- 1 -平成30年12月6日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成28年(ワ)第5649号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成30年8月22日判決当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 被告らは,原告に対し,連帯して5748万3750円及びこれに対する平成25年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 請求の要旨本件は,ボイラ及びその関連設備の製造販売業者である原告が,被告らが岩手県 釜石市片岸地区にバイオマスボイラ及びその関連設備(以下「本件ボイラ等」という。)を設置したと主張して,以下の各請求をする事案である。 (1) 不正競争防止法に基づく損害賠償請求(主位的請求)原告は,本件ボイラ等は,原告の元取締役である被告P1が,原告が保有する逆燃式燃焼炉等に関する設計製造情報である別紙「営業秘密目録1」記載の情報(以 下,これらの情報を総称して「本件設計製造情報」という。)並びに原告が製造したボイラ及びその関連設備のCAD図面データである別紙「営業秘密目録2」記載の図面データ(以下,これらのデータを総称して「本件図面データ」といい,本件設計製造情報と併せて「本件技術情報」という。)を利用して設計したものであるとして,被告P1には不正競争防止法2条1項4号又は7号所定の不正競争行為 (不正開示及び不正使用〔少なくとも不正使用〕)があり,その余の被告らには,- 2 -被告P1による不正取得行為又は不正開示・使用行為を知り又は重過失により知ら 又は7号所定の不正競争行為 (不正開示及び不正使用〔少なくとも不正使用〕)があり,その余の被告らには,- 2 -被告P1による不正取得行為又は不正開示・使用行為を知り又は重過失により知らないで本件ボイラ等の設計図面を取得し,本件ボイラ等に使用したことにつき,同項5号又は8号所定の不正競争行為(悪意又は重過失の転得者による不正使用)があるとして,同法4条に基づき,連帯して損害金5748万3750円(逸失利益5248万3750円及び弁護士費用相当額500万円)及びこれに対する平成2 5年1月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求をする。 (2) 一般不法行為に基づく損害賠償請求(予備的請求)原告は,原告と共に岩手県釜石市の震災復興事業のメンバーないしその関係者であった被告らが,同事業に関するボイラ及びその関連設備の設計製造を担当するこ とになっていた原告に対価を支払うことなくこれらを自ら設計製造するため,被告P1及び被告P2をして,継続していた同事業が頓挫したという嘘の報告をして原告を同事業のメンバーから外した上で,被告P1を原告から引き抜き,本件設計製造情報が化体した本件図面データだけでなく,原告の協力企業の技術等も盗用して本件ボイラ等を製造したことは,原告に対する不法行為を構成するとして,被告P 1,被告P2,被告株式会社バイオ・パワー・ジャパン(以下「被告バイオパワー」という。)の共同代表者であった被告P3及び被告P4(なお,被告P4は,その後単独代表者となっている。)並びに被告バイオパワーの取締役であった被告P5については民法709条,被告P3が代表者であった被告株式会社オーテック(以下「被告オーテック」という。)については会社法350条,被告P4が代表 者 被告バイオパワーの取締役であった被告P5については民法709条,被告P3が代表者であった被告株式会社オーテック(以下「被告オーテック」という。)については会社法350条,被告P4が代表 者であり,被告P5が被用者である被告さつき株式会社(以下「被告さつき」といい,被告オーテック,被告P3,被告P4,被告P5,被告バイオパワーと併せて「被告オーテックら」という。)については会社法350条又は民法715条1項,被告P3及び被告P4が共同代表者であった被告バイオパワーについては会社法350条を基礎とする共同不法行為に基づき,連帯して損害金5748万3750円 (逸失利益5248万3750円及び弁護士費用相当額500万円)及びこれに対- 3 -する平成25年1月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求をする。 