平成12年(行ケ)第388号特許取消決定取消請求事件(平成14年7月4日口頭弁論終結)判決原告本田技研工業株式会社訴訟代理人弁理士藤村元彦訴訟復代理人弁理士北島恒之被告特許庁長官及川耕造指定代理人関谷一夫同舟木進同大野克人同林栄二 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告特許庁が平成11年異議第72793号事件について平成12年8月17日にした決定を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 2 被告主文と同旨第2 当事者間に争いのない事実 1 特許庁における手続の経緯原告は、発明の名称を「車載エンジン点火装置」とする特許第2857149号(昭和62年4月17日特許出願、平成10年11月27日設定登録。以下「本件特許」といい、その発明を「本件発明」という。)の特許権者である。 本件特許に対して、異議の申立てがされ、原告は訂正請求をしたが、特許庁は、平成12年8月17日、「特許第2857149号の特許を取り消す。」旨の決定をし、その謄本を平成12年9月11日、原告に送達した。 2 特許請求の範囲の記載(1) 特許明細書の特許請求の範囲の記載1.車載エンジンにより駆動される交流発電機の交流出力を整流して得られる をし、その謄本を平成12年9月11日、原告に送達した。 2 特許請求の範囲の記載(1) 特許明細書の特許請求の範囲の記載1.車載エンジンにより駆動される交流発電機の交流出力を整流して得られる電力によって充電されるバッテリからの電源電圧に基づいて、前記車載エンジンの点火プラグに点火電源を印加する車載エンジン点火装置であって、点火制御トリガに応じて前記点火電源を前記点火プラグに印加する点火コイル(3)と、前記点火制御トリガを発する点火時期制御回路(9)と、を備え、前記電源電圧に基づいて前記点火コイルへ電源電圧を昇圧回路により昇圧した後にこれを定電圧回路によって定電圧に降圧して得られる降圧定電圧を前記点火時期制御回路にその電源電圧として供給し、前記昇圧回路の出力を前記点火コイルへの電源としたことを特徴とする車載エンジン点火装置。 (2) 訂正明細書の特許請求の範囲第1項の記載(下線は訂正箇所)1.車載エンジンにより駆動される交流発電機の交流出力を整流して得られる電力によって充電されるバッテリからのバッテリ電圧に基づいて、前記車載エンジンの点火プラグに点火電源を印加する車載エンジン点火装置であって、点火制御トリガを発する点火時期制御回路(9)と、前記点火制御トリガに応じて前記点火電源を前記点火プラグに印加する点火コイル(3)と、前記バッテリ電圧をスイッチングしてスイッチング出力を発するスイッチング回路(22、Q)と、前記スイッチング出力を受ける1次巻線(20a)及び2つの2次巻線(20b、20c)を有する昇圧トランス(20)と、を備え、前記2次巻線の一方の出力を定電圧回路によって定電圧に降圧して得られる降圧定電圧を前記点火制御回路にその電源電圧として供給し、他方の出力を点火用コンデンサを介して前記点火コイルへ供給することを特 前記2次巻線の一方の出力を定電圧回路によって定電圧に降圧して得られる降圧定電圧を前記点火制御回路にその電源電圧として供給し、他方の出力を点火用コンデンサを介して前記点火コイルへ供給することを特徴とする車載エンジン点火装置。 3 決定の理由の要旨決定は、別紙異議の決定の理由写し(以下「決定書」という。)のとおり、(1) 平成12年1月7日付け訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲第1項に記載された発明(以下「訂正発明」という。)は、刊行物1(米国特許第3331986号明細書、甲第4号証)に記載された発明、刊行物2(特開昭61-255272号公報、甲第5号証)に記載された発明及び慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることのできないものであるから、訂正は認められない、(2) 特許明細書の特許請求の範囲第1項に記載された発明(以下「本件発明」という。)は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してなされたものであり、特許法113条2号に該当するから、取り消されるべきものである、とした。 第3 原告主張の取消事由決定の「【2】訂正の適否についての判断」における訂正発明の要旨認定、刊行物1及び刊行物2に記載された各発明の認定、訂正発明と刊行物1に記載された発明の一致点及び相違点1、2の認定(決定書2頁9行~5頁10行)は認める。相違点1、2についての判断及び訂正の適否の結論(同5頁11行~6頁2行)は争う。「【3】特許異議申立についての判断」(6頁3行以下)は争う。 決定は、訂正発明と刊行物1に記載された発明との相違点の判断 点1、2についての判断及び訂正の適否の結論(同5頁11行~6頁2行)は争う。「【3】特許異議申立についての判断」(6頁3行以下)は争う。 決定は、訂正発明と刊行物1に記載された発明との相違点の判断を誤り(取消事由)、その結果、訂正発明は特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないとし、本件訂正は認められないとの誤った判断に至ったものであり、この訂正の適否についての判断の誤りが決定の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、違法として取り消されるべきである。 