令和4年10月6日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 令和2年(ワ)第3931号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和4年7月19日判決 原告 株式会社中日新聞社 原告訴訟代理人弁護士 田中豊 同宮澤幸夫 被告 首都圏新都市鉄道株式会社 被告訴訟代理人弁護士 富田純司 同木暮信吉 主文 1 被告は、原告に対し、192万3000円及び内137万4000円に対する平成30年4月1日から支払済みまで、内別紙損害金計算表の各「損害額」欄記載の額に対する各「遅延損害金起算日」欄記載の日から支払済みまで、内15万円に対する平成31年4月17日から支払済みまで、各年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを20分し、その1を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は、原告に対し、金4239万4590円及びこれに対する別紙損害金計算書(請求)の「損害金額」欄記載の各金額に対する同別紙「年月日」欄記載の各日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 仮執行宣言 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告が、被告に対し、被告が原告の著作物たる原告が発行する新聞の記事をスキャンして画像データを作成しそれを社内イントラネット用の記録媒体に保存し、被告従業員が同イントラネットに接続して同画像データ 、原告が、被告に対し、被告が原告の著作物たる原告が発行する新聞の記事をスキャンして画像データを作成しそれを社内イントラネット用の記録媒体に保存し、被告従業員が同イントラネットに接続して同画像データを閲覧できるようにしたことが、原告の複製権及び公衆送信権を侵害したことに当たるとし て、民法709条又は同法715条に基づき、損害賠償及び各掲載日の後の日からの平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求する事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲各証拠(明示しない限り枝番号を含む。)及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実) ア原告は、新聞の発行等を目的とする株式会社である。(争いなし)イ被告は、鉄道事業法に基づく第一種鉄道事業等を目的とする株式会社である。(争いなし)被告は、平成17年9月頃から平成31年4月16日までの間、原告の許諾を受けることなく、原告が発行する新聞に掲載された記事のうちの一部の記事 を切り抜く(クリッピング)などした上で、それをスキャンして記事の画像データを作成し、これを社内イントラネット(以下「本件イントラネット」という。)の掲示板のための記録媒体に記録して、本件イントラネットに掲載した。 被告には4つの駅務管理所と1つの乗務管理所が設置されており、本件イントラネットはこれらの事務所やその内部をネットワークで接続するシステム である。被告には、平成17年8月に533名の従業員・役員が在籍し、その 後、基本的に毎年人員が増加し、令和元年には728人の従業員・役員が在籍していた。被告は、平成17年には、4つの駅務管理所に1つずつのアカウントを設定し、乗務管理所には7つのアカウントを設定し、平成27年までに、合計 が増加し、令和元年には728人の従業員・役員が在籍していた。被告は、平成17年には、4つの駅務管理所に1つずつのアカウントを設定し、乗務管理所には7つのアカウントを設定し、平成27年までに、合計39台が、令和元年までには57台がイントラネットにアクセス可能なパソコンとして設置されていた(なお、平成30年から従業員1人ずつにアカウ ントを付与する方式とした。)。出向者、育児休暇中の者などを除くほとんどの被告社員・役員は、上記のアカウントとパソコンを利用してイントラネットにアクセスして、掲載されていた新聞記事を閲覧することができた(以下、被告が、本件イントラネットの掲示板のための記録媒体に記録して本件イントラネットに掲載し、被告社員、役員が閲覧できるようになった原告が発行する新聞 の記事を「本件イントラネット掲載記事」ということがある。)(甲9、10、乙3、4、弁論の全趣旨) 被告は、平成30年4月1日から平成31年3月31日までの間に本件イントラネットに原告が発行した新聞の複数の記事を掲載し、その記事の中には、別紙平成30年度掲載記事目録記載の記事133本(以下、同目録の番号 に従って、「記事1」などといい、これらの記事を総称して「平成30年度掲載記事」という。)