2 前提となる事実(当事者間に争いがない事実のほか,後掲証拠〔なお,この判決では,書証の枝番号の全てを含むときは,その記載を省略することがある。〕及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) (1) 原告は,原告代表者及び被告P1らが力工業株式会社(以下「力工業」という。)から独立して昭和61年に設立したボイラ及びその関連設備の製造販売を業とする会社であり,ボイラ及びその関連設備の設計製造情報である別紙「営業秘密目録1」記載の情報(本件設計製造情報)並びに原告が製造したボイラ及びその関連設備のCAD図面データである別紙「営業秘密目録2」記載の図面データ(本 件図面データ)を保有していた。被告P1は,原告の設立当初から平成24年12月31日まで原告の専務取締役を務めていた。 被告P2は,在籍していた会社が平成20年ないし平成21年頃に原告と取引したため,原告代表者及び被告P1 た。被告P1は,原告の設立当初から平成24年12月31日まで原告の専務取締役を務めていた。 被告P2は,在籍していた会社が平成20年ないし平成21年頃に原告と取引したため,原告代表者及び被告P1と知り合った。 (2) 被告オーテック(その代表取締役は,被告P3である。)は,プレス製品 の製造販売業者であったものの,しいたけの生産等の事業に乗り出して平成21年5月には農業生産法人の認定を受けるに至っていた。被告オーテックは,従前から原告との間でボイラ関連の取引があったところ,平成22年夏頃に原告代表者から被告P2を紹介されたことをきっかけに,同年11月に被告P2を技術顧問に据えた(乙B13)。 (3) 被告オーテック及び被告さつき(被告P4はその代表者であり,被告P5はその従業員である。)は,平成23年8月23日,釜石市に対し,震災瓦礫処理事業等(以下「本件震災瓦礫処理事業等」という。)の企画を提案した。その事業計画書(甲9)では,被告オーテック及び被告さつきが中心となって設立する被告バイオパワーが事業主体となって釜石市から震災瓦礫処理事業を受注した上で,購 入する予定である片岸地区の土地の瓦礫を木質バイオマス,コンクリ塊及び汚泥の- 4 -3種類に分別し,木質バイオマスについては,これをバイオマスボイラを用いたバイオマス発電の燃料とし,その熱エネルギーを利用したしいたけ栽培を行ったり,コンクリ塊及び汚泥と同様に盛土原料や煉瓦を作るための原料としたりするなどとされており,原告は技術支援を担当するとされていた。 被告バイオパワーは,同年11月24日に設立され,被告P3,被告P4,被告 P1,被告P5らが取締役に就任した。 (4) 原告は,平成24年9月13日付けで,被告さつき宛ての「釜石発電機付き 被告バイオパワーは,同年11月24日に設立され,被告P3,被告P4,被告 P1,被告P5らが取締役に就任した。 (4) 原告は,平成24年9月13日付けで,被告さつき宛ての「釜石発電機付きボイラー設備」と題する図面を作成し(甲47の2),同年11月15日付けで,被告さつき宛てに,ボイラ及びその関連設備に関する見積書を発行した(甲11)が,被告P1が平成24年12月31日をもって原告の取締役を退任した以降は, 被告らと関わることがなくなった。 (5) 被告オーテックは,平成25年7月4日に,「平成25年度木質バイオマスエネルギーを活用したモデル地域づくり推進事業に係る企画書(新たな利用システムの実証)」を提出するなどして,林野庁の委託事業である「平成25年度木質バイオマスエネルギーを活用したモデル地域づくり推進事業」に応募したところ, 提案した実証事業(以下,上記実証事業を「本件林野庁事業」という。)が採用されたことから,同年9月10日に,林野庁との間で委託契約を締結した。上記企画書(乙C5の1)では,被告オーテックが事業主体となって,大量の未利用木質バイオマスを活用した熱電供給システム等を構築するなどとされ,被告P1がバイオマスボイラの設計を担当するとされていた。 被告P1が,原告から持ち出していた本件図面データ(全てか否かについては争いがある。)