主文 1 被告Cは,群馬県勢多郡北橘村に対し,55万2000円及びこれに対する平成13年9月28日から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし,被告Dと27万6000円及びこれに対する平成13年9月28日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で,被告E,同F及び同Gといずれも各9万2000円及びこれに対する平成13年9月28日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で,それぞれ連帯して)を支払え。 2 被告Dは,群馬県勢多郡北橘村に対し,被告Cと連帯して,27万6000円及びこれに対する平成13年9月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告E,同F及び同Gは,それぞれ,北橘村に対し,被告Cと連帯して,9万2000円及びこれに対する平成13年9月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用はこれを20分し,その19を原告の負担とし,その余は被告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告Cは,群馬県勢多郡北橘村に対し,1105万0005円及びこれに対する平成13年9月28日から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし,被告Dと552万5002円及びこれに対する平成13年9月28日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で,被告E,同F及び同Gといずれも各184万1667円及びこれに対する平成13年9月28日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で,それぞれ連帯して)を支払え。 2 被告Dは,群馬県勢多郡北橘村に対し,被告Cと連帯して,552万5002円及びこれに対する平成13年9月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告E,同F及び同Gは,それぞれ,北橘村に対し,被告Cと連帯し ,被告Cと連帯して,552万5002円及びこれに対する平成13年9月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告E,同F及び同Gは,それぞれ,北橘村に対し,被告Cと連帯して,184万1667円及びこれに対する平成13年9月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,群馬県勢多郡北橘村(以下「北橘村」という。)の住民である原告が,北橘村の元村長である亡Bの相続人である被告D,同E,同F,同G及びC建築の屋号で建設業を営む被告Cに対し,北橘村から被告Cに北橘幼稚園(以下「本件幼稚園」という。)の改修工事の請負代金として合計1105万0005円が支払われているところ,同工事の請負契約及びこれに基づく施工は存在せず,仮に存在するとしても,亡Bが随意契約の制限に関する法令及び代金の支払時期を定める北橘村財務会計規則に違反し,かつ,裁量権を逸脱して,地方自治法(以下「法」という。)142条の趣旨に反する違法な財務会計上の行為をなしたものであるから,上記支払は違法であると主張して,法242条の2第1項4号に基づき,北橘村に代位して損害の賠償を請求した事案である。 1 争いのない事実(1) 原告は,北橘村の住民である。 亡Bは,平成10年当時,北橘村長の職にあった者であり,B製工有限会社(以下「B製工」という。)の代表取締役の地位にもあった。 亡Bは,平成15年6月8日死亡し,配偶者である被告D,子である同E,同F,同Gが,法定相続分に従い,亡Bを相続した。 被告Cは,北橘村において,C建築の屋号で建設業を営む者である。 (2) 北橘村の収入役は,北橘村長である亡Bの命令により,本件幼稚園の改修工事に関し,被告C名義の銀行口座に,平成10年4月27日に571万6599円を振り ,C建築の屋号で建設業を営む者である。 (2) 北橘村の収入役は,北橘村長である亡Bの命令により,本件幼稚園の改修工事に関し,被告C名義の銀行口座に,平成10年4月27日に571万6599円を振り込んで送金し(以下「本件第1支出」といい,本件第1支出にかかる工事を「本件第1工事」,本件第1工事にかかる契約を「本件第1契約」という。),同年5月6日に178万2406円を振り込んで送金し(以下「本件第2支出」といい,本件第2支出にかかる工事を「本件第2工事」,本件第2工事にかかる契約を「本件第2契約」という。),同年9月8日に355万1000円を振り込んで送金し(以下「本件第3支出」といい,本件第3支出にかかる工事を「本件第3工事」,本件第3工事にかかる契約を「本件第3契約」という。),以上のようにして合計で1105万0005円を振り込んで送金した(以下「本件各支出」,「本件各工事」,「本件各契約」と総称する。)。 (3) 原告は,本件各支出より1年を経た後である平成13年7月3日,北橘村監査委員に対し,本件各支出について,法242条1項に基づく監査請求(以下「本件監査請求」という。)を行ったが,同年8月20日付けで,本件監査請求には理由がない旨の監査結果の通知を受領した。 2 争点(1) 監査請求期間を徒過したことにつき,法242条2項ただし書の正当な理由があるか否か【原告の主張】本件では,当時の北橘村監査委員が同村の総務課長に対し,本件各契約書等の提出を求めたとき,「書類がなく提出できない」と回答していることから(甲22),そもそも本件各契約自体が存在しないと思われるし,又は仮に存在するとしても随意契約方式で締結され,亡Bが法142条の禁止規定を脱法するために自己が社長をするB製工の下請業者である被告Cをいわばダミーとし そも本件各契約自体が存在しないと思われるし,又は仮に存在するとしても随意契約方式で締結され,亡Bが法142条の禁止規定を脱法するために自己が社長をするB製工の下請業者である被告Cをいわばダミーとして利用して契約したものであり,秘密裡にされたものに実質的に等しく,契約の違法性,不当性を主張する前提となる事実が隠蔽されていたのであるから,監査請求の対象となるべき行為が住民に隠れて秘密裡に行われた場合と同様に解すべきである。北橘村の住民が相当の注意力をもってしても,本件幼稚園の改修工事を誰が,幾らで,どのような契約方法で請け負ったかは知ることができなかったものである。原告は,新聞報道があった平成13年6月29日に初めて本件各工事について知り,平成13年7月3日には本件監査請求をしている。そこで,原告は当該行為を知ることができたと解される時から相当な期間内に本件監査請求をしたと思料する。 