- 1 -平成30年6月21日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成28年(ワ)第10306号損害賠償請求事件(以下「本件本訴事件」という。)平成28年(ワ)第11981号損害賠償請求反訴事件(以下「本件反訴事件1」という。) 平成29年(ワ)第3468号損害賠償請求反訴事件(以下「本件反訴事件2」という。)口頭弁論終結日平成30年2月14日判決本件本訴事件原告株式会社シィー・クェンス (本件反訴事件1・本件反訴事件2被告)本件本訴事件原告 P1(本件反訴事件1・本件反訴事件2被告)上記両名訴訟代理人弁護士千葉直愛本件本訴事件被告株式会社丸清ニット (本件反訴事件1・本件反訴事件2原告)同訴訟代理人弁護士山下桂司 主文 1 本件本訴事件原告(本件反訴事件1・本件反訴事件2被告)株式会社シィー・クェンスの主位的請求を棄却する。 2 本件本訴事件被告(本件反訴事件1・本件反訴事件2原告)は,本件本訴事件原告(本件反訴事件1・本件反訴事件2被告)株式会社シィー・クェンスに対し,21万8160円及びこれに対する平成28年1月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 本件本訴事件原告(本件反訴事件1・本件反訴事件2被告)株式会社シ ィー・クェンスのその余の予備的請求を棄却する。 - 2 - 4 本件本訴事件原告(本件反訴事件1・本件反訴事件2被告)P1の請求を棄却する。 5 本件本訴事件被告(本件反訴事件1・本件反訴事件2原告)の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は,本訴反訴を通じ,本件本訴事件原告(本件反訴事件1・本 件反訴事件2被告) 。 5 本件本訴事件被告(本件反訴事件1・本件反訴事件2原告)の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は,本訴反訴を通じ,本件本訴事件原告(本件反訴事件1・本 件反訴事件2被告)株式会社シィー・クェンスに生じた費用の5分の3及び本件本訴事件被告(本件反訴事件1・本件反訴事件2原告)に生じた費用の10分の5を本件本訴事件原告(本件反訴事件1・本件反訴事件2被告)株式会社シィー・クェンスの負担とし,本件本訴事件原告(本件反訴事件1・本件反訴事件2被告)P1に生じた費用の10分の1及び本件本訴事件被告(本件反訴事件1・本件反訴事件 2原告)に生じた費用の10分の1を本件本訴事件原告(本件反訴事件1・本件反訴事件2被告)P1の負担とし,本件本訴事件原告(本件反訴事件1・本件反訴事件2被告)株式会社シィー・クェンスに生じた費用の5分の2,本件本訴事件原告(本件反訴事件1・本件反訴事件2被告)P1に生じた費用の10分の9及び本件本訴事件被告(本件反訴事件1・本件反訴事件2原告)に生じた費用の10分の4 を本件本訴事件被告(本件反訴事件1・本件反訴事件2原告)の負担とする。 7 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 本件本訴事件 (1) 本件本訴事件原告(本件反訴事件1・本件反訴事件2被告)株式会社シィー・クェンス(以下,単に「原告会社」という。)による請求ア本件本訴事件被告(本件反訴事件1・本件反訴事件2原告。以下,単に「被告」という。)は,原告会社に対し,363万9036円及びこれに対する平成28年1月21日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 イ被告は,原告会社に対し,300万円及びこれに対する平成28年12- 3 363万9036円及びこれに対する平成28年1月21日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 イ被告は,原告会社に対し,300万円及びこれに対する平成28年12- 3 -月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 本件本訴事件原告(本件反訴事件1・本件反訴事件2被告)P1(以下,単に「原告P1」といい,原告会社と併せて「原告ら」という。)による請求被告は,原告P1に対し,34万円及びこれに対する平成27年8月11日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 2 本件反訴事件1原告らは,被告に対し,連帯して,151万7373円及びこれに対する平成28年10月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 本件反訴事件2原告らは,被告に対し,連帯して,300万円及びこれに対する平成29年1月 25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 請求の要旨(1) 本件本訴事件本件本訴事件は,ニット製品の卸売業者である原告会社及びその代表取締役であ る原告P1が,ニット製品の製造販売業者である被告に対し,それぞれ以下の請求をする事案である。 ア原告会社による請求(ア) 第1の1(1)ア項に係る請求(以下「原告会社請求1」という。)a 主位的請求 (a) 被告が,自ら製造するニット製品(品番160-98499,160-98502,160-98523,160-98524の各商品〔以下,これら4つの商品を総称して「本件4品番の商品」という。〕)を三澤株式会社(以下「三澤」という。)に販売することを原告会社に委託した(準問屋契約の成立)にもかかわらず,被告が本件4品番の 品〔以下,これら4つの商品を総称して「本件4品番の商品」という。〕)を三澤株式会社(以下「三澤」という。)に販売することを原告会社に委託した(準問屋契約の成立)にもかかわらず,被告が本件4品番の商品を製造しなかったことに関して, ① 民法536条2項前段に基づく履行請求(手数料報酬相当額1- 4 -7万6752円及びこれに対する支払期日の翌日である平成28年1月21日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払請求。第1の1(1)ア項に係る請求の一部)② 被告に代わって製造せざるを得なくなったことに伴って無用な支払を余儀なくされたり,三澤が振替製造先に支払った単価の上乗せ分を負担する ことを余儀なくされたりするとともに,三澤からの信頼を失ったために被告から委託を受けて三澤に販売することができなくなって,得られるはずであった利益が得られなくなったとして,民法650条3項に基づく損害賠償請求(積極損害88万0433円及び消極損害233万7555円の合計損害金321万7988円並びにこれに対する支払期日の翌日である平成28年1月21日から支払済みまで商事 法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払請求。第1の1(1)ア項に係る請求の一部)をするとともに(b) 被告がニット製品(品番Z9467及び品番Z9468の各商品〔以下,これら2つの商品を総称して「本件2品番の商品」という。〕)を製造して原告会社に供給することになっていた(製造物供給契約の成立)にもかかわらず 本件2品番の商品を製造しなかったために,株式会社ザンパ(以下「ザンパ」という。)に転売することができなくなったとして,製造物供給契約の債務不履行に基づく損害賠償請求(損害金24万4296円 本件2品番の商品を製造しなかったために,株式会社ザンパ(以下「ザンパ」という。)に転売することができなくなったとして,製造物供給契約の債務不履行に基づく損害賠償請求(損害金24万4296円及びこれに対する支払期日の翌日である平成28年1月21日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払請求。第1の1(1)ア項に係る請求の一部)をする。 b 予備的請求(a) 仮に,原告会社と被告との間で上記a(a)の準問屋契約が成立するに至っていたとはいえないとしても,① 原告会社が被告のために三澤との間の調整等を行ったことに変わりはないとして,商法512条に基づく報酬請求(手数料報酬17万6752円 及びこれに対する支払期日の翌日である平成28年1月21日から支払済みまで商- 5 -事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払請求。上記a(a)①との関係で予備的請求。第1の1(1)ア項に係る請求の一部)② 被告に代わって製造せざるを得なくなったことに伴って無用な支払を余儀なくされたり,三澤が振替製造先に支払った単価の上乗せ分を負担することを余儀なくされたりしたことや,三澤からの信頼を失ったために被告から委託 を受けて三澤に販売することができなくなって,得られるはずであった利益が得られなくなったことにも変わりはないとして,不法行為(契約締結上の過失)に基づく損害賠償請求(積極損害88万0433円及び消極損害233万7555円の合計損害金321万7988円並びにこれに対する不法行為の後の日である平成28年1月21日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払 請求。上記a(a)②との関係で予備的請求。第1の1(1)ア項に係 円並びにこれに対する不法行為の後の日である平成28年1月21日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払 請求。上記a(a)②との関係で予備的請求。第1の1(1)ア項に係る請求の一部)をするとともに(b) 仮に,原告会社と被告との間で製造物供給契約が成立するに至っていたとはいえないとしても,原告会社がザンパにニット製品を転売することができなくなったことに変わりはないとして,不法行為(契約締結上の過失)に基づく 損害賠償請求(損害金24万4296円及びこれに対する不法行為の後の日である平成28年1月21日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払請求。上記a(b)との関係で予備的請求。第1の1(1)ア項に係る請求の一部)をする。 (イ) 第1の1(1)イ項に係る請求(以下「原告会社請求2」という。) 被告が本件反訴事件1及び2に係る反訴を提起したことが不法行為を構成するとして,不法行為に基づく損害賠償請求(損害金300万円及びこれに対する本件反訴事件1に係る不法行為の日,すなわち反訴提起日である平成28年12月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求。第1の1(1)イ項に係る請求)をする。 イ原告P1による請求(以下「原告P1請求」という。)- 6 -平成27年8月8日及び同月11日における被告の取締役であるP2専務(以下「被告専務」という。)の原告P1に対する言動が不法行為を構成するとして,使用者責任に基づく損害賠償請求(34万円及び不法行為の日又はそれより後の日である同月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求。第1の1(2)項に係る請求)をする。 (2) 本件反 償請求(34万円及び不法行為の日又はそれより後の日である同月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求。第1の1(2)項に係る請求)をする。 (2) 本件反訴事件1(以下「被告請求1」という。)本件反訴事件1は,原告らが被告から開示された別紙「営業秘密目録」記載のニット製品の製造方法を利用してニット製品を製造したとして,これが①主位的には,営業秘密の不正使用行為に該当するとして不正競争防止法4条に基づき,②予備的には,原告会社の代表取締役である原告P1による被告との委託信任関係に基づく 義務違反行為に該当するとして,民法709条及び会社法350条に基づき,損害賠償請求(損害金151万7373円及びこれに対する不法行為の後の日である平成28年10月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求。第1の2項に係る請求)をする。 (3) 本件反訴事件2(以下「被告請求2」という。) 本件反訴事件2は,被告が本件反訴事件1及び2に係る訴えを提起したことを理由に原告らが本件本訴事件に係る訴えの請求を拡張したことが,不法行為を構成するとして,不法行為に基づく損害賠償請求(損害金300万円及びこれに対する不法行為の日の後である平成29年1月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求。第1の3項に係る請求)をする。 2 前提事実(当事者間に争いがない事実,証拠〔なお,この判決では,書証の枝番号の全てを含むときは,その記載を省略することがある。〕及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実,裁判所に顕著な事実)(1) 当事者等原告P1が代表取締役を務める原告会社は,ニット製品の卸売業者であり,取引 先として三澤やザ ある。