主文被告人を懲役3年に処する。 未決勾留日数中100日をその刑に算入する。 理由 (犯罪事実)被告人は,第1 平成24年6月24日午後11時4分頃,札幌市東区a町b番地付近道路において,運転開始前に飲んだ酒の影響により,前方注視及び運転操作が困難な状態であるにもかかわらず,普通乗用自動車の運転を開始し,もってアルコールの影響により正常な運転が困難な状態で自車を走行させたことにより,同日午後11時5分頃,同区a町c番地付近の左方に湾曲した道路を時速約140kmで走行中,自車を対向車線に進出させて右側歩道に乗り上げさせ,同所に設置された電柱に自車を衝突させて横転させ,よって,同乗者A(当時1歳)を車外に放出させて脳挫傷の傷害を負わせ,その頃,同所において,同人を前記傷害によって死亡させるとともに,同乗者B(当時4歳)に加療約2週間を要する右側胸部裂傷,腰部裂傷等の傷害を負わせ,第2 公安委員会の運転免許を受けないで,その頃,同所において,前記自動車を運転した。 なお,被告人は,本件各犯行当時,いずれも大量飲酒による複雑酩酊のため心神耗弱の状態にあった。 (法令の適用)罰条判示第1の所為のうち危険運転致死の点刑法208条の2第1項前段(人を死亡させた場合)危険運転致傷の点同項前段(人を負傷させた場合)判示第2の所為道路交通法117条の4第2号,64条科刑上一罪の処理刑法54条1項前段,10条(判示第1について重い危険運転致死罪の刑で処断)刑種の選択懲役刑(判示第2の罪について)法律上の減軽刑法39条2項,68条3号(判示各罪について)併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(重い判示第1の罪の刑に刑法47条ただし書 懲役刑(判示第2の罪について)法律上の減軽刑法39条2項,68条3号(判示各罪について)併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(重い判示第1の罪の刑に刑法47条ただし書の制限内で法定の加重)未決勾留日数の算入刑法21条訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由)被告人は,ふらふらになるほど酒に酔っていたが,妻が被告人の元同級生らの連絡先を知っていたことについて,「俺は知らねえぞ。」などと怒って暴力を振るったり,妻が逃げ込んだ車のボンネットに上がってフロントガラスを蹴り割るなどしている。このような行動は,飲酒に妻への嫉妬という要因が重なり,妻に向けて怒りを爆発させたものといえ,これまでの前科と同様,酒を飲んで暴力を振るう被告人の素地が表れたものといえる。 しかし,被告人は,妻が車を降りて民家の裏に逃げ隠れると,「出てこい。」などと言った後,車に乗り込んで運転を開始し,しかも,その運転というのは,片側1車線,制限速度時速40kmの直線道路でアクセルを踏み続け,時速約140kmという高速度で直線出口のカーブを曲がりきれずに事故を起こしたというものである。このような自殺行為にも等しい運転ぶりは異常というほかないし,一体,何の目的で運転席に乗り込み,なぜこのような運転をしたのか理解に苦しむ(このような運転は,被告人の交通違反歴に見られるような制限速度を時速40km前後超過したものとは異なる。)。したがって,運転席に乗り込んで運転を開始した際の被告人は,酒の影響でひどく人が変わっていたといえ,正常に判断する能力は著しく低かったといえる。このことは,当時の被告人の血中アルコール濃度が1ml当たり約3.52mgという高濃度であったことからも裏付けられており,被告人が負うべき責 いたといえ,正常に判断する能力は著しく低かったといえる。このことは,当時の被告人の血中アルコール濃度が1ml当たり約3.52mgという高濃度であったことからも裏付けられており,被告人が負うべき責任は相当限定されている。 とはいえ,被告人が目の前にある車を運転したのは,動きたいという人としての本能的な行動という限りでは理解ができ,最初に述べた被告人の素地が表れている点なども考えると,当時の被告人が完全に別人格であったとはいえない。今回の事件は,被告人が飲酒して異常なまでに危険な運転を行い,何よりも大事な人の命を奪った事件であり,その重みは消しようもない。遺族である妻が厳罰を望んでいないとしても,執行猶予にしてよい事案とは考えられない。むしろ異常な形で息子の命を奪ってしまった自らの責任を改めて見つめ直し,被告人自身がこの事件にけじめをつける意味なども考えて,主文の刑を決めた。 (求刑懲役8年)平成25年6月21日札幌地方裁判所刑事第2部 裁判長裁判官佐伯恒治 裁判官井戸俊一 裁判官金﨑祐太
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