1 決定における相違点の判断決定は、相違点1「前者(訂正発明)のバッテリが車載エンジンにより駆動される交流発電機の交流出力を整流して得られる電力によって充電されるバッテリであるのに対し、後者(刊行物1)のバッテリが、車載エンジンにより駆動される交流発電機の交流出力を整流して得られる電力によって充電されるという構成を備えているか否かにつき、刊行物1には明示されていない点」(決定書5頁2行~6行)について、「上記刊行物2には、内燃機関により駆動される交流発電機の交流出力を整流して得られる電力によって充電されるバッテリからのバッテリ電圧に基づいて、前記内燃機関の点火プラグに点火電源を印加する内燃機関点火装置が記載されている。 そして、刊行物1及び刊行物2に記載のものは、何れもバッテリを電源とするエンジン点火装置という同一の技術分野に属するものであるから、刊行物2に記載された上記構成を刊行物1に記載の発明に適用して、上記相違点1における前者の構成とすることは当業者であれば容易に想到し得たものである。」(同5頁13行~21行)と判断し、相違点2「前者(訂正発明)の昇圧トランスが2つの2次巻線を有し、2次巻線の一方の出力を点火制御回路にその することは当業者であれば容易に想到し得たものである。」(同5頁13行~21行)と判断し、相違点2「前者(訂正発明)の昇圧トランスが2つの2次巻線を有し、2次巻線の一方の出力を点火制御回路にその電源電圧として供給し、他方の出力を点火コイルヘ供給しているのに対し、後者(刊行物1)の昇圧トランスは1つの2次巻線の出力を電源電圧として点火制御回路及び点火コイルヘ供給している点」(同5頁7行~10行)について、「変圧器を用いた電源供給に関する技術分野において、変圧器に複数の2次巻線を施して、独立した複数出力を得ることは、従来より慣用される技術事項にすぎず(一例として、特開昭58-144666号公報(甲第6号証)参照)、この慣用技術を、昇圧トランスの2次巻線の出力を電源電圧として点火制御回路及び点火コイルヘ供給するという刊行物1記載の発明に適用して、上記相違点2における前者の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たものである。」(同5頁23行~29行)と判断し、訂正発明の効果について、「そして、本件訂正発明の奏する作用効果も、刊行物1、刊行物2に記載された発明及び上記慣用技術から当業者が予測できる程度のものであって格別なものとは認められない。」(同5頁30行~32行)と認定した結果、「したがって、本件訂正発明は、刊行物1、刊行物2に記載された発明及び上記慣用技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない」(5頁22行~36行)と判断した。 しかし、上記相違点1、2についての判断は、以下の2点において誤りである。 2 原告の主張第1点(相違点1に係る構成の容易性についての判断の誤り)相違点1に関し、刊行物2に記載された構成を刊行物 しかし、上記相違点1、2についての判断は、以下の2点において誤りである。 2 原告の主張第1点(相違点1に係る構成の容易性についての判断の誤り)相違点1に関し、刊行物2に記載された構成を刊行物1に記載された発明に適用することは、動機付けがないから、当業者が容易に想到し得ることではない。決定は、訂正発明の課題を見誤った結果、刊行物2に記載された構成を刊行物1に記載することの容易性について誤った判断を下したものである。 (1) 訂正発明は、訂正明細書(甲第3号証)の以下の記載から明らかなとおり、従来技術においては、バッテリ電圧が低下した場合、キック又は押し掛けによって交流発電機のロータを回転せしめて交流発電機からの電圧によってエンジンの始動を試みてもエンジンの始動が困難であったという問題を解決すべく、「バッテリ電圧が低下したような場合でもエンジン始動を可能にすること」を課題とするものである。 「バッテリ電圧が低下して充分な電圧が供給されない場合には、点火時期制御回路9が作動しないので点火ユニット1が作動せず、エンジンを始動せしめることができない。このような場合においては、通常、キック若しくは押し掛けによって交流発電機6のロータを回転せしめて交流発電機からの電圧によって始動することが試みられるが、通常用いられる交流発電機による場合には定電圧回路8のための所定レベル以上の電圧が得られず、エンジンの始動が困難である。」(2頁13行~19行)「本発明は上記の問題点を解決すべく、バッテリ電圧が低下したような場合でもエンジン始動を可能にした車載エンジン点火装置を提供することを目的としている。」(2頁下から2行~3頁1行)「このような車載エンジン点火装置において、前述の如くバッテリ電圧の低下の結果キック又は押し掛けによっ した車載エンジン点火装置を提供することを目的としている。」(2頁下から2行~3頁1行)「このような車載エンジン点火装置において、前述の如くバッテリ電圧の低下の結果キック又は押し掛けによってエンジン始動する場合、交流発電機6によって発生された電圧は昇圧回路11によって定電圧回路8の定格出力電圧により十分高くなるように昇圧され、更に定電圧回路8によって定電圧化されて点火時期制御回路9に供給される。この結果、点火時期制御回路9が駆動され、この車載エンジン点火装置が点火動作をしてエンジンを始動せしめることができる。」