平成29(ワ)1752 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成31年2月28日 大阪地方裁判所
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判決文本文34,009 文字)

- 1 -平成31年2月28日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成29年(ワ)第1752号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成30年12月13日判決原告株式会社グランパレコートドール 同訴訟代理人弁護士横山晃崇被告株式会社A水産同訴訟代理人弁護士奥島直道 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,1000万円及びこれに対する平成28年10月7日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は,後記本件特許の特許権者である原告が,その専用実施権者であった被告に対し,特許専用実施権許諾契約上の実施義務及び報告義務に被告が違反したとして,債務不履行に基づき,1000万円の損害賠償及びこれに対する請求日の翌日 である平成28年10月7日から支払済みまで商事法定利率である年6分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲の証拠又は弁論の全趣旨により容易に認められる事実。なお,本判決における書証の掲記は,枝番号の全てを含むときはその記載を省略する。) (1) 当事者- 2 -ア原告は,不動産関連の賃貸業等を目的とする会社である。 イ被告は,漁業及び水産養殖業,水産物の加工及び販売を営む会社である(乙40)。 (2) 原告への本件特許権の譲渡ア株式会社B商店(以下「B商店」という。)は,以下の特許(以下「本 件特許」といい,本件特許に係る発明を「本件発明」という。)について特許登録を 0)。 (2) 原告への本件特許権の譲渡ア株式会社B商店(以下「B商店」という。)は,以下の特許(以下「本 件特許」といい,本件特許に係る発明を「本件発明」という。)について特許登録を受け,本件特許に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を取得した(以下,本件特許の出願の願書に添付された明細書及び図面をまとめて「本件明細書」という。)(甲2)。 特許番号特許第4686669号 発明の名称稚魚を原料とするちりめんの製造法及びその製品出願日平成17年8月8日登録日平成23年2月25日特許請求の範囲(請求項2以下は省略)【請求項1】 3パーセント~10パーセントの食塩水でボイルした稚魚 を5℃~-1℃の温度帯で熟成期間を約48時間設けて氷冷熟成し,その後-23℃~-25℃で凍結し,解凍後真空包装し,加圧加熱処理することを特徴とする稚魚を原料とするちりめんの製造法。 イ B商店は,平成23年7月6日,原告に対し,本件特許権を譲渡し,その旨の登録がされた(甲1,14)。 (3) 原告と被告との間の特許専用実施権許諾契約ア原告は,平成26年3月28日,被告との間で,本件特許権について,次の内容の「特許専用実施権許諾契約」(以下「本件契約」という。)を締結し,被告を専用実施権者とする専用実施権の設定登録がされた(甲3,乙39)。 (ア) 権利の許諾(第1条) 甲(原告。以下「原告」と表記する。)は本件特許権についてその範囲全- 3 -部にわたる専用実施権を乙(被告。以下「被告」と表記する。)に許諾する(第1項)。 (イ) 対価及び支払方法(第3条)本契約第1条に定める専用実施権の許諾の対価として,被告は,原告に次に定めるイ にわたる専用実施権を乙(被告。以下「被告」と表記する。)に許諾する(第1項)。 (イ) 対価及び支払方法(第3条)本契約第1条に定める専用実施権の許諾の対価として,被告は,原告に次に定めるイニシャルペイメント及びランニング実施料を支払うものとし,これらに 消費税を加算して原告の指定する銀行口座に振込んで支払う。なお,銀行振込手数料は被告の負担とする。 a イニシャルペイメント 0円b ランニング実施料(a) 販売した本件特許権に基づく製品(以下「本製品」という。)の 販売価格のうち2%~5%の額とし,日産販売数が5000個未満の場合 2%5000個以上1万個未満の場合 3%1万個以上の場合 5%とする。 ※ (a)のランニング実施料は2年間とし3年目より原告及び被告は誠 意を持って協議して見直す事とする。 (b) 被告は,支払期日までに前項の実施料を支払わないときは,支払日の翌日から支払済に至るまでその日数に応じ,年6%で計算した延滞金を原告に対して支払わなければならない。但し,本延滞金の定は第15条による原告の解除権を妨げない。 支払期日毎月末日限り,前月分を支払う。 (ウ) 実施報告(第4条)a 被告は,毎月末日限り,その前月末日までに販売した本製品の形式,単価,販売数量,販売先,総販売額,実施料及び消費税を記載した実施報告書を原告に送付するものとする(第1項)。 b 被告は,当該期間に本製品の販売実績がない場合も,その旨を記載- 4 -した報告書を原告に送付しなくてはならない(第2項)。 (エ) 表示(第7条)被告は,本契約の期間中,本契約に基づいて,被告が製造・販売する本製品に本件特許権の表示をつ 4 -した報告書を原告に送付しなくてはならない(第2項)。 (エ) 表示(第7条)被告は,本契約の期間中,本契約に基づいて,被告が製造・販売する本製品に本件特許権の表示をつけることができる。 (オ) 契約の解除(第15条) a 原告は,被告が本契約に違反したとき,及び被告において次の事由が生じたときは何らの催告を要せず本契約を解除することができる。被告が原告の書面による承諾なしにその営業を停止した場合も同様とする(第1項)。 (a) 手形,小切手の不渡事故を起こしたとき。 (b) (以下略) b 原告及び被告は,相手方が信頼関係を著しく損なう行為を行ったときは,それぞれ何らの催告を要せず本契約を解除することができる(第2項)。 (カ) 損害賠償(第16条)a 原告及び被告は,相手方の本契約違反により損害を被った場合,相手方に対して損害の賠償を請求することができる(第1項)。 b 前項において被告の本契約違反が第1条,第8条(注:秘密保持),第9条(注:改良技術),第14条(注:権利化の禁止),第15条,第17条(注:解除による契約終了後の義務)の各違反である場合,原告の損害額は,金壱千万円と予定する。但し,原告の被った損害額が同金額より大きい場合,原告がその差額の請求をすることを妨げない(第2項)。 (キ) 契約期間(第18条)本契約の有効期間は,本契約締結の日から本件特許権の消滅の日までとする。 イ被告は本件特許権についての専用実施権を放棄し,平成29年2月6日,上記アの専用実施権の設定登録の抹消登録手続の申請をし,その後,その旨の抹消 登録がされた(乙39)。 - 。 イ被告は本件特許権についての専用実施権を放棄し,平成29年2月6日,上記アの専用実施権の設定登録の抹消登録手続の申請をし,その後,その旨の抹消 登録がされた(乙39)。 - 5 -(4) 被告による製品の製造販売本件契約の締結後,被告は,「オレの惚れたしらす」(甲21),それを用いた「オレの惚れたしらす丼セット」(甲9,乙7,31)という製品(以下「被告製品」という。)を製造販売した。 (5) 原告による解除通知 原告は,被告に対し,平成27年1月30日付け書面(乙25)以降,数回にわたり,被告が本件特許を実施していないこと等を理由として,本件契約を解除する旨を通知した。 3 争点(1) 実施義務違反の有無 ア被告製品の製造工程が本件発明の製造工程に反するものか(争点1)イ被告製品の製造販売が実施義務の履行として十分なものでなかったか(争点2)(2) 報告義務違反の有無(争点3)(3) 損害の有無及び額(争点4) 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(被告製品の製造工程が本件発明の製造工程に反するものか)について(原告の主張)(1) 被告の実施義務 特許の専用実施権設定契約において,実施権者は,実施の権利を有するのみならず,一定の場合には,明文の規定がなくても実施義務を負う。すなわち,実施義務が否定されるとすれば,特許権者は実施料が払われないにもかかわらず,特許料を負担し,特許権を有効に利用する機会を奪われることになるから,特許の内容,実施料の支払形態,実施権者の実施能力等から黙示の実施義務の認められる場合が あると解すべきである。 - 6 -本件特許は,ちりめんの製造法と同製造法により製造される製品 ら,特許の内容,実施料の支払形態,実施権者の実施能力等から黙示の実施義務の認められる場合が あると解すべきである。 - 6 -本件特許は,ちりめんの製造法と同製造法により製造される製品に関する特許であり,水産物の加工販売を業とする被告が,技術面からも資産面からも容易に実施できるものであるし,実施料はイニシャルペイメントが0円で,販売数に応じて支払われるランニング実施料であること,さらに原告は本件契約の締結に当たり,被告に対し,本件特許に基づく製品(本件特許製品)の製造には,専用の冷蔵庫及び 冷凍庫の設置が不可欠であることを伝えていたことからすると,被告は本件契約の解釈により,又は黙示の合意に基づき,本件特許の実施義務(本件特許製品を製造販売する義務)を負うというべきである。したがって,被告が本件特許を実施できるにもかかわらず実施しなかった場合,上記実施義務に違反したとして債務不履行に基づく損害賠償責任を負う。 (2) 被告の実施義務違反ア被告は被告製品を製造するに当たり,遠赤外線で7分間乾燥させていたところ(甲15),そのように乾燥すれば,水分や旨味成分が飛んでしまうから,氷冷熟成などできるはずはなく,本件発明の製造工程に従っていないから,実施義務に違反している。 イまた,被告はボイルの後,少し乾燥させるにとどまっているなどと主張しているが,本件明細書によれば,乾燥や水分を飛ばす工程や,冷ます工程は入っておらず,特許製品の実施工程は書面上の記載から客観的に決定すべきである。そして,「5℃~-1℃で冷凍する」工程はしらすを氷冷熟成させる目的で行われるところ,ボイルした稚魚を乾燥させれば,タンパク質等の成分が変化し,結果とし て出てくる旨味や風味が異なるものになるから,乾燥等の工程を入 で冷凍する」工程はしらすを氷冷熟成させる目的で行われるところ,ボイルした稚魚を乾燥させれば,タンパク質等の成分が変化し,結果とし て出てくる旨味や風味が異なるものになるから,乾燥等の工程を入れるのであれば,本件明細書に明示されているべきであるが,特にそのような明示はされていない。 なお,被告製品のイノシン酸の含有量を検査したところ,しらす100g当たり41㎎しか含まれていなかった(甲18)。本件特許を使用し製造されたしらす100g当たりのイノシン酸の含有量は110~120㎎(甲20の試作品では95 ㎎)であるから,被告製品は本件特許を使用して製造されたものではない。 - 7 -したがって,ボイルした稚魚を乾燥するなどすると,本件発明の製造工程に従って製造したことにならず,本件特許の実施義務に違反することになる。 ウさらに,本件特許製品が他のしらす製品と製造工程において違うところは,5℃~-1℃で48時間かけて氷冷熟成する点にある。したがって,本件特許製品の製造には専用の冷蔵庫及び冷凍庫の設置が不可欠であり,それを備え,それ を利用し,5℃~-1℃で48時間かけて氷冷熟成するという工程を経る必要があるが,そもそも被告はこれを設置していなかったから,本件特許の実施義務に違反したことになる。 エそして,以上の義務違反により,原告の被告に対する信頼関係は著しく損なわれたから,本件契約の第15条第2項に基づく解除は有効であり,第16条 第2項で予定された損害賠償の額により損害賠償を請求することができる。 (3) 被告の下記主張は否認し,争う。被告が主張する工程を入れると,乾燥が進んで十分な水分がなくなってしまい,冷蔵庫に入れる前に氷冷熟成ができない状態になりかねない。 (被告の主張) (1) 被 告の下記主張は否認し,争う。被告が主張する工程を入れると,乾燥が進んで十分な水分がなくなってしまい,冷蔵庫に入れる前に氷冷熟成ができない状態になりかねない。 (被告の主張) (1) 被告が水産物の加工販売を業としていること,本件契約に基づき,本件特許製品を製造して販売する義務を負っていたことは認めるが,原告のその余の主張は否認し,争う。原告が指摘する甲15はデザインを製造した会社が誤って記載したものにすぎないし,甲18は賞味期限から1年以上経過した商品の検査結果であり,その入手・保存状況も不明であるから,中の成分が変化している可能性があり, 通常の場合にもそのような検査結果となるのか疑わしい。 (2) 20年ぐらい前は,釜ゆでしたままで全く乾燥させないしらすの製品もあったが,べちゃべちゃして商品価値が低いため,すべてのしらすの製法において,「少し乾燥させる」,すなわち,およそ1分間,乾燥器の中を通して風を当てて水を飛ばす(粗熱をとる)ようにしている(赤外線での乾燥はさせていない。)。 釜茹でしたしらすをそのままの状態で氷冷熟成すると,すぐに腐ってしまうし,- 8 -解凍して製品にしたときにべちゃべちゃした状態になって商品価値が非常に落ちる。 そのため,ほとんどのしらすの製造業者は,釜茹でしたしらすを冷ます(およそ1分という短時間で粗熱をとる)ようにしており,それはしらすの製造において必要な工程で,通常行われている製法である。そして,大量のしらすを冷ますには,乾燥機で風を送って冷ますのが効率がよく,そうすると蒸気が風で飛んでいくので, しらすが少し乾燥した状態になる。 原告は少し乾燥させると氷冷熟成に影響がある旨主張しているが,粗熱をとった場合と,とらない場合のしらすに含まれる水分はそれほど違いがない 風で飛んでいくので, しらすが少し乾燥した状態になる。 原告は少し乾燥させると氷冷熟成に影響がある旨主張しているが,粗熱をとった場合と,とらない場合のしらすに含まれる水分はそれほど違いがないから,氷冷熟成に影響はない。むしろ,水分量が減ると,しらすに含まれているイノシン酸の量に変化はないが,水分量と反比例してイノシン酸の割合が増え,味がよくなるとい う傾向がある。 したがって,本件特許の製法として,釜茹でしたしらすを冷ますことを否定しているものとは解されず(本件明細書でも,茹でたしらすをどのような形で冷凍するのかについては触れておらず,粗熱をとるという通常予定されている行為の禁止を明記していない。),「少し乾燥させた」ことを理由として,本件特許を実施した製品 を製造していないということにはならない。 なお,被告が使用している冷蔵庫及び冷凍庫は平成19年に購入したものであり,ドアを開けた際には冷気がドアの上から下りてくるので,ドアの開け閉めで庫内の温度が左右されることはない。 以上のことを踏まえると,被告は本件特許の実施義務を履行していた。 2 争点2(被告製品の製造販売が実施義務の履行として十分なものでなかったか)について(原告の主張)(1) 被告の実施義務違反前記1で述べたとおり,被告は本件特許の実施義務を負っており,そもそも, 被告には本件契約の締結後,本件特許を即時に実施する義務があったにもかかわら- 9 -ず,被告は本件契約の締結後,すぐには本件特許製品を製造しなかった。また,その後,被告からランニング実施料の支払があったが,月数百円程度しかなかった。 被告は水産物の加工販売を業とする会社であり,被告の製品の取扱店舗は多く,オンラインでのしらす等の販売も行っていることからすると ,被告からランニング実施料の支払があったが,月数百円程度しかなかった。 被告は水産物の加工販売を業とする会社であり,被告の製品の取扱店舗は多く,オンラインでのしらす等の販売も行っていることからすると,現実に被告が本件特許製品を販売していたとすれば,上記のような低額のランニング実施料しか生じない ような販売額となったことはあり得ない。したがって,被告は本件特許製品を販売する努力を怠ったのであり,上記実施義務に違反したことは明らかである。 また,被告は,本件特許の特許番号がパッケージに記載されていないしらす等を製造販売しており(甲13),これが本件特許を使用していないのであれば,本件特許を使用できるにもかかわらず,使用せずに販売しているのであるから,上記実 施義務に違反したことになる。 そして,以上の義務違反により,原告の被告に対する信頼関係は著しく損なわれたから,本件契約の第15条第2項に基づく解除は有効であり,第16条第2項で予定された損害賠償の額により損害賠償を請求することができる。 (2) 被告の主張について 被告はパック詰めの設備を有している企業にパック詰めを委託せざるを得ず,委託料等が発生したため,スーパーへの仕入れは難しかった旨主張している。しかし,本件特許の実施は,①生の稚魚を食塩水でボイルし,5℃~-1℃で冷蔵し熟成させた後,凍結し,原料として工場に入荷するまでの工程と,②工場に入荷後,解凍して真空パックに包装し,加圧加熱処理の上冷凍し出荷する工程に分けられる ところ,パック詰めは②の工程に関わる。仮に被告の主張が真実だとしても,被告は,①の工程を行ってできた原料を,販売先が②の工程を行うことを条件に販売することができるのであるから,パックに入れて小分けにして販売する必要は必ずしもなく,自らパッ 告の主張が真実だとしても,被告は,①の工程を行ってできた原料を,販売先が②の工程を行うことを条件に販売することができるのであるから,パックに入れて小分けにして販売する必要は必ずしもなく,自らパック詰めができないから割高になり販売が困難になるという主張には説得力がない。 そもそも,本件特許製品が通常の製品と異なるのは,上記①の工程中の「5℃~- 10 --1℃で冷蔵し熟成させる」という点であり,凍結前に熟成させることによって,旨味を残した状態で長期保存ができるのである。その他パック詰め等の工程については,通常の製品と異なる特別の工程が要求されるわけではない。そして,被告は本件特許を使用しない方法でも,しらすやちりめんを製造し,包装して販売していることがうかがわれるから,被告主張のことは本件特許の実施が十分できないこと の理由にならない。 (被告の主張)(1) 被告が水産物の加工販売を業とする会社であり,しらす等の販売を行っていること,原告に対してランニング実施料を支払っていたことは認め,原告のその余の主張は否認し,争う。 (2) そもそも,本件契約上,特許製品の販売を予定しているはずであり,特許製品にならない前段階での販売は予定されていない。また,契約締結後,いつまでに本件特許を実施するのかについての規定もない。そして,被告はパック詰めを行い,加圧加熱処理をして本件特許を実施するための設備を有しておらず,それを自ら備えるには多大な費用がかかることから,本件特許製品を製造するためには,そ の設備を有している企業にパック詰めを依頼しなければならなかった。なお,被告は乾燥したしらすを真空パックして出荷していたが,それは手作業で行っており,真空パックして加圧加熱処理する機械を有していなかった。 そして, 企業にパック詰めを依頼しなければならなかった。なお,被告は乾燥したしらすを真空パックして出荷していたが,それは手作業で行っており,真空パックして加圧加熱処理する機械を有していなかった。 そして,愛媛県内ではそのような企業はなかなか見付からず,広島県尾道市の企業(株式会社C)に依頼せざるを得ず,委託料や往復の運賃が発生し,割高になっ てしまい,スーパーへの仕入れは難しかった。