〕及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実,裁判所に顕著な事実)(1) 当事者等原告P1が代表取締役を務める原告会社は,ニット製品の卸売業者であり,取引 先として三澤やザンパがある(争いのない事実,甲76)。 - 7 -他方,被告はニット製品の製造販売業者であるところ,P3がその社長(以下,P3を「被告社長」という。),その息子が被告専務である(争いのない事実,証人被告専務42ページ)。被告は,糸商である株式会社イシハラ(以下「イシハラ」という。)のP4(乙7)から強度の耐水性及び耐洗濯性を有する和紙糸である別紙「営業秘密目録」記載第1の1(1)及び(2)の原糸(以下「本件和紙糸」とい う。)の存在を教えられ,撚糸業者である同記載第1の3(1)の業者(以下「本件撚糸業者」という。乙35,36)と協力しながら,本件和紙糸を用いた高度の耐洗濯性及び低い寸法変化率の品質基準に適合したニット製品の製造方法(以下「本件製造方法」という。)を開発し,こうしたニット製品の製造方法の情報に相当する別紙「営業秘密目録」記載の情報(以下「本件製造方法の情報」という。)を保 有するとともに,本件製造方法を用いたニット製品を製造販売していた(甲72の2,85,乙30,証人被告専務15ないし18ページ,弁論の全趣旨)。 (2) 原告会社と被告との間の商談(争いのない事実)従前取引関係になかった原告会社と被告は,平成27年4月頃から,被告がニット製品を製造し,これを原告会社の取引先である三澤に販売することに関する商談 を始め,この商談を進める中で,いずれも本件製造方法によらずに製造する商品として,三澤向け商品として本件4品番の商品を製造することやザンパ向け商品として本件2品番の商品を製造することが話に上り, を始め,この商談を進める中で,いずれも本件製造方法によらずに製造する商品として,三澤向け商品として本件4品番の商品を製造することやザンパ向け商品として本件2品番の商品を製造することが話に上り,三澤やザンパからは発注書が発行された。ところが,同年8月11日の原告P1と被告との協議以後,本件製造方法によらずに製造する商品である本件4品番の商品について被告が製造することはな くなり,本件製造方法によらずに製造する商品である本件2品番の商品についても,被告が製造することはなくなった。 (3) 原告会社による本件和紙糸を用いたニット製品の製造原告会社は,平成28年,三澤との間で,原告会社が和紙糸を使用したニット製品を製造して三澤に供給するという製造物供給契約を締結した(原告P1本人43 ページ,弁論の全趣旨)。原告会社は,その製造を下請けに出す形で行うとともに,- 8 -和紙糸にはイシハラが調達した本件和紙糸を使用させた(甲22,原告P1本人50,51ページ,弁論の全趣旨)。 (4) 本件訴訟の経過(裁判所に顕著な事実)原告会社は,被告が本件4品番の商品及び本件2品番の商品を製造しなかったことにより積極損害を被ったなどとして,被告に対する105万7185円及び遅延 損害金の支払請求(原告会社請求1)に係る訴えを,原告P1は,被告の被用者である被告専務の言動により精神的苦痛を被ったなどとして,被告に対する損害賠償金及び遅延損害金の支払請求(原告P1請求)に係る訴えを,それぞれ平成28年6月13日に東大阪簡易裁判所に提起した(本件本訴事件)ところ,上記訴訟は,同年10月7日に大阪地方裁判所に移送された。他方,被告は,原告らが被告から 開示を受けた本件製造方法の情報を使用したことにより損害を被ったなどと に提起した(本件本訴事件)ところ,上記訴訟は,同年10月7日に大阪地方裁判所に移送された。他方,被告は,原告らが被告から 開示を受けた本件製造方法の情報を使用したことにより損害を被ったなどとして,同年12月8日,原告らに対する損害賠償金及び遅延損害金の支払請求に係る訴えを提起した(本件反訴事件1)。 原告会社は,平成29年1月25日,被告が本件4品番の商品及び本件2品番の商品を製造しなかったことにより消極損害も被ったなどとして,原告会社請求1の 損害賠償請求額を363万9036円に拡張(以下「本件請求拡張」という。)した。これに対し,被告は,同年4月10日,本件請求拡張が不法行為を構成するとして,損害賠償金及び遅延損害金の支払請求に係る訴えを提起した(本件反訴事件2)。 原告会社は,同年5月16日,被告が本件反訴事件1及び2に係る反訴を提起し たことが不法行為を構成するとして,損害賠償金及び遅延損害金の支払請求(原告会社請求2)に係る訴えを本件本訴事件の追加的変更により提起した。 3 争点(1) 原告会社請求1関係ア本件4品番の商品関係 (ア) 準問屋契約の成否(争点1)- 9 -(イ) 契約締結上の過失の有無(争点2)(ウ) 原告会社の損害額等(争点3)イ本件2品番の商品関係(ア) 製造物供給契約の成否(争点4)(イ) 契約締結上の過失の有無(争点5) (ウ) 原告会社の損害額(争点6)(2) 原告P1請求関係ア被告専務の言動の不法行為性の有無(争点7)イ原告P1の損害額(争点8)(3) 被告請求1関係 ア本件製造方法の情報の営業秘密該当性の有無(争点9 1請求関係ア被告専務の言動の不法行為性の有無(争点7)イ原告P1の損害額(争点8)(3) 被告請求1関係 ア本件製造方法の情報の営業秘密該当性の有無(争点9)イ不正使用行為等の有無(争点10)ウ被告の損害額(争点11)(4) 訴え提起等に関する損害賠償請求関係ア被告請求2関係 (ア) 本件請求拡張の不法行為性の有無(争点12)(イ) 被告の損害額(争点13)イ原告会社請求2関係(ア) 本件反訴事件1及び本件反訴事件2の提起の不法行為性の有無(争点14) (イ) 原告会社の損害額(争点15) 4 争点に関する当事者の主張(1) 本件4品番の商品関係ア争点1(準問屋契約の成否)について(原告会社の主張) 三澤との間で自己が製造したニット製品を供給する関係を築きたかった被告は,- 10 -三澤と長年取引関係にあった原告会社から三澤を紹介してもらうなどした結果,三澤から本件4品番の商品についての製造供給を依頼されることになった。もっとも,被告が従前三澤と取引関係になかったことから,従前から三澤と取引関係にあった原告会社が発注書の名宛人となり,原告会社が被告にその発注書を転送するという形で取引が行われることとなった(現に,三澤が原告会社に発注書を送付し,原告 会社が被告にこれを転送していたところ,被告は,原告会社ないし三澤に対し,受注しないなどという連絡をすることはなかった。)。したがって,遅くとも本件4品番の商品についての全ての発注書の転送が完了した平成27年6月24日には,原告会社と被告との間には,被告を委託者,原告会社を準問屋として,被告が製造した本件4品 た。)。したがって,遅くとも本件4品番の商品についての全ての発注書の転送が完了した平成27年6月24日には,原告会社と被告との間には,被告を委託者,原告会社を準問屋として,被告が製造した本件4品番の商品を原告会社が三澤に供給するという準問屋契約が成立した。 (被告の主張)被告と三澤との間に立って,三澤の利益を優先させるべく対応していた原告会社が,被告の利益を優先させることになる準問屋契約を締結するとは考え難いこと,原告会社と被告との間で手数料報酬に関する話合いがされておらず,代表者である原告P1も三澤に対して履行義務を負う立場にあるとは認識していなかったこと, 被告が,平成27年7月2日には原告会社に対し,原告会社との全ての商談を決裂させる内容のメールを送信していることなどに照らせば,原告会社と被告との間で,原告会社が主張するような準問屋契約は成立していない。 イ争点2(契約締結上の過失の有無)について(原告会社の主張) 被告は,本件4品番の商品についての発注書を受領したにもかかわらず受注を拒絶する態度を1か月半以上にわたって明確に示さないなどした。したがって,仮に,原告会社と被告との間で準問屋契約が成立するに至っていなかったとしても,被告は,原告会社に被告が受注したとか受注するものであるなどという誤解を抱かせたのであるから,原告会社にこうした誤解により不測の損害を被らせないようにする 義務を負っていたにもかかわらず,これを怠ったというべきである。 - 11 -(被告の主張)ニット製品を製造して供給する契約は,型見本の作成・寸法の調整・色編地の作成・色見本の作成の各過程を経た後,単価が決定され,発注書が作成されて締結に至る。ところが,本件4品番の商品のう の主張)ニット製品を製造して供給する契約は,型見本の作成・寸法の調整・色編地の作成・色見本の作成の各過程を経た後,単価が決定され,発注書が作成されて締結に至る。ところが,本件4品番の商品のうち品番160-98499(以下,本件4品番の商品の中の個別の商品のことをいう場合には,各商品の下三桁の品番に従っ て「品番499の商品」などという。)及び品番502の商品については,寸法さえも決定していなかったことから,契約締結の準備段階にすら入っていなかった。 また,本件4品番の商品のうち品番523の商品及び品番524の商品については,単価を決定するために最も重要な要素である色編地及び色見本の作成に至っていなかったことから,契約締結の準備段階には入っておらず,仮に入っていたとしても, 被告が平成27年7月2日には受注を拒絶する態度を明確に示した以上,原告会社に被告が受注するものだという誤解を抱かせていない。 したがって,被告には,原告会社が主張するような契約締結上の過失はない。 ウ争点3(原告会社の損害額等)について(原告会社の主張) 原告会社は,被告が本件4品番の商品を製造しなかったことにより,準問屋契約の成否にかかわらず,以下のとおりの損害等を被った。 (ア) 手数料報酬関係 17万6752円商人である原告会社は,本件4品番の商品に関する手数料報酬を受領できるはずであったにもかかわらず被告が本件4品番の商品を製造しなかったことによりこれ を受領していない。これは損害として見ることもできるし,536条2項により手数料報酬請求権をなお有していると見ることもできる。 また,問屋契約が成立していなくても,商人である原告会社が被告のために行為をしたのであるから,商法512条により報酬請 し,536条2項により手数料報酬請求権をなお有していると見ることもできる。 また,問屋契約が成立していなくても,商人である原告会社が被告のために行為をしたのであるから,商法512条により報酬請求権を有している。 (イ) 代替生産費用の支払及び単価の上乗せ分の負担 88万0433円 原告会社は,被告が本件4品番の商品を製造しなかったことにより,別紙「三澤- 12 -関係代替生産費用の支払及び単価の上乗せ分の負担一覧表(原告会社主張)」記載のとおり,品番502の商品を代替生産するために本来支出する必要のなかった支払を余儀なくされたり,三澤が品番499の商品,品番523の商品及び品番524の商品について振替製造先に支払った単価の上乗せ分の負担を余儀なくされたりした。 (ウ) 逸失利益 233万7555円原告会社は,被告が本件4品番の商品を製造しなかったことにより,三澤からの信頼を失ったために被告から委託を受けて三澤に販売することができなくなって,別紙「三澤関係逸失利益一覧表(原告会社主張)」記載のとおり,得られるはずであった利益が得られなくなった。 (被告の主張)否認ないし争う。 (2) 本件2品番の商品関係ア争点4(製造物供給契約の成否)について(原告会社の主張) 長年取引関係にあったザンパからフレア調ニットの製造供給の発注を受けた原告会社が平成27年6月6日に被告に下請発注したことを契機に,原告会社と被告との間で本件2品番の商品についての製造物供給契約に関する交渉が始まった。その後双方の間で単価の額を中心に交渉が行われた結果,原告会社が同年7月17日に被告が同年6月28日に提示した単価の額で発注するに至った。したがって,同日 造物供給契約に関する交渉が始まった。その後双方の間で単価の額を中心に交渉が行われた結果,原告会社が同年7月17日に被告が同年6月28日に提示した単価の額で発注するに至った。したがって,同日 には,原告会社と被告との間には,原告会社を発注者,被告を受注者として,被告が製造した本件2品番の商品を原告会社に供給するという製造物供給契約が成立した。 (被告の主張)ニット製品を製造して供給する契約は,型見本の作成・寸法の調整・色編地の作 成・色見本の作成の各過程を経た後,単価が決定され,発注書が作成されて締結に- 13 -至る。ところが,本件2品番の商品については,単価が決定していなかったことはもとより,寸法さえも決定していなかった。したがって,原告会社と被告との間で,原告会社が主張するような製造物供給契約は成立していない。 イ争点5(契約締結上の過失の有無)について(原告会社の主張) 被告は,三澤関係と同様にザンパの関係でも,受注を拒絶する態度を明確に示さないなどしたから,仮に,原告会社と被告との間で本件2品番の商品に関する製造物供給契約が成立するに至っていなかったとしても,被告は,原告会社に被告が受注したとか受注するものであるなどという誤解により不測の損害を被らせないようにする義務を負っていたにもかかわらず,これを怠ったというべきである。 (被告の主張)ニット製品を製造して供給する契約は,型見本の作成・寸法の調整・色編地の作成・色見本の作成の各過程を経た後,単価が決定され,発注書が作成されて締結に至る。