた特定の情報(ブックマーク)が選択された時に,画面の特定の表示部分に当該「ドキュメントの特定の部分」を表示する(ナビゲートする)」ようにしたユーザインタフェースは,米国特許第5737599号明細書(甲2。以下,同明細書に記載の発明を「甲2発明」という。)にも示されるように周知であり,引用発 明に上記「後に「注釈」と「選択のオブジェクト」を関連付けて表示するステップ」を付加する際にも当該周知のユーザインタフェースが有用な場合があることは,当業者に自明である,④引用発明の「注釈」は,甲2発明のブックマークと同様に「ドキュメントの特定の部分」に関連付けられた情報であり,引用発明に上記「後に「注釈」と「選択のオブジェク 合があることは,当業者に自明である,④引用発明の「注釈」は,甲2発明のブックマークと同様に「ドキュメントの特定の部分」に関連付けられた情報であり,引用発明に上記「後に「注釈」と「選択のオブジェクト」を関連付けて表示するステップ」を付加するとともに上記周知のユーザインタフェースを採用しようとした場合に,当該「後に「注釈」と「選択のオブジェクト」を関連付けて表示するステップ」を「その後,前記注釈が選択された時に,前記表示画面上の第2の表示部分を前記位置に基づいて前記選択のオブジェクトにナビゲートするステップ」に相当するステップとすることは,当業者が普通に考えることである旨を説示する。 イしかしながら,甲2は,「ユーザが章を選択するとき,その章の最初のページが表示ウィンドウに表示される」ことを示しているにすぎず,これが存在することだけで,本件審決が摘示するような一般的・抽象的なユーザインタフェースが周知技術であると認定することはできないし,本件審決は,いかなる情報に基づいて選択のオブジェクトにナビゲートするのかも明らかにしていない。また,引用発明の「注釈」は,全て本文と同じページに関連付けられているから,引用発明に甲2発明を適用しても,同じページ上に付与された多数の注釈のいずれを選択しても同じページが選択されるだけであって,本願発明の相違点2に係る構成を想到することにはならない。 また,1つのウィンドウに表示される本文の特定の段落に対して付与される任意の情報を「注釈」と呼んでいる引用発明とは異なり,甲2発明では,章又は章表題がブックマーク中のラベルとして用いられており,かつ,本文とブックマークが個別のウィンドウに表示されることで,ユーザがブックマーク中のラベルに基づいて本文に含まれた情報を確認することができる。このように,引用発明の「 ラベルとして用いられており,かつ,本文とブックマークが個別のウィンドウに表示されることで,ユーザがブックマーク中のラベルに基づいて本文に含まれた情報を確認することができる。このように,引用発明の「注釈」と甲2発明の「ブックマーク」とでは,技術的意義が異なるから,甲2発明の「ブックマーク」の技術が引用発明の「注釈」に用いられ得るとはいい難いし,引用発明 にいう「コーディネート」は,表題及び段落の相対的な位置関係を特定する情報というべきであるから,「コーディネート」に基づいて「前記選択のオブジェクト」にナビゲートできるとは限らない。 ウ仮に,本件審決の認定に係る周知技術が存在するとしても,引用発明は,2名のユーザがドラフトをレビューするような場合にある注釈が本文のどの部分に対応するのか分かりやすくするため,注釈とそれに対応する本文の部分が同じ表示画面に隣接して表示されることに意味があるから,当該周知技術を組み合わせた上で注釈を選択しても,表示画面は,何ら変わらない。したがって,当業者は,引用発明に上記周知技術を組み合わせる動機付けがないし,引用発明に当該周知技術を組み合わせ,かつ,2つのウィンドウでそれぞれ「注釈」と「本文」を個別に表示するように構成した場合,両者が分離してしまうため,ある「注釈」が本文のどの部分に対応するのかが分かりにくくなってしまう。 また,引用例には,上記の技術的意義のために本文中の1つの段落に複数の注釈を付加することが開示されているが,この注釈は,ユーザが自らの思想を表現することを目的としており,ドキュメントとともに見ていく注釈であって,ドキュメントの中から関連付けられた部分を選び出すことを目的として付けられたものではない。他方,上記周知技術においては,「特定の情報(ブックマーク)」は,ドキュメントの ともに見ていく注釈であって,ドキュメントの中から関連付けられた部分を選び出すことを目的として付けられたものではない。他方,上記周知技術においては,「特定の情報(ブックマーク)」は,ドキュメントの中から特定の部分を選び出すことを目的として当該部分に付けられたマークないしラベルであって,「ドキュメントの特定の部分」に一対一で関連付けられており,具体的には,当該部分を簡潔に表すような内容である。このように,引用発明の「注釈」と上記周知技術における「ドキュメントの特定の部分に関連付けられた特定の情報」とでは技術的意義が異なる。 そして,引用発明に上記周知技術を組み合わせると,「ドキュメントの特定の部分」を表示するために選択可能な情報(注釈)が複数存在する形態が得られることになるが,このような形態では,ブックマークがあるドキュメントに一対一で関連付けられた「特定の」情報とはいえなくなってしまい,当該周知技術の技術的意義 が没却されることになる。また,被告主張に係る2つのウィンドウで引用発明の画面と甲2発明の画面とを表示したとしても,甲2発明は,上記のとおりドキュメントの特定の部分を簡潔に表すものであってユーザの思想を表現するものではないから,その画面中に引用発明の「注釈」部分が表示されることにはならない。このことは,甲2発明のブックマークを「章または章表題」以外の部分に付与することを考えついたとしても,同じである。