がある。 平成30年3月以前の本件イントラネット掲載記事の数やその内容について、これを直接裏付ける証拠の提出はない。 3 争点に対する当事者の主張 本件イントラネット掲載記事と原告が著作権を有する記事(争点1)(原告の主張)新聞記事は、一般に、記者による取り上げる事実の選択、情勢分析、評価、文章上の工夫等が加えられていて、思想、感情が創作的に表現されているから、著作物性が認められる。本件イントラネットに掲載された原告従業員が執筆 一般に、記者による取り上げる事実の選択、情勢分析、評価、文章上の工夫等が加えられていて、思想、感情が創作的に表現されているから、著作物性が認められる。本件イントラネットに掲載された原告従業員が執筆し た記事は、平成30年度掲載記事も含めて、職務著作として原告が著作権を保 有している。 被告が平成30年3月までに本件イントラネットの掲示板に掲載した具体的な記事は、被告が情報を保有していないことを理由に開示しないために不明である。しかし、被告は、平成30年4月から平成31年3月31日までの1年間において、原告が著作権を有する記事の複製物136本(記事177、1 85、215については2本分の記事が掲載されたため2本とカウントする。)を本件イントラネットに掲載し、1か月当たり平均11本程度の記事を利用していた。平成17年9月1日から平成30年3月31日までの間も同様の頻度で原告の記事を不正に利用していたはずであり、このことは、被告経営企画広報課長のC(以下「C」という。)が、令和元年5月28日に、原告が発行する 新聞記事からの上記1年間の使用量はそれ以前の十数年間の使用量と同様であるかとの質問に対して、「ほぼ同じような状況。大きなぶれはない。」と回答していることからも裏付けられる。損害賠償請求に当たって、被侵害記事を原告が個別具体的に主張立証する必要はない。 (被告の主張) 平成30年度掲載記事のうち、記事1、5、51、57、64、106、147を除く記事は、いずれも著作物性があることを争う。これらの記事の多くは、「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」に当たり、原告が具体的にどこに創作性があるのかを明示しない限り著作物であることについての主張責任を果たしたとはいえない。原告は、新聞社に対して提供 くは、「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」に当たり、原告が具体的にどこに創作性があるのかを明示しない限り著作物であることについての主張責任を果たしたとはいえない。原告は、新聞社に対して提供された事実(情報) を新聞記事としているが、このとき各新聞社に提供された事実(情報)そのままの新聞記事が著作物に当たらないことはもちろん、提供された事実(情報)に原告が何らか加工したとしても、加工によって直ちに当該記事が著作物になるものではない。時事問題を扱っている週刊誌や月刊誌は、事実の分析を行い、評価を加えるなどされていることが多く、著作物に当たる記事が多いといえる が、新聞の記事はこれと異なる。 原告は、平成17年9月1日から平成30年3月31日までについては、被侵害記事を個別に特定しておらず、侵害行為の主張立証責任を全く果たしていない。 上記期間の本件イントラネット掲載記事の数についての原告の主張は否認する。本件イントラネットに掲載する件数について取り決めはなく、平成30 年4月1日以降についても、月ごとの掲載本数は一様ではなく、規則性もないので、原告の主張を裏付ける事情はない。Cは、令和元年5月28日に新聞社6社の担当者6名と面談した際、過去の掲載について「厳密に調査していないので不明」と述べ、C自身が広報課長になった以降のことを想定しながら「大きく上振れすることや下振れすることはないかと推測」できると述べたにすぎ ない。 損害(争点2)(原告の主張)ア原告は、平成20年4月1日以降、「著作物使用料規定【記事】」(甲8。以下「本件個別規定」という。)を定め、社内イントラネットにおいて原告の新 聞記事を利用する者に適用している。同規定によれば、社内イントラネットにおいて接続端末 物使用料規定【記事】」(甲8。以下「本件個別規定」という。)を定め、社内イントラネットにおいて原告の新 聞記事を利用する者に適用している。同規定によれば、社内イントラネットにおいて接続端末台数が1000以下のときには、1記事当たりの使用料は1年について2500円となる。なお、原告は、同日以前は、上記使用料よりも高額の使用料を課していたが、本件においては上記金額の限度で請求する。 