平成12(う)20 有印私文書偽造,同行使,詐欺,強盗殺人被告事件

裁判年月日・裁判所
平成16年4月23日 広島高等裁判所 広島地方裁判所 平成5(わ)296
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判決文本文48,395 文字)

主文 原判決中被告人に関する部分を破棄する。 被告人を死刑に処する。 押収してある普通預金払戻請求書1枚(当庁平成7年押第1号の1)及び郵便貯金払戻金受領証3枚(同号の2ないし4)の各偽造部分を没収する。 理由 本件控訴の趣意は,検察官吉岡征雄作成の控訴趣意書(ただし,147頁2行目から148頁3行目11文字目までを除く。)に記載されているとおりであり,これに対する答弁は,弁護人合志喜生作成の答弁書(ただし,第1項を除く。)に記載されているとおりであるから,これらを引用する。検察官の論旨は,要するに,被告人を無期懲役に処した原判決の量刑は,本件犯行の動機,原因,計画性,態様,被告人が果たした役割の程度,結果の重大性,被害者の遺族の被害感情と処罰意思,社会的影響,被告人の前科,被告人の反社会的性格とその矯正不可能性,その他諸般の事情にかんがみれば,著しく軽きに失し不当である,というものである。 なお,本件は,原審及び差戻前控訴審の判決がなされた後,平成11年12月10日,最高裁判所において,破棄差戻しの判決が言い渡された。検察官は,差戻前控訴審において,検察官安田哲也作成の弁論要旨(平成8年12月3日付け)記載のとおり弁論を行い,差戻後の控訴審において,検察官渋谷勇治作成の意見書(平成12年12月11日付け,平成14年6月13日付け)記載のとおり意見を述べ,検察官松本正則作成の弁論要旨記載のとおり弁論を行った。 また,弁護人は,差戻前控訴審において,弁護人合志喜生作成の意見書要旨記載のとおり弁論を行い,差戻後の控訴審において,主任弁護人武井康年,弁護人石口俊一及び弁護人久保豊年連名作成の弁護人意見書(一)ないし(六),同(7),控訴答弁書( 弁護人合志喜生作成の意見書要旨記載のとおり弁論を行い,差戻後の控訴審において,主任弁護人武井康年,弁護人石口俊一及び弁護人久保豊年連名作成の弁護人意見書(一)ないし(六),同(7),控訴答弁書(更新手続において),同その2,意見書(更新手続において)(1)ないし(3)記載のとおり意見を述べ,上記主任弁護人ら3名連名作成の最終弁論要旨記載のとおり弁論を行った。 そこで,これらの主張をも合わせて検討した上,本件審理の経過,量刑不当の主張に関する判断,その他の弁護人の主張に対する判断の順に,以下,理由を述べる。 第1 本件審理の経過 1 原判決の主文,認定事実及び量刑理由の要旨(1) 広島地方裁判所は,平成6年9月30日,被告人に対する有印私文書偽造,同行使,詐欺,強盗殺人,Aに対する強盗殺人各被告事件について,主文において,「被告人両名をいずれも無期懲役に処する。被告人Aに対し,未決勾留日数のうち300日を右刑に算入する。被告人から押収してある普通預金払戻請求書1通(平成5年押第112号の1)及び郵便貯金払戻金受領証3通(同押号の2ないし4)の各偽造部分を没収する。」と言い渡した。 (2) その認定した犯罪事実の要旨は,次のとおりである。 第1 被告人両名は,共謀の上,B(当時87歳)を殺害して金品を強取しようと企て,平成4年3月29日午後2時ころ,自動車に同女を乗せて福山市a町(以下略)の林道に至り,同所において,植木を取りに行く等と称して同女を下車させ,Aが同女を右林道西側の道端に連れて行き,しゃがみ込んでいる同女の背後から,被告人が,付近で拾った石でやにわにその後頭部を1回強打して,同女をうつぶせに転倒,失神させ,その頸部に,Aから受け取ったビニール紐(白色,ポリエチレン製,長さ約1メートル4センチメートル。平成5年押第1 が,付近で拾った石でやにわにその後頭部を1回強打して,同女をうつぶせに転倒,失神させ,その頸部に,Aから受け取ったビニール紐(白色,ポリエチレン製,長さ約1メートル4センチメートル。平成5年押第112号の5)を巻き付け,被告人両名が,その両端をそれぞれ持って数分間力いっぱい引き合って同女の頸部を緊縛して窒息死させ,右殺害現場を離れる際,同所付近を走行中の前記自動車内において,同女の手提げバッグ内から,同女所有の現金3000円,同女名義のC銀行株式会社l支店発行の普通預金通帳,郵政省発行の郵便貯金通帳各1通及び印鑑2個を強取し,さらに,同日午後9時ころ,三原市b町(以下略)のD境内にある同女方内において金品を物色したものの,これを発見するに至らず,第2 被告人は,前記強取に係る普通預金通帳,郵便貯金通帳及び印鑑を使用して,預貯金の払戻等名下に金員を騙取しようと企て, 1 同年4月9日午前10時ころ,福山市(以下略)所在のC銀行株式会社c支店において,行使の目的をもって,ほしいままに,同支店備付けの普通預金総合口座払戻請求書用紙の店番欄に「11」,口座番号欄に「229610」,おなまえ欄に「B」,お払戻し金額欄に「¥57000」と,ボールペンで各冒書した上,同女名下に前記印鑑を冒捺し,もって,B作成名義の金額5万7000円の普通預金払戻請求書1通(平成5年押第112号の1)を偽造した上,同支店係員Eに対し,右偽造に係る普通預金払戻請求書をあたかも真正に成立したもののように装って,前記普通預金通帳とともに提出して行使し,自己が右Bの代理人であって右払戻を受ける正当な権限があるかのように装って右金員の払戻を請求し,右Eをしてその旨誤信させ,よって,そのころ,同所において,同人から,預金払戻名下に現金5万7000円の交付を受けて,こ 人であって右払戻を受ける正当な権限があるかのように装って右金員の払戻を請求し,右Eをしてその旨誤信させ,よって,そのころ,同所において,同人から,預金払戻名下に現金5万7000円の交付を受けて,これを騙取し, 2 同日午後2時46分ころ,同市(以下略)所在のd郵便局において,行使の目的をもって,ほしいままに,同郵便局備付けの郵便貯金払戻金受領証用紙のおところ欄に「三原市b町(以下略)」,おなまえ欄に「B」,払戻金額欄に「¥49000」と,ボールペンで各冒書した上,受領印欄に前記印鑑を冒捺し,もって,B作成名義の郵便貯金払戻金受領証1通(平成5年押第112号の2)を偽造した上,同郵便局係員Fに対し,右偽造に係る郵便貯金払戻金受領証をあたかも真正に成立したもののように装って,前記郵便貯金通帳とともに提出して行使し,自己が右Bの代理人であって右払戻を受ける正当な権限があるかのように装って右金員の払戻を請求し,右Fをしてその旨誤信させ,よって,そのころ,同所において,同人から同郵便局係員Gを介して,貯金払戻名下に現金4万9000円の交付を受けて,これを騙取し, 3 Hと共謀の上,同月27日午前10時40分ころ,同市(以下略)所在のm郵便局において,右Hにおいて,行使の目的をもって,ほしいままに,同郵便局備付けの定額・定期貯金用郵便貯金払戻金受領証用紙2通の各おところ欄に「723 広島県三原市b町(以下略)」,各おなまえ欄に「B」と,ボールペンで各冒書した上,同女名下に前記印鑑を各冒捺し,もって,B作成名義の定額貯金用郵便貯金払戻金受領証2通(平成5年押第112号の3及び4)を各偽造した上,同郵便局係員Iに対し,右偽造に係る定額貯金用郵便貯金払戻金受領証2通をあたかも真正に成立したもののように装って,前記郵便貯金通帳とともに一括提 通(平成5年押第112号の3及び4)を各偽造した上,同郵便局係員Iに対し,右偽造に係る定額貯金用郵便貯金払戻金受領証2通をあたかも真正に成立したもののように装って,前記郵便貯金通帳とともに一括提出して行使し,自己が右Bの代理人であって同人名義の定額貯金を解約して解約金を受領する正当な権限があるかのように装って右定額貯金の解約を請求し,右Iをしてその旨誤信させ,よって,そのころ,同所において,同人から,同郵便局係員Jを介して,定額貯金解約名下に現金20万9791円の交付を受けて,これを騙取したものである。 (3) 原判決は,上記のとおり認定した上,被告人を無期懲役に処した量刑の理由において,次のような点を指摘している。 ① 本件は,犯行の罪質,態様ともいずれも凶悪で,その動機に酌量の余地はなく,結果も悲惨なものであって,被告人両名の刑責が非常に重大であることは,いうまでもない。すなわち,被告人が多額の債務を負うに至った原因は,その身勝手ともいえる理由によって雇傭先を解雇され,あるいは退職し,その後の無計画な生活態度をとったこと及びパチンコに熱中したことにあり,サラ金への返済金等を得るために本件のような凶悪犯罪を敢行したその動機には全く酌量の余地はない。絞殺に用いるためのビニール紐等を用意した上で被害者方に赴き,金員の貸与を申し出て,現金所持の有無を確認し,被害者を誘い出して殺害するなど,犯行に至る経緯も計画的かつ悪質である。犯行態様も,足が悪く高齢の女性である被害者の後頭部をいきなり石塊で強打して失神させ,ビニール紐を頸部に巻き付け,二人がかりでこれを引き合って殺害し,被害者の遺体が発見されないように,被告人が崖下に引きずり下ろし,何の反省もなく,更に当初の予定どおり被害者宅に押し入って金品を物色するという冷酷なものであり,被害 人がかりでこれを引き合って殺害し,被害者の遺体が発見されないように,被告人が崖下に引きずり下ろし,何の反省もなく,更に当初の予定どおり被害者宅に押し入って金品を物色するという冷酷なものであり,被害者の遺体は,人知れぬ山中でその後1年余,野ざらしとなっていたもので,その結果も悲惨である。被害者には何の落ち度もなく,被告人らに好意的であったのに,それが徒となるなど,被害者にとっては無念の極みであった。被害者の次男は被告人両名を死刑にしてほしい旨述べ,実弟は死刑か無期懲役にしてほしいと述べている。被告人は,強取した預貯金通帳を用い,第三者をも利用して,これを引き下ろしているのみならず,自首しようとしたAを押し止めており,犯行後の情状もはなはだ悪い。被告人は,かつて本件類似の強盗殺人を犯し,無期懲役に処せられた者であり,その仮出獄期間中にまたしても本件強盗殺人を敢行している。 これらのことにかんがみれば,被告人の刑責が非常に重大であることは論を待たず,そのような被告人を死刑に処することを求める検察官の求刑意見も,理解し得ないものではない。 ② しかしながら,死刑は最も厳しい科刑であって,あらゆる面からみて,他の科刑をもってしては不十分であり,死刑を選択するほかないという場合にのみ科せられるべきものである。そこで,そのような観点から被告人について斟酌すべき情状を見てみると,被害者の状況を窺いつつ逐次犯行を決断し,犯行場所も場当たり的に探すなど,その計画性は低い。私文書偽造等の容疑で逮捕されるや,速やかに本件強盗殺人についても罪責を認めて犯行を自供し,自ら犯行場所に捜査官を案内し,これによって被害者の遺体が発見されており,被害者の遺体が発見された際には,悔悟して涙を流し,その後は一貫して自己の罪責の重大さを真剣に自覚し,極刑に処せられ 自供し,自ら犯行場所に捜査官を案内し,これによって被害者の遺体が発見されており,被害者の遺体が発見された際には,悔悟して涙を流し,その後は一貫して自己の罪責の重大さを真剣に自覚し,極刑に処せられることを覚悟し,死をもって罪をあがなうとの態度を示している。被告人の前刑の服役態度は極めてまじめであり,比較的早期の仮出獄を許され,仮出獄後も,当初は,健全な社会生活を営もうと努力したものといえ,期日外に実施した実母の証人尋問調書を読み聞かせた際には,涙して実母の証言内容に聞き入るなど,改善更生の余地がないとまではいい切れず,なお一片の人間性が残っていることが看取できる。 ③ そして,無期懲役に処せられた者でその仮出獄期間中に強盗殺人を犯した事例を検討したところ,過去10年内に確定した事例で,すべて死刑に処せられているが,それらはいずれも犯情において極めて悪質であり,天人ともに許さざるものと認めるしかないものであるが,被告人の情状は,殺害の手段方法の執拗性,残虐性,前歴等の点において,悪質さが低いといえる。被告人になお人間性の片鱗をうかがうことができる点において,被告人に対し,極刑をもって臨むことに一抹の躊躇を覚える。 被告人に対し,再度無期懲役刑を科した場合,どの程度現実に服役しなければならないかについて検討すると,仮出獄取消しによる前刑の服役期間は最低10年以上,本件無期懲役刑について,仮出獄の要件を満たすためには,本件犯情等を考慮に入れると,最低20年程度の服役を要し,再度無期懲役を科した場合,最低でも30年程度服役することが必定である。被告人の刑責を明らかにし,十分な贖罪をさせるという刑政の本旨にかんがみて過不足はない。 仮出獄の判断は,更生保護委員会の権限に属する事柄ではあるが,判決で示した考え方は,裁判所の見解と る。被告人の刑責を明らかにし,十分な贖罪をさせるという刑政の本旨にかんがみて過不足はない。 仮出獄の判断は,更生保護委員会の権限に属する事柄ではあるが,判決で示した考え方は,裁判所の見解として,十分尊重されると考えられるので,そのことを前提として,以上の量刑判断をした。 このように説示している。 2 差戻前控訴審判決の主文及び理由の要旨(1) 原判決に対し,検察官及びAから各控訴の申立てがなされた。広島高等裁判所は,平成9年2月4日,主文において,「本件各控訴を棄却する。被告人Aに対し当審における未決勾留日数中400日を原判決の本刑に算入する。」と言い渡した。 (2) 判決の理由のうち,被告人に関する部分の要旨は,次のとおりである。 ① 本件強盗殺人の罪質,態様は凶悪であり,その動機に酌量の余地はなく,その結果も悲惨である。すなわち,原判決が認定するように,その動機をみると,被告人は,サラ金に多額の債務を負い,その返済資金などを得るため本件強盗殺人という凶悪な犯罪を敢行したというのであって,酌量の余地はない。殺害に至る経緯も,計画的かつ悪質なものである。