を修正して,本件林野庁事業については,バイオマスボイラ及びその関連設備に相当する本件ボイラ等を設計し,被告オーテックが,平成25年12月20日に,原告の協力企業であるメイワテック株式会社(以下「メイワテック」という。)に対し,ボイラ制御盤等を発注した(甲28)後,本件ボイラ等について は,平成26年2月中旬から製造が開始され(甲15の1),同年3月4日には イワテック株式会社(以下「メイワテック」という。)に対し,ボイラ制御盤等を発注した(甲28)後,本件ボイラ等について は,平成26年2月中旬から製造が開始され(甲15の1),同年3月4日には被- 5 -告オーテックが岩手県知事に対してばい煙発生施設設置届出書を提出し(甲22,31),同年6月から実証実験を行った(甲15の3)。 本件ボイラ等は,熱風発生炉(一次焼却炉)で発生した燃焼ガスを二次燃焼炉(貫流ボイラ)に通して再燃焼させ,その燃焼ガスを温水熱交換器に通して熱を取り出した後,1次集塵機(ダブルサイクロン)で除塵し,さらにバグフィルター式 集塵機で除塵して,煙突から排出し,この間の燃焼ガスをエゼグターファンで吸引するというものであった(甲31・20頁,22頁)。 3 争点(1) 不正競争防止法に基づく損害賠償請求関係(争点1)ア本件技術情報の営業秘密該当性の有無(争点1-1) イ不正使用行為等の有無(争点1-2)ウ原告の損害額(争点1-3)(2) 不法行為に基づく損害賠償請求関係(争点2)ア一般不法行為の成否(争点2-1)イ原告の損害額(争点2-2) 4 争点に関する当事者の主張(1) 争点1-1(本件技術情報の営業秘密該当性の有無)について(原告の主張)ア有用性・非公知性(ア) 有用性 本件設計製造情報のうち,別紙「営業秘密目録1」の1記載の情報は,耐火性,耐久性等と製造コストのバランスが図られるなどした逆燃式燃焼炉を設計製造するための情報,同2記載の情報は,機能性の高い集塵装置を設計製造するための情報,同3記載の情報は,バックファイヤーを防ぎつつ燃料を投入することができる二重扉を設計製造する た逆燃式燃焼炉を設計製造するための情報,同2記載の情報は,機能性の高い集塵装置を設計製造するための情報,同3記載の情報は,バックファイヤーを防ぎつつ燃料を投入することができる二重扉を設計製造するための情報,同4記載の情報は,吸引スピードを適正に制御でき る制御盤を設計製造するための情報である。これらの情報を使用すれば,本来であ- 6 -れば必要があった試行錯誤に伴うコストを掛けずにボイラ及びその関連設備を設計製造することができる。したがって,これらの情報は有用である。 本件図面データは,本件設計製造情報が化体したボイラ及びその関連設備の設計図等という設計製造の基礎となる情報である。これらの情報を使用してボイラ及びその関連設備を設計製造すれば,設計製造に要する費用,時間を大幅に節約するこ とができる。したがって,これらの情報は有用である。 (イ) 非公知性本件設計製造情報及び本件図面データは,公刊物等には記載されておらず,公然と知られていない。 イ秘密管理性 本件図面データは電子データ(CADデータ)として存在するものであり,本件設計製造情報は本件図面データに係る設計図等に化体するものであるところ,本件図面データが保有されているパソコンが原告の事務所内で唯一インターネットに接続されていなかった上,本件図面データへのアクセス権限が被告P1に限定されていたことなどに照らせば,本件技術情報は秘密として管理されていた。そして,逆 燃式ボイラ設備の製造販売業は,原告の事業の根幹を成すものであるから,逆燃式ボイラ設備に関する情報である本件技術情報が重要な情報であることは,原告の役員はもとより従業員でさえも認識していた上,被告P1は,営業秘密の漏洩等を禁じる就業規則を遵守させる立場である取締役の地位にあったことに 関する情報である本件技術情報が重要な情報であることは,原告の役員はもとより従業員でさえも認識していた上,被告P1は,営業秘密の漏洩等を禁じる就業規則を遵守させる立場である取締役の地位にあったことに照らせば,本件技術情報が営業秘密であることを認識していた。したがって,本件技術情報は秘密 管理性を備えている。 (被告P1及び被告P2の主張)ア有用性・非公知性等本件設計製造情報は,いずれも当業者にとって当然の常識であるなど有用性,非公知性を欠くものであるだけでなく,そもそも原告が自ら生産した情報ではない。 