平成27(行ウ)461 更正をすべき理由がない旨の通知処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成29年3月15日 大阪地方裁判所 その他
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判決文本文22,968 文字)

平成29年3月15日判決言渡平成27年(行ウ)第461号更正をすべき理由がない旨の通知処分取消請求事件主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 浪速税務署長が平成26年5月23日付けで原告に対してした,原告の平成23年分の所得税の更正の請求について更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分1」という。)を取り消す。 2 浪速税務署長が平成26年5月23日付けで原告に対してした,原告の平成24年分の所得税の更正の請求について更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分2」という。)を取り消す。 第2 事案の概要 1 要旨原告は,別紙1物件目録記載の土地及び各建物(以下,同土地を「本件土地」,同各建物を「本件各建物」といい,本件土地と本件各建物を併せて「本件土地建物」という。)の贈与を受け,本件土地建物の価額の合計額を課税価格とする平成22年分の贈与税(以下「本件贈与税」という。)を納付した上で,本件各建物を賃貸して賃料収入を得ていた。そして,原告は,本件各建物の賃貸による不動産所得の金額の計算上,本件贈与税の金額を必要経費に算入することなく,納付すべき税額を算出した平成23年分及び平成24年分の所得税の確定申告書をそれぞれ提出した。 本件は,原告が,上記提出後,本件贈与税の金額は,平成23年分の本件各建物の賃貸による不動産所得の金額の計算上,必要経費に算入すべき金額に該 当し,平成23年分の所得税の金額の計算上生じる純損失の金額を平成24年分の所得税の金額の計算上控除すべきであるとして,平成23年分及び平成24年分の所得税の更正の請求をしたところ,浪速税務署長から,各更正の請 3年分の所得税の金額の計算上生じる純損失の金額を平成24年分の所得税の金額の計算上控除すべきであるとして,平成23年分及び平成24年分の所得税の更正の請求をしたところ,浪速税務署長から,各更正の請求について,更正をすべき理由がない旨の本件通知処分1及び本件通知処分2(以下併せて「本件各通知処分」という。)を受けたことから,本件各通知処分は,①本件贈与税が本件各建物の賃貸による不動産所得の必要経費に該当するにもかかわらずされたものであり,また,②行政手続法8条1項に定める理由を示すことなくされたものであるから,違法である旨主張して,被告に対し,本件各通知処分の取消しを求める事案である。 2 関係法令の定め(1) 所得税法(平成25年法律第5号による改正前のものをいう。以下,別紙3「課税の根拠及び計算」を含め,同じ。)の定めア不動産所得所得税法26条1項は,不動産所得とは,不動産等の貸付けによる所得をいう旨規定する。同条2項は,不動産所得の金額は,その年中の不動産所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする旨規定する。 イ必要経費所得税法37条1項は,その年分の不動産所得等の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,「これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費,一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額」とする旨規定する。 ウ家事関連費等の必要経費不算入等所得税法45条1項は,居住者が支出し又は納付する次の各号に掲げるものの額は,その者の不動産所得等の金額の計算上,必要経費に算入しな い旨規定する。 1号家事上の 等の必要経費不算入等所得税法45条1項は,居住者が支出し又は納付する次の各号に掲げるものの額は,その者の不動産所得等の金額の計算上,必要経費に算入しな い旨規定する。 1号家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの2号所得税(不動産所得等を生ずべき事業を行う居住者が納付する所得税法131条3項〔確定申告税額の延納に係る利子税〕又は136条〔延払条件付譲渡に係る所得税額の延納に係る利子税〕の規定による利子税で,その事業についてのこれらの所得に係る所得税の額に対応するものとして政令で定めるものを除く。)3号所得税以外の国税に係る延滞税,過少申告加算税,無申告加算税,不納付加算税及び重加算税並びに印紙税法の規定による過怠税4号地方税法の規定による道府県民税及び市町村民税(都民税及び特別区民税を含む。)5号地方税法の規定による延滞金,過少申告加算金,不申告加算金及び重加算金6号罰金及び科料(通告処分による罰金又は科料に相当するもの及び外国又はその地方公共団体が課する罰金又は科料に相当するものを含む。)並びに過料7号損害賠償金(これに類するものを含む。)で政令で定めるもの8号国民生活安定緊急措置法の規定による課徴金及び延滞金9号私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の規定による課徴金及び延滞金(外国若しくはその地方公共団体又は国際機関が納付を命ずるこれらに類するものを含む。)10号金融商品取引法第6章の2(課徴金)の規定による課徴金及び延滞金11号公認会計士法の規定による課徴金及び延滞金エ家事関連費所得税法施行令96条は,同法45条1項1号(必要経費とされない家 事関連費)に規定する政令で定める経費は,次の各号に掲げる経費以外の経費とする旨規 よる課徴金及び延滞金エ家事関連費所得税法施行令96条は,同法45条1項1号(必要経費とされない家 事関連費)に規定する政令で定める経費は,次の各号に掲げる経費以外の経費とする旨規定する。 1号家事上の経費に関連する経費の主たる部分が不動産所得等を生ずべき業務の遂行上必要であり,かつ,その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費2号前号に掲げるもののほか,青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者に係る家事上の経費に関連する経費のうち,取引の記録等に基づいて,不動産所得等を生ずべき業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分の金額に相当する経費オ純損失の繰越控除所得税法70条1項は,確定申告書を提出する居住者のその年の前年以前3年内の各年(その年分の所得税につき青色申告書を提出している年に限る。)