以上のとおり,引用発明に甲2発明その他の上記周知技術に関して記載した文献(乙5~8)の内容を組み合わせたとしても,本願発明の相違点2に係る構成を想到することは,容易とはいえず,引用発明のユーザインターフェースをどのように構成するかは,当業者が適宜決定すべき事項ではない。 エさらに,引用発明は,前記のとおり「その後,前記デ 2に係る構成を想到することは,容易とはいえず,引用発明のユーザインターフェースをどのように構成するかは,当業者が適宜決定すべき事項ではない。 エさらに,引用発明は,前記のとおり「その後,前記ディスプレイの表示画面上に,前記注釈を,前記コーディネートに基づいて,前記選択のオブジェクトの近傍に表示する」構成を備えているところ,引用発明における「前記コーディネートと前記注釈を前記ファイルのコンテキスト部分とは別個に前記ディスクドライブに記憶するステップ」は,当該構成のために存在することが明らかであるから,当該ステップのこのような技術的意義を無視して,引用発明に上記周知技術を適用することが動機付けられるものではない。 以上のとおり,引用発明には,上記周知技術を組み合わせることについて動機付けがなく,むしろ阻害事由がある。 オなお,引用例の図6では,ブックマークと注(テキスト注釈)を別個のものとして記載しているから,両者は,異なる概念である。また,被告は,引用発明の「注釈」がテキスト注釈に限られるとしても,そのようなテキスト注釈からドキュメントの特定の部分をたどることが周知技術である(乙9~11)旨を主張するが,本件審決は,ドキュメントの特定の部分に関連付けられた「特定の情報(ブックマーク)」が選択されたときに,当該ドキュメントの特定の部分にナビゲートすることを周知技術として認定したのであって,テキスト注釈からナビゲートする周知技 術については触れておらず,この点について意見を述べる機会が与えられていないから,本件審判手続には,特許法159条2項で準用する同法50条に違反する手続違背があったというべきである。 また,仮に,テキスト注釈からナビゲートする周知技術があるとしても,この技術(乙9~11)は,いずれもテキスト注釈とドキ 59条2項で準用する同法50条に違反する手続違背があったというべきである。 また,仮に,テキスト注釈からナビゲートする周知技術があるとしても,この技術(乙9~11)は,いずれもテキスト注釈とドキュメントの特定の部分との対応関係が外見上明らかでない場合に必要とされる機能である。他方,引用発明のテキスト注釈は,それに対応する本文の部分が隣接して表示されるものであるから,上記周知技術は,引用発明には不要ないし冗長な機能であって,引用発明にこれを取り入れる動機付けがない。 このように,上記周知技術は,本願発明を容易に想到させるものではない。 カよって,本件審決は,取り消されるべきである。 〔被告の主張〕(1) 相違点2の認定の誤りについて引用例に記載の方法において,注釈を作成し記憶する過程と,当該記憶した注釈を表示する過程が相互に独立していることは,明らかであり,当業者は,引用例から,審決が認定した引用発明も当然に認識可能であるから,当該引用発明の認定は,誤りではない。しかも,本願発明は,原告が上記引用発明に付加した構成を具備しておらず,本願発明とは関係しないことが明らかであるから,当該構成を認定しなかった本件審決に誤りはない。 (2) 相違点2に係る判断の誤りについてア 「「ドキュメントの特定の部分」に関連付けられた情報が選択されたときに,画面の特定の表示部分を上記「ドキュメントの特定の部分」にナビゲートする」ようにしたユーザインターフェースは,甲2のほか,多くの文献(乙5~8)に示されているから,周知技術であるといえる。 また,甲2には,「ブックマークは,ユーザ(あるいは異なるユーザ)がテキスト(またはその代わりにグラフィックス)により特別にマークやラベルを付けたド キュメントの特定の部分を,ユーザが選択し表示す 甲2には,「ブックマークは,ユーザ(あるいは異なるユーザ)がテキスト(またはその代わりにグラフィックス)により特別にマークやラベルを付けたド キュメントの特定の部分を,ユーザが選択し表示することを可能にします」との記載があるから,甲2発明の「ブックマーク」とは,ユーザが選択しマークやラベルを付けたドキュメントの特定の部分,すなわち「選択のオブジェクト」に付与されるものであり,「章又は章表題」のみにしか付与できないものでないことが明らかである。すなわち,甲2に開示されているのは,ブックマークが「章」以外のオブジェクトを選択できないということではなく,むしろ,ある「ページ」上において,(同一又は異なる)特定のオブジェクトに対して複数のブックマークを複数付与することも可能であるということや,選択されたブックマークに対応するオブジェクトが他のブックマークに対応するオブジェクトと同じページ上に存在する場合は,どちらを選択しても同じページが表示される場合もある,ということである。他方で,引用発明は,1つの段落に複数の注釈が付加されることを必須としているものではない。 このように,甲2発明の「ブックマーク」は,引用発明の「注釈」と技術的意義も異ならないから,甲2に記載の「ブックマーク」に関する技術(ブックマークが選択されたときに,画面の特定の表示部分を上記「ドキュメントの特定の部分」にナビゲートする技術)は,引用発明の「注釈」に関しても用いられ得ることが明らかである。 なお,引用発明の「注釈」は,「ブックマーク」を包含する概念であり,ユーザが自らの思想を表現することを目的としてドキュメントに対して新たに付加した文字列(テキスト注釈)に限られない。仮に,これがテキスト注釈に限られるとしても,そのようなテキスト注釈からドキュメントの特定の部 らの思想を表現することを目的としてドキュメントに対して新たに付加した文字列(テキスト注釈)に限られない。仮に,これがテキスト注釈に限られるとしても,そのようなテキスト注釈からドキュメントの特定の部分をたどることは,やはり周知技術である(乙9~11)から,原告の主張は,いずれにせよ失当である。 