- 1 - 令和4年3月10日判決言渡令和3年(行コ)第25号法人税更正処分等取消請求控訴,同附帯控訴事件(原審・東京地方裁判所平成28年(行ウ)第586号) 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 本件附帯控訴を棄却する。 3 控訴費用は控訴人の,附帯控訴費用は被控訴人の各負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨等 1 控訴の趣旨⑴ 原判決中,控訴人の敗訴部分を取り消す。 ⑵ 上記部分につき,被控訴人の請求をいずれも棄却する。 ⑶ 訴訟費用は,第1,2審を通じ,被控訴人の負担とする。 2 附帯控訴の趣旨⑴ 原判決を次のとおり変更する。 ⑵ C税務署長が被控訴人に対して平成24年3月27日付けでした被控訴人の同18年4月1日から同19年3月31日までの事業年度の法人税についての更正処分(ただし,平成26年1月28日付け減額更正処分及び同28年6月21日付け裁決により一部取り消された後のもの)のうち納付すべき税額■■■■■■■■■■■■円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分(ただし,平成26年1月28日付け変更決定処分及び同28年6月21日付け裁決により一部取り消された後のもの)のうち過少申告加算税の税額■■■■■■■■■円を超える部分をいずれも取り消す。 ⑶ C税務署長が被控訴人に対して平成24年3月27日付けでした被控訴人の同19年4月1日から同20年3月31日までの事業年度の法人税につい - 2 -ての更正処分(ただし,平成26年1月28日付け減額更正処分及び同28年6月21日付け裁決により一部取り消された後のもの)のうち納付すべき税額■■■■■■■■■■■■■円を超える部分及び過少申告加算税賦課決 分(ただし,平成26年1月28日付け減額更正処分及び同28年6月21日付け裁決により一部取り消された後のもの)のうち納付すべき税額■■■■■■■■■■■■■円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分(ただし,平成26年1月28日付け変更決定処分及び同28年6月21日付け裁決により一部取り消された後のもの)のうち過少申告加算税の税額■■■■■■■■■円を超える部分をいずれも取り消す。 ⑷ C税務署長が被控訴人に対して平成24年3月27日付けでした被控訴人の同20年4月1日から同21年3月31日までの事業年度の法人税についての更正処分(ただし,平成26年1月28日付け減額更正処分により一部取り消された後のもの)のうち納付すべき税額■■■■■■■■■■■■円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分をいずれも取り消す。 ⑸ C税務署長が被控訴人に対して平成24年3月27日付けでした被控訴人の同21年4月1日から同22年3月31日までの事業年度の法人税についての更正処分のうち納付すべき税額■■■■■■■■■■■■円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分をいずれも取り消す。 ⑹ 訴訟費用は,第1,2審を通じ,控訴人の負担とする。 第2 事案の概要等 1 事案の概要(略称については,特段の言及がない限り,原判決の記述に従う。)本件は,被控訴人が,平成19年3月期から平成22年3月期までの各事業年度(本件各事業年度)の確定申告に当たり,ポーランドにある間接子会社(本件国外関連者)との間で締結したライセンス契約(本件ライセンス契約。 本件ライセンス契約に係る被控訴人と本件国外関連者との取引が「本件国外関連取引」である。)の対価であるロイヤルティの額(本件対価額)を収益の額に算入して確定申告したところ,C税務署長(処分行政庁) 本件ライセンス契約に係る被控訴人と本件国外関連者との取引が「本件国外関連取引」である。)の対価であるロイヤルティの額(本件対価額)を収益の額に算入して確定申告したところ,C税務署長(処分行政庁)が,本件対価額は租税特別措置法(措置法)66条の4第2項2号ロ及び同法施行令(措置法施行令)39条の12第8項1号(それぞれ適用される年度のもの)に定める方 - 3 -法により算定した独立企業間価格に満たないことを理由に,措置法66条の4第1項に定める国外関連者との取引に係る課税の特例の規定により,本件国外関連取引が独立企業間価格で行われたものとみなされるとし,被控訴人の本件各事業年度の所得金額に独立企業間価格と本件対価額との差額を加算すべきであるとして,法人税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分をしたことから,被控訴人が,控訴人に対し,これらの処分(ただし,本件裁決等により一部取り消された後のもの。本件各更正処分及び本件各賦課決定処分)の全部又は一部の取消しを求める事案である。 原審は,本件国外関連取引に係る独立企業間価格の算定において残余利益分割法を適用するに当たり,①控訴人の主張する基本的利益の算定は相当であるが,②残余利益の分割については,重要な無形資産の開発に係る被控訴人及び本件国外関連者の各支出額のほかに,本件国外関連取引に係る超過減価償却費を分割要因に加えて配分するのが相当であり,③これを基に本件国外関連取引に係る独立企業間価格等を計算すると,本件各事業年度のうち平成22年3月期についてのみ国外移転所得が生じることとなるなどとして,平成21年3月期に係る更正処分及び賦課決定処分については被控訴人の主張に理由があるとしてそれらの処分の全部を取り消し,平成19年3月期,平成20年3月期及び平成22年3月期に係る各 るなどとして,平成21年3月期に係る更正処分及び賦課決定処分については被控訴人の主張に理由があるとしてそれらの処分の全部を取り消し,平成19年3月期,平成20年3月期及び平成22年3月期に係る各更正処分及び各賦課決定処分については被控訴人の主張に一部理由があるとしてそれらの処分の各一部を取り消した。 控訴人及び被控訴人は,それぞれ自己の敗訴部分を不服として本件控訴及び本件附帯控訴をした。 2 関係法令等,前提事実,争点及び当事者の主張は,後記3のとおり当審における当事者の補充主張を付加するほか,原判決の「事実及び理由」の「第2 事案の概要」の1から3まで,別紙2-1から別紙6まで及び別表1から17まで(原判決6頁5行目から27頁15行目まで,102頁から189頁まで及び200頁から210頁まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 - 4 -ただし,原判決のうち理由付記に関する部分(原判決27頁11行目及び12行目,154頁9行目から14行目まで(別紙5の「第4」),189頁8行目から15行目まで(別紙6の「第4」))を全て除き,また,原判決27頁13行目の「⑶」を「⑵」に改める。 3 当審における当事者の補充主張(当審における控訴人の補充主張)⑴ 残余利益の分割において重要な無形資産以外の利益発生要因を考慮することの可否についてア残余利益分割法は,法人又は国外関連者が重要な無形資産を有する場合において,第1段階として,分割対象利益のうち重要な無形資産を有しない非関連者間取引において通常得られる利益に相当する金額(基本的利益)を当該法人及び国外関連者それぞれに配分し,第2段階として,基本的利益を配分した後の残額(残余利益)を当該法人又は国外関連者が有する当該重要な無形資産の価値に応じて合理的に配分する方 (基本的利益)を当該法人及び国外関連者それぞれに配分し,第2段階として,基本的利益を配分した後の残額(残余利益)を当該法人又は国外関連者が有する当該重要な無形資産の価値に応じて合理的に配分する方法により独立企業間価格を算定する方法である。残余利益分割法がこのような2段階の算定を経るのは,重要な無形資産については,その独自性・個別性により,市場において取引相場が存在せず,重要な無形資産の貢献により獲得される利益を直接把握することが困難であることなどによるものである。 このような残余利益分割法の趣旨等を踏まえると,残余利益の分割要因については,基本的には「重要な無形資産」のみをもって考慮されることが想定されているというべきであり,「重要な無形資産」とは全く無関係な別個の要因による超過利益が発生していることが明らかな場合であれば格別,そうではなく,重要な無形資産又はその影響により超過利益が発生している場合については,重要な無形資産の価値に応じて残余利益を分割しさえすれば,合理的な独立企業間価格を算定することができるというべきである。 - 5 -なお,残余利益分割法における「重要な無形資産」とは,個別の具体的事実関係の下において,残余利益を生み出すことに貢献するような,営業利益の獲得に大きな影響を与える特許権,ブランド又はノウハウなどであり,残余利益と関連性を有する重要なものに限られる。 イ仮に,「重要な無形資産」とは全く無関係な別個の要因による超過利益があると考えられる場合には,前記アのとおり残余利益分割法において本来的に想定されている超過利益が「重要な無形資産」によるものであることからすれば,当該要因について残余利益の分割要因と認めるには,同要因が「重要な無形資産」に匹敵する程度の価値(重要性)を備え,超過 来的に想定されている超過利益が「重要な無形資産」によるものであることからすれば,当該要因について残余利益の分割要因と認めるには,同要因が「重要な無形資産」に匹敵する程度の価値(重要性)を備え,超過利益獲得に寄与する(相関関係のある)ものと認められる必要があるというべきである。 ⑵ 本件国外関連者に係る設備投資を分割要因として考慮すべきでないことについてア製造業において,必須の設備投資による売上高の増大に伴って比例的に増加した利益は,超過利益を構成するものではなく,基本的利益に含まれるものである。 本件国外関連者の基本的利益は,本件比較対象法人の売上高営業利益率の平均値に本件国外関連者の総売上高を乗じることにより算定していることから,本件国外関連者が単に生産ラインを増設するなどして事業規模を拡大し,それに伴い比例的に増大した利益については,基本的利益に含まれているというべきである。 イ本件における超過利益に本件国外関連者の初期及び追加の設備投資の影響による増加利益が含まれるというためには,当該設備投資がその独自性・個別性により経済競争上の優越的な立場をもたらし,「重要な無形資産」に匹敵する程度の価値(重要性)を備え,かつ,超過利益獲得への寄与を満たすことで,超過利益と評価し得る「規模の利益」を享受し - 6 -ていると認められる必要がある。 