において生じた純損失の金額がある場合には,当該純損失の金額に相当する金額は,政令で定めるところにより,当該確定申告書に係る年分の総所得金額の計算上控除する旨規定する。 (2) 相続税法(平成25年法律第5号による改正前のものをいう。以下同じ。)の定め相続税法1条の4は,その柱書きにおいて,同条各号のいずれかに掲げる者は,同法により,贈与税を納める義務がある旨規定し,その各号において,贈与により財産を取得した個人で所定の要件を満たすものを掲げている。 同法2条の2は,同法1条の4各号の規定に該当する者について,その者が贈与により取得した財産に対し,贈与税を課する旨規定する。 同法21条の2第1項ないし第3項は,贈与により財産を取得した者が所定の期間内に贈与により取得した財産の価額の合計額をもって,贈与税の課税価格とする旨規定する。 (3) 与税を課する旨規定する。 同法21条の2第1項ないし第3項は,贈与により財産を取得した者が所定の期間内に贈与により取得した財産の価額の合計額をもって,贈与税の課税価格とする旨規定する。 (3) 国税通則法及び行政手続法の定め 国税通則法74条の14第1項は,行政手続法3条1項(適用除外)に定めるもののほか,国税に関する法律に基づき行われる処分その他公権力の行使に当たる行為については,行政手続法第2章(申請に対する処分)(8条〔理由の提示〕を除く。)の規定は,適用しない旨規定する。 行政手続法8条1項本文は,行政庁は,申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は,申請者に対し,同時に,当該処分の理由を示さなければならない旨規定する。同条2項は,上記処分を書面でするときは,上記理由は,書面により示さなければならない旨規定する。 (4) 所得税基本通達(昭和45年7月1日直審(所)30(例規))の定め平成17年6月24日付け課個2-23ほか3課共同「『所得税基本通達の制定について』の一部改正について(法令解釈通達)」による改正(以下「本件通達改正」という。)前の所得税基本通達37-5(以下「旧通達」という。乙28)本文においては,業務の用に供される資産に係る登録免許税(登録に要する費用を含み,その資産の取得価額に算入されるものを除く。),不動産取得税等は,当該業務に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入する旨規定されていたが,上記業務の用に供される資産に,相続,遺贈又は贈与により取得した資産を含む旨の規定は置かれていなかった。 本件通達改正後の所得税基本通達37-5(以下「新通達」という。乙29)においては,上記本文に(注)1が追加され,上記業務の用に供される資産には,相続,遺贈又は贈与により取得した資産を含 かった。 本件通達改正後の所得税基本通達37-5(以下「新通達」という。乙29)においては,上記本文に(注)1が追加され,上記業務の用に供される資産には,相続,遺贈又は贈与により取得した資産を含むものとする旨規定されている。(乙29) 3 前提となる事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる。 (1) 原告(平成18年▲月▲日生)の父であるAは,本件土地上に存する本件各建物を賃貸業務の用に供し,賃料収入を得ていたところ,平成22年4 月1日,原告に対し,本件土地建物を贈与した。原告は,同日以降,本件各建物の賃貸業務を継続し,賃料収入を得ている。(甲1,乙1~3,4の2)(2) 原告は,平成23年3月11日,上記(1)のとおり贈与された本件土地建物の価額の合計額を課税価格とした上で,平成22年分贈与税(本件贈与税)として,2544万5500円を納付した。(乙4の1・2)(3) 原告は,平成24年3月15日,浪速税務署長に対し,別紙2「課税の経緯」の「確定申告」欄中「平成23年分」欄の内容が記載された平成23年分の所得税の確定申告書(以下「本件確定申告書1」という。)を提出した。(乙5)原告は,本件確定申告書1に記載された不動産所得の金額の計算上,同年分の本件各建物の賃貸による賃料収入の金額を総収入金額に算入したが,本件贈与税の金額を必要経費に算入しなかった。 (4) 原告は,平成25年3月15日,浪速税務署長に対し,別紙2「課税の経緯」の「確定申告」欄中「平成24年分」欄の内容が記載された平成24年分の所得税の確定申告書(以下「本件確定申告書2」という。)を提出した。(乙6)原告は,本件確定申告書2に記載された不動産所得の金額の計算上,同年分の本件各 年分」欄の内容が記載された平成24年分の所得税の確定申告書(以下「本件確定申告書2」という。)を提出した。(乙6)原告は,本件確定申告書2に記載された不動産所得の金額の計算上,同年分の本件各建物の賃貸による賃料収入の金額を総収入金額に算入したが,前記のとおり平成23年分の不動産所得の金額の計算上本件贈与税の金額を必要経費に算入しないことを前提として,本件確定申告書2の「本年分で差し引く繰越損失額」欄には何らの記載もしなかった。 (5)ア原告は,平成26年4月2日,浪速税務署長に対し,本件贈与税の金額は,本件各建物の賃貸による不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額に該当する旨主張して,平成23年分の所得税につき,別紙2「課税の経緯」の「更正の請求」欄中「平成23年分」欄の記載内容のとおり更正をすべき旨の請求(以下「本件更正請求1」という。)をした。 (乙7)イ原告は,同日,浪速税務署長に対し,上記アのとおり本件贈与税の金額を必要経費に算入することによって平成23年分の所得税の金額の計算上生じる純損失の金額を,平成24年分の所得税の金額の計算上控除すべきである旨主張して,同年分の所得税につき,別紙「課税の経緯」の「更正の請求」欄中「平成24年分」欄の記載内容のとおり更正をすべき旨の請求(以下「本件更正請求2」という。)をした。(乙8)(6)ア浪速税務署長は,平成26年5月23日付けで,原告に対し,本件更正請求1について更正をすべき理由がない旨が記載された書面(以下「本件通知書1」という。)によって,本件通知処分1をした。 本件通知書1には,本件通知処分1の理由として,「あなたは,不動産所得の金額の計算上,必要経費額を過少に計上していたことを理由として,平成23年分の所得税の更正の請求書を提出していま 分1をした。 本件通知書1には,本件通知処分1の理由として,「あなたは,不動産所得の金額の計算上,必要経費額を過少に計上していたことを理由として,平成23年分の所得税の更正の請求書を提出しています。