殺害の態様,その後の状況をみても,確定的な殺意に基づき,高齢の女性である被害者の後頭部を石塊で強打して失神させた上,ビニール紐を同女の頸部に巻き付けて二人がかりで引き合って殺害し,遺体が発見されないように谷の下に引きずり下ろし,当初の予定どおり被害者方に押し入って金品を物色するという残虐かつ冷酷非情なものである。その結果も,悲惨というほかなく,被害者の無念さは計り知れない。被害者の近親者の処罰意見の内容などの諸事情に徴すると,被告人の刑事責任は極めて厳しく重大であり,その社会的影響も大きく一般予防の見地からも厳罰をもって臨むべきものと思料される。 その上 。被害者の近親者の処罰意見の内容などの諸事情に徴すると,被告人の刑事責任は極めて厳しく重大であり,その社会的影響も大きく一般予防の見地からも厳罰をもって臨むべきものと思料される。 その上で,個別の事情を検討し,本件は,被告人が,昭和48年10月,近所の主婦を確定的殺意のもとに殺害し,金員を強取したという強盗殺人罪による仮出獄中の犯行である。本件犯行において果たした被告人の役割には主導性が認められ,この犯行後に詐欺等の犯行に及んでいるのみならず,その後も真面目に仕事をせず,パチンコ遊びに熱中し,堕落した生活を続けていたのであり,被告人の反社会性,犯罪性は顕著である。被告人の犯情はこの上なく悪質であるというほかなく,その刑事責任は誠に重大であり,被告人に対しては極刑をもって臨むべきであるという検察官の所論はそれ相応の理由があるといえなくはない。 ② しかし,被告人らが,事細かに犯行の手順を打ち合わせたとは認められず,被害者方を訪れた後も直ちに殺害の実行に及んでいる訳でもなく,被害者から奪うべき金品があるかどうか確認した後に殺害実行の決意を固めており,被害者を連れ出した後も犯行実行場所を探し回っていることが認められ,犯行の計画性は周到なものであったとまでは認められない。 被告人の服役態度は真面目であったと窺われ,また,極刑になることを覚悟した上で人間としての償いを果たしたいと一貫して共犯者のことをも含めて自供しており,反省の情を示していることが認められる。 無期懲役に処せられた者がその仮出獄期間中に強盗殺人を犯した過去10年内の事例5件のうち本件と類似した2件と対比すると,遊興費欲しさの犯行であること,被害者が老人あるいは女性という弱者であること,予め被害者殺害を計画していること,被害者が1名であり,何ら 過去10年内の事例5件のうち本件と類似した2件と対比すると,遊興費欲しさの犯行であること,被害者が老人あるいは女性という弱者であること,予め被害者殺害を計画していること,被害者が1名であり,何ら落ち度がないこと,被害者の遺族が極刑を望んでいることなど共通性が認められるけれども,原判決が認定するように,殺害の手段方法の執拗性,残虐性,あるいは前科等の点において,悪質さが異なるのであり,これらの点を原判決が量刑の要素として考えていることをもって不当であるとはいえない。 ③ 原判決は,仮出獄を許さない終身刑を定めなかった現行刑法の枠組み,その趣旨も踏まえ,再度無期懲役刑を選択した場合の服役期間についての検討に入っているのであり,現行刑法の趣旨に反するとはいえず,原判決が指摘する程度の服役期間でなければ償うことができないとするならば,むしろ死刑を言い渡すべきであるという検察官の主張は採ることができない。 原判決が被告人に対して死刑を選択しなかった事由として説示するところは決して理由がないものではないから,被告人を無期懲役に処した原判決の量刑が,これを破棄した上で改めて極刑に処さなければならないほど著しく軽きに失して不当であるとは認められない。 以上のような説示をしている。 3 上告審判決の主文及び理由の要旨(1) 検察官から,差戻前控訴審の判決中被告人に関する部分について,更に上告の申立てがなされ,最高裁判所は,平成11年12月10日,主文において,「原判決中被告人に関する部分を破棄する。本件を広島高等裁判所に差し戻す。」と言い渡した。 (2) その理由の要旨は,次のとおりである。 ① 最高裁判例(最高裁昭和58年7月8日第2小法廷判決・刑集37巻6号609頁)が示すように,死刑制度を存置する現行法制の下では,犯行 い渡した。 (2) その理由の要旨は,次のとおりである。 ① 最高裁判例(最高裁昭和58年7月8日第2小法廷判決・刑集37巻6号609頁)が示すように,死刑制度を存置する現行法制の下では,犯行の罪質,動機,態様殊に殺害の手段方法の執よう性・残虐性,結果の重大性殊に殺害された被害者の数,遺族の被害感情,社会的影響,犯人の年齢,前科,犯行後の情状等各般の情状を併せ考察したとき,その罪責が誠に重大であって,罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極刑がやむを得ないと認められる場合には,死刑の選択をするほかないものといわなければならない。 ② 本件犯行の罪質,結果は極めて重大であり,遺族の被害感情は厳しく,社会に与えた影響も無視することができない。被告人が犯行に及んだ動機は,パチンコに熱中し,金融業者から借金を重ね,その返済に窮したためであって,極めて安易に犯行の実行に至っており,同情すべき点がない。殺害の手段方法は,被害者の頭部を石で強打して失神させ,その頸部にビニールひもを巻き付け,両端を大の男が二人掛かりで力一杯引っ張り合って緊縛したというものであり,犯跡を隠ぺいするため遺体をがけ下に放り投げるなどして放置した点も併せると,冷酷かつ残虐であるといわざるを得ない。共犯者Aとの関係では,本件強盗殺人の計画と実行の全般にわたり,終始主導的役割を果たしており,その後,強取した預金通帳等を利用して,独自に本件詐欺等の犯行にも及んでいる。また,本件強盗殺人の犯行後,Aが自首しようとするのを思いとどまらせたり,まじめに仕事もしないでパチンコに熱中する生活を続けたりするなど,事後の情状も芳しくない。さらに,被告人は,強盗殺人罪により無期懲役に処せられて服役しながら,その仮出獄中に再び本件強盗殺人の犯行に及んだものであり,この点は非常に悪質で る生活を続けたりするなど,事後の情状も芳しくない。さらに,被告人は,強盗殺人罪により無期懲役に処せられて服役しながら,その仮出獄中に再び本件強盗殺人の犯行に及んだものであり,この点は非常に悪質であるというほかない。特に前件の強盗殺人は,被告人が,オートレース等による借金の返済に窮した挙げ句,親しく近所付き合いをしていた主婦を包丁で脅して現金を奪った上,顔見知りである同女を殺害して自己の犯行を隠ぺいし逃走しようと決意し,犯行を敢行したものであり,本件強盗殺人とは,遊興による借金の返済のために顔見知りの女性の好意に付け込み,計画的に犯行を実行したという点において,顕著な類似性が認められる。それだけに,前件の仮出獄中に本件強盗殺人に及んだ被告人の反社会性,犯罪性には,到底軽視することができないものがあるというべきである。 以上の諸点を総合すると,本件で殺害された被害者は1名であるが,被告人の罪責は誠に重大であって,特に酌量すべき事情がない限り,死刑の選択をするほかないものといわざるを得ない。 ③ 原判決及びその是認する第一審判決がいう三つの酌量すべき事情のうち,第一の計画性が低いという点については,被告人らは,事前の相談で被害者をひもで絞殺して金品を奪うという基本的な事項を決定した上,ビニールひもや軍手を購入し,ひもの強度を増すために束ねて結び目を作るなどの準備をし,被害者方では,被害者が現金を持っているか否かを確認するために,仮病を使って別室に入り預金通帳をのぞき見たり,借金を申し込んで探りを入れるなど,臨機応変の巧妙な対応をしており,被害者を連れ出した後も,殺害の意思を翻すことなく適当な実行場所を探し続け,犯行を完遂したものである。このような事情に照らすと,本件強盗殺人の計画性が低いと評価することは,相当でない。 第 ,被害者を連れ出した後も,殺害の意思を翻すことなく適当な実行場所を探し続け,犯行を完遂したものである。このような事情に照らすと,本件強盗殺人の計画性が低いと評価することは,相当でない。 第二の被告人に改善更生の余地があるという点については,確かに,被告人は,逮捕後の比較的早い段階から本件各犯行を全面的に自白し,これを第一審及び原審の各公判廷でも維持するとともに,極刑を覚悟している旨の供述もしている。また,前刑の服役態度はまじめであり,仮出獄後も,当初は健全な社会生活を営もうと努力した形跡がうかがわれる。しかしながら,他方,被告人は,近親者の援助を受けるなどかなり恵まれた環境で仮出獄後の生活を始めながら,間もなくパチンコに熱中して借金を重ね,その挙げ句本件強盗殺人に至ったのである。また,被害者の遺族に対する慰謝の措置も何ら講じていない。そうすると,被告人が自白し反省の情を示していることなどを大きく評価することは,当を得ない。 第三の点,すなわち,無期懲役に処せられ仮出獄中に強盗殺人を犯した者につき死刑が選択された従前の事例と対比して,被告人の情状は悪質さの程度が低いという点については,右のような事案で前記最高裁昭和58年7月8日判決以後に裁判が確定した事例においては,いずれも死刑が選択されているところ,これらの事例,殊に被害者が一名である事例と対比しても,前記のとおりの被告人の情状は,全体として,死刑の選択を避け得るほどに悪質さの程度が低いと評価することは到底できない。 以上によれば,原判決及びその是認する第一審判決が酌量すべき事情として述べるところは,いまだ被告人につき死刑を選択しない事由として十分な理由があると認めることはできない。 ④ そうすると,原判決は,量刑に当たって考慮すべき事実の評価を誤った結果 すべき事情として述べるところは,いまだ被告人につき死刑を選択しない事由として十分な理由があると認めることはできない。 ④ そうすると,原判決は,量刑に当たって考慮すべき事実の評価を誤った結果,被告人を無期懲役に処した第一審判決の量刑を是認したものであって,その刑の量定は甚だしく不当であり,これを破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。 よって,刑訴法411条2号により原判決中被告人に関する部分を破棄し,本件事案の重大性にかんがみ,更に酌量すべき事情の有無につき慎重な審理を尽くさせるため,同法413条本文により本件を原裁判所に差し戻すこととする。 以上のとおり判示した。 第2 量刑不当の主張に関する当裁判所の判断 1 そこで,当裁判所は,上記最高裁判所の判決を受けて,被告人の量刑に関し,本件記録及び証拠物を調査し,更に酌量すべき事情につき審理を尽くすため,当審において,事実の取調べをした結果を斟酌して,所論の当否について検討する。 なお,当審で事実の取調べをした証拠のうち,犯行に至る経緯や犯情,犯行後の情状に関する主なものとして,次のようなものがある。共犯者A,被告人の元妻K,被告人の義理の兄L及び被告人の姉Mに対する各証人尋問調書,被告人の保護観察を担当していた保護司Nに対する証人尋問,被害者B方などを撮影したビデオテープ及び写真,被害者の遺族O方を撮影した写真,情状鑑定及び鑑定を担当した医師Pに対する証人尋問,被告人質問(被告人供述調書に添付した被告人作成の書面を含む。),被告人作成の手紙及び手記,被告人の長女が被告人に宛てて出した手紙,などがある。 2(犯行の動機,経緯について)所論は,要するに,本件強盗殺人は,被告人が仮出獄の趣旨を踏みにじり,遊興に溺れた結果,金員に窮して敢行したも の長女が被告人に宛てて出した手紙,などがある。 2(犯行の動機,経緯について)所論は,要するに,本件強盗殺人は,被告人が仮出獄の趣旨を踏みにじり,遊興に溺れた結果,金員に窮して敢行したもので,犯行に至る経緯とその動機には,酌量の余地が全くない,というのである。 (1) そこで,検討すると,被告人の身上,経歴,本件犯行に至る経緯について,次のような事実が認められる。 被告人は,昭和28年1月13日,山口県宇部市内で,父母の間に戸籍上の第5子長男として生まれ,両親にとって待望の男の子であったことから,非常に甘やかされて育った。昭和43年3月,中学校を卒業後,父が病気療養中であったため,高等学校への進学を断念して山口県立Q訓練所に進み,大工の技術を学び,1年後,工務店で大工見習いとして働き始めたが,親方の妻と喧嘩をして,約5か月で退職した。その後,運輸会社でフォークリフト運転手として働いていたが,昭和46年8月ころ,下請会社の従業員更衣室からカメラを盗んだ事件で逮捕され,家庭裁判所で不処分の決定を受け,勤務先を退職し,さらに別の運輸会社でフォークリフト運転手などとして勤務し,両親を扶養していた。 被告人は,同年1月ころからオートレースやボートレースに興味を持ち,大当たりしたことがきっかけとなって熱中するようになり,その資金にするため,勤務先から前借りをしたり,知人や高利の金融業者から借金を重ねていた。 その知人の一人から再三にわたり強く借金の返済を迫られたため,オートレースなどで大穴を当てて,その配当金で借金の全てを返済しようと思い立ち,昭和48年10月,さらに他の知人から金を借りたほか,かねて家族ぐるみで親しく近所付き合いをし,その後,転居していたRを訪ねて金を借り,オートレースやボートレースに出掛けた。ところが,同月 い立ち,昭和48年10月,さらに他の知人から金を借りたほか,かねて家族ぐるみで親しく近所付き合いをし,その後,転居していたRを訪ねて金を借り,オートレースやボートレースに出掛けた。ところが,同月25日までに,所持金のほとんどを使い果たしてしまい,帰宅途中,いよいよ返済資金に窮し,返済資金を得る方法について考えを巡らした末,Rに刃物を突き付けて脅迫し,現金を奪い,顔見知りである同女を殺害して犯行を隠蔽しようと考え,犯行の際に着用する軍手と同女の警戒心をそらすための手みやげとして梨を購入し,同日午後4時30分ころ,同女方に赴いた。 被告人は,同女方に招き入れてもらい,犯行の機会をうかがい,台所のガス台近くに包丁があることを確かめたものの,なお実行をためらっていたが,同日午後5時ころ,所期の計画どおり,Rから金員を強取して殺害しようと決意し,両手に軍手をはめ,手に持った包丁を同女の胸付近に突き付けて脅迫し,抵抗する気力を失った同女に対し,執拗に金を出すよう申し向けて現金合計5万3000円を差し出させ,犯跡を隠蔽するため殺害すべく,同女の首付近を包丁で二,三回,背部を3回突き刺して左前頸部刺創,左背部刺創等の傷害を負わせた上,上記現金,預貯金通帳2冊及び印鑑などが入った手提げカバンやがま口を強取し,同女を上記傷害による外傷性呼吸機能障害により窒息死させて殺害した。 