令和6年1月17日判決言渡同日原本交付裁判所書記官令和4年(ワ)第16062号損害賠償等請求事件口頭弁論終結日令和5年10月18日判決 原告株式会社イワセ薬品 同訴訟代理人弁護士尾関孝彰 被告御所薬舗株式会社 同訴訟代理人弁護士白井一成同北村修祐主文 1 被告は、原告に対し、109万4744円及びこれに対する令和4年7月3 0日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを9分し、その8を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求被告は、原告に対し、985万3748円及びこれに対する令和4年7月30日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 本件は,商標権を有する原告が,医薬品の販売をしていた被告に対し,被告 が販売する商品、その包装及び同商品の広告に別紙被告標章目録記載の各標章を付することが、同商標権を侵害し、その販売により、原告は損害を被ったと主張して,不法行為による損害賠償請求権(民法709条、商標法38条1項及び3項)に基づき,985万3748円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(不法行為より後の日)である令和4年7月30日から支払済みまで民法所 定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実及び証拠上容易に認められる事実。証拠等は文末に括弧で付記した。なお、書証は特記しない限り枝番を全て含む。 分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実及び証拠上容易に認められる事実。証拠等は文末に括弧で付記した。なお、書証は特記しない限り枝番を全て含む。 以下同じ。)等⑴ 当事者 原告は、埼玉県及びその周辺で、配置薬(いわゆる「置き薬」。以下、単に「配置薬」という。)の形態で医薬品を販売する株式会社である(争いがない事実)。 被告は、配置薬用の医薬品の製造・卸売りや、その他の医薬品の製造並びにドラッグストア及びインターネット販売業者への卸売りにより、全国的に 医薬品の販売をする、奈良県御所市に所在する株式会社である(争いがない事実)。 ⑵ 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(平成25年法律第84号による改正前の題名は薬事法。以下、同改正の前後を問わず、「医薬品医療機器等法」という。)の規定 ア平成18年法律第69号による改正前の医薬品医療機器等法(以下「改正前医薬品医療機器等法」という。)の内容30条1項配置販売業の許可は、配置しようとする区域をその区域に含む都道府県ごとに、その都道府県知事が、厚生労働大臣の定める基準に従い品目 を指定して与える。 31条配置販売業の許可を受けた者(以下「配置販売業者」という。)は、前条第一項の規定により都道府県知事が指定した品目以外の医薬品を販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で貯蔵し、若しくは陳列してはならない。 イ平成18年法律第69号による改正後の医薬品医療機器等法の内容第30条 1 配置販売業の許可は、配置しようとする区域をその区域に含む都道府県ごとに、その都道府県知事が与える。 2 前項の許可を受けようとする者は、厚生労働省令で 薬品医療機器等法の内容第30条 1 配置販売業の許可は、配置しようとする区域をその区域に含む都道府県ごとに、その都道府県知事が与える。 2 前項の許可を受けようとする者は、厚生労働省令で定めるところに より、次の各号に掲げる事項を記載した申請書を配置しようとする区域をその区域に含む都道府県知事に提出しなければならない。 一氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名二薬剤師又は登録販売者が配置することその他当該都道府県の区域において医薬品の配置販売を行う体制の概要 三法人にあつては、薬事に関する業務に責任を有する役員の氏名四第31条の2第2項に規定する区域管理者の氏名五第4項において準用する第5条第3号イからトまでに該当しない旨その他厚生労働省令で定める事項 3 薬剤師又は登録販売者が配置することその他当該都道府県の区域に おいて医薬品の配置販売を行う体制が適切に医薬品を配置販売するために必要な基準として厚生労働省令で定めるものに適合しないときは、第1項の許可を与えないことができる。 4 第5条(第3号に係る部分に限る。)の規定は、第1項の許可について準用する。 第31条 配置販売業の許可を受けた者(以下「配置販売業者」という。)は、一般用医薬品のうち経年変化が起こりにくいことその他の厚生労働大臣の定める基準に適合するもの以外の医薬品を販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で貯蔵し、若しくは陳列してはならない。 ウ平成18年法律第69号の附則10条 この法律の施行の際現に旧法(裁判所注:平成28年法律第69号の附則1条による改正前の医薬品医療機器等法をさす。)第30条第1項の許可を受けている者(この法律の施行後に附則第17条の規定に この法律の施行の際現に旧法(裁判所注:平成28年法律第69号の附則1条による改正前の医薬品医療機器等法をさす。)第30条第1項の許可を受けている者(この法律の施行後に附則第17条の規定に基づきなお従前の例により許可を受けた者を含む。以下「既存配置販売業者」という。)については、新法(裁判所注:平成28年法律第69号の附則1条 による改正後の医薬品医療機器等法をさす。)第30条第1項の許可を受けないでも、引き続き既存配置販売業者に係る業務を行うことができる。 この場合において、旧法第30条第1項(旧法第83条第1項の規定により読み替えて適用される場合を含む。)の規定は、薬事法第24条第2項の許可の更新については、なおその効力を有する。 ⑶ 原告が有する商標権(甲1)原告は、以下のとおりの商標権(以下「本件商標権」という。)を有する。 ア登録番号商標登録第3297239号イ出願年月日平成6年9月5日ウ登録年月日平成9年4月25日 エ登録商標別紙商標目録記載のとおり(以下「本件商標」という。)。 オ商品及び役務の区分第5類カ指定商品薬剤⑷ 原告が販売していた地域及び商品 原告は、改正前医薬品医療機器等法の規定に基づき、埼玉県、千葉県、茨 城県及び群馬県の各知事から、配置販売業の許可を受け、これらの県内において医薬品を販売していた。また、原告は、医薬品医療機器等法の規定に基づき、東京都知事から、配置販売業の許可を受け、東京都内において医薬品を販売していた(甲23)。 原告は、一般の消費者を対象に、少なくとも令和4年8月頃まで虎脩本方 六神丸Sのうち120粒入り(以下「原告商品1」という。)を、同年9月以降に中央 おいて医薬品を販売していた(甲23)。 原告は、一般の消費者を対象に、少なくとも令和4年8月頃まで虎脩本方 六神丸Sのうち120粒入り(以下「原告商品1」という。)