ところが,本件2品番の商品については寸法さえも決定していなかったことから,契約締結の準備段階にすら入っていなかった。また,単価が決定していなか ったことはもとよ 注書が作成されて締結に至る。ところが,本件2品番の商品については寸法さえも決定していなかったことから,契約締結の準備段階にすら入っていなかった。また,単価が決定していなか ったことはもとより,仮に契約締結の準備段階に入っていたとしても,被告が平成27年7月2日には受注を拒絶する態度を明確に示した以上,原告会社に被告が受注するものだという誤解を抱かせていない。 したがって,被告には,原告会社が主張するような契約締結上の過失はない。 ウ争点6(原告会社の損害額)について (原告会社の主張)原告会社は,被告が本件2品番の商品を製造しなかったことにより,これをザンパに転売して得られた利益を得られなかったことから,製造物供給契約の成否にかかわらず,転売利益21万8160円の損害を被った。 (被告の主張) 否認ないし争う。 - 14 -(3) 原告P1請求関係ア争点7(被告専務の言動の不法行為性の有無)について(原告P1の主張)被告専務が原告P1に対し,平成27年8月8日に顔を近付けて「帰れやー」と怒鳴り散らしたこと,同月11日に怒鳴ったり,手を上げて威嚇してきたりしたこ となどは,不法行為を構成する。 (被告の主張)否認ないし争う。 イ争点8(原告P1の損害額)について(原告P1の主張) 原告P1は,被告専務から怒鳴り散らされたり,威嚇されたりしたことなどにより精神的苦痛を被ったところ,これを慰藉するための金額は34万円を下らない。 (被告の主張)否認ないし争う。 (4) 被告請求1関係 ア争点9(本件製造方法の情報の営業秘密該当性の有無)について(被告の主張)(ア) 有用性・非公知性和紙糸を使 の主張)否認ないし争う。 (4) 被告請求1関係 ア争点9(本件製造方法の情報の営業秘密該当性の有無)について(被告の主張)(ア) 有用性・非公知性和紙糸を使用したニット製品は,手洗いすると激しい収縮が生じるといった問題を抱えており,耐水性に優れて洗濯強度の高い性質を有するとされる本件和紙糸を 単に使用したとしても通常のクリーニングまで可能となるものではないところ,本件製造方法によれば通常のクリーニングが可能になるものであるから,本件製造方法の情報は,ニット製品を販売するに当たって競争上優位に立てる有用な情報である。 そして,本件製造方法により製造されたニット製品は,市場に流通しているもの の,少なくとも,本件製造方法の情報のうち別紙「営業秘密目録」記載第1の一部,- 15 -第2及び第6の情報については製品を解析するなどしても特定できない情報であるから,本件製造方法の情報は非公知な情報である。 (イ) 秘密管理性被告が,原告P1に別紙「営業秘密目録」記載第1の1及び2,第7の情報が記載された品質検査報告書(甲25の1及び2)を交付した際,原告P1に対し,上 記報告書を厳重に管理するよう求めたことなどに照らせば,本件製造方法の情報には秘密管理性が認められる。 (原告らの主張)(ア) 有用性・非公知性本件製造方法の情報は,公知であり有用性を欠くものである。例えば,被告が特 定できない情報であると主張する本件和紙糸の製造元に関する情報(別紙「営業秘密目録」記載第1の1及び2)については,イシハラのP4が原告P1に伝えていることに照らせば,公知である。被告が特定できない情報であると主張する本件製造方法のうち別紙「営業秘密目録」記載第2の工程について 」記載第1の1及び2)については,イシハラのP4が原告P1に伝えていることに照らせば,公知である。被告が特定できない情報であると主張する本件製造方法のうち別紙「営業秘密目録」記載第2の工程については,ニット製品の製造に当たって一般的に行われている工程であることに照らせば,公知である。 (イ) 秘密管理性本件製造方法の情報には秘密管理性が認められない。例えば,被告が原告P1に交付した際にその内容について守秘義務を掛けたと主張する品質検査報告書(甲25の1及び2)は,被告が製造した商品が本件製造方法の情報のうちの一部の品質を備えていることを明らかにするための資料であるところ,当該品質は市場に流通 している商品の下げ札から判明するものであることに照らせば,被告が品質検査報告書を交付する際にその内容について守秘義務を掛けるはずなどなく,現に原告P1は守秘義務を掛けられていない。 イ争点10(不正使用行為等の有無)について(被告の主張) 原告P1は,被告から,本件製造方法の情報のうち別紙「営業秘密目録」記載第- 16 -1の1及び2,第2並びに第4ないし第7の情報の開示を受けるなど,本件製造方法の情報の開示を受けていた。そして,原告P1が代表者を務める原告会社は,三澤からの製造委託を受け,同第1の1及び2並びに第4及び第5の情報を利用するなど,本件製造方法の情報を利用してニット製品を製造した。 また,仮に,本件製造方法の情報に営業秘密該当性が認められなかったとしても, 原告らが本件製造方法の情報を利用してニット製品を製造したことは,これを利用してニット製品を製造してはならないという原告P1と被告との間の委託信任関係に背くものであるから,原告P1との関係では一般不法行為を構成する。 (原 利用してニット製品を製造したことは,これを利用してニット製品を製造してはならないという原告P1と被告との間の委託信任関係に背くものであるから,原告P1との関係では一般不法行為を構成する。 (原告らの主張)原告P1は,本件製造方法の情報のうち別紙「営業秘密目録」記載第1の1及び 2についてはイシハラのP4から聞き及んでいるなど,そもそも被告から本件製造方法の情報の開示を受けていない。他方,確かに,原告会社は,三澤から製造委託を受けた和紙糸を使用したニット製品を製造するに当たって,本件製造方法の情報のうち別紙「営業秘密目録」記載第2及び第3の情報を利用したが,同記載のその余の情報は利用していない。例えば,原告会社は,三澤から製造委託を受けたニッ ト製品を製造するに当たり本件和紙糸を使用しているところ,これが三澤がイシハラから調達済みのものであったことに照らせば,同記載第1の情報は利用していない。 また,仮に,本件製造方法の情報に営業秘密該当性が認められなかったとしても,原告らが本件製造方法の情報を利用してニット製品を製造したことが,原告P1と の関係で一般不法行為を構成するという被告の主張は争う。上記アの(原告らの主張)のとおり,被告は原告P1に守秘義務を掛けていないなどに照らせば,原告P1と被告との間には被告が主張するような委託信任関係はない。 ウ争点11(被告の損害額)について(被告の主張) 原告らが本件製造方法の情報を利用して製造したニット製品が被告の取引先の競- 17 -合店で販売されることになると,本件製造方法の情報を利用して製造したニット製品を消費者に販売する被告の取引先だけでなく,その取引先に販売する被告自身も損害を被るおそれがあることから,被告はこれを阻止すべくイシハラか ことになると,本件製造方法の情報を利用して製造したニット製品を消費者に販売する被告の取引先だけでなく,その取引先に販売する被告自身も損害を被るおそれがあることから,被告はこれを阻止すべくイシハラから本件和紙糸を代金151万7373円で買い取った。 (原告らの主張) 否認ないし争う。被告は,イシハラから買い取った本件和紙糸を使用してニット製品を製造販売することができるから,買取費用は損害にはならない。 (4) 被告請求2関係ア争点12(本件請求拡張の不法行為性の有無)について(被告の主張) 原告会社と被告との間に本件4品番の商品及び本件2品番の商品に関する売買契約がそれぞれ成立しているとして請求の拡張(本件請求拡張)を行った本件本訴事件における原告会社の主張は事実的,法律的根拠を欠くものであるところ,原告会社も容易にこのことを知り得たことに照らせば,本件請求拡張は不法行為を構成する。 (原告会社の主張)否認ないし争う。 イ争点13(被告の損害額)について(被告の主張)本件請求拡張により強いられた被告の負担を金銭で評価すると,300万円が相 当である。 (原告会社の主張)否認ないし争う。 (5) 原告会社請求2関係ア争点14(本件反訴事件1及び本件反訴事件2の提起の不法行為性の有 無)について- 18 -(原告会社の主張)本件反訴事件1の提訴は,被告が原告P1に開示した営業秘密を原告会社が不正使用してニット製品を製造したという主張が事実的,法律的根拠を欠くものであるなど,反対意見を抑え込むためのものであることに照らせば,不法行為を構成するものであり,本件反訴事件2の提訴も,同様の理 正使用してニット製品を製造したという主張が事実的,法律的根拠を欠くものであるなど,反対意見を抑え込むためのものであることに照らせば,不法行為を構成するものであり,本件反訴事件2の提訴も,同様の理由から,不法行為を構成するもの である。 (被告の主張)否認ないし争う。 イ争点15(原告会社の損害額)について(原告会社の主張) 本件反訴事件1及び本件反訴事件2の提訴により強いられた原告会社の負担等を金銭で評価すると,300万円が相当である。 (被告の主張)否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 事実経過(前提事実,証拠〔特に掲記した書証のほかは,甲80,乙57,原告P1本人及び証人被告専務〕及び弁論の全趣旨)本件4品番の商品は三澤向けの商品である一方,本件2品番の商品はザンパ向けの商品であるところ,原告会社及び被告は,それらの商談を同時並行で進めており,その過程で本件製造方法に関わるやりとりがされていることから,争点の検討に先 立ち,関係する事実関係をまとめて時系列に従って認定することとした。以下,詳述する。 (1) 原告会社と被告との間の商談開始被告は,株式会社イトーヨーカ堂(以下「イトーヨーカ堂」という。)から,和紙を使用しつつ通常のクリーニングで洗えるニットトップスの開発依頼を受け,前 提事実記載のように,糸商であるイシハラのP4から教えられた本件和紙糸を使用- 19 -し,本件撚糸業者とも協力して,本件製造方法によるニット製品を開発し,平成27年頃,イトーヨーカ堂向けに販売していた(乙30,証人被告専務15,16ページ。)原告P1は,平成27年4月17日,P4から,抄繊糸(和紙糸)を使った衣類を製造している被告を紹介 発し,平成27年頃,イトーヨーカ堂向けに販売していた(乙30,証人被告専務15,16ページ。)原告P1は,平成27年4月17日,P4から,抄繊糸(和紙糸)を使った衣類を製造している被告を紹介されたことから,同月20日,三澤にその話を持ち込ん だところ,三澤が,抄繊糸を使った衣類を取り扱うことに興味を示したことから,被告に三澤を紹介することとした(甲80,原告P1本人20ページ)。 原告P1は,同月23日,被告社長及び被告専務と面談し,三澤を紹介する旨伝えた。これを受けて,被告側は,原告P1に対し,抄繊糸を使った商品のサンプルとしてイトーヨーカ堂で販売されている商品を交付するとともに,イトーヨーカ堂 基準による耐洗濯性等の品質検査報告書の写し(甲25の1及び2)を交付した(原告P1本人2,3,20,21,38ページ,証人被告専務1,2ページ)。 これ以降,原告会社と被告との間における商談を被告側で実質的に担当したのは,被告専務であった。 (2) 三澤に関する取引関係1 原告P1は,同年5月21日,三澤の担当者2名と共に,被告社長及び被告専務と面談した(乙4,5。原告P1本人4ページ,証人被告専務4ページ)。被告側は,三澤側に対し,抄繊糸を使った商品の取引をすることを希望したが,抄繊糸を使った商品である春夏物を企画する時季が既に終了していたことから,抄繊糸を使わない商品である秋冬物を先行して企画することとなった。そこで,被告側は,三 澤側との間で,抄繊糸を使わない商品である品番499の商品,品番500の商品,品番501の商品及び品番502の商品について,サンプルとして既存商品を示すなどしながら協議したところ,その場で単価に関する話は出たが,発注数に関する話は出なかった(乙10,11,原告P1本人5,25, 501の商品及び品番502の商品について,サンプルとして既存商品を示すなどしながら協議したところ,その場で単価に関する話は出たが,発注数に関する話は出なかった(乙10,11,原告P1本人5,25,28ページ,証人被告専務5,6ページ)。 三澤が,同月22日,原告会社に対し,上記4商品に関するデザイン指示書に加- 20 -えて,同月21日の協議では話に出ていなかった品番503の商品に関するデザイン指示書を送付して,同年6月5日までに6月展示会見本を納品するよう指示したことから,原告会社は,同年5月22日,被告に対し,上記5商品に関するデザイン指示書を送付した(乙10ないし12,甲30の2,原告P1本人6ページ)。 また,三澤は,同月28日,被告に対し,平和堂向け別注品として,同月21日 の協議では話に出ていなかった,抄繊糸を使用しない商品である品番523の商品及び品番524の商品に関するデザイン指示書を送付し,サンプルを納品するよう指示した(乙9,13,14,原告P1本人29ないし31ページ,証人被告専務6ページ)。 (3) ザンパに関する取引関係1 原告会社は,同年6月5日に,ザンパから,フレア調のニット製品の製造供給の依頼を受けたことから,同月6日,被告に対し,これを製造供給することが可能であるかを尋ねた。