犯行後,全国各地を転々として逃走生活を送っていたが,親族の説得を受けて,同年12月,警察に出頭して逮捕され,昭和49年4月10日,山口地方裁判所において,強盗殺人罪により無期懲役に処せられ,控訴の申立てをしたが,同年9月26日,控訴棄却の判決を受け,この判決は同年10月12日確定した。そして,S刑務所,T刑務所及びU刑務所で約14年9か月間服役したが,服役態度がまじめであり せられ,控訴の申立てをしたが,同年9月26日,控訴棄却の判決を受け,この判決は同年10月12日確定した。そして,S刑務所,T刑務所及びU刑務所で約14年9か月間服役したが,服役態度がまじめであり,母や姉Vとの面会の際にも,社会に出たら真摯に贖罪の道を歩む旨の意思を示し,Vの夫で義理の兄に当たるLが身元引受人になったことから,平成元年7月20日仮出獄を許された。 仮出獄の条件として,帰住先の指定や更生保護施設における規律維持などのほか,①人命の尊さを自覚し,他人に粗暴なことはしないこと,②被害者の冥福を祈り,慰謝に誠意を尽くすこと,③決心したとおり,賭け事に手を出さないこと,④辛抱強くまじめに働き,決して徒遊しないことを定められた。 被告人は,約1か月間,岡山市内にある更生保護施設で過ごし,自動車運転免許を取り直すために試験場に通った際,Kと知り合い,結婚を前提に交際するようになったが,その間,知人の飲食店を数日間手伝っただけで,定職には就かなかった。 なお,被告人は,T刑務所を出所したとき,受刑中の領置金及び作業賞与金として約25万円を受領したほか,仮出獄後,間もない時点で,両親から自動車運転免許の取得費用20万円,結婚資金50万円,自動車購入費30万円などを受け取っているが,他方で,更生保護施設にいる時点で既に,刑務所仲間の娘に高価な贈り物をしたり,知人と酒を飲んだ際,高級酒を奢るなどして散財した。また,Kと交際中に一緒にパチンコ店に行き,いわゆるフィーバー機で大当たりしたこともあった。 被告人は,平成元年8月20日ころ,事前の連絡をしないで,いきなり家財道具をトラックに積んで,広島県福山市に住むLやVのもとに赴き,Vに頼んでアパートを探してもらった上,保証人になってもらい,Lが経営するL工業有限会社に配管工 ろ,事前の連絡をしないで,いきなり家財道具をトラックに積んで,広島県福山市に住むLやVのもとに赴き,Vに頼んでアパートを探してもらった上,保証人になってもらい,Lが経営するL工業有限会社に配管工として就職し,その後,間もなくKとの同居生活を始めた。被告人は,しばらくの間は,雑用を含めてまじめに勤務していたが,身元引受人であるLに相談をすることなく,自分の判断で仕事を進めたり,自動車を購入したりし,同年9月下旬には,サラ金業者からの借入れをするようになった。また,仕事を終えた後や休日にパチンコ店に通い,次第に熱中するようになり,たまに勝つこともあるが,1万円から2万円くらい負けることが多く,1日に4万円とか7万円くらい負けることもあり,負けを取り戻そうとして,さらに金をつぎ込むようになり,Kや母親などからパチンコをやめるように注意されても改めなかった。そのため,平成2年4月,正式にKと婚姻し,同年11月には長女が誕生したにもかかわらず,L工業から支給される給料や健康飲料の配達などのアルバイトをして得た収入だけでは,生活費や遊興費などが足りない状態が続いていた。 そして,母に何度も金を無心したほか,生活費やKが支払いのために保管していた光熱費まで取り上げてパチンコにつぎ込み,パチンコ代や生活費,借金の返済資金等に充てるために,さらにサラ金業者からの借入れを繰り返し,数百万円に上る借金を抱えるに至り,母に頼んで100万円弱の返済をしてもらったこともあるが,その後も,借入れを続けた。また,L工業が忙しいために後日工事を行うことで断った工事を,Lの二男と二人で無断で受注し,その利益を折半していたところ,平成3年11月20日,このことがLに発覚してL工業を解雇された。 被告人は,L工業の同業者方に配管工として就職したが,平成4年1月ころに と二人で無断で受注し,その利益を折半していたところ,平成3年11月20日,このことがLに発覚してL工業を解雇された。 被告人は,L工業の同業者方に配管工として就職したが,平成4年1月ころには,刑務所仲間の男性を通じてAと知り合い,同人らをこの勤務先に就職させたり,アパートを世話するなどし,特にAと相性が合い親しくなった。そして,同年2月,同僚と口喧嘩したことなどが原因で被告人が退職すると,間もなくAも退職し,同年3月中旬ころから,Aと共同して茶の訪問販売を始め,広島県三原市内に住んでいる被告人の姉Mから,B(明治38年3月20日生)を含む10軒程度の紹介を受け,B方を訪問して茶を買ってもらうなどしていたが,被告人は,足の悪いBに同情して,同月24日,Bを自動車に乗せて病院まで送迎したり,薬局まで薬を取りに行ったりした。 しかし,茶の訪問販売では思うように利益が上がらず,被告人は,サラ金業者等に対する600万円余りの借金返済に切羽詰まり,同月28日,福山市e団地に停車した自動車の中で,Aと金策の方法について相談し,Aから盗みでもするかと言われたのに対し,被告人は,犯行が発覚した場合には仮出獄が取り消されて長期の服役になることを考え,強盗を提案し,Bが金を貯めているかも知れないと考えて同女に狙いを付け,さらに,犯行の発覚を防ぐためには顔を知っているから殺害するしかないと話し合い,強盗殺人の実行について謀議を遂げた。そして,Aが,コンビニエンスストアで,荷造り用のビニール紐と軍手二双を購入した。 被告人らは,同日午後7時ころ,B方を訪れ,室内に入れてもらい,Bに借金を申し込むと貸してもらうことができたため,現金をかなり持っているものと判断し,Bを殺害する意思を固めた。そして,Bを外に連れ出して殺害した上,B方に立ち戻って を訪れ,室内に入れてもらい,Bに借金を申し込むと貸してもらうことができたため,現金をかなり持っているものと判断し,Bを殺害する意思を固めた。そして,Bを外に連れ出して殺害した上,B方に立ち戻って金品を強奪する旨意思を相通じ,甘言を弄してBをドライブに誘い,同日午後10時ころ,被告人が運転する自動車にBを乗車させて出発し,人気のない殺害場所を探し回り,翌29日午後2時ころ,本件犯行現場の林道に至り,強盗殺人の犯行を遂げた。 (2) 以上の認定事実を前提に,本件犯行に至る経緯及び犯行の動機についてみてみると,被告人は,昭和48年10月に強盗殺人という重大事件を起こし,無期懲役の刑を受けたが,まじめな服役態度や社会内での更生及び贖罪の意思を示していたことに加え,親族による身元引受けや就職先が確保され,更生環境が整備されていることが評価されて,服役開始後約14年9か月という比較的早い段階で,仮出獄を許されたのであり,無期懲役の受刑者としては,かなり恵まれた環境の下で仮出獄の生活を開始したということができる。それにもかかわらず,賭け事に手を出さないという仮出獄の条件に反して,パチンコにのめり込んで借金を繰り返し,妻や母からパチンコをやめるように忠告されても従わず,不審に思った保護司から生活状況を尋ねられた際も,正確な報告をしないでごまかし,適切な生活指導を受ける機会を自ら逸している。そして,勤務先に対する背信行為や同僚と喧嘩したことなど身勝手な理由により,解雇されたり退職したりして,自ら安定した収入の途を閉ざし,無計画な生活を送り,いよいよ借金の返済資金に窮し,姉の紹介により好意で茶を購入してくれた被害者に狙いを付け,しかも,Aから盗みを提案された際,被告人は,無期懲役刑の仮出獄中であることから,小さな盗みでも発覚した場合には仮出獄が取り消 資金に窮し,姉の紹介により好意で茶を購入してくれた被害者に狙いを付け,しかも,Aから盗みを提案された際,被告人は,無期懲役刑の仮出獄中であることから,小さな盗みでも発覚した場合には仮出獄が取り消されて長期の服役になる,どうせやるなら大きな犯罪をやった方が良いなどと考え,一攫千金を狙うとともに,犯行が発覚しないようにするため顔見知りの被害者を殺害することとして,本件強盗殺人を計画し,実行したのである。被告人は,仮出獄の趣旨を逸脱して,遊興に溺れた生活を送っていたのであり,本件犯行に至った経緯は甚だ芳しくなく,犯行動機の悪質性,反社会性は顕著であり,酌量の余地は全くない。 (3) これに対し,弁護人は,①被告人がLから,給与や退職に関して差別的な取り扱いを受け,更生のための妨害をされたこと,②被告人の借金の中には,生活費や出産費用,養育費用を目的とした分もあり,パチンコだけが借金の原因ではなく,当初は,小遣いの範囲内でパチンコに興じていたし,当時のサラ金は高利であったため,被告人の生活が破綻したことなどを指摘し,犯行に至った経緯や犯行動機には,なお酌むべき事情があるというのである。 しかしながら,①Lは,被告人とは親類に当たるとはいえ,それまでほとんど交際がなかったのに,被告人の仮出獄に当たり,妻であり被告人の姉であるVや被告人の父,そして保護司から依頼されて,被告人の身元引受人になり,被告人を雇い入れたこと,配管工としての経験がない被告人に対し,働き始めたときから4年目の工員と同程度の日給7000円を支給し,その後,増額しているし,賞与も支給していたこと,Vは,アパート賃貸借契約の保証人になった上,被告人がパチンコに熱中しているのに見かねて母親や保護司に相談したり,被告人にRの遺族に対する慰謝の措置を講じるように勧めたりして,仮 も支給していたこと,Vは,アパート賃貸借契約の保証人になった上,被告人がパチンコに熱中しているのに見かねて母親や保護司に相談したり,被告人にRの遺族に対する慰謝の措置を講じるように勧めたりして,仮出獄の遵守事項を誠実に守るように忠告していた。それにもかかわらず,被告人は,当初のうちこそ,まじめに働いていたが,Lに何の相談もしないで,Kとの新婚生活を始め,自動車など高価な物を購入し,勝手な判断をして仕事を進めたり,無断欠勤をしたりし,平成元年末ころには,仕事の割りに給料や賞与が低いと不満を漏らし始める一方,パチンコに熱中して借金を重ね,Kの母親や保護司の妻からも金を借り受けており,Rの遺族に対する慰謝の措置は母親任せにして,自らは何もしていなかったのであって,次第にLやVに不信感を抱かせた挙げ句,Lの二男とともにL工業の顧客の注文を個人的に受注して利益を得る背信行為に及んだのである。この背信行為が解雇事由に該当するのは当然であるところ,当審で調べた証人Lの供述によれば,確かに,Lは,被告人だけを解雇して,実の子供である二男に対する処分との間で差を設けているが,そのことによって被告人の行為が正当化されるわけではないし,本件犯行に至る経緯に酌むべき事情があることにはならない。また,被告人が市内の同業者方に転職した際,Lがその雇い主に対し,解雇した経緯を伝えて忠告したことをもって,被告人の更生を意図的に妨害したということはできないし,雇い主も,この話をさほど気にしていたわけではなく,むしろ,当時の被告人の仕事振りを評価していたものである。 なお,当審で調べたKの供述には,被告人から,新たな職場を辞めた理由として,Lが被告人の前科を知らせたため,いづらくなったからであると聞いたという部分がある。しかし,被告人が新たな職場を辞めたのは,上記 ,当審で調べたKの供述には,被告人から,新たな職場を辞めた理由として,Lが被告人の前科を知らせたため,いづらくなったからであると聞いたという部分がある。しかし,被告人が新たな職場を辞めたのは,上記のとおり,職場の同僚と口喧嘩をして,自ら退職を申し出たことが原因である。 ②また,被告人は,両親からの多額の援助やL工業から支給される給与がありながら,生活費やサラ金業者に対する返済資金に窮するようになったのは,仮出獄後,計画性を欠いた経済生活を送ったためである。すなわち,被告人は,昭和48年にも,オートレースなどの賭け事に熱中して,知人や高利貸しなどから多額の借金をして,その返済資金に窮して強盗殺人事件を起こしたにもかかわらず,周囲の者の忠告に従わず,今回もパチンコに熱中して金をつぎ込み,金が足りなくなると自己の判断で,しかも妻などに内緒で高利のサラ金業者から借金をし,遊興費や生活費,借金の返済資金等に窮するや,母に頼んで100万円弱返済してもらったのに,その後も,借金を重ねるという悪循環を繰り返しているのであって,当時のサラ金業者の金利や追加融資,取立ての実態等を考慮してみても,これに責任を転嫁することは許されず,本件犯行に至った経緯に酌むべき事情があるということはできない。 この点に関する弁護人の主張は理由がない。 (4) そうすると,本件の犯行に至る経緯や犯行動機については,酌量の余地は全くなく,当審における事実取調べの結果によっても,新たに酌むべき事情を見出すことはできない。 3(犯行の計画性及びその態様について)所論は,要するに,本件強盗殺人は,確定的な殺意に基づく計画的な犯行であり,犯行の手段も残虐かつ冷酷非情なものである上,犯行の発覚を免れるための種々の工夫を凝らしながら冷静かつ周到に行われたものであり,そ ,要するに,本件強盗殺人は,確定的な殺意に基づく計画的な犯行であり,犯行の手段も残虐かつ冷酷非情なものである上,犯行の発覚を免れるための種々の工夫を凝らしながら冷静かつ周到に行われたものであり,その犯情は極めて悪質である,というのである。 (1) 検討すると,共謀の成立及び犯行状況について,次のような事実が認められる。 被告人及びAは,平成4年3月28日,福山市e団地に停車した自動車の中で,金策の方法について相談し,Aから盗みでもするかと言われたのに対し,被告人は,小さな盗みでも発覚した場合には仮出獄が取り消されて長期の服役になることを考え,「同じことをやるなら,でかいことを一発やろうか。」「サラ金強盗でもするか。」