そこで,百貨店やインターネットによる販売を試みたが,思ったようには売れなかった。 以上のとおり,被告は本件契約の締結後,平成26年4月以降,時間と費用をかけて本件特許製品の製造販売に向けた依頼や交渉等をし,努力をしてきたが,経費がかかり,価格競争に勝てず,十分に販売することができなかったのであり,実施 義務は履行していた。 - 11 - 3 争点3(報告義務違反の有無)について(原告の主張)本件契約の第4条において,被告が原告に対し,実施報告書を送付して実施報告する義務が定められているが,被告から実施報告書が送付されたのは,平成28年12月24日付けであった。これは本件契約上の送付期限をはるかに遅延したもの であったし,その記載事項(本件特許製品の形式及び販売数量)を欠いたものでもあった。 また,前記2で指摘した本件特許の特許番号がパッケージに記載されていないしらす等が本件特許を使用したものであるとしたら,その販売実績について原告に報告していないため,報告義務に違反する。 さらに,パック詰めの委託料が高額なため利益を上げることが困難であれば,そのことを原告に報告する義務があったが,被告は本件訴訟に至るまでこれを報告したことはなかった。 以上より,被告は報告義務に違反した。 (被告の主張) 被告は,平成27年3月以前は ば,そのことを原告に報告する義務があったが,被告は本件訴訟に至るまでこれを報告したことはなかった。 以上より,被告は報告義務に違反した。 (被告の主張) 被告は,平成27年3月以前は被告製品の売上がなかったため,口頭でその旨を連絡しており,同年4月以降は販売が行われるようになったため,実施報告書を原告に送付した。 4 争点4(損害の有無及び額)について(原告の主張) 被告の実施義務違反及び報告義務違反により原告の被告に対する信頼関係は著しく損なわれたから,被告には本件契約の第15条第2項の違反があり,それに基づく解除は有効である。 したがって,被告の債務不履行による原告の損害額は,本件契約の第16条第2項で予定された損害賠償の額により,1000万円である。 (被告の主張)- 12 -原告の主張は争う。被告に本件契約の第15条第2項の違反はなく,同第16条第2項は適用されない。 なお,被告が原告に対して実施報告書を送付するようになったのは平成27年4月からであり,それ以降の実施報告書が記載事項を一部欠いたものであったことは認める。しかし,原告は実施報告書に記載された売上代金からおおよその内容を知 ることができるし,原告から報告書の訂正を求められなかった。同年3月以前は被告製品の売上げがなかったため,口頭で売上げがないことを連絡していただけであったが,それによって原告に多大な不利益を与えたわけではない。したがって,被告が原告との信頼関係を損なう行為をしたとはいえない。また,本件契約の第16条は損害賠償額の予定を定めているが,実施報告について定めた第4条はその適用 対象から除外されているから,報告義務の違反について第16条は適用されない。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(被告 損害賠償額の予定を定めているが,実施報告について定めた第4条はその適用 対象から除外されているから,報告義務の違反について第16条は適用されない。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(被告製品の製造工程が本件発明の製造工程に反するものか)について(1) 原告が主張する被告の製造工程違反について ア本件特許の特許請求の範囲の請求項1では,ちりめんの製造法について,①稚魚を3パーセント~10パーセントの食塩水でボイルする,②ボイルした稚魚を5℃~-1℃の温度帯で熟成期間を約48時間設けて氷冷熟成する,③その後-23℃~-25℃で凍結する,④解凍後真空包装し,加圧加熱処理するという工程が記載されており,請求項2ないし4においてもその製造法が前提とされている。 イこれに対し,原告は,被告製品の製造工程では,上記①と②の工程の間に,(ア)遠赤外線で7分間乾燥させる工程を入れており,この点で本件発明の製造工程に反する,(イ)仮に被告が主張するとおり,少し乾燥させるとか,粗熱をとって冷ます工程を入れているのだとしても,やはり本件発明の製造工程に反すると主張する。 確かに,本件特許の特許請求の範囲には,上記の工程①で稚魚をボイルした後,- 13 -上記の工程②の氷冷熟成する工程の前に,原告が主張する上記(ア)や(イ)のような工程を入れることは何ら記載されていない。しかし,逆にそれらの工程を排除する旨の記載もないから,それらの工程を入れることが本件発明の製造工程に反するか否かを判断するには,本件発明がそれらの工程を排除する趣旨であるか否かを検討する必要があるというべきである。 (2) まず,本件明細書において,本件発明の技術的意義は次のとおり記載されている。 すなわち,従来の釜揚げちりめんは 工程を排除する趣旨であるか否かを検討する必要があるというべきである。 (2) まず,本件明細書において,本件発明の技術的意義は次のとおり記載されている。 すなわち,従来の釜揚げちりめんは,ちりめんが本来持っている旨味や外観などの品質を保持したままで長期間の冷蔵保存ができないので,安全衛生上のリスクから,病院や学校等に業務用食品として大量に流通させることができないという課題 があった(本件明細書の【0002】ないし【0004】,【0006】)。そこで,本件発明は,新鮮な生の稚魚又は釜揚げした稚魚を,(ア)そのままの品質状態,(イ)無菌化冷蔵化で長期保存可能な状態,しかも,(ウ)骨からのエキスなどの魚本来が持つ旨味を引き出した状態など優れた特性を持つ全く新しいソフトな釜揚げちりめんの製造方法を開発し及びその製品を提供しようとするものである(【0005】)。 そのために,本件発明は,上記の①から④の製造工程を採用したものであり,これによれば,(a)5℃~-1℃で約48時間氷冷熟成する上記②の工程で、旨味成分の遊離アミノ酸が増加するため原料の旨味が残るとともに,この温度帯では鮮度保持化が可能である(【0008】,【0009】,【0011】,【0014】),(b)氷冷熟成する低温による殺菌(上記②の工程)及び真空パック後に加圧加熱処理 して殺菌すること(上記④の工程)により日持ちがよくなる(【0008】,【0011】,【0013】)との作用効果を奏する。 (3) 次に,しらすやちりめんの製造に関する文献等を見ると,次の記載等がある。 ア静岡県牧之原市にある「しらす屋ヤマカ」のホームページ(乙52)に は,「釜揚しらすちりめん干し(しらす干し)が出来るまで」と題するページがあ- 14 -り,そこには, がある。 ア静岡県牧之原市にある「しらす屋ヤマカ」のホームページ(乙52)に は,「釜揚しらすちりめん干し(しらす干し)が出来るまで」と題するページがあ- 14 -り,そこには,「生しらすを水洗いし,砂などを洗い流した後に,いよいよ釜茹でします。釜の温度が下がらない,吹きこぼれないように加減して,蒸篭にすくっていきます。余分な水分を切り,粗熱をとったら,釜揚しらすの完成です。」と記載されている。また,その後に,「茹でたシラスを乾燥させたものを,ちりめん干し(しらす干し)といいます。一口にしらす干しといっても,干し加減は様々です。関西市 場では,カリカリになるまで干した上干し。関東市場では乾燥が緩く塩分の強い若干の流通が多いです。」と記載され,その下の表には,「中間干し」の水分量は50%前後,「若干し」の水分量は60%~,「上干し」の水分量は40%前後と記載されている(乙52)。 イ愛媛県にある朝日共販株式会社の釜あげしらすの製造ラインの様子が youtubeにアップされており,それには,「ボイルから冷却までの時間は,品質に大きな影響を与える。」,「釜からあがったしらすは1分間で20℃まで急速冷却」という字幕がみられ,自社開発の冷却装置も映されている(乙53)。 ウ静岡県磐田市にある有限会社カネ吉のホームページ(乙54)には,港釜揚げしらすが出来上がるまでの流れが記載されており,そこには,洗浄されたし らすが釜揚げ機に入れられ,釜揚げが進んでいくことが記載された後に,「急速冷却。 釜揚げの終わったしらすの鮮度を落とさないために,揚がってきたシラスは1分足らずで一気に冷却されます。」と記載されている。また,その後に,干し場で干された釜揚げしらすが,いわゆる「ちりめんじゃこ」になるということが しらすの鮮度を落とさないために,揚がってきたシラスは1分足らずで一気に冷却されます。」と記載されている。また,その後に,干し場で干された釜揚げしらすが,いわゆる「ちりめんじゃこ」になるということが記載されている(乙54)。 エインターネット上には,「釜揚げしらす,しらす干し,ちりめんじゃこの違いは?」という質問が掲載され,これに対して,下記のような回答が掲載されている(乙64)。 記スーパーなどで販売される主なしらす商品には,「しらす干し」「釜揚げしらす」 「ちりめんじゃこ」があります。これら名称の違いは,しらすの乾燥度の違いによ- 15 -るもの。水揚げされたばかりの新鮮な生しらすを大量の湯の中でゆったり,ふっくら茹で上げたものが「釜揚げしらす」(水分率:75~88%),茹でたしらすを天日干しや乾燥機などで軽く乾燥させたものが「しらす干し」(水分率:65~72%),さらに乾燥させてかために仕上げたものが「ちりめんじゃこ」(水分率:35~50%)になります。 オ従来から,釜揚げされたしらすについて,扇風機によって粗熱をとる(冷却する)方法もみられたが,香川県観音寺市にある株式会社サムソンは,平成18年頃,「遠赤外式しらす乾燥機」(型式DC-50,75,100,120,150,200,250)を販売しており,その取扱い説明書(乙62)の仕様表では,乾燥時間は10~30分(標準15分),乾燥温度は30~80度(標準70 度)と記載されている。 