前記で主張したとおり、被告は、平成17年9月1日から平成26年3月31日までの間、1か月当たり原告が著作権を有する記事を少なくとも11本、上記の態様で利用していた。そうすると、1か月ごとに発生する利用料相当損害金は、次のとおりとなる。 平成26年3月31日まで 2500円×11本×1.05(消費税)=2万8875円/月 平成26年4月1日から平成30年3月31日まで2500円×11本×1.08(消費税)=2万9700円/月そして、被告は、一度掲載した記事を平成31年4月16日まで継続して掲載していたのであり、上記金額は、1年当たりの使用料であるから、同金額が同日まで毎年新たに発生することになる。本件個別規定によれば、その 使用料は現実のアクセスの有無に左右されない。 平成30年4月から平成31年4月までの掲載本数及び上記と同様に計算した損害額(2500円×本数×1.08)は次のとおりである。 平成30年4月掲載記事10本2万7000円平成30年5月掲載記事16本4万3200円平成30年6月掲載記事8本2万1600円平成30年7月掲載記事7本1万8900円平成30年8月掲載記事8本2万1600円平成30年9月掲載記事3本8100円平成30年 掲載記事8本2万1600円平成30年7月掲載記事7本1万8900円平成30年8月掲載記事8本2万1600円平成30年9月掲載記事3本8100円平成30年10月掲載記事12本3万2400円平成30年11月掲載記事14本3万7800円平成30年12月掲載記事11本2万9700円平成31年1月掲載記事21本5万6700円平成31年2月掲載記事10本2万7000円平成31年3月掲載記事14本3万7800円平成31年4月掲載記事2本5400円また、平成17年9月(平成17年9月1日から同月30日まで)の不法行為により発生した使用料相当損害金元本に係る遅延損害金は、翌月1日で ある同年10月1日から起算するものとして請求し、平成17年10月分以降の使用料相当損害金に係る遅延損害金も同様とする。また、上記の1年ごとに発生する使用料相当損害金の元本に係る遅延損害金についても、翌月1 日から起算するものとして請求する。ただし、平成31年4月に発生する使用料相当損害金元本に係る遅延損害金は、その翌月の1日からではなく、侵害終了日の翌日である同月17日から起算するものとして請求する。 弁護士費用相当損害金としては、使用料相当損害金元金の2割に相当する706万5765円を下らない。同損害に係る遅延損害金については、著作 権侵害行為が終了した日の翌日である平成31年4月17日から起算して請求する。 上記を前提に損害額を計算すると、別紙損害金計算書(請求)のとおりとなるため、原告は、被告に対し、著作権法114条3項に基づき、4239万4590円及びこれに対する別紙損害金計算書(請求)の「損害金額」欄 記載の各金額に 、別紙損害金計算書(請求)のとおりとなるため、原告は、被告に対し、著作権法114条3項に基づき、4239万4590円及びこれに対する別紙損害金計算書(請求)の「損害金額」欄 記載の各金額に対する同別紙「年月日」欄記載の各日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求する。 イ被告は、原告の「著作物使用料規定(イントラクリッピング契約料金(月額、税抜))」(甲11。以下「本件包括規定」という。)を適用すべきであると主張するが、一般に包括して使用料を定める規定は、全体として低廉な使 用料を設定することにより著作物を利用しようとする者に事前に利用許諾を受けるインセンティブを与えるという意味合いを有するものであり、著作権侵害事件においてこれを適用すべきとの主張は「侵害得」を許し、著作物利用契約を締結して著作物を適法に利用して使用料を支払った者が損をすることにつながりかねないものであるから失当である。 ウ被告は、被告による記事の利用が非営利で公益性のあるものであり、本件個別規定によれば無料になると主張するが、株式会社である被告の事業が非営利であることはありえないし、記事の利用は最終的に被告の収益向上につながるものであり、被告の主張には理由がない。さらに、被告は、被告による記事の利用が本件個別規定に規定されている申請記事が取材対象者であ る場合に該当して無料になるものもあると主張するが、同規定では営利目的 は除外されており、同規定が適用される余地はない。 (被告の主張)原告の主張のうち、被告が本件イントラネットに掲載した記事を平成31年4月16日まで掲載し続けたとの主張は否認する。 また、被告が掲載した記事について、社員によるアクセス数全体の9割以上 が1週間以内のアクセスであり、1 ントラネットに掲載した記事を平成31年4月16日まで掲載し続けたとの主張は否認する。 