(4頁7行~12行)訂正発明は、かかる課題を認識して初めてなされたものである。 ところが、「バッテリ電圧が低下したような場合でもエンジン始動を可能にする」という課題は、刊行物1、2のいずれにも記載がなく、刊行物2に記載された上記構成を刊行物1に記載の発明に適用する動機付けが欠如している。 「特許-実用新案審査基準」(甲第7号証、以下「審査基準」という。)によれば、発明の進歩性の判断に当たっては、発明の課題を考慮して当該発明を当業者が容易に想到し得るとする動機付けが従来技術にあるか否か(引用例に記載されているか否か)を判断しなければならない(審査基準2.5.2)、とされている。 訂正発明は、「バッテリ電圧が低下したような場合でもエンジン始動を可能にする」という課題を認識して初めてなされたものであり、かかる課題の認識がない刊行物1、2からは、当業者といえども訂正発明を容易に想到し得るものではない。 (2) 被告は、訂正発明の課題は、「バッテリ電圧が低下したような場合でも、発電器の発生電圧を用いてエンジン始動を可能にすること」であると主張し、乙第1号証(実開昭30-12703号公報)、乙第2号証(実開昭35-224 題は、「バッテリ電圧が低下したような場合でも、発電器の発生電圧を用いてエンジン始動を可能にすること」であると主張し、乙第1号証(実開昭30-12703号公報)、乙第2号証(実開昭35-22401号公報)及び乙第3号証(特開昭61-294168号公報)を例に挙げて、上記課題は、内燃機関という技術分野では点火に関して周知の課題であると主張するが、誤りである。 訂正発明の課題は、上に述べたとおり、「バッテリ電圧が低下したような場合でもエンジン始動を可能にすること」であり、「発電器の発生電圧を用い」ることまで課題に含むものではない。 また、乙第1ないし第3号証は、訂正発明の課題の周知性を示すものではない。 バッテリ電圧が低下した場合のエンジン始動の方策としては、①「当該バッテリに別の車両のバッテリを並列に接続して始動する」、②「当該バッテリに外部電源から電力を供給しつつ始動する」、③「当該バッテリを充電済みバッテリと交換する」、④「人力(キック又は押し掛け)によりエンジンを強制的に回転させて始動する」があるが、訂正発明は、このうち④の「人力(キック又は押し掛け)によりエンジンを強制的に回転させて始動する方策」においても、エンジン始動を高い成功率で可能にすることを課題とするものである。バッテリ電圧が低下した場合にエンジンを起動する方策は、上記④に限定されるわけではないのであり、同様な解決課題の下になされた従来技術がいくつか存在するからといって、直ちに発明の解決課題が周知であると断ずることはできない。被告が挙げる証拠のうち、乙第2号証は、訂正発明と同様の課題を提示するものであるが、同号証に記載された技術における解決手段は、交流発電器の電流が点火回路と並列の接続関係にあるバッテリへ流れるのを調整抵抗4により抑制し、点火回路への電流を確保することに の課題を提示するものであるが、同号証に記載された技術における解決手段は、交流発電器の電流が点火回路と並列の接続関係にあるバッテリへ流れるのを調整抵抗4により抑制し、点火回路への電流を確保することにより、バッテリ電圧が低下した場合でもエンジン始動を可能にするというものであり、その解決手段が依拠する技術的思想は訂正発明とは全く異なるものである。 3 原告の主張第2点(顕著な作用効果の看過)決定は、相違点1、2に係る構成の容易推考性を個別に判断したために、訂正発明が相違点1、2に係る構成の相乗効果によって顕著な効果を奏することを看過し、訂正発明が当業者の容易に推考し得たものと判断した誤りがある。 (1) 交流発電機によりバッテリを充電する点火装置では、交流発電機からみるとバッテリと点火系(点火時期制御回路及び点火放電回路)は並列接続された負荷となるので、バッテリと点火系の双方へ同時に電力を供給する構成となっている。 そこで、訂正発明は、始動時のエンジン回転により生ずる過渡的な脈動電圧をバッテリ充電電力とするとともにこれを点火系の駆動にも活用するという動作原理に基づき、①「車載エンジンにより駆動される交流発電機の交流出力を整流して得られる電力によって充電されるバッテリ」という構成(相違点1に係る構成、以下「交流充電形態」ということがある。)と、②「昇圧トランスが2つの2次巻線を有し、2次巻線の一方の出力を点火時期制御回路にその電源電圧として供給し、他方の出力を点火コイルへ供給する」という構成(相違点2に係る構成、以下「2巻線構成」ということがある。)とを採用することにより、昇圧トランスにより交流発電機から点火系への供給電圧を高くするとともに、2巻線構成により昇圧トランス(2次側)の電力を点火時期制御回路と点火放電回路に各々振り分けて独 る。)とを採用することにより、昇圧トランスにより交流発電機から点火系への供給電圧を高くするとともに、2巻線構成により昇圧トランス(2次側)の電力を点火時期制御回路と点火放電回路に各々振り分けて独立に供給するようにしている。 すなわち、相違点1に係る構成(交流充電形態)と相違点2に係る構成(2巻線構成)とは、両者相俟って相乗的に作用するものであり、その結果、「単一の2次巻線を2つの電力供給のために共用した場合における、始動時の点火プラグでの放電による比較的大なる電流供給による2次巻線の低下による点火制御回路への悪影響を回避する」(以下「効果1」ということがある。)