しかるに,製造業における設備投資が単に営業利益を増大させるという一般的な利益を超えて超過利益と評価し得る「規模の利益」を生み出す要因となることは,現実的には認め難い。もとより,前記アのとおり,本件国外関連者の設備投資による売上高等の増大は,事業規模等が類似する比較対象法人との比較による基本的利益の算定において考慮済みであるから,かかる事情を残余利益(超過利益)の り,前記アのとおり,本件国外関連者の設備投資による売上高等の増大は,事業規模等が類似する比較対象法人との比較による基本的利益の算定において考慮済みであるから,かかる事情を残余利益(超過利益)の分割要因として考慮すべきではない。 仮に,本件国外関連者が設備投資による事業規模の拡大等により規模の利益を享受しているとすれば,売上高の増加に伴って売上高営業利益率も上昇するはずであるが,本件各事業年度における本件国外関連者の売上高や売上高営業利益率等の推移並びに販売数量及び平均費用(1単位当たりの総営業費用)の推移に加え,次のaからdまでにおいて指摘する点に照らせば,本件国外関連者について,事業規模(生産量)の増大により製品1個当たりの生産に必要な費用が逓減する結果,利益率が高まる傾向(相関関係)が生じたとの事実は認めることができない。そうすると,本件国外関連者がおよそ規模の利益を享受しているとは認め難いし,少なくとも超過利益と評価し得る「規模の利益」を享受しているとまでは認められない。 a 甲第308号証の図Aは,異常な数値(平成17年1月の数値は,量産開始初年度の最初の月のもので,当該月は生産量が非常に少なかったことによるものであり,平成20年12月の数値は,リーマンショックの影響で需要が急減し,生産量が急減したことによるものである。)の影響を強く受けた不合理なものである。 b 平均営業費用の逓減は歩留率の向上の影響を受けたものである。 c 平均営業費用の逓減は,大規模施設の減価償却費の算定の基礎とな - 7 -る耐用年数が平成21年1月1日に■年から■■年に変更され,減価償却費の計上額が減少したことが大きく影響している。 d 甲第308号証の図A,図Bは,在庫を無視した不正確な数値を基礎としており,各図による分析は正確 1年1月1日に■年から■■年に変更され,減価償却費の計上額が減少したことが大きく影響している。 d 甲第308号証の図A,図Bは,在庫を無視した不正確な数値を基礎としており,各図による分析は正確性を欠く。 また,設備投資に関する被控訴人と本件国外関連者の寄与・貢献の程度をみると,親会社である被控訴人は,製品Dの需要予測をし,本件国外関連者の設立を決定した後,その生産拠点となる工場の所在地及び規模等を検討し,その設備設計も行い,ポーランドにおいて一貫して量産する体制を整えた上で,需要予測の変化に応じて量産開始時期を早めるなどの対応も執り,これらの事業戦略の策定・実行に必要な資金の調達方法についても検討し,事業の利益を最大化させているなど,設備投資に関する被控訴人の寄与・貢献の程度は極めて大きいのに対し,子会社である本件国外関連者は,生産設備の法的な所有者として,被控訴人の設備投資に関する企画・計画等を実行したものの,被控訴人の財務能力あるいは信用を離れて独自の財務能力等を有したり,生産設備の設計をしたり,設備投資に係るリスクを低減させたりしたわけではなく,上記以外に特段の寄与・貢献をしていないのであって,設備投資に関する本件国外関連者の寄与・貢献の程度は極めて小さい。 ウ以上によれば,本件国外関連者による設備投資は,「重要な無形資産」に匹敵する程度の価値(重要性)を備えたものでも,超過利益獲得に寄与する(相関関係がある)ものでもないから,本件における残余利益の分割においては,被控訴人及び本件国外関連者が有する「重要な無形資産」の価値に応じて分割すべきであり,かつ,それで足りるというべきである。 ⑶ 本件において「重要な無形資産」以外の分割要因があるとした場合の分割方法についてア仮に,本件超過利益の発生要因とし の価値に応じて分割すべきであり,かつ,それで足りるというべきである。 ⑶ 本件において「重要な無形資産」以外の分割要因があるとした場合の分割方法についてア仮に,本件超過利益の発生要因として,「重要な無形資産」とは無関係 - 8 -な設備投資等の要因が別個にあったとしても,このような要因に基づく利益が親会社である被控訴人と子会社である本件国外関連者のどちらに帰属されるべきかについては,別途検討が必要である。 その検討に当たっては,親会社が子会社の事業に対して行う活動が,①株主活動又は投資家としての活動に該当するか否か,②株主活動又は投資家としての活動に該当しない場合に,有償性のある活動に該当するか否かをみるべきであるところ,一般に,親会社が子会社の設立準備中に子会社の事業計画を策定するような活動は,株主活動及び投資家としての活動には当たらず,子会社に対する有償性のある活動に当たるものと解され,親会社が子会社の設立後に子会社の事業計画等を見直すような活動についても,基本的には株主活動及び投資家としての活動には当たらず,有償性のある活動に当たるものと解される。 設備投資に関する被控訴人及び本件国外関連者の寄与・貢献の程度は,前記⑵イのとおりであり,被控訴人は,①本件国外関連者の設立前の事業計画策定及び②設立後の事業計画見直しに当たる活動等として,事業戦略の策定・実行を行うなどしており,単なる投資家としての活動にとどまるものではなく,有償性のある活動をしていることは明らかであるから,これにより生じた超過利益については,親会社である被控訴人に帰属されるべきある。 イまた,仮に,本件において,設備投資及び資本集約度の高い生産構造の影響による超過利益が認められるとしても,設備投資に関する被控訴人及び本件国外関連者 社である被控訴人に帰属されるべきある。 イまた,仮に,本件において,設備投資及び資本集約度の高い生産構造の影響による超過利益が認められるとしても,設備投資に関する被控訴人及び本件国外関連者の寄与・貢献の程度は,前記⑵イのとおりであり,本件国外関連者の寄与・貢献の程度については,本件分割方法により,被控訴人の研究開発費と本件国外関連者の■■部門費の相対的割合によって測った分割割合を超えるものとはならないため,本件分割方法により残余利益が適切に分割されており,被控訴人に分割される超過利益は過大なも - 9 -のではないと認められる。 ⑷ 仮に,設備投資を分割要因とみるとしても,「超過減価償却費」を比較の指標として用いるのは相当ではないことについてア仮に,設備投資を分割要因とみるとしても,設備投資に係る資産の減価償却費をその表象とみて比較指標として用いるには様々な調整等を要するのであって,一律に比較指標とすることはできない。 イすなわち,まず,「減価償却」とは,有形固定資産の取得原価をその耐用年数にわたって一定の組織的な方法で費用として配分する会計手続であり,通常の償却方法のほか,政策的要請に基づく加速度償却(特別償却),耐用年数の短縮などの様々な方法(例外規定)も存在する。 減価償却費の額は,各企業が自身の現状や今後の計画を踏まえて減価償却資産を取得し,償却方法を任意に選択した上で計算されているものであるから,その金額を一律的に比較しても意味がなく,比較指標として用いるためには,同一の条件となるよう調整が必要である。 ウまた,仮に,本件国外関連者の初期及び追加の設備投資が超過利益の獲得に寄与・貢献しているとしても,本件各事業年度において本件製品の製造に使用されていない設備(固定資産)は,製造機能を果たし 。 ウまた,仮に,本件国外関連者の初期及び追加の設備投資が超過利益の獲得に寄与・貢献しているとしても,本件各事業年度において本件製品の製造に使用されていない設備(固定資産)は,製造機能を果たしておらず,超過利益の分割要因の要件である超過利益獲得への寄与を欠くものであるから,当該「超過減価償却費」の計算の基となる本件国外関連者の減価償却費は,現実に使用されている設備(固定資産)を対象とすべきである。 しかるに,本件国外関連者の設備(固定資産)は,■■ライン全てが本件製品の製造に使用されていたわけではなく,平成20年においては少なくとも■ラインが,平成21年においては少なくとも■ラインが使用されていなかった(乙198の1から乙199の2まで)のであるから,「超過減価償却費」の計算に当たっては,本件各事業年度における本件国外関連者の減価償却費から本件製品の製造に使用されていない設備に係る減価償却 - 10 -費を控除すべきである。 エさらに,本件国外関連者の初期及び追加の設備投資を表象する要因の算定に当たっては,本件各事業年度における本件比較対象法人の支払リース料や外注費に係る金額も,本件比較対象法人の減価償却費と同様,製品の製造に貢献するかどうかを検討すべきである。 ⑸ また,分割対象利益の配分に用いる要因が複数ある場合には,それぞれの要因について,分割対象利益の発生に対する寄与・貢献の程度に応じて,適切にウエイト付けする必要がある。 (当審における被控訴人の補充主張)⑴ 「重要な無形資産」とそれ以外の要因とが重なり合い相互に影響しながら超過利益を生じさせている場合であっても,「重要な無形資産」とは客観的に別個の要因及びそれに起因する超過利益は,基本的利益の算定において考慮する必要があることについてア措 相互に影響しながら超過利益を生じさせている場合であっても,「重要な無形資産」とは客観的に別個の要因及びそれに起因する超過利益は,基本的利益の算定において考慮する必要があることについてア措置法66条の4第2項1号ニの委任を受けた同法施行令の残余利益分割法に係る規定(措置法施行令39条の12第8項1号)は,基本的利益の算定において利益指標に差異をもたらす全ての要因を総合的に考慮して比較可能性の有無を判定するものとし,例外的に「重要な無形資産」の存在(独自の機能の存在)の貢献による利益だけを基本的利益の算定から排除し,残余利益の分割において考慮すべき旨を定めている。また,製造事業においては,「重要な無形資産」はそれ以外の資産や活動・機能と密接に組み合わされ相互に影響しながら売上げや利益(超過利益を含む。)の獲得に貢献していることが常態であるから,これらの貢献を残余利益の分割において考慮することになると,基本的利益の算定において考慮される要因は事実上なくなってしまう。 したがって,重要な無形資産とは客観的に別個の要因は,基本的利益の算定において考慮すべきである(残余利益分割法における基本原則)。 - 11 -イ 2017年版ガイドライン(甲303,乙232)は,市場の規模又は相対的な競争状況等の現地市場は,所有もコントロールもできず,無形資産ではないとし,市場の条件と無形資産が別個のものであることを前提に,市場の条件又は現地市場の状況と無形資産を区別することは重要であると明確に述べているところ(パラグラフ6.9),ヨーロッパ自動車市場においてEuro規制等を考慮に入れない乗用車の製造・販売活動はあり得ないことから,Euro規制等がヨーロッパにおける自動車の製造・販売市場の条件に該当することは自明であり,「市場 ロッパ自動車市場においてEuro規制等を考慮に入れない乗用車の製造・販売活動はあり得ないことから,Euro規制等がヨーロッパにおける自動車の製造・販売市場の条件に該当することは自明であり,「市場の条件」を構成するEuro規制等は,「重要な無形資産」とは別個の比較可能性要因であって,両者を区別することは重要である。 また,OECDガイドラインは,寡占等の「市場における競争の程度」を,無形資産とは客観的に全く別個の「経済状況」の要因の一つとして挙げているところ(2010年版ガイドライン(乙27,231)パラグラフ1.55,2017年版ガイドライン(乙232)パラグラフ1.110),本件国外関連者(及びE・ヨーロッパ)は,重要な無形資産とは異なる大規模設備投資(本件設備投資)・大量生産を通じて実現した規模の経済によって非常に高い参入障壁を設け,その結果2社寡占状態が形成されたのであって,本件における2社寡占状態も「重要な無形資産」とは全く別個の比較可能性要因である。 このような設備投資(本件設備投資)や競争状況(2社寡占状態)その他の要因は,「重要な無形資産」とは別個のものであり,それらの要因が超過利益を生じさせ,当該超過利益が全体の超過利益の中に含まれているという事実が明らかである。また,両者の寄与部分を正確に特定・分別できないとしても,「重要な無形資産」とは客観的に別個の上記各要因に起因する本件超過利益が相当大きなものである(あるいは決して無視できる程小さなものではない)と合理的に推認することができる。 - 12 -このように,本件においては,超過利益の発生・増加に当たり,「重要な無形資産」とは別個のこれらの要因が決定的であり,経済的に重要な意味を持つのであるから,前記アの基本原則を貫徹し, -このように,本件においては,超過利益の発生・増加に当たり,「重要な無形資産」とは別個のこれらの要因が決定的であり,経済的に重要な意味を持つのであるから,前記アの基本原則を貫徹し,「重要な無形資産」とは別個の超過利益の源泉となる要因(比較可能性要因)については,基本的利益の算定において考慮すべきである。 ⑵ 本件国外関連者と本件比較対象法人が比較可能性を欠くことについてア平成23年政令第199号による改正後の措置法施行令39条の12第8項1号ハ⑴において,比較対象取引と検証対象取引に差異が認められる場合には適切な差異調整を行うことが求められているが,そのような差異調整は,比較対象取引を候補取引の中から抽出する過程で行うことは不可能であり,実際に選定された比較対象取引を前提にしなければ行えないことからしても,比較対象取引の比較対象性(比較可能性)の有無は,比較対象取引を候補取引の中から選定するための抽出の方法・基準が合理的であるか否かではなく,実際に選定された比較対象取引が検証対象取引と比較可能性を有しているか否かという基準に従って判断すべきである。 イ実際に選定された比較対象法人が比較可能性を有するためには,①「重要な無形資産」を有していないことに加えて,②当該比較対象法人が検証対象法人と法令の求める比較可能性を有するか否か,すなわち,検証対象法人(本件国外関連者)の事業と同種の事業を営み,市場,事業規模及び「その他の要因」について利益指標に影響を及ぼす差異を有しないか否かを検討する必要がある。上記の「その他の要因」としては,前記アの改正がされる前の措置法施行令39条の12第8項1号の下では,売上高営業利益率に影響を及ぼす全ての要因(重要な無形資産を除く。)を含むのであるから,排ガス規制の製品需要への影響や としては,前記アの改正がされる前の措置法施行令39条の12第8項1号の下では,売上高営業利益率に影響を及ぼす全ての要因(重要な無形資産を除く。)を含むのであるから,排ガス規制の製品需要への影響や費用構造(生産構造)の類似性も分析対象に含めて比較可能性分析を行うことが法令上求められていたのであって,これらの全ての要因(「重要な無形資産」の「保有」だけは - 13 -除く。)を基本的利益の算定の場面において総合的に考慮して,比較可能性の有無を判定する必要がある。 すなわち,製造活動により製造する製品の種類の違いも,さらに,それに伴う事業内容,市場条件,生産構造(収益構造)等といった本件国外関連者と本件比較対象法人との差異も,それが「重要な無形資産」を有することによるものでなく,かつ,売上高営業利益率に影響を及ぼすものである限り,全て基本的利益の算定において考慮に入れる必要があるのであって,本件比較対象法人と本件国外関連者との比較可能性の有無の検討に当たり,「重要な無形資産」とは別個のEU市場における排ガス規制の製品需要への影響,2社寡占状態や費用構造(生産構造)の類似性の有無を検討すべきである。 ウ本件においては,EU市場の状況(ディーゼル乗用車数が非常に多いこと及びEuro規制等が強化されたこと)並びにそれに伴う製品需要増加,本件国外関連者における本件設備投資(事業規模)及び資本集約度の高い費用構造(生産構造),さらには,それらが築いた非常に高い参入障壁がもたらした2社寡占状態は,いずれも「重要な無形資産」とは客観的に全く別個の要因として,本件国外関連者の売上高及び売上高営業利益率を増加・上昇させた。これに対して,これらの要因は本件比較対象法人には当てはまらず,本件比較対象法人に影響を及ぼすことはなかった。しかも,本 の要因として,本件国外関連者の売上高及び売上高営業利益率を増加・上昇させた。これに対して,これらの要因は本件比較対象法人には当てはまらず,本件比較対象法人に影響を及ぼすことはなかった。しかも,本件国外関連者における「重要な無形資産」とは別個の要因による超過利益,特に,本件設備投資及び資本集約度の高い費用構造(生産構造)に起因する超過利益(本件比較対象法人が享受できない規模の利益)は相当大きなものであったと認められるから,設備投資及び費用構造(生産構造)を含む上記の比較可能性要因の差異が売上高営業利益率に影響を及ぼすことは客観的に明らかであり,本件国外関連者と本件比較対象法人との間には重要な差異があるのであって,両者は比較可能性を有しない。 - 14 -⑶ したがって,本件における基本的利益の算定は違法であり,その結果,本件残余利益の算定もまた違法であって,本件各処分は全て違法である。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,原審と同じく,平成19年3月期から平成21年3月期までにおいては国外移転所得の発生は認められないが,平成22年3月期については■■■■■■■■■■■円の国外移転所得の発生が認められ,本件各処分のうち原判決主文第1項から第4項までの各金額を超える部分(平成21年3月期に係る更正処分及び賦課決定処分については全部)は違法であり,本件各処分の取消しを求める被控訴人の請求はその限度で理由があると判断する。その理由は,次のとおり補正し,後記2及び3のとおり当審における当事者の補充主張に対する判断を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」の1から7まで,9,別紙7,別表Aから別表Dまで及び別表Ⅰ-1から別表Ⅱまで(原判決28頁1行目から96頁9行目まで,97頁24行目から99頁17行目まで) 実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」の1から7まで,9,別紙7,別表Aから別表Dまで及び別表Ⅰ-1から別表Ⅱまで(原判決28頁1行目から96頁9行目まで,97頁24行目から99頁17行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)⑴ 原判決56頁2行目の末尾に「もっとも,これらのロイヤルティ料率と本件ロイヤルティの料率との比較は,本件各更正処分の適否に直ちに影響を与えるものではない。」を加える。 ⑵ 同79頁13行目の「分割対象利益」から15行目の「こととなるが」までを「重要な無形資産に起因して得られる利益は分割対象利益から基本的利益を控除して得られる残余利益に含まれることとなるが」に改める。 ⑶ 同87頁7行目の「このように,」の次に「本件国外関連者においては固定費の占める割合が相対的に大きく,資本集約度が高い生産構造となっているのであって,」を加える。 2 当審における控訴人の補充主張について⑴ 控訴人の補充主張⑴について - 15 -ア控訴人は,残余利益の分割要因については,基本的には「重要な無形資産」のみをもって考慮されることが想定されており,重要な無形資産又はその影響により超過利益が発生している場合については,重要な無形資産の価値に応じて残余利益を分割しさえすれば,合理的な独立企業間価格を算定することができるのであって,重要な無形資産とは全く無関係な別個の要因について残余利益の分割要因と認めるには,同要因が「重要な無形資産」に匹敵する程度の価値(重要性)を備え,超過利益獲得に寄与する(相関関係のある)ものと認められる必要があるなどと主張する。 イしかしながら,引用する原判決が説示するとおり(「事実及び理由」の第3の6⑴イ),残余利益分割法は,措置法施行令39条の12第8 る(相関関係のある)ものと認められる必要があるなどと主張する。 イしかしながら,引用する原判決が説示するとおり(「事実及び理由」の第3の6⑴イ),残余利益分割法は,措置法施行令39条の12第8項1号に定める利益分割法の一種であるところ,同号の規定によれば,利益分割法は,分割対象利益が,国外関連取引に係る棚卸資産の購入,製造,販売その他の行為のために法人又は国外関連者が支出した費用の額,使用した固定資産の価額その他これらの者が分割対象利益の発生に寄与した程度を推測するに足りる要因(分割要因)に応じて,当該法人及び当該国外関連者に帰属するものとする方法であり(関係法令等⑵エ),また,同号の規定を具体化するものとして定められた措置法通達66の4⑷-2は,利益分割法の適用に当たり用いる分割要因につき,法人又は国外関連者が支出した人件費等の費用の額,投下資本の額など,これらの者が当該分割対象利益の発生に寄与した程度を推測するにふさわしいものを用いるものとし,分割要因が複数ある場合には,それぞれの要因が分割対象利益の発生に寄与した程度に応じて合理的に計算するものとしている(関係法令等⑵エ)。 