主文 1 本件各控訴及び本件各附帯控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人兼附帯被控訴人らの,附帯控訴費用は被控訴人兼附帯控訴人らの各負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴の趣旨原判決を次のとおり変更する。 (1)(主位的請求)被控訴人兼附帯控訴人(以下「被控訴人」という。)らは,原判決別紙物件目録記載4の建物のうち,原判決別紙図面の斜線部分を撤去せよ。 (2)(予備的請求)被控訴人らは,各自,控訴人兼附帯被控訴人(以下「控訴人」という。)X1に対し,150万円,同X2,同X3,同X4に対し,各200万円ずつ及びこれらに対する平成12年1月29日(本件訴状送達の日の翌日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 附帯控訴の趣旨(1) 原判決中被控訴人ら敗訴の部分を取り消す。 (2) 控訴人らの請求をいずれも棄却する。 第2 事案の概要本件は,控訴人らが,その居住する建物の敷地の南側に隣接する土地上に被控訴人らが建物を建築したことにより日照被害を受けたとして,被控訴人らに対して,主位的に,人格権に基づく妨害排除として被控訴人ら所有の建物の一部撤去を,予備的に,不法行為による損害賠償(慰謝料)の支払を求めた事案である。 原判決は,控訴人らの主位的請求をいずれも棄却し,予備的請求については,被控訴人ら各自に対して,控訴人X1及び同X2に各50万円,同X3に30万円,同X4に20万円及びこれらに対する平成12年1月29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うよう命じ,控訴人らの請求を一部認容した。 1 争いのない事実(1) 控訴人X1は弁護士であり,控訴人X2は控訴人X1の 1月29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うよう命じ,控訴人らの請求を一部認容した。 1 争いのない事実(1) 控訴人X1は弁護士であり,控訴人X2は控訴人X1の妻,控訴人X3及び同X4は,いずれも控訴人X1及び同X2の間の子である。 (2) 控訴人X1は,昭和57年ころ,原判決別紙物件目録記載1の土地(以下「控訴人土地」という。)を買い受け(同人の持分5分の4),そのころから,同土地上の木造平家建ての建物(以下「控訴人旧建物」という。)に居住していたが,これを取り壊し,平成2年12月23日ころ,同土地上に同目録記載2の建物(以下「控訴人建物」という。)を新築してこれを所有し,以後,同建物に居住していた。 (3) 被控訴人Y1は,昭和46年ころ,原判決別紙物件目録記載3の土地(以下「被控訴人土地」という。)を買い受け,昭和47年ころから,子の被控訴人Y2らと共に同土地上の木造2階建ての建物(以下「被控訴人旧建物」という。)に居住していた。被控訴人らは,同建物を取り壊し,平成8年9月5日ころ,同土地上に同目録記載4の建物(以下「被控訴人建物」という。)を新築してこれを共有(被控訴人Y1の持分10分の4,同Y2の持分10分の6)し,現在まで同建物に居住している。 (4) 控訴人土地及び被控訴人土地を含む一帯の地域(以下「本件地域」ということもある。)は,都市計画法所定の第一種低層住居専用地域(以下「第一種低層住居専用地域」という。)に指定されており,容積率は100%,建ぺい率は50%であって,現況はある程度閑静な住宅地域である。 控訴人土地と被控訴人土地はいずれも平たんであるが,控訴人土地は,被控訴人土地のほぼ真北に位置し,被控訴人土地よりも両土地の境界線付近で約1.04m低くなっている。 閑静な住宅地域である。 控訴人土地と被控訴人土地はいずれも平たんであるが,控訴人土地は,被控訴人土地のほぼ真北に位置し,被控訴人土地よりも両土地の境界線付近で約1.04m低くなっている。 (5) 被控訴人建物は2階建て居宅であり,最高の高さは9.25m,最高の軒高は6. 44mであるから,建築基準法の日影規制の対象となる建物(軒の高さが7mを超える建築物又は地階を除く階数が3以上の建築物)には該当しない。 (6) 被控訴人Y1は,控訴人X1が同被控訴人に対して被控訴人建物による控訴人らの日照被害を告知した後である平成10年1月3日,控訴人ら宅を訪問し,控訴人X1に対し,50万円を支払った。 2 控訴人らの主張(1) 被控訴人建物により,控訴人建物は次のような日照被害を受けている。 