遅くとも平成18年3月には販売されていた同社の型式DC-150RPTの「蒸気式遠赤外乾燥機」には,処理物を搬送するメッシュベルトであるコンベアが設けられており,乾燥機内にはコンベアが5段設けられている。また,その制御盤には,運転・停止の切替 型式DC-150RPTの「蒸気式遠赤外乾燥機」には,処理物を搬送するメッシュベルトであるコンベアが設けられており,乾燥機内にはコンベアが5段設けられている。また,その制御盤には,運転・停止の切替時に操作する「運転切替スイッチ」の他に,遠赤ヒータ (蒸気の熱により,表面から遠赤外線を放射するヒータ)運転・停止時に操作する「遠赤ヒータスイッチ」が設けられている。そして,その取扱説明書(乙50)には,運転方法として,①運転切替スイッチを「運転」にする,②乾燥機内に空気を送り込むための押込みファンスイッチ等を「運転」にする,③コンベアスイッチを「乾燥」又は「釜上」にする,④遠赤ヒータスイッチを「運転」にするなどという ことが記載されているが,遠赤ヒータスイッチを「運転」にせずに,遠赤ヒータを停止させたままコンベアを駆動させることもできる。そして,③について,「乾燥」を選択するとコンベアが全段駆動し,5段目取出口より処理物が搬出され,「釜上」を選択するとコンベア1,2段目(2段目は逆転する。)のみ駆動し,2段目取出口より処理物が搬出される。 そして,松山市にある株式会社Dはこの機械を使用してしらすやちりめんを製造- 16 -している(乙41,48,50,51,61,62,65,70,被告代表者供述)。 (4) また,食品に関する文献等には次の記載がある。 ア日本うま味調味料協会のホームページの「うま味って何だろう?」というページ(甲19)には「うま味の成分」の解説が掲載されており,そこには,「うま味物質として知られているものにグルタミン酸,イノシン酸,グアニル酸などが 挙げられます。グルタミン酸はたんぱく質を構成する20種類のアミノ酸の中の一つ。また,イノシン酸,グアニル酸は核酸に分類されます。これらの ているものにグルタミン酸,イノシン酸,グアニル酸などが 挙げられます。グルタミン酸はたんぱく質を構成する20種類のアミノ酸の中の一つ。また,イノシン酸,グアニル酸は核酸に分類されます。これらのうま味物質はさまざまな食品に含まれています。グルタミン酸は昆布や野菜などに,イノシン酸は魚や肉類に,グアニル酸は干しきのこ類に多く含まれています。」,「食品の熟成とうま味成分には深い関係があります。例えばトマトは真っ赤に熟すに従い,グルタ ミン酸が増加,肉類や魚類も時間の経過によってたんぱく質が分解されてアミノ酸の一つであるグルタミン酸が増えます。筋肉中にエネルギー源として蓄えられていたATPが分解されてイノシン酸になり,肉や魚に含まれるうま味成分が増えます。 …」と記載されている(甲19)。 イ厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」(平成9年3月24日 付け衛食第85号別添。最終改正:平成29年6月16日付け生食発0616第1号)(乙49)には,冒頭で,「集団給食施設等における食中毒を予防するために,HACCPの概念に基づき,調理過程における重要管理事項」として4つの事項が列挙されており,その4番目には,「食中毒菌が付着した場合に菌の増殖を防ぐため,原材料及び調理後の食品の温度管理を徹底すること。」が挙げられている。そして, その「Ⅱ 重要管理事項」の「4.原材料及び調理済み食品の温度管理」という項目では,「調理後直ちに提供される食品以外の食品は,食中毒菌の増殖を抑制するために,10℃以下又は65℃以上で管理することが必要である。」,「加熱調理後,食品を冷却する場合には,食中毒菌の発育至適温度帯(約20℃~50℃)の時間を可能な限り短くするため,冷却機を用いたり,清潔な場所で衛生的な容器に小分け する が必要である。」,「加熱調理後,食品を冷却する場合には,食中毒菌の発育至適温度帯(約20℃~50℃)の時間を可能な限り短くするため,冷却機を用いたり,清潔な場所で衛生的な容器に小分け するなどして,30分以内に中心温度を20℃付近(又は60分以内に中心温度を- 17 -10℃付近)まで下げるよう工夫すること。」と記載されている(乙49)。 (5) 以上を前提に,本件発明において,原告が主張する遠赤外線で7分間乾燥させる工程(前記原告の主張(ア))や,少し乾燥させるとか,粗熱をとって冷ます工程(前記原告の主張(イ))が排除されているかを検討する。 アまず,前提として,本件発明の「ちりめん」の意義を検討すると,本件 発明は,「ちりめんの製造法」(請求項1)とされているが,本件明細書の【0005】では「本発明は,…ソフトな釜揚げちりめんの製造方法を開発し及びその製品を提供しようとするものである。」と記載されていることに照らせば,本件発明の「ちりめん」とは,前記(3)ア,ウ及びエにいう「しらす」ないし「釜揚しらす」を意味すると解するのが相当であり,このことは,被告代表者が供述する同人の理解 とも合致するものである。 イそして,前記認定事実によれば,本件特許との関係で当業者に当たる相当数のしらすの製造業者が,釜揚しらすを製造するのに,しらすの釜揚げ(ボイル)後,粗熱をとったり,急速冷却したりしていることが認められる。そして,その方法として,従来から扇風機によって粗熱をとる方法が採用されていたところ, 遅くとも平成18年の時点で「しらす乾燥機」が販売されており,被告を含むしらすの製造業者が株式会社サムソン製の「しらす乾燥機」を使用していたというのである。 以上のことを踏まえると,本件特許の出願の時点で,釜揚しら 時点で「しらす乾燥機」が販売されており,被告を含むしらすの製造業者が株式会社サムソン製の「しらす乾燥機」を使用していたというのである。 以上のことを踏まえると,本件特許の出願の時点で,釜揚しらすの製造工程として,しらすの釜揚げ(ボイル)後に扇風機や乾燥機によって粗熱をとって冷ますこ とは,しらすの製造業者にとって技術常識であったということができる。 そして,本件特許の特許請求の範囲だけでなく,本件明細書でも,稚魚のボイルの後に,氷冷熟成すると記載されているだけで,しらすを製造するに当たって技術常識として通常行われる粗熱をとって冷ます工程を入れることを禁じる旨の記載は見られない。 ウもっとも,本件発明の技術的意義は,前記認定のとおり,氷冷熟成して- 18 -凍結し,解凍後真空包装し,加圧加熱処理することによって旨味を向上させるとともに,長期保存を可能にするという点にあるところ,確かに,扇風機や乾燥機を使用して粗熱をとって冷ますと,しらすの水分含有量が低下するため,氷冷熟成による旨味の向上等という作用効果との関係で,粗熱をとって冷ます工程を入れることの当否が問題となり得る。 この点につき原告は,ボイルした稚魚を乾燥させれば,結果として出てくる旨味や風味が異なるものになるなどと主張している。 しかし,被告において,(ア)稚魚3㎏をボイルし,粗熱をとらずに氷冷熟成し,凍結後,解凍したものと,粗熱をとって同様にしたものの重量を測定したところ,前者は2940gであったのに対し,後者は2910gであった(乙42,57ない し60,70)。また,(イ)被告において,粗熱をとらない釜揚しらすと,粗熱をとった釜揚しらすについて,愛媛県産業技術研究所に試験を依頼したところ,しらす100g当たりの水分含有量は,前者が し60,70)。また,(イ)被告において,粗熱をとらない釜揚しらすと,粗熱をとった釜揚しらすについて,愛媛県産業技術研究所に試験を依頼したところ,しらす100g当たりの水分含有量は,前者が76.8gであったのに対し,後者は74. 9gであった(乙67,68)。これらによると,粗熱をとる工程を入れたとしても,しらすの水分含有量は1%(1-(2910g÷2940g)≒1.02%)ない し2.5%(1-(74.9g÷76.8g)≒2.47%))程度しか低下しないことになる(これに対する反証は特にされていない。)。そして,その程度の水分含有量の減少が氷冷熟成による旨味の向上に対して悪影響を及ぼすことを認めるに足りる証拠はなく,むしろ,上記のうちの(イ)の試験では,粗熱をとった釜揚しらすのしらす100g当たりのイノシン酸の含有量が,粗熱をとらないものが91mgであ ったのに対し,粗熱をとったものが99mgと高かったこと(乙67,68)やしらすの水分量が少なくなると,しらすの重量当たりのイノシン酸の割合は反比例して増加するという知見があること(乙66)を踏まえると,上述する程度の水分含有量の減少をもたらすにすぎない粗熱をとって冷ますという工程を入れることが,本件発明の技術的意義を失わせ,又は本件発明の作用効果を減殺させるものであると 認めることはできない(なお,本件明細書には「アミノ酸」について記載されてい- 19 -るだけで,「イノシン酸」に関する記載はみられないが,前記(4)アのとおり,「イノシン酸」も「アミノ酸」と同じ旨味物質(成分)であるから,「イノシン酸」の含有量によって旨味の変化等を推し量ることも合理的といえる。)。 そうすると,本件発明が,ボイルの後に粗熱をとって冷ます工程を入れること(前記原告の主張(イ 物質(成分)であるから,「イノシン酸」の含有量によって旨味の変化等を推し量ることも合理的といえる。)。 そうすると,本件発明が,ボイルの後に粗熱をとって冷ます工程を入れること(前記原告の主張(イ)の工程)を排除しているとまでいうことはできない。 エ他方,ボイルの後に遠赤外線で7分間乾燥させる工程(前記原告の主張(ア)の工程)を入れることは,通常の釜揚しらすの製造工程以上に乾燥させる工程を入れることになるから,そのような工程については本件発明は排除していると解される。 (6) 以上のことを前提として,被告が行った行為が粗熱をとって冷ますという ものであったかについて検討する。 ア被告におけるしらす等の製造方法及び被告製品の広告の記載(ア) 被告の工場では,平成19年以降,しらすやちりめんを製造する際に,株式会社サムソン製の「蒸気式遠赤外乾燥機」(乙50。