よって,監査請求期間を徒過したことにつき,法242条2項ただし書の正当な理由があり,本件各訴えは適法である。 【被告らの主張】本件各工事については,既に村内の各戸に配付される議会だよりの平成10年2月10日発行のものにより,1面に3歳児保育が始まる旨の表題及び写真が掲載されている外,12月の定例会において議員から予算金額等についての質問がなされ,学校教育課長等から工事内容等についての答弁がなされたことが掲載されている。 また,北橘村の「財政概要の作成及び公表に関する条例」(昭和32年条例第55号)によれば,同村は,法第243条の3第1項の規定に従い財政概要を年2回公表しなければならず,11月1日に前年度の決算を明らかにするものと規定され,また,村報に掲載するとあり,閲覧もできることとなっている。 したがって,オンブズマンでない一般住民 財政概要を年2回公表しなければならず,11月1日に前年度の決算を明らかにするものと規定され,また,村報に掲載するとあり,閲覧もできることとなっている。 したがって,オンブズマンでない一般住民としても,上記により本件各工事が行われることを事前に熟知していたものであり,これが,秘密裡に行われたものでないことは明白である上,原告は,本件監査請求に際し,平成13年6月29日の新聞により初めて不正疑惑を知ったと陳述しているが,その新聞記事と同日に原告が所属する「市民オンブズマン群馬」は亡Bに対して公開質問状を提出していることによれば,原告が平成13年6月29日に初めて不正疑惑を知ったのではないことは明白である。 よって,本件各訴えは,監査請求期間を徒過してなされた不適法なものであるから,却下されるべきである。 (2) 本件各支出の違法性【原告の主張】ア本件各契約は存在せず,被告Cにおいては本件幼稚園のトイレのドア修理等わずかな仕事をしたのみであるにもかかわらず,亡Bは,自己の村長としての立場を利用して,B製工の下請業者である被告Cと共同して本件各契約を締結したとの外観を作出し,本件各工事を施工完了したとの口実の下に,北橘村役場会計担当職員をして本件各支出をさせたものであるから,本件各支出は違法な支出である。 イ仮に本件各契約及び本件各工事の施工が存在するとしても,本件各契約は法施行令167条の2第1項各号のいずれにも該当しないにもかかわらず随意契約方式で締結されたものであるから,本件各支出は違法な支出である。 ウ本件各契約の形式的当事者は被告Cである。しかしながら,本件各契約の請負工事代金が,北橘村から被告Cに振り込まれた日に全額,当時亡Bが社長をしていたB製工に流れていることからすると,本件各契約の実質的当事者は当時亡Bが社 は被告Cである。しかしながら,本件各契約の請負工事代金が,北橘村から被告Cに振り込まれた日に全額,当時亡Bが社長をしていたB製工に流れていることからすると,本件各契約の実質的当事者は当時亡Bが社長をしていたB製工と思料する。 本件各契約の実質的当事者が,B製工であるにもかかわらず,形式的当事者を被告Cとしたのは,法142条の禁止規定を脱法するためである。法92条の2で,普通地方公共団体の議員が,当該地方公共団体に対し請負をする者であることができないとしており,また,法142条は普通地方公共団体の長が請負をすることができないとしているが,その趣旨は,議会の議員又は首長が普通地方公共団体との間で請負契約等の取引関係に立った場合には,当該普通地方公共団体の公正な運営を期待することが困難となるからである。 本件各契約の実質的当事者を当時亡Bが社長をしていたB製工と見ると,本件各契約は,法142条の趣旨に反するものであり,同条が地方公共団体の公正な運営の確保という地方自治制度の根幹にかかわるものであることに鑑みると,本件各契約が仮に存在するとしても,本件各契約を締結した亡Bには裁量権の逸脱があるので,本件各支出は違法な支出である。 エ北橘村財務規則(以下「本件規則」という)160条によれば,契約代金を支払うためには,検査に合格しなければならない。しかし,本件では,工事完成通知,完成当時の工事写真,検査調書,完成引渡書がいずれもなく,検査に合格してもいないのに,北橘村から被告C(実質的にはB製工)に本件各支出がなされている。このように,本件各支出は,本件規則160条に違反してなされた違法な支出である。 【被告らの主張】ア原告の主張アを否認ないし争う。 本件各契約及び本件各工事は現実に存在し,完了している。本件各工事の内容は,別 支出は,本件規則160条に違反してなされた違法な支出である。 【被告らの主張】ア原告の主張アを否認ないし争う。 本件各契約及び本件各工事は現実に存在し,完了している。本件各工事の内容は,別紙(省略)工事施工概要のとおりである。なお,本件第1工事と本件第2工事は一体のものである。 本件各工事のうち,施工管理及び改修工事は被告Cが行い,その余の工事は,次のとおり,下請工事人が施工した。 水道工事 H水道株式会社電気工事有限会社I電気塗装工事 J塗装店サッシ工事株式会社K畳工事 L畳店クロス・カーテン工事 Mインテリア板金工事 N板金エアコン取付工事 O重工左官工事 P左官工業イ原告の主張イを否認ないし争う。 随意契約については,法234条2項及び法施行令167条の2により一定の条件のもとに許容されているところ,法施行令167条の2第1項2号の「その性質又は目的が競争入札に適しないもの」,同3号の「緊急の必要により競争入札に付することができないとき」に該当する場合には随意契約によることができるとされているところ,本件各契約は,法施行令167条の2第1項2号及び3号に該当する。その理由は,以下のとおりである。 本件各工事は,北橘村立の本件幼稚園の3歳児保育の早期実施のための施設整備の充実を目的としたものである。 3歳児保育の早期実施については,文部省が平成3年に策定した「幼稚園教育振興計画要領に3歳児保育事業の推進が盛り込まれたことにより,北橘村に設置された「村立幼稚園対策協議会」において平成9年8月に報告された協議結果に基づき,平成9年11月に北橘村教育委員会において3歳児保育の早期実施,そのための施設整備の充実を含む幼稚園教育振興計 に設置された「村立幼稚園対策協議会」において平成9年8月に報告された協議結果に基づき,平成9年11月に北橘村教育委員会において3歳児保育の早期実施,そのための施設整備の充実を含む幼稚園教育振興計画が審議承認された。 そこで,北橘村としては平成10年度新学期からの3歳児保育の実施のために緊急の施設整備を行うこととし,急遽平成9年12月の北橘村定例村会議において,補正予算として当面の幼稚園施設整備の充実のための工事費(572万4000円)が承認された。 