これに対し,被告は,同日,原告会社に対し,可能である旨とともに,単価は2000円までであれば対応できる旨を回答した(甲42)。 (4) 三澤に関する取引関係2 被告は,同日頃,三澤に対し,品番499の商品,品番500の商品,品番502の商品及び品番503の商品の6月展示会見本をいずれも納品者を被告,単価を2000円として納品した(甲14,乙10ないし12,14。なお,被告は,この頃,三澤に対 商品,品番500の商品,品番502の商品及び品番503の商品の6月展示会見本をいずれも納品者を被告,単価を2000円として納品した(甲14,乙10ないし12,14。なお,被告は,この頃,三澤に対し,品番501の商品の6月展示会見本についても納品した。)。 これに対し,三澤は,同月8日,原告会社に対し,取引は被告名義で行うのか,単 価は品番499の商品及び品番500の商品については1300円程度,品番502の商品及び品番503の商品については1800円程度とするという話ではなかったかと尋ねた(甲14)。そこで,原告会社(原告P1)は,同日,被告に対し,三澤からの問い合わせを取り次ぐとともに,単価に関して,「6月展示会見本の,見積もりを大至急お願いいたします」とのメールを送信した(甲14,28)。こ れに対し,被告は,同日,原告会社に対し,それぞれ見本の単価として,品番49- 21 -9の商品は1500円(絣糸を使用しないのであれば1350円),品番500の商品は1350円,品番501の商品は2000円,品番502の商品及び品番503の商品は1900円であるとのメールを返信した(甲15,証人被告専務32,33ページ)。なお,ここで被告が提示した単価が見本用の単価であると認められることについては,後に補足説明する。 また,被告は,同月11日,三澤に対し,品番523の商品及び品番524の商品のサンプルを納品した(乙17,18)。 (5) ザンパに関する取引関係2ザンパは,同月12日,原告会社に対し,品番Z9467ないしZ9470の各商品に関するデザイン指示書を送付して,同月25日までに7月展示会見本を納品 するよう指示した。そこで,原告会社は,同月12日,被告に対し,上記4商品に関するデザイン指示書を送 Z9470の各商品に関するデザイン指示書を送付して,同月25日までに7月展示会見本を納品 するよう指示した。そこで,原告会社は,同月12日,被告に対し,上記4商品に関するデザイン指示書を送付した(甲43の1,73の1ないし4)。 (6) 三澤に関する取引関係3ア三澤は,同月15日,原告会社及び被告に対し,被告から納品されたサンプルを踏まえて,品番523の商品及び品番524の商品のデザインを決定した としてデザイン指示書(決定したとされる色の構成は,当初指示のとおりであった。 他方,決定したとされる寸法は,当初指示のあった寸法やそれに沿って作製されたサンプルの寸法と異なっているだけでなく,当初はなかったM寸とL寸の区別もあった。)を送付した(甲82)上,原告会社に対し,それぞれ単価を1400円,納期を同年8月25日とし,総発注数については,品番523の商品がM寸180 着,L寸180着の合計360着,品番524の商品がM寸160着,L寸160着の合計320着とする発注書を送付した(甲1の3及び4)。そして,原告会社は,被告に対し,同年6月15日,上記2商品の発注書を送付し,同月18日,三澤との取引を被告名義で行うのであれば三澤に新規取引申請書を提出する必要があるとのメールを送信した(甲16,乙24)。 これに対し,被告は,三澤や原告会社が一方的な取引条件を押し付けてくると感- 22 -じていたことから,三澤に対し,新規取引申請書は提出しなかった。 イ原告P1は,同月5日,イシハラのP4と共に,三澤と抄繊糸を使った商品の商談を行った(原告P1本人40ページ)。その席に被告は同席していなかったが,これを受けて三澤は,原告会社を介して,被告に対し,抄繊糸を使った商品のデザイン指示書を送付した(乙25) を使った商品の商談を行った(原告P1本人40ページ)。その席に被告は同席していなかったが,これを受けて三澤は,原告会社を介して,被告に対し,抄繊糸を使った商品のデザイン指示書を送付した(乙25)。これに対し,被告が,原告会社に対し, 同品については,ロングコートのような丈の長い形態であることから,技術上,製造することができない旨説明した(乙25,証人被告専務19ページ)ところ,原告P1は,同月18日,被告専務に対し,被告が製造できないのであれば他社で製造する旨の発言をした(原告P1本人10,41ページ,証人被告専務11ページ)。被告専務は,この発言について,本件製造方法が他社に漏洩する危険を感じ た。原告P1は,上記の発言が被告専務の感情を害したと考えたことから,同月19日,被告に対し,同月18日の発言を詫びるとともに,どのような条件であれば製造できるのかについて建設的な意見を出してもらい旨のメールを送信した(乙19,原告P1本人10ページ)。 ウ三澤は,原告会社に対し,被告から納品された6月展示会見本を踏まえ て,品番499の商品,品番501の商品及び品番502の商品のデザインが決定したとしてデザイン指示書(決定したとされる色の構成は,当初指示のとおりであった。他方,決定したとされる寸法は,当初指示のあった寸法やそれに沿って作製されたサンプルの寸法と異なっていた。)を,品番499の商品及び品番502の商品のものについては同月23日に,品番501の商品のものについては同月24 日にそれぞれ送付した(甲17,18,29,30の1及び2,乙16)上,同月24日,原告会社に対し,単価については,品番499の商品が1500円,品番501の商品が2000円及び品番502の商品が1900円,総発注数については,品 ,29,30の1及び2,乙16)上,同月24日,原告会社に対し,単価については,品番499の商品が1500円,品番501の商品が2000円及び品番502の商品が1900円,総発注数については,品番499の商品が330着,品番501の商品が180着,及び品番502の商品が460着,納期についてはいずれも同年10月5日とする発注書を送付し た(甲1の1,2及び5)。原告会社は,上記3商品に関するデザイン指示書及び- 23 -発注書を,それぞれ三澤から送付された日に被告に送付した(甲29,30,原告P1本人10ページ)。 エ三澤は,同年6月25日,原告会社に対し,再びロングコートのような丈の長い形態の抄繊糸を使った2つの商品に関するデザイン指示書を送付し(乙26,27),原告会社は,同日,被告に対し,これらを送付した(甲32)。 (7) ザンパに関する取引関係3原告会社は,同月26日,被告に対し,品番Z9467の商品及び品番Z9468の商品(本件2品番の商品)の見積りを出すよう求めた(甲44)。これを受けて被告は,同月28日,原告会社に対し,品番Z9467の商品及び品番Z9468の商品(本件2品番の商品)のサンプルを納品する中で,単価について,品番Z 9467の商品については1700円,品番Z9468の商品については1800円とする提示をした(甲45の2)。これに対し,原告会社は,同月29日,被告に対し,単価について,ザンパからの希望回答として,品番Z9467の商品については1580円,品番Z9468の商品については1670円とする対案を提示し,この企画の経緯は在庫糸があり,糸値も安くとの協力を求める中での企画であ ると述べた(甲45の2,46)。しかし,被告は,同月30日,原告会社に対し,単価 いては1670円とする対案を提示し,この企画の経緯は在庫糸があり,糸値も安くとの協力を求める中での企画であ ると述べた(甲45の2,46)。しかし,被告は,同月30日,原告会社に対し,単価について,品番Z9467の商品については1700円,品番Z9468の商品については1800円とする当初の提示から下げることはできないと伝えた(甲46)。 (8) 三澤に関する取引関係4 ア被告は,原告会社に対し,品番501の商品について,製造のミニマムロットを超える発注数にするよう求めていたが,三澤が発注数を増やすことができなかったことから,同月30日までに発注中止となった(甲1の5,33)。この点について,原告P1は,被告に対し,発注中止は大変なロスなので,被告の立場での問題点等を事前に指示書の到達時点で連絡するよう依頼した(甲33)。 イ被告は,同日,原告会社に対し,抄繊糸を使った商品の単価について三- 24 -澤に伝えたか否かを確認するメールを送信した(甲34,69)。 (9) ザンパに関する取引関係4原告会社は,同年7月1日,被告に対し,品番Z9467の商品及び品番Z9468の商品(本件2品番の商品)の単価については「貴社提案単価で進行して」いることを伝える旨のメールを送信した(甲35)。 (10) 原告会社と被告との間の協議1被告は,原告会社が三澤等の一方的な取引条件を押し付けてくると感じていたことから,同月2日,原告会社に対し,「当社とP1様との商談に毎回ずれがでております」とした上,①品番523の商品及び品番524の商品についてはL寸の単価が決まっていないので受注できない,②「それ以外に関しては生産枠がないの で」受注できない,③全てのサンプルの返却を求める旨のメールを送信した(甲 の商品及び品番524の商品についてはL寸の単価が決まっていないので受注できない,②「それ以外に関しては生産枠がないの で」受注できない,③全てのサンプルの返却を求める旨のメールを送信した(甲2)。被告がサンプルの返却を求めたのは,本件製造方法が他社に漏洩する危険を感じたためであった。 これに対し,原告会社は,同日,被告に対し,「全てストップは解決致しません」とした上で,①品番523の商品及び品番524の商品についてはL寸の希望 単価を知らせるとともにM寸の単価は1400円で良いか,②ⅰ品番499の商品の単価は1500円で良いか,品番502の商品の単価は1900円で良いか,それとも枚数調整や単価調整が必要か,ⅱ「和紙の件は,如何なるのでしょうか?大変困惑していますが」と回答した(甲19)。 その上で,原告P1は,同月4日,被告社長及び被告専務と面談した(甲19)。 この席で,被告社長は,被告専務に対し,受けた商売は損をしても生産納品しなければならない旨述べ,交渉決裂の事態は回避されたが,単価等の取引条件の詳細が詰められるにまでは至らなかった。なお,この日の面談の有無及び内容の認定については,後に補足説明する。 (11) 三澤に関する取引関係5 ア原告会社は,同月8日,被告に対し,品番499の商品,品番502の- 25 -商品,品番523の商品及び品番524の商品(本件4品番の商品)の修正見本を本日に三澤に直送するよう依頼した(甲37)。 イ被告は,同月10日,原告会社に対し,全てのサンプルを返却するよう依頼した(乙20)。これに対し,原告会社は,同月11日,被告に対し,三澤が使用中のものもあることから,翌週に全てのサンプルが手元に揃い次第返却すると 回答した(甲20,乙21)。 ウ被告は 依頼した(乙20)。これに対し,原告会社は,同月11日,被告に対し,三澤が使用中のものもあることから,翌週に全てのサンプルが手元に揃い次第返却すると 回答した(甲20,乙21)。 ウ被告は,同月13日,上記アの見本送付依頼に対して,修正見本を三澤に送付した(乙17,18)。これに対し,原告会社は,同日,被告に対し,修正見本の送付に礼を述べるとともに,品番523の商品及び品番524の商品に関する三澤のデザイン指示書を送付して,納品された品番523の商品及び品番524 の商品の修正見本(それぞれM寸とL寸があった。)を三澤で検寸したところ,決定寸法と差異があったことから,決定寸法に従って納期前完成品を提出するよう指示した(甲38,乙17,18)。 原告会社は,同月17日,被告に対し,三澤関係の修正見本を返したが,C/#25以外の3色×2型を三澤に直送手配するよう求め(甲49の3,甲75の1), 翌18日にも,上記の見本の送付について問題があれば連絡するよう求めた(甲75の1)。 (12) ザンパに関する取引関係5原告会社は,被告に対し,同月17日に,被告から納品されたサンプルを踏まえて,品番Z9467の商品及び品番Z9468の商品(本件2品番の商品)のデザ インを決定したとして,本件2品番の商品に関するザンパによるデザイン指示書(決定したとされる色の構成は,当初指示のとおりであった。他方,決定したとされる寸法は,当初指示のあった寸法やそれに沿って作製されたサンプルの寸法と異なっていた。)を送付するとともに,7月展示会での発注数と単価(品番Z9467の商品については総発注数が191着,単価が1700円,品番Z9468の商 品については総発注数が395着,単価が1800円)が記載された「Sales- 会での発注数と単価(品番Z9467の商品については総発注数が191着,単価が1700円,品番Z9468の商 品については総発注数が395着,単価が1800円)が記載された「Sales- 26 -Confirmation」を送付して,納期の最終期限は同年9月4日であり,展示会での発注であるため応じないわけにはいかないとしつつ,納期等についての回答を求めた(甲49,74。なお,この連絡の有無の認定については,後に補足説明する。)。