昭和34(う)28 窃盗被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和34年3月31日 札幌高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      原判決を破棄する。      被告人を懲役六月に処する。          理    由  本件控訴の趣意は、稚内区検察庁検察官事務取扱検事藤直道作成の控訴趣意書記 載のとおり

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判決文本文2,570 文字)

主    文      原判決を破棄する。      被告人を懲役六月に処する。          理    由  本件控訴の趣意は、稚内区検察庁検察官事務取扱検事藤直道作成の控訴趣意書記 載のとおりであるから、これを引用する。  右控訴趣意第一点について。  <要旨>まず刑法第二五条第二項の法意について考究するに、執行猶予期間中に罪 を犯し、同条項によつて、いわゆ<要旨>る再度の執行猶予(保護観察付)を言渡し た場合、その罪と併合罪の関係にあるいわゆる余罪について、さらに同条項によつ て再度の執行猶予を言い渡すためには、右併合罪となる各罪の刑期を合算したもの が、一年以下でなければならないものと解するのが相当である。思うに、同条項 が、執行猶予中の再犯について、さらに執行猶予を言渡しうるためには、その宣告 刑か「一年以下の懲役又は禁錮」の場合に限るとしたのは、短期自由刑の執行によ る弊害を考慮する反面、刑期が一年を超えるような悪質なものについてまで、再度 の執行猶予を許容するのは、刑政を弛緩せしめるおそれがあると考えられたからで ある。故に前記見解は、執行猶予中に犯した数罪が、併合罪の関係にあり、これを 一括審理して一個の刑を言渡す場合であると、相前後して審理し、数個の刑を言渡 す場合であるとにより、結論を異にしなければならないとするいわれはない。  本件記録について調査するに、被告人は、(1)昭和三二年二月一二日旭川地方 裁判所稚内支部において、窃盗、暴行罪により懲役一年、三年間執行猶予の判決言 渡を受け、その執行猶予期間中にさらに罪を犯し、(2)昭和三三年八月一二日稚 内簡易裁判所において住居侵入、窃盗罪により、懲役一年、三年間執行猶予(保護 観察付)の判決言渡を受け、該判決は同月二七日確定したが、その判決の確定前で ある同月二三日頃さらに本件窃盗罪を犯したものである 簡易裁判所において住居侵入、窃盗罪により、懲役一年、三年間執行猶予(保護 観察付)の判決言渡を受け、該判決は同月二七日確定したが、その判決の確定前で ある同月二三日頃さらに本件窃盗罪を犯したものであること、原審は、罪となるべ き事実として、本件公訴事実のとおり「被告人は、昭和三三年八月二三日頃の午後 一〇時頃稚内市a通りb丁目A座附近路上におい、B管理に係るC所有の新品自転 車一台(時価二万円相当)を窃取した」との事実を認定のうえ、被告人に対し、懲 役一〇月、三年間執行猶予(保護観察付)の判決を言渡したとこは、所論のとおり である。してみると、前記(2)の判決が言渡した刑期と、その余罪である本件に ついて言渡した刑期とを合算すれば、一年一〇月となるから、前説示に照らし、刑 法第二五条二項所定の「一年以下の懲役又は禁錮」の刑を言渡す場合に当らないと いうべきである。しかるに、原審かいわゆる余罪について審理した結果、再度の執 行猶予を言渡す情状があると認めた場合には、既に確定裁判を経たその余の併合罪 の刑期については、何ら考慮を払う必要はなく、ただ余罪についてのみ、刑法第二 五条第二項の要件を具備すれば足りるとの解釈にもとずき、本件について、さらに 再度の執行猶予を言渡したのは、所論のとおり法令の適用を誤つたものであり、そ の誤りが、判決に影響を及ぼすことは明らかである。論旨は理由がある。  右控訴趣意第二点について。  刑法第二五条第二項が、再度の執行猶予を言渡しうる要件として「情状特に憫諒 す可きものあるとき」と規定しているのは、同条第一項により、初度の執行猶予を 付する場合に比し、その要件を厳格にしたものと解すべきところ、本件記録によれ ば(1)被告人は、前記(1)(2)の前科の外、昭和二九年四月二六日稚内簡易 裁判所において、窃盗罪により、懲役六月、二年間執行猶予の判決 比し、その要件を厳格にしたものと解すべきところ、本件記録によれ ば(1)被告人は、前記(1)(2)の前科の外、昭和二九年四月二六日稚内簡易 裁判所において、窃盗罪により、懲役六月、二年間執行猶予の判決言い渡しを受け ていること、(2)本件犯行は、前記(2)の判決により再度の執行猶予の恩典に 浴した直後、さらに改めるところなくなされたものであること、(3)被告人は、 まだ独身で、姉の婚家先の世話になつているものであるが、酒を好み、本件犯行は 遊興費をうるためになされたものであること、(4)本件被害自転車については、 被告人の姉が被害者と交渉して、買受けることに示談成立し、その代金の一部を支 払つているが、被告人自身としては、何ら弁償に努力した形跡のないことなどが認 められる。その他記録に現われた諸般の事情を総合すれば、本件は、刑広第二五条 第二項所定の「情状特に憫諒すべきものあるとき」に該当するものとは、到底認め られない。原審が、これに該当する情状ありと認めて、本件につき、再度の執行猶 予を言い渡したのは、量刑軽きに過ぎ、失当である。論旨は、この点についても理 由がある。  よつて、刑事訴訟法第三九七条、第三八〇条、第三八一条により、原判決を破棄 し、同法第四〇〇条但書により、さらに次のとおり判決する。  当裁判所が認定した罪となるべき事実及びその証拠は、原判決摘示のとおりであ るから、ここにこれを引用する。  法律に照らすと、被告人の原判示所為は、刑法第二三五条に該当するところ、被 告人には、前記(2)の確定裁判を経た罪があり、該罪と本件窃盗罪とは、同法第 四五条後段の併合罪であるから、同法第五〇条により、まだ裁判を経ない本件窃盗 罪について処断すべく、所定の刑期範囲内で、被告人を懲役六月に処する。なお刑 事訴訟法第一八一条第一項但書に従つて、原審ならびに当審における訴訟 であるから、同法第五〇条により、まだ裁判を経ない本件窃盗 罪について処断すべく、所定の刑期範囲内で、被告人を懲役六月に処する。なお刑 事訴訟法第一八一条第一項但書に従つて、原審ならびに当審における訴訟費用は、 被告人に負担させないこととし、主文のとおり判決する。  (裁判長裁判官 雨村是夫 裁判官 中村義正 裁判官 田中良二)

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