平成12(行ウ)292 市立公園廃止処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成13年9月28日 東京地方裁判所 公物・公企業など
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判決文本文13,689 文字)

主文 1 本件訴えをいずれも却下する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告らの請求被告が平成12年10月3日付けでした多摩市立公園の廃止に関する告示(多摩市告示第465号)は,これを取り消す。 2 被告の答弁(本案前の答弁)主文第1項同旨(本案の答弁)原告らの請求を棄却する。 第2 事案の概要本件は,多摩市長が平成12年10月3日付けでした,多摩市α1番地1所在の桜ヶ丘庭園を同日限り廃止する旨の告示につき,同庭園の付近に居住し,これを利用する原告らが,この告示の取消しを求めている事案である。 1 前提となる事実等(各項末尾掲記の証拠等によって認められる。)(1) 国は,65歳以上で歩行は可能であるが虚弱や一人暮らしなどの理由から家庭に引きこもりがちな高齢者を対象に,日常動作訓練から趣味活動等の各種サービスを提供し,高齢者の自立とその家族の負担を軽減するとともに,生きがい活動を支援し,かつ,寝たきりや介護を要する状態となることを防止する目的で,生きがい対応型デイサービス事業等を推進することとし,平成12年度中に施設設備の設置が完了した地方公共団体の生きがい対応型デイサービスセンター等に対し,全額の補助をするとの制度を創設した。 多摩市は,この制度を利用し,生きがい対応型デイサービス事業の対象者が多く存在すると考えられるβ地区において桜ヶ丘生きがいデイサービスセンター(以下「本件センター」という。)を設置することとし,平成12年度予算において,β地区に本件センターを建設するための予算を計上し,平成12年3月29日に多摩市議会において同予算が可決,成立した。本件センターは,前記のとおり,介護保険対象外(虚弱)の65歳以上の市民で徒歩通所できる高齢者を利用者とし 建設するための予算を計上し,平成12年3月29日に多摩市議会において同予算が可決,成立した。本件センターは,前記のとおり,介護保険対象外(虚弱)の65歳以上の市民で徒歩通所できる高齢者を利用者として想定する施設で,健康活動(健康を維持する活動),教養活動(知的・精神的な働きを促進する活動),趣味活動(個人の趣味・志向に沿った活動)その他の活動を行うために設置されるものである。 (甲5,7,弁論の全趣旨)(2) 多摩市長は,本件センターの候補地として,①同市α1番地1所在の桜ヶ丘庭園,②同市γ1番所在のさくら公園,③同市δ1番所在の桜ヶ丘集会所の敷地,④同市ε26番所在のとりで公園,⑤同市δ17番所在のゆう桜ヶ丘(桜ヶ丘コミュニティーセンター)の敷地,⑥同市ε33番所在のいろは坂桜公園の6か所を選定したが,①の桜ヶ丘庭園では庭園機能が失われてしまうこと,②のさくら公園では公園内の桜の大木(9本)の多くを伐採する必要があること,③の桜ヶ丘集会所の敷地では必要な面積の確保が困難で集会所施設と近接し集会所の利用に制約が生ずること,④のとりで公園では傾斜地のため建物基礎設置工事が必要であり予算超過が見込まれること,⑤のゆうβの敷地では建築許可申請及び開発行為変更手続に約6か月間が必要であってその後の工期を考えると平成12年度中の竣工は難しいこと,⑥のいろは坂桜公園では急坂の途中にあり高齢者通所施設としての適切性に欠け通所者の交通安全上問題があることとの問題点がそれぞれ認識されていた。 (甲6)(3) 多摩市長は,自治会や高齢者団体の代表の意見も聴いた上,平成12年4月ころ,桜ヶ丘庭園を本件センター建設のための第一候補地に決定した。 (甲15,弁論の全趣旨)(4) 原告Aらを含む地元住民らは,平成12年5月1日,桜ヶ丘庭園を本件センターの敷地 上,平成12年4月ころ,桜ヶ丘庭園を本件センター建設のための第一候補地に決定した。 (甲15,弁論の全趣旨)(4) 原告Aらを含む地元住民らは,平成12年5月1日,桜ヶ丘庭園を本件センターの敷地とすることに反対する旨の要望書を提出し,また,同月29日には,桜ヶ丘庭園に本件センターを建設する案の撤回を求める陳情書(署名者552名)を多摩市議会議長に対し提出し,同陳情書は同年6月21日に採択された。 他方,多摩市議会議長に対しては,本件センターを建築する案の実行を求める旨の陳情書(署名者2030名)も提出され,同陳情書は同年7月21日に採択された。 多摩市長は,本件センターを桜ヶ丘庭園に建設する件について,多摩市みどりの保全及び育成に関する条例に基づいて設置されたみどりの審議会に諮問したが,みどりの審議会は,同年8月15日,本件センター建設に伴う桜ヶ丘庭園の廃止について反対する旨の答申を提出した。 (甲8,9,10,12,13の1,13の2,22,弁論の全趣旨)(5) 以上のような状況を受けて,多摩市長は,本件センターを計画どおり桜ヶ丘庭園に建設すること,桜ヶ丘庭園の廃止に伴う措置として,現在の桜ヶ丘集会所の敷地を新たな公園として整備すること,及び現在の桜ヶ丘集会所は,本件センターと合わせて桜ヶ丘庭園に合築し,本件センターを2階建てで建設することを内容とする,本件センターの整備計画の一部変更を決定し,平成12年9月5日付けでβ地区の住民に対して通知した。 この一部変更に対しては,平成12年9月10日に原告らから反対意見が出され,同月20日には平成11年度桜ヶ丘連合会会長Bから,桜ヶ丘庭園に本件センターと集会所とを合築する案に反対し,当初の案どおりに桜ヶ丘庭園に平屋で本件センターのみを建築することを求める要望書が提出された。また,同月 平成11年度桜ヶ丘連合会会長Bから,桜ヶ丘庭園に本件センターと集会所とを合築する案に反対し,当初の案どおりに桜ヶ丘庭園に平屋で本件センターのみを建築することを求める要望書が提出された。また,同月21日には,市議会議員16名から,桜ヶ丘庭園に本件センターと集会所を合築する案に反対し,桜ヶ丘庭園には本件センターのみを建築し,集会所は現在の桜ヶ丘集会所の敷地内において改築し,同敷地内に新たな代替公園を整備することを内容とする要望書が提出された。 (甲17,18,23,弁論の全趣旨)(6) 多摩市長は,本件センターを桜ヶ丘庭園に平屋で年度内に建設すること,新たな公園を桜ヶ丘集会所敷地内に整備するとともに集会所を建て替えることを決定し,平成12年9月25日付けでβ地区住民に通知した。 (甲19)(7) 多摩市長は,平成12年10月3日付けで,多摩市立公園条例(昭和47年多摩市条例35号)2条2項の規定に基づき,多摩市α1番地1所在の桜ヶ丘庭園(面積511.86平方メートル)を同日限り廃止するとの告示を行った(以下「本件告示」という。)。 (甲1)(8) Cは平成13年5月12日に死亡し,原告D,E及びFがその相続人の全部である。E及びFは本件訴えを取り下げた。 (弁論の全趣旨,記録上明らかな事実) 2 原告らの主張する本件告示の違法性都市公園法16条は,都市公園の区域内において都市計画法の規定により公園及び緑地以外の施設に係る都市計画事業が施行される場合その他公益上特別の必要がある場合又は廃止される都市公園に代わるべき都市公園が設置される場合のほかはみだりに都市公園を廃止してはならないと規定する。桜ヶ丘庭園は,都市公園法上の都市公園であるが,被告による桜ヶ丘庭園の廃止は,都市公園法16条が規定する例外のいずれの場合にも該当せず,違法である。 みだりに都市公園を廃止してはならないと規定する。桜ヶ丘庭園は,都市公園法上の都市公園であるが,被告による桜ヶ丘庭園の廃止は,都市公園法16条が規定する例外のいずれの場合にも該当せず,違法である。 3 本案前の争点についての当事者の主張(被告の主張)(1) 取消訴訟の原告適格を有するのは,当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」であるところ,「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者である。