などと言い,Aから一人暮らしの者とか,年寄りの方が金を持っとるんじゃないかと言われて,「ひょっとしたら,Bの婆さんなんか,銭を貯めて持っとるかもしらんのう。」「殺して死体をどこかに隠せば,身寄りもないし,わからんのじゃないか,やるか。」と言い出し,Aからは「殺さなくても,いいんじゃないの。」と消極的な返事があったが,被告人が,「顔を知っているから,殺すしかない。」と言うと,Aも同意した。次いで,被告人らは,殺害の方法について相談し,包丁で刺す話も出たが,被告人は,前回の犯行と同じ方法は取りたくないという気持ちから,結局,紐で首を絞めて殺すことに決め,強盗殺人の実行について謀議を遂げた。そして,Aが,コンビニエンスストアで,荷造り用のビニール紐と軍手二双を購入し,強度を増すため,紐を八重に重ねた上,4か所に結び目を作った。 被告人らは,日が暮れるまでパチンコをして時間をつぶし,カップラーメンを食べるためのお湯をもらうことを口実にB方に上がり込むことにして,ビニール紐や軍手,カップラーメン2個を持って,同日午後7 被告人らは,日が暮れるまでパチンコをして時間をつぶし,カップラーメンを食べるためのお湯をもらうことを口実にB方に上がり込むことにして,ビニール紐や軍手,カップラーメン2個を持って,同日午後7時ころ,三原市b町(以下略)にあるB方を訪れ,Bにお湯を貸してほしいと言って,室内に招き入れてもらった。 その後,Aが,Bのすきをみて,「ここでやるんか。」と尋ねたのに対し,被告人は,現金の有無を確認した上で殺害しようと考え,Bが席をはずした合間や仮病を使ってベッドのある奥の部屋に入った際,預貯金通帳の残額を確かめたところ少なかったため,殺害するまでのことはないとも思ったが,試しに借金を申し込んだところ,Bが10万円前後の金をすぐに貸してくれたことから,Bが現金をかなり持っていると考え,Bを殺害する決意を固めた。 そこで,被告人は,目配せして,Aに殺害の合図をしたが,死体の処分に困ると考えたAがためらっているうち,被告人も,Bを外に連れ出して殺害した上,B方に立ち戻って金品を奪う方が得策であると考え,「連れ出そうか。」と言い,Aもこれに応じたことから,被告人らは,Bを連れ出して殺害した上,B方に立ち戻って金品を強奪する旨意思を相通じた。 被告人らは,甘言を弄してBをドライブに誘い,同日午後10時ころ,被告人運転の自動車でB方を出発し,人気のない殺害場所を探し,瀬戸大橋を渡り,高松市の栗林公園まで行ったが,市街地にある公園である上,門が閉まっていて入ることができず,周囲にも適当な殺害場所は見つからなかった。そして,高松港付近で停車した際,Aから「わしが婆さんとホテルに泊まるから,その間に婆さんの家に戻って金を取ってくればええんじゃないか。」と提案があったが,被告人は,「もう連れ出しているし,泥棒に入っても分かるから,もう殺るし ,Aから「わしが婆さんとホテルに泊まるから,その間に婆さんの家に戻って金を取ってくればええんじゃないか。」と提案があったが,被告人は,「もう連れ出しているし,泥棒に入っても分かるから,もう殺るしかない。」と答えて反対した。その後,瀬戸大橋を戻り,与島付近の路側帯で仮眠していたところ,翌29日午前8時ころ,警察か道路公団のパトロールカーに呼び起こされ,児島インターチェンジで高速道路から流出し,一般道を走行させ,さらに適当な場所を探したが見つからず,岡山県都窪郡f村にある喫茶店で休憩した後,既に明るくなっており,周囲に奥深い山もないことから計画を実行するのは無理だという気持ちに傾きかけて三原方面へ向かったものの,福山市内の国道2号線を走行中,g町方面であれば人目に付かない奥深い山があるのではないかと考え,Aに伝えた上,g町へ向けて進行し,その途中,a峡という道路標識を見つけて,山の奥に向かった。 被告人らは,同日午後2時ころ,本件犯行現場に到着し,軍手をそれぞれ手にはめ,被告人がAに対し,「ここで殺る。」「Aちゃんが婆さんと話をしている間に,わしが石でやるから。」と言い,Aは,「植木を抜いて行くという話をしてるわ。」と答えた。被告人らは,Bを林道の端に連れて行き,AとBが中腰でしゃがみこんで話をしている隙に,被告人は,付近にあった縦約15センチメートル,横約10センチメートルの石を拾って,Bの背後から,同女の後頭部目がけて力一杯振り下ろして一回強打し,転倒,失神させた。そして,Aが,ビニール紐を取り出し,被告人とAは,ビニール紐をBの頸部に一回巻いて両端を交差させ,一方の端を被告人が,他方の端をAが握り,互いに力一杯引っ張って同女の首を絞め付けて殺害した。 その後,被告人らは,Bの遺体を持ち上げて,崖下目掛けて投げ捨てたが, 一回巻いて両端を交差させ,一方の端を被告人が,他方の端をAが握り,互いに力一杯引っ張って同女の首を絞め付けて殺害した。 その後,被告人らは,Bの遺体を持ち上げて,崖下目掛けて投げ捨てたが,すぐ近くの草むらの中に落ちてしまい,林道の上から見える状態であったので,被告人が,更に崖を降りて,その遺体を崖の中腹まで,引きずりあるいは転がり落とした。 自動車の中に残されていたBのバッグの中には,通帳2冊のほか,印鑑2個,現金3000円入りのがま口などが入っており,Aが現金を取得し,被告人は,通帳2冊と印鑑2個をダッシュボードの中に入れた。ところで,被告人らは,Bを連れ出す際,同女が自宅玄関の南京錠をかけるのを見ていたが,その鍵が見当たらなかったことから,南京錠を破壊して同女方に侵入し,南京錠を付け替えておくことにし,ホームセンターで南京錠1個を購入し,Bのバッグや着衣等を三原市内の海に投げ捨てた後,同日午後9時ころ,同女方に行った。そして,ドライバー等の道具を車内に置いたままであったため,南京錠を壊すことができず,無施錠であった台所の窓から室内に侵入し,物色したが,金品を見つけることができなかった。被告人らは,物色した痕跡などが残らないように,タンスの引き出しなどを元に戻し,数日前,Bに買ってもらったお茶の包みや前夜食べたカップラーメンの容器などを持ち出して,退去した。 (2) 以上の認定事実を前提にして,本件犯行の計画性及び態様についてみると,被告人らは,当時87歳の被害者を絞殺して金品を奪うという基本的な計画を立て,予めビニール紐と軍手二双を用意し,ビニール紐の強度が増すように工作して凶器を準備し,人目を忍んで,夜間,被害者方に赴き,臨機応変に被害者が現金を所持していることを確認した後,被害者を外に誘い出し,犯行場所を決める 手二双を用意し,ビニール紐の強度が増すように工作して凶器を準備し,人目を忍んで,夜間,被害者方に赴き,臨機応変に被害者が現金を所持していることを確認した後,被害者を外に誘い出し,犯行場所を決めるために自動車で移動し,被害者が被告人らのことを全く疑わず信用しきっていることに乗じて,人気のない山中に連れ込み,確定的な殺意に基づき,その頭部を石塊で強打して意識を失わせ,準備しておいたビニール紐を被害者の頸部に巻き付けて,男性2名でそのビニール紐を力一杯左右から引っ張り,頸を絞め付けて殺害したのであって,極めて残虐で冷酷非情なものである。しかも,被害者を殺害した後,崖下に遺体を落とし,車内にあった被害者の遺留品や殺害の際に使用した軍手などを投棄し,被害者宅に戻って物色した際も,物取りと気付かれないように留意し,犯行の発覚を免れるために種々の証拠隠滅工作を行っており,被告人らは,完全犯罪を目論んで行動しているのである。 この点,原判決は,本件強盗殺人の犯行について,計画的というべきであるが,被害者の状況をうかがいつつ逐次犯行を決断し,犯行場所も場当たり的に探すなど,その計画性は低いと評価しているが,この評価には,賛成することができない。 そうすると,被告人らは,本件犯行の遂行に当たり,殺害場所や死体の処分などについて,予め事細かく決めていたわけではなく,そのような点において,綿密で周到な計画に基づくとまではいえないものの,それでもなお,本件の犯情は,非常に悪質であるといわざるを得ない。 (3) これに対し,弁護人は,①被告人とAが,平成4年3月28日,e団地で相談したときは,未だ確定的にBを殺害して金品を奪うことを決定したわけではないこと,②被告人らは,一度はBが金を持ってなさそうな様子から殺害等の意思を消失させながら,その後,現 3月28日,e団地で相談したときは,未だ確定的にBを殺害して金品を奪うことを決定したわけではないこと,②被告人らは,一度はBが金を持ってなさそうな様子から殺害等の意思を消失させながら,その後,現金を見てまた犯行を実行する気持ちに傾いてきたように,極めて場当たり的であって,当初から確定的な犯行の意思を有していたとは認められないこと,③軍手を購入したことがどのような意味で計画性が高いことの根拠となるのか明らかではなく,同日の夜,B宅を訪れた際は,軍手を使わずに室内に指紋を残しており,犯行の痕跡や証拠を残さない目的で購入したものとは考えられないこと,また,ビニール紐の強度を増すために束ねて結び目を作ったことはAが自発的に行ったもので,事前に相談したものではないこと,④被告人らは,臨機応変の対応をしたというより,むしろBのいない合間や仮病を使って奥の部屋に入り,預貯金通帳をのぞき見たり,借金の申し出をして所持金を確かめるなど田舎芝居のような対応しかしていないこと,臨機応変の巧妙な対応というのは,用意周到とは反対の行動であり,計画性を高める要素にはならないことなどを指摘して,原審が犯行の計画性が低いと正当に評価したのに対し,最高裁判所が犯行の計画性が低いとはいえないと評価したのは誤っている,と主張している。 しかしながら,既に検討したとおり,被告人らは,e団地で金策について話し合った際,本件被害者に狙いを付けて,絞殺の方法により殺害して金品を奪うという強盗殺人の実行について基本的事項を決定し,その後,犯行に使用するためのビニール紐や軍手を購入し,ビニール紐に工作を加えて凶器を準備するなど,強盗殺人の犯行を実現するために,この基本的な計画に沿って行動している。もちろん,状況の変化に応じて,被告人らの考え方や行動が変化し,犯行遂行の意思に ,ビニール紐に工作を加えて凶器を準備するなど,強盗殺人の犯行を実現するために,この基本的な計画に沿って行動している。もちろん,状況の変化に応じて,被告人らの考え方や行動が変化し,犯行遂行の意思に強弱を生じている場面もあるが,被告人とAは,相互に相手の言動を利用補充し合うことにより,被害者の所持金の確認や外への誘い出しなどの点について,臨機応変に対応し,当初の基本的計画では確定していなかった部分を補いながら行動しているということができる。なお,被告人らは,本件犯行の数日前にも被害者方を訪問しており,室内に指紋が残っていたとしても不自然なことではなく,むしろ,室内で軍手をはめているほうが不自然であるから,被害者方を訪問した際に軍手を使っていないからといって,犯行に使用する目的でビニール紐と併せて軍手を用意したことに疑いはない。 また,弁護人は,被告人らが被害者を連れ出して長時間にわたり移動したことは,極めて奇妙な行動であり,計画性を高めるというよりも,被告人らの犯行についての逡巡を象徴しており,その間,何度か殺害の意思が失せていることからして,最高裁判所が認定したように,長時間殺害の意思を継続して殺害場所を探して連れ回ったとはいえない,と主張する。 検討すると,被告人らが,平成4年3月28日午後10時ころに被害者を連れ出し,翌29日午後2時ころ,殺害するまで約16時間を要しているが,これは被害者を殺害して,その死体を隠蔽するのに適した人気のない場所を探し回っていたからである。そして,被告人は,同日の夜明け前ころ,高松港において,Aから計画の変更について提案を受けた際,明確にこれを拒否して実行する旨伝えていたし,夜が明けて,瀬戸大橋の上で仮眠中,パトロールカーに呼び起こされた後,児島インターチェンジから高速道路を流出して,なおも 計画の変更について提案を受けた際,明確にこれを拒否して実行する旨伝えていたし,夜が明けて,瀬戸大橋の上で仮眠中,パトロールカーに呼び起こされた後,児島インターチェンジから高速道路を流出して,なおも適当な殺害場所を探していたのであって,Aと異なり強固な殺害意思を継続して有していた。その後,日が高くなったことや,長時間の運転による疲れが加わり,また,岡山県都窪郡f村の喫茶店で,赤色のカーディガンを着ていた被害者の姿を店員らにさらしていたことなどから,被告人自身も,殺害を実行することは無理ではないかという気持ちに傾き掛けて,三原市方面に向かったが,それでもなお殺害の意思を放棄することなく,福山市内を走行中,g町方面には,人気のない殺害に適した奥深い山があると考えて,その旨Aにも伝えてg町方面に向かい,a峡という道路標識を見て,本件犯行現場に至ったのであるから,長時間,殺害の意思を継続して殺害現場を探して連れ回ったものと認めることができる。 ところで,被告人は,当審の第20回公判期日において,上記喫茶店を出た後は,被害者を殺害する意思が薄れていたところ,福山市内を三原市に向けて国道2号線を走行中,hの交差点の二,三百メートル手前で,Aから「もうこのまままっすぐ帰るんか。」と聞かれて,Aがまだ殺害する意図を有していると感じ,見くびられたと思い,a峡という標示板を見て上記交差点を右折して,本件犯行現場に向かったと供述している。しかしながら,被告人は,Aからそのような発言がなされたことについて,当審公判に至るまで一度も供述していないし,Aの供述調書や証人尋問調書にも全く現れていない。そして,Aは,これまでに検討してきたとおり,被害者を殺害することにつき,消極的な発言をしてきたのであるから,被告人が弁解するようなことを述べるとは考えにくい。被告 証人尋問調書にも全く現れていない。そして,Aは,これまでに検討してきたとおり,被害者を殺害することにつき,消極的な発言をしてきたのであるから,被告人が弁解するようなことを述べるとは考えにくい。