とともに、「2つの2次巻線の故に、2次巻線自身の抵抗やインピーダンスによる始動時の過渡状態においても各巻線において電流が確保できる」(以下「効果2」ということがある。)という作用効果を期待することができ、エンジン始動時の乏しい電力(脈動電圧)を有効に利用して「バッテリ電圧が低下したような場合でもエンジン始動を可能にする」ことができるのである。 このように、訂正発明においては相違点1に係る構成(交流充電形態)と相違点2に係る構成(2巻線構成)とが相互に関連する。ところが、決定は、これらを個別に判断することにより、上記各構成の相乗作用による作用効果を無視し、進歩性を否定する判断したもので、誤りである。 審査基準によれば、発明の進歩性の判断に当たっては、請求項に係る発明の引用発明と比較して有利な効果を調べ、この有利な効果が認められればこれを参酌すべきである(15頁「(2)有利な効果」)とされ、さらに、発明の進歩性は、発明全体として考察されなければならず、各構成部分が単に複数の引用文献に記載されているというだけでは否定されない(18頁「その他の留意事項(3)」)とされている。決定 され、さらに、発明の進歩性は、発明全体として考察されなければならず、各構成部分が単に複数の引用文献に記載されているというだけでは否定されない(18頁「その他の留意事項(3)」)とされている。決定の判断は、審査基準にも反するものである。 訂正発明は、自動2輪車に搭載され、商業的成功を収めている。このことは、訂正発明に顕著な効果があることの証左である。 (2) 被告は、訂正発明の効果(効果1及び効果2)は、相違点2に係る構成(2巻線構成)によるものであって、相違点1に係る構成(交流充電形態)とは関係がなく、両構成の相乗作用によって初めて生じるようなものではないから、決定が相違点1と相違点2を個別に判断したことに誤りはないと主張する。 しかし、訂正発明は、交流充電形態と2巻線構成との組合せによって、エンジン始動時に生ずる過渡的な脈動電圧をバッテリへの充電電力とするとともに点火系の駆動電力としても活用することを動作原理とするものであるから、その作用効果は、バッテリの充電形態(交流充電形態)にも大きく依存するのであり、被告の主張は失当である。 訂正発明の効果が顕著であることは、実験の結果(甲第8号証の実験報告書)からも明らかである。すなわち、甲第8号証の図3ないし6は、訂正発明(2巻線構成)と刊行物1において電源の構成をバッテリのみの構成に代えてエンジンによって駆動される交流発電機により充電されるバッテリに置換した構成(1巻線構成)とにおける、エンジン始動時の過渡的な電圧変化を示すものであるが、これによれば、バッテリを取り外した状態(A)及び放電してしまったバッテリを接続した状態(B)のいずれであっても、2巻線構成では点火放電系への供給電圧Vcが十分な値(100V)に達するとともに点火時期制御回路への供給電圧Vdも定格電圧(5.5V)を超 てしまったバッテリを接続した状態(B)のいずれであっても、2巻線構成では点火放電系への供給電圧Vcが十分な値(100V)に達するとともに点火時期制御回路への供給電圧Vdも定格電圧(5.5V)を超えた値(10V)に達しており(図4)始動が可能であるのに対し、1巻線構成では、(A)、(B)いずれの状態でも上記Vcが100Vに達していないばかりか上記Vdも定格電圧を超えることができないので(図6)、始動は困難である。 第4 被告の反論の要点 1 原告の主張第1点(相違点1に係る構成の容易性についての判断の誤り)に対して(1) 訂正明細書(甲第3号証)には、「本発明は、・・・バッテリ電圧が低下したような場合でもエンジン始動を可能にした車載エンジン点火装置を提供することを目的としている。かかる目的を達成するために、本発明による車載エンジン点火装置においては、バッテリ及び交流発電機の出力端子と定電圧回路の入力端子との間に昇圧回路を接続することによってバッテリ若しくは交流発電機からの入力電圧を所定レベル以上に昇圧せしめて昇圧後の電圧を点火コイルの電源とする一方、該昇圧電圧を定電圧回路によって定電圧に降圧して得られる降圧電圧を点火時期制御回路の電源電圧としている。かかる構成によって、エンジン始動を確実にし、点火時期制御回路の動作を安定させることが出来る。」(2頁24行~3頁8行)と記載されている。これによれば、訂正発明の課題として、「バッテリ電圧が低下したような場合でも、発電機の発生電圧を用いてエンジン始動を可能とする。」ことを挙げることができる。 一方、刊行物1、2には、「バッテリ電圧が低下したような場合でも、発電機の発生電圧を用いてエンジン始動を可能とする」という、上記課題について直接の記載はない。 しかし、「バッテリ電圧が低下したよ 一方、刊行物1、2には、「バッテリ電圧が低下したような場合でも、発電機の発生電圧を用いてエンジン始動を可能とする」という、上記課題について直接の記載はない。 しかし、「バッテリ電圧が低下したような場合でも、発電機の発生電圧を利用してエンジンの始動を図る」ことは、乙第1ないし第3号証が示すように、内燃機関の点火に関する技術分野における周知の技術課題にすぎない。 したがって、「バッテリ電圧が低下したような場合でも発電機の発生電圧を用いてエンジン始動を可能とする。」という周知の課題を解決するために、刊行物1、2に記載されたエンジン点火装置の電源電圧に関する発明を組み合わせることは、当業者であれば容易に想到し得るところであり、しかも、かかる組合せを阻害する要因もない。