不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,不動産所得の総収入金額を得るために直接要した費用の額及びその年における販売費,一般管理費その他不動産所得の生ずべき業務について生じた費用の額とする旨規定しており,ここでいう必要経費とは,収益を獲得するための経済的な価値犠牲を意味し,『客観的』にみて,業務と『直接』関連があり,かつ,業務の遂行上『通常』必要な支出と解されています。 しかしながら,あなたが必要経費として計算した贈与税は,不動産所得を生ずべき業務の用に供されていると否とにかかわらず,贈与によって承継した財産の額に担税力を認めて課税するものであり,所得税法37条に規定する必要経費には該当しません。」と記載されていた。 (乙9)イ浪速税務署長は,同日付けで,原告に対し,本件更正請求2について更正をすべき理由がない旨が記載された書面(以下「本件通知書2」という。) によって,本件通知処分2をした。 本件通知書2には,本件通知処分2の理由として,「あなたは,平成25年3月15日に提出した平成24年分の所得税の確定申告書について,平成26年4月2日に提出した平成23年分の所得税の更正の請求書に係る純損失の繰越控除額の適用を求めて平成24年分の所得税の更正の請求書を同日に提出しています。しかしながら,あなたが平成23年分の所得税の更正の請求書で必要経費として計算した贈与税は,不動産所得を生ずべき業務の用に供されていると否とにかかわらず,贈与によって承継した財産の額に担税力を認めて課税するもので なたが平成23年分の所得税の更正の請求書で必要経費として計算した贈与税は,不動産所得を生ずべき業務の用に供されていると否とにかかわらず,贈与によって承継した財産の額に担税力を認めて課税するものであり,所得税法37条に規定する必要経費には該当しませんので,平成23年分の更正の請求書について更正すべき理由がなく,平成24年分に繰り越すべき純損失の金額も生じません。」と記載されていた。 (乙10)(7) 原告は,平成26年7月7日,浪速税務署長に対し,本件各通知処分の全部取消しを求めて,それぞれ異議申立てをしたが,浪速税務署長は,同年10月1日付けで,上記各異議申立てについて,これを棄却する旨の各決定をした。(乙11~14)(8) 原告は,同月30日,国税不服審判所長に対し,本件各通知処分の全部取消しを求めて,審査請求をしたが,国税不服審判所長は,平成27年9月11日付けで,原告の審査請求をいずれも棄却する旨の裁決をした。(乙15,16)(9) 原告は,同年11月16日,本件訴訟を提起した。(当裁判所に顕著な事実) 4 税額等に関する当事者の主張被告が本件訴訟において主張する本件各通知処分の根拠及び計算は,別紙3「課税の根拠及び計算」のとおりであるところ,原告は,下記5の争点1に関 する部分を除き,その計算の基礎となる金額及び計算方法を明らかに争わない。 5 争点及び当事者の主張本件の争点は,①本件贈与税の金額が,平成23年分の本件各建物の賃貸による不動産所得の金額の計算上,必要経費に算入すべき金額に該当するか(争点1),②本件各通知処分は,原告に対し行政手続法8条1項に定める理由を示してされたものであるか(争点2)である。 (1) 争点1(必要経費該当性)について(被告の主張)以下のとおり,本件 1),②本件各通知処分は,原告に対し行政手続法8条1項に定める理由を示してされたものであるか(争点2)である。 (1) 争点1(必要経費該当性)について(被告の主張)以下のとおり,本件贈与税の金額は,平成23年分の本件各建物の賃貸による不動産所得の金額の計算上,必要経費に算入すべき金額に該当しない。 ア必要経費の意義及び要件所得税法37条1項は,不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は,①その所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用(個別対応の費用)の額及び②その年における販売費,一般管理費その他その所得を生ずべき業務について生じた費用(一般対応の費用)の額とする旨規定する。 同項は,必要経費を,それが生み出すことに役立った収入と対応させ,その収入から控除するという費用収益対応の原則に基づくものである。また,所得税法は,所得の区分により収入金額から控除される内容を別異に規定しており,必要経費を算入する際には,当該費用がどの区分の所得について生じたものであるのかを明らかにする必要がある。さらに,個人は,所得稼得行為の主体であると同時に消費経済の主体でもあり,その支出については,消費としての支出(家事費)と必要経費としての支出を,客観的な基準に基づいて厳格に区別する必要がある。 以上によれば,所得税法37条1項が規定する必要経費として,ある支出が収入金額から控除されるためには,個別対応の費用であるか一般対応 の費用であるかにかかわらず,客観的にみて,それが事業活動と直接の関連を持ち(事業との直接関連性),かつ,事業の遂行上必要な費用でなければならない(事業遂行上の必要性)というべきである。 イ贈与税の必要経費該当性について(ア) 贈与税は,贈与された財産が 関連を持ち(事業との直接関連性),かつ,事業の遂行上必要な費用でなければならない(事業遂行上の必要性)というべきである。 イ贈与税の必要経費該当性について(ア) 贈与税は,贈与された財産が不動産賃貸業の対象とされているか否かに関係なく,贈与という無償行為がされたことに起因して課されるものであるから,不動産賃貸業について生じた支出であるとも,不動産賃貸業における収益を生み出すための支出であるともいえない。 そして,贈与税は,相続税の補完税であるところ,不動産所得を生ずべき事業用資産の相続に伴う相続税の支払は,当該事業活動を遂行する上で行われるものと評価することはできない。また,贈与税の支払は,不動産所得を生ずべき事業用資産の贈与に伴うものであっても,資産の無償取得に伴う所得の処分という性質を持つものと評価すべきである。 したがって,贈与税は,不動産所得を生ずべき事業活動と直接にも間接にも関連を持つとはいえず,また,事業の遂行上必要な費用とはいえないから,贈与税の金額を不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。 (イ) また,所得税法上,例えば,同一の年に贈与により事業用資産と非事業用資産を取得したような場合に,贈与税の金額のうち必要経費に算入される部分を計算する方法について定めた規定はない。そして,仮に何らかの計算方法により按分して必要経費に算入される贈与税を算出するとしても,ある事業用資産を贈与により単体で取得した者と上記のように非事業用資産と併せて取得した者との間において,累進税率(相続税法21条の7)の相違により必要経費算入額に差異が生じ得る。さらに,同額の資産の贈与を受けた者であっても,配偶者控除(同法21条の6)等の人的控除の有無により算出される贈与税の金額が異なり得る。 このように より必要経費算入額に差異が生じ得る。