しかし,都市公園法及び多摩市立公園条例は,地域住民が都市公園を利用する利益や,都市公園が存在することによる環境上の利益等,公園から受ける利益を一般的利益として保護しているのであり,個々の住民が都市公園を具体的に利用する権利を保護するものではない。原告らが従前当該都市公園を利用していたとしても,それは事実上の利益にすぎず,その権利ないし法的地位が認められていたわけではない。したがって,原告らは,本件告示の取消しを求める法律上の利益を有しない。 (2)ア行政事件訴訟法上の処分の取消しの訴えの対象となるのは,「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」であり,処分とは公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められるものをいうところ,告示は,単に公の機関が指定,決定等の処分その他の事項を一般に公に知らせる行為であり,告示そのものが直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められるものではないから,取消訴訟の対象となる処分には該当しない。 イまた,都市公園法及び多摩市立公園条例は,個々の住民が具体的に特定の公園を利用する等の権利を保護するも を確定することが法律上認められるものではないから,取消訴訟の対象となる処分には該当しない。 イまた,都市公園法及び多摩市立公園条例は,個々の住民が具体的に特定の公園を利用する等の権利を保護するものではないから,桜ヶ丘庭園廃止の決定及び本件告示によって,原告らが桜ヶ丘庭園を利用することができなくなったとしても,これをもって原告らの権利義務ないし法的地位に直接影響が及ぼされたということはできない。すなわち,桜ヶ丘庭園廃止の決定と本件告示の一連の行為を一体の行為とみなしたとしても,これは取消訴訟の対象となる処分には該当しない。 (3) よって,本件告示の取消しを求める訴えは,不適法として却下されるべきである。 (原告らの主張)(1) 原告らは,行政事件訴訟法9条の,当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」に該当する。 ア都市公園法は,公園を利用しあるいは公園を含む良好な都市環境を享受する個々の市民の権利・利益を保護しているのであるから,市民であれば誰でも原告適格を有する。 (ア) 都市公園法16条の立法趣旨は,都市公園の存在意義は,単に都市環境の保全のみでなく,都市公園は,国民の災害時の避難場所を提供し,スポーツ,レクリエーションの場として,都市住民の健康な心身の維持・形成に寄与するところにあり,同条は,国民個々人の財産としての都市公園の重要性にかんがみ,都市公園の廃止に厳しい要件を課している。 (イ) 都市公園法は,公衆の都市公園の利用を保護し,これを侵害した者に対する罰則や不利益について定めている(10条の2第4号)が,これは国民個々人の公園を利用する権利を保護する規定である。 (ウ) 都市公園法施行令は,都市公園につき,住民一人当たりの公園敷地面積の標準を10平方メートル以上(市街地は5平方メートル以上)と定め(1条 国民個々人の公園を利用する権利を保護する規定である。 (ウ) 都市公園法施行令は,都市公園につき,住民一人当たりの公園敷地面積の標準を10平方メートル以上(市街地は5平方メートル以上)と定め(1条),都市公園の種類ごとに誘致距離・敷地面積の標準を定め(2条1項),防災の観点に加えて個々人のレクリエーションの場の提供という目的を達成するために,公園内の建物等の施設の面積でさえ,公園面積の一定のパーセンテージを超えてはならない旨の規定がある(8条)。 (エ) 都市公園法の関連法規である都市公園等整備緊急措置法は,住民の心身の健康の保持という個人的法益の保護をその一つの目的としている。 