また,OECDガイドラインにおいても,残余分析(残余利益分析)においては,まず,第1段階において,各参加企業に対し,それが関わった関連者間取引に関係するユニークではない貢献に対する独立企業間報酬が - 16 -配分され,一般的に,各参加企業が寄与する,ユニークな価値のある貢献(uniqueandvaluablecontribution)によって創出される利益については考慮しないとされ,第2段階において,第1段階の分割後の残余利益(又は損失)を事実及び状況に係る分析に基づき各参加企業間で配分するとされている(2010年版ガイドライン て創出される利益については考慮しないとされ,第2段階において,第1段階の分割後の残余利益(又は損失)を事実及び状況に係る分析に基づき各参加企業間で配分するとされている(2010年版ガイドライン・パラグラフ2.121(甲339の1及び2,乙27,231),2017年版ガイドライン・パラグラフ2.127(甲342の1及び3,乙232))。 これらの規定等は,いずれも,「重要な無形資産」であるか否かを問わず,分割対象利益の発生に寄与した程度を推測するに足りる要因と認められる限り,これを分割要因とするものであると解される。これは,超過利益は必ずしも重要な無形資産のみによってもたらされるとは限らず(甲326,乙186),また,重要な無形資産だけではなく,これと共に他の複数の利益発生要因が重なり合い,相互に影響しながら一体となって残余利益(超過利益)が得られることがあるという経済及び取引の実態を踏まえ,分割対象利益の発生に寄与した程度を推測するに足りる要因と認められる限り,これを分割要因とすることによって,内国法人と国外関連者との間で分割対象利益を適切に分割して独立企業間価格を認定するというものであり,同様の状況下にある独立企業間であれば合意により期待又は反映されるであろう利益の配分に近似させるものであって,合理的な定めであると認められる。そして,我が国の法令においてはもちろんのこと,OECDガイドラインをみても,残余利益の分割要因について,基本的には「重要な無形資産」のみをもって考慮されることが想定されているとか,「重要な無形資産」に匹敵する程度の価値(重要性)を備えたものでなければ分割要因として考慮しないなどといったことをうかがわせる条項ないし記載はない。むしろ,OECDガイドラインでは,分割要因は「実務上,資産や資本(営業資産,固 度の価値(重要性)を備えたものでなければ分割要因として考慮しないなどといったことをうかがわせる条項ないし記載はない。むしろ,OECDガイドラインでは,分割要因は「実務上,資産や資本(営業資産,固定資産,無形資産,使用資本)又は原価(研究 - 17 -開発,エンジニアリング,マーケティングなどの重要分野における相対的支出又は投資)に基づく配分キーが多く用いられる」(2010年版ガイドライン・パラグラフ2.135。乙27,231),無形資産の使用又は移転を伴う取引に関する独立企業間条件を決定するための特別の指針を示すものとして,「主な検討事項は,取引によって一方の関連者から他方の関連者へ経済的な価値が移転するかどうか,その便益は有形資産,無形資産,役務若しくはその他の項目又は活動に由来するものかどうかである。・・・・・・ある項目又は活動により経済的な価値が移転する限りにおいて,その項目又は活動は,パラグラフ6.6が意味するところの無形資産に該当するか否かを問わず,独立企業間価格の設定時に考慮される必要がある。」(2017年版ガイドライン・パラグラフ6.2。乙232)と指摘されているところであり,残余利益の分割要因が無形資産に限定されるとか,基本的に無形資産であるとかという考え方を採用してはいないものと解することができる(なお,この部分の記載内容が本件国外関連取引の時点における独立企業間価格の算定の考え方を改めたものと解することはできない。)。 確かに,平成23年改正前の措置法通達66の4⑷-5は「法人又は国外関連者が有する当該重要な無形資産の価値に応じて,合理的に配分する方法により独立企業間価格を算定することができる」と規定しており(乙14),これを基に残余利益分割法における分割要因は「重要な無形資産」に限られるかのよ な無形資産の価値に応じて,合理的に配分する方法により独立企業間価格を算定することができる」と規定しており(乙14),これを基に残余利益分割法における分割要因は「重要な無形資産」に限られるかのような解釈もみられたが,同通達は,上記のとおりこれらの者が分割対象利益の発生に寄与した程度を推測するに足りる要因(分割要因)に応じて計算するという措置法施行令39条の12第8項1号の規定を具体化するものとして定められた通達にすぎない上,分割利益発生要因が無形資産であるか否かを問わず,そのために内国法人又は国外関連者が費用を負担した場合,その費用負担を残余利益分配に反映させな - 18 -ければ,同様の状況下にある独立企業間で合意において期待又は反映されるであろう利益の分配に近似するとはいえないのであるから,国外関連取引に係る独立企業間価格の算出方法の一つである残余利益分割法を定める措置法66条の4第2項1号ニ及び措置法施行令39条の12第8項1号の解釈として,「重要な無形資産」以外にも分割対象利益の発生に寄与した程度を推測するに足りる要因があると認められる場合であってもこれを考慮しなくてよいとする趣旨であるなどと解することはできない(その意味で,平成23年改正前の措置法通達66の4⑷-5が前記のとおり分割要因として「重要な無形資産の価値」を挙げて残余利益分割法を定めていたことについては,代表的な分割要因を例示して規定したものと解するのが相当である。現に,平成23年の税制改正において,残余利益分割法の内容自体については法令上の変更がないにもかかわらず,同改正後の措置法通達66の4⑸-4では,分割要因を「重要な無形資産」に限定していないことが明らかである。)。 さらに,甲第320号証(F作成の法律意見書)10頁は,「利益発生要因として わらず,同改正後の措置法通達66の4⑸-4では,分割要因を「重要な無形資産」に限定していないことが明らかである。)。 さらに,甲第320号証(F作成の法律意見書)10頁は,「利益発生要因として各要因と超過利益の関係性が具体的に認定されている限りにおいて,重要な無形資産と重要な無形資産以外の利益発生要因(本件設備投資)の取扱いに差異を設ける理由はないから,等しく分割要因とすることが認められるべきことは当然である」と指摘し,甲第326号証(F作成の第2法律意見書)11頁は,本件製品の販売が不首尾に終わり,不採算となった場合,研究開発費も超過減価償却費も水泡に帰するという共通のリスクに直面していることなどから,残余利益の分割においてそれぞれを等しく扱うのが合理的であるとした上,「利益分割法が,関連者間で分割すべき利益を「独立企業間の合意において期待され反映されるであろう利益の分割に近似させるような経済的に合理的な基準により,各関連者間で分割する」手法であることからすれば(2010年版ガイドラ - 19 -イン・パラグラフ2.108(乙27,231)),本件設備投資のような多大なリスクを負う投資を行う者が,その投資によって得られた超過利益の多くの部分をライセンサーに獲得させるような合意をすることは考えられない。」と指摘する。また,甲第328号証(G作成の法律意見書)6頁は,「残余利益の分割要因を決定するに際して決め手となっているのは,「重要な無形資産」の概念そのものではなく,当事者が残余利益(超過収益)を獲得するために「何か特別なこと(支出)」をしたかどうかである。したがって,事実関係を総合的に勘案した上での判断になるが,例えば,ある当事者の設備投資が,その事実関係において残余利益(超過利益)を獲得するための「特別なこと(支 支出)」をしたかどうかである。したがって,事実関係を総合的に勘案した上での判断になるが,例えば,ある当事者の設備投資が,その事実関係において残余利益(超過利益)を獲得するための「特別なこと(支出)」と評価できるのであれば,それは分割要因とすべきものと考える。」とした上,同11頁は,「残余利益分割法における残余利益の分割は,「支出した費用の額,使用した固定資産の価額その他・・・所得の発生に寄与した程度を推測するに足りる要因」(旧施行令39条の12第8項1号)を総合的に勘案して行うべきものであり,分割要因を「無形資産の価値」に限定する根拠は,当時の法令の規定からも当時のOECD移転価格ガイドラインの記述からも見出すことはできない。」と指摘する。 そうすると,残余利益の分割要因について,控訴人の主張するように,基本的には「重要な無形資産」のみをもって考慮されることが想定されており,重要な無形資産の価値に応じて残余利益を分割しさえすれば,合理的な独立企業間価格を算定することができるなどということができないのはもちろんのこと,重要な無形資産とは全く無関係な別個の要因について残余利益の分割要因と認めるには,同要因が「重要な無形資産」に匹敵する程度の価値(重要性)を備え,超過利益獲得に寄与する (相関関係のある)ものと認められる必要があるということもできない。 ウ以上のとおり,控訴人の補充主張⑴は理由がなく,採用することができ - 20 -ない。 ⑵ 控訴人の補充主張⑵についてア控訴人は,①本件国外関連者の設備投資による売上高等の増大は,事業規模等が類似する比較対象法人との比較による基本的利益の算定において考慮済みであるから,かかる事情を残余利益(超過利益)の分割要因として考慮すべきではない,②本件各事業年度に 売上高等の増大は,事業規模等が類似する比較対象法人との比較による基本的利益の算定において考慮済みであるから,かかる事情を残余利益(超過利益)の分割要因として考慮すべきではない,②本件各事業年度における本件国外関連者の売上高や売上高営業利益率等の推移,販売数量及び平均費用(1単位当たりの総営業費用)等をみると,本件国外関連者がおよそ規模の利益を享受しているとは認め難いし,少なくとも超過利益と評価し得る「規模の利益」を享受しているとまでは認められない,また,③設備投資に関する被控訴人の寄与・貢献の程度は極めて大きいのに対し,設備投資に関する本件国外関連者の寄与・貢献の程度は極めて小さいなどとして,本件国外関連者による設備投資は,「重要な無形資産」に匹敵する程度の価値(重要性)を備えたものでも,超過利益獲得に寄与する(相関関係がある)ものでもないから,本件における残余利益の分割においては,被控訴人及び本件国外関連者が有する重要な無形資産の価値に応じて分割すべきであり,かつ,それで足りるというべきであるなどと主張する。 