さらに,同額の資産の贈与を受けた者であっても,配偶者控除(同法21条の6)等の人的控除の有無により算出される贈与税の金額が異なり得る。 このように,所得税法上,必要経費に算入される贈与税の計算の方法について定めた規定はない上,仮に贈与税の必要経費算入が認められるとすれば,租税負担の公平を害する不合理な結果が生じることも踏まえると,所得税法は,そもそも贈与税を必要経費とすることを想定していないと解すべきである。 ウ新通達について(ア) 原告は,新通達において,贈与により取得した業務用資産に係る登録免許税等を必要経費に算入することが認められていることから,同様に贈与税を必要経費に算入することもできると解すべきである旨主張する。 (イ) もともと旧通達は,購入により取得した業務用資産に係る登録免許税等を必要経費に算入することを認めていたが,贈与等により取得した業務用資産に係る登録免許税等は家事費として取り扱い,必要経費に算入することを認めていなかった。その後,贈与により取得した非業務用資産であるゴルフ会員権の名義書換手数料が譲渡所得の取得費に当たるとした最高裁判所平成17年2月1日第三小法廷判決・集民216号279頁(以下「平成17年最高裁判決」という。)を受けて,その射程外である業務用資産に関する旧通達についても,本件通達改正がなされたが,新通達は,上記のとおり旧通達において購入により取得した業務用資産に係る登録免許税等の必要経費への算入が認められていたこととのバランスに配慮して,贈与等により取得した業務用資産に係る登録免許税等の必要経費への算入を認めたものである(国税不服審判所平成18年6月8日裁決・裁決事例集No.71 178頁参照〔乙30〕)。 以上のように,本件通達改 等により取得した業務用資産に係る登録免許税等の必要経費への算入を認めたものである(国税不服審判所平成18年6月8日裁決・裁決事例集No.71 178頁参照〔乙30〕)。 以上のように,本件通達改正の契機となった平成17年最高裁判決は,非事業用資産の贈与に伴い支払われた費用が,譲渡所得の取得費に該当するか否かを判断したものであり,また,新通達も,事業用資産を贈与 等によって取得した場合について登録免許税等の必要経費への算入を認めたものにすぎず,いずれも贈与税が必要経費に該当することを認めたものではない。 (ウ) そして,新通達が必要経費に算入することを認める登録免許税等は,いずれも主として物的な側面に着目して課される物税である。贈与税は,主として人的な側面に着目して課される人税であり,登録免許税等とは性質を異にするから,新通達において登録免許税等の必要経費への算入が認められているからといって,贈与税についても同様に必要経費への算入を認めるべきということはできない。 (エ) 以上のとおり,本件通達改正の経緯や新通達が必要経費への算入を認めている租税の性質等に照らせば,新通達を根拠として,贈与税の必要経費への算入が認められていると解することはできないから,原告の前記(ア)の主張は失当である。 エまとめ上記のとおり,そもそも所得税法は,贈与税を必要経費に算入することを想定していない上,贈与税は,不動産所得を生ずべき事業活動と直接にも間接にも関連を持つとはいえず,また,当該事業の遂行上必要な費用であるということもできない。 したがって,本件贈与税の金額は,平成23年分の本件各建物の賃貸による不動産所得の金額の計算上,必要経費に算入すべき金額に該当しない。 このような解釈を前提としてされた本件各通知処分に何らの違法もない。 たがって,本件贈与税の金額は,平成23年分の本件各建物の賃貸による不動産所得の金額の計算上,必要経費に算入すべき金額に該当しない。 このような解釈を前提としてされた本件各通知処分に何らの違法もない。 (原告の主張)以下のとおり,本件贈与税の金額は,平成23年分の本件各建物の賃貸による不動産所得の金額の計算上,必要経費に算入すべき金額に該当する。 ア必要経費の意義及び要件所得税法37条1項は,①売上原価その他当該総収入金額を得るため直 接に要した費用(個別対応の費用)の額及び②販売費,一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(一般対応の費用)の額を,必要経費に算入すべき金額とする旨規定する。 同項は,個別対応の費用とは異なり,一般対応の費用については「直接」との文言を用いておらず,ある費用が一般対応の費用に該当するために,事業活動と直接の関連を持つこと(直接性)を要求する法律上の根拠はない。また,所得税法施行令96条1号は,家事関連費のうち必要経費に算入することができるものについて,経費の主たる部分が「事業所得を…生ずべき業務の遂行上必要」であることを要すると規定している。そうすると,一般対応の費用については,上記直接性は要求されず,事業の遂行上必要な費用であれば,必要経費に該当すると解すべきである。 イ本件贈与税の必要経費該当性について(ア) 不動産賃貸により不動産所得を得るためには,当該不動産の賃貸権原を有していることが必要であるところ,原告は,本件各建物の賃貸による不動産所得を得るために,本件土地建物の贈与を受け,そのために本件贈与税を納付した。 本件贈与税は,上記のとおり本件各建物の賃貸権原を取得するために納付されたものであり,本件各建物の賃貸による賃料収入を得るため直接に要した 土地建物の贈与を受け,そのために本件贈与税を納付した。 本件贈与税は,上記のとおり本件各建物の賃貸権原を取得するために納付されたものであり,本件各建物の賃貸による賃料収入を得るため直接に要した費用として,個別対応の費用に当たる。 また,本件贈与税は,原告が本件各建物の賃貸を行う上で必要な費用であったということができるから,本件各建物の賃貸による不動産所得を生ずべき業務について生じた費用として,一般対応の費用に当たる。 したがって,本件贈与税は,本件各建物の賃貸による不動産所得の金額の計算上,必要経費に算入されるべきである。 (イ) 被告は,所得税法上,必要経費に算入される贈与税の計算の方法について定めた規定はないなどとして,所得税法は,そもそも贈与税を必 要経費とすることを想定していない旨主張する。 しかし,贈与により事業用資産と非事業用資産を取得した場合には,事業に供する面積の割合等を考慮するなどして,適切な按分を行うことにより贈与税の金額のうち必要経費に算入される部分を計算することが可能である。また,事業用資産を贈与により単体で取得した者と上記のように非事業用資産と併せて取得した者との間において贈与税の税率が異なり得ることや,同額の資産の贈与を受けた者であっても人的控除の有無により贈与税の金額が異なり得ることは,贈与税に関する法令の規定上やむを得ないことであり,所得税法が贈与税の必要経費への算入を認めていないことの根拠とはならない。 したがって,被告の上記主張は失当である。 