イ仮に,昭和31年の都市公園法制定当時は,国民が都市公園を利用する権利の保護が同法の立法趣旨になかったとしても,その後,都市公園等整備緊急措置法及び都市緑地保全法が制定されたこと,阪神・淡路大震災の経験にかんがみて都市公園は防災の観点からも必要不可欠のものとの認識の下に緊急整備が図られていること,平成12年には東京都議会が「東京の緑化促進に関する決議」を採択したこと,並びに多摩市においても「多摩市みどりの保全及び育成に関する条例」を制定し,「多摩市みどりの基本計画」を定めていることなどからすると,現在においては,都市公園は,都市住民の憩いの場として,また防災上の避難場所としても重要性を増しているから,国民が都市公園を利用する権利は,都市公園法上具体的権利として保護される。 ウ桜ヶ丘庭園は,β地区住民にとって,その憩いの場という点から,また景観,防災の点からも,極めて重要である。他方,本件センターは,桜ヶ丘庭園の地下にある古い防火水槽の上に建てられるものであり,安全性に問題がある上,これによって近隣住民らは通風,景観,日照が害される。したがって,本件庭園の隣 て重要である。他方,本件センターは,桜ヶ丘庭園の地下にある古い防火水槽の上に建てられるものであり,安全性に問題がある上,これによって近隣住民らは通風,景観,日照が害される。したがって,本件庭園の隣地に居住する原告D,同G,同Aについては,桜ヶ丘庭園の廃止により,直接,生活に著しい支障が生じる。 エ原告らは多摩市βの住民であり,桜ヶ丘庭園の近くに居住し,これを利用している。桜ヶ丘庭園を含む一帯の土地は,住民が,緑地空間確保及び集会所建設のために,これを被告に寄付するよう京王帝都電鉄株式会社に求め,実現したという経緯があり,昭和47年12月21日付けの桜ヶ丘自治会連合と被告との覚書(以下「本件覚書」という。)では,京王帝都電鉄株式会社がβ住民の要望に応えて土地を緑地空間確保と集会所建設のために提供すること及び被告がβ住民に代わって寄付を受けることに同意した旨が確認されている。これは,被告が当該土地の寄付を受けるに際し,この土地を公園と集会所の建設のために使用することを約束したことを意味する。このように,桜ヶ丘庭園は原告らβ住民の個別的利益のために設置されたものであり,原告らが桜ヶ丘庭園を利用する権利は,土地が被告に寄付された当時から,具体的権利として具現化されている。 オ法令上都市公園の隣接地に居住する者の個別的利益を保護する趣旨の規定がないからといって,直ちに隣接地居住者の訴えの利益がないということにはならない。法令上,都市公園の廃止について,適切な行政手続の規定が置かれていない状況の下では,相当の期間都市公園の近隣に居住してきた者には,生活環境上の利益の保護を何らかの形で都市公園設置者である市当局に要求する手続的な権利が保障されているとみるべきであり,このような手続法上の権利そのものが争われている場合には,根拠とすべき明文の規定が 環境上の利益の保護を何らかの形で都市公園設置者である市当局に要求する手続的な権利が保障されているとみるべきであり,このような手続法上の権利そのものが争われている場合には,根拠とすべき明文の規定が見当たらない場合でも,都市公園と生活環境に関する条理上の見地から,周辺住民としての原告らの手続上の権利利益を肯定して,本案の審理を行うべきである。 (2) 都市公園の廃止及びその旨の告示は,都市公園法上保護された,国民の公園を利用する権利,ひいては良好な都市環境を享受する権利を奪うものであり,国民の権利義務あるいは国民の法律上の利益に直接関係があるもの,すなわち処分性のある行為である。 第3 当裁判所の判断 1 行政事件訴訟法9条は,取消訴訟の原告適格について規定するが,同条にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり,当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,かかる利益も上記の「法律上保護された利益」に当たり,当該処分によりこれを侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者は,当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである(最高裁昭和49年(行ツ)第99号同53年3月14日第三小法廷判決・民集32巻2号211頁,最高裁昭和52年(行ツ)第56号同57年9月9日第一小法廷判決・民集36巻9号1679頁,最高裁昭和57年(行ツ)第46号平成元年2月17日第二小法廷判決・民集43巻2号56頁参照)。