被告人は,警察官調書(原審検256号証)において,国道2号線を走り,S銀行h支店前交差点付近まで帰ってきたこと,Bを殺す気持ちは変わっておらず,明るくなった今としては人気のない山の中しかないと思っており,福山で適当な山といえばgしかないという気がして,この交差点を右折して,g方向に車を走らせたこと,府中市を抜けて三原の実家へ行ったことがあり,gについて多少の土地勘があったこと,適当な山を探していると道路標識にa峡という字が見えて,そこなら人気のない所があるはずで,ここへ行く気になり,交差点を右折し,その後,本件犯行現場へ向かったことを具体的に供述しているところ,その内容に特に不自然な点はなく,検察官調書(原審検269号証)においても,これに沿う供述をしていた。また,被告人は,引き当たり捜査において,a峡の道路標識を見た場所について,福山市からi町方面へ向かう国道182号線の福山市j町にあるk交差点から南方約100メートル手前に設置された道路標識を指示しているが,この交差点及び道路標識の位置は,国道2号線にある福山市h町の交差点とは位置関係が全く異なっている。加えて,被告人は,当審公判廷において新たな供述をした理由について,合理的な説明をすることができない。そうすると,被告人の当審公判廷における上記供述は,従来の供述を不自然に変遷させたものである上,その内容も信用性に疑問のない捜査段階の上記供述やAの供述とも異なっているから,到底信用することができない。 被告人が,長時間,殺害の意思を翻すことなく殺害場所を探して連れ回ったことに疑いはない。 内容も信用性に疑問のない捜査段階の上記供述やAの供述とも異なっているから,到底信用することができない。 被告人が,長時間,殺害の意思を翻すことなく殺害場所を探して連れ回ったことに疑いはない。 さらに,弁護人は,殺害した被害者の遺体の処置という重要な問題について,被告人とAとの間で全く話がされていないこと,Bを連れ出す際,Bが玄関に南京錠を掛けていることを知りながら,その鍵の所在を確認しなかったため,殺害後,B方に入ることが困難になっていることなどを指摘して,本件犯行の計画性については,疑義があると主張している。被告人らが,弁護人指摘の点について,綿密に周到な計画まで立てていないことはそのとおりであるが,既に検討したとおり,強盗殺人の基本的な計画を立てて,実行しているのであって,本件が偶発的な犯行でないことはもちろん,その計画性が低いということにもならない。 この点に関する弁護人の主張は理由がない。 (4) そうすると,殺意の継続の点について,当審における事実取調べの結果によっても,これを左右するものはなく,本件強盗殺人は,確定的な殺意に基づく計画的な犯行であり,犯行の手段も残虐かつ冷酷非情なものである上,犯行の発覚を免れるため種々の隠蔽工作も取られており,その犯情は非常に悪質である。 4(犯行後の行動,改悛の情について)所論は,要するに,被告人は,本件強盗殺人を敢行した後,強取した通帳を使用して有印私文書偽造・同行使,詐欺の犯行に及んでいるばかりでなく,その後もまじめに仕事をせず,パチンコ遊びに熱中し,堕落した生活を続けており,その被告人の行動からは全く改悛の情をうかがうことができない,というのである。 (1) 検討すると,被告人らの本件犯行後の行動として,次のような事実が認められる。 被告人は,引き けており,その被告人の行動からは全く改悛の情をうかがうことができない,というのである。 (1) 検討すると,被告人らの本件犯行後の行動として,次のような事実が認められる。 被告人は,引き続き,Aと行動を共にしていたが,平成4年4月2日ころ,岡山市に住んでいる刑務所仲間を訪ね,強取したものであることを隠して,B名義の郵便貯金通帳と印鑑を預けて,代理人名義で払戻しをしてくれるように依頼したが,手続に手間取り,払戻請求書の裏に代理人として被告人が署名するように求められたため,払戻しをあきらめ,このときは失敗に終わった。その後,自責の念にかられたAが,自分一人で罪をかぶって自首すると言い出したため,被告人は,Aが自首すれば,被告人のことを隠し通せるはずもなく,自分の一生は破滅すると思い,Aを説得して自首を思いとどまらせ,自動車にAを乗車させて三重県まで送り届け,郷里の静岡に帰らせた。 被告人は,Bの通帳の払戻しをする危険性を承知していたが,同月9日,C銀行c支店において,Bの代理人である旨装って,現金5万7000円を,同日,d郵便局において,同様に現金4万9000円を,それぞれ騙し取った(原判示第2の1及び2の有印私文書偽造,同行使,詐欺事件)。また,同月20日ころ,パチンコ店でHと知り合い,同月27日,HにB名義の郵便貯金通帳を使用して定額貯金を解約するように依頼し,同女をして,m郵便局において,Bの代理人である旨装って,定額貯金の解約を請求させ,現金20万9791円を騙し取った(原判示第2の3の有印私文書偽造,同行使,詐欺事件)。そして,被告人は,H及びその内縁の夫のもとで,しばらくの間,ワックスの訪問販売の仕事を続けていたが,同年6月ころからは,まじめに働かず,母や姉Mに何度も無心を繰り返し,あるいは自己破産のための費用 して,被告人は,H及びその内縁の夫のもとで,しばらくの間,ワックスの訪問販売の仕事を続けていたが,同年6月ころからは,まじめに働かず,母や姉Mに何度も無心を繰り返し,あるいは自己破産のための費用が必要であるなどと言って,数万円あるいは数十万円単位で金を受け取り,パチンコに興じ,借金の返済については滞納していた。そのため,借金取りが自宅に押し掛けて来るようになって,Kは,自宅にいることができなくなり,最終的に同年11月,長女とともに岡山県内の実家に戻り,被告人も借金の取り立てを免れるため,三原市内の実家に身を寄せていた。 この間,同年4月6日,B方を担当していた民生委員が,Bの不在を不審に思い,三原市福祉事務所の保護課長に連絡をし,警察に捜索願いを提出したことから,行方不明であることが発覚した。そして,Bの二男Oが,同年11月にB方の家財道具を持ち帰り,Bの預貯金を調査したところ,行方不明になった後,C銀行と郵便局から現金が引き出されていることが判明し,警察の捜査により,d郵便局で払戻しがなされた際,被告人から運転免許証の提示を受けていることが明らかとなり,また,払戻金受領書から被告人の指紋が検出された。被告人は,平成5年4月27日,有印私文書偽造,同行使,詐欺の事実により通常逮捕され,同年5月1日,Aと共謀して強盗殺人を犯したことを自供するに至り,同月3日,被告人が死体遺棄現場として案内した場所からBの白骨死体が発見され,その後,Aも逮捕された。 なお,被告人は,極刑に処せられることを覚悟した上,原審及び差戻前控訴審の審理を通じて,本件各犯行を全て認める供述をし,反省の態度を示している。 (2) 上記認定事実を前提に,本件強盗殺人の犯行後における被告人の行動等について検討すると,被告人は,あくまでも犯行の発覚を免れよう て,本件各犯行を全て認める供述をし,反省の態度を示している。 (2) 上記認定事実を前提に,本件強盗殺人の犯行後における被告人の行動等について検討すると,被告人は,あくまでも犯行の発覚を免れようとして,Aの自首を押しとどめているほか,強取した預貯金通帳を使用して何とか現金を手にしようと画策し,自ら払戻しを受け,さらに,強取した通帳であることを隠して,知人に解約請求をさせて,原判示第2の各犯行に及んでいる上,その後も生活態度を改めることなく,まじめに働かないで,強盗殺人の犯行前と同様,母や姉に金を無心しては,パチンコに興じるなど堕落した生活を送っていたのであって,1000万円近くあった母の貯蓄はついに底をついてしまい,また,自分勝手な借金により,妻と長女にも落ち着いた生活環境を与えることができなかった。 そして,有印私文書偽造,同行使,詐欺の罪で逮捕された当初,被害者名義の預貯金通帳は,被害者からもらったものであるとか,盗んだものであるなどと虚偽の弁解をし,逮捕後4日目に,被害者を殺害した事実について自供したものの,Aが逮捕された後も,高松港でAから計画変更の提案があったことについて,明らかに虚偽の否定供述を続け,当審の公判廷において,その点は認めるに至ったが,今度は,a峡に向かった経緯について,不自然に供述を変遷させているのであって,被告人の供述態度には二面性がうかがわれるといわざるを得ない。 (3) そうすると,本件強盗殺人の犯行後の情状も芳しくない。被告人が,極刑に処せられることを覚悟して本件各犯行を自白し,原判決が指摘しているように,被害者の遺体が発見された際には,悔悟して涙を流し,また,期日外に実施した母親の証人尋問調書に涙を流しながら聞き入るなど,反省の態度を示していることなどの事情も認められるが,それらのことを余 うに,被害者の遺体が発見された際には,悔悟して涙を流し,また,期日外に実施した母親の証人尋問調書に涙を流しながら聞き入るなど,反省の態度を示していることなどの事情も認められるが,それらのことを余り大きく評価することはできない(なお,被告人は,当審における被告人質問の最終段階[第24回公判期日]において,私に対する犯罪の責任を考えるとき,今回の事件,私にすべて責任があるのでしょうか,私はもう矯正不可能な人間で,どうしようもない,生きるに値しない人間なのでしょうか,などとも供述しており,極刑に処せられることについての覚悟の気持ちが薄らいでいるようにうかがわれる。)。 5(共犯者との役割の程度,量刑の均衡について)所論は,要するに,被告人が本件強盗殺人で果たした役割は重大であるところ,原判決の量刑は,Aの量刑との均衡を失する,というのである。 検討すると,被告人は,もともと窃盗をするつもりしかなかったAに対し,強盗の実行を提案し,さらに,被害者の殺害について消極的な態度を示していたAに「顔を知っているから殺るしかない。」と言って説得し,強盗殺人の犯行に引き込んでいる。しかも,被害者を自宅から連れ出した後,高松港で,Aから計画変更の申し出を受けた際にも,これを拒否して,当初の計画通り強盗殺人の犯行を実行しているのであって,被告人の強盗殺人の遂行意思は,Aに比べて格段に強固なものであった。そして,被害者の預貯金通帳の確認,被害者を屋外に連れ出して殺害すること,殺害場所の選定,犯行現場における具体的な手順など本件犯行の重要な点において,Aを先導して被告人が決定した上,被告人自ら,被害者の頭部を石塊で強打し,Aとともにビニール紐で頸部を締め付けた後,被害者の死体を崖下目掛けて転がり落とすなど,主導的な役割を果たしている。さらに,被害 先導して被告人が決定した上,被告人自ら,被害者の頭部を石塊で強打し,Aとともにビニール紐で頸部を締め付けた後,被害者の死体を崖下目掛けて転がり落とすなど,主導的な役割を果たしている。さらに,被害品のうち,Aが取得したのは現金3000円のみであり,被告人は,強取した通帳等を使用して,31万円余りの払戻しを受けており,共犯者のHに5万円を謝礼として渡した以外は被告人が取得している。 そうすると,被告人が本件強盗殺人の犯行において果たした役割は,その計画及び実行の両面において,誠に重大であり,その犯情はAよりもかなり重いといわなければならない。 また,Aには,窃盗や常習累犯窃盗などの罪による前科があるものの,人命を奪うような凶行犯による前科はなく,仮出獄中でもなかった。 これらの点は,被告人の刑とAの刑との均衡を図るにあたり,十分に考慮する必要がある。原判決は,被告人及びAに対し,いずれも無期懲役の刑を言い渡したことについて,後記8(3)のとおり,被告人が無期懲役刑に処せられた場合に要する最低限度の服役期間を検討し,Aのそれとは相当に異なると説示を加えているが,その内容は納得できるものではない。 6(結果の重大性及び社会的影響について)所論は,要するに,本件強盗殺人の結果は極めて重大であり,被害者の遺族も被告人の死刑を求めるなど処罰感情が厳しいし,本件の社会的影響は重大かつ深刻であり,一人暮らしの老人を狙った凶悪犯罪に対する一般予防の見地からも厳罰をもって臨むべきである,というのである。 (1) 被害者は,本件被害当時87歳であり,耳がやや遠く,足が悪いため外出の際には手押し車を使用していたが,それ以外は健康であり,民生委員らに対し,100歳まで生きたいと話し,静かに余生を送っていたものである。被害者は,被告人の姉 であり,耳がやや遠く,足が悪いため外出の際には手押し車を使用していたが,それ以外は健康であり,民生委員らに対し,100歳まで生きたいと話し,静かに余生を送っていたものである。被害者は,被告人の姉Mの紹介により,被告人らと知り合い,お茶を購入したりするとともに,本件当日も,カップラーメンを食べるためのお湯を貸してほしいと言う被告人らを自宅に招き入れ,借金の申し出に対し,快く10万円前後の金を貸し与えるなど好意を示していたのであった。それにもかかわらず,欺かれるようにして所持金の確認をされた上,被告人らの手に掛かり殺害されることになるなどとは全く予想していなかったに違いなく,温泉へ行くとか瀬戸大橋を見に行こうなどと被告人らから誘いを受けて,その言葉を信じて出掛け,その挙げ句,期待を裏切られたばかりか,恩を仇で返され,何らの落ち度もないのに理不尽にも殺害され,わずかな蓄えを奪われたのであり,被害者の無念の思いは察するに余りある。被害者の遺体は,1年余りの間,谷の中腹に野ざらしの状態で放置され,白骨化した無惨な姿をさらしているのであって,被告人らの行為により,遺体に対する畏敬の念さえ踏みにじられている。 被害者の二男Oは,幼い時に修道院に入れられて,被害者と離ればなれになり,音信不通の状態が続いていたが,約40年ぶりに被害者と再会し,その後,年に数回の割合で,被害者の自宅を訪問して,一緒に食事をするなどしていたものである。Oは,検察官調書の中で,「母を金欲しさの目的で殺した被告人とAについては,本当に憎いという気持ちです。」「もちろん,私の母の方には,何も落ち度は無かった訳ですし,年をとった一人暮らしの老女を狙って殺して,金を奪うなど,最も卑劣なことだと思います。ですから,既に無期懲役の刑を受けているのであれば,被告人については,当然 方には,何も落ち度は無かった訳ですし,年をとった一人暮らしの老女を狙って殺して,金を奪うなど,最も卑劣なことだと思います。ですから,既に無期懲役の刑を受けているのであれば,被告人については,当然死刑にして欲しいと思いますし,そうならなければ母の魂も浮かばれないと思います。」