ウ新通達について(ア) 新通達においては,贈与により取得した業務用資産に係る登録免許税,不動産取得税等を,不動産所得の必要経費に算入することが認められている。そうすると,贈与により取得した業務用資産に係る贈与税も,登録免許税等と同様 は,贈与により取得した業務用資産に係る登録免許税,不動産取得税等を,不動産所得の必要経費に算入することが認められている。そうすると,贈与により取得した業務用資産に係る贈与税も,登録免許税等と同様に,必要経費に算入されると解すべきである。 (イ) 被告は,本件通達改正の経緯に照らせば,新通達を根拠として,贈与税の必要経費への算入が認められていると解することはできない旨主張する。 しかし,本件通達改正の契機となった平成17年最高裁判決は,受贈者が贈与者から資産を取得するための付随費用の額は,収入金額から控除されるべき性質のものであるとして,贈与により取得したゴルフ会員権の名義書換手数料が譲渡所得の取得費に当たると判示したものである。 このような平成17年最高裁判決の趣旨に照らせば,新通達において,贈与により取得した業務用資産に係る登録免許税等の必要経費への算入が認められるのと同様に,贈与税も,収入金額から控除されるべき性質 のものであるから,必要経費への算入が認められるべきである。 したがって,被告の上記主張は,失当である。 (ウ) また,被告は,新通達が必要経費に算入することを認める登録免許税等は,いずれも物税であり,人税である贈与税とは性質を異にするから,新通達を根拠として,贈与税の必要経費への算入を認めるべきということはできない旨主張する。 しかし,贈与税が人税であるからといって,直ちに必要経費に該当しないと解すべき法的根拠はない。 また,所得税法45条1項2号は,同法131条3項又は136条の規定による利子税の必要経費への算入を認める旨規定し,また,地方税法72条の2第3項は,個人の行う事業に対する事業税は,所得を課税標準として課する旨規定するところ,上記利子税及び事業税はいずれも人税であるにもかかわらず,必要 の算入を認める旨規定し,また,地方税法72条の2第3項は,個人の行う事業に対する事業税は,所得を課税標準として課する旨規定するところ,上記利子税及び事業税はいずれも人税であるにもかかわらず,必要経費に算入することができるものと解されている。 したがって,贈与税が人税であるからといって,必要経費に該当しない旨の被告の上記主張は,失当というべきである。 エ所得税法45条1項について所得税法45条1項各号は,不動産所得の金額の計算上,必要経費に算入しないものを掲げているところ,贈与税は,上記各号において掲げられていない。したがって,所得税法は,贈与税を一律に必要経費に算入しない取扱いとはしておらず,同法37条1項の個別対応の費用又は一般対応の費用に該当する限り,贈与税が必要経費に該当することを肯定しているというべきである。 オまとめ以上のとおり,新通達や所得税法45条1項各号に照らして,所得税法上,贈与税は,同法37条1項の要件を満たす限り必要経費に該当するこ とが肯定されていると解すべきところ,本件贈与税は,本件各建物の賃貸による不動産所得について,個別対応の費用又は一般対応の費用に当たるから,平成23年分の本件各建物の賃貸による不動産所得の金額の計算上,必要経費に算入すべき金額に該当するというべきである。この点の解釈を誤ってされた本件各通知処分は,違法であって,取消しを免れない。 (2) 争点2(理由提示)について(被告の主張)本件通知書1には,所得税法37条1項が規定する必要経費の意義及び要件が記載された上で,本件贈与税がその要件を満たさないとして,更正をすべき理由がないとの結論に至ったことが記載されている。また,本件通知書2には,同様に必要経費の意義及び要件が記載された上で,本件贈与税がその要件 で,本件贈与税がその要件を満たさないとして,更正をすべき理由がないとの結論に至ったことが記載されている。また,本件通知書2には,同様に必要経費の意義及び要件が記載された上で,本件贈与税がその要件を満たさず,平成24年分に繰り越す純損失の金額も生じないとして,更正をすべき理由がないとの結論に至ったことが記載されている。 上記のとおり,本件通知書1及び本件通知書2に記載された処分理由は,いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して処分がされたかをその記載自体から了知し得るものであり,行政庁の恣意抑制及び申請者の不服申立ての便宜という理由提示の趣旨を充足する程度に本件各通知処分の理由を示したものである。したがって,本件各通知処分は,原告に対し行政手続法8条1項に定める理由を示してされたものであり,手続的にも適法である。 (原告の主張)本件通知書1及び本件通知書2に記載された処分理由は,贈与税が贈与によって承継した財産の額に担税力を認めて課税するものであるなどとして,贈与税自体の一般的な説明をした上で,本件贈与税が必要経費に当たらないとの結論のみを述べるものであり,①本件贈与税が個別対応の費用に当たらないこと,②本件贈与税が一般対応の費用に当たらないこと,③本件贈与税が必要経費に算入されないことについて別段の定めがあること等,本件贈与 税が必要経費に当たらないことの理由を全く示していない。 したがって,本件各通知処分は,原告の不服の事由に対応してその結論に到達した過程を明らかにしたものであるということはできないから,原告に対し行政手続法8条1項に定める理由を示してされたものではなく,そのような手続的瑕疵のある本件各通知処分は違法であって,取消しを免れない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(必要経費該当性)について( 手続法8条1項に定める理由を示してされたものではなく,そのような手続的瑕疵のある本件各通知処分は違法であって,取消しを免れない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(必要経費該当性)について(1) 所得税法37条1項は,その年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,①「所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額」(同項前段)及び②「その年における販売費,一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用…の額」(同項後段)とする旨規定する。 同項は,いわゆる費用収益対応の原則(必要経費は,それが生み出すことに役立った収入と対応させ,その収入から控除しなければならないという原則)により,特定の収入との対応関係を明らかにできる費用についてはそれが生み出した収入の帰属する年度の必要経費とすべきであり(以下,これを「個別対応」という。),特定の収入との対応関係を明らかにできない費用についてはそれが生じた年度の必要経費とすべきである(以下,これを「一般対応」という。)