イしかしながら,控訴人の補充主張⑵は,重要な無形資産とは全く無関係な別個の要因について残余利益の分割要因と認めるには,同要因が「重要な無形資産」に匹敵する程度の価値(重要性)を備え,超過利益獲得に寄与する(相関関係のある)ものと認められる必要があるなどという補充主張⑴を前提とする部分があるが,控訴人の補充主張⑴に理由がないことは,前記⑴のとおりである。 ウ次に,上記①の主張について検討するに,前記⑴で述べたとおり,残余利益分割法の分割要因は重要な無形資産に限られることはなく,重要な無形資産以外の利益発生要因でもよいという考え方を採用した場合, - 21 -重要な無形資産以外の要因の寄与もあって利益が発生した 益分割法の分割要因は重要な無形資産に限られることはなく,重要な無形資産以外の利益発生要因でもよいという考え方を採用した場合, - 21 -重要な無形資産以外の要因の寄与もあって利益が発生したといえるような事案,例えば,重要な無形資産と多額の設備投資とが相まって利益を発生させたという事例では,国外関連者が特に当該製品を製造するための設備投資をしたことが残余利益分割法の第1段階でいう基本的利益に当てはまらない利益の発生に寄与又は貢献したのであれば,当該設備投資は第2段階でいう残余利益(超過利益)の配分において適切に考慮される必要があるものというべきである(このような場合,重要な無形資産と多額の設備投資とが相まって発生させた利益については,一体のものとして,残余利益(超過利益)の分配において考慮することに合理性があるものと解される。)。この点については,引用する原判決が,本件のように重要な無形資産と共に他の複数の利益発生要因が重なり合い,相互に影響しながら一体となって得られた超過利益(残余利益)について法人及び国外関連者に合理的に配分するためには,重要な無形資産以外の利益発生要因に関しても,当該法人又は当該国外関連者が支出した人件費の額や投下資本の額など,その寄与の程度にふさわしい要素(分割要因)を適切に考慮すべきであると指摘するとおりである。 ところで,引用する原判決が認定,説示するとおり,本件国外関連者が■■■■■を超える多額の費用をかけた本件設備投資は,ディーゼルエンジンの排ガス規制に適合する本件製品(いわゆるプロセス型の製造工程を採る。)の量産を可能にしてセラミック製DPFの需要が急増していたEU市場に早期に参入するのみならず,その高い生産能力を確保することによって■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■こ 工程を採る。)の量産を可能にしてセラミック製DPFの需要が急増していたEU市場に早期に参入するのみならず,その高い生産能力を確保することによって■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ことにつながったこと,これが後からEU市場に参入する競争者にとって非常に高い参入障壁となり,2社寡占状態を作り出し,本件製品の■■■■■■■■■■■■■■高い売上高が生じたこと,また,資本集約度が高い生産構造の下で損益分岐点を大きく超える売上高が生じたこと - 22 -により規模の利益が生じたことや本件国外関連者の対策により歩留率が改善して生産効率が向上したことなどから高い売上高営業利益率をもたらすことになったこと,そして,このように,本件超過利益は,被控訴人及び本件国外関連者が保有する重要な無形資産のほか,EU市場におけるセラミックス製DPFの需要の急増や,2社寡占状態による契約交渉上の優位性,資本集約度が高い本件製品の生産構造など,様々な利益発生要因が重なり合い,相互に影響しながら一体となって生じたものであること,現に,後からEU市場に参入した企業が,被控訴人と同様に技術力及びブランド力を有する企業であったにもかかわらず,2社寡占状態の下で非常に高い参入障壁が形成されていたため,本件各事業年度を通じて僅かなシェアしか得ることができなかったことなどの事情が認められるのである(引用する原判決の「事実及び理由」の第3の2の認定事実(以下単に「認定事実」という。)及び同第3の3の「本件超過利益の発生メカニズムの検討」において説示された事情)。これらの事情を踏まえると,本件超過利益の発生に関し,本件設備投資が「重要な無形資産」に匹敵する程度の価値(重要性)を備え,超過利益獲得に寄与する(相関関係のある)ものとして重要な貢献をしたといえること の事情を踏まえると,本件超過利益の発生に関し,本件設備投資が「重要な無形資産」に匹敵する程度の価値(重要性)を備え,超過利益獲得に寄与する(相関関係のある)ものとして重要な貢献をしたといえることは明らかである。 本件分割方法をみると,基本的利益の算定において比較対象法人を選定する基準として,実質的には,ORBIS登載のEU加盟国企業であること,業種コード(自動車部品・付属品製造業),売上高(事業規模),所在地が著しく異ならないこと,無形資産が形成されていないこと等が考慮されている(本件抽出基準である原判決別表7参照)。そして,基本的利益の算定方法としては,上記のとおり設備投資の規模ではなく売上高の規模に着目して事業規模の類似性を確保することとして本件比較対象法人を選定した上,事業年度ごとに,本件比較対象法人の売 - 23 -上高営業利益率の平均値を求め,これに本件国外関連者の総売上高を乗じることにより基本的利益を算出している(前提事実⑸,原判決別紙3-2,別表11「3」欄)。一方,本件国外関連者は,前記のとおり,ディーゼルエンジンの排ガス規制が存在するEU市場において,その規制に適合するセラミック製DPFの製造に係る重要な無形資産の保有を前提に,プロセス型の製造工程を採るセラミック製DPF製造のために多額の本件設備投資を適時に行ったことにより,■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■非常に高い参入障壁を形成して高い売上高と売上高営業利益率を上げることができたのである。これを踏まえて本件国外関連者と本件比較対象法人とを比較すると,本件国外関連者においては固定費の占める割合が相対的に大きく,資本集約度が高い生産構造となっているのであって,設備投資の規模において本件国外関連者と本件比較対象法人 件比較対象法人とを比較すると,本件国外関連者においては固定費の占める割合が相対的に大きく,資本集約度が高い生産構造となっているのであって,設備投資の規模において本件国外関連者と本件比較対象法人との間には大きな差がある上,EU市場におけるセラミックス製DPFの需要の急増などの他の利益発生要因と一体となって本件国外関連者に利益が生じたものであり,本件国外関連者と本件比較対象法人とは市場条件や競争状況が異なることなどから,設備投資による事業規模の拡大が利益の発生にもたらす効果も異なると考えられる(引用する原判決「事実及び理由」の第3の6⑷ア)。このように,比較対象法人において通常上げられる利益との関連でいえば,本件国外関連者による本件製品の生産については,市場条件や競争状況,設備投資の規模や資本集約度の高さ,規模の利益の発生等,比較対象法人には当てはまらない要因が存在し,これに基づいて利益が発生したという事情が認められる。しかも,それらの要因が重要な無形資産と重なり合い,相互に影響しながら一体となって超過利益(残余利益)が発生したと認められるところ,本件超過利益をそれぞれの要因ごとに分別し,当該要因のみによって生じた利益の額を算定する - 24 -ことは困難であること,重要な無形資産が存在しなければ本件国外関連者がEU市場に参入して本件製品を量産すること自体が不可能であったので,重要な無形資産の影響は本件超過利益の全てに及んでいるものといえることも,引用する原判決が説示するとおりである(引用する原判決「事実及び理由」第3の4⑷)。そうすると,これらの事情は,比較対象法人との比較による基本的利益の算定において考慮済みであるなどとはいえないのであるから,残余利益(超過利益)の分配において適切に考慮されるべきであって,これを 。そうすると,これらの事情は,比較対象法人との比較による基本的利益の算定において考慮済みであるなどとはいえないのであるから,残余利益(超過利益)の分配において適切に考慮されるべきであって,これを否定する控訴人の上記主張は採用することができない。 控訴人の前記②の主張については,引用する原判決が認定,説示するとおり(「事実及び理由」の第3の3⑶ア),本件国外関連者が行っていた本件製品の生産は資本集約度が高い生産構造によるものであり,損益分岐点を大きく超える売上高が得られたことにより,製品1個当たりの生産に必要な費用が大幅に減少し,このような規模の利益によって売上高営業利益率が増大したものと認められる。この点について,控訴人は,当審において,本件各事業年度における本件国外関連者の売上高や売上高営業利益率等の推移並びに販売数量及び平均費用(1単位当たりの総営業費用)の推移に加え,①甲第308号証の図Aは,異常な数値(平成17年1月の数値は,量産開始初年度の最初の月の生産量が非常に少なかったことによるもの。平成20年12月の数値は,リーマンショックの影響で需要が急減しことによるもの)の影響を強く受けた不合理なものであること,②平均営業費用の逓減は歩留率の向上の影響を受けたものであること,③平均営業費用の逓減は,大規模施設の減価償却費の算定の基礎となる耐用年数が平成21年1月1日に■年から■■年に変更され,減価償却費の計上額が減少したことが大きく影響していること,④甲第308号証の図A,図Bは,在庫を無視した不正確な数値 - 25 -を基礎としており,各図による分析は正確性を欠くことに照らせば,本件国外関連者について,事業規模(生産量)の増大により製品1個当たりの生産に必要な費用が逓減する結果,利益率が高まる傾向(相関関係) 基礎としており,各図による分析は正確性を欠くことに照らせば,本件国外関連者について,事業規模(生産量)の増大により製品1個当たりの生産に必要な費用が逓減する結果,利益率が高まる傾向(相関関係)が生じたとの事実は認めることができないとして,規模の利益は発生していない旨主張する。 しかし,証拠(甲308,331,335)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人が指摘する上記①から④までの点を考慮したとしても,平成17年1月から平成27年3月までの期間において,本件国外関連者について,生産量の増加に対し,平均営業費用が最初は急速に減少し,その後緩やかに減少する数値を示しているといえるのであり,生産量の増加に伴い1単位当たりの総営業費用(平均営業費用)が逓減する傾向を認めることができる。