前記(3)オ参照)を改造したものを使用している(乙48,63,70,被告代表者供述)。この機械は内部に 5段のコンベアを備えるものであり,①これを用いてちりめんを製造する場合は,内部の遠赤外線のヒーターを90度に設定して,ボイル後のしらすを5段のコンベア全てに通し,②しらす干しを製造する場合は,同ヒーターを40度に設定して,ボイル後のしらすを5段のコンベア全てに通し,③しらす(釜揚しらす)を製造する場合は,同ヒーターを使用せず,送風のみとした上で,ボイル後のしらすを1段 のみコンベアに通す作業を行う(被告代表者供述)。 (イ) 楽天市場の被告のホームページの「できたての釜茹でしらす丼」という部分(甲15)には,「当店のしらす干しは,漁場から5分で加工場へ⇒釜茹で3分⇒遠赤外線乾燥7分⇒冷凍保存⇒パック詰め(特許製法)という工程で の被告のホームページの「できたての釜茹でしらす丼」という部分(甲15)には,「当店のしらす干しは,漁場から5分で加工場へ⇒釜茹で3分⇒遠赤外線乾燥7分⇒冷凍保存⇒パック詰め(特許製法)という工程で,容器内を無菌状態にして,長期保存を可能にしました!」と記載されている。 なお,被告の「オレの惚れた魚」と題するパンフレット(乙55)には,「特選ち- 20 -りめん」という商品が掲載されており,その下に「当社のちりめんは,漁場から5分で加工場へ⇒釜茹で3分⇒遠赤外線乾燥7分⇒天日干し⇒冷凍保存⇒パック詰めという行程で行っております。」と記載されている(甲15,乙55)。 (ウ) 婦人画報に掲載された被告製品(「オレの惚れたしらす丼セット」)の広告では,「旨みのあるしらすを地元名産の醤油で」,「ふわっと柔らかなしらすは, そのままでも十分においしいのですが,…」と記載され,内容量として「しらす(30g×2)」等とされている(乙7,31。なお,被告のオンラインショップの広告でも同様の記載がある(甲9)。)。 イこの点につき原告は,上記の甲15を引用して,被告製品ではボイル後に遠赤外線で7分間乾燥させていたと主張している。 しかし,遠赤外線で7分間乾燥させるという工程は,「しらす」の製造工程に通常付随する粗熱を取る工程とは明らかに異なるものであり,被告製品の商品名が「釜茹でしらす丼」ないし「しらす丼」とされ,「ふわっと柔らかなしらす」と広告されており,被告においては「しらす」と「しらす干し」と「ちりめん」を区別していたこと(甲13)と整合しない。また,甲15については,ホームページのデザイ ンを作成した会社が別のパンフレットの上記の「特選ちりめん」という商品に関する記載を間違って引用し,掲載したもので たこと(甲13)と整合しない。また,甲15については,ホームページのデザイ ンを作成した会社が別のパンフレットの上記の「特選ちりめん」という商品に関する記載を間違って引用し,掲載したものであることを認めている(乙56)。 そうすると,上記広告の記載から,被告が遠赤外線で7分乾燥していたと直ちに認めることはできない。 ウ他方,被告は,およそ1分間乾燥機にかけ,粗熱をとって冷ます工程を 入れていたにすぎないと主張し,被告代表者がこれに沿う供述をしており,この被告代表者の供述は,前記認定のとおり,被告が「蒸気式遠赤外しらす乾燥機」を改造して使用していたことや,本件で提出された証拠(乙48,65)と整合している。 ただし,原告が被告において販売していた商品の試験結果として提出している甲 24との関係について検討を要する。甲24では水分含有量がしらす100g当た- 21 -り69.0gとなっているが,被告が粗熱をとった釜揚しらすの試験結果として提出している乙67の試験結果(74.9g)よりも約5g水分含有量が少ないし,「釜揚げしらす」の水分率が75~88%とされていること(前記(3)エ)とも整合せず,むしろ「しらす干し」の水分率(65~72%)の範囲にあるからである。 しかし,甲24の試験の対象とされた被告が販売していた商品は,賞味期限を平 成28年11月19日とするものであり(甲21,24),試験の依頼日が平成30年3月5日であるから,賞味期限から1年3か月以上経過した段階での試験であったし,試験までの間,どのように保存され,また解凍後,ドリップが出ていたのか等,水分含有量に影響を与え得る事情が客観的に明らかとされているわけではない(証人P1は,購入後は専用の冷凍庫で保管していたと証言するが,特段の裏付け うに保存され,また解凍後,ドリップが出ていたのか等,水分含有量に影響を与え得る事情が客観的に明らかとされているわけではない(証人P1は,購入後は専用の冷凍庫で保管していたと証言するが,特段の裏付け があるわけではない。)から,甲24の試験結果を,被告製品の状態を示すものとして直ちに採用することには疑問がある。 また,原告が甲24と同じ商品の試験結果として提出している甲18では,しらす100g当たりのイノシン酸が41㎎(水分は前記のとおり69.0g)とされており,これは,被告が粗熱をとった場合と粗熱をとらない場合を追試した乙67 及び68におけるしらす100g当たりのイノシン酸の含有量がそれぞれ99㎎と91㎎(水分はそれぞれ74.9gと76.8g)であるのと比べると,水分とイノシン酸の含有量の双方が少なくなっており,特にイノシン酸の含有量が著しく少なくなっている。しかし,この結果は,前記のとおり,しらすの水分量が少なくなると,しらすの重量当たりのイノシン酸の割合は反比例して増加するという知見も あること(乙66)に沿わない。むしろ,被告製品に関する甲18及び24の試験結果は,被告が,粗熱をとったしらすについて冷凍と解凍を繰り返したものの試験結果(乙69)において,しらす100g当たりのイノシン酸の含有量が21㎎,水分含有量が74.8gであったことと比べると,水分含有量が減少する反面イノシン酸含有量が増加しており,上記の知見に沿うものである上,イノシン酸の含有 量がいずれも著しく少ないから,甲18においてイノシン酸の含有量が少ない原因- 22 -が乙69と同様である可能性も考えられる。これらに照らしても,甲18及び24の試験結果が被告製品の状態を示すものとして直ちに採用することについて疑問を差し挟まざるを得な が少ない原因- 22 -が乙69と同様である可能性も考えられる。これらに照らしても,甲18及び24の試験結果が被告製品の状態を示すものとして直ちに採用することについて疑問を差し挟まざるを得ない。 そうすると,甲18及び24の試験結果から,被告が粗熱をとって冷ます以上に乾燥させていたことが推認されるとはいえない。 エ以上からすると,被告製品の製造工程としては,被告が自認する粗熱をとって冷ます工程以上に認定することはできないから,結局,被告製品の製造工程が本件発明の製造工程に反すると認めることはできない。 なお,原告は,本件特許製品の製造には専用の冷蔵庫及び冷凍庫の設置が不可欠であり,被告がこれを設置していなかったことから,本件特許の実施義務に違反し たとも主張している。しかし,原告も被告が冷蔵庫や冷凍庫を有していたことは認めているところ(被告代表者供述によっても,その事実を認めることができる。),乙48に照らしても,被告が有していた冷蔵庫や冷凍庫が本件特許の氷冷熟成や凍結ができないようなものであったことを認めるに足りる証拠はないから,原告の上記主張によっても,被告の本件特許の実施義務違反が基礎付けられるとはいえない。 以上より,被告製品の製造工程が本件発明の製造工程に反することを理由とする実施義務違反に基づく損害賠償請求は理由がない。 2 争点2(被告製品の製造販売が実施義務の履行として十分なものでなかったか)について(1) 前提事実に加え,甲14,乙40,被告代表者供述及びP1証言,後掲の 証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア平成25年以前の事実関係(ア) 本件発明の発明者はB商店の代表取締役P2であったところ,同人は本件特許の設定登録の前に亡くな 証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア平成25年以前の事実関係(ア) 本件発明の発明者はB商店の代表取締役P2であったところ,同人は本件特許の設定登録の前に亡くなり,その姉であるP3がB商店の代表取締役に就任した(甲2)。 (イ) その後,本件特許の設定登録がされたが,B商店はしらす等の卸問屋- 23 -であり,本件特許権を譲り受けた原告は不動産関連の賃貸業等を目的としており,しらすの製造に関与していなかったため,原告は,本件特許を実施してしらすを製造する業者を探し,2社に打診したがいずれも断られていた。 すると,原告は知人から被告を紹介され,P3の夫であり原告の取締役であるP1及びP3は,平成25年7月ないし8月以降,複数回にわたって被告の事務所を 訪れ,本件特許について説明するとともに,同特許について実施契約を締結することを持ちかけた。 イ平成26年の事実関係(ア) 被告は,原告からの申入れに対し,パック詰めの設備がないなどとして断っていたが,原告からパック詰め作業の委託先を紹介するとの話があったこと や,実施料の負担がランニング実施料だけであったこともあり,遅くとも3月までには,原告に対し,本件特許について実施契約を締結する意思を伝え,同月28日,原告との間で本件契約を締結した。 なお,本件契約の締結に至る過程の中で,被告代表者から,本件特許の実施品を関東の居酒屋やドラッグストアのチェーン店等に販売するとの話も出ていたが,可 能性の一つとして話に出ただけであった。 (イ) 被告は,しらすを小分けして真空包装(真空パック)し,加圧加熱処理する機械を有していなかったため,その後,取引先に広島県尾道市にある株式会社Cを紹介してもらい,同社に対し, った。 (イ) 被告は,しらすを小分けして真空包装(真空パック)し,加圧加熱処理する機械を有していなかったため,その後,取引先に広島県尾道市にある株式会社Cを紹介してもらい,同社に対し,しらすを真空包装し,加圧加熱処理する(パック詰め)作業を依頼した。そして,被告代表者は,5月22日,株式会社Cの事 務所を訪れ,上記作業についてやりとりしたほか,同社からパッケージの製造会社として,広島県福山市の株式会社コパックスを紹介してもらい,同社にその製造を依頼することにした。 (ウ) 被告は,松山市にある株式会社パルス・デザインにパッケージ等のデザインを依頼し,同社は,10月末までには,パッケージや,デパート出店用の垂 れ幕やミニのぼり等のデザインを完成させた。なお,その制作費用は合計30万8- 24 -880円(税込。以下,特に断りのない限り同じ。)であった(乙2,3)。 (エ) 被告代表者は,11月までには,主に百貨店の取次商社を営んでいるSmileCircle株式会社のP4に対し,本件特許の製造法によって製造したしらすの販売の取次を依頼したほか,取引先であった阪急百貨店にもその販売を持ちかけた。 また,被告代表者は,その前後ころ,元々取引のあった松山市のスーパーや愛媛 県今治市のデパートに対しても,本件特許の製造法によって製造したしらすの販売を持ちかけたが,販売価格が折り合わず,取引には至らなかった。すなわち,広島県尾道市にある会社にそのパック詰め作業を依頼すると,そこへの製造委託費用に加え,往復の運賃もかかり,結果としてしらすの製造原価が高くなり,安い値段では販売することができなかった。 (オ) 被告は,P4から連絡を受け,12月11日,月刊誌「婦人画報」の平成27年5月 運賃もかかり,結果としてしらすの製造原価が高くなり,安い値段では販売することができなかった。 (オ) 被告は,P4から連絡を受け,12月11日,月刊誌「婦人画報」の平成27年5月号の提案試食会に本件特許の製造法によって製造したしらすと,たれ,ごま,海苔等をセットにした商品を提案し,その商品の「婦人画報」への掲載が決まった(乙4,27,29)。 ウ平成27年の事実関係 (ア) 株式会社コパックスは,1月6日,被告に対し,パッケージの修正したデザインのPDFファイルをメールに添付して送信した(乙5)。 (イ) 原告は,被告に対し,1月30日付けの内容証明郵便で,本件特許の実施がされていないことを理由として,本件契約を解除したことを連絡し,2月16日付けの内容証明郵便で,上記理由に加え,実施報告が一切されていないことを 理由として,1月30日に本件契約を解除したことを報告した。 これに対し,被告は,2月17日付けで,原告に対し,「今回の商品は,まず百貨店,次にスーパーと戦略を持って営業をかけてきました。四月に百貨店に掲載が十二月にきまり五月から販売が決定しております。同時に各スーパー様に販売をいたします。」と記載した上で,原告指摘の点は違反行為には当たらない旨反論を記載し た内容証明郵便を送付したが,再び原告は被告に対し,同月21日付けで,1月3- 25 -0日に本件契約は解除されていることなどを記載した内容証明郵便を送付した(乙25ないし28)。 (ウ) 2月,パッケージの最終デザインが完成し,それには,「オレの惚れたしらす」という商品名や,本件特許の特許番号が明記されるとともに,「特許製法」,「長期保存可能」などと記載されていた(甲8)。 (エ) 被告は,3月5日付 ンが完成し,それには,「オレの惚れたしらす」という商品名や,本件特許の特許番号が明記されるとともに,「特許製法」,「長期保存可能」などと記載されていた(甲8)。 (エ) 被告は,3月5日付けで,原告に対し,現在,小パックの製造に入っており,製造ラインに入っている以上,今すぐの解約に応じることはできない,販売量を増やしていきたいと考えているので,今しばらく時間を頂きたい旨記載した内容証明郵便を送付した。 これに対し,原告は,同月16日付けで,被告に対し,被告との信頼関係は全く ないことなどを記載した内容証明郵便を送付した(乙29,30)。 (オ) 株式会社Cは,3月,後記(キ)の「オレの惚れたしらす丼セット」(被告製品)に用いるしらすのパック詰め作業を開始し,同月末の同社からの請求額は16万3954円であった。なお,しらすをボイルし,氷冷熟成し,凍結(冷凍)するまでの作業は被告において行い,被告は冷凍されたしらすを往復の運賃を負担 して広島県尾道市にある株式会社Cまで運送していた(乙6)。 (カ) 株式会社コパックスは,4月1日,被告に対し,パッケージを合計4380m納品し,同月末の同社からの請求額は,版代を含め,合計22万8188円であった。 また,株式会社コパックスは,5月1日,被告に対し,パッケージを合計1万m 納品し,同月末の同社からの請求額は,合計21万2760円であった(乙8)。 (キ) 4月頃に販売された「婦人画報」に「オレの惚れたしらす丼セット」が掲載された。この商品は,しらす(30g×2)×6パック,海苔・わさび・ごま×6袋,醤油だれ100mlをセットにしたものであり,販売価格は2900円(税別),送料は全国一律800円(税別。ただし,例外あり。),賞味期間は冷蔵で g×2)×6パック,海苔・わさび・ごま×6袋,醤油だれ100mlをセットにしたものであり,販売価格は2900円(税別),送料は全国一律800円(税別。ただし,例外あり。),賞味期間は冷蔵で 30日とされていた。また,商品の説明文においては,冒頭に「旨みのあるしらす- 26 -を地元名産の醤油で」と記載されていたほか,「賞味期間が長いことも,この商品の特長です。」などと記載されていた。 なお,この商品は,被告がSmileCircle株式会社に対して1750円(税抜)(内訳:しらすツインパック6パックで1080円,しょうゆ100円,海苔60円,わさび30円,箱120円,しおり20円,手間賃340円)で販売し,同社が上 記金額(税抜2900円)で販売していた(乙23,31)。 (ク) 上記「婦人画報」に掲載された被告製品は,4月2日以降,販売され,その後も「婦人画報」に掲載された(乙7,24,32,33)。 (ケ) 被告は,それまで販売実績がなかったことから,原告に対してはその旨を口頭で報告するにとどめ,実施報告書の送付をしておらず,ランニング実施料 の支払もしていなかったが,4月から販売実績が生じたことから,5月及び6月,原告に対し,本件契約に基づくランニング実施料を現金書留で送付した。しかし,原告は,本件契約を解除したことを理由にそれを受領せず,被告に送り返した(乙10ないし12)。 (コ) 被告は,6月2日付けで,原告に対し,本件契約は継続的契約であり, 契約当事者が信頼関係を破壊する行為がなければ,契約の解除はできないとして,解除の効力を争う旨を伝えるとともに,従来通り,本件特許を実施するとして,ランニング実施料については受領拒絶と判断し,供託することを記載した内容証明郵便を送付した れば,契約の解除はできないとして,解除の効力を争う旨を伝えるとともに,従来通り,本件特許を実施するとして,ランニング実施料については受領拒絶と判断し,供託することを記載した内容証明郵便を送付した。 これに対し,原告は,6月6日付けで,被告に対し,特許公報に載っている製造 法をよく理解して原体のよいしらすを用いるなどして製造販売することなど3点を守って契約の継続をされる様であれば,本件契約を契約通りに履行してもらいたいなどということを記載した文書を送付した。そして,被告は,6月18日付けで,原告に対し,原告が解除の主張を撤回したと考え,原告から指摘を受けた3点については対処するなどということを記載した内容証明郵便を送付した(甲10ないし 12)。 - 27 -(サ) 被告は,6月12日,原告を被供託者として,4月分と5月分のランニング実施料を供託した(乙12)。 (シ) 被告は,7月6日,原告に対し,4月分から6月分までのランニング実施料を送金するとともに,7月7日には,4月から6月までの売上額等を記載した「特許製品販売表」を内容証明郵便で送付した。 その後,被告は,8月から11月までの各月上旬に,原告に対し,7月分から10月分までのランニング実施料を送金するとともに,各月の売上額等を記載した「特許製品販売表」を送付した。なお,8月に1回だけ株式会社Eを通じた取引があった(その内容は,別紙「『特許製品販売表』の内容」記載のとおり。)(乙13ないし22)。 (ス) 原告は,11月30日,被告に対し,被告が特許製品を生産する意思が全くないと思われるとした上で,被告が毎月送っている報告書や特許料名目での振込みは必要なく,また上記のこと等が信頼関係を著しく損なう行為(本件契約の第15条第2項)である が特許製品を生産する意思が全くないと思われるとした上で,被告が毎月送っている報告書や特許料名目での振込みは必要なく,また上記のこと等が信頼関係を著しく損なう行為(本件契約の第15条第2項)であるとして,改めて,同日をもって本件契約を解除したことを連絡するなどと記載した内容証明郵便を送付した(甲4)。 エ平成28年以降の事実関係(ア) 被告は,平成28年7月頃以降,自社ホームページのオンラインショップに本件特許の製造法により製造したしらすを用いた「できたての釜茹でしらす丼」(甲15)を掲載したほか,有限会社ホロニックフーズを通じて本件特許の製造法により製造したしらすのネット販売を開始した(各月の売上げとそれをもとに算 定された実施料の金額は,別紙「『特許製品販売表』の内容」記載のとおり。)(甲7ないし9,15)。 (イ) 被告は,平成28年10月末まで,「婦人画報」に掲載された商品(オレの惚れたしらす丼セット)の販売を継続していた(なお,同月の購入者のうち1名は原告の関係者である。)(各月の売上げとそれをもとに算定された実施料の金額 は,別紙「『特許製品販売表』の内容」記載のとおり。)(甲27,乙24,32,3- 28 -3)。 (ウ) 原告は,平成28年10月6日,被告に対し,1000万円の損害賠償を請求するとして,10日以内にこれを振り込むことを求めた(甲5,6)。 (エ) 被告は,平成28年11月7日付けで,原告に対し,原告による解除には理由がなく,解除は認められないとしつつも,今後の措置として,紛争を拡大 しないため,同月15日をもって本件契約を合意解約することを提案し,その後,同月24日付けで合意解約する文書を送付した(乙37,38)。 (オ) 被告は,原告に対し,平成27年 て,紛争を拡大 しないため,同月15日をもって本件契約を合意解約することを提案し,その後,同月24日付けで合意解約する文書を送付した(乙37,38)。 (オ) 被告は,原告に対し,平成27年11月から平成28年10月までの売上額等が記載された「特許製品販売表」を送付していなかったが,平成28年12月24日付けで,その期間の分の「特許製品販売表」を送付した(甲7)。 (カ) 被告は,平成29年2月6日までに,本件特許権についての専用実施権を放棄し,その後,その設定登録の抹消登録がされた。 (2) 被告の実施義務の有無及び内容原告は被告が実施義務を負っていることを前提として,それに違反した債務不履行があると主張している。 確かに,本件契約には,被告の実施義務を定めた条項は設けられておらず,被告が本件特許の実施に努めることさえも規定されていない。 もっとも,本件契約は専用実施権設定契約であり,被告は本件契約に基づき本件特許の専用実施権を取得し,本件特許を独占的に実施し得る地位を獲得するのに対し,原告は本件契約を締結することによって,本件特許を実施することや他の者に 実施許諾することができないにもかかわらず,特許維持費用の支払義務は負うという立場に立つことになる。また,本件契約では,イニシャルペイメントが「0円」と明記され,またランニング実施料の金額も,実施の有無にかかわらず一定額が支払われる条項とはされず,被告が販売した本件特許権に基づく製品の販売価格に所定の割合(2ないし5%)を乗じた額とするにとどめられていたから,原告は,被 告が本件特許を実施しないことには,実施料の支払を全く受けられないことになる。 - 29 -本件契約の当事者である原告と被告が置かれる以上のような状況を踏 どめられていたから,原告は,被 告が本件特許を実施しないことには,実施料の支払を全く受けられないことになる。 - 29 -本件契約の当事者である原告と被告が置かれる以上のような状況を踏まえると,専用実施権者である被告は,本件特許の実施が可能であるのに,それを殊更に実施しないとか,その実施に向けた努力を怠るなどということは許されず,信義則に基づき,本件特許を実施する義務を一定の限度で負うと解すべきである。 もっとも,上述したように,本件契約では被告の実施義務に関係する条項は何ら 設けられず,またランニング実施料の金額も販売価格に一定割合を乗じた額とするにとどめられており,被告としては製品が販売できた場合にのみ実施料の支払負担が発生するにとどまるというリスク負担を前提に本件契約を締結したものであるから,本件特許を実施した製品を製造販売するための努力の程度について被告に過大な義務を負わせることは相当でない。また,被告は本件特許の製造法によって製造 したしらすを製造販売することによって本件特許を実施することになるが,本件特許は解凍後真空包装し,加圧加熱処理することをも構成として含むものであり,被告はそれを行うための機械を有していなかったから,そのための準備期間が不可避的に生ずるし,結果的に,商品が消費者に十分受け入れられず,思うように商品が販売できないなどという事態も生じ得る。 以上のような本件の事情を考慮すると,被告が本件特許の実施義務を負うといっても,本件特許を実施するために必要な事項等を踏まえつつ,その時々の状況を踏まえ,特許の実施に向けた合理的な努力を尽くすことで足りると解するのが相当である。 (3) 被告の実施義務違反の有無 ア上記(2)のような観点から,被告が本件特許の実施 況を踏まえ,特許の実施に向けた合理的な努力を尽くすことで足りると解するのが相当である。 (3) 被告の実施義務違反の有無 ア上記(2)のような観点から,被告が本件特許の実施のための努力を怠ったといえるかを検討すると,前記(1)で認定した事実によれば,被告は,平成26年3月28日に本件契約を締結した後,速やかに,自社ではできないパック詰め作業を委託する業者を探して,同年5月22日までにはその目途をつけた後,パッケージ等の製造や,そのデザインを別の業者に依頼し,同年10月末までにその目途をつ けて,製造の準備をほぼ整えたと認められる。また,被告は,以上のような製造に- 30 -向けた準備と同時並行で,元々取引のあった愛媛県内のスーパーやデパートに本件特許の製造法によって製造したしらすの販売を持ちかけたり,P4に対してその販売の取次を依頼したりし,幅広く本件特許の製造法により製造したしらすを販売するための交渉等を進めたが,成果は芳しくなく,その後,同年12月までには「婦人画報」への掲載が決まり,平成27年3月には商品の製造を開始し,同年4月頃 に販売された「婦人画報」に「オレの惚れたしらす丼セット」が掲載され,実際にその販売が開始されるに至ったのである。以上のように,被告は,本件契約の締結後,本件特許の実施に向けた準備を進め,実際に,実施にこぎつけたと認めることができる(なお,被告製品の製造工程が本件発明の製造工程に反すると認められないことは前記1で判示したとおりである。)。 イもっとも,本件契約の締結から商品の製造や販売開始まで1年程度要していることから,被告が前記(2)で判示した本件特許の実施のための努力を尽くしたといえるかを検討する。 (ア) 確かに,被告代表者自身も陳述 約の締結から商品の製造や販売開始まで1年程度要していることから,被告が前記(2)で判示した本件特許の実施のための努力を尽くしたといえるかを検討する。 (ア) 確かに,被告代表者自身も陳述書(乙40)において,「準備に思ったより時間…が掛かりました」と述べているように,製造販売の準備行為に相当の時 間を要しており,さらに早期に商品の製造や販売の準備を整えることができた可能性も否定はできない。 しかし,被告は,パック詰め作業をする設備機械を保有していなかったのであるし,パッケージ等の製造も他の業者に委託しなければならなかったのであるから,製造準備を整えるまでに前記のような期間を要したことが,本件特許の実施を不当 に遅延したとはいえない。また,前記認定の経過によれば,被告が実際に被告製品の製造を開始したのが平成27年3月となったのは,当初の地元のスーパーやデパートへの営業が販売価格の面で折り合わず,芳しくなかったが,同年4月頃に販売される「婦人画報」に「オレの惚れたしらす丼セット」が掲載され,それを見た消費者に対する販売が相当程度見込まれたからと推認される。そして,被告も営利企 業として事業を営んでいる以上,ある程度まとまった販売が見込まれない段階で商- 31 -品の製造を開始することは現実的ではないし,信義則上も被告にそれを強いることは相当とはいえないから,被告が結果として,ある程度まとまった販売が見込まれるに至った同年3月から商品の製造を開始したこと(それまでは本件特許の製造法によるしらすを製造しなかったこと)が,製造販売への努力を不当に怠ったということはできない。 以上によれば,製造販売の準備行為に時間を要したことによって製造開始が遅れたとまで認めることはできないし,平成27年3月からの製造開 が,製造販売への努力を不当に怠ったということはできない。 以上によれば,製造販売の準備行為に時間を要したことによって製造開始が遅れたとまで認めることはできないし,平成27年3月からの製造開始となったことが被告の努力が足りなかったことによるものと認めることもできない。 また,製造販売を開始した後の販売状況も,決して順調とはいえないものではあるが,被告は,SmileCircle株式会社以外の取引先にも営業を行って少量ながら取 引をしていることからすると,販路拡大のための努力を不当に怠っていたと認めることはできない。 (イ) 原告の主張等についてa まず原告は,本件契約の締結に至る過程の中で,被告代表者から本件特許の実施品を関東の居酒屋やドラッグストアのチェーン店等に販売するとの話 も出ていたことを指摘し,証人P1がこれに沿う証言をしている。 しかし,証人P1の証言によっても,その取引成立がどれだけ現実的で確実なものであったかは明確でないし,本件契約には本件特許をいつから実施すべきであるかということは何ら定められていないから,上記経緯によって,被告が本件特許の実施のための努力を怠ったことが基礎付けられるとはいえない。 また,原告は,被告は本件契約の締結後,すぐ本件特許を実施すべきであったと主張しているが,上述したように本件契約には本件特許をいつから実施すべきであるかということは何ら定められていないことに加え,前記判示のとおり,被告が解凍後真空包装し,加圧加熱処理するための機械を有しておらず,そのための準備が不可避であった上に,ある程度販売が見込まれるまで商品の製造を開始しないこと もやむを得ないことといえる。なお,本件契約では前記のとおりイニシャルペイメ- 32 -ントが0円 ための準備が不可避であった上に,ある程度販売が見込まれるまで商品の製造を開始しないこと もやむを得ないことといえる。なお,本件契約では前記のとおりイニシャルペイメ- 32 -ントが0円と定められているが,だからといって,被告にすぐ本件特許を実施する義務があったと解することもできない。以上より,原告の上記主張を採用することもできない。 b 証人P1は,本件契約の締結後,築地から取引の申込みがあった旨証言しているが,被告代表者はこれが競り売りであったと供述し,そうであれば, 被告としてリスクがあるものであり,被告が当然にその取引をすべきであったとまでいうことはできない。また,証人P1の証言によっても,どの業者とどのような交渉がされ,どのような取引が成立するはずであったのかは判然としない。