そして,当該行政法規が,不特定多数者の具体的 57年9月9日第一小法廷判決・民集36巻9号1679頁,最高裁昭和57年(行ツ)第46号平成元年2月17日第二小法廷判決・民集43巻2号56頁参照)。そして,当該行政法規が,不特定多数者の具体的利益をそれが帰属する個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むか否かは,当該行政法規の趣旨・目的・当該行政法規が当該処分を通して保護しようとしている利益の内容・性質等を考慮して判断すべきである(最高裁平成元年(行ツ)第130号同4年9月22日第三小法廷判決・民集46巻6号571頁,最高裁平成6年(行ツ)第189号同9年1月28日第三小法廷判決・民集51巻1号250頁参照)。 2 これを本件についてみるに,本件告示の根拠となる行政法規は都市公園法16条及び多摩市立公園条例2条2項であると解されるところ,原告らの原告適格が認められるためには,上記の行政法規が,公園の廃止に当たって,原告らのような当該公園の周辺に居住しこれを利用している者の利益を一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,個々人の個別的利益としても保護する趣旨を含むものであり,かかる利益が法律上保護された利益に当たるといえること,及び桜ヶ丘庭園を廃止するとの本件告示によって,原告らの有する上記利益が侵害されたと認められることが必要となる。 (1) 都市公園法は,都市公園の設置及び管理に関する基準等を定めて,都市公園の健全な発達を図り,もって公共の福祉の増進に資することを目的とし(1条),都市公園の管理は,地方公共団体の設置に係る都市公園にあっては当該地方公共団体が行うこととし(2条の3),都市公園の設置は,都市公園の管理者が当該都市公園の供用を開始するに当たり政令で定める事項を公告することにより設置されるものとしている(2条の2)。同法は,都市公園及び公園施設の設置基準 条の3),都市公園の設置は,都市公園の管理者が当該都市公園の供用を開始するに当たり政令で定める事項を公告することにより設置されるものとしている(2条の2)。同法は,都市公園及び公園施設の設置基準(3条,4条),都市公園の占用の許可に関する事項(6条ないし8条),国の設置に係る都市公園における禁止行為及び許可を要する行為に関する事項(10条の2,10条の3),監督処分(11条,12条)に関する規定を置き,都市公園の設置及び管理に関する基準を定めている。また,同法において,公園管理者は,都市公園の区域内において都市計画法の規定により公園及び緑地以外の施設に係る都市計画事業が施行される場合その他公益上特別の必要がある場合又は廃止される都市公園に代るべき都市公園が設置される場合のほか,みだりに都市公園の区域の全部又は一部について都市公園を廃止してはならないとされている(16条)。 都市公園法18条は,都市公園の設置及び管理に関し必要な事項は,地方公共団体の設置に係る都市公園にあっては当該地方公共団体の条例で,国の設置に係る都市公園にあっては政令で定めるとしているところ,この規定を受けて多摩市立公園の設置,管理について必要な事項を規定している多摩市立公園条例は,同条例1条が都市公園法及び地方自治法の規定によるほか市立公園の設置,管理について必要な事項を規定し,もって市立公園の管理の適正化を図り,市民の福祉の増進と文化の向上に寄与することを目的とすることを明らかにし,同条例2条が公園の設置,変更,廃止等について,市長は,市立公園の設置に際しては,その名称,位置及び区域並びに供用開始の期日を告示すること(2条1項),市長は,市立公園の名称,位置若しくは区域を変更し,又は市立公園を廃止するに際しては,その公園の名称,位置及び変更又は廃止に係る区域 称,位置及び区域並びに供用開始の期日を告示すること(2条1項),市長は,市立公園の名称,位置若しくは区域を変更し,又は市立公園を廃止するに際しては,その公園の名称,位置及び変更又は廃止に係る区域その他必要と認める事項を告示すること(同条2項)を定めている。