また,原判決が説示するとおり(「事実及び理由」の第3の3⑶ア),「労働力に比して資本設備をより多く用いる資本集約度が高い生産構造においては,生産費用のうち固定費(生産量の大小にかかわらず発生する一定の費用)の占める割合が相対的に大きいことから,売上高が伸びるほど製品1個当たりの生産に必要な費用が減少」するという原理が働くものというべきところ(甲30,31,36,42,43,305,320),本件設備投資に■■■■■以上を投じた本件国外関連者における本件製品の製造工程(いわゆるプロセス型のもの)は,上記のような資本集約度が高い生産構造を有していることが認められるのであるが,製品1個当たりの生産に必要な費用に関する上記の原理が本件国外関連者には働かない又は当てはまらないことについての説得的な根拠は,控訴人によって何ら示されていないというべきである。以上のとおり,本件国外関連者の本件製品の製造について,規模の利益の発生を肯定することができる。 しかも,前記 いことについての説得的な根拠は,控訴人によって何ら示されていないというべきである。以上のとおり,本件国外関連者の本件製品の製造について,規模の利益の発生を肯定することができる。 しかも,前記のとおり,本件国外関連者の設備投資による売上高等 - 26 -の増大について,事業規模等が類似する比較対象法人との比較による基本的利益の算定において考慮済みであるなどとは認められないのである。 控訴人の上記主張は,いずれにせよ採用することができない。 エ控訴人の前記③の主張については,設備投資に関する被控訴人の寄与・貢献の程度と本件国外関連者の寄与・貢献の程度をみると,確かに,被控訴人が競争者に先駆けて本件事業化決定をしたことはEU市場における2社寡占状態を形成・維持する上で重要な貢献をしたものと評価することができるが,このような貢献は残余利益の分割要因としては考慮することができない(引用する原判決「事実及び理由」の第3の6⑷イ参照)。これに対し,本件国外関連者による初期及び追加の設備投資は,本件製品の量産を開始してEU市場に参入するのみならず,高い生産能力の確保することによって■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ことにつながり,これが2社寡占状態を作り出し■■■■■■■■■売上高及び売上高営業利益率をもたらすことになったものと認められるのであって,本件国外関連者による本件設備投資は,本件超過利益をもたらした複数の利益発生要因に関して重要な貢献をしているものと認められる(引用する原判決「事実及び理由」の第3の6⑷ア参照)。 被控訴人及び本件国外関連者が重要な無形資産を保有していることは,本件国外関連者が利益を上げるための前提条件ではあったが,同様に,本件国外関連者がその重要な無形資産を使用した製品を必要な数だ 被控訴人及び本件国外関連者が重要な無形資産を保有していることは,本件国外関連者が利益を上げるための前提条件ではあったが,同様に,本件国外関連者がその重要な無形資産を使用した製品を必要な数だけ製造し得る規模の設備投資をしたことも,上記利益を上げるための前提条件であったといえるのであり,そのどちらが欠けたとしても,本件国外関連者は上記利益を得られなかったものというべきである。また,本件国外関連者は,その設備投資のため,■■■■■を超える多額の費用を負担したものである。 - 27 -そうすると,控訴人が主張するように,設備投資に関する被控訴人の寄与・貢献の程度は極めて大きいのに対し設備投資に関する本件国外関連者の寄与・貢献の程度は極めて小さいなどということはできない。 オ控訴人の補充主張⑵はいずれも理由がなく,採用することができない。 ⑶ 控訴人の補充主張⑶についてア控訴人は,設備投資に関する被控訴人及び本件国外関連者の寄与・貢献の程度をみると,被控訴人は,本件国外関連者の設立前に事業計画を策定したほか,設立後には事業計画の見直しに当たる活動等として,事業戦略の策定・実行を行うなどしており,単なる投資家としての活動にとどまるものではなく,有償性のある活動をしていることは明らかであるから,これにより生じた超過利益については,親会社である被控訴人に帰属されるべきであるなどと主張する。 しかしながら,引用する原判決「事実及び理由」の第3の6⑷で認定,説示するとおり,被控訴人は,本件国外関連者を設立するに先立ち,本件国外関連者を設立した場合の具体的な事業計画を策定しその当否について判断をしているのであって,このような設立前における投資判断のための事業計画の策定について,設立後の本件国外関連者から対価の支払を 国外関連者を設立した場合の具体的な事業計画を策定しその当否について判断をしているのであって,このような設立前における投資判断のための事業計画の策定について,設立後の本件国外関連者から対価の支払を受けるべき有償性のある活動であると評価することはできない。また,本件国外関連者の設立後に事業計画を見直すなどしたことについても,本件国外関連者が本件事業拡大について設備投資計画を策定し,被控訴人がその当否を決定するというものであり(認定事実⑷キ),被控訴人は,本件国外関連者の親会社(株主)として,当初策定した設立前の事業計画の内容を市場の状況等の変化を踏まえて見直したというものであると認められるのであって(甲268参照),これが対価を請求すべき有償性のある活動であると評価することはできない(乙144参照)。 - 28 -イ控訴人は,仮に,本件において,設備投資及び資本集約度の高い生産構造の影響による超過利益が認められるとしても,設備投資に関する被控訴人及び本件国外関連者の寄与・貢献の程度は控訴人の補充主張⑵イのとおりであり,本件国外関連者の寄与・貢献の程度については,本件分割方法により,被控訴人の研究開発費と本件国外関連者の■■部門費の相対的割合によって測った分割割合を超えるものとはならないため,本件分割方法により残余利益が適切に分割されており,被控訴人に分割される超過利益は過大なものではないと認められるなどと主張する。 しかしながら,前記⑵で認定,説示するとおり,本件国外関連者は本件設備投資を通して本件超過利益に対して重要な貢献をしたものと認められるのであり,控訴人が主張するように,設備投資に関する被控訴人の寄与・貢献の程度は極めて大きいのに対して本件国外関連者の寄与・貢献の程度は極めて小さいなどということは 重要な貢献をしたものと認められるのであり,控訴人が主張するように,設備投資に関する被控訴人の寄与・貢献の程度は極めて大きいのに対して本件国外関連者の寄与・貢献の程度は極めて小さいなどということはできないのであるから,控訴人の上記主張は,その前提において理由がない。 ウ控訴人の補充主張⑶はいずれも理由がなく,採用することはできない。 ⑷ 控訴人の補充主張⑷についてア控訴人は,減価償却費の額は,各企業が自身の現状や今後の計画を踏まえて減価償却資産を取得し,償却方法を任意に選択した上で計算されているものであるから,その金額を一律的に比較しても意味がなく,比較指標として用いるためには,同一の条件となるよう調整が必要であるなどと主張する。 しかしながら,残余利益分割法においては,費用をもって分割要因とすることは措置法施行令39条の12第8項1号に定められているところ,「重要な無形資産」による貢献を数値化するために「重要な無形資産の開発のために支出した費用等の額」(措置法通達66の4⑷-5) - 29 -が用いられるのと平仄を合わせ,設備投資の貢献を数値化して定量的に評価するために,損益計算書項目である減価償却費(設備投資のために実際に要した費用を一定期間における経費として分割したもの)に着目し,これを設備投資による寄与の程度を推測するために意義のある数値として捉えることには十分な合理性があるものというべきである(甲320,326)。 また,我が国においては,企業は,一般に公正と認められる会計処理の基準に従い,益金及び損金を計上することが認められており,基本的に,各企業が選択した減価償却の方法を前提として所得が算定されるのであって(法人税法22条参照),企業が適法に減価償却を行い,これを基に所得を算定して税務申告 を計上することが認められており,基本的に,各企業が選択した減価償却の方法を前提として所得が算定されるのであって(法人税法22条参照),企業が適法に減価償却を行い,これを基に所得を算定して税務申告をしたにもかかわらず,各企業間で実際に採用した減価償却の方法が異なることを理由に,それらが同一の条件となるよう個別的事後的に調整するというのは,課税の前提となる明確性,予見性,画一性に反し,特段の事情のない限り,我が国の企業会計及び税務会計の一般的な考え方と整合しないものである。この理は,当該調整の対象が内国法人の減価償却費である場合と,内国法人の所得の算定に必要となる外国法人の減価償却費である場合とで異なるものではない。現に,国税庁が作成した「移転価格事務運営要領別冊・参考事例集」(甲289)においても,「寄与度利益分割法を適用する場合の分割要因については,国外関連取引の内容に応じ法人及び国外関連者が支出した人件費等の費用の額,投下資本の額等,これらの者が分割対象利益等の発生に寄与した程度を推測するにふさわしいものを用いる必要がある。例えば,製造,販売等経常的に果たされている機能が利益の発生に寄与している場合には,当該機能を反映する人件費等の費用の額や減価償却費などを用いるのが合理的と考えられる。」とされている一方,減価償却費について各企業間で同一の条件となるよう調整をすべきとの - 30 -記述は見当たらないし,処分行政庁が本件各処分を行った際にも,被控訴人,本件国外関連者及び本件比較対象法人の間でそのような調整を行ったことは認められない。 その他,本件において,本件国外関連者が行った本件設備投資に関する減価償却の方法が,残余利益分割法における独立企業間価格を算定する上で不合理又は不相当であることを基礎付ける事情はうか れない。 その他,本件において,本件国外関連者が行った本件設備投資に関する減価償却の方法が,残余利益分割法における独立企業間価格を算定する上で不合理又は不相当であることを基礎付ける事情はうかがわれない。 控訴人の上記主張は,採用することができない。 