ア冬至日における控訴人建物の南面開口部に対する被控訴人建物の日影の大きさは,控訴人建物の地盤面で,次のとおりである。 (時刻) (高さ) (長さ)午前10時 3.4m 7.2m午前10時30分 2.8m 5.0m午前11時 2.2m 3.7m午後零時 1.5m 2.4mイまた,冬至日における控訴人建物に対する被控訴人建物の日影は,控訴人建物の南面開口部の地盤面から1.5mの高さの水平面で,次のとおりである。 1階食堂午前9時ころから部分的日影となり,午前10時から午後零時近くまで日影となる。 1階6畳和室午前8時で部屋の開口部の約半分,午前9時から午前11時まで部屋の開口部全面,午後零時で南面開口部の約半分1階8畳和室午 時から午後零時近くまで日影となる。 1階6畳和室午前8時で部屋の開口部の約半分,午前9時から午前11時まで部屋の開口部全面,午後零時で南面開口部の約半分1階8畳和室午前8時から全部日影,午前11時ころになり南面開口部東側約1メートルを除き日影がなくなる。 このように,冬至日において,控訴人建物の1階部分は,被控訴人建物のために午前中の日照がほとんど奪われている。そして,被控訴人建物による日影が解消する時刻以降は,被控訴人建物の西隣のA所有の建物(以下「A建物」という。)及び控訴人建物の西隣の建物による日影の影響を受けるため,終日日影となるが,最も重大な影響を与えているのは被控訴人建物である。 建築基準法上,第一種低層住居専用地域では,冬至日に,建物の敷地の平均地盤面から1.5mの高さで,隣地境界線から5mを超え10m以内の範囲内に,午前8時から午後4時までの間に4時間以上日影となる部分を生じさせてはならないと規制されており,第一種低層住居専用地域である本件地域は,低層建物の日照を最も強く保護することにより人の日照を受ける権利が最大限に保障されている地域である。 (2) 被控訴人建物は,近隣の木造2階建て建物と比べて軒高及び最高の高さが突出しており,建築基準法上の日影規制外建物として許容されるぎりぎりの建物である。 被控訴人建物を建築基準法上の日影規制の対象となる建物としてみた場合,被控訴人土地の平均地盤面から1.5mの高さで,隣地境界線から5mを超え10m以内の範囲内にある控訴人土地に対して4時間以上の日影を与えているので,日影規制に違反している。さらに,控訴人土地と被控訴人土地との高低差1.04mを加えれば,被控訴人建物は,建物の最高の高さ,最高の軒高ともに,建築基準法による規制対象外の 以上の日影を与えているので,日影規制に違反している。さらに,控訴人土地と被控訴人土地との高低差1.04mを加えれば,被控訴人建物は,建物の最高の高さ,最高の軒高ともに,建築基準法による規制対象外の建物の高さを超えることになるから,実質的には日影規制の対象となる建物である。被控訴人建物の現状を容認すれば,第一種低層住居専用地域の日照権保護は有名無実となる。 (3) 被控訴人旧建物は,普通の高さの木造2階建て建物で,その北側外壁面から控訴人土地との境界までの距離は大部分3mで,同建物のあった当時,控訴人建物においては冬至日の午前中の日照は確保されていた。しかし,被控訴人らは,南側に十分な空地があるにもかかわらず,被控訴人旧建物よりも北側に寄せて,控訴人土地との境界からは建築基準法上許容されるぎりぎりの距離である1.8mしか離さずに,上記のように日影規制外建物として許容されるぎりぎりの高さの建物を建築した。 被控訴人建物が近隣の建物と同じく普通の高さの2階建て建物であれば,被控訴人建物と同じ位置に建てられていたとしても,控訴人建物の日照被害は大幅に減少する。また,被控訴人土地の面積は286㎡あり,被控訴人建物の南側には約9.7mもの十分な空地があるのであるから,被控訴人建物を現在の位置よりも2m南側の位置に建築することも可能であり,その場合も控訴人建物の日照被害は大幅に減少する。 控訴人土地が被控訴人土地よりも低地であるからといって,控訴人建物の日照が阻害されてもよいことにはならない。 このように,被控訴人らは,被控訴人建物を建築するに当たって,北側建物にできる限り日影を生じさせないようにとの配慮を全くしなかった。 (4) 控訴人X1は,控訴人建物を控訴人旧建物よりも南側へ約2m寄せて建築したが,それは,被控訴人旧建物 するに当たって,北側建物にできる限り日影を生じさせないようにとの配慮を全くしなかった。 (4) 控訴人X1は,控訴人建物を控訴人旧建物よりも南側へ約2m寄せて建築したが,それは,被控訴人旧建物が存在していたころは朝から日照が得られていたためであり,控訴人建物の南側外壁面から被控訴人土地との境界までは8.3mの距離がある。控訴人らは,被控訴人建物の新築により重大な日照被害を受けるとは考えてもいなかったのであり,控訴人建物について地盤,基礎及び1階部分を高くするなどの手段をとることはできなかった。 (5) 被控訴人建物の建築に際し,控訴人らは,被控訴人らから,被控訴人建物の構造,高さ,位置等につき一切説明を受けたことはなく,平成8年冬を迎え,被控訴人建物が控訴人らの日照権に対して重大な侵害を与えるものであることが判明したため,控訴人X1は,同年12月下旬ころ,被控訴人Y1に対し,被控訴人建物による控訴人らに対する重大な日照権侵害を告知するとともに,その日照を回復するため被控訴人建物の一部撤去を求め,その費用については控訴人X1が半額負担することなどを申し出た。 (6) 以上のとおり,被控訴人建物による控訴人建物に対する日照被害は受忍限度を超えるものであり,控訴人建物に居住する控訴人らは,これにより本来保障されるべき日照を受けられず,精神的苦痛を被っている。そして,主位的請求のように被控訴人建物を一部撤去することにより,控訴人建物に対する日照は大幅に回復する。 (7) 平成10年1月3日に控訴人X1が被控訴人Y1から支払を受けた50万円は,損害賠償金の内金として受領したものであって,本件の解決金の趣旨で受領したものではない。 (8) したがって,控訴人らは,被控訴人らに対し,人格権に基づき,原判決別紙図面に斜線で記載した被控訴 損害賠償金の内金として受領したものであって,本件の解決金の趣旨で受領したものではない。 (8) したがって,控訴人らは,被控訴人らに対し,人格権に基づき,原判決別紙図面に斜線で記載した被控訴人建物部分の撤去を求める権利を有する。 また,上記撤去が認められないとしても,控訴人らは,慰謝料として,被控訴人各自に対して,それぞれ200万円(ただし,控訴人X1は被控訴人Y1から50万円を受領しているので,残金150万円)の支払を求める権利を有する。 3 被控訴人らの主張(1) 控訴人建物は,被控訴人建物により,冬至日において午前8時ころから日影の影響を受け始めるが,午前11時ころには1階和室2室の日影が解消され,午後零時ころには1階全部の日影が解消される。すなわち,被控訴人建物による控訴人建物への影響は午前中の4時間に限られ,しかも,午前11時の時点では1階和室2室の日影は解消されている。また,控訴人建物の2階は,終日日照が確保されている。 控訴人建物は,A建物によって,午前10時ころから日影の影響を受け始め,午後3時半ころにようやくその日影が解消されるのであるから,控訴人建物に対する日影は,A建物からの影響が大きい。このほか,控訴人建物は,同建物の西隣の建物によっても午後に日影の影響を受けている。 そして,被控訴人旧建物があった当時から,控訴人建物は,被控訴人旧建物による日影の影響を受けていた。すなわち,冬至日において,控訴人建物は,午前8時から午前10時ころまで被控訴人旧建物による日影の影響を受けていたから,控訴人建物に対する日影は,現在の被控訴人建物によって初めて生じたのではない。 本件において,被控訴人建物による日影の影響を評価する場合には,被控訴人旧建物によって従前生じていた日影,A建物及び控訴人建物の する日影は,現在の被控訴人建物によって初めて生じたのではない。 本件において,被控訴人建物による日影の影響を評価する場合には,被控訴人旧建物によって従前生じていた日影,A建物及び控訴人建物の西隣の建物によって現在生じている日影をそれぞれ考慮した上で判断されるべきであるが,上記によれば,被控訴人建物による控訴人建物への日影の影響は特段存しない。 (2) 被控訴人建物は建築基準法を遵守して建てられた適法な建築物である。 被控訴人建物の高さは,注文住宅としては一般的であって,格別高いものではない。また,仮に,A建物と同じ建物を被控訴人土地上に建築したとしても,同建物が控訴人建物に及ぼす日影は被控訴人建物による日影とほとんど同一である。被控訴人建物は,控訴人土地との境界線から約1.8mの位置に建築されているが,これは,被控訴人旧建物西側の北側外壁面の位置に合わせて建てられたものであり,ことさら旧建物よりも北側に寄せて建築したものではない。控訴人土地の南側に位置し,被控訴人建物の東西に建築されている数軒の建物は,いずれも北側境界線から1.5m前後の位置に建築されており,被控訴人建物はむしろ近隣家屋よりも北側土地との境界線から距離をおいて建築されている。 