を、同年9月以降に中央六神丸120粒入り(以下、「原告商品2」といい、原告商品1と併せて「原告商品」という。)を、販売していた(弁論の全趣旨)。 ⑸ 被告の商品ア被告は、昭和26年10月19日に、医薬品名を「仙修六神丸」とする 医薬品(以下「被告商品1」という。)の製造許可を受け、少なくとも昭和37年以降平成30年12月21日まで、販売していた(乙3、13、弁論の全趣旨)。 イ被告は、平成4年2月20日に、医薬品名を「御所仙修六神丸」とする医薬品(以下、「被告商品2」といい、被告商品1と併せて「被告各商品」 という。)の販売許可を受け、平成5年以降現在まで、販売していた(乙4、13、弁論の全趣旨)。 ⑹ 被告各商品販売時の被告の標章の使用状況ア被告は、被告商品1について、被告商品1が封入されたビンに付されたラベル及び当該ビンの包装箱に別紙被告標章目録記載1の標章(以下「被 告標章1」という。)を付して販売していた。また、被告は、被告商品1の販売の際、被告商品1の名称として別紙被告標章目録記載2の標章(以下「被告標章2」という。)を記載して、被告のホームページに掲載していた(甲2、4、争いがない事実)。被告商品1の一部は、卸先でインターネットで販売されていた(弁論の全趣旨)。 イ被告は、被告商品2のうち、株式会社メディスンプラス(以下「メディ スンプラス」という。)向けに販売されていた商品(以下「被告商品2-1」という。)であって、140粒入りの商品については、商品が封入されているビンに付されたラベル及び当該ビンの包 以下「メディ スンプラス」という。)向けに販売されていた商品(以下「被告商品2-1」という。)であって、140粒入りの商品については、商品が封入されているビンに付されたラベル及び当該ビンの包装箱に別紙被告標章目録記載3の標章(以下「被告標章3」という。)を付し、300粒入りの商品については、商品が封入されているビンに付されたラベルに被告標章3 を、当該ビンの包装箱に別紙被告標章目録記載4の標章(以下、「被告標章4」といい、被告標章1、被告標章2及び被告標章3と併せて「被告各標章」という。)を、それぞれ付し、これらを販売していた。また、被告商品2のうち、株式会社中京医薬品(140粒入り。以下「中京医薬品」という。)向けに販売されていた商品(以下「被告商品2-2」という。) について、商品が封入されていたビンのラベル及び当該ビンの包装箱にいずれも被告標章3を付して販売していた。また、被告商品2について、メディスンプラス及び中京医薬品のいずれのインターネット上のサイト上においても、被告商品2の名称として被告標章4を付して、掲載していた(甲5、6、争いがない事実)。 ⑺ 被告各商品の売上状況等(弁論の全趣旨)ア平成24年7月1日から販売終了時である平成30年12月21日までの間の被告商品1の売上個数の内訳は、以下のとおりである。 10粒入り 280個90粒入り 3個 120粒入り 145個140粒入り 1万5438個180粒入り 459個300粒入り 171個380粒入り 236個 イ平成24年7月1日から令和5年4月30日までの間の被告商品2-1 の売上個数の内訳は、140粒入り及び300粒入りが、いずれも2個ず 171個380粒入り 236個 イ平成24年7月1日から令和5年4月30日までの間の被告商品2-1 の売上個数の内訳は、140粒入り及び300粒入りが、いずれも2個ずつである。また、同期間における被告商品2-2の売上個数は、4051個である。 ⑻ 改正前医薬品医療機器等法31条に関する指定の実態についてア北海道においては、改正前医薬品医療機器等法30条1項の許可を受け た配置販売業者(以下「既存配置販売業者」という。)が取扱い医薬品の品目を変更する場合において、その変更により取扱いの対象とする医薬品が富山県及び奈良県の配置家庭薬品目収載台帳に記載の品目であるときは、申請手続を不要としている。また、宮城県、埼玉県、東京都、神奈川県及び福岡県においては、既存配置販売業者が取扱い医薬品の品目を変更する 場合において、その変更により取扱いの対象とする医薬品が富山県、奈良県、滋賀県及び佐賀県の配置家庭薬品目収載台帳に記載の品目であるときは、申請手続を不要とし、又は簡略化している(乙6から9、11、12)。 広島県は、平成23年1月21日、広島県の既存配置販売業者の取扱い 品目の指定台帳として、富山県、奈良県、滋賀県及び佐賀県の配置家庭薬品目収載台帳の品目を一括指定した(乙10)。 イ奈良県配置家庭薬品目収載台帳には、昭和37年以降平成30年まで被告商品1が記載され、平成5年以降現在まで被告商品2が記載されていた(乙2、3、13)。 ⑼ 本件の訴え提起(裁判所に顕著な事実)原告は、令和4年6月28日、本件訴えを提起した。 ⑽ 消滅時効の援用の意思表示(裁判所に顕著な事実)被告は、令和4年10月6日、同日付け被告準備書面1において、被告商品1に係る不法行為に基づく損害 、令和4年6月28日、本件訴えを提起した。 ⑽ 消滅時効の援用の意思表示(裁判所に顕著な事実)被告は、令和4年10月6日、同日付け被告準備書面1において、被告商品1に係る不法行為に基づく損害賠償債務について、消滅時効を援用する旨 の意思表示をし、同月7日原告に到達した。 2 争点⑴ 本件商標と被告各標章の類否(争点①)⑵ 先使用権の成否(争点②)⑶ 消滅時効の成否(争点③)⑷ 損害の発生及びその数額(争点④) 3 争点に関する当事者の主張⑴ 争点①(本件商標と被告各標章の類否)について(原告の主張)ア被告標章1について本件商標である「仙脩」と被告標章1の「仙修」の外観における相違は、 2文字目の右側の下部に、縦線2本があるか否か、及び同部の横線3本が斜めであるか水平であるかのみである。これらの相違点は、顕著なものではなく、他の部分での共通性が観察者に与える印象を凌駕するものではないから、外観は類似する。また、「仙脩」と「仙修」の称呼は、いずれも「せんしゅう」であり、同一である。加えて、「修」の字は、「脩」の字 の簡体字であり、「脩」に代替できる漢字であると理解されている。漢字辞典をみれば、「脩」の文字に干し肉という意味があることを知ることはできるものの、ほとんどの需要者は通常は字形の類似から「修」と同一又は類似の意味を想起する。なお、「虎修」と「虎脩」は、いずれも文字通り謙虚に整えた(調合した)ことを意味するものであり、和漢薬製造販売 業者間で慣用的に使用される文字であり、意味として区別されていない。 よって、「仙修」は、外観、称呼及び観念の全てにおいて、本件商標である「仙脩」と同一又は類似であって、需要者の間で出所の混同を惹起するおそれがあるから、被告標章 り、意味として区別されていない。 よって、「仙修」は、外観、称呼及び観念の全てにおいて、本件商標である「仙脩」と同一又は類似であって、需要者の間で出所の混同を惹起するおそれがあるから、被告標章1は本件商標に類似する。 イ被告標章2について 被告標章2のうち、「六神丸」部分は、センソ、ゴオウ、ニンジンなど の生薬を原料とする、動悸、息切れ、気付けに効能・効果がある和漢薬の普通名称であるから、この部分には識別力がなく、被告標章2から「仙修」が分離抽出される。したがって、前記アで述べた理由により、被告標章2は本件商標に類似する。 