このような本件設計製造情報が化体した設計図等に係る情報である本件図面デー- 7 -タも,有用性,非公知性を欠く。また,本件図面データに係る設計図等は,特定の顧客向けのものであるから,これらの情報を使用してボイラ及びその関連設備を設計製造しても,設計製造に要する費用,時間を大幅に節約できるとは限らない。 イ秘密管理性本件図面データにパスワードが設定されていなかったことはもとより,本件図面 データが保有されているパソコンにもログインパスワードが設定されておらず,本件図面データにアクセスするのが被告P1に限られていたというのは,他の従業員にアクセス制限を掛けていたわけではなく,単にこれを利用するのが被告P1だけであったにいうにすぎない。また,被告P1は,原告から,本件図面データの持出しを禁止されておらず,本件技術情報が営業秘密であるとは認識していなかった。 したがって,本件技術情報は秘密管理性を備えていない。 (被告オーテックらの主張)原告の主張は否認ないし争う。 (2) 争点1-2(不正使用行為等の有無)について(原告の主張) 被告オーテックが本件林野庁事業に関 い。 (被告オーテックらの主張)原告の主張は否認ないし争う。 (2) 争点1-2(不正使用行為等の有無)について(原告の主張) 被告オーテックが本件林野庁事業に関するボイラを設置するに当たって岩手県知事に提出した届出書(甲31)に別紙として添付されている被告P1が作成した設計図等を,本件図面データに係る設計図のうち同記載②,⑤ないし⑨の設計図等と照らし合わせると,同一であるか,ささいな部分が改変されているにすぎないことに照らせば,本件ボイラ等に被告P1が持ち出した本件技術情報が記録された本件 図面データが使用されたことは明らかである。 これを被告P1に着目すれば,不正競争防止法2条1項4号(少なくとも同項7号,不正開示及び不正使用〔少なくとも不正使用〕)違反の事実が認められる。その余の被告らに着目すれば,被告オーテック及び被告バイオパワーはもとより,被告オーテックの技術顧問であり,被告P1と密接に連絡を取り合っていた被告P2, 被告バイオパワーの代表者であった被告P3及び被告P4並びに被告バイオパワー- 8 -の取締役であり,被告P1と接触のあった被告P5についても,同項5号(少なくとも同項8号。被告オーテックについては悪意の転得者による不正使用,その余の被告については悪意又は重過失の転得者による不正使用)違反の事実が認められる。 (被告P1の主張)被告P1は,甲31に別紙として添付されている設計図等を作成するに当たって, 本件図面データに係る設計図等を流用したわけではなく,改めて描き起こしており,本件技術情報の不正使用行為はない。被告P1が原告において設計図等の作成を担当していたことに照らせば,甲31に別紙として添付されている設計図等が本件図面データに係る設計図等と類 て描き起こしており,本件技術情報の不正使用行為はない。被告P1が原告において設計図等の作成を担当していたことに照らせば,甲31に別紙として添付されている設計図等が本件図面データに係る設計図等と類似するのは当然である。 (被告P2及び被告オーテックらの主張) 原告の主張は否認ないし争う。 (3) 争点1-3(原告の損害額)について(原告の主張)ア逸失利益被告らの不正使用行為がなければ,原告が本件ボイラ等の製造販売を受注してい たはずである。原告が従前提示していた見積額である2億3393万5000円から既に販売済みであったボイラの代金2400万円を控除した額に,原告の設定利益率である25パーセントを乗じた5248万3750円が,原告の逸失利益である。 イ弁護士費用相当額 本件の弁護士費用相当額は,500万円である。 (被告らの主張)原告の主張は否認ないし争う。 (4) 争点2-1(一般不法行為の成否)について(原告の主張) 原告が,平成23年10月以降,本件震災瓦礫処理事業等の実施に必要な技術情- 9 -報を提供するなど1年以上の長期間にわたって同事業のメンバーとして同事業に緊密に関与し,平成24年11月には同事業に関するボイラの具体的な見積書を提示し,発注されれば製造を直ちに開始できる状況にあったことに照らせば,原告がボイラを製造,販売して得られる利益は,既に法的保護に値する段階にまで至っていた。