原告会社は,同月18日にも,被告に対し,品番Z9467の商品については発注数に変更があるものの,納期,単価等についての回答を改めて求め た(甲75)。 (13) 原告会社と被告との間の協議2原告会社は,同年8月7日,被告に対し,品番523の商品及び品番524の商品の納期が近づいてきているが問題ないかとして,上記各商品に加え,品番499の商品及び品番502の商品を含めた本件4品番の商品の進捗状況を尋ね,「納期 チェックシート」の確認回答を求めるとともに,「付属類は全て手配は,完了致しているのでしょうか,恐縮ですが,弊社は此の件に関しタッチしておりません,もし貴社が必要とお考えで有れば弊社は協力致しますが,納期が気に成り,一報連絡させて頂きました。」という連絡をした(甲3,4)。 これに対し,被告は,同日,原告会社に対し,「納期チェックシート」に手書き で修正を加え,①「ALL付属等手配願います。ALLサンプル早急に返却して下さい。サンプル返却なければ本生産できません。」との記載,②品番523の商品及び品番524の商品については,納期を8月24日から9月10日とする記載,単価をM寸は1400円,L寸は1450円とする記載,材料混率を変更する記載,③品番499の商品及び品番502の 23の商品及び品番524の商品については,納期を8月24日から9月10日とする記載,単価をM寸は1400円,L寸は1450円とする記載,材料混率を変更する記載,③品番499の商品及び品番502の商品については,納期を10月2日から10 月30日とする記載,単価を品番499の商品は1500円,品番502の商品は1900円とする記載,④「納期厳守!」等の記載を抹消して,「了承できません」と付記する記載をして回答した(甲5)。 これを受けて,原告会社は,同年8月7日,付属品の商品タグの手配をした(甲21,24)。また,三澤と協議した原告会社は,同日,被告に対し,品番499 の商品及び品番502の商品については,納期を10月15日にすることに了承で- 27 -きるが,品番523の商品及び品番524の商品については,納期を9月10日にすることに了承できず,伸ばせても同年8月31日が限度である旨伝える(甲6)とともに,翌日に被告事務所を訪問した際に見本として保有している抄繊糸を使った商品2枚,その他の商品1枚を返却するつもりである旨などを伝えた(甲41)。 その上で,原告P1は,同月8日,被告事務所を訪問し,見本として保有してい る抄繊糸を使った商品2枚,その他の商品2枚を返却した(乙22)上,被告専務に対し,品番523の商品及び品番524の商品の納期に関する話をした。 原告P1は,同月11日,被告事務所を改めて訪問し,被告社長及び被告専務と共に対応を協議した(甲7)。 (14) 三澤と原告会社による代替生産 これらの協議の結果,原告会社は,被告から本件4品番の商品の供給を受けることを断念したが,同月14日,被告に対し,本件4品番の商品について原告会社は生産を続行せざるを得ないとして,それらの原糸手配先とビーカ 協議の結果,原告会社は,被告から本件4品番の商品の供給を受けることを断念したが,同月14日,被告に対し,本件4品番の商品について原告会社は生産を続行せざるを得ないとして,それらの原糸手配先とビーカー色出し染め工場先を教えるよう求め(甲8,乙23),同日,イシハラと小林繊維晒工業に対して本件4品番の商品について染色ビーカーと糸染めを発注した(甲26)。 以降,被告が,本件4品番の商品及び本件2品番の商品を製造することはなかった(争いのない事実)。そこで,本件4品番のうち品番499の商品,品番523の商品及び品番524の商品については,三澤が自社の協力工場を手配して代替生産を行ったが,急な発注であったため上乗せ単価が必要となり,品番502の商品については原告会社が中国において代替生産を行い,原告会社がこれらの費用を負 担した(甲10の2ないし13及び15ないし17,甲11の2,甲12の2及び3)。 (15) 原告会社による和紙商品の製造三澤では,イシハラに対し,同年7月28日の時点で抄繊糸(和紙糸)1000kgを発注していた(甲22)が,原告会社は,三澤との間で,それを用いたニッ ト製品の製造物供給契約を締結した。そして,イシハラのP4は,もともと被告が- 28 -用いていた抄繊糸を本件撚糸業者に依頼して試作してもらった経緯があったことから,撚糸を本件撚糸業者に発注し,その糸を用いて原告会社が手配した下請工場で編み立てした(原告P1本人49ないし51ページ)。また,P4は,被告に対し,染色方法の相談をしたが,被告は,染めむらが起こるのは糸の構造上の問題によるのではないかとの指摘はしたが,それ以上に染色方法の教示はしなかった(証人被 告専務19ページ,42ページ)。 こうして原告会社が製造した生地は,平 ,染めむらが起こるのは糸の構造上の問題によるのではないかとの指摘はしたが,それ以上に染色方法の教示はしなかった(証人被 告専務19ページ,42ページ)。 こうして原告会社が製造した生地は,平成28年3月28日,平和堂品質基準による耐洗濯性等の品質検査報告書において「合格」とされた(甲63)。 被告は,このようにして製造販売されたニット製品について,自社の営業秘密である本件製造方法が使用されていると考え,それ以上の製造を防止するため,同年 10月31日,イシハラから,抄繊糸の残量を151万7373円で買い取った(乙34)。 (16) 事実認定の補足説明ア被告が平成27年6月8日に提示した単価について前記(4)のとおり,被告は,原告会社に対し,品番499,500,501,5 02及び503の各商品の単価を提示している。この単価について,原告P1は,本生産時の値段であると供述する(原告P1本人9ページ)のに対し,被告専務は,展示会用の1点サンプルの値段であると証言する(証人被告専務33ページ)。 この点については,上記の単価の提示は,原告会社からの「6月展示会見本の,見積もりを大至急お願いいたします」との求めに対してされたものであることや, 被告では,通常,サンプルごとの単価を出していること(被告専務41ページ)から,被告専務の証言のとおり,見本用の値段として提示したものであると認めるのが相当である。 イ平成27年7月4日の面談についてまず,被告は,同日の原告P1との面談を否認する。しかし,原告P1は,被告 が同月2日に進行中の商品を全て受注できないとする連絡をしたのを受けて,同日- 29 -中に,各商品の単価を確認し,枚数調整や単価調整の要否を尋ねるメールを送信して,事態を解 1は,被告 が同月2日に進行中の商品を全て受注できないとする連絡をしたのを受けて,同日- 29 -中に,各商品の単価を確認し,枚数調整や単価調整の要否を尋ねるメールを送信して,事態を解決する行動をとっているのであり,それまでにも頻繁に被告側と連絡をとってきた原告P1が,メールを送信しただけで事態を放置しておいたとは考え難いところである。そして,この後の同月8日には,原告会社は再び被告に対して本件4品番の商品の修正見本を三澤に送付するよう依頼し,被告はそれに応じて修 正見本を提出するという再び納品に向けた行動をとっていることからすると,原告P1が供述するとおり,同月4日に面談が行われ,少なくともそこで交渉決裂の事態は回避されたと認めるのが相当である。 また,同日の面談で,被告社長が,被告専務に対し,受けた商売は損をしても生産納品しなければならない旨述べたことは原告P1の陳述書(甲9)によるもので あるところ,それまで原告会社との交渉を担当していた被告専務が一方的な取引条件の押しつけと感じて取引を中止しようとしたのに対し,上記のとおり,同日の面談で交渉決裂が回避されていることからすると,被告内においてそれまで原告会社との交渉を担当していた被告専務以外の力が働いたというのは合理的なことである。 また,上記の陳述書は本件本訴事件提起前に作成されたものであり,被告専務の父 親である被告社長の発言として迫真性に富むことに照らせば,上記陳述書の内容は信用することができ,前記のとおり認定するのが相当である。 もっとも,この面談で,単価等の取引条件の詳細が詰められるにまでは至ったと認めることはできない。この点について原告P1は,この面談時に被告専務と単価を合意したと述べ,後の同年8月7日の被告からの「納期チェックシート」の回答 価等の取引条件の詳細が詰められるにまでは至ったと認めることはできない。この点について原告P1は,この面談時に被告専務と単価を合意したと述べ,後の同年8月7日の被告からの「納期チェックシート」の回答 に被告側が原告会社が提示した単価を記載してきたのはそれを裏付けるものであると述べる(原告P1本人13ページ,16ページ)。確かに,原告P1が面談前のメールで単価の確認を求めていたことからすると,同年7月4日の面談で単価の話がされることは自然なことである。しかし,同年7月4日の面談では,交渉決裂になりかけていた事態が被告社長の発言もあって回避されるという方向転換が行われ たのであるところ,その際に単価等の取引条件まで合意に至ったと認めるのは,こ- 30 -の面談後にそこでの合意内容を確認するメールのやりとり等も残されていないことを考慮すると困難である。また,同年8月7日の被告からの「納期チェックシート」の回答に被告が訂正追加記載した部分は,被告が生産を受注する場合の条件を記載したものとは認められるが,同日時点で被告が原告会社からの提示額を受け入れるに至ったとはいえても,そこから同年7月4日の時点において,既にその単価 で合意に至っていたと認めることはできない。 ウザンパ関係での「SalesConfirmation」の送付について被告は,この電子メールによる送付を受けていないと主張する趣旨に見受けられるが,同年7月17日午後2時11分に原告会社から被告宛てに送信されたメー ル(甲39,甲49の3)に,「オーダー枚数を…添付致しました」という記載があることに照らせば,原告会社は, 「SalesConfirmation」(甲49の1及び2)を被告に送付したと認めるのが相当である。 2 争点1(準問屋契約の成 を…添付致しました」という記載があることに照らせば,原告会社は, 「SalesConfirmation」(甲49の1及び2)を被告に送付したと認めるのが相当である。 2 争点1(準問屋契約の成否)について(1) 原告会社は,三澤に関する取引について,取引条件(商品の寸法,色)が 確定し,これを踏まえて確定した数量・単価が記載された発注書が発行されたところ,被告から受注しないなどといった意向が示されていないことに照らせば,原告会社と被告との間には,被告を委託者,原告会社を準問屋として,被告が製造した本件4品番の商品を原告会社が三澤に供給するという準問屋契約が成立したと主張する。 (2) まず,上記1で認定した事実経過及び弁論の全趣旨によれば,ニット製品の製造供給に関する契約は,取引対象となる商品のサンプルを作製したり,これを展示会に出してそこから得られる情報を参考にしたりするなどして取引条件(商品の寸法,色等)を確定させていくのと並行して,数量・納期・単価についても確定させていくための交渉が行われた後,発注者側として確定したと考える内容の発注 書が発行され,これについて受注者側から応諾がされたり,特に異議が出されずに- 31 -発注書に沿った行動が取られたりすれば,発行された発注書の内容に従って契約が成立したといえるものの,受注者側から異議が出されれば,発注書の内容に沿った合意があることにはならないから,契約は成立したとはいえないと解すべきである。 この点,本件4品番の商品のうち,品番523の商品及び品番524の商品については平成27年6月15日に,品番499の商品及び品番502の商品について は同月24日に発注書が発行されているものの,被告は同年7月2日に受注しない意向を明確に示している。したがって 品については平成27年6月15日に,品番499の商品及び品番502の商品について は同月24日に発注書が発行されているものの,被告は同年7月2日に受注しない意向を明確に示している。したがって,原告会社が被告との間に上記準問屋契約が成立したと主張する本件4品番の商品に関する発注書が全て発行されるに至った平成27年6月24日の時点はもとより,同年7月2日の時点においても,原告会社と被告との間で原告会社が主張するような準問屋契約が成立したとは認められない。 もっとも,原告会社は,契約の成立時期として考えられる時点の一つとして,被告が受注しない意向を明確に示した同月2日の後であり,原告会社と被告との間で協議が行われた同月4日を指摘し,原告P1も同日の時点で契約が成立したと考えているふしがある(原告P1本人32,33,53ページ)。しかし,前記認定のとおり,同日の面談では,契約交渉の決裂自体は回避されているとしても,単価等 の取引条件の合意に至ったとまで認めることはできない。そして,被告は,同年8月7日には単価だけでなく,原告会社が契約内容として確定したと考えていた納期等についても異議を明確に唱えている。そうすると,原告会社と被告との間では,同年7月4日の時点はもとより,最後の最後まで原告会社が主張するような準問屋契約は成立しなかったと認められる。 (3) これに対し,原告会社は,取引条件(商品の寸法,色)についてはデザイン指示書のとおりに,数量については発注書のとおりにそれぞれ確定していたし,単価についても発注書の内容がそれまでに被告が提示したとおりのものになっていたことから確定していたとして,同年6月24日の時点で原告会社と被告との間に準問屋契約が成立したと主張する。