決定の判断に誤りはない。 (2) 原告は、訂正発明の課題は「発電機の発生電圧を用いること」を含まないと主張する。しかし、訂正明細書の「バッテリ若しくは交流発電機からの入力電圧を所定レベル以上に昇圧せしめて昇圧後の電圧を点火コイルの電源とする・・・構成によって、エンジン始動を確実にし、」(3頁4行~7行)の記載によれば、訂正発明は、交流発電機の出力電圧を昇圧した電圧を点火コイルの電源としていることが明らかであるから、「発電機の発生電圧を用いること」も課題として含むものである。仮に、訂正発明の課題が「発電機の発生電圧を用いること」を含まない意味での「バッテリ電圧が低下したような場合でもエンジン始動を可能とする」ことであるとしても、上記課題及びその解決のための一手段として「発電機の発生電圧を利用する」点が内燃機関の点火に関する技術分野における周知の事項であることに変わりはない(乙第1号証~乙第3号証)。 原告は、乙第2号証は、訂正発明と同様の課題を解決するものであっても、異なる 圧を利用する」点が内燃機関の点火に関する技術分野における周知の事項であることに変わりはない(乙第1号証~乙第3号証)。 原告は、乙第2号証は、訂正発明と同様の課題を解決するものであっても、異なる技術的思想に基づく解決手段を採用したものである、同様の課題を解決する従来技術がいくつか存在するとしても、そのことから直ちに発明の解決課題が周知であるとはいえない、などと主張する。しかし、乙第2号証において異なる解決手段が採用されていることは、訂正発明の課題が周知でないとする理由にならない。バッテリ電圧が低下したような場合でも発電機の発生電圧を利用してエンジンの始動を図ることは、上述のとおり、内燃機関の点火に関する技術分野における周知の技術課題であり、このことは乙第1ないし第3号証により明らかである。 2 原告の主張第2点(顕著な作用効果の看過)に対して(1) 原告は、訂正発明は、「交流充電形態」(相違点1)と「2巻線構成」(相違点2)との相乗作用によって、顕著な効果(効果1及び効果2)が期待できると主張する。 しかし、原告の主張する訂正発明の効果は、訂正明細書の記載に基づくものではない。また、上記効果は、相違点2に係る構成(2巻線構成)により電力供給を独立に行うことに基づく作用効果であって、バッテリの充電形態とは関係がない。したがって、原告主張のような相乗効果はないのであり、決定が、相違点1、2を個別に判断したことに誤りはない。 しかも、決定は、相違点1、2に係る各構成を同時に具備することによる作用効果についても検討した上で、訂正発明を全体としても考察すべく、上記各相違点に係る構成を同時に具備することにより奏される訂正発明の効果についても検討し、原告主張の効果は、各刊行物記載の発明や慣用技術等から当業者であれば予測し得る範囲内のもので ても考察すべく、上記各相違点に係る構成を同時に具備することにより奏される訂正発明の効果についても検討し、原告主張の効果は、各刊行物記載の発明や慣用技術等から当業者であれば予測し得る範囲内のものであると判断している。すなわち、バッテリ電圧が低下した場合に交流発電機の電力を利用してエンジンを始動することは周知事項であり(乙第1号証~乙第3号証)、昇圧トランスにより乏しい電力を活用してエンジン始動を可能にすることも周知事項であり(甲第4号証(刊行物1))、しかも昇圧トランスの2次巻線を2巻線構成にして電力を独立して供給することは慣用技術である(甲第6号証)。その上、交流発電機と昇圧トランスとの組合せを妨げる特段の事情もない。したがって、訂正発明において、「交流充電形態」と「2巻線構成」とを組み合わせることにより、仮に、エンジン始動がより効果的になされたとしても、その効果は上記周知事項及び慣用技術から当業者であれば予測しうる範囲内のものであって、予測を超えた効果というべきものではない。 (2) 実験報告書(甲第8号証)の実験結果は、ツエナーダイオードの定格電圧、降圧抵抗、昇圧トランスの巻数比、2次側に接続された負荷など実験条件が示されていないので、信頼性に欠ける。仮に、1巻線構成の場合に比べて2巻線構成の場合の方の始動がより効果的であったとしても、そのような効果は2巻線構成の2次巻線を備えた周知の昇圧トランスの中から適宜適切な昇圧トランスを選択することにより、当然期待される効果にすぎない。実験報告書は、何ら原告の主張する顕著な効果を明らかにするものではない。 第5 当裁判所の判断 1 原告の主張第1点について(1) 訂正発明と刊行物1記載の発明とが決定の認定した点(決定書4頁30行~末行)において一致すること、及び両者が決定の認定した相 ではない。 第5 当裁判所の判断 1 原告の主張第1点について(1) 訂正発明と刊行物1記載の発明とが決定の認定した点(決定書4頁30行~末行)において一致すること、及び両者が決定の認定した相違点1及び相違点2(決定書5頁2行~10行)において相違することは当事者間に争いがないところ、原告は、相違点1に対する決定の判断について、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の構成を適用して相違点1に係る訂正発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことではないと主張するので、以下に検討する。 