ことから,必要経費を二つに区分し,個別対応の費用に相当するものとして上記①の費用の額を,一般対応の費用に相当するものとして上記②の費用の額をそれぞれ定めたものと解される。 そして,上記のとおり同項が,個別対応の費用について,不動産所得の総収入金額を得るため「直接に要した」費用と規定し,一般対応の費用について,不動産所得を生ずべき「業務について」生じた費用と規定していることからすれば,ある費用が不動産所得に係る個別対応の費用又は一般対応の費用に該当するといえるためには,少なくとも,当該費用が不動産の賃貸業務 と関連することを要するものと解される。 (2) そこで,本件贈与税 が不動産所得に係る個別対応の費用又は一般対応の費用に該当するといえるためには,少なくとも,当該費用が不動産の賃貸業務 と関連することを要するものと解される。 (2) そこで,本件贈与税が,不動産の賃貸業務と関連するかについて検討すると,まず,相続税法は,個人が贈与により取得した個々の財産の価額ではなく,所定の期間内に贈与により取得した財産の価額の合計額をもって課税価格とする旨規定している(21条の2第1項ないし第3項)。そして,相続税法は,贈与税の課税財産につき,贈与により取得した財産に対し贈与税を課する旨規定するにとどまり(2条の2),その種類,内容等を限定する規定を設けておらず,上記課税財産には,財産権の対象となる一切の物及び権利が含まれるものと解される。また,相続税法は,贈与により財産を取得した個人で所定の要件を満たすものは,贈与税を納める義務がある旨規定し(1条の4),贈与税の課税原因を贈与と規定しているのであって,当該贈与に関連する他の諸事情が課税原因となることをうかがわせる規定は見当たらない。以上のような相続税法の諸規定に照らすと,贈与税は,贈与により無償で移転した財産の価額に相当する経済的価値を課税対象とするものであると解される。 上記のように解することは,贈与税が,同様に相続財産の経済的価値を課税対象とする相続税の補完税として位置付けられていることからも,相当ということができる。 また,所得税は,人が収入等の形で新たに取得する経済的価値である所得を課税対象とするところ,所得税法9条1項16号が,同一の経済的価値に対する相続税又は贈与税と所得税との二重課税を排除することを趣旨として,所得のうち,相続,遺贈又は個人からの贈与により取得するもの(相続税法の規定により相続,遺贈又は個人からの贈与により取得した に対する相続税又は贈与税と所得税との二重課税を排除することを趣旨として,所得のうち,相続,遺贈又は個人からの贈与により取得するもの(相続税法の規定により相続,遺贈又は個人からの贈与により取得したものとみなされるものを含む。)には所得税を課さないこととしていること(最高裁判所平成22年7月6日第三小法廷判決・民集64巻5号1277頁参照)は,相続税及び贈与税と所得税とが,いずれも取得された経済的価値を課税対象とす ることを裏付けるものということができる。 そして,不動産所得を生ずべき賃貸業務の用に供される不動産を贈与により取得した場合には,当該贈与につき贈与税の納税義務が生ずることとなる。 しかし,前記のとおり,贈与税は,財産の価額に相当する経済的価値を課税対象とするものであって,個々の贈与財産を課税対象とするものではないから,上記不動産の贈与に係る贈与税は,上記賃貸業務における具体的な不動産の取得と関連性を有するものということはできない。また,贈与税は,贈与を課税原因とするものであって,上記賃貸業務を課税原因とするものではないから,上記不動産の贈与に係る贈与税が,上記賃貸業務との関連性を有するということもできない。以上によれば,不動産所得を生ずべき賃貸業務の用に供される不動産を贈与により取得した場合に納付する贈与税は,当該賃貸業務との関連性を欠くものというべきであり,原告が,その父によって賃貸業務の用に供されていた本件各建物及びその敷地である本件土地を贈与により取得した際に納付した本件贈与税も,本件各建物の賃貸業務との関連性を認めることはできない。 (3)ア原告は,本件贈与税は,原告が本件各建物の賃貸権原を取得するために納付されたものであり,本件各建物の賃貸を行う上で必要な費用であったということができるから,個別対応 めることはできない。 (3)ア原告は,本件贈与税は,原告が本件各建物の賃貸権原を取得するために納付されたものであり,本件各建物の賃貸を行う上で必要な費用であったということができるから,個別対応の費用又は一般対応の費用として,本件各建物の賃貸による不動産所得の必要経費に該当する旨主張する。 しかし,前記のとおり,贈与税は,贈与により無償で移転した財産の価額に相当する経済的価値を課税対象とするものであり,その法的性質からして,不動産所得を生ずべき賃貸業務との関連性を欠くものというべきであるから,本件贈与税の納付に係る具体的事情のいかんにかかわらず,本件贈与税は,本件各建物の賃貸による不動産所得の必要経費に該当するものということはできない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 イ(ア) 原告は,新通達において贈与により取得した業務用資産に係る登録免許税,不動産取得税等の必要経費への算入が認められていることや,本件通達改正の契機となった平成17年最高裁判決の趣旨に照らせば,贈与税を不動産所得の必要経費に算入することが認められるべきである旨主張する。 (イ) そこで,本件通達改正の経緯や理由について検討すると,もともと旧通達においては,業務の用に供される資産に係る登録免許税,不動産取得税等は,当該業務に係る各種所得の必要経費に算入するものとされていたが,上記業務の用に供される資産に,相続,遺贈又は贈与により取得した資産を含む旨の規定は置かれていなかった(乙28)。 その後,ゴルフ会員権の受贈者がその贈与を受けた際に支払った名義書換手数料の額は,受贈者が同会員権を譲渡した場合に所得税法60条1項に基づいてされる譲渡所得の金額の計算において,同法38条1項にいう「資産の取得に要した金額」に算入されるものと 際に支払った名義書換手数料の額は,受贈者が同会員権を譲渡した場合に所得税法60条1項に基づいてされる譲渡所得の金額の計算において,同法38条1項にいう「資産の取得に要した金額」に算入されるものとした平成17年最高裁判決を受けて,同年6月27日付け課資3-7ほか2課共同「『租税特別措置法(株式等に係る譲渡所得等関係)の取扱いについて』等の一部改正について(法令解釈通達)」による改正によって所得税基本通達60-2が追加され,贈与等により譲渡所得の基因となる資産を取得した場合において,当該資産を取得するために通常必要と認められる費用のうち当該資産に対応する金額は,当該資産の取得費に算入できることとされた(乙29)。 