しかし,前記1の認定のとおり,同月8日に被 れまでに被告が提示したとおりのものになっていたことから確定していたとして,同年6月24日の時点で原告会社と被告との間に準問屋契約が成立したと主張する。しかし,前記1の認定のとおり,同月8日に被 告が提示した単価は見本用として提示されたものであるし,品番523の商品及び- 32 -品番524の商品については見積りが提示された証拠もないから,本生産用の単価について合意に至っていたとは認められないし,その点を措くとしても,被告が発注書の発行から1ないし2週間程度の間に受注しない明確に意向を示している以上は,原告会社が確定したと考える契約内容について合意があったとはいえず,契約が成立したとはいえないから,原告会社の上記主張は採用できない。 3 争点2(契約締結上の過失の有無)について(1) 契約交渉の当事者には契約を締結しない自由があり,契約が締結に至らなかった場合でも,それによる不利益や契約交渉のコストは各当事者が自己負担するのが原則である。しかし,①一方当事者が相手方の信頼を誘発する一定の態度を示し,相手方がその態度を信頼することにより準備行動をするなどした場合には,信 頼を誘発した当事者は,相手方に対し,自己の先行行為に基づき,相手方の行動を是正する信義則上の義務を負うべきであり,さらに,②契約締結交渉が大詰めに至り,相手方が契約の成立についての期待権を有するに至ったと評価してもよいほどに形式的作業を残すだけになった場合には,正当な理由なく契約の成立を阻害する行為をしたり,契約交渉を一方的に打ち切ったりしない信義則上の義務を負うべき である。 (2) この点,原告会社は,被告が本件4品番の商品に関する発注書が発行された以降受注しない意向を示さなかったとして,契約が締結されるものであると誤認した原告会社の 務を負うべき である。 (2) この点,原告会社は,被告が本件4品番の商品に関する発注書が発行された以降受注しない意向を示さなかったとして,契約が締結されるものであると誤認した原告会社の期待を保護すべきであると主張する。しかし,被告は発注書が発行された1ないし2週間程度後の同月2日に受注しない意向を明確に示しているから, 原告会社の上記主張は前提を誤るものであり採用できない。 もっとも,前記1の認定のとおり契約交渉は決裂しかけたものの,同月4日の協議において決裂は回避されたことから,事態は再び契約交渉に向けて動き出したといえる。しかし,前記1の認定のとおり,単価等の取引条件について合意に至ったとは認められないから,被告は条件が折り合わない場合に契約を締結しない自由を なお有するというべきであり,その時点でも原告会社が契約の成立についての期待- 33 -権を有するに至ったと評価することはできない。 そうすると,被告が,交渉破談までの間に,正当な理由なく契約の成立を阻害する行為をしたり,契約交渉を一方的に打ち切ったりしない信義則上の義務を負ったと認めることはできない。 (3) もっとも,被告は,このように三澤が納期を指定した発注書が発行された 後に,一度は受注を拒絶する対応をしながら,同年7月4日の面談において交渉破談を回避し,再び契約交渉に向けて動き出したのであるから,被告としては契約成立のためには同年8月7日の態度からもうかがえるように納期,単価等について更に交渉を進める必要があると考えていたとしても,品番523の商品及び品番524の商品については従前発注書において指定されていた納期が迫っており,品番4 99の商品及び品番502の商品についてもそれほど猶予がなかった以上,被告は,原告会社から納期, の商品及び品番524の商品については従前発注書において指定されていた納期が迫っており,品番4 99の商品及び品番502の商品についてもそれほど猶予がなかった以上,被告は,原告会社から納期,単価等についての更なる交渉を求められない場合でも,契約成立に至ることができるか否かを早期に確定させるための交渉を自ら行う信義則上の義務があったというべきである。ところが,被告は,原告会社から同月8日に本件4品番の修正見本を三澤に送付するよう依頼され,それを同月13日に提出してい るものの,それ以降は,契約の成否を確定させるための行動を何らとらないまま時日を経過させているのであって,被告が品番523の商品及び品番524の商品についても必要であると考えていたビーカーと呼ばれる試験染色の工程を経るなどした場合に納品するための期間として約1か月程度を要する状態であったこと(甲5,弁論の全趣旨〔被告の準備書面(1)17,18ページ〕)に鑑みると,遅くとも同 日から1週間が経過した同月21日の時点では,上記義務を怠ったと評価すべきである。 これに対し,被告は,①品番499の商品及び品番502の商品については,商品の寸法が確定していなかったばかりか,数量等については具体的な交渉が行われていなかったことなどに照らせば,契約締結の準備段階にすら入っておらず信義則 上の義務を負うことはない,②品番523の商品及び品番524の商品についても,- 34 -契約締結の準備段階に入っていたといえるとしてもまだ契約交渉の初期の段階にあり,被告が同月2日に受注しない意向を明確に示し,それ以降も原告会社に契約が成立すると誤認させるような行動を取っていないことなどに照らせば,信義則上の義務を負わないと主張する。 しかし,前記1で認定した本件4品番の商品に しない意向を明確に示し,それ以降も原告会社に契約が成立すると誤認させるような行動を取っていないことなどに照らせば,信義則上の義務を負わないと主張する。 しかし,前記1で認定した本件4品番の商品に関する契約交渉過程に照らせば, 被告に信義則上の義務違反があるか否かは契約成立に向けた方向で仕切り直された同月4日の協議以後の事情を問題にすべきであるところ,被告が上記①に関して指摘する事情は,同月4日の協議以前のものばかりであるから,これをもって信義則上の義務違反がないかのようにいう被告の主張①は採用できない。次に,確かに,被告が,同年8月7日の時点で,単価だけでなく,材料混率や納期についても異議 を唱えていることに照らせば,契約成立に向けて詰めるべき点が多々あったことは確かであり,被告の主張②のとおり,被告は条件が折り合わない場合に契約を締結しない自由をなお有するというべきである。しかし,被告は,三澤が納期を指定した発注書までが発行された後に,一度は受注を拒絶する対応をしながら,同年7月4日の面談において交渉破談を回避し,再び契約交渉に向けて動き出したのであり, 納期までの期間が短かったことに照らせば,契約成立に至ることができるか否かを早期に確定させなかったことから生じたリスクを原告会社のみに負わせるのは相当ではないから,被告は,契約成立に至ることができるか否かを早期に確定させるための交渉を自ら行う信義則上の義務があったというべきである。 (4) 以上からすれば,被告は,原告会社に対し,信義則上の義務に違反して, 契約成立に至ることができるか否かを早期に確定させるための交渉を自ら行わなかったことにより生じた相当因果関係ある損害を賠償する責任を負うというべきである。 4 争点3(原告会社の損害額等)について( 至ることができるか否かを早期に確定させるための交渉を自ら行わなかったことにより生じた相当因果関係ある損害を賠償する責任を負うというべきである。 4 争点3(原告会社の損害額等)について(1) 代替生産費用の支払及び単価の上乗せ分の負担 原告会社は損害として,①品番502の商品を代替生産するための支払,②三澤- 35 -が品番499の商品,品番523の商品及び品番524の商品について振替製造先に支払った単価の上乗せ分の負担を損害として主張している。 この点,原告会社の主張によれば,上記②の3品番の商品についてはいずれも納期まで時間がなかったために単価の上乗せが生じたとされるところ,仮に,被告が同年7月13日以降速やかに原告会社に対して契約成立に至ることができるか否か を早期に確定させるための交渉を自ら持ち掛け,それから数日間で交渉が決裂するに至り,三澤が直ちに上記3品番の商品の製造を被告以外の業者に発注していたとしても,品番523の商品及び品番524の商品の納期が僅か約1か月後(平成27年8月24日)に迫っていたことに照らせば,いずれにせよ単価の上乗せが求められたのではないかという疑問を抱かざるを得ず,その疑問を払拭できるだけの証 拠もない。品番499の商品については,上記2品番の商品と比較すればタイトではなかった(納期は同年10月2日)とはいえ,まだ納期まで約2か月間あった段階で単価の上乗せが現に求められていることに照らせば,交渉決裂が約2ないし3週間程度早まっただけで単価の上乗せが生じることが回避できたとまではやはり認められない。 次に,原告会社の主張によれば,品番502の商品については,「国内スペースが無く,単価も高く合わ」なかったために代替生産をしたとされており,交渉決裂が約2週間早 はやはり認められない。 次に,原告会社の主張によれば,品番502の商品については,「国内スペースが無く,単価も高く合わ」なかったために代替生産をしたとされており,交渉決裂が約2週間早まっていれば「国内スペースが無」いという状況が生じていなかったり,単価の上乗せが生じることはなかったりしたと認めるに足りる証拠はない。 したがって,上記3で認定した義務違反行為と原告会社が主張する損害として主 張する代替生産費用の支払及び単価の上乗せ分の負担との間には相当因果関係を認めることができない。 (2) 逸失利益ア原告会社は,本件4品番の商品を被告が製造していた場合に原告会社が得られたはずの手数料報酬相当額を損害として主張する(別紙「三澤関係逸失利益 一覧表(原告会社主張)」の「原告会社の名において被告が受注したにもかかわら- 36 -ず,被告が製造供給をしなかったもの」項参照)。しかし,前記3(2)のとおり,被告は本件4品番の商品について契約を締結しない自由をなお有しており,被告が,交渉破談までの間に,正当な理由なく契約の成立を阻害する行為をしたり,契約交渉を一方的に打ち切ったりしない信義則上の義務を負ったと認めることはできないから,上記の手数料報酬相当額が上記3で認定した被告の信義則上の義務違反と相 当因果関係ある損害とは認められない。 イ次に原告会社は,中止になった品番501の商品(前記1(8)ア)及び三澤がデザイン指示書を送付した抄繊糸を使った2つの商品(前記1(6)エ)について,被告が製造していた場合に原告会社が得られたはずの手数料報酬相当額を損害として主張する(別紙「三澤関係逸失利益一覧表(原告会社主張))の「原告会 社の名において被告が受注した後,三澤,原告会社の合意の 造していた場合に原告会社が得られたはずの手数料報酬相当額を損害として主張する(別紙「三澤関係逸失利益一覧表(原告会社主張))の「原告会 社の名において被告が受注した後,三澤,原告会社の合意のもと,製造を中止したもの」項参照)。 しかし,品番501の商品は,三澤から発注書が発行された後,発注枚数の関係で中止となったのであるから,これが上記3で認定した被告の信義則上の義務違反と相当因果関係ある損害とは認められない。 また,抄繊糸を使った2つの商品(前記1(6)エ)については,そもそも何らの取引条件の協議に至らないまま立ち消えになったのであるから,これが被告の信義則上の義務違反と相当因果関係ある損害とは認められない。 ウ次に原告会社は,三澤からの信頼を失ったことにより,被告とは別に三澤関係で進行中であった商品(甲40)の受注を逸したとして,それにより得られ たはずの手数料報酬相当額を損害として主張する(別紙「三澤関係逸失利益一覧表(原告会社主張)」の「三澤から被告に発注予定であったが発注を中止したもの」項参照)。 しかし,交渉決裂が約2ないし3週間早まっていたとしても,いずれにせよ納期は迫っている段階であり,製造供給を拒絶した被告を紹介したのが原告会社である 以上,三澤からの信頼を失うことを回避できたとまでは認められないから,上記3- 37 -で認定した義務違反行為と原告会社が主張する損害として主張する逸失利益との間にも相当因果関係を認めることができない。 エ次に原告会社は,三澤からの信頼を失ったことにより,残余の抄繊糸を在庫を使った商品の受注を逸したとして,それにより得られたはずの手数料報酬相当額を損害として主張する(別紙「三澤関係逸失利益一覧表(原告会社主張)」の 「残余の抄繊糸和紙在 より,残余の抄繊糸を在庫を使った商品の受注を逸したとして,それにより得られたはずの手数料報酬相当額を損害として主張する(別紙「三澤関係逸失利益一覧表(原告会社主張)」の 「残余の抄繊糸和紙在庫を使えば製造できたであろう製品」項参照)。 しかし,これについては上記ウと同様のことが妥当するほか,そもそも抄繊糸を使用した商品については原告会社が平成28年に商品化しているのであるから,それ以前の平成27年7月頃の上記3で認定した被告の信義則上の義務違反と相当因果関係ある損害とは認められない。 (3) 手数料報酬原告会社は,被告を三澤に紹介し,三澤から原告会社を経由して本件4品番の商品が発注されるように段取りを行い,さらにその後の各種連絡を行ったとして,商法512条を根拠として手数料報酬を請求する。