その後も同事業は進展し,被告オーテックが,平成25年7月に,林野庁の委 託事業の補助金を得るため,本件震災瓦礫処理事業等の人的・物的資源を流用した事業を林野庁の委託事業に応募したところ,これが委託事業として採択された結果,同事業に ,平成25年7月に,林野庁の委 託事業の補助金を得るため,本件震災瓦礫処理事業等の人的・物的資源を流用した事業を林野庁の委託事業に応募したところ,これが委託事業として採択された結果,同事業に関するボイラが必要となったことに照らせば,原告が本件震災瓦礫処理事業等のメンバーであり続けていれば,原告が同ボイラの製造を受注していたはずであるから,原告が同ボイラを製造,販売して得られる利益も,法的保護に値する。 ところが,被告らは,原告を除外して被告らだけで本件林野庁事業を遂行し,原告に対価を支払うことなくボイラを製造するため,原告に本件震災瓦礫処理事業等が頓挫したという嘘の報告をして原告を同事業のメンバーから除外するとともに,被告P1を原告から引き抜き,原告から無断で持ち出させた設計図等のデータを本件ボイラ等に盗用するとともに,原告を介してでなければ取得できなかったはずの 原告の協力企業の技術やノウハウも盗用して,本件ボイラ等を製造した。こうした原告の上記利益を侵害した被告らの一連の行為態様は,社会通念上自由競争の範囲を逸脱したものである。 (被告らの主張)ア原告の主張は争う。 イ原告は,被告らとの間で,バイオマスボイラを利用した発電等の事業に用いるボイラについて,必ず受注できるという合意をしていたわけではない。本件震災瓦礫処理事業等が頓挫したのは虚偽ではなく,同事業等が頓挫した後に原告と被告らが行っていた活動は,新たな事業を展開するための営業活動にすぎない。本件ボイラ等には被告P2が有する特許権に係る発明の技術が用いる必要があったの であり,原告が被告らと決別していなかったとしても,その設計製造が原告に発注- 10 -されることはなかった。 被告P1が原告を辞めた経緯や,本件 に係る発明の技術が用いる必要があったの であり,原告が被告らと決別していなかったとしても,その設計製造が原告に発注- 10 -されることはなかった。 被告P1が原告を辞めた経緯や,本件ボイラ等の設計に当たって本件図面データを利用した点には社会的相当性を欠くところはない。 (5) 争点2-2(原告の損害額)について(原告の主張) ア逸失利益被告らの不法行為がなければ,原告が本件ボイラ等の製造販売を受注していたはずである。原告が従前提示していた見積額である2億3393万5000円から既に販売済みであったボイラの代金2400万円を控除した額に,原告の設定利益率である25パーセントを乗じた5248万3750円が,原告の逸失利益である。 イ弁護士費用相当額本件の弁護士費用相当額は,500万円である。 (被告らの主張)原告の主張は否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1-1(本件技術情報の営業秘密該当性の有無)のうち秘密管理性について(1) 原告の業務体制と本件技術情報の管理状況について前提事実に加え,後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア原告は,原告代表者,被告P1及びP6が力工業から独立して設立した 会社である。力工業は,逆燃式燃焼炉を製造販売しており,原告代表者が営業部長で,被告P1が据付け等を担当し,P6が設計等を担当しており,他にP7が据付けや図面作成を担当していた(乙A16,証人P7)。 力工業のRG型逆燃式燃焼炉は,逆燃式燃焼炉で発生した燃焼ガスをボイラに通して熱交換した後,サイクロン分離器等の集塵器によって除塵して排気するという もので,それらの燃焼ガスをブロワーによって吸引するという 逆燃式燃焼炉は,逆燃式燃焼炉で発生した燃焼ガスをボイラに通して熱交換した後,サイクロン分離器等の集塵器によって除塵して排気するという もので,それらの燃焼ガスをブロワーによって吸引するというものであった(乙A- 11 -2)。 イ原告は,設立後,当初は力工業が製造した逆燃式燃焼炉のメンテナンスを主たる業務としていたが,その後逆燃式のバイオマスボイラの製造販売を行うようになり,当初はP6が設計を担当し,P6の退社後は,力工業の同僚であったP8やP9が入社して設計を担当するようになった。