被控訴人土地のうち被控訴人建物の南側には,屋根付き車庫や物置,水道栓などが設置されていて余裕はない上,被控訴人建物を南側へ2m寄せた位置に建築すれば,被控訴人土地の東隣の土地建物に多大な日照及び通風の被害を与えることになる。 (3) 控訴人建物は,控訴人旧建物よりも南側外壁面を約1.8m南側にはみだして建築されているから,控訴人らは,被控訴人旧建物による日影に自ら接近したものである。そして,控訴人建物新築時において,被控訴人旧建物が既に築20年を経過する状況であったこ 約1.8m南側にはみだして建築されているから,控訴人らは,被控訴人旧建物による日影に自ら接近したものである。そして,控訴人建物新築時において,被控訴人旧建物が既に築20年を経過する状況であったことからすれば,控訴人らにおいては,近い将来被控訴人らが建物を改築すること,その際には旧建物よりも規模の大きい建物となることは十分予測可能であった。 しかも,控訴人土地と被控訴人土地とは1.04mの高低差が存するのであるから,被控訴人土地に近付けて控訴人建物を建築した以上,控訴人らとしては,被控訴人建物による日影の影響を一定程度甘受しなければならない立場にある。 (4) 被控訴人Y1の亡妻は,被控訴人建物の建築着手前に,建築会社の現場監督と共に控訴人ら方に挨拶に赴き,建物の概略等について説明したが,その後の建築の過程においても,控訴人らからは何らの抗議や申入れはなかった。その時点で控訴人らが日照被害を告知していれば,被控訴人建物の設計変更も可能であった。控訴人X1が被控訴人Y1に対して日影の存在を告知したのは被控訴人建物が完成した後の平成8年12月29日が初めてである。 (5) 以上からすれば,控訴人建物が日照被害を受けているとしても,被控訴人建物が建築されたこととの相当因果関係を欠くか,あるいは受忍限度の範囲内である。 また,被控訴人建物の一部を撤去することは,これによって建物の構造体に与える影響は無視できず,被控訴人建物を欠陥住宅にするものであって,結局同建物全部を取り壊さざるを得ないことになる。また,控訴人らの主位的請求を満たすためには,被控訴人建物の軒先の高さを5.653mにしなければならず,1階部分を現状のままとすれば,2階部分の高さを2m以下にしなければならないことになるが,それでは2階部分が部屋としての機能を完全に失 は,被控訴人建物の軒先の高さを5.653mにしなければならず,1階部分を現状のままとすれば,2階部分の高さを2m以下にしなければならないことになるが,それでは2階部分が部屋としての機能を完全に失うこととなる。 したがって,被控訴人建物の一部撤去を求める控訴人らの主位的請求は権利の濫用として許されない。 (6) 被控訴人Y1が控訴人X1に支払った50万円は,示談金として支払ったものである。 (7) 控訴人X1は,平成11年5月,居住用の住宅として新住居を購入したから,今後,控訴人らが控訴人建物に居住せず,新住居へ転居する可能性は極めて高い。 第3 当裁判所の判断 1 控訴人建物及び被控訴人建物の周辺地域並びに建物の建築状況上記争いのない事実のほか,関係証拠(甲1ないし6,7の1ないし13,甲8ないし11,14の1ないし3,甲15,16ないし19の各1,2,甲21,23の1ないし4,甲24,25,26の1ないし3,甲28,乙3,6の1ないし7,乙7,11,17,18,19の1ないし3,乙22,23,31,控訴人X2・被控訴人Y1各本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (1) 控訴人土地及び被控訴人土地を含む四方を道路で囲まれた一団の土地は,日本住宅公団が分譲した東西方向に長い台形状の土地であって,南側道路に面して被控訴人建物のほか6戸の建物が,北側道路に面して控訴人建物のほか5戸の建物が建ち並び,東側道路に面して1戸の建物が建っている。この一団の土地は,概ね東にいくにつれて各建物敷地が階段状に低くなっており,また,北側敷地の方が南側敷地よりも概ね低い。控訴人土地は,南側に接する被控訴人土地よりも1.04m低く,控訴人建物の西隣の建物の敷地よりも0.63m,被控訴人土地の西隣のA建物の敷地よりも1.59 また,北側敷地の方が南側敷地よりも概ね低い。控訴人土地は,南側に接する被控訴人土地よりも1.04m低く,控訴人建物の西隣の建物の敷地よりも0.63m,被控訴人土地の西隣のA建物の敷地よりも1.59m,それぞれ低くなっている。 (2) 本件地域は,第一種低層住居専用地域に指定されており,容積率は100%,建ぺい率は50%であって,現況はある程度閑静な住宅地域である。 建築基準法及び千葉県建築基準法施行条例によれば,本件地域において軒の高さが7mを超える建築物又は地階を除く階数が3以上の建築物を建築する場合,建築物の敷地の平均地盤面から1.5mの高さの水平面で,隣地境界線から5mを超え10m以内の範囲内に,冬至日の真太陽時による午前8時から午後4時までの間に4時間以上,10mを超える範囲においては2.5時間以上日影を生じさせてはならない旨規定されている(同法56条の2,同条例46条の2)。 (3) 被控訴人Y1は,昭和46年9月10日,被控訴人土地を購入し,昭和47年,同土地上に被控訴人旧建物を建築して,妻及び子の被控訴人Y2とともに同建物に居住していた。被控訴人旧建物は,木造2階建てで,その北側外壁面から控訴人土地との境界までの距離は約2.8m(ただし,北西端の張出し部分では2m弱)であった。 (4) 控訴人X1(昭和13年4月26日生)は,昭和57年6月11日,控訴人土地を,同土地上の木造平家建ての控訴人旧建物とともに購入し(同土地の同控訴人の持分5分の4),妻の控訴人X2(昭和22年9月24日生),子の同X3(昭和50年2月15日生)及び同X4(昭和53年1月31日生)と共に同建物に居住を始めた。なお,控訴人X4は,平成13年4月石川県金沢市内にある大学院へ入学し,同市内へ2年間の予定で転居した。 (5) 控訴人 5日生)及び同X4(昭和53年1月31日生)と共に同建物に居住を始めた。なお,控訴人X4は,平成13年4月石川県金沢市内にある大学院へ入学し,同市内へ2年間の予定で転居した。 (5) 控訴人旧建物は建坪が約18坪と手狭であったため,控訴人X1は,平成2年12月23日ころ,控訴人旧建物を建て替えて木造2階建ての控訴人建物を新築した。控訴人建物は,控訴人旧建物よりも北側へ寄せて建てられたが,床面積を広くしたため,南側外壁面も控訴人旧建物よりも約1.8m南側にはみ出している。控訴人建物の南側外壁面から被控訴人土地との境界までの距離は約8.3mである。また,控訴人建物の軒高は5.783m,最高の高さは7.454mである。 (6) Aは,平成5年9月,被控訴人土地の西隣の土地(千葉県松戸市a町b丁目c番地d)を購入し,同土地上に建築されていた建物を取り壊し,平成6年1月10日ころ木造2階建てのA建物を新築した。A建物の軒高は約6.1m,最高の高さは約7.3mである。 (7) 被控訴人らは,被控訴人旧建物が老朽化したことなどから,これを建て替えることとし,平成8年4月1日付けで被控訴人建物の建築確認を受け,同月に被控訴人旧建物を取り壊した上,被控訴人建物の建築に着手し,同年9月5日ころ被控訴人建物が完成し,同建物に入居した。 被控訴人建物は,被控訴人旧建物よりも床面積が大きく,東西南北にわたって広い範囲に建築され,北側外壁面から控訴人土地との境界までの距離は約1.8m,南側外壁面から南側道路との境界までの距離は約9.7m,最高の軒高は6.440m,最高の高さは9.250mである。 被控訴人建物は,被控訴人建物と同じ一団の土地のうち南側に位置する他の建物よりもやや広く,被控訴人建物の南側外壁面は,被控訴人建物の両隣の各建物 440m,最高の高さは9.250mである。 被控訴人建物は,被控訴人建物と同じ一団の土地のうち南側に位置する他の建物よりもやや広く,被控訴人建物の南側外壁面は,被控訴人建物の両隣の各建物よりも南側へ突出している。また,被控訴人建物の屋根の最高部は,被控訴人土地よりも敷地の地盤が高いA建物よりも高くなっている。 2 控訴人建物が受ける日影の状況既に認定した事実のほか,関係証拠(甲5,7の1ないし13,甲13,22,24,25,27,乙5,24,25,27,31,証人B,控訴人X2本人)によれば,次の事実が認められる。 (1) 控訴人建物は,地上2階建てで,1階南面は東側が食堂に,西側が幅約1.2mの広縁になっており,この広縁の北側に接して,東側に6畳和室が,西側に8畳和室がある。1階南面の開口部は,広縁の南側で6畳和室及び8畳和室の各正面に当たる位置にそれぞれ設置されているいずれも幅2.418mのガラス戸部分と食堂の南側に設置されている幅1.62mのガラス戸部分のみであり,その他の部分は全て壁となっている。1階床面の高さは平均地盤面から0.595mである。 (2) 被控訴人建物が控訴人建物1階部分南側の上記3室に及ぼす日影の影響は,冬至日の真太陽時による(以下において時刻を表示するときも同じ。)