したがって,原告の上記主張によって被告の実施義務違反が基礎付けられるとはいえない。 c 原告は,被告がボイル,氷冷熟成及び凍結までを行い,販売先が解 凍後真空包装し,加圧加熱処理することを条件に販売することもできたと主張している。 しかし,本件では,原告が被告にパック詰め作業の委託先を紹介するとされていたから,原告も,被告がパック詰めまでを終えた完成品を製造して販売することは前提としていたと推認される。また,専用実施権者は,前記のとおり一定の限度で 実施義務を負うとはいえ,自己の事業としてリスクを負って実施する以上,その営業方針は基本的に専用実施権者の事業者としての裁量判断に委ねられるべきものである。したがって,原告が主張するような選択肢が他にあったからといって,被告の実施義務の懈怠があったとは認められない。 d 原告は,パック詰め等の工程について,通常と異なる特別の工程が 要求されるわけではないと るような選択肢が他にあったからといって,被告の実施義務の懈怠があったとは認められない。 d 原告は,パック詰め等の工程について,通常と異なる特別の工程が 要求されるわけではないと主張している。 しかし,本件特許は,解凍後真空包装し,加圧加熱処理をすることを内容とするものであり,被告はそのための設備を有してなかったのであるから,それを手配するために相応の準備期間を要したのが製造準備の懈怠とはいえず,原告の上記主張は採用できない。 e 原告は,被告が他に本件特許を使用しないで製造したしらす等を製- 33 -造販売していたこと(甲13,弁論の全趣旨)を指摘しているが,本件契約において被告が本件特許の製造法によるしらすの製造に専念すべきとされたとは認められないし,被告が他の製品を製造販売するために被告製品の製造販売を懈怠したとも認められないから,原告の指摘によって本件特許の実施義務違反が基礎付けられるとはいえない。 f そして,その他に原告が主張することを踏まえても,被告が実施義務を懈怠したことが基礎付けられたということはできない。 (4) 以上より,被告に実施義務の履行が不十分であるとの債務不履行があったと認めることはできないから,これを理由とする損害賠償請求は理由がない。 3 争点3(報告義務違反の有無)及び争点4(損害の有無及び額)について (1) 前提事実のとおり,本件契約では,被告は,原告に対し,毎月末日限り,前月までに販売した製品の形式,単価,販売数量,販売先,総販売額,実施料及び消費税を記載した実施報告書を送付することとされ,当該期間に販売実績がない場合も,その旨を記載した報告書を送付することとされている。 これに対し,前記2の(1)で認定したとおり 総販売額,実施料及び消費税を記載した実施報告書を送付することとされ,当該期間に販売実績がない場合も,その旨を記載した報告書を送付することとされている。 これに対し,前記2の(1)で認定したとおり,被告が「特許製品販売表」を原告に 対して送付するようになったのは平成27年4月分以降であり,それ以前は,本件契約の第4条第2項で求められていた販売実績がない旨を記載した報告書も送付していなかった。また,同年11月分以降は,本件特許の製造法により製造したしらすが販売されていたにもかかわらず,被告は原告に対して「特許製品販売表」を送付せず,平成28年12月になってから,平成27年11月分から平成28年10 月分までの「特許製品販売表」をまとめて送付したにすぎない。さらに,被告が作成した「特許製品販売表」には,本件契約の第4条第1項で求められていた実施報告書の記載事項の一部(本製品の形式,単価,販売数量)が明記されていなかった。 したがって,被告が本件契約で求められていた実施報告をしたとはいえず,これを債務不履行と評価する余地がある。 なお,原告は,被告が本件特許の特許番号をパッケージに記載しない別の商品に- 34 -ついても,本件特許の製造法によって製造していた可能性を指摘し,そうであれば,それについての報告義務違反があると主張するが,被告がそのような形で本件特許の製造法により製造したしらすを販売していたことを認めるに足りる証拠はない。 また,原告は,パック詰めの委託料が高額なため利益を上げることが困難であれば,そのことを原告に報告する義務があったと主張しているが,そのようなことが 本件契約の第4条が定める実施報告の義務に含まれるとは解されない。 したがって,被告が上記認定した以上に報告義務に違反していたとは 原告に報告する義務があったと主張しているが,そのようなことが 本件契約の第4条が定める実施報告の義務に含まれるとは解されない。 したがって,被告が上記認定した以上に報告義務に違反していたとは認められない。 (2) ところで,原告は本件契約の第16条第2項に基づき1000万円の損害賠償を請求しているところ,同項には実施報告に関する第4条に違反した場合は掲 げられていない。したがって,報告義務に違反しただけでは,第16条第2項で予定された損害賠償の額による損害賠償を請求することはできず,その可能性があるとすれば,被告が実施報告をしなかったことが,本件契約の第15条第2項にいう「相手方が信頼関係を著しく損なう行為を行ったとき」に該当し,第15条の違反があるとして,第16条第2項を適用することが考えられる。 しかし,次に述べるように,本件では,被告の報告義務違反が原告との「信頼関係を著しく損なう行為」であると評価することはできないというべきである。 すなわち,まず,被告は,平成27年3月分までは販売実績がないため,実施報告書を原告に送付していなかったが,被告代表者は口頭で販売実績がない旨を原告側に報告していた旨供述しており,証人P1も,被告が本件契約の締結後,半年ぐ らいは本件特許製品を販売していないというような報告をしていたことを認めており,その限度では,少なくとも口頭では販売実績がない旨の報告がされていたと認めることができる。また,そのような口頭による報告が毎月されたことを客観的に裏付ける証拠まではないものの,被告が販売実績があるのに,それを秘していたわけではないし,少なくとも原告が同年1月以降に送付した内容証明郵便によれば, 原告自身,本件特許が実施されていないことを認識していたことがうかがわれ 被告が販売実績があるのに,それを秘していたわけではないし,少なくとも原告が同年1月以降に送付した内容証明郵便によれば, 原告自身,本件特許が実施されていないことを認識していたことがうかがわれる。 - 35 -そして,同月以降は,原告と被告との間で契約解除をめぐって内容証明郵便のやりとりがされ,その中で結果的に,被告が原告に対して本件特許の実施に向けた準備をしていること(本件特許の実施はされていないこと)を伝えていたことになる。 次に,同年4月分から同年10月分までについては,原告が受領せずに送り返したものもあったが,被告は原告に対して「特許製品販売表」を送付し,実施報告を していたと認められる。また,それには実施報告書の記載事項の一部が明記されていなかったが,記載されていなかった「本製品の形式」の具体的内容は不明であり,これが重要な事項であるとまで認めることはできないし,「単価」や「販売数量」については,「特許製品販売表」に記載されている内容から推測可能であり,少なくとも実施料率が3%となる5000個以上販売されていなかったことは明らかである から,記載事項の一部が明記されていなかったことが原告・被告間の信頼関係を著しく損なうものであるとまでいうことはできない。 そして,被告は同年11月分から平成28年10月分までの「特許製品販売表」を同年12月まで原告に対して送付しなかったが,被告がそのような対応をしたのは,原告が平成27年11月30日付けで,被告に対し,被告が特許製品を生産し ていないとして,被告が毎月送っている報告書や特許料名目での振込みは必要ないことを記載するとともに,同日をもって本件契約を解除したことを記載した内容証明郵便(甲4)を送付したことがきっかけであった(被告代表者供述)。そして,原告は る報告書や特許料名目での振込みは必要ないことを記載するとともに,同日をもって本件契約を解除したことを記載した内容証明郵便(甲4)を送付したことがきっかけであった(被告代表者供述)。そして,原告は,それ以前にも被告が現金書留で送付した実施料を本件契約の解除を理由に返送しており,上記甲4の送付によって,それ以後の実施報告書について事前の受領 拒絶の意思を明確にしたといえ,それ以後の通知(甲5)でも同様の態度を維持している。そうすると,甲4の通知以後,被告は,実施報告書の送付義務の履行について,口頭の提供もしなくとも債務不履行の責めを負わないと見ることも可能であり,まして,原告・被告間の信頼関係を著しく損なうものであるということはできないというべきである。 以上の各事情を踏まえると,被告の報告義務違反が原告との「信頼関係を著しく- 36 -損なう行為」であったと評価することはできないから,原告が被告の報告義務違反について本件契約第16条第2項で予定された損害賠償の額により損害賠償を請求することはできない。 したがって,報告義務違反による損害の有無及び額は債務不履行に基づく損害賠償の一般原則によるべきところ,上記(1)のような報告義務違反によって,直ちに原 告に損害が生じるとは認め難く,本件で原告に報告義務違反による何らかの損害が生じたことを認めるに足りる証拠はない。 (3) 以上より,被告の報告義務違反による損害賠償請求には理由がない。 4 結論以上によれば,原告の請求は,理由がないから棄却することとして,主文のとお り判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官 とおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官 髙松宏之 裁判官 野上誠一 裁判官 大門宏一郎

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