また、被告が掲載した記事について、社員によるアクセス数全体の9割以上 が1週間以内のアクセスであり、1年以上経過してからの閲覧があることは考えられない。そうすると、使用料相当損害金も1回利用(1年分)相当額が基準になるはずである。 被侵害者が著作権の行使につき何らかの使用料規定を設けていたとしても、同規定が著作権法114条3項に基づく請求の基礎になるためには同規定が 合理性を有することが前提であるところ、原告はこれを立証していないし、新聞記事を継続的に社内イントラネットに掲載して利用する場合の契約実例も明らかにしないから、同規定は適用されるべきではない。 原告において新聞記事を継続的に社内イントラネットに掲載する場合に適用していたのは、本件包括規定である。仮に原告の算定基準を用いて損害を計 算するのであれば本件包括規定を用いて計算すべきである。このことは、原告が本訴提起前に被告に対して本件に係る使用料を請求してきたときに本件包括規定に基づいて算定した54万円(9000円×12か月×5年分)を請求してきたことからも明らかである。 また、本件個別規定は、「非営利で公益性のある使用の場合」には無料として いるところ、被告は株主である自治体への利益分配を目的として設立運営されている企業ではないからその事業は非営利的であり、記事の利用も、鉄道利用者の安全を何よりも第一に図るといった観点及び鉄道利用者のより良い利便性を図るといった観点から被告の従業員の研究のために行っているから、その利用は、非営利で公益性があるといえる。 さらに、本件個別規定では、申請記事が取材対象者である場合にも無料とさ れているから、被告 ら被告の従業員の研究のために行っているから、その利用は、非営利で公益性があるといえる。 さらに、本件個別規定では、申請記事が取材対象者である場合にも無料とさ れているから、被告が取材対象の記事については損害がないとすべきである。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(本件イントラネット掲載記事と原告が著作権を有する記事)について 本件では、平成30年度掲載記事及び平成30年度よりも前に本件イントラネットに掲載された記事について、被告による原告の複製権、公衆送信権の侵 害の有無が問題になっている。 平成30年度掲載記事についてア平成30年度掲載記事のうちの一部の記事について、被告は、その著作物性を争っている。 しかしながら、平成30年度掲載記事は、事故に関する記事や、新しい機 器やシステムの導入、物品販売、施策の紹介、イベントや企画の紹介、事業等に関する計画、駅の名称、列車接近メロディー、制服の変更等の出来事に関する記事である。そのうち、事故に関する記事については、相当量の情報について、読者に分かりやすく伝わるよう、順序等を整えて記載されるなどされており、表現上の工夫がされている。また、それ以外の記事については、 いずれも、当該記事のテーマに関する直接的な事実関係に加えて、当該テーマに関連する相当数の事項を適宜の順序、形式で記事に組み合わせたり、関係者のインタビューや供述等を、適宜、取捨選択したり要約するなどの表現上の工夫をして記事を作成している。したがって、平成30年度掲載記事は、いずれも創作的な表現であり、著作物であると認められる。 イ以上のとおり、平成30年度掲載記事133本はいずれも著作物であると認められるところ、証拠(甲9、10、23、24、乙19)及び弁論の全趣 的な表現であり、著作物であると認められる。 イ以上のとおり、平成30年度掲載記事133本はいずれも著作物であると認められるところ、証拠(甲9、10、23、24、乙19)及び弁論の全趣旨によれば、これらの記事は原告の発意に基づいて原告の従業員が職務上作成し、原告名義で公表されたことが認められ、原告が著作権者であると認められる(著作権法15条1項)。 そして、被告がこれらの記事を切り抜くなどした上で、その画像データを 作成し、本件イントラネットによる送信用の記録媒体に記録して本件イントラネットに掲載したことは、本件イントラネットが接続されてこれを閲覧できた者等に照らせば、これらの記事に対して有する原告の複製権及び公衆送信権を侵害したと認められる。 平成30年度よりも前に本件イントラネットに掲載された記事について ア平成30年度よりも前に本件イントラネットに掲載された具体的な記事の内容や本数を直接裏付ける証拠はない。 もっとも、被告は、平成17年8月24日に被告が開業した直後から、被告が運営する鉄道に関する記事等について、画像データを作成し、本件イントラネットに掲載をしていた(証人C)。 