被告P1は,当初は据付けや製 造発注を担当していたが,その後,既存の図面を参考にして設計図面の作成も行うようになり,その際には,原告が相当程度保有していた力工業の図面を参考にすることもあった(原告代表者,乙A16,被告P1。なお,原告が力工業の図面を相当程度保有していたことについては,①原告のカタログの図面[乙A1]が力工業のカタログの図面[乙A2]と同一であり,原告代表者本人もこれについては力工 業の図面を使用したと述べていること,②原告が力工業の製造に係る燃焼炉のメンテナンスを行うにはその図面が必要であると考えられること,③原告は実際に力工業の燃焼炉の図面を保有していること[甲65],④特に被告P1本人は後記のP10の装置のサイクロン図面[甲26]について,力工業の図面を参考にして教科書的な寸法と異なるものとしたと述べており,この供述は具体的で信用し得ること から,上記のとおり認めるのが相当である。)。 ウ原告は,平成21年頃にCADシステムを導入したところ,同年から被告P1が原告の取締役を退任する平成24年までの間において,原告には2名の役員,6名ないし7名の従業員がいて,設計業務は被告P11名の体制又は被告 21年頃にCADシステムを導入したところ,同年から被告P1が原告の取締役を退任する平成24年までの間において,原告には2名の役員,6名ないし7名の従業員がいて,設計業務は被告P11名の体制又は被告P1及び別の従業員の2名体制で担当されていたものの,CADシステムを利用した製 図業務を行うのは被告P1だけであった(甲87,原告代表者本人,弁論の全趣旨)。 原告の社屋の1階には作業場,2階には社長室兼応接室,事務室及び製図室がある(甲62,87)。原告の社屋に置かれたパソコンの中で,CADシステムが利用できるパソコンは製図室に置かれた1台のパソコン(以下「本件PC」とい う。)だけであり,本件技術情報のうちCADデータである本件図面データは,本- 12 -件PCだけで電子データとして管理されていた(甲87,弁論の全趣旨)。本件PCは,これを起動させるためにパスワードを入力する必要はなかった一方,インターネットに接続されておらず,社内の他のパソコンとの間でファイル共有もされていなかった。原告代表者がそのようにした理由は,インターネットに接続したら情報が漏洩するおそれがあるとの事務機器業者の助言に従ったからであるが,原告代 表者は,被告P1に対し,本件PCをインターネットに接続していない趣旨について説明したことはなかった(甲87,乙A16,原告代表者,被告P1本人,弁論の全趣旨)。また,本件図面データにアクセスするためにパスワードを入力する必要はなかった(被告P1本人)。 被告P1は,本件PCからCADデータを持ち帰り,自宅のパソコンで製図業務 を行うこともあった(乙A16)ところ,原告代表者は,被告P1に対し,本件PCからCADデータを持ち出してはならないなどといった指示を出すことはなかった(乙A16,弁論 のパソコンで製図業務 を行うこともあった(乙A16)ところ,原告代表者は,被告P1に対し,本件PCからCADデータを持ち出してはならないなどといった指示を出すことはなかった(乙A16,弁論の全趣旨)。 エ原告が従業員と取り交わす従業員就業規則(甲63)には,「会社…の営業秘密…を本来の目的以外に利用,漏洩(毀損,複写等を含む)し…ないこと」 という規定が置かれていた。 また,原告が客先に渡す図面は全体の配置図のみであり,詳細図は渡すことはなかった(原告代表者,被告P1)。 (2) 本件設計製造情報(別紙営業秘密目録1)について次に,本件技術情報の秘密管理性を検討する前提として,本件設計製造情報の内 容を検討しておくこととする。 ア燃焼炉には上燃式と逆燃式があり,上燃式燃焼炉が,上から燃料を投入してロストルの上側の燃焼室で燃焼させ,燃焼室の上から燃焼ガスを排出するのに対し,逆燃式は,ロストルの上側の燃焼室で発生させた燃焼ガスを,ブロワーにより,ロストルの穴を通じて下側の煙道,さらにボイラへと吸引する方式であり,安 定した燃焼が得られる利点がある(原告代表者)。 - 13 -前記のとおり,逆燃式燃焼炉は,既に力工業において製造販売していた。 イ別紙営業秘密目録1の1(1)アは,この燃焼炉内の耐火煉瓦の構造に関するものであり,甲24の設計図(RG3500,被告P1作成)に記載されているものである。 