本件通達改正は,上記所得税基本通達60-2の追加を背景とするものであり,業務の用に供される資産について,贈与等により取得した場合の登録免許税等を譲渡所得の取得費に算入する取扱いとする余地もあったが,旧通達において,業務の用に供される資産を購入により取得した場合において登録免許税等を必要経費に算入する取扱いとされていた ことに配慮して,新通達において,相続,遺贈又は贈与により取得した資産を含め,業務の用に供される資産に係る登録免許税等を必要経費に算入することとしたものである(乙30)。 以上のような本件通達改正の経緯や理由に照らすと,本件通達改正は,所得税法37条1項の解釈について検討した結果としてではなく,業務の用に供される資産に係る登録免許税等の取扱いにつき,当該資産を購入により取得した場合と贈与等により取得した場合との均衡に配慮して,旧通達を改正したものにすぎないものと解される。そうすると,新通達において,贈与等により取得した業務の用に供される資産に係る登録免許税等を必要経費に算入することが認められている との均衡に配慮して,旧通達を改正したものにすぎないものと解される。そうすると,新通達において,贈与等により取得した業務の用に供される資産に係る登録免許税等を必要経費に算入することが認められているからといって,そこから直ちに,贈与税を不動産所得の必要経費に算入することが認められるべきであるとは解されない。 (ウ) また,上記の点はさて措き,不動産所得を生ずべき賃貸業務の用に供される不動産に係る不動産取得税や登録免許税が,所得税法37条1項の規定する不動産所得の必要経費に該当するかについて検討すると,これらは,いずれも各種の経済取引又はその表現たる行為に担税力を認めて課される流通税であり,上記不動産に係る不動産取得税は,上記不動産の取得に対して当該不動産の取得者に課され(地方税法73条の2第1項),取得時の不動産の価格を課税標準とし(同法73条の13),登録免許税は,登記について登記を受ける者に課され(登録免許税法2条,3条),不動産の価額を課税標準とする(同法9条,別表第一)。 このように,不動産取得税や登録免許税は,いずれも特定の不動産に係る取得やその表現行為たる登記を課税対象とする租税であって,当該特定の不動産による賃貸業務との関係において,必要経費に該当するための関連性を肯定し得るものということができる(なお,新通達は,固定資産税についても必要経費への算入を認めているが,固定資産税は, 固定資産の所有者に課され〔地方税法343条1項〕,基準年度に係る賦課期日における個別の固定資産の価格を課税標準としており〔同法349条1項,349条の2〕,特定の固定資産を課税対象とするものであるから,上記の関連性を肯定し得る点において,不動産取得税や登録免許税と異なるところはない。)。 他方,前記のとおり,贈与税は,財産の価額 項,349条の2〕,特定の固定資産を課税対象とするものであるから,上記の関連性を肯定し得る点において,不動産取得税や登録免許税と異なるところはない。)。 他方,前記のとおり,贈与税は,財産の価額に相当する経済的価値を課税対象とするものであって,特定の不動産の取得等を課税対象とするものではないから,不動産取得税や登録免許税とは法的性質を異にし,上記関連性を肯定することはできない。 したがって,不動産取得税や登録免許税が所得税法37条1項の規定する不動産所得の必要経費に該当するとしても,贈与税も同様に不動産所得の必要経費に該当するということはできない。 (エ) そして,平成17年最高裁判決は,ゴルフ会員権の受贈者がその贈与を受けた際に支払った名義書換手数料が譲渡所得の取得費に該当するか否かについて,所得税法60条1項,同法38条1項の解釈に基づき判断を示したものにすぎず,贈与税が同法37条1項の不動産所得の必要経費に該当するか否かが問題となっている本件との関係においては,事案及び争点を異にし,その射程が及ぶものとは解されない。 (オ) 以上によれば,新通達の内容や平成17年最高裁判決の趣旨から,贈与税を不動産所得の必要経費に算入すべきであるということはできないから,原告の前記(ア)の主張は採用することができない。 ウ原告は,利子税や個人の行う事業に対する事業税は,贈与税と同様にいわゆる人税に当たるところ,これらの租税については必要経費への算入が認められていることから,贈与税も同様に不動産所得の必要経費に算入されるべきである旨主張する。 確かに,所得税法45条1項2号は,不動産所得等の金額の計算上,必 要経費に算入しないものとして所得税を掲げるが,その括弧書きにおいて,不動産所得等を生ずべき事業を行う居住者が納付する所 確かに,所得税法45条1項2号は,不動産所得等の金額の計算上,必 要経費に算入しないものとして所得税を掲げるが,その括弧書きにおいて,不動産所得等を生ずべき事業を行う居住者が納付する所得税法131条3項又は136条の規定による利子税で,その事業についてのこれらの所得に係る所得税の額に対応するものとして政令で定めるものを,必要経費に算入しない所得税から除く旨規定する。しかし,上記利子税は,所得税法131条1項又は132条1項に基づく所得税額の延納を認められた者が納付義務を負うものであるところ,上記括弧書きの趣旨は,上記利子税が金融利子と類似することから,必要経費への算入を許容したものと解される。贈与税は,このように金融利子と類似するものということはできず,必要経費への算入の可否につき上記利子税と同様に解することはできない。 また,地方税法72条の2第3項は,個人の行う事業に対する事業税は,個人の行う第一種事業,第二種事業及び第三種事業(同条8項ないし10項)による所得を課税標準としてその個人に課する旨規定する。このように,上記事業税は,個人の行う事業を課税原因とする租税であり,不動産所得を生ずべき賃貸業務との関係において,必要経費に該当するための関連性を肯定し得るものである。他方,前記のとおり,贈与税は,贈与を課税原因とするものであって,賃貸業務を課税原因とするものではないから,上記事業税とは法的性質を異にし,上記関連性を肯定することはできない(そもそも,事業税は,事業を課税対象とするいわゆる物税であって〔乙35〕,人税ではないのであるから,事業税が人税であることを前提とする原告の上記主張は,その前提を欠き,失当ということもできる。)。 したがって,利子税や個人の行う事業に対する事業税について,必要経費への算入が認めら のであるから,事業税が人税であることを前提とする原告の上記主張は,その前提を欠き,失当ということもできる。)。 したがって,利子税や個人の行う事業に対する事業税について,必要経費への算入が認められるからといって,贈与税も同様に不動産所得の必要経費に算入すべきであるということはできないから,原告の上記主張は採用することができない。 