イ被告は、一定の新聞記事について、切り抜いてそれをA4版用紙に貼るなどした上で、「2012年度新聞記事(当社・沿線)」などのタイトルを記した2穴用フォルダにつづって保存しており(上記の「2012年度」の部分には、該当する年ごとにその年が記載されていた。)、平成16年度から平成29年度分について、そのようなフォルダがある(各年度の新聞記事をつ づって保存した上記フォルダを総称して、「本件フォルダ」ということがある。)。このうち、平成24年度以降の本件フォルダに保存された記事については、記事が フォルダがある(各年度の新聞記事をつ づって保存した上記フォルダを総称して、「本件フォルダ」ということがある。)。このうち、平成24年度以降の本件フォルダに保存された記事については、記事が貼られた用紙に、2つの二重線(枠)の間に、日付、「新聞掲載記事」とのタイトル、取扱部署(「経営企画部広報課」等)が記載され、その下に記事が貼られているもの(以下、このような記事を、単に「枠付き記 事」ということがある。)と、そのような記載がないものがある。平成24年度より前の本件フォルダに保存されたものに、枠付き記事はない。 枠付き記事は、本件イントラネットに掲載する際に容易に周知することができるように、被告が、タイトルや取扱い部署等を記載したものである。 本件フォルダに保存されていた記事のうち、原告が発行した新聞の記事の 数は、別紙集計表の「記事数」欄のとおりであり、そのうち、枠付き記事の 数は同集計表の「枠付きの記事数」欄のとおりである(以下、本件フォルダに保管されていた記事のうち、原告が発行した新聞の記事を「本件保管記事」ということがある。)。 被告は、収集した新聞記事のうち、被告自身及び被告が運営する鉄道の沿線に関する記事(以下「自社記事及び沿線記事」という。)のみを本件フォ ルダで保管し、その余の記事については、管理の手間の観点から廃棄していた。(この項につき、乙10、14、21、証人C)ウ平成24年度以降の本件保管記事のうち、本件イントラネットに掲載された記事の有無及び数本件保管記事のうち、平成23年度以降のものには枠付き記事があるとこ ろ、枠付き記事は、本件イントラネットに掲載する際に容易に周知することができるように、被告がタイトルや取扱い部署等を記載したものである。平成 、平成23年度以降のものには枠付き記事があるとこ ろ、枠付き記事は、本件イントラネットに掲載する際に容易に周知することができるように、被告がタイトルや取扱い部署等を記載したものである。平成28年4月にCが被告の広報課長に就任した時には、新聞記事を本件イントラネットに掲載する際には枠を付した上で掲載する取扱いが確立しており、その後もその取扱いが継続していた(乙15)。 これらによれば、本件保管記事のうち、枠付き記事である別紙集計表の「枠付きの記事数」欄記載の記事(合計99本)については、いずれも被告が本件イントラネットに掲載したと認めることが相当である。 他方、被告では、上記の運用に基づき本件保管記事が保管されていたものといえ、ことさらに同運用に反して保管対象となるべき記事が保管されなか ったり、これと異なる記事が保管されたりしていたことをうかがわせる事情もない(証人C)し、枠付き記事以外の本件保管記事が本件イントラネットに掲載されたことをうかがわせる事情もないから、枠付き記事が存在する平成24年度以降の本件保管記事のうち、枠付き記事以外の記事については、本件イントラネットに掲載されたと認めるには足りない。 エ平成23年度以前の本件保管記事のうち、本件イントラネットに掲載され た記事の有無本件保管記事のうち、平成23年度以前のものには、枠付き記事はない。 しかし、被告は、平成17年8月24日に被告が開業した直後から、被告が運営する鉄道に関する記事等について、画像データを作成し、本件イントラネットに掲載をしていた(前記ア)。そして、平成24年度以降の本件保 管記事の数が合計115本あり、そのうちの枠付き記事が合計99本ある。 これらからすると、平成23年度以前については、本件イントラ トに掲載をしていた(前記ア)。そして、平成24年度以降の本件保 管記事の数が合計115本あり、そのうちの枠付き記事が合計99本ある。 これらからすると、平成23年度以前については、本件イントラネットに掲載される記事に上記の枠を付すとの運用はされていなかったものの、本件保管記事の相当に大きな割合の記事が本件イントラネットに掲載されたと推認できる。そして、本件保管記事の内容(乙14)に照らせば、その大部 分には著作物性が認められ、また、乙10号証及び甲25号証によれば、そのうちの大部分について原告が著作権を有していたことが認められる。 