イ控訴人は,仮に,本件国外関連者の初期及び追加の設備投資が超過利益の獲得に寄与・貢献しているとしても,「超過減価償却費」の計算の基となる本件国外関連者の減価償却費は,現実に使用されている設備(固定資産)を対象とすべきであり,本件各事業年度における本件国外関連者の減価償却費から本件製品の製造に使用されていない設備に係る減価償却費を控除すべきであるなどと主張する。 しかしながら,本件国外関連者は,初期及び追加の設備投資によって自動車メーカーが要求する生産能力を確保したことなどの結果,本件国外関連者が■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■後からEU市場に参入する競争者にとっては自動車メーカーから受注を得るのが困難な状況が続き,これが非常に高い参入障壁となり,2社寡占状態が継続し,高いシェア及び■■■■■■■■■■■ができたのであって,これらのことが本件国外関連者において高い売上高及び売上高営業利益率が生じた重要な要因となっていると認められるのであり(引用する原判決「事実及び理由」の第3の3⑵から⑷まで参照),本件各事業年度において本件製品の製造に現に使用されていない設備に係る投資であっても,本件超過利益の発生に貢献したものと認められるのであるから,当該設備に係る減価償却費についても分割要因と - 31 -して考慮すべきであって,これを超過減価償却費から控除するのは相当でない。 控訴人の上記主張は,本件超過利益の発生要因を正解しないもので に係る減価償却費についても分割要因と - 31 -して考慮すべきであって,これを超過減価償却費から控除するのは相当でない。 控訴人の上記主張は,本件超過利益の発生要因を正解しないものであり,採用することができない。 ウ控訴人は,本件国外関連者の初期及び追加の設備投資を表象する要因の算定に当たっては,本件各事業年度における本件比較対象法人の支払リース料や外注費に係る金額も,本件比較対象法人の減価償却費と同様,製品の製造に貢献するかどうかを検討すべきであるなどと主張する。 しかしながら,一般に,企業が製造設備を費用化する方法として,所有する(償却費を計上),賃借する(リース料を計上),子会社等に製造させる(外注費を計上)などの方法があるとしても(控訴人の原審における準備書面⑹98頁参照),所有財産であれ,リース物件であれ,事業の基礎をなす重要なものであれば「資産」として計上され,これに対応する減価償却費が計上されるのが一般的であると考えられることや,本件超過利益の算定に当たり本件比較対象法人のリース料や外注費を検討すべき必要性が明らかでないことからすると,控訴人の上記主張はにわかに採用し難い。 ⑸ 控訴人の補充主張⑸についてア控訴人は,分割対象利益の配分に用いる要因が複数ある場合には,それぞれの要因について,分割対象利益の発生に対する寄与・貢献の程度に応じて,適切にウエイト付けする必要があるなどと主張する。 イ確かに,措置法施行令39条の12第8項1号が「支出した費用の額,使用した固定資産の価額その他これらの者が当該所得の発生に寄与した程度を推測するに足りる要因」を利益分割法における分割要因と定め,これを受けて措置法通達66の4⑷-2が「当該要因が複数ある場合には,そ - 32 - その他これらの者が当該所得の発生に寄与した程度を推測するに足りる要因」を利益分割法における分割要因と定め,これを受けて措置法通達66の4⑷-2が「当該要因が複数ある場合には,そ - 32 -れぞれの要因が分割対象利益の発生に寄与した程度に応じて,合理的に計算するものとする」としていることからすると,分割要因が複数ある場合に,それぞれの要因について,分割対象利益の発生に対する寄与・貢献の程度に応じて,適切にウエイト付けする必要があるというのは控訴人の主張するとおりである。 本件においては,本件超過利益の発生メカニズム(引用する原判決「事実及び理由」の第3の3)を踏まえると,本件国外関連者による本件設備投資は,本件超過利益をもたらした複数の利益発生要因に関して重要な貢献をしており,その貢献の程度をみても,本件超過利益の発生に対して被控訴人の研究開発活動及び本件国外関連者の■■部門による生産性改善等の取組と同等の貢献をしたものと認められるのである。特に,本件国外関連者が多額の本件設備投資を適時に行ったことにより,■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■,非常に高い参入障壁を形成して高い売上高と売上高営業利益率を上げることができたことからすると,本件設備投資の本件超過利益発生への寄与は,被控訴人の重要な無形資産及び本件国外関連者の重要な無形資産と比較しても,その利益発生の結果に対する重要性や直接性において決して劣らないものであるといえること,本件設備投資には,セラミック製DPFの需要の減少という市場リスクがあったものであり,そのリスク負担という点でも,被控訴人の研究開発費や本件国外関連者の■■部門費と異なるところはないことにも照らして考えれば(甲326参照),本件設備投資に係る減価償却費につき,被控訴 たものであり,そのリスク負担という点でも,被控訴人の研究開発費や本件国外関連者の■■部門費と異なるところはないことにも照らして考えれば(甲326参照),本件設備投資に係る減価償却費につき,被控訴人の研究開発費及び本件国外関連者の■■部門費と同等のウエイトにより,残余利益の分割要因とするのが相当である(引用する原判決「事実及び理由」の第3の6⑷ア)。 なお,本件国外関連者の本件設備投資に係る減価償却費の算定に当たっては■■部門に係る減価償却費及び基本的な製造活動に係る減価償却費 - 33 -(基本的減価償却費)を控除すべきであるから(同),結局,被控訴人の研究開発費,本件国外関連者の■■部門費及び本件国外関連者の超過減価償却費を同等のウエイトで分割要因とするのが相当である。 3 当審における被控訴人の補充主張について⑴ 被控訴人の補充主張⑴についてア被控訴人は,本件における設備投資(本件設備投資)や競争状況(2社寡占状態)その他の要因は,「重要な無形資産」とは別個のものであり,それらの要因が超過利益を生じさせ,当該超過利益が全体の超過利益の中に含まれているという事実が明らかであるところ,超過利益の発生・増加に当たり,「重要な無形資産」とは別個のこれらの要因が決定的であり,経済的に重要な意味を持つのであるから,重要な無形資産とは客観的に別個の要因は,基本的利益の算定において考慮すべきであるという残余利益分割法における基本原則を貫徹し,「重要な無形資産」とは別個の超過利益の源泉となる要因(比較可能性要因)については,基本的利益の算定において考慮すべきであるなどと主張する。 イしかしながら,引用する原判決が認定,説示するとおり(原判決「事実及び理由」の第3の3),本件国外関連者において高い売上高が生じたのは,① 利益の算定において考慮すべきであるなどと主張する。 イしかしながら,引用する原判決が認定,説示するとおり(原判決「事実及び理由」の第3の3),本件国外関連者において高い売上高が生じたのは,①EUにおいて自動車の排ガス規制を強化するEuro規制が導入されたことなどを契機として,EU市場におけるセラミックス製DPFの需要が急増する中で,②本件国外関連者が競争者に先駆けて業界2番目という早さでEU市場に参入し,③EU市場への参入企業が本件国外関連者を含む先行2社しか存在しないという契約交渉上優位な状況の下で,■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■後からEU市場に参入する競争者にとって非常に高い参入障壁が形成されて2社寡占状態が継続した結果,本件国外関連者がEU市場において高いシェアを維持できたこと,④そして,このような2社寡占状態の下で,本 - 34 -件製品の■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■によるものであり,また,本件国外関連者において高い売上高営業利益率が生じたのは,①資本集約度が高い本件製品の生産構造の下で,損益分岐点を大きく超える売上高が得られたことにより,製品1個当たりの生産に必要な費用が大幅に減少するという規模の利益が生じたこと,②本件製品の■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■により,売上高に対する生産費用の増大を抑えられたこと,③本件国外関連者が品質不良問題への対策を行った結果,歩留率が改善して生産効率が向上したことによるものであると認められる。このように,本件超過利益は,被控訴人及び本件国外関連者が保有する重要な無形資産のほか,EU市場におけるセラミックス製DPFの需要の急増や,2社寡占状態による契約交渉上の優位性,資本集約度が高い本件製品 に,本件超過利益は,被控訴人及び本件国外関連者が保有する重要な無形資産のほか,EU市場におけるセラミックス製DPFの需要の急増や,2社寡占状態による契約交渉上の優位性,資本集約度が高い本件製品の生産構造など,様々な利益発生要因が重なり合い,相互に影響しながら一体となって生じたものと認められるのであって,このことからすれば,被控訴人が主張するように,超過利益の発生・増加において重要な無形資産以外の要因が決定的であり,これが経済的に重要な意味を持つなどとして,これを基本的利益の算定において考慮すべきであるということはできない。 また,被控訴人の指摘する2017年版ガイドライン・パラグラフ6. 9は,無形資産の特定に当たり,市場の条件又は現地市場の状況と無形資産を区別することが重要であることを,パラグラフ1.110は,独立企業間価格はたとえ同一の資産や役務に係る取引であっても市場により異なることがあることを前提に,独立企業と関連者が事業を行っている市場の間に価格に重要な影響を及ぼす差異がないこと又は適切な調整が可能であることが求められることを,それぞれ述べるものであって(甲303,乙232),いずれも,残余利益分割法の適用に当たり,それらの要因を基本的利益の算定において考慮することを一義的に求めるものとはいえな - 35 -い。 ウ被控訴人の補充主張⑴は理由がなく,採用することができない。 ⑵ 被控訴人の補充主張⑵についてア被控訴人は,比較対象取引の比較対象性(比較可能性)の有無は,実際に選定された比較対象取引が検証対象取引と比較可能性を有しているか否かという基準に従って判断すべきであるところ,実際に選定された比較対象法人が比較可能性を有するためには,①「重要な無形資産」を有していないことに加えて,②当該比較対象法人 比較可能性を有しているか否かという基準に従って判断すべきであるところ,実際に選定された比較対象法人が比較可能性を有するためには,①「重要な無形資産」を有していないことに加えて,②当該比較対象法人が検証対象法人と法令の求める比較可能性を有するか否か,すなわち,検証対象法人(本件国外関連者)の事業と同種の事業を営み,市場,事業規模及びその他の要因について利益指標に影響を及ぼす差異を有しないか否かを検討する必要がある,具体的には,本件比較対象法人と本件国外関連者との比較可能性の有無の検討に当たり,「重要な無形資産」とは別個のEU市場における排ガス規制の製品需要への影響,2社寡占状態や費用構造(生産構造)の類似性の有無を検討すべきであるところ,本件国外関連者と本件比較対象法人との間にはこれらの点において重要な差異があり,両者は比較可能性を有しないなどと主張する。 イしかしながら,比較対象取引の比較可能性や本件比較対象法人の選定の妥当性(本件国外関連者との比較可能性)は基本的利益の算定において問題となるが,残余利益の分割割合等には直接影響するものではないというべきところ,引用する原判決「事実及び理由」の第3の3及び5並びに前記⑴で認定,説示するとおり,本件においては,EU市場における排ガス規制の製品需要への影響,2社寡占状態や費用構造(生産構造)といった事情は,被控訴人及び本件国外関連者が保有する重要な無形資産と重なり合い,相互に影響しながら一体となって本件超過利益を生じさせた要因であるとして,基本的利益の算定においては考慮されず,当該事情を踏まえ - 36 -た被控訴人及び本件国外関連者の本件超過利益への寄与・貢献という形で残余利益の分割において考慮されているのである。そうすると,比較対象取引の比較可能性や本件比較対象法人の選 まえ - 36 -た被控訴人及び本件国外関連者の本件超過利益への寄与・貢献という形で残余利益の分割において考慮されているのである。そうすると,比較対象取引の比較可能性や本件比較対象法人の選定の妥当性(本件国外関連者との比較可能性)を検討するに当たり,これらの要因を考慮していないからといって,本件の比較対象取引には比較可能性がないとか,本件国外関連者と本件比較対象法人とが比較可能性を有しないなどということはできない。 なお,被控訴人の上記主張は,その補充主張⑴を前提とするもののようにも読み取れるが,被控訴人の補充主張⑴に理由がないことは,前記⑴のとおりである。 ウさらに,被控訴人は,重要な無形資産とは別個の要因に起因する本件超過利益を,基本的利益の算定においてではなく残余利益の分割において考慮した原判決には,本件の先例となる東京地裁平成29年4月11日判決(ワールドファミリー事件。甲301)並びに東京高裁平成27年5月13日判決及びその原審である東京地裁平成26年8月28日判決(ホンダ事件。甲4,5)とは異なる基準により判断をした点に問題があり,その判断は誤っているなどと主張する。 しかしながら,EU市場におけるセラミック製DPFの需要の急増,本件国外関連者が競争者に先駆けてEU市場に参入し,■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■競争者にとって非常に高い参入障壁が形成されて2社寡占状態が継続し,本件製品が■■■■■■■■■■■■■■■■■■■こと,資本集約度が高い生産構造の下で損益分岐点を超える売上高が得られたことにより規模の利益が生じたこと,本件国外関連者が品質不良品問題への対策を行った結果,歩留率が改善して生産効率が上がったことなどが,重要な無形資産とは別個の利益発生要因 点を超える売上高が得られたことにより規模の利益が生じたこと,本件国外関連者が品質不良品問題への対策を行った結果,歩留率が改善して生産効率が上がったことなどが,重要な無形資産とは別個の利益発生要因であるとしても,本件においては,それらが重要な無形資産と共 - 37 -に複数の利益発生要因として重なり合い,相互に影響しながら一体となって超過利益(残余利益)が発生したと認められるのである。そして,本件超過利益をそれぞれの要因ごとに分別し,当該要因のみによって生じた利益の額を算定することは困難であること,重要な無形資産が存在しなければ本件国外関連者がEU市場に参入して本件製品を量産すること自体が不可能であったので,重要な無形資産の影響は本件超過利益の全てに及んでいるものといえることは,引用する原判決が指摘するとおりであるから,その判断がワールドファミリー事件やホンダ事件の判断と異なっているとしても,誤ったものであるとか,不合理なものであるとかということはできない。 甲第301号証によれば,ワールドファミリー事件は,国外関連者である兄弟会社から幼児向け英語教材を輸入して我が国で販売する内国法人である原告が,課税庁から,上記幼児向け英語教材の輸入取引について,措置法66条の4の規定に基づき独立企業間価格で行われたものとみなされて法人税の更正処分等を受けたことから,課税庁の用いた独立企業間価格の算定方法である再販売価格基準法に誤りがあるなどとして,この更正処分等の取消しを求めて争ったものであるところ,東京地方裁判所は,一般に,使用する無形資産の差によって生じる売上総利益率の差を把握することは難しいと解されるところ,原告の取引と比較対象取引に使用されるキャラクター(無形資産)については,その知名度や顧客に対する訴求力に極めて大きな差異 の差によって生じる売上総利益率の差を把握することは難しいと解されるところ,原告の取引と比較対象取引に使用されるキャラクター(無形資産)については,その知名度や顧客に対する訴求力に極めて大きな差異があり,このような大きな差異は,販売価格,売上高,広告宣伝費,販売費用,売手との交渉力,ロイヤリティ等にも大きな影響を与えるものと解されるから,それによって生ずる売上総利益率の差を適切に把握し,これを調整することはより困難であると考えられるから,原告の取引と本件比較対象取引とは比較対象性を有しないなどと判示したものであって,本件と事案を異にするものであることは明らかである。 - 38 -また,ホンダ事件(甲4,5)は,自動車の製造及び販売を主たる事業とする内国法人である原告が,その間接子会社である外国法人であり,ブラジル連邦共和国アマゾナス州に設置されたマナウス自由貿易地域(マナウスフリーゾーン)で自動二輪車の製造及び販売事業を行っている国外関連者との間で,自動二輪車の部品等の販売及び技術支援の役務提供を内容とする国外関連取引を行ったことにより支払を受けた対価の額につき,残余利益分割法を適用してした独立企業間価格の算定が違法であるとされた事例であるが,その理由とするところは,残余利益分割法を適用して独立企業間価格の算定をするに当たり,処分行政庁が,マナウスフリーゾーンで事業活動を行うことによる税制上の利益であるマナウス税恩典利益を享受している上記国外関連者の比較対象法人として,マナウスフリーゾーン外で事業活動を行いマナウス税恩典利益を享受していないブラジル法人を選定し,かつ,マナウス税恩典利益の享受の有無について何らの差異調整も行わなかったことは,検証対象法人との市場の類似性を欠き比較可能性を有しない法人を比較対象法人として選定 していないブラジル法人を選定し,かつ,マナウス税恩典利益の享受の有無について何らの差異調整も行わなかったことは,検証対象法人との市場の類似性を欠き比較可能性を有しない法人を比較対象法人として選定して検証対象法人の基本的利益を算定したという点にある。そして,マナウス税恩典利益を享受する法人は,重要な無形資産を有しているか否かにかかわらず,その事業規模に応じた税恩典を受けられるものであり,また,営業利益率という総費用や売上高に対する営業利益の割合という割合的な数値を問題とする限りにおいては,マナウス税恩典利益を享受する法人は,事業規模の大小にかかわらず,そのような税恩典利益を享受できない場合と比較して,より高い営業利益率を得られることは明らかであって,マナウス税恩典利益の享受の有無は,比較対象法人の比較可能性に重大な影響を及ぼすものであることは同事件の東京地裁判決が指摘するとおりであるから,この点の差異があることは,重要な無形資産を有している企業であってもそうではない企業であっても,いずれにしても基本的利益の算定において考慮されるべきこと - 39 -であると解されるのであって,この点を基本的利益の算定の適否において考慮することに合理性があるというべきである。 これに対し,本件においては,既に述べたとおり,重要な無形資産とそれ以外の要因とが共に複数の利益発生要因として重なり合い,相互に影響しながら一体となって超過利益(残余利益)が発生したと認められるのであり,そのような事情は,利益発生要因の内容を含めて本件比較対象法人には当てはまらないのであって,これらの利益発生要因を基本的利益の算定において考慮することはできないのであるから,ホンダ事件についても,やはり事案を異にするものというべきである。 なお,本件抽出基準によれば ないのであって,これらの利益発生要因を基本的利益の算定において考慮することはできないのであるから,ホンダ事件についても,やはり事案を異にするものというべきである。 なお,本件抽出基準によれば,本件比較対象法人の選定に当たり,実質的には,ORBIS登載のEU加盟国企業であること,業種コード(自動車部品・付属品製造業),売上高(事業規模),所在地が著しく異ならないこと,無形資産が形成されていないこと等しか考慮されていないというべきことは既に述べたとおりであるが,そうであるからといって,本件比較対象法人が基本的利益の算定において比較対象可能性を有しないなどということはできない。 被控訴人の上記主張も採用することはできない。 エしたがって,その余の点について検討するまでもなく,被控訴人の補充主張⑵は理由がない。 ⑶ 被控訴人の補充主張⑶について前記⑴及び⑵のとおり,被控訴人の補充主張⑴及び⑵はいずれも理由がないから,これらを前提とする被控訴人の補充主張⑶にも理由がないことが明らかである。 4 結論以上によれば,被控訴人の本件各事業年度における納付すべき法人税額及び過少申告加算税額は原判決別紙7のとおりとなり,本件各処分のうちこれらを - 40 -超える各部分は違法であるから,被控訴人の請求はこの限度で理由があり,本件各処分はこの限度で取り消すべきところ,これと同旨の原判決は相当であって,本件控訴及び本件附帯控訴はいずれも理由がないから,これらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第10民事部 裁判長裁判官髙橋譲 裁判官篠田賢治 民事部 裁判長 裁判官 髙橋譲 裁判官 篠田賢治 裁判官 朝倉亮子
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