ウ被告標章3について 「御所」は、和漢薬の需要者及び取引業者の間で、生薬の栽培地及びその原料とする和漢薬の生産地として周知の地名であるから、その識別力は低い。これに対し、仙修は独自性の強い言葉であり、識別力が高い。また、「御所」と「仙修」との間に間隔がある上、「御所」が四角で囲われているため、「仙修」が分離抽出されることが明確である。したがって、前記 アで述べた理由により、被告標章3は本件商標と類似する。 エ被告標章4について被告標章4のうち、「御所」部分に識別力がなく「仙修」が分離抽出されるのは、前記イ及びウ(ただし、被告標章4は「仙修」との間に間隔はなく、四角で囲われてもいない。)と同様であり、被告標章4は本件商標 に類似する。 (被告の主張)ア被告標章1について本件商標である「仙脩」と「仙修」とを対比すると、「脩」の字と「修」の字のつくりの下部が「月」類似の形か、「斜めの払い三本線」かという 点で異なり、需要者が一見して別の字であると判別可能な程度に異なるものであり、外観が類似するとはいえない。 また、「脩」の第一次的な意味は「ほじ 」類似の形か、「斜めの払い三本線」かという 点で異なり、需要者が一見して別の字であると判別可能な程度に異なるものであり、外観が類似するとはいえない。 また、「脩」の第一次的な意味は「ほじし。干し肉。」であり、第二次的な意味は「かわく。かわかす。」であり、「修」と意味が共通する「おさめる」は第三次的な意味にすぎない。また、需要者は、「修」の字から は修学や修行など想起するが、「脩」の字は、医薬品でよく使用される文 字であり、乾燥させたもの、特に医薬品の需要者からは、乾燥させた生薬や原料を想起させる文字である。そもそも、本件商標の「脩」の字は、広く一般的であり「修」の文字が珍しかったとはいえず、実際にも医薬品として「虎脩六神丸」と「虎修六神丸」の両商品名を販売している会社も存在していることからすれば、原告は、「修」の字ではなく、あえて「脩」 の字を選択したものであり、意味の違い、すなわち観念が異なることを意識していた。 したがって、称呼が同一であるとしても、外観及び観念が異なるから、本件商標と被告標章1が類似しているとはいえない。 イ被告標章2について 被告標章2のうちの「六神丸」の部分は、被告各商品以外の医薬品にも用いられているものの、需要者の間で識別力が喪失したといえるほど一般名称として広く認知された用語とはいえず、この点を分離観察するものではない。そうすると、本件商標と被告標章2とでは、外観、称呼及び観念はいずれも異なり、類似しない。仮に、六神丸部分に識別力がないとして も、「仙脩」と「仙修」の外観及び観念が異なり、本件商標と被告標章2が類似していないのは前記アと同様である。 ウ被告標章3について被告標章3のうちの「御所」の部分は被告の商号である「御所薬舗」を示す文言であ 修」の外観及び観念が異なり、本件商標と被告標章2が類似していないのは前記アと同様である。 ウ被告標章3について被告標章3のうちの「御所」の部分は被告の商号である「御所薬舗」を示す文言であり、少なくとも奈良県配置家庭薬品目収載台帳の中には被告 のほかに「御所」を含む医薬品製造業者はおらず、被告商品1と被告商品2とを識別するのは「御所」部分しかないのであるから、「御所」部分には識別力がある。 そうすると、本件商標と対比観察するのは「仙修」又は「御所仙修」となるところ、「仙脩」と「御所仙修」を対比すると、外観は異なるし、称 呼についても要素の一部が共通するものの、冒頭の「ゴセ」の有無により 両者の混同を招く可能性があるほど類似しているとはいえない。さらに、観念についても、「御所仙修」は、「御所薬舗」や「修行、修学」というイメージが想起されるが、「仙脩」は乾燥させた物というイメージが想起されるのであり明らかに異なるものである。 したがって、本件商標と被告標章3は類似しているとはいえない。 エ被告標章4について被告標章4のうち、「御所」部分に識別力があり「仙脩」と「御所仙修」の称呼、外観及び観念が異なり、本件商標と被告標章4が類似しているとはいえないのは、前記ウのとおりである。 ⑵ 争点②(先使用権の成否)について (被告の主張)被告は、本件商標権の出願日前から、「仙修」の標章を使用している。そして、前記第2の1⑵のとおり、既存配置販売業者は各都道府県知事が改正前医薬品医療機器等法30条1項の旧厚生労働大臣の定める基準であった「配置販売品目指定基準」(以下、単に「指定基準」という。)に基づいて 指定した品目しか販売することができないが、奈良県配置家庭薬品目収載台帳記載の品目の の旧厚生労働大臣の定める基準であった「配置販売品目指定基準」(以下、単に「指定基準」という。)に基づいて 指定した品目しか販売することができないが、奈良県配置家庭薬品目収載台帳記載の品目の医薬品は、ほとんどの都道府県で知事が一括して指定した品目の対象となっており、配置販売業者は、顧客に対して、販売可能な薬品として、奈良県配置家庭薬品目収載台帳を含む一括指定の対象となった商品のリストを顧客に提示し、配置希望商品を選択してもらうことになる。そして、 前記第2の1イのとおり、被告商品1は、昭和37年以降本件商標が出願された平成6年まで奈良県配置家庭薬品目収載台帳に記載されていたのであり、その間配置販売業にかかわる全ての者が目にし、又は目にすることが可能であり、昭和53年から平成6年までの16年間だけで累計14万点以上の商品が出荷されている。したがって、被告商品1は、33年間にわたって、 日本全国の配置販売業者が取り扱うことができた商品であり、かつ、同業者 が顧客に対して販売可能な商品として提示していたこととなるから、被告が「仙修」の標章を使用していたことは、「需要者の間に広く認識されている」といえる。これらにより、被告は、先使用による使用権を有する。 (原告の主張)被告が昭和53年から平成6年までの16年間だけで累計14万点以上の 商品が出荷されている旨の根拠は不明であり、仮にこれが真実だったとしても、1年間当たり8750個の販売量であり、各都道府県で均等に販売されたと仮定すると、各都道府県で1年あたり186個販売されたにすぎない。 本件商標に係る医薬品の原告の販売量は平成29年度で約1万2000パック、平成30年度で約1万1500パックであり、これに原告が出荷してい る会社への販売量が4500パッ 売されたにすぎない。 本件商標に係る医薬品の原告の販売量は平成29年度で約1万2000パック、平成30年度で約1万1500パックであり、これに原告が出荷してい る会社への販売量が4500パックあるのであって、被告が主張する販売量で、被告標章1及び2が、需要者である消費者の間に広く認識された状態になるとはいえない。 また、配置販売業者は、配置薬の製造者の営業活動から情報を得て新規導入する置き薬を検討するのであり、配置販売業者も、奈良県配置家庭薬品目 収載台帳を調査して被告標章1及び被告標章2の存在を認識する動機付けはないから、奈良県配置家庭薬品目収載台帳に被告商品1が収録されていたことは、被告標章1及び2が需要者である配置販売業者の間で、周知性を獲得する根拠とならない。 加えて、配置薬の需要者層とインターネット販売の需要者層は異なるから、 仮に被告が平成6年9月5日以前の配置薬販売により獲得した周知性を根拠に先使用権を獲得したとしても、この先使用権はインターネット販売には及ばない。 ⑶ 争点③(消滅時効の成否)について(被告の主張) 前記第2の1⑵のとおり、既存配置販売業者は各都道府県知事が指定基準 に基づいて指定した品目しか販売することができないが、奈良県配置家庭薬品目収載台帳記載の品目の医薬品は、ほとんどの都道府県で一括して知事が指定した品目の対象としており、ほとんどの都道府県においては、無条件で販売できる医薬品となる。そうすると、既存配置販売業者にとって、奈良県配置家庭薬品目収載台帳は必要不可欠なものであり、これを保持していない ことなどありえない。他方、商標の登録出願に先行して、同一指定商品又は役務における類似商標の調査は必須と考えられ、このような調査がされることが一般的であること ものであり、これを保持していない ことなどありえない。他方、商標の登録出願に先行して、同一指定商品又は役務における類似商標の調査は必須と考えられ、このような調査がされることが一般的であることからすると、原告は、本件商標権の出願日時点においては、被告による被告標章1及び被告標章2の使用を認識していた。 仮にそうでないとしても、現在、「仙脩」という語句をインターネット検 索すると、検索結果のトップページに「御所仙修六神丸」の文字が表示され、平成30年頃「仙修六神丸」の文字が同様に表示されたことが推認されるのであり、原告も当然インターネットを利用していたであろうことから、遅くとも、平成30年12月末日までに、被告による被告標章1及び被告標章2の使用を認識していた。したがって、被告商品1についての不法行為に基づ く損害賠償請求権は、原告の本件提起前には時効が完成していた。 (原告の主張)通常、販売業者は配置家庭薬品目収載台帳を保有しておらず、原告も奈良県配置家庭薬品目収載台帳を保有したことがなく、原告にとってあえて奈良県配置家庭薬品目収載台帳を調査する動機もなかった。原告の事業は富山の 配置薬販売業に由来するものの、原告は、富山県配置家庭薬品目収載台帳さえも保有したことがない。したがって、奈良県配置家庭薬品目収載台帳に被告標章が収録されていたとしても、原告はそれを知らなかった。原告が被告の六神丸の存在を初めて知ったのは令和3年3月10日である。したがって、本件訴訟の提起日である令和4年6月28日の20年前である平成14年6 月28日以降の商標権侵害行為については時効消滅していない。 ⑷ 争点④(損害の発生及びその数額)について(原告の主張)ア商標法38条1項の損害について原告は、被 年6 月28日以降の商標権侵害行為については時効消滅していない。 ⑷ 争点④(損害の発生及びその数額)について(原告の主張)ア商標法38条1項の損害について原告は、被告による被告商品1の販売に係る商標権侵害により、次の逸失利益相当額の損害を負った。 原告が、被告の侵害行為がなければ販売することができた商品の単位数量当たりの利益の額原告商品の定価は税抜き価格で3600円であり、仮に値引きをしたとしても割引率は10%にすぎないので、原告商品の実質販売価格は3200円である。他方で、原告商品の税抜きの仕入れ価格は1700円 であることから、原告商品の単位数量当たりの利益の額は、1500円を下らない。 被告が譲渡した数量被告は、10粒入りから380粒入りまでの各種の被告商品1を販売している。他方、原告が販売していた配置薬には、令和4年8月頃まで 販売していた原告商品1のうち120粒入りと令和4年9月以降に販売していた原告商品2の120粒入りが含まれ、特に被告各商品のうち140粒入りと市場が競合する。そこで、被告各商品については、140粒入りに換算して譲渡数量を算出すべきところ、被告商品1の全売上額を140粒入りに換算した販売個数は、10粒入り商品が20個、90 粒入り商品が1個、120粒入り商品が124個、1180粒入り商品が590個、300粒入り商品が366個、380粒入り商品が640個(いずれも、小数点以下切り捨て)となり、140粒入りの1万5438個と併せ、合計1万7179個となる。また、被告商品2-1の140粒入りに換算した販売個数は、300粒入り商品を2個と換算する と、合計6個であり、被告商品2-2の販売個数である4051個を併 せると、被告が 9個となる。また、被告商品2-1の140粒入りに換算した販売個数は、300粒入り商品を2個と換算する と、合計6個であり、被告商品2-2の販売個数である4051個を併 せると、被告が販売した、140粒入りに換算した被告各商品は、合計2万1236個となる。 被告の販売地域は全国であるところ、原告商品の販売地域は、東京都、埼玉県、千葉県、茨城県及び群馬県であり、人口比で少なくとも全国の25%を占めることから、仮に原告の販売許可を受けている地域が 限られることが商標法38条1項1号の「原告が販売することができないとする事情に当たる」としても、特定数量に該当する数量は販売数量の75%を超えない。そうすると、38条1項1号に基づく損害額は、以下の計算式のとおり、796万3500円となる。 1500円×2万1236個×0.25=796万3500円 特定数量である販売数量の75%に相当する数量に関する損害は、商標法38条1項2号の「登録商標の使用に対し受けるべき金銭の額に相当する額」に当たる。 そして、本来、配置薬販売業者はおおむね製造元が案内した希望小売価格を順守して小売りをする慣行があったのであり、配置薬販売業者は 希望小売価格の1割を超える割引をすることはない。そして、被告商品1の希望小売価格は140粒入りで、120粒入りの希望小売価格3500円の90%である3150円と評価される。また、被告商品2-1の小売価格は、140粒入りで、希望小売価格5000円の90%である4500円であると評価される。また、被告商品2-2の小売価格は、 少なくとも2012年当時の小売価格3000円と評価される。被告の売上高は低額にすぎる。 そして、相当実施料率は2%とすべきであるから、被告各商品の「登録商標 告商品2-2の小売価格は、 少なくとも2012年当時の小売価格3000円と評価される。被告の売上高は低額にすぎる。 そして、相当実施料率は2%とすべきであるから、被告各商品の「登録商標の使用に対し受けるべき金銭の額に相当する額」は、以下の計算式のとおり、合計132万5937円となる。 a 被告商品1 3150円×1万7179個×0.02=108万2277円b 被告商品2-1(140粒入り)5000円×2個×0.02=200円c 被告商品2-1(300粒入り)1万円×2個×0.02=400円 d 被告商品2-23000円×4051個×0.02=24万3060円e 合計(108万2277円+200円+400円+24万3060円)×0.75=99万4453円 弁護士費用以上の損害に加え、弁護士費用相当額の損害は、損害合計額の10%を下らないから、以下のとおり、89万5795円が損害となる。 (796万3500円+99万4453円)×0.1=89万5795円 合計985万3748円イ商標法38条3項に基づく損害被告各商品の売上高は1億5000万円であると考えられるところ、侵害訴訟で認定されるべき本件商標のライセンス料率は卸売価格に対して2 %を下らない。したがって、1億5000万円×0.02=300万円となり、これに弁護士費用相当額10%を加算すると、合計330万円となる。 (被告の主張)ア商標法38条1項の損害について 被告各商品と原告商品は、いずれも配置薬として販売されていたも のである。配置薬は、「配置販売業の許可を受けた販売業者や配置員が、直接、消費者の家庭を訪問して、薬をあらかじめ消費者 被告各商品と原告商品は、いずれも配置薬として販売されていたも のである。配置薬は、「配置販売業の許可を受けた販売業者や配置員が、直接、消費者の家庭を訪問して、薬をあらかじめ消費者に預け、次回、訪問した時に消費者が服用した分だけの代金を集めていくというもの」であり、需要者は、配置薬販売業者と対面し、同業者が取扱い可能な商品の中から商品を決めた後は、販売業者が同じ商品を補充し続けるだけ であり、継続的取引の途中で商品が変更されることはない。そして、原告は原告商品の小売業者であり、被告は、被告各商品の製造業者であって、営業形態が異なるから、原告商品の需要者が継続的取引の途中で被告各商品を購入することもないし、被告が被告標章を使用しているために原告の需要者が原告商品を買わないという関係は成り立たない。 また、「虎脩」という文言を含む六神丸は少なくとも8種類存在し、そのうち「虎脩六神丸」の名称で販売している商品は4種類あり、「虎修」という文言を含む六神丸は少なくとも15種類存在し、そのうち「14種類」はその名称が「虎修六神丸」と完全に同一である。加えて、「六神丸」という名称で販売している商品も6種類存在する。これらは、 原料や成分が異なる別商品であるが、需要者は混同したりしておらず、医薬品の需要者が商品名をもって対象商品を識別しているのではなく、製造業者名又は販売会社名と医薬品の種別に着目して対象商品を識別していることを示すものである。また、六神丸は、心筋に作用してその収縮力を高める成分を含有するいわゆる「強心薬」であり、商品名のみで 選別することなどありえず、含有成分や効能に基づいて商品を選別している。 仮に、需要者が商品名によって対象商品を識別している可能性があるとしても、原告商品1は既 薬」であり、商品名のみで 選別することなどありえず、含有成分や効能に基づいて商品を選別している。 仮に、需要者が商品名によって対象商品を識別している可能性があるとしても、原告商品1は既に述べた「虎脩六神丸」又は「虎修六神丸」と混同され販売機会を喪失している可能性はあるものの、被告各標章の 使用と原告商品1との間に販売機会の喪失の関係はない。また、原告商 品2の販売時点においては、被告標章1及び被告標章2は使用しておらず、その使用と原告商品2の販売機会喪失の関係はない。 仮に、競合関係が認められるとしても、原告による原告商品の販売地域、販売数などを基礎付ける資料は提出されていない。被告商品2-2は、愛知県を中心とする中部地方を主たる販売地域とするものであり、 原告が販売許可を受けている5都県はおろか関東地方に中京医薬品の営業所は存在せず、配置薬を販売していないことは明らかである。 なお、原告が主張する卸値は誤りである。 イ商標法38条3項の損害について争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実、証拠(各項末尾に掲記)及び弁論の全趣旨によれば、次の各事実が認められる。 ⑴ 六神丸の意味及び医薬品の名称における使用状況 六神丸は動悸、息切れなど循環器系疾患に用いられる強心薬として用いられてきた。日本家庭薬協会のホームページ上では、六神丸は登録商標ではなく、一般名であると記載され、奈良県製薬協同組合のホームページ上においても、六神丸は中国ではかなり古い歴史を持つといわれ6つの生薬からなる気付け薬であると記載されている。また、製薬会社の社員マニュアルや六神 丸の添付文書には、知名度のある薬である旨紹介されることもあった。広辞苑(第7版)においては、漢方薬の一つ の生薬からなる気付け薬であると記載されている。また、製薬会社の社員マニュアルや六神 丸の添付文書には、知名度のある薬である旨紹介されることもあった。広辞苑(第7版)においては、漢方薬の一つとの記載がある。(甲2)日本医薬品集一般薬(2014年-15年版)には、「虎脩」という文言を含む商品名の六神丸が少なくとも8種類存在し、また、同書には、「虎修」という文言を含む六神丸の商品は、少なくとも15種類存在する。さらに、 商品名を「六神丸」とする商品も6種類存在する。(乙14,19) ⑵ 御所市に関する論文等の記載奈良県のホームページ中の「優良な生薬」と題するページ中には、「田村薬草園(田村薬品工業株式会社)」の紹介ページにおいて、古くから田村薬品工業のある御所は、薬草の産地であった旨の記載がある。また、「大和売薬の世界-奈良県における配置薬行商の歴史と民族-」と題する論文中には、 古代日本の大和では、医学も早くから取り入れられ医薬品を製造することによって全国に薬を売る薬売りが誕生し、中でも薬草が豊富にとれた現御所市等や高取町が中心であった旨記載されている。さらに、「明治政府の売薬観と大和売薬」と題する論文中には、御所市は、明治期から薬の町として知られている旨の記載がある。(甲3) ⑶ 「脩」の字の成立ちや意味旺文社の漢字典(第三版)には、「脩」の字は、「月(肉)と、音をあらわすユウとで、干して縮んだ肉の意を表すとされ、修に通じて、「おさめる」「ながい」の意に通じる」とされる。また、「脩」の意味として、「①ほしじ、干し肉、②かわく、かわかす。③おさめる、ととのえる=修」と記載さ れ、同訓異義語として「修」の字が記載されている(乙7)。 「漢字と古典の総合サイト」と題するウェブページ て、「①ほしじ、干し肉、②かわく、かわかす。③おさめる、ととのえる=修」と記載さ れ、同訓異義語として「修」の字が記載されている(乙7)。 「漢字と古典の総合サイト」と題するウェブページには、「修」の字は「脩」の字の簡体字であるとされ、「異体字の深淵-和漢古書目録作成における漢字入力(2)」と題するウェブページでは、「本来べつべつの意味だったものが、今日では同じ字の異体字としてのみとらえられている場合 (「脩」と「修」など。)」との記載がある(甲7)。 ⑷ 被告の売上高平成24年7月1日から販売終了時である平成30年12月21日までの間の売上金額は、合計1373万1610円である。また、平成24年7月1日から令和5年4月30日までの被告商品2-1の売上合計額は7300 円であり、被告商品2-2の売上合計額は448万8100円である。 原告は、被告が主張する売上高が低額である旨主張するが、被告以外の会社の小売価格に関する証拠以外に原告の主張を裏付ける証拠はなく、同証拠をもって、被告が主張する上記売上額が被告の売上額ではないとは認められず、また、他に、被告の売上額が上記売上額と異なることを示唆する具体的な証拠はない。 したがって、被告の売上高は、被告が主張する上記金額であると認める。 2 争点①(本件商標と被告各標章の類否)について⑴ 被告標章1について本件商標と被告標章1の外観についてみると、いずれも漢字二文字で一文字目の字が「仙」の字で同一であり、二文字目の字も本件商標が「脩」、被 告標章1が「修」の字であり、右側下部のみが、本件商標が「月」と同じ形状をしているのに対し、被告商標1が「彡」の形状をしており、異なっているものの、それ以外の左側及び右側上部は同一形状をしており 告標章1が「修」の字であり、右側下部のみが、本件商標が「月」と同じ形状をしているのに対し、被告商標1が「彡」の形状をしており、異なっているものの、それ以外の左側及び右側上部は同一形状をしており、似た形状をしている。