オ平成29年度以前に原告が発行する新聞に掲載された自社及び沿線記事以外の記事について、本件イントラネットに掲載された記事の有無被告は、切り抜いた新聞記事のうち、自社及び沿線記事については、本件 フォルダに保管していたが、自社及び沿線記事に分類しなかった記事は本件フォルダに保存していない。そのような記事の数を直接裏付ける証拠はなく、また、そのうち本件イントラネットに掲載された記事の有無やその数を裏付ける証拠もない。 もっとも、平成30年度掲載記事については、多くが、その内容から、被 告において被告及び被告が運営する鉄道事業の沿線に関するもの以外の記事に分類されると考えられるものであり、それにもかかわらず、それらの記事が本件イントラネットに掲載された。また、平成30年度とそれより前とで、被告において、本件イントラネットに記事を掲載する基準が全く異なったというような事情もうかがわれない。 これらからすると、本件フォルダに保管されている記事以外にも、被告に おいて切り抜き、本件イントラネットに掲載したが、自社及び沿線記事に分類せず、本件フォルダに保存していない記事 これらからすると、本件フォルダに保管されている記事以外にも、被告に おいて切り抜き、本件イントラネットに掲載したが、自社及び沿線記事に分類せず、本件フォルダに保存していない記事が相当数あったと推認することができる。 このことに、原告が従前から継続して新聞を発行していることや平成30年度掲載記事の数や内容等に照らせば、本件フォルダに保存されている記事 以外にも、原告が発行する新聞に掲載された原告が著作権を有する記事について、被告が本件イントラネットに掲載したものがあったと推認できる。 カ平成29年度以前に被告が本件イントラネットに掲載した、原告が発行する新聞に掲載された原告が著作権を有する記事の数上記のとおり、平成29年度以前に原告が発行する新聞に掲載された原告 が著作権を有する記事について、本件フォルダに保存されている本件保管記事の中に本件イントラネットに記載された記事があった(前記ウ、エ)ほか、それに加えて、本件保管記事に含まれないが、被告が本件イントラネットに掲載した記事があったと推認することができる(同オ)。 もっとも、平成29年度以前のものについて、そのようにして被告が本件 イントラネットに掲載した記事の具体的な数や内容を直接的に裏付ける証拠はない。そして、被告は、平成17年8月24日に被告が開業した直後から、被告が運営する鉄道に関する記事等を本件イントラネットに掲載していて、また、原告が従前から継続して新聞を発行していることなどの事情があるものの、他方、平成30年度、被告は、原告が発行する新聞に掲載された 記事のうち、合計295本を本件イントラネットに掲載して、そのうち原告の従業員が作成したものは45%程度にすぎなかった(甲9)。本件フォルダに保存されていない、自社及び沿線 新聞に掲載された 記事のうち、合計295本を本件イントラネットに掲載して、そのうち原告の従業員が作成したものは45%程度にすぎなかった(甲9)。本件フォルダに保存されていない、自社及び沿線記事以外の記事であり、かつ、本件イントラネットに掲載された記事について、原告が著作権を有している記事の割合が平成30年度と同率であったことを裏付ける証拠はない。また、本件 フォルダに保存されている自社及び沿線記事という基準が比較的選別基準 として明確であるのに対し、自社及び沿線記事に含まれない記事について、その切り抜きや本件イントラネットへの掲載の選別基準は明確ではなく、選択者によりその範囲が変わり得るものといえる。平成30年度掲載記事を選別したCが広報課長に就任して記事の選別を行うようになったのは平成28年4月からであり、また、Cは、複数の新聞社の新聞記事で重複する記事 についても幅広くイントラネットに掲載するように変更したと述べる(証人C)。 以上の事実に、平成30年度について被告が本件イントラネットに掲載した原告が著作権を有する記事の数が前記のとおりであることなどの状況等を考慮すると、平成30年度掲載記事の選別を行ったC証人が選別した平 成28年度及び平成29年度については、被告による著作権侵害が認められる記事の総数(自社及び沿線記事に分類した記事及びそれに分類していない記事の合計)は、これら両年度の枠付き記事(自社及び沿線記事に分類した記事の一部)の合計である52本の3倍に当たる156本を下らないものであると認定するのが相当である。 また、本件イントラネットに掲載する記事には枠を付す運用をしており、C証人とは別の者が記事の選別をしていた平成24年度から平成27年度の被告による著作権侵害が認めら 定するのが相当である。 