ア甲第4号証によれば、刊行物1には「自動車のエンジンに現在用いられている従来の点火装置は、…一対のブレーカポイントを有する」(甲第4号証の1欄22行~25行、訳文1頁下から3行~末行)、「上述したように、本発明の無接点式点火装置はエンジン用の従来の配電器で用いるために適用できる。従来の配電器及び点火プラグと関連づけられるべき電子回路ユニットは3つの主要な電子回路要素から成る。それらは電源供給部、トリガリング回路、及びコンデンサ放電システムであって、そのすべては第4図に示してある」(2欄42行~49行、訳文の段落1.1行~4行)、「第4図に示した電源供給部の具体例では、…従来の自動車用の12ボルト[v]のバッテリ11から電源供給され」(3欄14行~21行、訳文の段落2.1行~4行)等の記載及び点火装置の回路構成を示す第4図があり、これらによれば、刊行物1に記載された発明は、バッテリを電源とする「自動車の内燃エンジンの点火装置」に関するものであることが認められる。 イ甲第5号証によれば、刊行物2に記載された発明は、「交流出力を発生する発電機の出力により充電されるバッテリを直流電源とする内燃機関用点火装置」(特許請求の範囲参照)であると認められ れる。 イ甲第5号証によれば、刊行物2に記載された発明は、「交流出力を発生する発電機の出力により充電されるバッテリを直流電源とする内燃機関用点火装置」(特許請求の範囲参照)であると認められる。 ウ乙第1号証(実公昭30-12703号公報)及び乙第2号証(実公昭35-22401号公報)には以下に引用する記載があり、内燃機関(車のエンジンを含む)において、バッテリ電圧が低下した場合に交流発電機の発生電圧によりエンジンを始動することが示されている。 (乙第1号証)「登録請求の範囲… 内燃機関の低圧着火及充電装置の構造」「図中1はフライホイール型低圧磁石発電機のステータ部を示し、…ステータ上の電機子コイル…の中点が…車体に接地されており」(左欄5行~8行)、「不断は発電器電流と、電池側電流とを重畳させて、点火コイルにかけるものであるが、始動時、例えばエンジンのキックペダルを踏みつける時には…マグネトー1(判決注、低圧磁石発電機)の発生電流は少ないために点火コイル6の1次線輪には、主として電池5より電流が流れて点火を行うが、」(18欄20行~右欄2行)、「バッテリーの電圧が極端に低下したような時は…セレン整流器からの出力が、点火コイル及び負荷に直結されているため、…そのまま起動し運転することができる。」(右欄7行~13行)及び図1(内燃機関(車両を含む)において、キックにより起動すること、発電器1に接続された整流器の発生電流は少ないこと、及び、整流器からの出力が点火コイルの2次側にも直結されていることが記載されて、バッテリー電圧が低下した場合にも上記直結構造により起動し得ることが開示されている。)(乙第2号証)「登録請求の範囲…内燃機関の着火装置の構造」 ていることが記載されて、バッテリー電圧が低下した場合にも上記直結構造により起動し得ることが開示されている。)(乙第2号証)「登録請求の範囲…内燃機関の着火装置の構造」「車輌に常備の蓄電池」(左欄7行)「蓄電池が放電の状態にあるときは、発電子線輪1からの電流は…一次線輪6には少しの電流しか流れないので…起電力を発生することができない場合が起り得る。これでは…起動を円滑に行うことができない」(左欄末行~右欄7行)「本案によれば発電子線輪1及び蓄電池3と直列に調整抵抗4が接続してあるので…一次線輪6には…二次高電圧を発生するだけの電流がながれ、」(右欄7行~13行)(内燃機関(車輌を含む)において、発電子線輪の出力により起動を行うこと、蓄電池が放電状態にあるときは発電子線輪1から一次線輪6には少しの電流しか流れないこと、直列の調整抵抗により一次線輪6への電流を増大させることが記載され、蓄電池(バッテリー)が放電状態でも「調整抵抗」構造により起動し得ることが開示されている。)(2) 上に認定した刊行物1、2の各記載内容によれば、刊行物1に記載された発明は、バッテリを電源とする自動車の内燃エンジンの点火装置に関するものであり、刊行物2記載の点火装置は、交流発電機の出力により充電されるバッテリを直流電源とする内燃機関用点火装置であることが認められる。そして、刊行物2の記載内容が自動車への適用を排除するものでないことは明らかであるから、刊行物1記載の発明と刊行物2記載の点火装置とは、「バッテリを電源とする車載用内燃機関の点火装置」という技術分野において共通するものであるということができる。 決定は、刊行物1及び刊行物2の技術分野の共通性に着目し、刊行物1の発明に刊行物2に記載された構 電源とする車載用内燃機関の点火装置」という技術分野において共通するものであるということができる。 決定は、刊行物1及び刊行物2の技術分野の共通性に着目し、刊行物1の発明に刊行物2に記載された構成を適用して刊行物1のバッテリを交流発電機の出力で充電する構成(相違点1に係る構成)とすることは当業者であれば容易に想到し得たものであるとしたものであり、その判断に誤りはない。 そして、上に述べた技術分野の共通性は、刊行物1と刊行物2を組み合わせる動機付けとしても働き得るものであるということができる。 (3) 原告は、刊行物1及び刊行物2には訂正発明の課題の提示がないから、両刊行物に記載された事項を組み合わせる動機付けが存在せず、刊行物1に記載された発明に刊行物2の構成を適用することは当業者が容易に想到し得ることではないと主張する。 