令和5 年6 月22 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和5 年(ワ)第70032 号発信者情報開示命令の申立てについての決定に対する異議事件(基本事件東京地方裁判所令和4 年(発チ)第10032 号発信者情報開示命令申立事件) 口頭弁論終結日令和5 年4 月27 日判決原告株式会社NTT ドコモ同訴訟代理人弁護士加藤瑛子同渡邉峻 同北山智也同宮本雄太同横山経通被告 A同訴訟代理人弁護士神田知宏 主文 1 当事者間の東京地方裁判所令和4 年(発チ)第10032 号発信者情報開示命令申立事件について、同裁判所が令和5 年1 月4 日にした決定を認可する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 請求の趣旨(1) 当事者間の東京地方裁判所令和4 年(発チ)第10032 号発信者情報開示命令申立事件について同裁判所が令和5 年1 月4 日にした決定を取り消す。 (2) 前項記載の事件における被告の申立てを却下する。 2 請求の趣旨に対する答弁 主文同旨第2 事案の概要本件は、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「法」といい、同法の施行規則を「規則」という に対する答弁 主文同旨第2 事案の概要本件は、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「法」といい、同法の施行規則を「規則」という。)5 条2 項に基づく被告の申立てを相当と認め、原告に対して別紙発信者情報目録記載の各情報(以 下「本件発信者情報」という。)の開示を命じた基本事件に係る決定(以下「原決定」という。)に対し、原告が異議の訴えを提起した事案である。 1 前提事実(証拠を掲げた事実以外は、当事者間に争いがないか弁論の全趣旨により容易に認められる事実。なお、枝番号のある証拠については、その全てを含む(以下同じ。)。) (1) 原告は、インターネット接続サービスの提供を含む電気通信事業を営む株式会社であり、不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信(特定電気通信)の用に供される電気通信設備(特定電気通信設備)を用いて他人の通信を媒介し、その他特定電気通信設備を他人の通信の用に供する者(特定電気通信役務提供者)である。 (2) 氏名不詳者は、別紙投稿記事目録の投稿日時欄記載の日時において、インターネット上のサイト「Twitter」(以下「本件サイト」という。)に、「(省略)」をユーザー名とするアカウント(以下「本件アカウント」という。)により、同目録の投稿内容欄記載の写真(以下「本件写真」という。)を含む投稿(以下「本件投稿」という。)をした(乙6)。 (3) 被告は、本件サイトの管理者から、本件アカウントにログインした際のIPアドレス及びタイムスタンプの開示を受けた。これによると、本件アカウントには、本件投稿日時(令和4 年8 月31 日午後10 時3 分)の直前では同日午前8 時2 分に、直後では翌9 月1 日午前0 時 レス及びタイムスタンプの開示を受けた。これによると、本件アカウントには、本件投稿日時(令和4 年8 月31 日午後10 時3 分)の直前では同日午前8 時2 分に、直後では翌9 月1 日午前0 時13 分に、それぞれログインがあった(乙3、4。 以下、本件投稿直前のログイン時の通信を「本件直前ログイン時通信」、直後のログ イン時の通信を「本件直後ログイン時通信」という。)。 (4) 本件発信者情報は本件直前ログイン時通信に係る氏名又は名称等の情報であるところ、原告は、上記(3)のIP アドレスを管理しており(乙5)、本件直前ログイン時通信に係る本件発信者情報を保有している。他方、原告は、本件直後ログイン時通信については、同時刻に複数の記録があり契約者を特定することができないとしている。 (5) 被告による基本事件の申立てに対し、当庁は、令和5 年1 月4 日、原決定をした。これに対し、原告は、同月27 日、本件訴えを提起した。 2 争点(1) 権利侵害の明白性(争点1)(2) 本件直前ログイン時通信の「侵害関連通信」(法5 条3 項)該当性(争点2) (3) 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無(争点3) 3 争点に対する当事者の主張(1) 争点1(権利侵害の明白性)〔被告の主張〕本件写真は被告の自撮り写真であり、被告が著作権を有する。しかるに、本件投 稿は、被告の許諾なく、本件サイトに本件写真をアップロードした。これにより被告の著作権(公衆送信権)が侵害されたことは明らかである。 〔原告の主張〕本件写真は、自撮りとしてはありふれた構図であり、著作物性を有するとはいいきれない。したがって、本件投稿が被告の著作権(公衆送信権)を侵害するとはい いきれない。 。 〔原告の主張〕本件写真は、自撮りとしてはありふれた構図であり、著作物性を有するとはいいきれない。したがって、本件投稿が被告の著作権(公衆送信権)を侵害するとはい いきれない。 (2) 争点2(本件直前ログイン時通信の「侵害関連通信」(法5 条3 項)該当性)〔被告の主張〕「侵害関連通信」について定める規則5 条の「侵害情報の送信と相当の関連性を有する」の解釈につき、侵害情報の送信と最も時間的に近接して行われたものに拘 泥する必要はない。最も時間的に近接する通信から発信者を特定することが困難で あることが明らかであり、特定発信者情報の開示請求権を創設した趣旨に照らし、「侵害関連通信」の範囲を当該通信のみに限定することが適切ではないと考えられる場合には、最も時間的に近接する通信以外の通信も、「侵害情報の送信と相当の関連性を有するもの」になり得ると解される。 本件の場合、本件投稿と最も時間的に近接する通信である本件直後ログイン時通 信について、原告は、同時刻に複数の記録があり契約者を特定できないとしていることから、その発信者を特定することが困難であることは明らかである。したがって、本件においては、本件直前ログイン時通信が「侵害情報の送信と相当の関連性を有する」「侵害関連通信」であり、その発信者情報の開示が認められるべきである。 