午前8時前ころ西側の居室から日影の影響を受け始め,午前9時半から午前10時半近くまでの間は全室が日影となり,その後日影が解消し始め,午後1時過ぎころには完全に日影がなくなる。 これを控訴人建物1階南面開口部における地盤面から1.5mの高さでみると,午前8時ころには広縁南面のほぼ全部が日影となるが,食堂南面には日影がなく,その後日影は時間の経過とともに東に向かって広がり,午前9時ころには広縁南面の全部と食堂南面の西側約 .5mの高さでみると,午前8時ころには広縁南面のほぼ全部が日影となるが,食堂南面には日影がなく,その後日影は時間の経過とともに東に向かって広がり,午前9時ころには広縁南面の全部と食堂南面の西側約3分の2が日影となり,午前9時半ころから午前10時半近くまで全部が日影となり,以後広縁南面の西側から順次東に向かって日照が回復し,午前11時ころには広縁南面の西側約3分の1,午前11時半ころには広縁南面の西側約2分の1について日照が回復し,午後零時には南面開口部全部の日照が回復する。 控訴人建物の2階部分は,被控訴人建物による日影の影響はほとんどない。 もっとも,控訴人建物の南面は,被控訴人建物の西隣のA建物による日影の影響を受けており,控訴人建物1階南面開口部における地盤面から1.5mの高さにおいて,午前10時過ぎころ広縁南面が西側から日影となり,その後日影は東に向かって広がり,午前11時ころには広縁南面の西側約3分の1が,午後零時ころには広縁南面の約3分の2が,午後2時前には南面開口部全部が日影となり,その後西側から日照が回復し,午後3時ころ広縁部分の西側約3分の2について日照が回復し,午後3時半過ぎには南面開口部全部の日照が回復する。しかし,控訴人建物の西隣の建物による日影の影響も受けるため,結局午後一杯日影となる。 ただし,控訴人建物の地盤面から1.5mの高さの水平面でみると,被控訴人建物による日影が上記3室の奥の方にまで及んでいるのに対し,A建物による日影はおおむね広縁部分及び食堂部分にとどまり,和室2室には余り及んでいない。 3 被控訴人建物による控訴人建物の日照被害の受忍限度(1) 既に認定したように,冬至日において控訴人建物が受ける午前10時過ぎころまでの日影はもっぱら被控訴人建物によるものであり,しかも,午前 3 被控訴人建物による控訴人建物の日照被害の受忍限度(1) 既に認定したように,冬至日において控訴人建物が受ける午前10時過ぎころまでの日影はもっぱら被控訴人建物によるものであり,しかも,午前9時半ころから午前10時半近くまでの間は,被控訴人建物により完全に日影となることなどからすると,午前中に受ける日影の大部分が被控訴人建物の影響によるものといわざるを得ない。 一方,被控訴人旧建物があった当時,同建物が控訴人建物に及ぼしていた日影の状況については,これを正確に認定できる資料はない。乙26は,被控訴人旧建物による日影図として被控訴人Y2が作成したものであるが,同被控訴人の陳述書(乙27)によれば,被控訴人旧建物の軒高及び勾配などについては同被控訴人の記憶に基づくというのであるから,被控訴人旧建物による日影の状況を正確に示すものとはいえない。 しかし,この乙26によっても,控訴人建物1階南面開口部における地盤面から1.5mの高さにおいて,その全部が日影となるのは午前9時半から午前10時までの間のわずかな時間に限られ,午前10時過ぎには完全に日影がなくなっていたことが認められる。なお,被控訴人旧建物のあった位置に控訴人建物と同じ仕様の建物があるとした場合には,控訴人建物1階南面開口部における地盤面から1.5mの高さにおいて,午前9時半ころから午前10時ころまでの間,ほぼ全部が日影となるものの,午前10時半までには日影がなくなることが認められるので(甲12,乙28),被控訴人旧建物による控訴人建物への日影の影響もこれらと大差ないものであったと推認される。 また,仮に,被控訴人建物が建築されている位置に控訴人建物と同じ仕様の建物が建築された場合,やはり控訴人建物1階南面開口部における地盤面から1.5mの高さにおいて,午前9時半こ 推認される。 また,仮に,被控訴人建物が建築されている位置に控訴人建物と同じ仕様の建物が建築された場合,やはり控訴人建物1階南面開口部における地盤面から1.5mの高さにおいて,午前9時半ころから午前10時過ぎころまでの間は全部が日影となるが,午前11時ころ以降はほぼ日影がなくなるものと認められる(甲12,乙28)。 (2) 以上のように,控訴人建物は,冬至日においてほぼ終日日影となるが,このうち午前中に受ける日影の大部分が被控訴人建物の影響によるものであり,その程度は,建築基準法等の定める日影規制に照らしても無視できない日照被害であるというべきである。 なお,被控訴人土地は控訴人土地よりも1.04m高いが,このような場合であっても,控訴人土地との関係において被控訴人土地が建築基準法施行令135条の4の2に定める要件に該当しない以上,建築基準法上の日影規制は,対象建築物すなわち被控訴人土地の平均地盤面から1.5mの高さの水平面における日影を基準とすべきものと解されるが,控訴人建物に生じている日照被害が受忍限度を超えるかどうかを判断するに当たっては,現実に同建物に生じている日影の状況がまず問題となるというべきであるから,同建物あるいは控訴人土地の平均地盤面から1.5mの水平面を基準に検討するのが相当である。 また,被控訴人建物は,建築基準法の日影規制の対象外の建物であって,同建物が同法に違反する建築物であるとは認められないが,被控訴人土地の平均地盤面から1.5mの高さの水平面を基準とすると,控訴人土地との境界線から5mの位置において,冬至日の真太陽時による午前8時から午後4時までの間に4時間以上の日影を生じさせている(甲22,乙4の1,2)。 そして,被控訴人建物の建築によって新たに控訴人建物に生じた日照被 置において,冬至日の真太陽時による午前8時から午後4時までの間に4時間以上の日影を生じさせている(甲22,乙4の1,2)。 そして,被控訴人建物の建築によって新たに控訴人建物に生じた日照被害は,被控訴人建物が周囲の他の建物より高さが高く,2階建て住宅としても高い部類に属する上,被控訴人旧建物よりも北側に寄せて建築されたことから生じたものと認められる。 確かに,A建物など被控訴人建物の東西に建築されている数軒の建物がいずれも北側境界線から1.5m前後の位置に建築されているのに比べて,被控訴人建物は,北側土地(控訴人土地)との境界線から1.8m程度とややゆとりをおいて建築されている(乙3,25)けれども,被控訴人建物が上記のような建物であること,控訴人土地の方が被控訴人土地よりも1.04m低くなっていること,本件地域は第一種低層住居専用地域に指定された住宅地であり,日照保護の要請が強い地域であることからすれば,被控訴人らにおいては,被控訴人建物を建築するに当たり,同建物の建築によって控訴人建物に及ぼす日影の影響ができる限り少なくなるよう,建物の形状,大きさ,位置等について慎重に検討すべきであったのに,この点についての十分な配慮を欠くものであったというべきである。なお,被控訴人土地には,被控訴人建物の南側に屋根付き車庫や倉庫等が存在する(乙6の4,乙17,18,23)が,だからといって被控訴人らにおいて上記のような配慮をすることができなかったとはいえない。 (3) 他方,被控訴人土地と控訴人土地とに高低差がないとすれば,被控訴人建物が控訴人建物に及ぼす日影の影響は,地盤面から1.5mの高さで,冬至日において午前中の2時間半程度であるので(甲22,乙4の1,2),被控訴人土地と控訴人土地との間に1.04mもの高低差があることも控訴人建 建物に及ぼす日影の影響は,地盤面から1.5mの高さで,冬至日において午前中の2時間半程度であるので(甲22,乙4の1,2),被控訴人土地と控訴人土地との間に1.04mもの高低差があることも控訴人建物に上記のような日照被害が生じている大きな原因と認められる。しかし,控訴人土地が南側に隣接する被控訴人土地よりも低地にあるからといって,これにより被控訴人土地の利用が過度に制約されるべきいわれはなく,控訴人土地が被控訴人土地よりも低地であることによる不利益は,控訴人らにおいてある程度甘受すべきものである。そして,被控訴人建物は,近隣の建物と比較してやや大きく,高さも高いものの,近時の注文住宅の大きさとしては必ずしも特異なものとまではいえない(乙9)。また,控訴人建物は,被控訴人旧建物があった当時から同建物により午前中ある程度の日影の影響を受けていたほか,A建物及び控訴人建物の西隣の建物による日影の影響も受けており,控訴人建物に対する日影のすべてが被控訴人建物の建築によって新たに生じたものではない。さらに,控訴人建物の2階部分は日照が得られており,控訴人らが1階部分でしか日常生活を維持できないという格別の事情も認められない。