イ原告が主張する引用発明の相違点2に係る構成(「表示するステップ」)は,「オブジェクト」を表示させることに伴う処理であるのに対し,甲2及び乙5ないし8が開示するユーザインターフェースに関する周知技術は,「ドキュメントの特定の部分(選択のオブジェクト)に関連付けられた特定の情報」の選択に伴う処理 であって,両者は,相互に関連するものではない。したがって,引用発明に甲2発明を組み合わせることで,1つ目のウィンドウに引用発明の注釈及び本文が表示され,2つ目のウィンドウに当該注釈のリストが示され,2つ目のウィンドウに表示された注釈のリストから「注釈が選択された時に」,その注釈に「関連付けられたオブジェクト」のあるページを1つ目のウィンドウに注釈とともに表示する,すなわち「選択のオブジェクト」にナビゲートする,という形態を自然に想起することができるのであって,このことについて原告主張に係る阻害事由はない。そして,上記の形態は,上記周知技術の技術的意義を没却するものでもない。 ウ原告が主張する引用発明の相違点2に係る構成(「表示するステップ」)は,オブジェクトを表示する際に注釈を表示するだけであるから,例えばすべての注釈を見落としなくチェックするためには,注釈の付与されていないページを含む全てのページを表示して,注釈の付与されている場所を目視で探さなければならないなど,ページ数が多くなるにつれて無駄な労力や作業時間が増加する等の問題があることは ,注釈の付与されていないページを含む全てのページを表示して,注釈の付与されている場所を目視で探さなければならないなど,ページ数が多くなるにつれて無駄な労力や作業時間が増加する等の問題があることは,明らかであり,そのような問題を解決するために,引用発明を具現化するに当たって,例えば甲2及び乙5ないし8に示されるユーザインターフェースに関する周知技術を採用し付加することは,当業者であれば容易に想到し得たことである。そして,上記インターフェースは,選択したブックマークに対応するドキュメントの特定の部分にナビゲートするのであるから,当該ブックマークと特定部分との関連付けを表す何らかの情報に基づいてナビゲートしているのは,明らかであり,引用発明においては,オブジェクトのファイル位置と注釈を関連付けて記憶デバイスに記憶しているから,当該インターフェースを用いるに際して,選択オブジェクトのファイル位置に基づいて選択のオブジェクトにナビゲートするようにすることは,当業者が当然に考えることである。 エ以上のとおり,本願発明の相違点2に係る構成は,仮に原告の主張に基づいたとしても,引用発明に基づき当業者が容易に想到可能なものであって,本件審決の判断に誤りはない。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由1(相違点1に係る判断の誤り)について(1) 本願明細書の記載について本願発明は,前記第2の2に記載のとおりであるところ,本願明細書には,おおむね次の記載がある。 アこの発明は,電子的に表示されたドキュメントにおける注釈の配置及び使用に関する(【0002】)。 イ情報の電子的提示に対するユーザの親しみやすさを助長する1つの方法は,情報を電子ブックフォーマット(印刷された本によく似た方法)で提示することであるが,印刷された本をより完全 【0002】)。 イ情報の電子的提示に対するユーザの親しみやすさを助長する1つの方法は,情報を電子ブックフォーマット(印刷された本によく似た方法)で提示することであるが,印刷された本をより完全にまねるために,ユーザは,紙の本の余白への書込みに類似して,自分自身がテキストの注記を作成する能力を有することを必要とするほか,その他の書込みに類似した追加やブックマークの追加を望む(【0005】)。しかし,注釈等を電子的エディタにおいて追加した場合,注釈等がドキュメントに挿入され,その下にあるドキュメントがその挿入前のもとの状態から破損されるが,著作権保護されたドキュメントの修正は,様々な著作権の規定に抵触する可能性があるし,そうでなくても,出版社から好まれない可能性がある(【0006】)。したがって,ユーザによる,作品に注釈を付けたい等の希望は,出版社による,著作権保護された作品を未修正の状態に維持するための目標とぶつかり,このジレンマを解決しない限り,電子出版業界の成長が妨げられる可能性がある(【0007】)。 ウこの発明は,電子ドキュメントに,ドキュメント自体を破損することなく注釈を付けるための技術を提供する。この発明の「ドキュメント」は,電子的に表示可能な情報の全ての形式(本等)を包含する。ユーザは,ドキュメントにおける「オブジェクト」(テキスト等)を選択して,注釈(テキスト注記の追加やブックマーク等)が配置されるべきところを位置指定すると,コンピュータシステムは,どのオブジェクトが選択されたかを決定し,選択されたオブジェクトに関連付けら れたファイル位置を決定する。ユーザは,注釈を追加し,ドキュメントの読取りに戻る。注釈は,ドキュメントとともに表示されるが,下にあるドキュメントは,修正されない(【0008】【0009】 れたファイル位置を決定する。ユーザは,注釈を追加し,ドキュメントの読取りに戻る。注釈は,ドキュメントとともに表示されるが,下にあるドキュメントは,修正されない(【0008】【0009】)。注釈は,選択されたオブジェクトに関連付けるため,修正不可能なドキュメントにおけるファイル位置にリンクされる。 この発明は,例えば,語の最初のキャラクタのファイル位置を計算し,ファイル位置を注釈とともに,分離かつリンクされたローカルファイルに格納するなどする(【0011】)。 