仮に,本件各工事を一般競争入札に付するとするならば,その工事(改築・補修)内容を予め明確にしなければならないのであるから,各項目ごとに詳細な設計・仕様を定めなければならず,また,その予定価格についても群馬県の確認が必要となる結果,その作業のため多くの職員が長時間を費やすこととならざるを得ず,その期間は予測不可能であるばかりでなく,一般競争入札により契約後に新たな追加改築補修工事の必要が生じたときに,契約変更にとどまらず新たな一般競争入札が必要となることも予測しなければならない。そのような状況では,平成10年4月の3歳児保育の開始に間に合わないことは明らかである。そこで,施設整備の直接の担当者である北橘村教育委員会としては,工事の緊急性及び新設工事ではなく改築補修整備工事であることに鑑み,随意契約によることとし,被告Cを含む村内業者の相見積りを得て,最低価格の見積り(571万6599円)を行った被告Cと契約を行うに至ったものである。 なお,被告Cはこれまで継続的に本件幼稚園の施設設備を担当しており,施設の具体的状況については熟知していた。 以上によれば,本件各工事は,その多様性・必要とされる期間からしてこれまで本件幼稚園の改築補修工事を長年にわたり手がけてきた被告Cに行わせるの しており,施設の具体的状況については熟知していた。 以上によれば,本件各工事は,その多様性・必要とされる期間からしてこれまで本件幼稚園の改築補修工事を長年にわたり手がけてきた被告Cに行わせるのが相当であるとした契約担当者の合理的な裁量判断に違法はない。 したがって,本件各契約が随意契約により行われたことについての違法はないものというべきである。 ウ原告の主張ウを否認ないし争う。 本件各契約の当事者は形式的にも実質的にも被告Cであり,亡Bには,法142条に反する違法はない。 B製工は,被告Cから依頼されて,本件各工事に関する下請代金,材料費等の支払を代行したものにとどまる。 エ原告の主張エを否認ないし争う。 本件について北橘村財務規則に掲げる書面,写真等が見あたらないことは,原告主張のとおりであるが,被告Cは,本件各工事が終了した時点において,本件幼稚園の教諭にその旨を報告し,これにより北橘村教育委員会の学校教育課長が来園して工事結果を検査・確認していた。 被告Cは一工事業者であって,村の書類関係については知るところではなく,また,被告亡Bは村長として村政を統括する者であるが,個々の書類等の作成についてそれぞれの担当者に権限を与えており,上記書類等の作成に直接関与していたものではない。 したがって,総合して,確かに亡B及び被告Cにおいて原告が主張する書類の作成(ないしはその保管)に不備があったかもしれないが,そのことのみをもって本件各支出が違法であったということはできない。 上記のとおり,本件各工事については原告が主張する村の規則に掲げる書面は存在していないが,事実としては,本件各工事について被告Cから完成通知が行われ,村の担当者が検査・確認を行い,その結果工事代金が北橘村から支払われたも 事については原告が主張する村の規則に掲げる書面は存在していないが,事実としては,本件各工事について被告Cから完成通知が行われ,村の担当者が検査・確認を行い,その結果工事代金が北橘村から支払われたものであって,実質的には,その支出自体に何らの問題はない。 ところで,北橘村幼稚園改修工事調査特別委員会の調査結果は,監査報告と同じく,手続上の不適切,不備を指摘し,これについての村長の責任を問うているのであって,現になされていた支出については全く言及していない。したがって,本件各支出は特別委員会の調査結果によりその時点において追認されたものではなく,支出の時点において問題はないとされている。 (3) 亡B及び被告Cの責任【原告の主張】亡B及び被告Cは,本件各契約が許されないことを知悉しながら違法・不当な目的で,あえて本件各契約を締結し,北橘村に対し損害を与えたものであるから,亡B及び被告Cは,北橘村に対し,不法行為責任を負う。 【被告らの主張】原告の主張を否認ないし争う。 (4) 損害額【原告の主張】ア亡B及び被告Cは,あえて違法な支出をしているから,北橘村に本件各支出と同額の損害を与えた。 イ仮に,本件各支出の全額を損害と見ることができないとしても,以下の損害が発生している。 本件各支払は次のとおりなされている。 ①平成10年4月27日 5,716,599円②平成10年5月6日 1,782,406円③平成10年9月8日 3,551,000円支払は検査に合格した場合でなければならないが(北橘村財務規則160条),いずれも検査が行われず,北橘村は支払をしてはならないのに支払っている。本件では,北橘村財務規則148条に定める検査は最後まで行われていないが,平成13年7月31日に北橘村幼稚 財務規則160条),いずれも検査が行われず,北橘村は支払をしてはならないのに支払っている。本件では,北橘村財務規則148条に定める検査は最後まで行われていないが,平成13年7月31日に北橘村幼稚園改修工事調査特別委員会が現地調査を行っており,これは同規則148条に定める検査に準じて考えることができると解する。つまり,本件各工事について本来支払ができるのは,平成13年7月31日ということができる。そうすると,北橘村に対し,①ないし③についてその間の法定利息である年5分について損害が生じているといえる。 つまり①5,716,599円×0.05×(3年+95日÷365日)=931,883円②1,782,406円×0.05×(3年+86日÷365日)=288,359円③3,551,000円×0.05×(2年+327日÷365日)=514,165円合計1,734,407円である。 したがって,北橘村は,亡B及び被告Cの不法行為により1,734,407円の損害を受けたのであり,亡B及び被告Cは北橘村に対して同額の損害賠償責任を負う。 【被告らの主張】ア原告の主張アを否認ないし争う。 本件においては,現実に本件各工事が施工され,本件幼稚園側の希望どおりの成果を得ていることには争いがないのであるから,工事代金の支払には,手続上の瑕疵があったとしても実質的に違法であるとはいえない。監査報告においても,「地方自治法167条の15及び村の規則等で定める具備されるべき必要な書類がなく,不適切であった」と指摘されているが,「村に対して損害を与えた客観的事実が確認されない(結果的に村の支出は違法ではない)」とされ(乙1の18),また,北橘村幼稚園改修工事調査特別委員会の報告によっても,「順調に工事も終了 れているが,「村に対して損害を与えた客観的事実が確認されない(結果的に村の支出は違法ではない)」とされ(乙1の18),また,北橘村幼稚園改修工事調査特別委員会の報告によっても,「順調に工事も終了し,一部の冷暖房設備工事等は10年度の工事施工となったが,3歳児保育は予定どおり平成10年度から実施することができ,備品の整備も図られ保護者の希望はかなえられ目的を達した。こうした一連の計画に基づく3歳児保育にかかわる条件整備の成果は,現在も有効に機能し幼稚園教育の充実に寄与している。」とされ,実質的に本件各工事は予定どおり完了し,成果を得たとされている(甲25)。 