と述べている。そして,Oは,原審公判廷において,死刑を望む旨供述し,差戻前控訴審の公判廷において,無期懲役の判決に納得できない旨供述している。 また,被害者の実弟Wは,被害者とは,数年に1回会う程度の親戚付き合いしかしていなかったものであるが,被害者の行方が分からなくなったと民生委員から電話連絡を受けて,Oらと連絡を取ったりしていた。Wは,検察官調書の中で「90歳近い足の悪いお婆さんが始末をして貯めたわずかばかりのお金,約31万円を取るため,二人してこのお婆さんを殺すとは考えられない大変むごい事だ,犯人は人間ではない,死刑か無期位にしてほしい,という気持ちで一杯です。」と供述している。 ところで,被告人は,被害者に対する謝罪の気持ちを抱き,その冥福を祈っているが,原審の時点はもとより,最高裁判所の差戻判決が出るまで,被害者の遺族に対しては,何ら慰謝の措置を講じていなかったのであり,わずかに被告人の母により,d郵便局から払い戻された貯金の被害について,分割弁済がなされているだけである。 そして,高齢者は,一般的に警戒心や防衛力が低く,犯罪の被害に巻き込まれることも少なくないところ,本件は,まさに一人暮らしの高齢者を狙った重大犯罪である。被害者の世話を担当していた民生委員は,被害者が行方不明になって以降,心配して捜索願の提出に関わるなど関係機関や被害者の知人などと種々連絡を取っていたが,本件被害の結末を知って衝撃を受けている。この民生委員は,差戻前控 いた民生委員は,被害者が行方不明になって以降,心配して捜索願の提出に関わるなど関係機関や被害者の知人などと種々連絡を取っていたが,本件被害の結末を知って衝撃を受けている。この民生委員は,差戻前控訴審において,本件事件を知った地域住民,特に一人暮らしの人の動揺が大きいこと,原判決の結果について,ボランティア仲間が疑問を述べていたこと,警察官の巡回を依頼し,戸締まりや表札の書き方の工夫をしていることなどを供述している。 そうすると,本件が社会一般に及ぼした影響も大きく,凶悪犯罪の一般予防の点についても正しく考慮する必要がある。 (2) これに対し,弁護人は,Oが,平成8年の時点でなお葬儀を執り行っていないこと,被害者の生死もまだはっきりしていない平成4年8月に,被害者の自宅の明け渡しを行っているが,例えば,台所の流しに義歯4個が放置されているなど身の回りの大事な品がそのまま室内に放置されていたこと,家財道具などの遺品や遺骨は引き取られたが,遺品の多くは,Oの自宅前の空き地に放置されていることなどを指摘して,遺族の被害感情を吟味する上で考慮すべきであると主張している。 そこで,検討すると,関係証拠によれば,次のような事実が認められる。 B方を担当していた民生委員は,被害者の行方不明の状態が続いていたため,平成4年8月ころ,上記Wに連絡を取り,WとOが,被害者の自宅を訪問し,室内の様子を確認したこと,Oは,被害者方の明け渡しを求められたため,同年11月初めころから,順次,被害者の多量の家財道具などを引き取ったこと,Oの自宅は,比較的小さな建物であるところ,平成5年1月の時点で,被害者の衣類などが入ったタンス,鏡台,アルバム,人形ケース,仏壇,ハンドバッグなどについては室内で保管しており,大型電器製品や浴槽などを自宅の周りの 小さな建物であるところ,平成5年1月の時点で,被害者の衣類などが入ったタンス,鏡台,アルバム,人形ケース,仏壇,ハンドバッグなどについては室内で保管しており,大型電器製品や浴槽などを自宅の周りの空き地や軒下に置いていたこと,他方,平成4年12月10日に実施された検証の時点において,被害者の自宅には,弁護人が指摘する義歯4個,電話番号などが記載されたノート1冊,緊急通報用電話機のワイヤレスリモートスイッチ送信機などが残っていただけであり,この義歯及びノートについては警察が領置したことが認められる。 そうすると,Oは,被害者が特に大切にしていたと思われる物や思い出となる品については,室内で保管しており,室内に収まりきらない一部の物を屋外に置いていたに過ぎない。 また,Oが平成8年の時点で,葬儀を執り行っていないことは指摘のとおりであるが,Oの兄弟姉妹は,幼いころ,被害者及び父親から見捨てられたことで,被害者と交流がなかったことから,話し合いがまとまらず,親類縁者とも疎遠であるため,Oにおいて葬儀を行う意思はあるものの,事実上,兄弟姉妹や親類縁者が集まって,葬儀を執り行うことができない状況にある。 したがって,弁護人指摘の点を考慮してみても,Oが,被害者の遺品を粗末に扱っているとか,被害者を弔う意思がないなどとみるのは相当でない。 (3) そうすると,本件強盗殺人の結果は極めて重大であり,被害者と交流のあった遺族2名が厳しい処罰感情を有しており,社会一般に及ぼした影響も大きいというべきである。 7(矯正の可能性について)所論は,被告人の反社会的性格,犯罪性は,既にその極に達しており,その矯正は全く不可能である,というのである。 (1) 検討すると,被告人は,前刑の服役態度はまじめであり,仮出獄後も,当初は,健全な 論は,被告人の反社会的性格,犯罪性は,既にその極に達しており,その矯正は全く不可能である,というのである。 (1) 検討すると,被告人は,前刑の服役態度はまじめであり,仮出獄後も,当初は,健全な社会生活を営もうと努力していた。また,逮捕後の比較的早い段階から本件各犯行について自供し,原審から差戻後の当審に至るまで,自白の供述を維持していることも認められる。 しかし,被告人が,二度にわたり凶悪な犯行に及んだ原因は,既に検討したとおり,自らの生活態度を省みることなく,賭け事に熱中して借金を重ね,その返済に窮するや,返済資金を得るためには,人の殺害をも辞さないといった自己本位で冷酷な反社会的な考え方や性格にあるというべきである。そして,本件の謀議を遂げた際の会話内容から明らかなように,被告人は,無期懲役刑の仮出獄中であることを十分意識し,Aから提案のあった窃盗などの犯行が発覚した場合の服役期間を考え,犯跡の隠蔽を図るために強盗殺人を提案して計画し,もし,その犯行が発覚すれば死刑になることを十分自覚した上,犯行に及んでいるのであって,規範意識の欠如が顕著であるといわざるを得ない。 また,被告人は,周囲の者からの忠告にもかかわらず,仮出獄中の遵守事項を遵守していないばかりか,保護司に対し,パチンコやサラ金からの借入状況,訪問販売の売上状況等について,事実を偽って報告するなど,贖罪及び更生の過程にあることを自覚せず,問題点の所在を自ら隠して,適切な指導を受ける余地を閉ざしていたのである。 弁護人は,刑務所での矯正教育は,犯罪者の更生に役立つ内容になっておらず,欠陥があるとか,仮出獄中の保護観察についても,社会復帰前の教育期間が短くて十分でないし,被告人が,平成3年11月に,身元引受人を失うという危機的状況に置かれたときにも,保護 つ内容になっておらず,欠陥があるとか,仮出獄中の保護観察についても,社会復帰前の教育期間が短くて十分でないし,被告人が,平成3年11月に,身元引受人を失うという危機的状況に置かれたときにも,保護観察官が適切な指導助言をせず,問題を先送りしており,更生のために機能していなかったなどと主張し,被告人を担当した保護司は,当審の公判廷において,無期懲役刑の仮出獄者に対する保護観察の問題点について,弁護人の主張に沿う供述をしている。しかしながら,犯罪者が社会復帰して真に更生を果たすことができるかどうかは,本人の自覚や更生意欲及び保護環境による影響が大きいところ,被告人は,近親者の援助を受けてかなり恵まれた環境で仮出獄後の生活を開始したのであり,それにもかかわらず,再犯に及んだ根本的かつ最大の原因は,上記のとおり,保護観察を軽視して,仮出獄中の遵守事項を遵守しなかった被告人自身にある。矯正施設や保護機関における処遇制度が完全無欠なものではないとしても,これにより,被告人自身の問題点を軽視して,責任を転嫁することは許されないというべきである。 (2) ところで,当審において,①被告人の性格及びその形成原因,②心理学的,社会学的見地から見た本件犯行の動機,原因,③量刑上,特に留意すべき事項を鑑定事項とする情状鑑定を実施した。 鑑定人P医師作成の鑑定書の鑑定主文によると,上記鑑定事項については,次のとおり結論が示されている。 ① 被告人は非社会的人格障害,自己愛型人格障害及び病的賭博と診断できる。現実を直感的に判断し,総合的に判断できないため,自己中心的で都合のいいように解釈する傾向がある。また,自己誇大感のため能力以上に自分を評価している。自己誇大感が満たされない場面や批判には傷つきやすく,不満を他者へ向ける傾向が認められる。自分に都合の 心的で都合のいいように解釈する傾向がある。また,自己誇大感のため能力以上に自分を評価している。自己誇大感が満たされない場面や批判には傷つきやすく,不満を他者へ向ける傾向が認められる。自分に都合のいい思い込みのため,自分の行動は正当化され,他罰的な態度を取りやすい。他者からいい評価を得るために努力するが,得られない場合,他者への攻撃性として表現されることもある。そういった自己愛型人格の形成は,幼少期に両親や姉たちから甘やかされて育ったことが原因である。父親に気分に一致した精神病像を伴ううつ病,姉に分裂感情障害を認めたが,遺伝的には直接的な影響を受けていない。しかし,父親が小学5年生時に精神科に入院したことが引け目となり,父親の病気を隠すために虚勢を張るようになった。さらに,経済的な問題で高校に進学できなかったため,挫折感と劣等感を持ち,自分より恵まれた環境にいる人間に敵意と反感を持つようになった。フラストレーションへの耐性が低くなり,規範や責務への無責任,罪悪感に対して鈍感さも認められるようになった。最初の職場では仕事内容を批評されて退職し,運送会社に勤務した。運送会社で賭博を知り,賭博にのめり込み借金の返済に行き詰まり殺人を犯した。しかし,刑務所ではこうした性格は矯正することはできず,刑務所職員への敵意だけが残った。仮出獄後には,仮出獄の約束を破り,賭博を減らすことに失敗し,再び賭博にのめり込んだ。巨額の借金を一括で返済するために強盗殺人事件を引き起こした。 ② 本件犯行の動機は借金の返済という経済的な理由によるものである。借金の返済時期が迫っていたため,十分な準備ができなかった。一度消えかけた殺意が再び燃え上がったのは,共犯者の言葉によって劣等感が刺激されたからである。被害者を自宅から連れ出して絞殺して死体を捨てたのは,返り血 期が迫っていたため,十分な準備ができなかった。一度消えかけた殺意が再び燃え上がったのは,共犯者の言葉によって劣等感が刺激されたからである。被害者を自宅から連れ出して絞殺して死体を捨てたのは,返り血を浴びないためと死体が発見されないように考えたからである。これらの行動は,前回の犯行を参考にしており,犯行状況に不可解な点は特にないと思われる。 ③ 量刑上,留意すべき点として,殺人事件を2回犯したにもかかわらず,心理検査では規制や秩序を守ろうとしたりする面が認められた。一般社会や鑑定留置中では,自己中心的で問題となる行動もあったが,社交的で他者(娘,弁護士,入院中の女性患者など)への思いやりを見せる場面もあった。しかし,鑑定留置中には強盗殺人事件を犯したことより,殺害後に経済的に苦しくても窃盗をしなかったことが強調され,強盗殺人に対する本人の内省が表面的で,犯行後の自分の行動が正当化されているところも見られた。こういったことから,刑罰による学習効果はあまり期待できない。本人の謝罪あるいは思いやりなども自己アピール的で自己愛に根ざしているように見える。刑務所のような厳重な規則や秩序の存在するところでは,過去に著名な逸脱行為が見られていないが,一般社会では逸脱行為は押さえられないと思われる。 P医師の鑑定主文②のうち,「一度消えかけた殺意が再び燃え上がったのは,共犯者の言葉によって劣等感が刺激されたからである。」という部分は,前記のとおり,差戻後の当審においてなされた被告人の虚偽の弁解に引きずられたため,誤った結論を導いたというべきであり,この点については,P医師も,当審の公判廷で,前提事実が違えば,判断も大部変わることになる旨供述している。しかし,その1点を除けば,P医師は,本件記録を精査し,被告人との面接,心理療法士による各種心 の点については,P医師も,当審の公判廷で,前提事実が違えば,判断も大部変わることになる旨供述している。しかし,その1点を除けば,P医師は,本件記録を精査し,被告人との面接,心理療法士による各種心理検査の結果などを基礎資料として,専門的な知見に基づいて鑑定主文を導き出しているところ,鑑定の資料や手段,方法,結論を導く推論の過程に不合理な点は特にないから,十分に信用することができる。 (3) 弁護人は,行動療法や精神療法等により人格障害を治療することが可能であると主張する。 しかしながら,P医師の供述を前提にしてみても,人格障害の治療については,非常に苦労しており,被告人についても,行動療法や精神療法によりある程度の改善は期待できるかもしれないと思う,実際にやってみないと分からないが,やってみる価値はあると思う,知的な能力は十分持たれているので,そこをうまく使えば,ある程度はできるかも知れないと思う,という内容の可能性でしかない。そして,被告人は,借金の返済資金欲しさから,恩義のある人の命を奪うという類似性の顕著な凶悪犯罪を二度にわたり犯したのであり,刑務所のような厳重な規則や秩序のあるところでは,大きな逸脱行為は見られないが,一般社会では逸脱行為は押さえられないと思われる,というのであるから,被告人の犯罪性については,上記人格障害の点を含めて,矯正が全く不可能であるとまで断定することはできないが,その可能性が高いということはできず,むしろ著しく困難であると考えられる。 8(無期懲役刑で仮出獄中に強盗殺人を犯したことについて)所論は,無期懲役刑の仮出獄期間中に強盗殺人を犯した事例のうち,原判決の言い渡し日から遡って10年以内にその判決が確定した5件については,いずれも死刑に処せられているところ,本件は,まさに無期懲役刑の仮 は,無期懲役刑の仮出獄期間中に強盗殺人を犯した事例のうち,原判決の言い渡し日から遡って10年以内にその判決が確定した5件については,いずれも死刑に処せられているところ,本件は,まさに無期懲役刑の仮出獄中の犯行であり,その被告人をまたもや無期懲役刑に処するのは寛刑に過ぎ,著しく正義に反する,というのである。 (1) 検討すると,被告人は,上記のとおり,昭和48年10月25日にも賭け事を原因とする借金の支払い資金欲しさから,顔見知りの主婦を殺害して,現金,預金通帳等を強取したのであり,その事案自体,極刑に値すると言われてもやむを得ない極めて犯情の悪質な犯行であったが,被告人が若年であり,前科がないこと,反省悔悟して出頭したことなどの事情が考慮されて,無期懲役刑に処せられた。 ところが,被告人は,仮出獄を許されるや,約14年9か月服役したことで責任を果たしたなどと考え,贖罪の途中であることの自覚や反省が乏しく,その遺族に対する慰謝の措置を母親任せにして,自らは何らの措置も講じることなく,周囲の者からの忠告に耳を貸さずパチンコに金をつぎ込んで借金を重ね,その返済資金に窮し,仮出獄後3年足らずで,またもや前回の犯行と同様,遊興による借金の返済のために顔見知りの女性の好意に付け込み,計画的に強盗殺人を実行したのであり,その点において,前回の犯行と顕著な類似性が認められる上,犯行後,被害者の死体を崖下に転がり落とすなど種々の犯跡隠蔽工作を施しているのであり,その犯情は,前回の犯行以上に一層悪質であるといわざるを得ない。 (2) 原判決は,無期懲役刑に処せられた者でその仮出獄中に強盗殺人を犯した事例を検討したところ,過去10年内に確定した事例で,すべて死刑に処せられているが,それらはいずれも犯情において極めて悪質であり,天人ともに許さざる 刑に処せられた者でその仮出獄中に強盗殺人を犯した事例を検討したところ,過去10年内に確定した事例で,すべて死刑に処せられているが,それらはいずれも犯情において極めて悪質であり,天人ともに許さざるものと認めるしかないものであり,それらの事例と比べれば,被告人の情状は,殺害の手段方法の執拗性,残虐性,前歴等の点において,悪質さが低いといえる旨評価しているが,この評価に左袒することはできない。 すなわち,所論が指摘し,原判決が比較検討した無期懲役刑の仮出獄中に強盗殺人を犯した上記5件の判決のうち,本件と類似した2件の事案と比較してみても,本件犯行は,遊興に溺れた上での犯行であること,被害者が老人あるいは女性という弱者であること,予め被害者の殺害を計画していること,被害者が1名であり,何ら落ち度がないこと,被害者の遺族が極刑を望んでいることなどの点で共通性が認められる。そして,原判決が指摘する殺害の手段方法の執拗性,残虐性の点についてみると,確かに,これらの2件の事案のうち1件は,被害者の頭頂部を石塊で二,三回強打し,転倒して助けを求める被害者の腹部を蹴り上げ,とどめのため仰向けに倒れて呻き声を上げている被害者の右耳付近を石塊の角で強打し,脇腹を踏みつけるなどの暴行を加えて殺害し,もう1件は,後頭部や前額部を鉄工用ハンマーで数回強打して昏倒させ,さらに多数の細骨片が飛び散るほどまでに上記ハンマーで被害者の頭部を滅多打ちにして殺害したというものであり,極めて悪質な部類に含まれるものである。他方,被告人らの本件殺害の手段方法は,高齢の女性を自宅から連れ出して,長時間,適当な殺害場所を探し回った挙げ句,人気のない山中において,被告人が縦約15センチメートル,横約10センチメートルの石塊で被害者の後頭部目掛けて力一杯振り下ろして1回強打し,転 連れ出して,長時間,適当な殺害場所を探し回った挙げ句,人気のない山中において,被告人が縦約15センチメートル,横約10センチメートルの石塊で被害者の後頭部目掛けて力一杯振り下ろして1回強打し,転倒,失神させ,予め用意しておいたビニール紐を被害者の頸部に1回巻いて交差させ,壮年の男性である被告人とAの2名で左右から互いに力一杯引っ張り,被害者の頸部を絞め付けて殺害したのであり,殺害の手段方法が異なるため,その執拗性や残虐性につき,一概に比較することは難しいものの,上記2件のそれと遜色はなく,悪質さの程度において格段の違いを見出すことはできない。 また,前科前歴の点について,被告人は,前刑犯行時が若年であったため,少年時代の前歴があるほかは無期懲役刑以外に前科がないのに対し,上記2件では,無期懲役刑以外の前科もある点で違いがあるものの,本件の量刑を考える上で大きな意味を持つのは,無期懲役刑の仮出獄中に強盗殺人を敢行したことにある。 そうすると,原判決が比較検討した事例においては,いずれも死刑が選択されているところ,そのうち被害者が1名である事例と対比してみても,被告人の情状は,全体として,悪質さの程度が低いと評価することはできない。 (3) なお,原判決は,再度,被告人に無期懲役刑を科した場合の現実の服役期間を検討し,前刑の仮出獄取消による服役期間は最低10年以上を要し,本件犯行による無期懲役刑については,最低20年程度の服役を要するとして,最低でも30年程度服役することが必定であるところ,それだけの長期間の服役を余儀なくさせることが可能であれば,これは被告人の刑責を明らかにし,十分な贖罪をさせるという刑政の本旨にかんがみても,過不足ない,というのである。 しかしながら,仮出獄の許可の判断は,更生保護委員会の権限に属する が可能であれば,これは被告人の刑責を明らかにし,十分な贖罪をさせるという刑政の本旨にかんがみても,過不足ない,というのである。 しかしながら,仮出獄の許可の判断は,更生保護委員会の権限に属することはいうまでもないし,仮に,裁判所が仮出獄の許可やそれまでの期間について参考意見を述べることができるとしても,原判決の意見は,仮出獄の審理に当たり,その時点で考慮されるべき関係事項(犯罪者予防更生法30条)について十分な検討を加えたとは言い難い観念的で抽象的なものであり,被告人に無期懲役刑を科することの合理的な説明とはいえない。 9(原判決後の情状について)弁護人は,原判決後,特に最高裁判所の破棄差戻し判決の後に生じた新たな情状として,①被告人には,長女との交流により,被害者遺族の被害感情への共感が芽生え,その結果,被害者の遺族に対し,弁護人を通じて謝罪の手紙を送付し,線香代を送金したこと,②臓器移植のドナー登録を行い自らの身体で償う意思を持つに至ったことがあり,これらの事情を考慮すれば,被告人に対し,死刑をもって臨むべきでないことが一層明らかになったと主張する。 検討すると,①被告人は,本件で勾留中,長女宛に送金したり本を送ったりしていたところ,平成12年夏,長女から初めて手紙が送られてきたことで文通を開始し,その成長ぶりを知るとともに,人を思いやる気持ちを持つようになり,被害者の遺族の方にも思いをはせるようになったこと,当審の弁護人を通じて,遺族に謝罪の手紙を送り,平成14年11月及び平成15年8月に,線香代としてそれぞれ3000円と1万円を送金し,さらに,平成16年3月に,1万円を送金したことが認められる。 被告人が被害者遺族に対し,慰謝の措置を講じるようになったこと自体は,評価すべきことであるが,被告人は,以前は 円と1万円を送金し,さらに,平成16年3月に,1万円を送金したことが認められる。 被告人が被害者遺族に対し,慰謝の措置を講じるようになったこと自体は,評価すべきことであるが,被告人は,以前は,厳しい被害感情を述べるOに対して,母親を大切にしていたのか疑問を持ち,釈然としない思いを抱いていたというのであるし,被告人が講じた措置は,時期的にも金額的にも到底遺族の心情を慰謝するものとはいうことができず,Oの処罰感情に変わりはない。 また,②被告人は,骨髄バンクへの登録を希望し,平成14年6月7日,弁護人を通じて,当裁判所に対し,勾留の執行停止を申し立て,併せて広島地方検察庁に対し,刑の執行停止を申し立てたことがあり,その他の臓器移植を含めて,自己の身体をもって罪を償おうと考えていることは,所論指摘のとおりである。ただし,当裁判所は,骨髄移植の社会的有益性や骨髄液提供者を確保する必要性等を考慮してみても,被告人の逃亡のおそれが極めて高い本件においては,そのおそれを防止する要請を上回るほどの切実な釈放の必要性があるとはいえないことから,勾留の執行停止について,職権を発動しなかった。 そうすると,弁護人が指摘する原判決後に生じたこれらの情状によっても,被告人の量刑が大きく左右されるものではない。 第3 その他の弁護人の主張 1 死刑制度の違憲性について(1) 弁護人は,死刑制度そのものが,現在においては,憲法36条,31条に違反する制度であり,判例も変更されるべきである,と主張する。 すなわち,昭和23年3月12日最高裁大法廷判決(刑集2巻3号191頁)は,死刑そのものは憲法36条のいわゆる残虐な刑罰にはあたらないと判示した。しかし,この判決は,死刑制度及びその運用は,時代と環境の変化との対応関係で考察されなければならない 刑集2巻3号191頁)は,死刑そのものは憲法36条のいわゆる残虐な刑罰にはあたらないと判示した。しかし,この判決は,死刑制度及びその運用は,時代と環境の変化との対応関係で考察されなければならないこと,多数の文化国家が死刑制度を廃止すれば,それに従う余地を承認していると考えられること,残虐な刑罰の評価が時代により変遷することを承認しているところ,上記最高裁判決から既に55年を経過した現在,死刑廃止の動向は世界的な潮流になっており,死刑それ自体が非人道的かつ残虐であるし,誤判があった場合,回復不可能な刑罰であるから,憲法36条の規定に反し,違憲である,と主張する。 また,上記最高裁判決は,憲法31条も適正な手続によれば刑罰として生命を奪いうると判示し,死刑が憲法31条に違反しない旨判示している。しかし,憲法の戦争放棄,個人の尊重,残虐な刑罰の禁止という精神からすると,憲法31条は実質的に制限を受け,その手続保障規定の解釈も,時代とともに変化する必要があるところ,いわゆる永山事件第1次上告審判決は,昭和58年7月8日,最高裁として,初めて,死刑の選択の許される基準を示し,また,法制審議会が昭和49年5月29日に決定した改正刑法草案は,量刑の一般的基準を定め,死刑の適用は特に慎重でなければならないと定めたが,それらの基準が果たして死刑の適用基準として適正な基準たり得るのか,仮に適正な基準たり得るとして,その運用が果たして適正なものとなりうるのか,極めて疑問であり,死刑は究極の刑罰であるにもかかわらず,自動上訴制度を持たず,その適用に恣意的,差別的な要因を払拭できないのであり,憲法31条の保障する適正手続に反し,違憲であるといわざるを得ない,と主張している。 しかしながら,現行の死刑制度が,残虐な刑罰にあたるものではなく憲法36条 別的な要因を払拭できないのであり,憲法31条の保障する適正手続に反し,違憲であるといわざるを得ない,と主張している。 しかしながら,現行の死刑制度が,残虐な刑罰にあたるものではなく憲法36条の規定に違反するものではないことは,上記昭和23年3月12日最高裁大法廷判決ほかの最高裁判例が判示するとおりであるところ,上記最高裁大法廷判決後の時代と環境の変化や死刑制度に関する世界的な動向など所論が指摘する点を十分検討してみても,国民の感情,犯罪状況,刑事政策を取り巻く諸般の事情を総合すると,これが左右されるものではない。 また,憲法31条は,法律の定める適正な手続により生命を奪う刑罰の存置を是認しているところである。もとより,死刑は,人間存在の根元である生命そのものを永遠に奪い去る冷厳な極刑であり,誠にやむを得ない場合における究極の刑罰であることにかんがみると,その適用は特に慎重でなければならないことはそのとおりであるが,上記昭和58年7月8日最高裁判決が指摘するとおり,犯行の罪質,動機,態様殊に殺害の手段方法の執拗性・残虐性,結果の重大性殊に殺害された被害者の数,遺族の被害感情,社会的影響,犯人の年齢,前科,犯行後の情状等各般の情状を併せ考察したとき,その罪責が誠に重大であって,罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極刑がやむを得ないと認められる場合には,死刑の選択も許されるものといわなければならず,そのような厳格な基準の下において,多角的な視点から検討した上でなされる死刑の適用及び運用は,憲法31条の規定に違反するものではない。 (2) 次に,弁護人は,平成9年7月16日,臓器の移植に関する法律が制定され,臓器移植を前提にした「死」の概念につき,それまでの「心臓死」のほかに「脳死」を受容することになったが,人の死に関して, (2) 次に,弁護人は,平成9年7月16日,臓器の移植に関する法律が制定され,臓器移植を前提にした「死」の概念につき,それまでの「心臓死」のほかに「脳死」を受容することになったが,人の死に関して,適用される法律によって,脳死と心臓死を使い分けることは法の法たる資格を失い,2つの異なる基準をもって,死刑の相当性につき判断することはできないこと,臓器移植法2条は,生前の自己の臓器の提供意思は尊重されなければならないと規定しているところ,死刑囚であっても臓器提供の意思は尊重されなければならないが,現行の絞首という執行方法によれば,体内の臓器の損傷が大きく,少なくとも心臓と肺の移植は不可能であるし,死刑囚に対して現実に移植意思を尊重するための制度的保障は全くないことなどを考慮すると,現行の死刑制度は,その執行方法を変更しなければ,死刑判決の宣告は法の不整合を招くので,憲法31条に反し,憲法13条から推認しうる「償い方の自由」というべき権利や,移植意思を有する者がその意思について尊重され,かつ,充分審理されるべき立場が保障されないことから,憲法32条にも違反し,さらに,死刑の執行行為は償うべき尊い意思を絞首によって踏みにじるという残虐性を帯びてしまう点で,憲法36条にも違反する,と主張する。 しかしながら,法律上の概念は,必ずしも一義的でなく,その法律の趣旨や制度の目的に応じて相対的に規定され,あるいは,解釈されることがあり得ることはいうまでもない。