また、本件イントラネットに掲載する記事には枠を付す運用をしており、C証人とは別の者が記事の選別をしていた平成24年度から平成27年度の被告による著作権侵害が認められる記事の総数(自社及び沿線記事に分類した記事及びそれに分類していない記事の合計)は、これらの年度の枠付き記事(自社及び沿線記事に分類した記事の一部)の合計である47本の2倍 に当たる94本を下らないものであると認定するのが相当である。また、本件イントラネットに掲載する記事には枠を付す運用をする前であり、別紙集計表の「記事数」欄記載の記事のうち本件イントラネットに掲載された記事の数が不明な平成17年度から平成23年度については、本件保管記事(自社及び沿線記事に分類した記事)のうち、同「記事数」欄の数の合計の約7 割である104本が本件イントラネットに掲載されたと推計した上で、被告 による著作権侵害が認められる記事の総数(自社及び沿線記事に分類した記事及びそれに分類していない記事の合計)は、この2倍に当たる208本を下らないものであると認定するのが相当である。 そうすると、上記記事の合計は、458本となる。 キ被告において新聞記事の無許可での本件イントラネットへの掲載が発覚 したことを受けて開催された令和元年5月28日の原告を含む新聞社6社との合同面談において、被告の広報課長であるCが、本件イントラネットへの掲載記事数について平成30年以前についても大きく増減していないと思うといった趣旨の発言をしたとしても(甲6)、これは、本件イントラネットに掲載された記事数を調査の上で平成30年度より前の年度も平成30 年度と同じ数の記事が掲載されたことを発言したものではなく、過去に本件イントラネットに掲載された記 これは、本件イントラネットに掲載された記事数を調査の上で平成30年度より前の年度も平成30 年度と同じ数の記事が掲載されたことを発言したものではなく、過去に本件イントラネットに掲載された記事のうち原告が著作権を有する記事の割合が明らかでないなどの上記に述べた事情に照らせば、権利侵害の件数について前記オのとおりの認定を覆すに足りる事情とはいえない。 ク Cは、本件イントラネットへの新聞記事の掲載が問題になったことを受 け、令和元年4月16日から22日までの間に当時本件イントラネットに掲載されていた記事を全て削除したが(C証人)、被告において本件イントラネットに掲載した記事を消去する基準等が定められていた形跡がなく、同期間以前に掲載されていた記事が消去されていたことをうかがわせる事情もないことからすると、本件イントラネットに掲載された記事は、掲載後、同 期間に消去されるまでの間、本件イントラネットに掲載され続けていたと認められる。 2 争点2(損害)について認定事実ア原告は、平成20年4月に本件個別規定(甲8)を定め、原告の発行する 新聞に掲載された記事の利用を許諾する際の使用料についての内部基準を 定めた。 本件個別規定では、使用媒体を「放送、映像(VTR、DVD)など」、「雑誌・書籍、小冊子、パンフレット、会社案内、営業資料、展示」、「ホームページ」、「複写配布物、社内報、会議資料、報告書、講演会資料(非営利)、会報、社内LAN(イントラネット)」(以下「社内LAN等」という。)、「紙面 提供」の5つに区分けし、それぞれの媒体ごとに、配布数等に応じて使用料を定める表が記載されている。そのうち、社内LAN等の項目では、1000部(台)以下について、記事1本につき複写 )、「紙面 提供」の5つに区分けし、それぞれの媒体ごとに、配布数等に応じて使用料を定める表が記載されている。そのうち、社内LAN等の項目では、1000部(台)以下について、記事1本につき複写配布が1000円(税込)、社内LANが2500円(税込)と定められ(ただし、表の末尾には、「※金額は税抜金額」との記載もある。)、備考欄には、「・原則として非営利で配布す るもの」「・社内LAN(イントラネット)での記事使用期間は各記事の掲載日より最長1年間とする。」との記載がある。また、同表に続いて、【割引】の項目には「・使用記事本数が多い場合は、個別に審査の上、適正な料金に割引することができる。」、「・非営利目的での使用は、場合に応じて割引、または無料とすることができる。」との記載があり、【無料】との項目には、「教 育、福祉、社会貢献目的など、非営利で公益性のある使用の場合」、「申請記事が取材対象者である場合(ただし、営利目的、広告目的は除く」との記載がある。 イ原告は、少なくとも平成29年から令和元年にかけて、毎年1000件程度の記事について、記事の利用申請を受けて、本件個別規定に基づいて利用 許諾をした(甲14)。ただし、それらの記事が利用された媒体は不明である。 ウ原告は、本件包括規定を定めていた(甲11)。