イ原告の主張イを否認ないし争う。 原告の主張するところによれば,平成10年における支払は誤払いとなり,それぞれの支払についてこれが行われた時点において当該金員を村に返還する義務が発生していたものであると理解されるが,誤払いの返還について民事法定利率を支払うこととする規定はない。 第3 争点に対する判断 1 証拠(甲1ないし7,12の1ないし4,13の1ないし11,14の1ないし16,16,18の1及び2,19,20,22ないし26,27ないし32の各1及び2,乙1の2ないし17,2の1,3の4,5,6,8)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 本件幼稚園の教諭及び北橘村の教育課長は,平成9年10月15日,被告Cに対し,本件第1工事の内容を説明した。その際,説明された本件第1工事の内容は,保育室,トイレ,外観,シャワー室について,修理,改修の予定があるというものであった。 (2) 北橘村は,平成9年10月,3歳児の希望者についてアンケートを実施したところ,そのアンケート結果では,3歳児の希望者は40人であったが,同年の11月の募 予定があるというものであった。 (2) 北橘村は,平成9年10月,3歳児の希望者についてアンケートを実施したところ,そのアンケート結果では,3歳児の希望者は40人であったが,同年の11月の募集では3歳児保育について50人の希望者があった。 (3) 北橘村の広報誌である「広報たちばな」平成9年11月10日号に,「特集・幼児保育」として,平成10年4月から本件幼稚園で3歳児保育を実施することが掲載された。 (4) 平成9年11月14日,北橘村教育委員会において,本件幼稚園に関し,実施の時期を平成10年4月1日とする3年保育実施計画書を含む幼稚園教育振興計画が承認された上,平成9年度教育委員会補正(第2号)予算に関し,幼稚園改修工事費として572万4000円を要求することが承認された。 (5) 平成9年度北橘村一般会計補正予算(第3号)には,幼稚園改修工事として,572万4000円が計上されていたところ,平成9年12月8日,北橘村議会において,原案を可決する議決がなされた。 (6) 平成10年1月8日,北橘村長亡Bと,被告Cは,以下の内容の本件第1契約を締結し,契約書を作成した。なお,本件第1契約締結前に,平成10年1月7日,被告Bから571万6599円,有限会社S建業から594万2160円,株式会社Kから585万3608円の見積りが本件幼稚園に提出された。なお,株式会社Kの見積りは,B製工の依頼により作成されたものである。 工事名北橘幼稚園改築工事工事場所勢多郡北橘村工期平成10年1月10日から同年3月20日まで請負代金額 571万6599円うち取引にかかる消費税及び地方消費税の額 27万2219円契約保証金額免除(7) 北橘村議会の広報誌である「北橘村 日から同年3月20日まで請負代金額 571万6599円うち取引にかかる消費税及び地方消費税の額 27万2219円契約保証金額免除(7) 北橘村議会の広報誌である「北橘村議会だより」平成10年2月10日号には,表紙に「平成10年4月から,3歳児保育が始まる北橘幼稚園の節分」との表題のついた写真が掲載され,また,一般会計の補正予算(3回目)に関する主な質疑・応答として,議員から「1,000万円強の補正で,幼稚園の改修をどのようにするのか。」という質問がなされ,これに対し学校教育課長が「今回は必要最小限で2クラスを改修,トイレは1か所を2か所に,3歳児なので温水シャワーの設置を考えている。」と回答した旨の記事が記載されている。 (8) 平成10年度北橘村一般会計予算には,幼稚園の工事請負費(園舎屋根・便所塗装工事,園児バス座席張替工事,冷暖房取付工事)として,計405万7000円が計上されていたところ,平成10年3月11日,北橘村議会において,原案を可決する議決がなされた。 (9) 平成9年度北橘村一般会計補正予算(第6号)には,幼稚園改修追加工事として,178万3000円が計上されていたところ,平成10年3月12日,北橘村議会において,原案を可決する議決がなされた。 (10) 時期は明らかではないが,本件第2契約に関し,北橘村長亡Bと,被告Cは,以下の内容の本件第2契約を締結し,契約書を作成した。なお,本件第2工事については,見積書は提出されていない。 工事名北橘幼稚園改築工事工事場所勢多郡北橘村工期平成10年1月10日から同年3月20日まで請負代金額 178万2406円うち取引にかかる消費税及び地方消費税の額 8万4876円契約保証金額免除 北橘村工期平成10年1月10日から同年3月20日まで請負代金額 178万2406円うち取引にかかる消費税及び地方消費税の額 8万4876円契約保証金額免除(11) 平成10年6月19日,北橘村長亡Bと,被告Cは,以下の内容の本件第3契約を締結し,契約書を作成した。なお,本件第3契約締結前に,事前にQ組から455万9520円,C建設から446万2630円,被告Cから,390万5055円の見積書が出された。C建設の見積りは,被告Cの口頭での依頼により,作成されたものである。 工事名北橘幼稚園改築工事工事場所勢多郡北橘村工期平成10年6月22日から同年7月31日まで請負代金額 355万1000円うち取引にかかる消費税及び地方消費税の額 16万9095円契約保証金額免除(12) 本件各支出等として,R銀行渋川支店の被告C名義の口座に,北橘村収入役から,平成10年4月27日に577万9334円,同年5月6日に178万2406円,同年9月8日に381万9000円が振り込まれた。そして,同口座から,平成10年4月28日9時34分に577万9334円(本件工事以外の修繕費6万2735円を含む。),同年5月8日14時16分に178万2406円,同年9月8日10時51分に381万9000円がそれぞれ引き出された。 (13) R銀行渋川支店のB製工名義の口座に,被告Cから,平成10年4月28日9時35分に577万9334円,同年5月8日14時17分に178万2406円,同年9月8日10時51分に381万9000円が入金された。 (14) 平成10年1月26日から8月18日までの間,被告Cが16回,「ペンキ屋」が14回,「H水道」が2回,「I 8万2406円,同年9月8日10時51分に381万9000円が入金された。 (14) 平成10年1月26日から8月18日までの間,被告Cが16回,「ペンキ屋」が14回,「H水道」が2回,「I電気」が3回,「クーラー屋」が5回,「大工」が1回,「トイレ設置の方」が2回,「工事の方」が2回,「工事の人」が1回,「水道工事」の人が7回,「業者の方」が1回,「電気屋さん」が1回,「C建築」が1回,それぞれ本件幼稚園を訪問した旨が園日誌に記載されている。上記期間における,本件幼稚園への工事関係者の来園の延べ回数は,56回である。 (15) 「広報たちばな」の「公入札」欄には,北橘村の入札公共工事に関する工事の名称,工期,請負業者,請負金額などの情報が掲載されているところ,「広報たちばな」の同号,同年12月10日号,平成10年1月10日号,同年2月10日号,同年3月10日号の「公入札」の欄には,本件各工事の入札に関する情報は記載されていない。 (16) 平成13年6月29日付けの新聞に,市民オンブズマンが,亡Bに対し,本件各工事に関し,公開質問状を提出する旨の記事が掲載された。 同記事によれば,公開質問状の内容は①平成9,10年に行われた本件幼稚園の改修工事で,業者登録を受けていない村内の業者が,約820万円の随意契約(村規則で随意契約は130万円まで)できたのはなぜか,②その下請でB村長が社長を務める建設会社に丸投げがされたという情報は正しいか,③本当に改修工事は行われたか,などとされている。 (17) 北橘幼稚園改修工事調査特別委員会は,平成13年7月31日,委員全員で現地調査を行い,幼稚園教諭から本件各工事内容の説明を受けた。 (18) 北橘幼稚園改修工事調査特別委員会委員長は,平成13年8月28日ころ,北橘村議会議長 会は,平成13年7月31日,委員全員で現地調査を行い,幼稚園教諭から本件各工事内容の説明を受けた。 (18) 北橘幼稚園改修工事調査特別委員会委員長は,平成13年8月28日ころ,北橘村議会議長に対し,「予定を越える入園希望により,追加工事をするなどに至ったが順調に工事も終了し,一部の冷暖房設備工事等は10年度の工事施工となったが,三歳児保育は予定どおり平成10年度から実施することができ,備品の整備も図られ保護者の希望はかなえられ目的は達成された。こうした一連の計画に基づく三歳児保育に係わる条件整備の成果は,現在も有効に機能し幼稚園教育の充実に寄与している。」と審査結果の報告をした。 (19) 本件各契約に関し,随意契約締結に必要な書類である現場代理人指定通知書,工程表,監督員の指定についての文書,代金支払の前提となる工事完成に関する書類である工事完成通知書,工事写真,工事検査調書,工事完成結果についての文書,契約書に添付されているはずの書類である設計書は,いずれも作成されなかった。 (20) 被告Cは,本件各契約時及び本件各工事時,建設業法3条1項の規定による許可を有していなかった。 (21) 北橘村の「財政概要の作成及び公表に関する条例」(昭和23年条例第55号)は,以下のとおり規定している。 (1条)地方自治法(昭和22年法律第67号)第243条の3第1項の規定による文書(これを財政概要という。)の作成及び公表に関しては,この条例の定めるところによる。 (2条1項)財政概要の公表は,毎年5月1日及び11月1日にこれを行うものとする。 (2条2項)天災その他避けることのできない事故により,前項の期日に財政概要の公表を財政概要の公表をすることができないときは,村長は,事故のやんだときから1か月以内においてその期日を のとする。 (2条2項)天災その他避けることのできない事故により,前項の期日に財政概要の公表を財政概要の公表をすることができないときは,村長は,事故のやんだときから1か月以内においてその期日を定めてこれを公表しなければならない。 (3条1項)前条第1項の規定により5月1日に公表する財政概要においては,前年10月1日から3月31日までの期間における次に掲げる事項を記載し,かつ,財政の動向及び村長の財政方針を明らかにするものとする。 (1) 収入及び支出の概要(2) 住民の負担の状況(3) 公営事業の経理の状況(4) 財産公債及び一時金の現在高(5) その他村長において必要と認めた事項(3条2項)前条第1項の規定により11月1日に公表する財政概要においては,4月1日から9月30日までの期間における前項各号に掲げる事項を掲載し,かつ,前年度の決算の概況を明らかにするものとする。 (3条3項)村長は,必要に応じ財政概要の掲載事項の基礎となるべき事実及び数字を記載した文書をその付表として添付しなければならない。 (4条1項)財政概要の公表は,北橘村広告条例(昭和25年条例第19号)の掲示場に掲示するほか村報に掲載して行う。 (4条2項)前項の公表をしたときは,その日から6か月間何人も村長の指定した場所において閲覧を請求することができる。 (22) 北橘村財務規則は以下のとおり定めている。 (148条1項)契約担当者は,次のいずれかに該当する場合は,自ら又は職員に命じ,若しくは職員以外の者に委託して必要な検査をしなければならない。 (1) 契約の相手方が給付を完了したとき(2) 給付の完了前に出来高に応じ,対価の一部を支払う必要があるとき( ,若しくは職員以外の者に委託して必要な検査をしなければならない。 (1) 契約の相手方が給付を完了したとき(2) 給付の完了前に出来高に応じ,対価の一部を支払う必要があるとき(3) 物件の一部の納入があったとき又は契約により給付の一部を使用しようとするとき(4) 第156条又は158条の規定による契約の解除があったとき(同条2項)前項の規定により検査を行う者(以下「検査員」という。)は,契約書,設計図その他の関係書類に基づき,必要に応じてその契約に係る監督職員の立会いを求めて,当該給付の内容について検査しなければならない。 (同条3項)検査員は,前項の場合において,特に必要があると認めるときは,一部を破壊し,若しくは分解し,又は試験をして検査を行うことができる。この場合において,検査及び復元に要する費用は,契約の相手方が負担するものとし,契約担当者はこの旨を契約書に明らかにしておかなければならない。 (160条1項)第148条の検査に合格したものでなければ,その契約に係る支払をすることができない。 2 争点(1)について(1) 普通地方公共団体の執行機関,職員の財務会計上の行為が秘密裡にされた場合に限らず,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的に見て監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることができなかった場合には,法242条2項ただし書にいう正当な理由の有無は,特段の事情のない限り,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的に見て上記の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものである(最高裁平成10年(行ツ)第69号,第70号 すれば客観的に見て上記の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものである(最高裁平成10年(行ツ)第69号,第70号同14年9月12日第一小法廷判決・裁判所時報1323号4頁,最高裁平成13年(行ツ)第38号,同年(行ヒ)第36号同14年9月17日第三小法廷判決・裁判所時報同号11頁参照)。