同条例は,市立公園内における行為の制限(3条),使用の制限(4条),監督処分(13条)並びに同条例3条の行為の制限及び同条例13条の監督処分に従わない場合の過料について規定し(16条),多摩市立の都市公園の設置及び管理に関する基準を定めている。 (2) 以上のとおり,都市公園法及び多摩市立公園条例は,それぞれの第1条に掲げられているとおり都市公園の健全な発達や適正な管理を図ることによって公共の福祉の増進を図るという趣旨から公園の設置及び管理について必要な基準を定めるものであるが,①都市公園は広く一般の利用に供されているものであり,一般国民,市民が都市公園を利用する利益は,通常は当該公園の存在を前提として認められる反射的利益(都市公園管理者が当該都市公園を公共の用に供している限りにおいて自由に当該都市公園を利用することができる利益)にとどまるものであると解されること,②広く一般の利用に供されている都市公園を利用する利益が,利用者の居住地,年齢や当該都市公園の利用頻度,目的,利用形態等によって左右されるべき性格のものでないこと,③(1)に摘示した都市公園法及び多摩市立公園条例の都市公園の設置及び管理に関する規定においてはもとより,原告らが指摘する同法制定後に制定された法令等の定めにおいても,個々の国民,市民の権利を直接に保障する趣旨の規定はうかがわれないこと,④都市公園の廃止については,都市公園法16条が一定の制限をしているが,同規定及びこれに関連する規定において,一定の国民,市民が廃 々の国民,市民の権利を直接に保障する趣旨の規定はうかがわれないこと,④都市公園の廃止については,都市公園法16条が一定の制限をしているが,同規定及びこれに関連する規定において,一定の国民,市民が廃止に係る手続に関与する旨の規定も存しないことを考え併せれば,都市公園法及び同法を受けて制定された多摩市立公園条例がその設置及び管理に関する基準等を定め,都市公園法16条において都市公園の廃止について一定の制限をしている趣旨は,公園の適正な管理を図ることによって広く公益を実現することにあり,そこで考慮されているのは,一般に都市公園を利用する国民ないし地域住民が共通してもつ抽象的,一般的な利益であるというべきであり,個々の都市公園利用者の利益は,都市公園法16条が目指す公益の中に吸収解消され,公益の保護を通じてその結果として保護されるべきものとしているものと解される。 また,公園の隣接地に居住する者は公園の存在自体により生活環境上の利益を受けていることが多いが,このような利益を個々の居住者の個別的利益として保護する趣旨の規定も,法令上には見当たらないし,本件全証拠によっても,桜ヶ丘庭園を廃止するとの決定によって原告らの生活に著しい支障が生ずるという特段の事情は認められない(最高裁昭和62年(行ツ)第49号同年11月24日第三小法廷判決・裁判集民事152号247頁参照)。 (3)アこの点について,原告らは,都市公園法16条の立法趣旨は,都市公園の存在意義は,単に都市環境の保全のみではなく,都市公園は,国民の災害時の避難場所を提供し,スポーツ,レクリエーションの場として,都市住民の健康的な心身の維持・形成に寄与するところにあり,同条は,単に公共の福祉を図るために都市公園の廃止を制限しているのではなく,国民個々人の財産としての都市公園の重要性にかん ョンの場として,都市住民の健康的な心身の維持・形成に寄与するところにあり,同条は,単に公共の福祉を図るために都市公園の廃止を制限しているのではなく,国民個々人の財産としての都市公園の重要性にかんがみ,都市公園の廃止に厳しい要件を課しているのであるから,都市公園法は個々人の公園を利用する権利を保護しているものであると主張する。