エこの発明によりシステムに格納された注釈のソート,修正,探索及び再命名するための表示ウィンドウ(図9)では,注釈のリスト及びその特性を表示した各ペインを表示することができ,ユーザによる注釈の選択により,ドキュメントにおいて注釈を含む位置にナビゲートすることができる(【0052】)。 (2) 引用例の記載について引用例には,そこに記載の発明についておおむね次の記載がある。 アこの発明は,広くはデータ処理方法に関連し,より具体的には電子出版における改善に関連する。 イこの発明の目的は,①オンライン電子書籍に注釈を付ける手段を提供すること,②電子書籍中の特定の位置に関連付けられるメモ,ブックマーク又は注釈を作成する手段を与えること,③電子書籍について,種々の目的のための複数の注釈同士及び/又は種々のソースからの複数の注釈同士を関連付ける手段を提供することである。 ウこの発明の操作原理は,電子的出版物の読者が,メモ,ブックマーク又は注釈を作成して,ドキュメント中の特定箇所にそれらを関連付けることを可能にする。 そのような注釈又は「プレースマーク」のレコードは,出版物の内部又は出版物とは別々に格納することができる。もとの出版物とは別々に格納された注釈は,名前によっ 所にそれらを関連付けることを可能にする。 そのような注釈又は「プレースマーク」のレコードは,出版物の内部又は出版物とは別々に格納することができる。もとの出版物とは別々に格納された注釈は,名前によってドキュメントに関連しており,様々な目的で,同じ(あるいはコピーされた)出版された電子ドキュメントへ特定の個々の読者によってアクセス及び/又は 個人間で共有や交換がされる。 エドキュメント内の特定のコンテキストと注釈との関連は,著者が電子的に出版されるドキュメントを構築する際に,そのマテリアルを「マークアップ」し,章,節,小節,段落及び図などのような主な文書要素を識別することによって,ドキュメントの構造を示したという事実を利用する。さらに,それは,読者が特定の行又は単語位置へ正確に示したいいくつかの注釈の正確な位置を決定するために「最も細かい」識別された文書要素内の相対位置を使用する。 オこの技術における注釈の形態のうち,「メモ」は,読者により作成されるテキストであり,出版資料の特定のコンテキストと関連付けられる。メモは,種々の目的のために使用できるが,一般に一読者又は共通の目的等を持つ読者のグループに特有であり,しばしば,ドキュメントの著者及び/又は他の読者との交換を唯一の目的として読者により作成される。 カいったんフォーマットされたテキストストリームの構造が表題及び順序付けられた段落に対する全体の編成により確立されると,この発明の注釈は,特定の段落に関連付けられることができ,注釈と関連する段落との間の関係の有効性を変化させることなく,全ての段落のテキストに対する変更を行うことができる。 キ図3(注釈文字列レコードのメモリイメージ)及び4(ブックのテキストを関連する注釈とともに表示した場合)では,ユーザ1(テキストの編集者 く,全ての段落のテキストに対する変更を行うことができる。 キ図3(注釈文字列レコードのメモリイメージ)及び4(ブックのテキストを関連する注釈とともに表示した場合)では,ユーザ1(テキストの編集者)及び2(テキストのもとの著者)がテキストの特定段落付近にカーソルの位置を制御することで,それぞれ注釈を入力し,入力された注釈文字列レコードがそれぞれメモリに格納され,その文字列(複数)が,テキストの位置を特定するコーディネートに基づいて画面上の上記カーソル位置の近傍に隣接して表示される例が示されている。 ク注釈文字列は,注釈が例えばブックマークとして役立つように,空文字にすることもできる。なお,図6には,「注釈」の中に「ブックマーク」を含む記載がある(注釈文字列レコード24)。 (3) 相違点1について 引用例には,前記(2)に記載のとおり,引用発明において注釈の対象となる「ファイルの特定部分」(ファイルのコンテキスト部分)が修正不可であるとの明示の記載はない一方,本願発明の当該「ファイルの特定部分」は,「ファイルの中の修正不可の部分」である点で,引用発明とは相違している(相違点1)。 (4) 電子的に作成された文書等を修正不可とする技術についてところで,乙1は,「MicrosoftWord 97 オフィシャルマニュアル」(RussellBorland 著。平成9年5月11日刊行)と題する文献であり,乙2は,「MicrosoftWord 2000 オフィシャルマニュアル」(CharlesRubin 著。 平成11年8月2日刊行)と題する文献であって,いずれも,原告が作成した文書作成ソフトウェアの「公式解説書」と銘打たれたものである。そして,これらの文献には,上記各ソフトウェアにより作成された文書の全部又は一部について, )と題する文献であって,いずれも,原告が作成した文書作成ソフトウェアの「公式解説書」と銘打たれたものである。そして,これらの文献には,上記各ソフトウェアにより作成された文書の全部又は一部について,作成者以外の者による改変から保護する機能についての説明があるほか,乙1には,文書の校閲者がコメントを付けることしかできないように文書を保護し,当該コメントを文書とは別のウィンドウ枠に表示する機能についての説明がある。 次に,乙3は,「MicrosoftExcel 97 オフィシャルマニュアル」(MarkDodge ほか著。平成9年6月1日刊行)と題する文献であり,原告が作成した表計算ソフトフェアの「公式解説書」と銘打たれたものであるが,そこには,当該ソフトウェアにより作成されたファイルを作成者以外の者による改変から保護する機能についての説明がある。 また,乙4は,「最新HTML&CGI入門」(笹木望・藤崎真美著。平成11年4月5日刊行)と題する文献であり,そこには,UNIXのファイルについて,作成者によるアクセスのみを可能とする方法についての記載がある。 