〔原告の主張〕 「侵害情報の送信と相当の関連性を有する」との要件は、被害者の権利回復の利益と発信者のプライバシー及び表現の自由、通信の秘密との均衡を図る観点から、「侵害関連通信」に該当する通信を必要最小限度の範囲に限定するものである。また、特定電気通信役務提供者は、侵害関連通信に係る発信者情報の開示を請求された場合、通信記録を保有するのみで投稿内容等の個 「侵害関連通信」に該当する通信を必要最小限度の範囲に限定するものである。また、特定電気通信役務提供者は、侵害関連通信に係る発信者情報の開示を請求された場合、通信記録を保有するのみで投稿内容等の個別具体的な事情を認識し得ない 中で開示の可否を判断しなければならない。これらの事情を踏まえると、「侵害関連通信」の意味合いについては、画一的な基準を示すものとして解釈されなければならない。したがって、「侵害情報の送信と相当の関連性を有する」として「侵害関連通信」に該当し得るログイン時の通信は、侵害情報の送信と最も時間的に近接して行われたもの1 つに限定されるべきである。 本件において、本件投稿と最も時間的に近接するログイン時の通信は、本件投稿の直後である令和4 年9 月1 日午前0 時13 分にされた本件直後ログイン時通信である。本件直前ログイン時通信は、侵害情報の送信と最も時間的に近接して行われたものではないから、「侵害情報の送信と相当の関連性を有する」「侵害関連通信」に該当せず、これに係る本件発信者情報の開示は認められない。 (3) 争点3(発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無) 〔被告の主張〕被告は、発信者に対し、損害賠償請求等を予定している。したがって、被告には、本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある。 〔原告の主張〕争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(権利侵害の明白性)証拠(乙2、6)及び弁論の全趣旨によれば、本件写真は被告が自身の上半身を自ら撮影したものであること、被告が本件投稿の発信者に本件写真の使用を許諾したことはないことが認められる。 本件写真は、被告が右頬部から顎付近にかけて右手の平を当てつつカメラの方を見た自身の姿を、 たものであること、被告が本件投稿の発信者に本件写真の使用を許諾したことはないことが認められる。 本件写真は、被告が右頬部から顎付近にかけて右手の平を当てつつカメラの方を見た自身の姿を、被告のやや右斜め前からカメラを右方向に傾けて自撮りしたものであり、構図等の選択において一応の創意工夫がされ、撮影者の個性が現れているものといえる。したがって、本件写真は、撮影者である被告の思想又は感情を創作的に表現したものとして著作物といえると共に、被告は本件写真の著作者として著 作権を有することが認められる。 また、本件投稿は、本件写真の画像データを公衆送信したものであり、著作権者である被告の許諾はなく、その他の違法性阻却事由の存在もうかがわれないことから、被告の著作権(公衆送信権)を侵害するものと認められる。 したがって、本件投稿によって被告の権利が侵害されたことは明らかである。こ れに反する原告の主張は採用できない。 2 争点2(本件直前ログイン時通信の「侵害関連通信」(法5 条3 項)該当性前提事実(3)によれば、本件投稿(令和4 年8 月31 日午後10 時3 分)と最も時間的に近接する本件アカウントへのログイン時の通信は本件直後ログイン時通信(同年9 月1 日午前0 時13 分)であって、本件直前ログイン時通信(同年8 月31 日午前8 時2 分)ではない。また、これら通信のIP アドレスを管理する原告によ れば、本件直後ログイン時通信につき、同時刻に複数の記録があることから契約者(発信者)の特定は不可能とのことである。 このような本件の事実関係の下において、被害者の権利回復の利益と発信者のプライバシー及び表現の自由、通信の秘密との均衡を図りつつ発信者情報開示請求権が認められる趣旨に鑑みる 可能とのことである。 このような本件の事実関係の下において、被害者の権利回復の利益と発信者のプライバシー及び表現の自由、通信の秘密との均衡を図りつつ発信者情報開示請求権が認められる趣旨に鑑みると、被告は、本件投稿と最も時間的に近接するものでな いとしても、本件投稿の直前にされた本件直前ログイン時通信をもって法5 条3 項・規則5 条所定の「侵害情報の送信と相当の関連性を有する」「侵害関連通信」に該当するものとして、本件直前ログイン時通信に係る本件発信者情報の開示を求めることができるというべきである。これに反する原告の主張は採用できない。 3 争点3(発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無) 弁論の全趣旨によれば、被告が氏名不詳者に対する著作権侵害を理由とする損害賠償請求権等を行使するためには、本件発信者情報の開示を受ける必要があると認められる。したがって、原告には本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があると認められる。 4 まとめ 以上によれば、被告は、法5 条2 項に基づき、原告に対し、本件発信者情報の開示請求権を有する。 第4 結論よって、原決定は相当であるから、これを認可することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47 部 裁判長裁判官 杉浦正樹 裁判官 小口五大 裁判官 久野雄平 (別紙)発信者情報目録 別紙投稿記事 口五大 裁判官 久野雄平 (別紙)発信者情報目録 別紙投稿記事目録記載のIPアドレスを同目録記載の接続日時(JST)に使用し、同目録記載の接続先IPアドレスのいずれかに接続した契約者に関する以下の情報 1 氏名または名称 2 住所 3 電話番号 4 メールアドレス (別紙投稿記事目録省略)
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