燃焼炉内の耐火煉瓦の番手を2段階から4段階と使い分けることは力工業でも行 われていたことであり,その場合の煉瓦の選択は,燃焼炉の内部温度と各番手の耐火温度の規格により適宜行われることである(証人P7)。そうすると,この設計製造情報は,特定の燃焼炉が念頭に置く燃焼温度の下での耐火煉瓦の であり,その場合の煉瓦の選択は,燃焼炉の内部温度と各番手の耐火温度の規格により適宜行われることである(証人P7)。そうすると,この設計製造情報は,特定の燃焼炉が念頭に置く燃焼温度の下での耐火煉瓦の具体的組合せとしての有用性を有するものの,同業他社も適宜設定し得る性質のものであるというべきである。 ウ別紙営業秘密目録1の1(1)イは,この燃焼炉内の断熱の方法に関するものであり,甲24の設計図(RG3500,被告P1作成)に記載されているものである。 力工業時代に使用されていた断熱材はイソライトであるが,その後にシリカボードが断熱材として登場し,P7の会社でも断熱材としてシリカボードを使用してお り,その厚さも市販品の規格であるにすぎない(乙A12,証人P7)から,この断熱方法は業界内で公知の方法であるといえる。しかし,燃焼炉の下部と中・上部とで断熱材を変えることまでが同業他社内で知られた方法であるとまでは認められない。 エ別紙営業秘密目録1の1(2)アは,燃焼炉の全幅に関するものであり,甲 24の設計図(RG3500,被告P1作成)に記載されているものである。 燃焼炉の全幅は,力工業時代は大型トラックで運べるように2500mm以下にしており,P7の会社では2200mm以下にしている(乙A12)。このように,据付け時の運搬に便利なように全幅を決めるというのは力工業時代からある発想であるから,この設計製造情報は,使用するトラックの大きさに応じて,同業他社も適 宜設定し得る性質のものであるというべきである。 - 14 -オ別紙営業秘密目録1の1(2)ウについては,燃焼炉の大きさを決定するのにこのような考え方で行うことは,原告代表者自身が公式であると述べるとおり,公知の方法であると認められる - 14 -オ別紙営業秘密目録1の1(2)ウについては,燃焼炉の大きさを決定するのにこのような考え方で行うことは,原告代表者自身が公式であると述べるとおり,公知の方法であると認められる。 カ別紙営業秘密目録1の1(2)イは,同(3)イ及び同1(4)アないしウに関連しており,各数値や構造は甲24の設計図(RG3500,被告P1作成)に記載 されているものである。 すなわち,上記オの公式によって決定される炉の大きさは,全幅については別紙営業秘密目録1(2)アを上限とし,奥行きについては,一定形状・寸法(同1(4)ア及びイ)のロストルを用い,小部屋(煙道)の幅及び高さを炉の大きさに依らず一定(同1(3)イ,被告P1)としつつ,このロストルを奥行き方向にいくつ連結するか で設計される(同1(4)ウ)。そして,円弧型の反りをつけた形状のロストルとすることは,力工業でも行われていたが,力工業では,炉の大きさにより大きさを決めた煙道の上部全体に煉瓦をアーチ状に組み,ところどころ煉瓦を抜いて製造したものであった(証人P7)のに対し,原告では,単位化した円弧型のロストルを,炉の奥行き方向に連結して製造するものである。これにより,炉の設計・製造効率を高 めることができ(被告P1),これが同業他社内で公知であったとは認められない。 キ別紙営業秘密目録1の1(3)アは,小部屋(煙道)の耐火煉瓦の構造に関するものであり,甲24の設計図(R3500,被告P1作成)に記載されているものであるが,耐火煉瓦の選択の有用性については,上記イに述べたとおりである。 また,耐火煉瓦の幅は市販品そのままであるものの,積む段数は,同1(3)イの小部 屋の高さを一定とすることに関連しており,この点で意味があるといえるが,これ自体は必要 イに述べたとおりである。 また,耐火煉瓦の幅は市販品そのままであるものの,積む段数は,同1(3)イの小部 屋の高さを一定とすることに関連しており,この点で意味があるといえるが,これ自体は必要な燃焼炉の大きさに応じて同業他社が適宜設定し得るものである(証人P7)。 ク別紙営業秘密目録1の1(3)ウは,甲24の設計図(RG3500,被告P1作成)に記載されているものである。 しかし,断熱材としてイソライトを用いることは従来から行われていたことであ- 15 -り,その厚さも既製品の規格である(証人P7)から,公知の断熱方法である。