以上のように,本件優先権主張日前に刊行された複数の一般的な文献において,電子的に作成された文書等のファイルの全部又は一部を修正不可として文書を保護する技術が開示されている以上,当該技術は,当該技術分野において周知であったものと認められる。 (5) 相違点1の容易想到性について以上に加えて,引用発明は,前記(2)アないしウに記載のとおり,電子出版物の読者が,当該出版物に注釈を付け,その注釈を当該出版物の特定の位置に関連付けることなどを目的とするものであって,当該電子出版物自体に改変を加えることの可否又は是非を問題とするものではないばかりか,引用例は,上記のとおり引用発明に その注釈を当該出版物の特定の位置に関連付けることなどを目的とするものであって,当該電子出版物自体に改変を加えることの可否又は是非を問題とするものではないばかりか,引用例は,上記のとおり引用発明において注釈を付ける対象を,電子的に作成された文書のうち,電子出版物ないし電子書籍であると特定している以上,そこには,その内容を読者が修正できないものも含まれるとみるのが自然である。 すなわち,引用例には,注釈の対象となるファイルの特定部分(コンテキスト部分)を修正不可の部分に限定することについて示唆があるといえる。 以上によれば,引用例に接した当業者は,引用発明に対して,電子的に作成された文書等のファイルの全部又は一部を修正不可として文書を保護するという当該技術分野における前記周知技術を適用して,本願発明の相違点1に係る構成を容易に想到することができたものというべきである。 (6) 原告の主張についてア以上に対して,原告は,前記周知技術の存在それ自体を争うもののようである。 しかしながら,前記(4)に認定のとおり,本件優先権主張日前に刊行された複数の一般的な文献(原告作成のソフトウェアに関するものを含む。)において,電子的に作成された文書等のファイルの全部又は一部を修正不可として文書を保護する技術が開示されているから,当該技術は,周知のものであったと認められ,この認定を左右するに足りる証拠はない。 よって,原告の上記主張は,採用できない。 イ次に,原告は,上記周知技術を適用した場合に引用発明の注釈付与技術がそのまま適用できるかどうかについて疑問を呈し,仮に適用可能であるとしても本件審決がその有用性を検討していない旨を主張する。 しかしながら,引用発明は,注釈をファイルのコンテキスト部分とは別個にディスクドライブに記憶( て疑問を呈し,仮に適用可能であるとしても本件審決がその有用性を検討していない旨を主張する。 しかしながら,引用発明は,注釈をファイルのコンテキスト部分とは別個にディスクドライブに記憶(格納)するものであるばかりか,前記(2)カ及びキの記載によれば,注釈が特定の段落にコーディネートに基づいて関連付けられているために,注釈又はその対象となるコンテキスト部分のいずれかに変更が加えられても,両者の対応関係は変化しないものと認められる。したがって,引用発明に上記周知技術を適用したとしても,引用発明の注釈付与技術に何ら変動をもたらすものではなく,当該適用は,十分に可能であるというべきである。また,前記のとおり,引用例には,注釈の対象となるファイルの特定部分(コンテキスト部分)を修正不可の部分に限定することについて示唆があり,かつ,上記周知技術が存在するものと認められる以上,当業者は,両者を組み合わせることの有用性ないし有利性について改めて検討するまでもなく,当該組合せをごく容易に想到できたものというべきである。 よって,原告の上記主張は,採用できない。 ウまた,原告は,引用発明はテキスト本文が修正可能であることを前提としており,本文を修正不可とすると,引用発明の目的が達成できなくなる旨を主張する。 しかしながら,引用発明は,コンテキスト部分に変更を加えることができる実施形態を含むものであるとはいえるものの(前記(2)カ参照),前記(5)に認定のとおり,電子出版物の読者が,当該出版物に注釈を付け,その注釈を当該出版物の特定の位置に関連付けることなどを目的とするものであって,当該電子出版物自体に改変を加えることの可否又は是非を問題とするものではなく,注釈を付ける対象を電子出版物であるとしている以上,そこには,その内容を読者が修正できない となどを目的とするものであって,当該電子出版物自体に改変を加えることの可否又は是非を問題とするものではなく,注釈を付ける対象を電子出版物であるとしている以上,そこには,その内容を読者が修正できないものも含まれるとみるのが自然である。したがって,引用発明は,コンテキスト部分の修正が可能であるもののみを前提としているものとは認められず,原告の上記主張は,その根拠を欠くばかりか,引用発明にコンテキスト部分を修正不可とする上記周知技術を適用することが可能であることは,上記のとおりである。 よって,原告の上記主張は,採用できない。 エさらに,原告は,本願発明が,ユーザの希望と著作権保護の目的がぶつかっ ていたという課題を解決する,格別の作用効果があり,また,ファイルが修正不可である以上,ファイル位置も固定されており,ファイルが修正可能なものと比べて注釈の記憶手段への記憶をより簡潔に行い得ることが明らかである旨を主張する。 しかしながら,前記(2)アないしウに記載のとおり,引用例は,引用発明において注釈を付ける対象を,電子的に作成された文書のうち,電子出版物ないし電子書籍であると特定している以上,そこに著作権保護された作品が含まれ得ることは,明らかであるほか,引用発明は,注釈をその対象となる電子出版物等とは別々に格納するのであるから,当該電子出版物等のファイルには何の修正も加えずに注釈を付けることが十分に可能であって,本願発明の上記課題を解決することができるものである。 