しかし,原告会社のこれらの行為は,実質的には仲立営業としての性質を有するものであるから,商法550条の趣 旨に照らして,契約締結に至って初めて報酬を請求し得ると解するのが相当である。 したがって,契約締結に至ったと認められない本件においては,原告会社は上記の報酬を請求することはできない。 5 争点4(製造物供給契約の成否)について原告会社は,ザンパに関する取引について,被告の提示どおり確定した単価等が 記載された発注書が発行されたところ,被告から受注しないなどといった意向が示されていないことに照らせば,原告会社と被告との間には,原告会社を発注者,原告会社を受注者として,被告が製造した本件2品番の商品を原告会社に供給するという製造物供給契約が成立したと主張する。 確かに,原告会社が,一旦は被告が同年6月28日に提示した単価より低額の単 価としたい意向を示したものの,同年7月1日には被告の提示額どおりの単価で進 う製造物供給契約が成立したと主張する。 確かに,原告会社が,一旦は被告が同年6月28日に提示した単価より低額の単 価としたい意向を示したものの,同年7月1日には被告の提示額どおりの単価で進- 38 -める意向を示し,その後同月17日に発行した発注書でも被告の提示額どおりの単価を設定したことに照らせば,上記発注書の発行書をもって単価については実質的に確定した形にはなったと認められる。しかし,被告が同月2日に原告会社に連絡した内容は,品番523と品番524の商品について受注を拒絶するとともに,「それ以外に関しては生産枠がないので」受注できないというものであり(前記1 (10)),ザンパに関する取引が三澤に関する取引と同時並行で行われていたことに照らせば,この受注拒絶は,三澤に関する取引だけでなくザンパに関する取引もその対象とするものであり,契約交渉が決裂しかけたといえるところ,被告は,上記発注書を受け取った以降,受注しない意向を明確に示したわけではないものの,さりとて,受注する意向を明確に示したわけではなく,受注することを前提とした行 動を取っていたわけでもない。そして,被告が同年8月7日に三澤に関する取引に関して異議を唱えているところ,原告会社と被告との間で三澤に関する取引と同時並行で商談が進められていたザンパに関する取引に関してだけはこれを進めるといった話が出ていたわけでもない。したがって,上記発注書が発行された平成27年7月17日の時点はもとより,それ以降の時点においても,原告会社と被告との間 で原告会社が主張するような製造物供給契約が成立したと認めることはできない。 6 争点5(契約締結上の過失の有無)について(1) 上記3のとおり,契約交渉の当事者は,契約締結交渉が大詰めに至り,相手方が契約の成立 ような製造物供給契約が成立したと認めることはできない。 6 争点5(契約締結上の過失の有無)について(1) 上記3のとおり,契約交渉の当事者は,契約締結交渉が大詰めに至り,相手方が契約の成立についての期待権を有するに至ったと評価してもよいほどに形式的作業を残すだけになった場合には,正当な理由なく契約の成立を阻害する行為を したり,契約交渉を一方的に打ち切ったりしない信義則上の義務を負う。 この点,被告が平成27年7月2日に原告会社に連絡した内容に照らせば,三澤に関する取引だけでなくザンパに関する取引もその契約交渉が決裂しかけたとはいえ,主として問題になっていたのは三澤に関する取引である。また,原告会社が,同月1日に被告に対して単価については被告の提示を受け入れる形で進める旨連絡 した以降,被告から異議が明確に唱えられていたわけではなかった。こうした状況- 39 -下で,原告会社が同月17日に発行した発注書では被告の提示額どおりの単価を設定し,原告会社が決定したと連絡したデザインも,色の構成は当初の指示のとおりであり,寸法も当初の指示のあった寸法やそれに沿って作製されたサンプルの寸法を微修正するにとどまるものであったこと(甲74)に照らせば,原告会社としては契約成立への期待が確実なものと評価できる段階に至ったといえるから,被告は, 正当な理由なく契約の成立を阻害する行為をしたり,契約交渉を一方的に打ち切ったりしてはならない信義則上の義務があったというべきである。ところが,被告は,発注書の発行による契約の申込みに応じず,三澤に関する取引が決裂に至る中でザンパに関する取引も決裂に至らせているところ,そこに正当な理由があるとは認められず正に一方的に契約交渉を打ち切ったといえるから,上記義務を怠ったといえ る。 澤に関する取引が決裂に至る中でザンパに関する取引も決裂に至らせているところ,そこに正当な理由があるとは認められず正に一方的に契約交渉を打ち切ったといえるから,上記義務を怠ったといえ る。 (2) これに対し,被告は,①商品の寸法が決定しておらず,契約締結の準備段階に至っていない,②仮に,契約締結の準備段階に至っていたとしても,同年7月2日に交渉が決裂した以降,同月17日の原告会社からのメールには回答しておらず,原告会社が提示した単価で了承する意向を示したわけでもないなど,原告会社 に契約が成立すると誤認させるような行動を取っていないことなどに照らせば,信義則上の義務を負わないと主張する。 しかし,被告が商品の寸法が決定していなかった根拠として指摘する甲17,18は三澤に関する取引のデザイン指示書であるから,被告の主張は根拠を欠く主張である上,被告は,ザンパに関する取引のデザイン指示書の内容について,異議を 述べることなくサンプルを作製しており,その最終的に原告会社が指示した寸法はそのサンプルを踏まえて微修正するにとどまるものであるから,商品の寸法も実質的には確定していたと見るべきである。また,被告は,原告会社からの同年7月1日における単価については被告の提示を受け入れる形で進める旨の連絡について特段の反応を示していないものの,先に被告からの提示があって原告会社がこれを了 承するという経緯をたどっている以上,被告が特段の反応を示していないからとい- 40 -って,単価について実質的に合意が整ったと見ることができないことにはならない。 そして,その後一旦は契約交渉が決裂しかけたものの,改めて被告の提示を受け入れる形での発注書が発行されており,被告がこれについても特段の反応を示していないからといって,やはり単価 ことにはならない。 そして,その後一旦は契約交渉が決裂しかけたものの,改めて被告の提示を受け入れる形での発注書が発行されており,被告がこれについても特段の反応を示していないからといって,やはり単価について実質的に合意が整ったと見ることができないことにはならない。したがって,被告が指摘する①及び②の事情は,原告会社が 契約成立についての期待権を有するに至ったと評価できるとの上記(1)の認定を左右するものではない。 7 争点6(原告会社の損害額)について契約成立への期待を侵害しないようにすべき義務の違反が認められた場合における契約成立への期待の下で被害者が自己の財産を運用することにより得たであろう 財産的利益については,上記義務違反行為と相当因果関係のある損害というべきである。この点,上記6のとおり,被告は,本件2品番の商品に関して,原告会社の契約成立への期待を侵害しないようにすべき義務を負っていたにもかかわらずこれを怠っているところ,原告会社は,被告から供給を受けた本件2品番の商品をザンパに転売することにより,合計21万8160円(品番Z9467の商品について は,被告からの仕入予定単価1700円とザンパへの転売予定単価2050円〔甲47〕の差額は350円,仕入予定枚数は200枚であり,品番Z9468の商品については,被告からの仕入予定単価1800円とザンパへの転売予定単価2130円〔甲47〕の差額は330円,仕入予定枚数は400枚であった。)を得たであろうから,同額が被告の義務違反行為と相当因果関係のある損害額である。 8 争点7(被告専務の言動の不法行為性の有無)について原告P1の証言(原告P1本人18,19ページ)によれば,被告専務は,原告P1に対し,平成27年8月8日には,顔を近付けて怒鳴ったり,「 8 争点7(被告専務の言動の不法行為性の有無)について原告P1の証言(原告P1本人18,19ページ)によれば,被告専務は,原告P1に対し,平成27年8月8日には,顔を近付けて怒鳴ったり,「もう帰れや」と言ったりし,同月11日には,手を上げて襲い掛かるような態度を取ったという。 これに対し,被告専務の証言によれば,そのような言動を取ったことはないことは もとより,そのように受け取られる言動も取っていないという(証人被告専務13,- 41 -14,40ページ)。このように両名の証言は真っ向から対立しているところ,原告P1の証言を的確に裏付ける証拠があるわけではないなど,被告専務の証言に反する原告P1の証言を自然かつ合理的なものとして信用できるといえるだけの事情はない。 そして,仮に,原告P1の証言どおりの言動を被告専務が取っていたとしても, 原告P1の証言(原告P1本人17,18ページ)によれば,同月8日の被告専務の発言は,「社長に聞いたら専務に聞けと言うし,専務に聞いたら社長に聞けと言うのは,どういうふうになってるんですか」,「ちょっといい加減だなあ」という原告P1自身のやや不用意な発言に端を発したものであるし,同月11日についても,被告専務が原告P1に対し直接有形力を行使したわけではない。また,被告専 務の同月8日及び同月11日の言動は,原告P1が三澤に関する取引の契約交渉のために被告事務所を訪れた際のものであるところ,原告会社と被告との間の取引がスムーズに進展しなかった原因の一端には,原告会社が被告の意思を十分に確認しなかったこともあると見受けられ,その原告会社の代表者である原告P1が協議にやって来た際に,発言が過激になったり態度が荒々しいものになったりすることも 致し方ない面があるといえる。以上の 認しなかったこともあると見受けられ,その原告会社の代表者である原告P1が協議にやって来た際に,発言が過激になったり態度が荒々しいものになったりすることも 致し方ない面があるといえる。以上の事情に照らせば,仮に,原告P1の証言どおりの言動を被告専務が取っていたとしても,被告専務の言動はやや不穏当ではあるとしても社会的相当性を欠くとまではいえないから,その言動が不法行為を構成するとは認められない。 9 争点9(本件製造方法の情報の営業秘密該当性の有無)及び争点10(不正 使用行為等の有無)について被告が営業秘密であると主張する本件製造方法の情報は,①使用する抄繊糸に関する情報(別紙「営業秘密目録」第1記載の情報),②編み方・洗い方・染め方といった具体的な製造工程に関する情報(別紙「営業秘密目録」第2ないし第6記載の情報),③製造された製品の取扱方法に関する情報(別紙「営業秘密目録」第7 記載の情報)に大別されるところ,これらの情報は,そもそも営業秘密該当性が認- 42 -められない情報であるか,又は営業秘密該当性はともかくとして原告らが被告から示されたり使用したりしたとは認められない情報であると判断した。以下,詳述する。 (1) 別紙「営業秘密目録」第1記載の情報についてア 「1 原糸」の「(3) 性能」,「2 組成内容等」(原糸を除く)及び 「4 効果」の情報についてこれらの情報は,被告が製造した和紙混ニット製品(甲72の2,85,乙30)の商品下げ札に表示されている組成内容及び性能(甲72の2,乙30の2及び3)であるから,被告の管理下以外では一般的に入手することができない状態にあるとはいえない。したがって,非公知性を欠く。 イ 「3 撚糸」の「(2) 撚糸方法」及び「(3) 撚糸構成 2及び3)であるから,被告の管理下以外では一般的に入手することができない状態にあるとはいえない。したがって,非公知性を欠く。 イ 「3 撚糸」の「(2) 撚糸方法」及び「(3) 撚糸構成」の情報についてこれらのうち「(2) 撚糸方法」の情報については,一般的な撚糸の方法であるところ(甲77及び78),撚糸企業において被告が製造した和紙混ニット製品を分析すれば,その製品が「(2) 撚糸方法」の撚糸方法により,「(3) 撚糸構成」の撚糸構成をとったものであることが判明すると認められる(証人被告専務41ペー ジ)。したがって,これらの情報は,被告の管理下以外では一般的に入手することができない状態にあるとはいえないから,非公知性を欠く。 ウ 「1 原糸」の「(1) メーカー」及び「(2) 商品名」並びに「3 撚糸」の「(1) 撚糸企業」の情報)原告会社が下請けに製造させた和紙混ニット製品には,同情報のうち「1 原 糸」の「(1) メーカー」製の「(2) 商品名」のものを用いて「3 撚糸」の「(1)撚糸企業」が撚糸したものが使用されていることについては当事者間に争いがない。 もっとも,その和紙糸を調達したのが,被告が上記和紙糸を開発する際に「1 原糸」の「(1) メーカー」製の「(2) 商品名」の存在を教えたP4が取締役を務めるイシハラであることについても当事者間に争いがない。また,前記1(15)のとおり, イシハラのP4は,その和紙糸が「3 撚糸」の「(1) 撚糸企業」が撚糸したもの- 43 -であるという情報も知っていたと認められる。そして,前記1(15)のとおり,原告会社が下請けに製造させた和紙混ニット製品に用いた糸は,イシハラに調達を依頼したものである。そうすると,原告会社が下請けに製造させた和紙混 知っていたと認められる。