そうすると、本件商標と被告標章1の外観は類似しているといえる。 本件商標と被告標章1の称呼についてみると、両者はいずれも「せんしゅう」で同一である。 そして、観念についてみると、本件商標も被告標章1もいずれも「せんしゅう」としては広辞苑(第7版)に掲載されていない。もっとも広辞苑(第7版)によれば、「仙」の部分は「仙人」の意味とされる。「脩」は、前記 1⑶のとおり、本来の意味は干し肉を指すものであったが、現代では音が同じ被告標章1の二文字目の「修」と同じ「おさめる」の意味をも有しているとされ、「修」の簡体字ないし異字体として使用されることもあるものである。これらの事実に照らすと、本件商標も被告標章1も、いずれもそれ自体で特定の観念を有するとはいえないが、それぞれを構成する漢字は、共通す るものと、共通する意味を有するものであり、それらの漢字から想起される 観念も類似していると評価することができる。 被告は、特に医薬品の需要者からは、「脩」の字は乾燥させた生薬や原料を想起させる文字であり、医薬品として「虎脩六神丸」と「虎修六神丸」の両商品名を販売している会社も存在していることなどを指摘する。しかし、「脩」の字には「修」と同じ「おさめる」の意味も有しているとされる。ま た、原告は医薬品の小売業であり(前記第2の1⑴及び⑷)、被告の卸売の販売先が、被告各商品をインターネット上のサイトで販売していること(前記第2の1⑹)からすると、被告各商品の市場は全国に及び、かつその対象も消費者に及 業であり(前記第2の1⑴及び⑷)、被告の卸売の販売先が、被告各商品をインターネット上のサイトで販売していること(前記第2の1⑹)からすると、被告各商品の市場は全国に及び、かつその対象も消費者に及ぶといえ、被告各商品の需要者には消費者も含まれ、また、医薬品に精通する者のみが需要者であるとはいえないので、この点に関する被 告の主張は採用できない。 これらの事情を総合的にみれば、本件商標と被告標章1は類似しているといえる。 ⑵ 被告標章2について本件商標と被告標章2の外観についてみると、本件商標は漢字二文字であ るのに対し、被告標章2は漢字5文字であり、「仙」の字が同一であり、「脩」と「修」の字が類似しているとしても、全体として外観が類似しているとはいえない。また、本件商標と被告標章2の称呼についてみても、「せんしゅう」と「せんしゅうろくしんがん」であり、一部共通するとしても、全体として称呼が類似しているともいえない。 もっとも、被告標章2のうちの「六神丸」の部分は、前記1⑴のとおり、古くから特定の漢方薬を指す用語であるとされ、広辞苑(第7版)においても「漢方薬の一つ」として説明されているものであり、その他想起される意味はなく、実際にも、漢方薬として、多くの会社から六神丸という名称の商品が販売されている。そうすると、需要者にとって、「六神丸」の部分は、 特定の内容の漢方薬を指すものといえる。 そうすると、被告標章2において、「六神丸」の部分は出所識別力を有さず、主に出所識別力を有するのは、「仙修」の部分であるといえる。そこで、本件商標と被告標章2の「仙修」の部分を被告して商標の類否を検討すると、本件商標と被告標章2の「仙修」の部分については、前記のとおり、外観が類似し、称呼が同一である の部分であるといえる。そこで、本件商標と被告標章2の「仙修」の部分を被告して商標の類否を検討すると、本件商標と被告標章2の「仙修」の部分については、前記のとおり、外観が類似し、称呼が同一である。また、観念についても、本件商標の「仙修」 と被告標章2の「仙脩」のそれぞれの漢字から想起される観念は類似するといえる。 これらの事情を総合的にみれば、本件商標と被告標章2は類似しているとするのが相当である。 ⑶ 被告標章3について 本件商標と被告標章3の外観についてみると、本件商標は漢字二文字であるのに対し、被告標章3は漢字4文字であり、「仙」の字が同一であり、「脩」と「修」の字が類似しているとしても、全体として観察した場合は、外観が類似しているとはいえない。 もっとも、被告標章3は、「御所」と「仙修」の間に空白があり、かつ 「御所」の文字は、四角形の枠で囲まれていて、そのような枠がない「仙修」の部分と「御所」の部分は、外観上、明確に分離して観察することができるものといえる。そして、本件商標と被告標章3の「仙修」部分の外観が類似しているのは、前記アで述べたとおりである。 また、本件商標と被告標章3の称呼についてみても、「せんしゅう」と 「ごせせんしゅう」又は「ごしょせんしゅう」であり、全体の称呼は異なるものの、分離して観察することができる「御所」部分を除いた「せんしゅう」の部分は同一である。 本件商標と被告標章3の観念についてみると、「御所」は、前記1⑵のとおり、古くからの薬の生産地である奈良県の被告所在地の市を意味するもの であり、文献等において言及されることはあるが、本件証拠上、言及されて いる文献は奈良県に関する文献か医薬品に関する論文等の専門誌であり、「御所」が、需要者に特に広 の市を意味するもの であり、文献等において言及されることはあるが、本件証拠上、言及されて いる文献は奈良県に関する文献か医薬品に関する論文等の専門誌であり、「御所」が、需要者に特に広く知られていて、需要者が当然に特定の市を想起するとまでは認めるに足りない。そして、「御所」は、広辞苑(第7版)においても、「ごせ」と読ませる場合、「奈良県西部、大阪市に接する市」と記載されている一方で、「ごしょ」と読ませる場合、「天皇の座所を意味 する」と記載されている。これらの事実からすると、「御所」は、「ごせ」と読ませる場合は奈良県の市名として理解されるものの、需要者が必ずそのように理解するとまでは認めるに足りず、「ごしょ」と読む天皇の座所の意味を想起する者もいるといえる。もっとも、被告標章3では、前記のとおり「御所」と「仙修」は外観上明確に分離しているところ、本件商標の「仙修」 と被告標章2のうちの「仙脩」のそれぞれの漢字から想起される観念は類似するといえる。 以上の事情をみると、被告標章3は、全体として不可分一体のものとはいえず、その構成上、被告標章3の「仙修」の部分も出所識別標識となるものであり、この部分と本件商標との類否を判断することができるというべきで ある。そして、前記に述べたのと同じ理由により、本件商標と「仙修」の部分は類似しているといえるから、本件商標と被告標章3は類似しているといえる。 ⑷ 被告標章4について本件商標と被告標章4の外観についてみると、本件商標は漢字二文字であ るのに対し、被告標章3は漢字4文字であり、「仙」の字が同一であり、「脩」と「修」の字が類似しているとしても、全体として観察した場合は、外観が類似しているとはいえない。そして、被告標章4は、被告標章3とは異なり、「 章3は漢字4文字であり、「仙」の字が同一であり、「脩」と「修」の字が類似しているとしても、全体として観察した場合は、外観が類似しているとはいえない。