しかし、乙第1号証及び乙第2号証には、前記(1)ウのとおり、バッテリ電圧が低下した場合に交流発電機の出力によりエンジンを起動すること、及びその場合に、交流発電機の出力は小さいのでエンジンを始動させることができないことが記載され、これを解決する手段として、交流発電機に接続された整流器からの出力を点火コイルの2次側に直結する構成(乙第1号証)、あるいは、「調整抵抗」を入れる構成(乙第2号証)が示されている。これらは、いずれもバッテリ電圧が低下した場合に交流発電機の出力を用いてエンジン始動を可能にする手段を提案するものであり、このような例が存在していることからみても、「バッテリ電圧が低下した場合でもエンジン始動を可能にすること」という原告主張の訂正発明の課題は、車を含む内燃機関の点火装置の分野において普遍的ないし当業者に周知の課題であったと認められる。 このような普遍的ないし周知の課題が存在する状況においては、刊 こと」という原告主張の訂正発明の課題は、車を含む内燃機関の点火装置の分野において普遍的ないし当業者に周知の課題であったと認められる。 このような普遍的ないし周知の課題が存在する状況においては、刊行物1、2に訂正発明の課題が提示されていると否とにかかわりなく、刊行物1の発明に刊行物2の構成を適用する動機付けは存在するといってよい。また、刊行物1の発明に刊行物2記載の構成を適用して、刊行物1のバッテリを交流発電機の出力で充電する構成とすることに、阻害要因があるとも認められない。したがって、この点に関する原告の主張は採用することができない。 (4) 原告は、「バッテリ電圧が低下したような場合でも発電器の発生電圧を用いてエンジン始動を可能にすること」は訂正発明の課題ではないと主張する。しかし、仮に、訂正発明の課題が「発電機の発生電圧を用いること」まで含むものではないと解しても、原告の主張する「バッテリ電圧が低下した場合でもエンジン始動を可能にすること」という訂正発明の課題が周知と認められることは前記のとおりであるから、動機付けは存在するというべきであり、原告の主張は採用することができない。 原告は、また、乙第2号証は、訂正発明とは異なる技術的思想に基づく解決手段を採用したものであるというが、そのことは、訂正発明の課題の周知性、ひいては周知の課題に基づいて刊行物1記載の発明に刊行物2記載の構成を適用することの容易性についての判断を何ら左右するものではない。 2 原告主張の第2点(顕著な作用効果の看過)について(1) 原告は、訂正発明は相違点1及び2に係る構成の相乗効果により、予測のできない顕著な効果を奏すると主張するので、この点につき検討する。 ア訂正明細書に記載された効果訂正明細書(甲第3号証)には、昇圧コイルの二次コイルを び2に係る構成の相乗効果により、予測のできない顕著な効果を奏すると主張するので、この点につき検討する。 ア訂正明細書に記載された効果訂正明細書(甲第3号証)には、昇圧コイルの二次コイルを2巻線とすることに関する記載(4頁13行~5頁13行)中に、「更に、前述の如く、バッテリ電圧の低下の結果、キック若しくは押し掛けによってエンジン始動する場合においても昇圧回路11によって昇圧された電圧が定電圧回路8に供給され、定電圧回路8の出力電圧は十分高い故、点火時期制御回路9が動作せしめられて点火動作がなされるのである。」(5頁9行~13行)との記載、及び「発明の効果以上述べたように、本発明による車載エンジン点火装置においては、バッテリ電圧を一旦昇圧して点火コイルの電源とし、該昇圧電圧を降下して安定化して点火時期制御回路の電源としている故、バッテリ電圧が低下した場合でもエンジン始動を効果的になすことができると共に、エンジン回転数の変動があっても、点火時期制御回路の動作が安定である。」(5頁20行~25行)との記載がある(3頁2行~8行、4頁7行~12行にも同趣旨の記載がある)。 訂正明細書の上記記載によれば、訂正発明は、「バッテリ電圧が低下した場合でもエンジン始動を効果的になす」及び「エンジン回転数の変動があっても、点火時期制御回路の動作が安定である」との効果を奏するものとされていることが認められる。そして、上記記載によれば、これらの効果は、専ら、「昇圧トランス」によりバッテリ電圧を昇圧し、この昇圧された電圧を「定電圧回路」により降下・安定化して点火時期制御回路に供給することによるものであると認められる。 イ刊行物1に記載された効果刊行物1(甲第4号証)に記載の発明においては、「電源変換器Tの一次巻線10の発振により、電源変 して点火時期制御回路に供給することによるものであると認められる。 イ刊行物1に記載された効果刊行物1(甲第4号証)に記載の発明においては、「電源変換器Tの一次巻線10の発振により、電源変換器Tの二次巻線14に高電圧の交流が誘起され、…この具体例では、電源変換器Tの一次巻線と二次巻線との巻線比率は、バッテリ11から供給される12ボルト[v]が、ダイオード15で全波整流された後の接続点16で、150ボルト[v]に増大されるものである。」(甲第4号証3欄21行~28行、訳文の2.4行~9行)との記載に示されるように、第4図に示された電源変換器Tが「バッテリ電圧を昇圧する」作用を行っていることが認められる。 また、「この接続点16から、電源が降圧抵抗17及びツエナーダイオード18を介してトリガリング回路へ供給される。抵抗17及びツエナーダイオード18は、周囲温度の変化、充電状態、又はその他の原因によるバッテリ電圧の変動に対して、接続点19の電圧を常に12ボルト[v]一定に保つ。」