そして,医療の進歩に伴い,人体の臓器につき移植の可能性が拡がり,臓器の機能に障害がある者に対し,臓器の機能の回復又は付与を目的として行われる臓器の移植医療は,その社会的有用性にかんがみて,一定の法定条件を満たして行われる限度で合法化されることとし,臓器の移植に関する法律が制定されたのである。 器の機能の回復又は付与を目的として行われる臓器の移植医療は,その社会的有用性にかんがみて,一定の法定条件を満たして行われる限度で合法化されることとし,臓器の移植に関する法律が制定されたのである。「脳死」は,臓器移植の場合に限定して本人の生前の意思により死として受容するに至ったのであり,臓器移植法6条1項は,移植用臓器を「死体(脳死した者の身体を含む。以下同じ。)」から摘出できると規定しており,心臓死と脳死の2種類の死の概念があることを前提にしている。また,同法2条が生前の自己の臓器の提供意思は尊重されなければならないと規定していることはそのとおりであるが,一方で,同法6条3項は,脳死した者の家族に拒否権を認めていることからすると,同法2条は,あくまで臓器移植の基本理念,すなわち,移植医療の基本は,提供者本人の人道的な提供意思にあり,移植医療は本来,その上に成り立つものであることを示しているものと解すべきである。 ところで,刑に服している者は,その執行に必要な限度において,国民が享有する基本的人権に合理的な制限が加えられることもやむを得ないところ,死刑は,人間の存在の根元である生命そのものを永遠に奪い去る刑罰であるから,例え,生前の意思により脳死状態における臓器の提供意思が表明されている場合であっても,その意思を尊重するために死刑の執行方法が左右されることにはならないし,これにより弁護人が主張するような残虐性を帯びるものでもない。 弁護人の主張は,採用することができず,現行の死刑制度が憲法31条,32条,36条等の規定に違反するものではない。 2 量刑均衡について弁護人は,最高裁判所が平成11年11月から12月にかけて,本件を含む5件(①平成11年11月29日第2小法廷判決,強盗強姦,強盗殺人,窃盗被告事件[国立市 ではない。 2 量刑均衡について弁護人は,最高裁判所が平成11年11月から12月にかけて,本件を含む5件(①平成11年11月29日第2小法廷判決,強盗強姦,強盗殺人,窃盗被告事件[国立市主婦殺害事件],②平成11年12月10日第2小法廷判決,有印私文書偽造,同行使,詐欺,強盗殺人被告事件[本件],③平成11年12月16日第1小法廷決定,強盗殺人,死体遺棄,有印私文書偽造,同行使,詐欺被告事件[北海道職員夫婦殺害事件],④平成11年12月16日第1小法廷決定,強盗殺人,死体遺棄,恐喝未遂被告事件[岸和田市銀行員殺害事件],⑤平成11年12月21日第3小法廷決定,強盗殺人,死体遺棄,有印私文書偽造,同行使,詐欺被告事件[倉敷市両親殺害事件]。いずれも無期懲役の原判決に対し,検察官が上告したもの)につき判決等を言い渡したが,本件を除く他の4件はいずれも原審の無期懲役が維持されているところ,本件のみ原判決を破棄して差し戻した合理的理由が認められない,と主張している。すなわち,上記永山事件第1次上告審が死刑判決の選択が許される場合に考慮すべき項目について検討すると,本件の情状が,他の4件と比較して悪質とされるのは,被告人に無期懲役の前科があるということだけであり,罪質,動機,態様,被害感情,社会的影響の項目については,いずれも他の事件と同様の評価がなされており,結果の重大性については,被害者の数及び財産的損害の点で他の事件より悪質性が低いと認められるところ,前科の点について,被告人に不利に判断すべき事情と考えてはならないか,もしくは,過度に強調されてはならないから,本件だけを破棄差戻ししたのは,量刑の均衡を著しく失したものであり,最高裁の判断は誤っている,というのである。 弁護人の上記主張について,記録に現れている限度(公刊物に 調されてはならないから,本件だけを破棄差戻ししたのは,量刑の均衡を著しく失したものであり,最高裁の判断は誤っている,というのである。 弁護人の上記主張について,記録に現れている限度(公刊物に登載された判決文を含む。)で検討すると,本件犯行は,被告人が遊興に溺れた結果,多額の負債を抱え,その返済資金を得るために,当初から被害者の殺害を企図した計画的な強盗殺人の事案であり,共犯者との関係においても,強盗殺人の計画及び実行の全般にわたり,終始主導的な役割を果たしているところ,他の4件は,被害者の殺害について,事前に計画されたとはいい難い事案(①事件)や被害者の殺害及び金品の強取について,事前の計画性を欠く事案(⑤事件),犯行の原因となった多額の負債が,遊興や無為徒食の結果生じたものとは性質が異なる事案(④事件),共犯者が犯行の全般にわたって主体的に関与し,被害者の殺害計画にも積極的に加担するなど,共犯者の責任が極めて重い事案(③事件)である。 このような点で,被告人の本件犯行の悪質さの程度は高いというべきである。 また,結果の重大性について,上記判決等の中には,殺害された被害者が2名の事案が2件(③事件,⑤事件)あり,その点は,本件より重大であるが,いずれも同一機会に殺害されたものであるし,本件と他の2件(①事件,④事件)とは殺害された被害者の数において,同じである。そして,強盗殺人罪の保護法益は第1次的には人の生命であり,財産的被害は第2次的に考慮されるべきものであるが,強取した預貯金通帳により払戻しがなされた金額を含めてみても,本件の被害額が,他の4件と比べて格段に少額であるというわけではない。 そうすると,結果の重大性について,本件が,被害者の数及び財産的損害の点で他の事件より悪質性が低いという弁護人の主張は理由がない。 被害額が,他の4件と比べて格段に少額であるというわけではない。 そうすると,結果の重大性について,本件が,被害者の数及び財産的損害の点で他の事件より悪質性が低いという弁護人の主張は理由がない。 さらに,前科の点について,被告人には強盗殺人罪による無期懲役の前科があるところ,本件は,その仮出獄中に敢行された事案である上,前件との間に顕著な類似性が認められ,被告人の人格障害と密接な結び付きがあることなどを併せ考えると,被告人の犯罪性を軽視することは到底許されないところである。 これに対し,他の4件のうち,3件(③ないし⑤事件)の被告人には全く前科がないか,業務上過失傷害罪による罰金前科があるにとどまり,社会人として特に問題のない生活を送っていたのであり,1件(①事件)については,懲役刑の前科があるものの,殺人や重大な傷害による前科はないのであって,本件とは明らかな違いがある。 そうすると,本件の犯情は,弁護人が指摘する上記事件と比較検討してみても,はるかに悪質であるというべきであるから,最高裁判所の破棄差戻し判決について,量刑の均衡を著しく失し,原判決を破棄して差戻す合理的理由が認められないという弁護人の主張は,採用することができない。 第4 結論既に検討したとおり,死刑を存置する現行法制において,犯行の罪質,動機,態様ことに殺害の手段方法の執拗性・残虐性,結果の重大性ことに殺害された被害者の数,遺族の被害感情,社会的影響,犯人の年齢,前科,犯行後の情状等各般の情状を併せ考察したとき,その罪責が誠に重大であって,罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極刑がやむを得ないと認められる場合には,死刑の選択をするほかないものといわなければならない。 そして,被告人の量刑について検討すると,本件強盗殺人の犯行の罪質,結果は極 も一般予防の見地からも極刑がやむを得ないと認められる場合には,死刑の選択をするほかないものといわなければならない。 そして,被告人の量刑について検討すると,本件強盗殺人の犯行の罪質,結果は極めて重大であり,遺族の被害感情は厳しく,社会的影響も大きい。被告人は,パチンコに熱中し,サラ金業者から借金を重ねて,その返済に窮し,返済資金を得るために極めて安易に犯行に及んでおり,その動機に酌量すべき事情はない。犯行の態様は,計画的であり,その程度が低いとはいえないし,殺害の手段方法は,高齢の女性の背後からその頭部を石塊で強打して失神させ,頸部にビニール紐を巻き付けて共犯者と2人がかりで力一杯引っ張り合って緊縛したというものであり,その直後,犯跡を隠蔽するため遺体を崖下に転落させて1年余りの間放置した点を併せると,冷酷で残虐である。被告人は,本件強盗殺人の計画と実行の全般にわたり,終始主導的な役割を果たしており,その後,強取した預貯金通帳等を利用して,単独であるいは別の共犯者を巻き込んで本件詐欺等の犯行に及んでいる。また,本件強盗殺人の犯行後も,共犯者が自首しようとするのを思いとどまらせたり,まじめに働かないで,母や姉に金を無心して,パチンコに熱中する生活を続けていたのであって,犯行後の情状も甚だ芳しくない。そして,被告人は,強盗殺人罪により無期懲役の刑に処せられて服役したのに,その仮出獄中に,前件と顕著な類似性の認められる本件強盗殺人の犯行に再び及んだものであり,非常に悪質である。その意味で,被告人の反社会性,犯罪性については,到底軽視することができず,改善更生の可能性についても,著しく困難であると考えられる。 他方,被告人は,前刑の服役態度はまじめであったこと,仮出獄後,当初は,健全な生活を営もうと努力をしていたこと,逮捕後の比較 できず,改善更生の可能性についても,著しく困難であると考えられる。 他方,被告人は,前刑の服役態度はまじめであったこと,仮出獄後,当初は,健全な生活を営もうと努力をしていたこと,逮捕後の比較的早い時点から本件強盗殺人を含む各犯行を自供し,極刑に処せられることを覚悟した上,公判廷においても一貫して本件各犯行を認める供述をし,反省の態度を示していることなど原審の時点で被告人にとって有利であり,酌むべき事情も認められる。 しかしながら,このような被告人の主観的事情を過大に評価するのは相当でない。 そうすると,弁護人がいろいろと主張している点を全て考慮してみても,本件においては,殺害された被害者の数は1名であるが,被告人の罪責は誠に重大であって,罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極刑を選択するほかないものといわなければならず,量刑の前提となる事実の評価を誤り,被告人を無期懲役に処した原判決の量刑は,軽きに失し不当であるといわざるを得ない。 そして,原判決後,被告人が,被害者の遺族に対し,謝罪の手紙や線香代を送付したこと,長女との手紙による交流を通じて,命の大切さを再認識していること,臓器移植のドナーカードに臓器提供の意思を記入し,自らの身体で償う意思を持つに至ったこと,その他,弁護人が指摘し,記録上うかがわれる全ての事情を被告人のために最大限考慮してみても,被告人の罪責を大きく軽減するような事情があるとはいえないから,上記判断が左右されるものではない。 検察官の論旨は理由がある。 よって,刑訴法397条1項,381条により原判決中被告人に関する部分を破棄し,同法400条ただし書に従い,当裁判所において,更に判決する。 第5 自判(罪となるべき事実)原判決が認定した犯罪事実のとおりである(ただし,第1事実の3行 原判決中被告人に関する部分を破棄し,同法400条ただし書に従い,当裁判所において,更に判決する。 第5 自判(罪となるべき事実)原判決が認定した犯罪事実のとおりである(ただし,第1事実の3行目に「前記林道」とある部分を,「広島県福山市a町(以下略)付近の林道」と,第1事実の13行目に「前記同女方」とある部分を,「同県三原市b町(以下略)所在の同女方」とする。なお,証拠物の押収番号について,「平成5年押第112号」とある部分を,「当庁平成7年押第1号」とする。)。 (証拠の標目)原判決が証拠の欄に挙示しているとおりである。 (法令の適用)注・以下に適用する刑法は,いずれも平成7年法律第91号による改正前の刑法を示す。 罰条原判示第1の行為刑法60条,240条後段原判示第2の1及び2の各行為のうち有印私文書偽造の点刑法159条1項偽造有印私文書行使の点刑法161条1項,159条1項詐欺の点刑法246条1項原判示第2の3の行為のうち有印私文書偽造の点刑法60条,159条1項(文書ごと)偽造有印私文書行使の点刑法60条,161条1項,159条1項(文書ごと)詐欺の点刑法60条,246条1項科刑上一罪の処理第2の1及び2の各罪刑法54条1項後段,10条(有印私文書偽造と同行使と詐欺との間には順次手段結果の関係があるので,それぞれ1罪として最も重い詐欺罪の刑[ただし,短期はそれぞれ偽造有印私文書行使罪の刑のそれによる。]で処断する。)第2の3の罪刑法54条1項前段,後段,10条(偽造有印私文書2通の一括行使の点は,1個の行為が2個の罪名に触れる場合であり,有印私文書偽造と同行使と詐欺との間には順次手 断する。)第2の3の罪刑法54条1項前段,後段,10条(偽造有印私文書2通の一括行使の点は,1個の行為が2個の罪名に触れる場合であり,有印私文書偽造と同行使と詐欺との間には順次手段結果の関係があるので,結局以上を1罪として最も重い詐欺罪の刑[ただし,短期は偽造有印私文書行使罪の刑のそれによる。]で処断する。)刑種の選択死刑(第1の罪)併合罪の処理刑法45条前段,46条1項本文没収刑法46条1項ただし書,19条1項1号,2項本文(押収してある普通預金払戻請求書1枚[当庁平成7年押第1号の1]の偽造部分は,原判示第2の1の偽造有印私文書行使の罪を組成したもの,同じく郵便貯金払戻金受領証1枚[同号の2]の偽造部分は,原判示第2の2の偽造有印私文書行使の罪を組成したもの,同じく郵便貯金払戻金受領証2枚[同号の3,4]の各偽造部分は,原判示2の3の偽造有印私文書行使の罪を組成したものであり,いずれも何人の所有にも属しない。)訴訟費用刑訴法181条1項ただし書(原審分,差戻前控訴審分及び当審分の訴訟費用は,いずれも被告人に負担させない。)よって,主文のとおり判決する。 平成16年6月3日広島高等裁判所第1部裁判長裁判官久保眞人裁判官芦高源裁判官島田一

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