しかし,都市公園法16条は,「都市公園の区域内において都市計画法の規定により公園及び緑地以外の施設に係る都市計画事業が施行される場合その他公益上特別の必要がある場合又は廃止される都市公園に代るべき都市公園が設置される場合のほか」は都市公園を廃止することができないと定めているにすぎず,個々の公園利用者や当該都市公園の周辺に居住する者の利益等に着目して都市公園の廃止を制限するような趣旨はうかがわれない。そうすると,同条が存在することをもって,一定の範囲の国民,市民の公園を利用する権利が,一般の国民,市民が一般的・抽象的に有する公園を利用する利益以上に個別具体的な権利として保護されているものと解することはできない。原告らの主張は,結局のところ,このような一般的・抽象的な権利を有するにとどまる市民一般に原告適格を認めるべきというのであって,それは,もはや客観訴訟を認めるべきであるとの主張と異ならず,採用の限りではない。 イ原告らは,都市公園法10条の2第4号が,「前三号に掲げるもののほか,公衆の都市公園の利用に著しい支障を及ぼすおそれのある行為で政令で定めるもの」の行為を禁止し,同法28条1項がこれに違反した場合の罰則を定めるなど,都市公園法には,公衆の都市公園の利用を保護し,これを侵害したものに対する罰則や不利益についての定めがあることをもって,国民個々人の公園を利用する権利が保障されていると主張する。しかし,既に説 ど,都市公園法には,公衆の都市公園の利用を保護し,これを侵害したものに対する罰則や不利益についての定めがあることをもって,国民個々人の公園を利用する権利が保障されていると主張する。しかし,既に説示したとおり,広く一般の利用に供されている都市公園を利用する利益が,利用者の居住地,年齢や当該都市公園の利用頻度,目的,利用形態等によって左右されるべき性格のものではないのであるから,同法10条の2第4号において保護しようとしているのは,「公衆」という文言が示すように個々人の個別的利益でなく不特定多数の利益,すなわち,一般に都市公園を利用する国民ないし地域住民が共通してもつ抽象的,一般的な利益であるというべきであり,都市公園法に上記のような規定が存在し,また,多摩市立公園条例3条が市立公園内における行為の制限を定め,同条3項が公衆の利用に支障を及ぼさないと認める場合に限りこの制限された行為をすることを許可することができると規定することをもって,原告らが桜ヶ丘庭園を利用する個別具体的な権利を保障されているということはできない。 ウまた,原告らは,都市公園法施行令が都市公園につき,住民一人当たりの公園敷地の面積の標準を10平方メートル以上(市街地は5平方メートル以上)と定め(1条),都市公園の種類ごとに誘致距離・敷地面積の標準を定め(2条1項),防災の観点に加えて個々人のレクリエーションの場の提供という目的を達成するために,公園内の建物等の施設の面積でさえ,公園面積の一定の割合を超えてはならない旨の規定がある(8条)ことをもって,国民個々人の公園を利用する権利が保障されていると主張する。しかし,上記の規定は,その文言からして,いずれも公園の設置者に向けて公園を設置する際の抽象的な基準について定めているものにすぎず,国民一人一人に具体的な公園の利 する権利が保障されていると主張する。しかし,上記の規定は,その文言からして,いずれも公園の設置者に向けて公園を設置する際の抽象的な基準について定めているものにすぎず,国民一人一人に具体的な公園の利用権を保障するような規定ではないと解すべきであるから,このような規定があることをもって原告らに桜ヶ丘庭園を利用する個別具体的な権利が保障されているなどということはできない。 エ原告らは,桜ヶ丘庭園がβ地区住民にとって重要である一方,本件センターが,桜ヶ丘庭園の地下にある古い防火水槽の上に建てられるものであり,安全性に問題がある上,これによって近隣住民らは通風,景観,日照が害されるから,原告D,同G及び同Aについては,桜ヶ丘庭園の廃止により,直接,生活に著しい支障が生ずるとも主張する。