また,ファイルが修正不可であることによりファイル位置が固定されており,そのため注釈の記憶手段への記憶がより簡潔に行い得るとの点については,本願発明及び本願明細書には明確な記載がないばかりか,ファイル位置が固定されれば当該記憶がより簡潔に行い得ることは,それ自体,当業 のため注釈の記憶手段への記憶がより簡潔に行い得るとの点については,本願発明及び本願明細書には明確な記載がないばかりか,ファイル位置が固定されれば当該記憶がより簡潔に行い得ることは,それ自体,当業者が当然予測可能なことであって,格別な作用効果であるとはいえない。 よって,原告の上記主張は,採用できない。 2 取消事由2(相違点2の認定及び判断の誤り)について(1) 相違点2の認定についてア原告は,本件審決が認定した引用発明には,そこに記載の構成に加えて,「その後,前記ディスプレイの表示画面上に,前記注釈を,前記コーディネートに基づいて,前記選択のオブジェクトの近傍に表示するステップ」との構成を備えているのに,本件審決がこの点を認定しておらず,これに伴い,相違点2の認定にも誤りが生じている旨を主張する。 イそこで検討すると,本件審決が認定した本願発明の相違点2に係る構成は,「その後,前記注釈が選択された時に,前記表示画面上の第2の表示部分を前記位置に基づいて前記選択のオブジェクトにナビゲートするステップ」というものであ る。そして,ここにいう「ナビゲートする」との意義についてみると,本願発明の特許請求の範囲の記載によれば,本願発明は,選択のオブジェクト(注釈を付する対象となる修正不可の部分であって,注釈と関連付けられた部分)のファイル位置がユーザにより作成された注釈とは別個に記憶されていることを前提として,当該別個に記憶された注釈をユーザが選択すると,当該オブジェクトのファイル位置に基づいて,①当該注釈が表示されたディスプレイデバイス上の表示画面のある部分(第2の表示部分)を当該オブジェクトの表示に変更するか,あるいは,②当該オブジェクトを注釈(第2の表示部分)とともに表示することを意味するものと解されるが,そのい イデバイス上の表示画面のある部分(第2の表示部分)を当該オブジェクトの表示に変更するか,あるいは,②当該オブジェクトを注釈(第2の表示部分)とともに表示することを意味するものと解されるが,そのいずれであるかは,一義的に明確であるとはいい難い。 そこで,本願明細書の記載を参酌すると,そこには,ユーザによる注釈の選択により,ドキュメントにおいて注釈を含む位置にナビゲートすることができる旨の記載がある(前記1(1)エ。【0052】)ほか,注釈は,ドキュメントとともに表示される旨の記載がある(前記1(1)ウ。【0009】)。 そして,本願発明の「ナビゲートする」について上記①の意義に解釈すると,表示画面上には選択のオブジェクトのみが表示され,これに対応する注釈が表示されない結果ともなり得るから,本願明細書の上記記載によれば,本願発明の特許請求の範囲の記載にいう「ナビゲートする」とは,ユーザによる別個に記憶された注釈の選択により,選択のオブジェクト(注釈を付する対象となる修正不可の部分であって,注釈と関連付けられた部分)が注釈(第2の表示部分)とともに表示画面上に表示されること(上記②)を意味するものと解釈するのが自然である。そして,この解釈は,本願発明の特許請求の範囲の記載において,第1の表示部分において選択のオブジェクトが表示されていたこととも矛盾しない。 ウ以上のとおり,本願発明における「ナビゲートする」との意義によれば,本願発明の相違点2に係る構成は,ユーザがいったん別個に記憶された注釈を選択した場合に注釈をオブジェクトとともに画面に表示するという機能に関するものである。 他方,引用例には,前記1(2)キに記載のとおり,ユーザが入力した注釈文字列がコーディネートに基づいて画面上の注釈の対象となったテキスト(オブジェクト るという機能に関するものである。 他方,引用例には,前記1(2)キに記載のとおり,ユーザが入力した注釈文字列がコーディネートに基づいて画面上の注釈の対象となったテキスト(オブジェクト)の近傍に隣接して表示される例が示されているものの,ユーザがテキスト(オブジェクト)とは別々に格納された注釈を選択した場合に,いかなる機能により表示画面がどのような形態を示すのかについては,具体的な記載がないというほかない。 したがって,本件審決による,「本願発明は,「その後,前記注釈が選択された時に,前記表示画面上の第2の表示部分を前記位置に基づいて前記選択のオブジェクトにナビゲートするステップ」を有しているのに対し,引用発明は,それに相当するステップを有しない(引用例にはそれに相当するステップに関する記載がない。)点」との相違点2の認定は,誤りであるとはいえない。 エこの点について,原告は,引用発明が注釈を作成・記憶している以上,これを画面に表示しないことはあり得ないから,注釈をオブジェクトの近傍に表示するステップが必須である旨を主張する。 しかしながら,前記のとおり,引用例は,ユーザが入力した注釈文字列がコーディネートに基づいて画面上の注釈の対象となったテキスト(オブジェクト)の近傍に隣接して表示される例が示されているものの,ユーザがテキスト(オブジェクト)とは別々に格納された注釈を選択した場合に,いかなる機能により表示画面がどのような形態を示すのかについては,具体的な記載がないというほかない。よって,引用発明が注釈をテキスト(オブジェクト)とは別々に格納している以上,注釈が何らかの形態で画面に表示されることまでは当然に想定されているというべきであるとはいえるものの,そのことから,ユーザが当該注釈を選択した場合に,原告の主張に係る )とは別々に格納している以上,注釈が何らかの形態で画面に表示されることまでは当然に想定されているというべきであるとはいえるものの,そのことから,ユーザが当該注釈を選択した場合に,原告の主張に係る「コーディネートに基づいて,前記選択のオブジェクトの近傍に表示するステップ」を引用発明が必須のものとして備えていると認定するには足りない。 よって,原告の上記主張は,採用できない。 (2) 相違点2に係る判断の誤りについてア本願発明に係る相違点2の容易想到性について検討すると,まず,甲2(平成10年(1998年年)4月7日公開)には,「ブックマーク45は,ユーザ(あるいは異なるユーザ)がテキスト(またはその代わりにグラフィックス)により特別にマークやラベルを付けたドキュメントの特定の部分を,ユーザが選択し表示することを可能にします。例えば,ユーザが章を選択するとき,その章の最初のページが表示ウィンドウに表示されるように,異なる章標題は,ブックマーク中のラベルとして表示することができます。」との記載がある。 乙5(特開平6-231186号公報)は,「文書処理装置」という名称の発明に関する公開特許公報であるが,そこには,文書処理装置に関し,一般書籍を読むのと同様に,文書情報に対して視覚的に栞(しおり)等の認識マークを挟み,参照できることを目的とする発明についての記載がある。 乙6(特開平3-11463号公報)は,「文書作成装置」という名称の発明に関する公開特許公報であるが,そこには,本に栞(しおり)を挟んだように所望の箇所を簡単に呼び出すことのできる栞機能を持った文書処理装置に関する発明についての記載がある。 乙7(特開平7-230466号公報)は,「電子図書館システム」という名称の発明に関する公開特許公報であるが,そこには, すことのできる栞機能を持った文書処理装置に関する発明についての記載がある。 乙7(特開平7-230466号公報)は,「電子図書館システム」という名称の発明に関する公開特許公報であるが,そこには,従来の技術として,コンピュータのディスプレイ表示を本のイメージで行う方法(ブックメタファ)において,電子的に作成された文書の目次からのジャンプや,任意の頁イメージに付箋紙ボタンを設定し,これを選択することで当該付箋紙ボタンが設定されている頁イメージが表示されるなどの機能についての記載がある。 乙8(特開平3-158967号公報)は,「検索機能付き電子書籍装置」という名称の発明に関する公開特許公報であるが,そこには,電子的に作成された書籍データに関して,検索情報登録手段に登録済みの検索情報リストを一覧表示させ,そこから所望の検索情報を選択することで,当該検索情報に対応する位置(例えば 頁)の書籍データを検索して表示部に表示させる技術についての記載がある。 以上のとおり,本件優先権主張日前に公開された複数の文献に,電子的に作成された文書の特定の部分に関連付けられた特定の情報(ブックマーク)をユーザが選択した場合に,当該特定の情報(ブックマーク)に関連付けられた当該文書の特定の部分が当該特定の情報(ブックマーク)とは別個に表示画面上に表示される技術について記載があることに照らすと,当該技術は,当該技術分野において周知であったものと認められる。 イ他方,引用例には,前記1(2)イに記載のとおり,引用発明が,電子書籍中の特定の位置に関連付けられるメモ,ブックマーク又は注釈を作成する手段を与えることを目的の1つとしており,また,前記1(2)ウに記載のとおり,電子的出版物の読者がメモ,ブックマーク又は注釈を作成して,ドキュメント中の特定箇所に モ,ブックマーク又は注釈を作成する手段を与えることを目的の1つとしており,また,前記1(2)ウに記載のとおり,電子的出版物の読者がメモ,ブックマーク又は注釈を作成して,ドキュメント中の特定箇所にそれらを関連付けることを可能にするものであり,そのような注釈又は「プレースマーク」のレコードが,出版物の内部又は出版物とは別々に格納することができるものであって,前記1(2)オに記載のとおり,そこにいう注釈が,出版資料の特定のコンテキストと関連付けられる「メモ」を含むものである旨の記載がある。さらに,引用例には,前記1(2)クに記載のとおり,そこにいうブックマークが注釈の1例であることを前提とした記載もある。 以上のように,引用例において,「注釈」が,「メモ」及び「ブックマーク」を含むものであって,電子的出版物の読者がドキュメント中の特定箇所(コンテキスト部分)に関連付けることが可能なものであり,かつ,もとの出版物(ドキュメント)とは別々に格納することができる点で「メモ」,「ブックマーク」及び「プレースマーク」と並列して記載されていることに鑑みると,引用例にいう「注釈」は,「メモ」,「ブックマーク」及び「プレースマーク」を包括的に代表するものとして記載されているものと認められる。 このように,引用発明にいう「注釈」は,これに対応するテキスト(コンテキスト部分)とコーディネートにより関連付けられており,かつ,「ブックマーク」を 含む概念であるから,引用例には,そこにいう「注釈」(ブックマーク)に,前記アに認定の,ブックマークに関する当該技術分野における周知技術を組み合わせることについて示唆ないし動機付けがあるものといえる。 ウ以上によれば,引用例に接した当業者は,電子的に作成された文書の特定の部分に関連付けられた特定の情報(ブックマ における周知技術を組み合わせることについて示唆ないし動機付けがあるものといえる。 ウ以上によれば,引用例に接した当業者は,電子的に作成された文書の特定の部分に関連付けられた特定の情報(ブックマーク)をユーザが選択した場合に,当該特定の情報(ブックマーク)に関連付けられた当該文書の特定の部分が表示画面上に別個に表示されるというブックマークに関する当該技術分野における周知技術を,引用発明にいう「注釈」に適用することで,ユーザがドキュメントとは別々に格納された注釈を選択した場合に,上記関連付けを利用して,当該注釈に対応するドキュメント中の特定箇所(コンテキスト部分)を,当該注釈と併せて表示画面上に別個に表示することについて容易に想到することができたものというべきである。 したがって,引用例に接した当業者は,引用発明に上記周知技術を適用することで,本願発明の相違点2に係る構成を採用することについて容易に想到することができたものというべきである。 