もっとも,当該普通地方公共団体の一般住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的に見て上記の程度に当該行為の存在又は内容を知ることができなくても,監査請求をした者が上記の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される場合には,上記正当な理由の有無は,そのように解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものである(最高裁平成10年(行ツ)第86号同14年10月15日第三小法廷判決・裁判所時報1325号7頁参照)。 (2) 前記第3の1(7),(21)認定の事実によれば,本件各支出の存在自体については,原告を含む北橘村の一般住民が,財政概要の作成及び公表に関する条例に定められた財政概要の公表の内容及び北橘村議会の広報誌の内容などを相当の注意力をもって調査するならば,遅くとも平成10年度の決算の概況等が公表される平成11年11月1日(同条例3条2項参照)ころには,その存在を知り得る状態にあったと認められる。 しかしながら,前記第3の1(20)の北橘村の財政概要の作成及び公表に関する条例3条1項(1)によれば,公表される財政概要には本件各支出の概要が記載されるにとどまるのであって,原告が主張する本件各支出の違法性に関する事項,すなわち,本件各工事が実際に施工されたか否か,本件各契約が随意契約により締結されたものであるか否か,本件各 出の概要が記載されるにとどまるのであって,原告が主張する本件各支出の違法性に関する事項,すなわち,本件各工事が実際に施工されたか否か,本件各契約が随意契約により締結されたものであるか否か,本件各契約の実質的当事者が誰かに関する事項は,その性質上,財政概要の作成及び公表に関する条例3条1項(1)にいう支出の概要とはいえないから,公表される財政概要には記載がないものと推認される。 そうすると,原告を含む北橘村の一般住民が,公表される財政概要の内容及び北橘村議会の広報誌の内容などを相当の注意力をもって調査したとしても,客観的に見て本件各支出について監査請求をするに足りる程度にその内容を知ることはできなかったといわざるを得ない。 他方,前記第3の1(16)のとおり,平成13年6月29日付けの新聞において,原告が主張する本件各支出の違法性の根拠にかかる事項,すなわち,本件各契約及び本件各工事が存在しない疑いがあること,存在するとしても亡Bが,法142条の趣旨に反し,かつ,随意契約の制限に関する法令に違反する違法な財務会計上の行為をした疑いがあることについての報道がされているから,同新聞報道がされたころには,原告を含む北橘村の一般住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的に見て監査請求をするに足りる程度に本件各支出の存在及び内容を知ることができたということができる。 そして,原告は,前記新聞報道がなされた5日後である同年7月3日に本件監査請求をなしているから,原告は,原告を含む北橘村の一般住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的に見て監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたというべきである。 以上によれば,原告が,監査請求期間を徒過したことについて,法2 請求をするに足りる程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたというべきである。 以上によれば,原告が,監査請求期間を徒過したことについて,法242条2項ただし書の正当な理由があるから,本件各訴えは適法である。 3 争点(2)について(1) 原告の主張アについて前記第3の1(6),(10),(11),(14),(17),(18)認定の事実を総合すると,本件各工事及び本件各契約はいずれも存在したと認められ,これを覆すに足りる証拠はない。 (2) 原告の主張イについてアまず,本件各契約の締結が,法施行令167条の2第1項2号にいう「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」に該当するか否か検討する。 法234条1項は「売買,貸借,請負その他の契約は,一般競争入札,指名競争入札,随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする。」とし,同条2項は「前項の指名競争入札,随意契約又はせり売りは,政令で定める場合に該当するときに限り,これによることができる。」としているが,これは,法が,普通地方公共団体の締結する契約については,機会均等の理念に最も適合して公正であり,かつ,価格の有利性を確保し得るという観点から,一般競争入札の方法によるべきことを原則とし,それ以外の方法を例外的なものとして位置づけているものと解することができる。そして,そのような例外的な方法の一つである随意契約によるときは,手続が簡略で経費の負担が少なくてすみ,しかも,契約の目的,内容に照らしそれに相応する資力,信用,技術,経験等を有する相手方を選定できるという長所がある反面,契約の相手方が固定化し,契約の締結が情実に左右されるなど公正を妨げる事態を生じるおそれがあるという短所も指摘され得ることか る資力,信用,技術,経験等を有する相手方を選定できるという長所がある反面,契約の相手方が固定化し,契約の締結が情実に左右されるなど公正を妨げる事態を生じるおそれがあるという短所も指摘され得ることから,(法施行)令167条の2第1項(ただし,昭和49年政令第203号による改正前のもの)は前記法の趣旨を受けて同項に掲げる一定の場合に限定して随意契約の方法による契約の締結を許容することとしたものと解することができる。ところで,同項一号(現2号)に掲げる「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」とは,(略)不動産の買入れ又は借入れに関する契約のように当該契約の目的物の性質から契約の相手方がおのずから特定の者に限定されてしまう場合や契約の締結を秘密にすることが当該契約の目的を達成する上で必要とされる場合など当該契約の性質又は目的に照らして競争入札の方法による契約の締結が不可能又は著しく困難というべき場合がこれに該当することは疑いがないが,必ずしもこのような場合に限定されるものではなく,競争入札の方法によること自体が不可能又は著しく困難とはいえないが,不特定多数の者の参加を求め競争原理に基づいて契約の相手方を決定することが必ずしも適当ではなく,当該契約自体では多少とも価格の有利性を犠牲にする結果になるとしても,普通地方公共団体において当該契約の目的,内容に照らしそれに相応する資力,信用,技術,経験等を有する相手方を選定しその者との間で契約の締結をするという方法をとるのが当該契約の性質に照らし又はその目的を究極的に達成する上でより妥当であり,ひいては当該普通地方公共団体の利益の増進につながると合理的に判断される場合も同項一号(現2号)に掲げる場合に該当するものと解すべきである。