そして、被告標章4は、被告標章3とは異なり、「御所」と「仙修」の間に空白もなく、かつ「御所」の部分も四角形の枠で囲まれるなどしていないから、外観上、「御所」の部分と「仙修」 とが分離して観察されることはない。 また、本件商標と被告標章4の称呼についてみても、「せんしゅう」と「ごせせんしゅう」又は「ごしょせんしゅう」であり、一部重なる部分はあるものの、全体として観察した場合、称呼は異なる。 そして、本件商標と被告標章4の観念についてみると、前記ウで述べたとおり、「御所」について、「ごせ」と読ませる場合は奈良県の市名として理 解されるものの、需要者が必ずそのように理解するとまでは認めるに足りず、「ごしょ」と読む天皇の座所の意味を想起する者もいるといえるものであり、「御所」の部分にも一定の観念が生ずるものといえる。 そして、被告標章4の「御所仙修」が外観上分離されない一連のものであるところ、そのうちの「御所」の部分に出所識別標識としての機能がないと は直ちにはいえないし、「仙修」の部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとはいえない。 これらの事情を総合的にみれば、本件商標と被告商標4は類似しているとはいえない。 3 争点②(先使用権の成否)について 前記第2の1⑸のとおり、被告は、昭和26年には、医薬品である被告商品1の販売許可を受け、昭和37年以降平成30年まで継続して被告商品1を販売し、また、平成4年に医薬品である被告商品2の販売許可を受け、平成5年以降現在まで販売していて、原告が本件商標の登録の出願をした平成6年9月5日より前に、 以降平成30年まで継続して被告商品1を販売し、また、平成4年に医薬品である被告商品2の販売許可を受け、平成5年以降現在まで販売していて、原告が本件商標の登録の出願をした平成6年9月5日より前に、被告標章1から被告標章3までを使用していた。 ここで、被告は、本件商標の出願時点において、被告標章1から被告標章3が被告の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間において広く認識されていたと主張し、それを推認させる事実として、奈良県配置家庭薬品目収載台帳に、昭和37年以降被告商品1が、平成5年以降被告商品2が記載されていること、多くの都道府県で配置販売業者が販売の許可を得る際に、奈良県配 置家庭薬品目収載台帳に記載されている医薬品を販売可能な医薬品として一括 指定することを挙げる。 しかし、上記被告標章が付された商品の需要者には、最終的に家庭内で使用されるという被告各商品の性質から消費者が含まれるというべきところ、それらの需要者が上記の台帳や指定を確認することは通常ないといえる。被告は、奈良県配置家庭薬品目収載台帳に記載されていることは、配置販売業者が奈良 県配置家庭薬品目収載台帳に記載されている商品を販売可能な商品として消費者に提示していたことになる旨主張する。しかし、台帳に記載があるとしても、そのことをもって現実に台帳記載の商品を販売可能な商品として消費者に提示していたことになるわけではなく、また、許可を受けた配置販売業者が配置薬を販売する際、実際に奈良県配置家庭薬品目収載台帳に記載されている全ての 医薬品を販売可能な商品として需要者である消費者に紹介していたことや被告各標章が付された商品を紹介したことを認めるに足りる証拠もない。 したがって、被告指摘の事実によって、需要者が被告標章1から被告標章3 販売可能な商品として需要者である消費者に紹介していたことや被告各標章が付された商品を紹介したことを認めるに足りる証拠もない。 したがって、被告指摘の事実によって、需要者が被告標章1から被告標章3が被告の業務に係る商品を表示するものとして認識していたとは認められない。 これらからすると、上記の台帳への記載等をもって、被告標章1から被告標 章3が被告の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたことを認めることはできず、他に、このことを認めるに足りる証拠はない。 以上によれば、被告が主張する先使用権の成立は認められない。 4 争点③(消滅時効の成否)について 平成29年法律第44号による改正前の民法724条前段は、被害者は、損害及び加害者を知った時から消滅時効が進行する旨規定している。 被告は、被告商品1が奈良県配置家庭薬品目収載台帳に記載されていることをもって、原告は、被告が被告標章1及び被告標章2を使用していることを本件商標の出願時点において知っていた旨主張し、仮にそうでなくても、現在、 インターネットの検索ページに本件商標と同じ「仙脩」を検索語句として入力 して検索をすると、検索結果のトップページに被告標章4が表示され、平成30年頃は被告標章2が表示されたであろうことをもって、原告は遅くとも平成30年12月末までに被告による被告標章1及び被告標章2の使用を知っていた旨主張する。 しかしながら、原告は、奈良県配置家庭薬品目収載台帳の記載を確認したこ とを否認し、原告がその記載を確認したことを裏付けたり、うかがわせたりする具体的証拠はない。前記第2の1⑻ア認定のとおり、一括指定の対象とされる配置家庭薬品目収載台帳は、奈良県のものだけでなく、富山県、滋賀県及び佐賀県のものも 認したことを裏付けたり、うかがわせたりする具体的証拠はない。前記第2の1⑻ア認定のとおり、一括指定の対象とされる配置家庭薬品目収載台帳は、奈良県のものだけでなく、富山県、滋賀県及び佐賀県のものも対象とされることも多い。本件の証拠関係の下で、原告がそのうちの奈良県の台帳にのみ記載されている被告商品1を認識していたと認める には足りない。 インターネットにおける検索結果は他のページの存在・内容等によっても左右されるものであって、現在インターネットの検索ページに「仙脩」との語句を検索語句として入力して検索をすると検索結果のトップページに被告標章4が表示されるとしても、平成30年頃に被告標章2が同じ検索結果のトップペ ージに表示されたと推認することはできない。そして、原告代表者は、被告各標章の存在について知ったのが令和3年3月10日である旨述べ(甲8)、その供述を採用できない事情を認めるに足りない。これらによれば、平成30年頃に、インターネットにおける検索によって、原告が、被告標章1及び被告標章2の使用を知っていたことを認めることはできない。 そうすると、被告の主張はいずれもその前提を欠くから、原告が、遅くとも平成30年12月末までに被告による被告標章1及び被告標章2の使用を知っていたとは認められず、原告が損害及び加害者を知った時期が同月末であるとはいえない。 したがって、原告が本件の訴えを提起した令和4年6月28日時点において、 被告商品1に関する不法行為に基づく損害賠償債務の消滅時効は完成していな いから、この点に関する被告の主張は採用できない。 5 争点④(損害及び損害額)について⑴ 商標法38条1項1号の損害についてア原告は、滋養強壮を目的とする内服液として「仙脩」(せんしゅう)と ら、この点に関する被告の主張は採用できない。 5 争点④(損害及び損害額)について⑴ 商標法38条1項1号の損害についてア原告は、滋養強壮を目的とする内服液として「仙脩」(せんしゅう)という名称の商品を販売するなどして、本件商標は、原告が販売する商品の 出所を示すものとして使用されていた(甲9、20)。 