エ以上に対して,原告は,前記アに認定の周知技術の存在に疑問を呈し,甲2に開示の技術(甲2発明)を引用発明に組み合わせても本願発明の本件相違点に係る構成に至らず,また,引用発明の「注釈」が甲2にいう「ブックマーク」と技術的意義ないし概念が異なり,引用発明の「コーディネート」に基づいてナビゲートができるとは限らない旨を主張する。 しかしながら,甲2及び乙5ないし8の記載によれば上記周知技術を認定できることは,前記アに記載のとおりであって,これを左右するに足りる証拠はないばかりか,引用発明には当該周知技術を適用することについて示唆ないし動機付けがあり,これにより,本願発明の本件相違点に係る構成を想到することができることもまた,前記イに認定のとおりである。 また,引用例にいう「注釈」が,「メモ」,「 適用することについて示唆ないし動機付けがあり,これにより,本願発明の本件相違点に係る構成を想到することができることもまた,前記イに認定のとおりである。 また,引用例にいう「注釈」が,「メモ」,「ブックマーク」及び「プレースマーク」を包括的に代表するものとして記載されていることは,前記イに認定のとお りであって,当該「注釈」は,その機能に照らしても,甲2にいう「ブックマーク」と技術的意義が異なるとはいえず,この認定を左右するに足りる証拠はない。 そして,本願発明にいう「ナビゲート」とは,前記(1)イに認定のとおり,ユーザが選択のオブジェクトとは別個に記憶されている注釈を選択した場合に,当該注釈とこれに対応する選択のオブジェクトとを併せて表示画面上に表示する機能を意味しており,当該機能の前提として,当該注釈と選択されたオブジェクトのファイル位置とは,相互に関連付けられているものと理解することが可能であるところ,引用発明の「コーディネート」は,前記1(2)カ及びキに記載のとおり,注釈とドキュメント中の特定箇所(コンテキスト部分)とを,例えばコンテキスト部分の段落と関連付けることで表示画面上において注釈をその近傍に表示することを可能とするものである。すなわち,引用発明の「コーディネート」は,「ナビゲート」の前提となる構成であるということができるのであって,これにより「ナビゲート」ができないというものではない。 よって,原告の上記主張は,いずれも採用できない。 オまた,原告は,引用発明が,注釈とそれに対応する本文に1つのウィンドウ内で隣接して表示することに技術的意義があり,前記周知技術を適用すると注釈と本文との対応関係がわかりにくくなってしまうほか,引用発明の注釈がユーザの思想を複数表現することを目的としており,当該周知技術のよう して表示することに技術的意義があり,前記周知技術を適用すると注釈と本文との対応関係がわかりにくくなってしまうほか,引用発明の注釈がユーザの思想を複数表現することを目的としており,当該周知技術のようにドキュメントの中から一対一で関連付けられた部分を選び出すことを目的としていないから,引用発明に当該周知技術を適用すると引用発明の技術的意義が没却されるほか,当該周知技術が引用発明には不要ないし冗長な機能であって,引用発明にこれを取り入れる動機付けがない旨を主張する。 しかしながら,前記(1)ウに認定のとおり,引用例には,ユーザが入力した注釈文字列がコーディネートに基づいて画面上の注釈の対象となったテキスト(オブジェクト)の近傍に隣接して表示される例が示されているものの,ユーザがテキスト(オブジェクト)とは別々に格納された注釈を選択した場合に,いかなる機能によ り表示画面がどのような形態を示すのかについては,具体的な記載がないというほかない。しかも,前記1(2)ウに記載のとおり,引用例における「注釈」とは,電子的出版物の読者がドキュメント中の特定箇所に関連付けることが可能であって,様々な目的で,読者によるアクセス等のために,もとの出版物とは別々に格納することができるものである。したがって,引用発明に上記周知技術を適用した場合おいて,ユーザが別個に記憶された注釈を選択した場合の表示画面の形態は,上記の様々な目的に応じて想定することが可能であり,引用例は,上記周知技術を適用することで,注釈とこれに対応するドキュメント中の特定箇所(コンテキスト部分)とを別個の表示部分に表示することも当然に許容しているというべきである。よって,引用例が引用発明の実施例の一つとして注釈とそれに対応する本文を1つのウィンドウ内で隣接して表示する形態を示している )とを別個の表示部分に表示することも当然に許容しているというべきである。よって,引用例が引用発明の実施例の一つとして注釈とそれに対応する本文を1つのウィンドウ内で隣接して表示する形態を示していることは,本願発明の本件相違点に係る構成を想到するに当たり阻害事由となるものではない。 また,前記1(2)イに記載のとおり,引用発明の目的は,①オンライン電子書籍に注釈を付ける手段を提供すること,②電子書籍中の特定の位置に関連付けられるメモ,ブックマーク又は注釈を作成する手段を与えること,③電子書籍について,種々の目的のための複数の注釈同士及び/又は種々のソースからの複数の注釈同士を関連付ける手段を提供することであるから,引用発明及び引用例にいう注釈の目的及び実施態様もまた,原告の主張に係る目的や実施形態に限定されるものではない。 よって,原告の上記主張は,採用できない。 3 結論以上の次第であるから,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,原告の請求は棄却されるべきものである。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官滝澤孝臣 裁判官井上泰人 裁判官荒井章光

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