そして,右のような場合に該当するか否かは,契約の公正及び価 いては当該普通地方公共団体の利益の増進につながると合理的に判断される場合も同項一号(現2号)に掲げる場合に該当するものと解すべきである。そして,右のような場合に該当するか否かは,契約の公正及び価格の有利性を図ることを目的として普通地方公共団体の契約締結の方法に制限を加えている前記法及び令の趣旨を勘案し,個々具体的な契約ごとに,当該契約の種類,内容,性質,目的等諸般の事情を考慮して当該普通地方公共団体の契約担当者の合理的な裁量判断により決定されるべきものと解するのが相当である(以上,最高裁第二小法廷昭和62年3月20日判決民集41巻2号189頁。なお,()内は当裁判所による説明である。)。 ここで,本件各工事は,幼稚園の改修工事という一般的な請負工事であり,競争入札の方法による契約の締結が不可能又は著しく困難というべき場合にあたらないことは明白である上,本件各工事は,実際にも,建設業の許可のない個人である被告Cが請け負い,さらに被告Cが下請業者を使用して本件各工事を施工していることからも明らかなとおり,請負人に特別な資力,信用,技術,経験等が必要とされる工事ではないから,法施行令167条の2第1項2号にいう「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」にあたらないというべきである。 イ次に,本件各契約の締結が,法施行令167条の2第1項3号にいう「緊急の必要により競争入札に付することができないとき」に該当するか否か検討する。 同号にいう「緊急の必要により競争入札に付することができないとき」とは,一般競争入札又は指名競争入札の方法による手続をとるときは,その時期を失し,あるいは全く契約の目的を達することができなくなり,行政上も経済上も甚だしく不利益を被るに至る場合などをいうと解すべきである。 この点,本件第1工 争入札の方法による手続をとるときは,その時期を失し,あるいは全く契約の目的を達することができなくなり,行政上も経済上も甚だしく不利益を被るに至る場合などをいうと解すべきである。 この点,本件第1工事及び本件第2工事は,3歳児保育のためのものであるから,3歳児保育が実施される平成10年4月1日までには完了しておく必要があるところ,前記第3の1(1)(2)(4)のとおり,平成9年11月14日に教育委員会で本件第1工事の承認を得て,同年12月8日に議会で本件第1工事の予算承認がされたものであり,本件第1工事中に,3歳児保育のクラスが入園希望者の増加に伴い1クラスから2クラスに増設されたことにより,平成10年3月12日に議決された平成9年度北橘村一般会計予算(第6号)予算において,本件第2工事の費用として178万3000円が計上されたものである。このような経緯において,一般競争入札又は指名競争入札の手続をとった場合に,平成10年4月1日までに本件第1工事及び本件第2工事が完了することは必ずしも確実とはいえず,本件第1工事及び本件第2工事が完了しなかった場合,3歳児保育の実施に甚だしい支障が生じるおそれがあったから,本件第1契約及び本件第2契約については,法施行令167条の2第3号の「緊急の必要により競争入札に付することができないとき」にあたるというべきである。 また,本件第3工事は,エアコンなどの空調設備工事が中心であるから,湿気の高い6月や,気温の高い7月,8月までに完了することが必要であるが,一般競争入札又は指名競争競争入札の手続をとった場合に,これらの時期までに本件第3工事が完了することは必ずしも確実とはいえず,本件第3工事が完了しなかった場合,3歳児保育の実施に甚だしい支障が生じるおそれがあったから,本件第3契約については,法施行令1 れらの時期までに本件第3工事が完了することは必ずしも確実とはいえず,本件第3工事が完了しなかった場合,3歳児保育の実施に甚だしい支障が生じるおそれがあったから,本件第3契約については,法施行令167条の2第3号の「緊急の必要により競争入札に付することができないとき」にあたるというべきである。 ウ以上によれば,本件各契約が随意契約により行われたことについて,違法はないものというべきである。 (3) 原告の主張ウについて上記のとおり,本件各契約が随意契約で締結されたこと自体が違法でないとしても,その契約の締結が,社会通念上相当と認められる範囲を逸脱し,裁量権を濫用したと認められる場合には違法とされるというべきである。 普通地方公共団体と当該普通地方公共団体の長が関係する私企業との癒着を防止するため,法142条は,普通地方公共団体の長は,当該普通地方公共団体に対し請負をする者の取締役等たることはできないと定め,さらに,法143条1項は,普通地方公共団体の長が前条に該当するときはその職を失うと定めている。 ところで,前記第3の2(12)(13)認定の事実によれば,本件各支出にかかる金員が北橘村収入役から被告Cの口座に振り込まれた直後に,本件各支出にかかる金員と同額の金員が亡Bが代表取締役を務めるB製工の口座に振り込まれていることに加えて,前記第3の2(6)認定のとおり,本件第1工事の見積りにつき,B製工が他の会社に働きかけて見積りを提出させており,本件第1契約前から,B製工が,本件第1契約の成立に向けて働きかけていたことや,前記第3の2(20)認定のとおり,被告Cが,建設業の許可を受けておらず,被告Cの本件各工事への実際の関与が一部にとどまる上,本件各工事の下請業者に対する実際の支払を被告Cではなく,B製工が行 や,前記第3の2(20)認定のとおり,被告Cが,建設業の許可を受けておらず,被告Cの本件各工事への実際の関与が一部にとどまる上,本件各工事の下請業者に対する実際の支払を被告Cではなく,B製工が行っていること(争いない事実)なども併せ考慮すると,被告Cは本件各契約の形式的な当事者にすぎず,本件各契約の実質的な当事者は亡Bが代表取締役を務めるB製工であったと認められる。 そうであるにもかかわらず,亡Bが,被告Cを本件各契約の当事者としたのは,普通地方公共団体と当該普通地方公共団体の長が関係する私企業との癒着を防止することを目的とする法142条,143条の趣旨を潜脱する意図があったものといわざるを得ない。 以上によれば,本件各契約は,亡Bが,社会通念上相当と認められる範囲を逸脱し,裁量権を濫用して締結した,違法なものというべきである。 これに対し,被告らは,B製工は,被告Cから依頼されて,本件各工事に関する下請代金,材料費等の支払を代行したにすぎず,飽くまで本件各契約の実質的な当事者は被告Cであると主張する。