エ加えて,原告は,所得税法45条1項各号において,贈与税は,必要経 費に算入しないものとして掲げられていないから,所得税法は,贈与税を一律に必要経費に算入しないものとはしておらず,同法37条1項の要件を満たす限り,贈与税が必要経費に該当することを肯定しているものと解すべきである旨主張する。 しかし,贈与税が所得税法45条1項各号において掲げられていないからといって,そこから直ちに,贈与税が,不動産所得を生ずべき賃貸業務との関連性を有することが肯定されるものとは解されないから,贈与税が上記各号において掲げられていないことは,贈与税が,その法的性質からして,不動産所得を生ずべき賃貸業務との関連性を欠くとの前記結論を妨げるものではない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (4) 以上によれば,本件贈与税は,本件各建物の賃貸による不動産所得の必要経費に該当しないから,その金額は,平成23年分の本件各建物の賃貸による不動産所得の金額の計算上,必要経費に算入すべき金額に該当しない。 2 争点2(理由提示)について行政手続法8条1項本文が,申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合に同時にその理由を申請者に示さなければならないとしているのは,申請に応答して許認可等を拒否するという処分の性質に鑑み,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由 場合に同時にその理由を申請者に示さなければならないとしているのは,申請に応答して許認可等を拒否するという処分の性質に鑑み,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を申請者に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解される。そして,同項本文に基づいてどの程度の理由を提示すべきかは,上記のような同項本文の趣旨に照らし,当該処分の根拠法令の規定内容,当該処分の性質及び内容等を総合考慮してこれを決定すべきである(最高裁判所平成23年6月7日第三小法廷判決・民集65巻4号2081頁参照)。 この見地に立って国税通則法23条4項に基づく更正をすべき理由がない旨の通知処分について検討すると,納税申告書を提出した者は,当該申告書の提 出により納付すべき金額が過大であるときなどに,更正の請求をすることができ(同条1項),その際は,更正の請求をする理由,当該請求をするに至った事情の詳細等を記載した更正請求書を税務署長に提出しなければならない(同条3項)。そして,税務署長は,更正の請求があった場合には,その請求に係る課税標準等又は税額等について調査し,更正をし,又は更正をすべき理由がない旨をその請求をした者に通知する(同条4項)。 上記規定内容に照らせば,更正をすべき理由がない旨の通知処分は,納税申告書を提出した者から更正の請求があった場合に,その請求に係る課税標準等について調査し,更正をすべき理由がない旨を通知する処分である。そして,行政手続法8条1項本文の上記趣旨も踏まえれば,上記処分を書面でするときは,その理由として,当該書面の記載自体から,請求者が更正の請求をする理由に対応してその結論に到達した過程が明らかにされなければならないというべきである(最高裁判所昭和38年5月31日第二小法廷判決・ ,その理由として,当該書面の記載自体から,請求者が更正の請求をする理由に対応してその結論に到達した過程が明らかにされなければならないというべきである(最高裁判所昭和38年5月31日第二小法廷判決・民集17巻4号617頁参照)。 これを本件についてみると,前記前提となる事実(5)ア,(6)アのとおり,原告は,本件贈与税の金額は,本件各建物の賃貸による不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額に該当する旨主張して,本件更正請求1をしたところ,本件通知書1には,本件通知処分1の理由として,「必要経費とは,収益を獲得するための経済的な価値犠牲を意味し,『客観的』にみて,業務と『直接』関連があり,かつ,業務の遂行上『通常』必要な支出と解されています。」,「あなたが必要経費として計算した贈与税は,不動産所得を生ずべき業務の用に供されていると否とにかかわらず,贈与によって承継した財産の額に担税力を認めて課税するものであり,所得税法37条に規定する必要経費には該当しません。」などと記載されていた。上記記載からは,本件贈与税が不動産所得の必要経費に該当するとの原告の更正の請求の理由に対応して,贈与税が,その性質から,客観的にみて業務との直接関連性,業務遂行上の通常の必要性を 欠くため,所得税法37条の規定する必要経費に該当しない旨の結論に到達したことが明らかにされていたということができる。 また,前記前提となる事実(5)イ,(6)イのとおり,原告は,本件贈与税の金額を必要経費に算入することによって平成23年分の所得税の金額の計算上生じる純損失の金額を,平成24年分の所得税の金額の計算上控除すべきである旨主張して,本件更正請求2をしたところ,本件通知書2には,本件通知処分2の理由として,「贈与税は,不動産所得を生ずべき業務の用に供され 失の金額を,平成24年分の所得税の金額の計算上控除すべきである旨主張して,本件更正請求2をしたところ,本件通知書2には,本件通知処分2の理由として,「贈与税は,不動産所得を生ずべき業務の用に供されていると否とにかかわらず,贈与によって承継した財産の額に担税力を認めて課税するものであり,所得税法37条に規定する必要経費には該当しません」などと記載されていた。上記記載は,本件通知書1の記載と比較して簡潔ではあるものの,適用法規として所得税法37条が示されており,本件贈与税が不動産所得の必要経費に該当し,平成24年分の所得税の金額の計算上控除すべき純損失が生じるとの原告の更正の請求の理由に対応して,贈与税が,その性質から,同条の規定する必要経費に該当せず,上記純損失も生じない旨の結論に到達したことが明らかにされていたということができる。 したがって,本件各通知処分は,いずれも原告に対し行政手続法8条1項に定める理由を示してされたものであったということができる。本件通知処分に手続的な瑕疵は認められない。 3 まとめこれまでに判示したところ及び弁論の全趣旨によれば,争点1に関する部分を除き,計算の基礎となる金額及び計算方法については当事者間に争いがなく,その算定過程に違法,不合理な点はない。したがって,本件各通知処分は適法であるというべきである。 4 結論以上によると,原告の請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官西田隆裕 裁判官山崎雄大 裁判官吉川 慶 裁判官山崎雄大 裁判官吉川

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