平成19年6月に改訂後の本件包括規定では、200台以下の端末で記事を利用する場合、月当たりの使用本数が10本以上20本未満で月額4500円、20本以上30本未満 で月額5000円、30本以上40本未満で月額5500円、40本以上5 0本未満で月額6000円、50本以上100本未満で月額8500円、100本以上200本未満で月額1万1000円、その後100本単位で金額が増加し、500本 月額5500円、40本以上5 0本未満で月額6000円、50本以上100本未満で月額8500円、100本以上200本未満で月額1万1000円、その後100本単位で金額が増加し、500本以上は月額2万円と定められている。 原告は、本件個別規定に基づく損害額を主張するところ、上記によれば、原告においては、少なくも平成20年以降は、本件個別規定を適用して原告が発 行する新聞の記事について利用許諾を検討する体制を整えており、これらの規定を複数年にわたり、少なくとも1000件程度適用し、これに基づく使用料を徴収してきた実績があることが認められる。また、本件個別規定には、社内LAN(イントラネット)での利用を想定した文言がある。他方、本件で問題になっているイントラネットでの掲載に関して本件個別規定に基づき支払われ た利用料の額等の実績については不明であり、また、本件個別規定には件数が多い場合の割引に関する規定もあり、件数が相当に多い場合、どの程度本件個別規定の本文で定める額が現実に適用されていたかが必ずしも明らかではない。 さらに、本件イントラネットによる新聞記事の掲載は、被告の業務に関連する最新の時事情報を従業員等に周知することを目的とするものであったことから すると、掲載から短期間で当該記事にアクセスする者は事実上いなくなると認められる。これらの事実に加え、本件に係る被告による侵害態様等を総合的に考慮すると、本件については、原告が著作権の行使につき受けるべき金銭の額(著作権法114条3項)は、掲載された原告の記事1本について掲載期間にかかわらず3000円として、原告に同額の損害が生じたものと認めるのが相 当である。 被告は、被告による使用が本件個別規定における「非営利で公共性のある使用」に当たること、 て掲載期間にかかわらず3000円として、原告に同額の損害が生じたものと認めるのが相 当である。 被告は、被告による使用が本件個別規定における「非営利で公共性のある使用」に当たること、被告が取材対象者に当たる記事も存在することなどを指摘する。本件個別規定の【割引】、【無料】の項目にはこれらの事情により原告が無料での利用を許諾することが記載されている。しかし、株式会社である被告 にこれらの規定が適用されたかは明らかではなく、また、上記で定められてい る取扱いをしなければならないことが一般的であったことを認めるに足りる証拠はない。また、被告は、本件は本件包括規定によるべきであると主張するが、本件個別規定について前記ア、イに認定した事情が認められる状況で、本件包括規定の存在は、本件個別規定も参酌して上記のとおりの損額の額を認定することの妨げになるものとは認められない。 前記のとおり、平成30年度以前については、遅くとも平成30年3月31日までに、原告が著作権を有する記事が458本掲載されたと認めるのが相当であるから、これによる損害は137万4000円となる。平成30年度掲載記事について、別紙損害金計算表の「掲載月」欄記載の月に対応する「記事数」欄記載の数の記事について侵害が成立すると認められる(なお、原告は、記事 177、185、215について被告で2本分の記事が掲載されたことを理由に2本分の損害を計上しているが、単一の記事に係る単一のイントラネットへの掲載であることなどからすると、いずれも1本分の損害を計上するのが相当である。)から、損害額は「損害額」欄記載のとおりとなり、その合計額は、39万9000円になる。 以上を前提にすると、弁護士費用相当損害金は、15万円を下らない。 第4 計上するのが相当である。)から、損害額は「損害額」欄記載のとおりとなり、その合計額は、39万9000円になる。 以上を前提にすると、弁護士費用相当損害金は、15万円を下らない。 第4 結論よって、原告の請求には、192万3000円及び内137万4000円に対しては平成30年4月1日から、別紙損害金計算表の「損害額」欄記載の額に対しては同表の「遅延損害金起算日」欄記載の日から、内15万円については平成 31年4月17日から支払済みまでの遅延損害金を請求する限度で理由があるから、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官柴田義明 裁判官佐伯良子 裁判官仲田憲史
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