そして,前記1(15)のとおり,原告会社が下請けに製造させた和紙混ニット製品に用いた糸は,イシハラに調達を依頼したものである。そうすると,原告会社が下請けに製造させた和紙混ニット製品に,イシハラが調達した「1 原糸」の「(1) メーカー」製の「(2) 商品名」のものを用いて「3 撚糸」の「(1) 撚糸企業」が撚糸したものが使用されているからとい って,原告会社において,被告から示された上記情報が使用されたとは認められない。したがって,仮に,上記情報に営業秘密該当性が認められたとしても,その不正使用行為があったとは認められない。 (2) 別紙「営業秘密目録」第2記載の情報について被告は原告らにこれを開示したと主張する。しかし,その旨供述する被告専務の 供述は具体性を欠く(証人被告専務18ページ)上,被告が本件の営業秘密の秘密管理性や開示の根拠とする原告P1に交付した品質検査報告書の写し(甲25)に記載されている情報でもないから,原告らが同記載の情報を被告から示されたとは認められないし,仮に開示されていたとしても,原告P1に守秘義務を課すなど,同情報が営業秘密であることを認識できるようにしていたと認めるに足りる証拠は ないから,秘密管理性を欠く。 (3) 別紙「営業秘密目録」第3記載の情報について被告自身も原告らにこれを開示したなどと主張しているわけではなく,この事実を認めるに足りる証拠はないし,上記品質検査報告書の写しに記載されている情報でもない。したがって,原告らが同記載の情報を被告から示されたとは認められな いし,原告らに同記載の情報が営業秘密であることを認識できるようにしていたとも認められないから,秘密管理性を欠く。 (4) 別紙「営業秘密目録」第4及び第5記載の情報につ たとは認められな いし,原告らに同記載の情報が営業秘密であることを認識できるようにしていたとも認められないから,秘密管理性を欠く。 (4) 別紙「営業秘密目録」第4及び第5記載の情報について被告は,原告会社からデザイン指示書(乙25ないし27)が送付されてきた際に同記載の情報を開示したと主張するが,その旨供述する被告専務の供述は具体性 を欠く(証人被告専務19ページ)し,上記品質検査報告書に記載されている情報- 44 -でもないから,原告らが同記載の情報を被告から示されたとは認められないし,仮に開示されていたとしても,原告P1に守秘義務を課すなど,同情報が営業秘密であることを認識できるようにしていたと認めるに足りる証拠はないから,秘密管理性を欠く。 (5) 別紙「営業秘密目録」第6記載の情報について 被告自身も原告らにこれを開示したなどと主張しているわけではなく,この事実を認めるに足りる証拠はないし,上記品質検査報告書の写しに記載されている情報でもないばかりか,P4が染め方が分からないとして被告に尋ねてきたこと(前記1(15))に照らせば,むしろ原告らは同記載の情報を被告から示されていないと認められ,したがって,同情報を使用したとも認められない。 (6) 別紙「営業秘密目録」第7記載の情報について同情報は,被告が製造した和紙混ニット製品(甲72の2,85,乙30)の商品下げ札に表示されている性能(甲72の2,乙30の2及び3)を表示する場合の一般的な表示記号(乙42)であるから,被告の管理下以外では一般的に入手することができない状態にあるとはいえない。したがって,非公知性を欠く。 (7) 一般不法行為の成否被告は,仮に本件製造方法の情報の営業秘密該当性が肯定されなかったと は一般的に入手することができない状態にあるとはいえない。したがって,非公知性を欠く。 (7) 一般不法行為の成否被告は,仮に本件製造方法の情報の営業秘密該当性が肯定されなかったとしても,原告らが本件製造方法の情報を利用してニット製品を製造したことは,これを利用してニット製品を製造してはならないという原告P1と被告との間の委託信任関係に背くものであるから,原告P1との関係では一般不法行為を構成すると主張する。 しかし,まず,原告P1と被告との間で,本件製造方法の情報を使用してニット製品を製造してはならないとの合意がされたことを認めるに足りる証拠はない。また,市場における競争は本来自由であるべきことに照らせば,不正競争行為に該当しない行為については,当該行為が,市場において利益を追求するという観点を離れて,殊更に相手方に損害を与えることのみを目的としてなされたような営業の自 由の濫用と見るべき特段の事情が存在しない限り,一般不法行為を構成することは- 45 -ないというべきである。この点,被告の主張は,結局のところ,原告P1が営業秘密の不正使用という不正競争行為をしたという点に帰着するものにすぎず,その主張を前提としても上記特段の事情があるとは認められない。したがって,原告らが本件製造方法の情報を利用してニット製品を製造したことが一般不法行為を構成するという被告の主張は採用できない。 10 争点12(本件請求拡張の不法行為性の有無)について訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは,当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係(以下「権利等」という。)が事実的,法律的根拠を欠くものである上,提訴者がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴 おいて提訴者の主張した権利又は法律関係(以下「権利等」という。)が事実的,法律的根拠を欠くものである上,提訴者がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度の 趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものと解すべきである(最高裁昭和63年1月26日第三小法廷判決・民集42巻1号1ページ,以下「昭和63年判決」という。)。この理は,拡張される部分が新たな訴え提起としての性質を有する請求の拡張においても異なるものではない。 これを本件請求拡張についてみると,上記6及び7のとおり,ザンパに関する取 引について請求を拡張した部分については,全て理由があった。また,三澤に関する取引について請求を拡張した部分については,結果的に理由がなかったものの,これは主として義務違反行為と原告会社が主張する損害との間に相当因果関係がないという法的な判断の結果として導かれる結論であり,通常人であれば上記部分につき事実的,法律的根拠を欠くことを容易に知り得たとは認められない。したがっ て,本件請求拡張が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くとは認められない。 11 争点14(本件反訴事件1及び本件反訴事件2の提訴の不法行為性の有無)について反訴は,係属中の訴訟手続内で被告の立場にある者から原告の立場にある者を相 手方として提起する係争中の訴えであるから,昭和63年判決の理は,反訴におい- 46 -ても異なるものではない。 そこで本件反訴事件1についてみると,本件反訴事件1に係る請求は上記9のとおり理由がなく,被告の主張した権利等は,事実的,法律的根拠を欠くものであったと言わざるを得ない。しかし,原告会社が下請けに製 そこで本件反訴事件1についてみると,本件反訴事件1に係る請求は上記9のとおり理由がなく,被告の主張した権利等は,事実的,法律的根拠を欠くものであったと言わざるを得ない。しかし,原告会社が下請けに製造させたニット製品は,被告が営業秘密であると主張する情報の一部と同じ内容の情報を利用して製造された ものであることは当事者間に争いがない上,営業秘密該当性の要件解釈やこれを踏まえた不正使用行為の有無の認定は必ずしも容易ではなく,通常人であれば上記権利等につき事実的,法律的根拠を欠くことを容易に知り得たとは認められない。したがって,本件反訴事件1の提訴が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くとは認められない。 次に本件反訴事件2について見ると,本件反訴事件2に係る請求も上記10のとおり理由がなく,被告の主張した権利等は,事実的,法律的根拠を欠くものであったと言わざるを得ない。しかし,原告会社の主張は,最終的には法的位置付けが明確にされたものの,被告が本件反訴事件2を提訴した時点では不明確であったことに照らせば,通常人であれば上記権利等につき事実的,法律的根拠を欠くことを容 易に知り得たとは認められない。したがって,本件反訴事件2の提訴が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くとは認められない。 12 結論以上の次第で,その余の争点について判断するまでもなく,原告会社請求1については,主位的請求は理由がないから棄却するが,予備的請求は,不法行為に基づ く損害賠償金21万8160円及びこれに対する不法行為の日の後である平成28年1月21日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある(なお,原告会社は,遅延損害金について商事法定利率である年6分の割合による支払請 の後である平成28年1月21日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある(なお,原告会社は,遅延損害金について商事法定利率である年6分の割合による支払請求をするが,本件において認められる被告の債務は,不法行為に基づく損害賠償債務であり,商法514条の「商行為によって生じた債 務」には当たらないから,遅延損害金については民法所定の年5分の割合によるべ- 47 -きである。)からこの限度で認容し,原告会社請求2,原告P1請求及び被告の反訴請求(被告請求1及び被告請求2)についてはいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官 髙松宏之 裁判官 野上誠一 裁判官 - 48 -大門宏一郎- 49 -(別紙)営業秘密目録(省略) - 50 -(別紙)三澤関係代替生産費用の支払及び単価の上乗せ分の負担一覧表(原告会社主張) 1195 中国へ原料糸を送った際の運賃及び梱包手数料4,349甲第10号証-2 - 50 -(別紙)三澤関係代替生産費用の支払及び単価の上乗せ分の負担一覧表(原告会社主張) 1195 中国へ原料糸を送った際の運賃及び梱包手数料4,349甲第10号証-2 1196 同上77,486甲第10号証-3 1197 同上67,791甲第10号証-4 1198 同上34,703甲第10号証-5 1199 同上35,429甲第10号証-6 1163 特別単価上乗による三澤に対する損害金及び付属代93,311甲第10号証-7 1164 同上82,943甲第10号証-8 1165 原料糸残kg数20,347甲第10号証-9 1175 付属類、印字代14,234甲第10号証-10 1200 中国より製品を入荷した際関税、運賃、取扱い手数料等120,204甲第10号証-11 24803 中国より代替製品を入荷した際の国内関税、運賃、取扱い手数料等72,467甲第10号証-12 24806 付属類、印字代46,130甲第10号証-15 24807 特別単価上乗による三澤に対する損害金71,280甲第10号証-16 24808 納期遅れと中国生産に振り替えたため必要となった付属類の取替え費用73,954甲第10号証-13 24809 中国へ原料糸を送った際の運賃と中国入関税金28,404甲第10号証-17 24832 中国へ送った原料糸の中国入関税金13,781甲第11号証-2 1711 付属類代金8,715甲第12号証-2 1309 原告会社が三澤に代替品を納品をした際の運賃14,904甲第12号証-3 以上 - 51 -(別紙)三澤関係逸失利益一覧表(原告会社主張)品番三澤からの予定受注枚数(枚) 甲第12号証-3 以上 - 51 -(別紙)三澤関係逸失利益一覧表(原告会社主張)品番三澤からの予定受注枚数(枚)被告(名義上は原告会社)から三澤への供給単価(円)原告会社の想定手数料報酬(円)消費税(円)原告会社の手数料報酬(税込み)(円)160-98499 1,500112,5009,000121,500160-98502 1,90099,7507,980107,730160-98523 1,400126,00010,080136,080160-98524 1,400126,00010,080136,080160-98501 2,00060,0004,80064,800160-99010(16SS-SE1) 3,500105,0008,400113,400160-99011(16SS-SE2) 3,500105,0008,400113,400三澤から被告に発注予定であったが発注を中止したもの160-99007 2,440128,10010,248138,348残余の抄繊糸和紙在庫を使えば製造できたであろう製品-3,5432,4501,302,053104,1641,406,217原告会社の名において被告が受注したにもかかわらず、被告が製造供給をしなかったもの原告会社の名において被告が受注した後、三澤、原告会社の合意のもと、製造を中止したもの 以上 後、三澤、原告会社の合意のもと、製造を中止したもの。
▼ クリックして全文を表示