(甲第4号証3欄29行~35行、訳文の2.10行~13行)との記載に示されるように、降圧抵抗17及びツエナーダイオード18が「昇圧されたバッテリ電圧を降下・安定化してトリガリング回路(本件の点火時期制御回路)に供給する」作用を行っている。 そうすると、刊行物1に記載された発明においても、バッテリ電圧が低下した場合でも降圧抵抗17及びツエナーダイオード18に規定以上の電圧が供給され、トリガリング回路が正常に動作し、その結果「バッテリ電圧が低下した場合でもエンジン始動を効果的になす」「点火時期制御回路の動作が安定である」との訂正明細書に記載した上記効果を奏することは明らかである。 ウ上記ア、イによれば、訂正明細書に記載された訂正発明の効果は、刊行物1記載 効果的になす」「点火時期制御回路の動作が安定である」との訂正明細書に記載した上記効果を奏することは明らかである。 ウ上記ア、イによれば、訂正明細書に記載された訂正発明の効果は、刊行物1記載の発明が奏する効果と格別異なるものとはいえない。 (2) 原告は、訂正発明は、「バッテリ充電を車載エンジンによって駆動される交流発電機による交流出力によって行う」(相違点1に係る構成)とともに、「昇圧トランスの2次巻線を2つの巻線として、点火時期制御への電力供給と点火回路への電力供給とを独立に行う」(相違点2に係る構成)ことによる相乗作用によって、「単一の2次巻線を2つの電力供給のために共用した場合における、始動時の点火プラグでの放電による比較的大なる電流供給による2次巻線の低下による点火制御回路への悪影響を回避する」(効果1)及び「2つの2次巻線の故に、2次巻線自身の抵抗やインピーダンスによる始動時の過渡状態においても各巻線において電流が確保できるる」(効果2)という顕著な相乗効果を奏するものであり、かかる効果は、刊行物1、2に記載された発明及び慣用技術からは当業者が予測し得ないものであると主張する。 原告の主張するような効果(効果1、2)についての記載は、訂正明細書中に見いだすことができず、原告の主張は明細書の記載に基づくものとはいえないが、仮に、原告主張の上記効果を本件訂正発明の効果として考慮するとしても、それ自体は、慣用技術から当業者が容易に予測し得る程度の効果であるというべきである。 すなわち、上記効果1は、原告主張の趣旨を汲んで解釈すると、「始動時には点火プラグの放電に比較的大きい電流を供給するため2次巻線の電圧が低下する。このとき、1巻線構成では、上記低下した電圧が点火制御回路にも印加され同回路に悪影響がでる。2巻線構成では独 、「始動時には点火プラグの放電に比較的大きい電流を供給するため2次巻線の電圧が低下する。このとき、1巻線構成では、上記低下した電圧が点火制御回路にも印加され同回路に悪影響がでる。2巻線構成では独立して供給するので、点火プラグの放電により一方の2次巻線の電圧が低下しても、点火制御回路は他方の2次巻線に接続されているから、上記一方の2次巻線の電圧低下による悪影響は回避される。」というものであると解されるが、このようは効果は、昇圧トランスの2次巻線を2つの巻線とした「2巻線構成」(相違点2に係る構成)の効果であることが明らかである。また効果2は、原告主張の趣旨を汲んで解釈すると、「始動時(2次巻線自身の抵抗やインピーダンスによる始動時の過渡状態)の交流発電機の出力電圧が小さくても2巻線構成であれば点火プラグに2次電流の大部分が流れてしまうことはなく点火制御回路への電流も独立して確保できる」というものであると解されるが、これもバッテリの充電形式との関連性はなく、「2巻線構成」による効果であると認められる。 そして、2巻線構成は、例えば、決定の引用する特開昭58-144666号公報(甲第6号証、審決5頁25行参照。第1図及び第2図には、容量放電型(CDI)点火装置に関し、昇圧トランス2の二次側を2巻線構成とし、各巻線を放電点火回路(整流器3、コンデンサ5、昇圧コイル8及びプラグ9)と点火時期制御回路(トリガー回路7)へそれぞれ接続する2巻線構成が示されている。)に示されるように、慣用技術であると認められる。 そうすると、原告主張の訂正発明の効果1及び効果2は、仮にこれを考慮するとしても、慣用技術から予測可能な効果であるというにとどまり、当業者の予測し得ない格別の相乗効果と認めることはできない。 原告は、訂正発明に顕著な効果があることが実験 び効果2は、仮にこれを考慮するとしても、慣用技術から予測可能な効果であるというにとどまり、当業者の予測し得ない格別の相乗効果と認めることはできない。 原告は、訂正発明に顕著な効果があることが実験報告書(甲第8号証)に示されていると主張する。しかし、上記実験報告書に記載された実験は、実験条件の設定において適切なものとは認められず、その実験結果をもってしても、訂正発明に原告の主張するような顕著な効果があることを認めるに足りない。原告の主張は、採用することができない。 (3) 以上のとおりであるから、「本件訂正発明の奏する作用効果も・・・上記慣用技術から予測できる程度のものであって格別なものとは認められない。」とした決定の認定は正当と認められ、何ら誤りを見いだすことはできない。 3 結論以上のとおり、原告主張の取消事由は理由がなく、他に決定を取り消すべき瑕疵は見いだせない。よって、原告の請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第18民事部裁判長裁判官永井紀昭裁判官古城春実裁判官田中昌利
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