しかし,B製工が被告Cから本件各工事に関する請負代金や材料費等の支払の代行を依頼されるに至った経緯や,B製工と被告Cの利得の配分等について,何ら具体的な主張,立証をしない。よって,被告らの上記主張は採用できない。 (4) 原告の主張エについて北橘村財務規則は,行政規則として,北橘村長が,北橘村長又はその補助機関等に対し,裁量の範囲を自ら制約する基準を示したものである。したがって,亡Bが,北橘村財務規則160条に違反して同規則148条の検査に合格しないまま,本件各支出をしたとしても直ちに違法となるわけではない。 もっとも,このような裁量権の行使も,社会通念上相当と認められる範囲を逸脱し,裁量権を濫用した 同規則148条の検査に合格しないまま,本件各支出をしたとしても直ちに違法となるわけではない。 もっとも,このような裁量権の行使も,社会通念上相当と認められる範囲を逸脱し,裁量権を濫用したと認められる場合には違法とされるというべきである。 この点,本件各契約における報酬の支払時期は本件各契約にかかる各契約書(甲2ないし4)によっても明確でなく,他方,前記第3の1(14)によれば,本件各工事は,遅くとも平成10年8月18日までには終了し,前記第3の1(5)(8)(9)によれば,本件各支出は,予算可決後,予算の範囲内でなされているから,亡Bが,本件各工事の完了後,収入役に命じて,北橘村財務規則160条に違反して本件各支出をさせたこと自体が,社会通念上相当と認められる範囲を逸脱し,裁量権を濫用したものであるとまではいうことができない。 3 争点(3)について前記2のとおり,亡Bは,法142条,143条の趣旨を潜脱する意図をもって,社会通念上相当と認められる範囲を逸脱し,裁量権を濫用して,本件各契約を締結したのであるから,これにより北橘村が被った損害について,不法行為に基づき,後記のとおり,被告Cと連帯して損害を賠償する責任を負う。そして,亡Bの相続人である被告D,同E,同F及び同Gは,法定相続分に従い,亡Bの上記債務を相続した。 また,本件各契約の締結は,本件各契約の形式的当事者である被告Cの積極的な関与なしにはありえないから,被告Cは,亡Bと通謀した上,法142条,143条の趣旨を潜脱する意図をもち,社会通念上相当と認められる範囲を逸脱し,裁量権を濫用して,本件各契約を締結したものというべきであるから,被告Cは,亡Bと連帯して,これにより北橘村が被った損害について,不法行為に基づき,損害を賠償する責任 相当と認められる範囲を逸脱し,裁量権を濫用して,本件各契約を締結したものというべきであるから,被告Cは,亡Bと連帯して,これにより北橘村が被った損害について,不法行為に基づき,損害を賠償する責任を負う。 4 争点(4)について(1) 争点(4)にかかる原告の主張アについて法242条の2第1項4号に基づく損害賠償請求につき,同号に基づく住民訴訟において住民が代位行使する損害賠償請求権は,民法その他私法上の損害賠償請求権と異なるところはないというべきであるから,損害の有無,その額については,損益相殺が問題になる場合にはこれを行った上で確定すべきものであって,財務会計上の行為により普通地方公共団体に損害が生じたとしても,他方において同行為の結果,その地方公共団体が利益を得,あるいは支出を免れることによって利得をしている場合には,両者の間に相当因果関係が認められる限り,損益相殺を行うことができるというべきである。本件においては,亡B及び被告Cは本件各工事の完成をさせているから,被告らは,本件各工事の完成に対する正当な対価について,損益相殺をすることができる。 そこで,本件各工事の正当な対価につき,検討すると,本件では,本件各契約の締結にあたり,見積書が出されていないか(本件第2契約),被告C以外の者から見積書が出されているとしても,B製工又は被告Cの依頼により出されたものである(本件第1契約,本件第3契約)し,本件各契約の締結の態様,本件各工事の内容,本件各支出の金額等本件にあらわれた一切の諸事情を総合考慮しても,その正当な対価の算出は困難である。そこで,本件について,本件にあらわれた一切の事情を考慮し,その正当な対価を受注額の95パーセントとして,本件各支出金額の5パーセントに相当する損害が発生したものと認めるのが相当で 算出は困難である。そこで,本件について,本件にあらわれた一切の事情を考慮し,その正当な対価を受注額の95パーセントとして,本件各支出金額の5パーセントに相当する損害が発生したものと認めるのが相当である。 以上によれば,被告Cは,北橘村に対し,55万2000円及びこれに対する平成13年9月28日から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし,被告Dと27万6000円及びこれに対する平成13年9月28日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で,被告E,同F及び同Gといずれも各9万2000円及びこれに対する平成13年9月28日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で,それぞれ連帯して)を支払わなければならず,また,亡Bの妻であり法定相続分が2分の1である被告Dは,北橘村に対し,被告Cと連帯して,27万6000円及びこれに対する平成13年9月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払わなければならず,さらに,亡Bの子であり,法定相続分がそれぞれ6分の1である被告E,同F及び同Gは,それぞれ,北橘村に対し,被告Cと連帯して,9万2000円及びこれに対する平成13年9月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払わなければならないというべきである。 (2) 争点(4)にかかる原告の主張イについて争点(4)にかかる原告の主張イは,争点(2)にかかる原告の主張エの違法性が認められる場合の損害の主張であると解されるが,前記のとおり争点(2)にかかる原告の主張エの違法性は認められないから,争点(4)にかかる原告の主張イの損害は認められない。 5 結論以上によれば,原告の請求は,被告らにそれぞれ主文記載の金員の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却するこ イの損害は認められない。 5 結論以上によれば,原告の請求は,被告らにそれぞれ主文記載の金員の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法64条,61条,65条を適用し,仮執行宣言の申立てはその必要を認め難いから却下することとして,主文のとおり判決する。 前橋地方裁判所民事第1部裁判長裁判官中野智明裁判官松田道別裁判官櫛橋直幸
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