原告商品と被告商品は、いずれも強心薬として用いられる六神丸である。 被告は、被告商品1について、被告商品1が封入されたビンに付されたラベル及び当該ビンの包装箱に被告標章1を付し、その販売の際、被告商品1の名称として被告標章2を記載して、被告のホームページに掲載 した(前記第2の1ア))。 被告は、被告商品2のうち、被告商品2-1のうちの140粒入りの商品について、商品が封入されているビンに付されたラベル及び当該ビンの包装箱に被告標章3を付し、300粒入りの商品について、商品が封入されているビンに付されたラベルに被告標章3を付し、これらを販 売した。また、被告商品2-2について、商品が封入されていたビンのラベル及び当該ビンの包装箱にいずれも被告標章3を付し、これらを販売した(前記第2の1イ)。 イ原告商品の定価は3600円であり、その仕入価格はおおよそ1700円であり、定価より大幅な値引きがされて販売されていないことがう かがえる(甲19、21、弁論の全趣旨)から、原告商品の単位数量当たりの利益の額は、値引きがあることを考慮しても、原告主張のとおり、1500円を下らないと認められる。 ウ原告は、被告各商品の中で、140粒入りの商品が特に原告商品と競合するものであるとして、被告各商品を140粒入りに換算した個数に 対して、原告商品の1個当たりの利益を乗じたものが商標法38条1項 告各商品の中で、140粒入りの商品が特に原告商品と競合するものであるとして、被告各商品を140粒入りに換算した個数に 対して、原告商品の1個当たりの利益を乗じたものが商標法38条1項 1号の損害となると主張する。被告商品1の140粒入りに換算した販売個数は、原告の主張のとおりに換算すれば合計1万7179個であると認められ、また、被告商品2の140粒入りに換算した販売個数は、被告商品2-2の300粒入りの商品を原告の主張のとおりに換算し、被告商品2-1の4051個と併せ、原告の主張のとおり、合計2万1 236個であると認められる。 したがって、被告は、140粒入りに換算して、被告商品を、合計2万1236個販売したといえる。 エ被告は、被告が卸売業であることから、原告商品と被告商品が競合しない旨主張する。しかし、被告の卸売の販売先であるメディスンプラスや中 京医薬品は、被告標章1等を使用して被告各商品をインターネット上のサイトで販売していることなどからすると、被告各商品の市場は全国に及び、かつその対象も消費者に及ぶといえる。また、原告商品が特定の地域において配置薬として購入されているとしても、その原告の顧客が上記のインターネット上のサイトで販売されている医薬品の購入を全くしないとはい えない。以上によれば、同内容の薬品である原告商品と被告各商品が競合しないとはいえない。 したがって、本件においては、商標法38条1項の適用がある。 オ原告は、小売業であり、仕入先からの供給量も制限される事情は見当たらず、使用相応数量を超える部分があるとは認められない。 カもっとも、原告商品の販売地域は、法規制により、東京都、埼玉県、千葉県、茨城県及び群馬県に限られるのに対し、被告各商品の市場は全国に及ぶ。 相応数量を超える部分があるとは認められない。 カもっとも、原告商品の販売地域は、法規制により、東京都、埼玉県、千葉県、茨城県及び群馬県に限られるのに対し、被告各商品の市場は全国に及ぶ。また、原告商品は、上記の地域において原告の配置薬を利用している者に対してのみ販売されるのに対し、被告各商品は、卸売業者を介し最終的に一般の消費者がいつでも購入することができるものである。そして、 配置薬は「配置販売業の許可を受けた販売業者や配置員が、直接、消費者 の家庭を訪問して、薬をあらかじめ消費者に預け、次回、訪問した時に消費者が服用した分だけの代金を集めていくという」販売方法をしている。 このような配置薬の利用者は、前記エのとおり、インターネット上で販売されている被告各商品の購入をすることが全くないとはいえないものの、通常は、預けられている薬を服用し、その後配置業者等からその補充を受 けるといえるから、被告各商品を購入した者のほとんどは、原告の配置薬を利用していない者であると推認できる。そして、このような者は原告の配置薬を利用していない以上原告商品を購入しないといえるから、原告商品と被告各商品の販売形態の違いに基づく市場の違いにより、販売された被告各商品のうちの相当大きな部分について、原告が販売することができ ない事情があるといえる。 以上のとおり、原告商品と被告各商品とは、市場が異なり、本件においては、販売された被告各商品について、原告が販売することができない事情があるといえ、上記の事情からすれば、被告が譲渡した数量のうち98%に相当する数量が上記事情に係る数量であると認める。したがって、特 定数量は2万1236個の98%である2万0811個(少数点以下切り捨て)であるから、商標38条1項1号に基づく損 うち98%に相当する数量が上記事情に係る数量であると認める。したがって、特 定数量は2万1236個の98%である2万0811個(少数点以下切り捨て)であるから、商標38条1項1号に基づく損害は、以下の計算式のとおり、63万7500円である。 1500円×(2万1236個-2万0811個)=63万7500円⑵ 商標法38条1項2号の損害について 前記⑴のとおり、2万1023個が特定数量に当たるところ、それが特定数量に当たる理由によれば、これらに対して、原告は使用許諾をすることができたといえ、同項2号が適用されるところ、これらの数量に応じた本件商標の使用に対し受けるべき金額は、現実の売上高である1822万7010円(前記1)のうちの特定数量に相当するといえる額に対し、原告が主張 する2%を乗じた額を下回ることはない。 そうすると、上記金額は、以下の計算式のとおり、35万7244円である。 1822万7010円×(2万0811個/2万1236個)×0.02=35万7244円(少数点以下切捨て)⑶ 弁護士費用相当額 上記及びの損害額や訴訟の経過その他の事情に照らし、弁護士費用相当額として、10万円が相当である。 ⑷ 合計 109万4744円63万7500円+35万7244円+10万円=109万4744円なお、原告は、商標法38条1項に基づく主張と選択的に同条3項に基づ く主張もしているが、上記の同条1項に基づく損害額より、同条3項に基づく損害額のほうが明らかに低額であり、上記109万4744円を損害額として認める。 第4 結論以上によれば、原告の請求は、主文掲記の限度で理由があるが、その余は理由 がないから、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第 記109万4744円を損害額として認める。 主文 以上によれば、原告の請求は、主文掲記の限度で理由があるが、その余は理由がないから、主文のとおり判決する。 理由 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官柴田義明 裁判官杉田時基 裁判官仲田憲史 (別紙)被告標章目録 1仙修 2仙修六神丸 3御所仙修 4御所仙修以上 (別紙)商標目録 以上
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