しかし,この主張は,要するところ本件センターの建築による原告らの生活等に対する影響を主張するものにすぎず,桜ヶ丘庭園の廃止自体による影響を主張するものではない。そして,既に説示したとおり,本件全証拠によっても,桜ヶ丘庭園の廃止自体によって原告らの生活等に著しい支障が生ずるとは認められないし,仮に,本件センターの建築によって原告らの生活等に著しい支障が生ずるとしても,そのことは,当該原告らが人格権に基づく差止請求を行使することにより,別途解決すべき問題である。 オさらに,原告らは,桜ヶ丘庭園を含む一帯の土地が京王帝都電鉄株式会社から被告に寄付された経緯及び本件覚書の内容が示すように,被告が,京王帝都電鉄株式会社から上記土地の寄付を受けるに際してこれを公園と集会所の建設のために使用することを約束しており,原告らが桜ヶ丘庭園を利用する具体的権利が保障されていたと主張する。しかし,被告が土地の寄付を受けるに際して上記のとおり約束したとしても,当該行為をもって,被告が, めに使用することを約束しており,原告らが桜ヶ丘庭園を利用する具体的権利が保障されていたと主張する。しかし,被告が土地の寄付を受けるに際して上記のとおり約束したとしても,当該行為をもって,被告が,原告らβ地区の住民一人一人に対して具体的な公園の利用権を保障したなどということはできず,その他原告らが主張するような上記経緯及び本件覚書の内容からも,原告らの庭園利用の個別具体的権利が保障されていると認めることはできない。 カその他の原告らの主張は,いずれも,一般的,抽象的な都市公園の重要性や,都市公園整備の必要性をいうのみで,原告らが桜ヶ丘庭園を利用するについて個別具体的な権利を保障されていることの根拠となるものではなく,原告らの主張はいずれも採用することができない。 (4) なお,原告らは,相当期間都市公園の近隣に居住してきた者には,生活環境上の利益の保護を何らかの形で都市公園設置者である市当局に要求する手続的な権利が保障されており,本件でも周辺住民としての原告らの手続上の権利利益が認められるから,原告らは法律上の利益を有する旨の主張をする。 しかし,前記1の「法律上の利益を有する者」に関する解釈を前提に,前記第2の1の各事実,及びこれまでに検討した諸法令の規定内容に照らして考えると,本件において,原告らが生活環境上の利益の保護を都市公園設置者である被告に要求する手続的な権利を法令上又は条理上保護されているとは認め難いから,原告らの主張は前提を欠くものというほかない。 3 以上からすると,原告らが桜ヶ丘庭園を利用することなどについて有する利益が,一般的公益に吸収解消されることなく,個別的利益として保護されているとは認め難く,原告らは,本件告示の取消しを求めるについて法律上の利益を有しないから,本件訴えについて原告適格を有しないというべき ,一般的公益に吸収解消されることなく,個別的利益として保護されているとは認め難く,原告らは,本件告示の取消しを求めるについて法律上の利益を有しないから,本件訴えについて原告適格を有しないというべきである(なお,亡C訴訟承継人原告Dについては,亡Cの主張していた法律上の利益が人格権的なもののみであるとみると,その性質上一身専属的なものであるとして相続の対象とならず,承継は認められないこととなるが,同人の主張していた法律上の利益の中には経済的利益の面も含まれると解する余地もないではないから,適法な訴訟承継があったものとして,他の原告らと同様に原告適格についての判断を示した次第である。)。 第4 結論よって,原告らの本件訴えは,その余の点を判断するまでもなく不適法であるから却下することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部裁判長裁判官藤山雅行裁判官村田斉志裁判官水野正則

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