そして,関係証拠(甲24,30,31,乙10の1,乙11,17,18,32,33)によれば,控訴人らが最初に日照被害を被控訴人らに申し出たのは,被控訴人建物が既に完成し,同建物に被控訴人らが入居した後の平成8年12月29日のことであって,その時点においては,被控訴人らにおいてもはや設計変更等の手段を講ずることは不可能であったこと,現時点で被控訴人建物を一部撤去したり南方へ移動するとなれば,過大な費用を要するばかりでなく,建物の構造体にも悪影響を及ぼす可能性があることが認められる。また,仮に,控訴人の主位的請求のとおり被控訴人建 点で被控訴人建物を一部撤去したり南方へ移動するとなれば,過大な費用を要するばかりでなく,建物の構造体にも悪影響を及ぼす可能性があることが認められる。また,仮に,控訴人の主位的請求のとおり被控訴人建物の一部を撤去した場合,同建物の2階部分の機能が事実上失われる結果となる(乙12)。 (4) 以上の諸事情を考慮すると,被控訴人建物によって控訴人らが受ける日照被害は社会通念上受忍限度を超えるものと認められるものの,受忍限度の逸脱の程度が著しいものとまではいえず,被控訴人らに対し被控訴人建物の一部撤去を求めることは,過剰な負担を強いることとなるので許されないというべきであり,控訴人らの受ける日照被害に対する救済は金銭賠償によって償われるのが相当である。 なお,関係証拠(甲21,24,乙15,控訴人X2本人)によれば,控訴人X1は,平成11年5月に東京都台東区内のマンション1室を購入し,同室の購入にあたり融資を受ける必要から,同年11月25日住民票を同所へ移動させたが,同控訴人は同室を弁護士事務所として使用し,現在でも控訴人建物に居住していることが認められ,加えて同控訴人は控訴人建物の所有者であるから,控訴人X1についても日照被害が生じており,金銭賠償を受け得る立場にあることは明らかである。 また,前記第2,1(6)のとおり,被控訴人Y1は,控訴人X1に対し50万円を支払っているが,関係証拠(甲24,乙17,18,被控訴人Y1本人)によれば,上記金員は日照権の侵害に対する慰謝の趣旨で授受されたものと認められるが,被控訴人Y1が突然持参したものであって,金額について合意されたり,領収証や示談書が作成されたことは認められないことなどに照らすと,これによって本件日照被害の全部を解決する旨の示談が成立したものとは認められず,損害賠償金の内 ものであって,金額について合意されたり,領収証や示談書が作成されたことは認められないことなどに照らすと,これによって本件日照被害の全部を解決する旨の示談が成立したものとは認められず,損害賠償金の内金として支払われたものと認めるのが相当である。 (4) そして,上記に検討した被控訴人建物が控訴人建物に及ぼしている日照被害の状況,程度のほか,控訴人X1は控訴人建物を所有し,かつ居住していること,控訴人X2,同X3は控訴人建物に同居しており,控訴人X4も平成13年3月まで同居していたが,同控訴人はその後2年間の予定で転居し,現在は居住していないこと,控訴人X1及び同X2は,被控訴人建物によって今後長期間日照被害を受け続けることが見込まれること,控訴人X3及び同X4は将来独立し他所で生活することも予想されること等,以上認定の諸事情を総合的に勘案すると,控訴人らの精神的な損害に対する慰謝料としては,控訴人X1につき100万円,同X2につき50万円,同X3につき30万円,同X4につき20万円と認めるのが相当であり,このうち控訴人X1については,上記のとおり既に50万円を被控訴人Y1から受領しているので,これを控除した残額は50万円となる。 第4 結論以上の次第で,控訴人らの主位的請求はいずれも理由がなく,予備的請求については,被控訴人ら各自に対し,控訴人X1及び同X2はそれぞれ50万円,同X3は30万円,同X4は20万円及びこれらに対する不法行為の後である平成12年1月29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。よって,これと同旨の原判決は相当であり,本件各控訴及び本件各附帯控訴はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第15民事部 がある。よって,これと同旨の原判決は相当であり,本件各控訴及び本件各附帯控訴はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第15民事部裁判長裁判官赤塚信雄裁判官宇田川基裁判官加藤正男
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