ただし,前記ウのとおり,燃焼炉の下部と中・上部とで断熱材を変えることまでが同業他社内で知られた方法であるとまでは認められない。 ケ別紙営業秘密目録1の1(4)エは,ロストルの耐火材に関するものであり,甲24の設計図(R3500,被告P1作成)に記載されているものである。 ロストルの耐火材は,一般に,必要な耐火温度と強度に対応して選択されるものであり(乙A12),ここに記載される耐火材もそのような選択の範囲のものである。そのため,甲24が想定する耐火温度と強度の下で適した耐火材を特定しており,有用性を有するといえるといっても,その重要性には限度がある。 コ別紙営業秘密目録1の2(1)は,甲25の設計図(被告P1作成)に記載 されているものであるが,ばい煙を排出する設備においては当然に求められることであるから,公知のことであると認められる。 サ別紙営業秘密目録1の2(2)は,甲26の設計図(P10向け,被告P1作成)に記載されているものであるが,アの構造は,サイクロン型の集塵機としては通常備える構造であり,イの構造は,力工業でも用いられていたものである(証 は,甲26の設計図(P10向け,被告P1作成)に記載されているものであるが,アの構造は,サイクロン型の集塵機としては通常備える構造であり,イの構造は,力工業でも用いられていたものである(証 人P7)から,公知のものである。 シ別紙営業秘密目録1の3は,ばい煙防止のための法規制に対応して求められるもので,他社でもとられているものである(乙A14,証人P7)から,公知のものである。 ス別紙営業秘密目録1の4は,原告向けに製造された特定の制御盤のこと をいうものと解されるが,その内容は明らかでなく,また,被告P1は,これを使用していない(被告P1)。 (3) 本件図面データの秘密管理性についてア当該情報が「秘密として管理されている」(不正競争防止法2条6項)というためには,その保有者が主観的に秘密にしておく意思を有しているだけでな く,当該情報にアクセスした者に当該情報が営業秘密であることを認識できるよう- 16 -にするための措置を採っていることが必要となると解するのが相当である。 イ上記(1)によれば,原告においては,本件図面データにアクセスできる者は特に制限されておらず,原告の役員又は従業員であれば誰でも見たり持ち出したりすることができ,CADシステムを利用して製図業務を行う被告P1に対して,これを利用して作成した設計図等が営業秘密であることを示したり,秘密を守るよ う指導したりしていたわけでもなく,また被告P1自身も本件図面データが秘密であることを前提とする行動を取っていたとも認められないから,本件図面データが営業秘密であることを認識できるようにするための措置が採られていなかったと認められる。確かに原告は小規模な会社であるから,厳格な手段によらずとも,社内の人間に本件図面データが から,本件図面データが営業秘密であることを認識できるようにするための措置が採られていなかったと認められる。確かに原告は小規模な会社であるから,厳格な手段によらずとも,社内の人間に本件図面データが秘密であることを認識させることは可能であると思われ るが,そのことを前提としてもなお,本件図面データが営業秘密であることを認識できるようにするための措置が採られていなかったというべきである。 したがって,本件図面データについては秘密管理性を欠く。 ウこれに対し,原告は,①本件図面データが他の情報とは区別されて本件PCにのみ保管されていたこと,②本件PCが情報漏洩への配慮からインターネッ トに接続されていなかったこと,③本件図面データへのアクセス権限が被告P1に限定されていたこと,④本件技術情報の重要性の高さ,⑤被告P1が就業規則を遵守させる立場である取締役の地位にあったことを指摘して,本件技術情報が客観的に秘密として管理されていると認められる状態にあったと主張する。 しかし,まず,①についてみると,本件図面データは,製図室でのみ必要なデー タであるから,単に同室のパソコンにのみ保管されていたからといって,当然にそれを秘密にする趣旨であると認識し得るとはいえない。 次に,②についてみると,原告代表者は,本件図面データを秘密にしておく意思を有していたからこそ,本件PCがインターネットに接続しないようにしていたと認められるが,原告代表者は被告P1に本件PCをインターネットに接続していな い趣旨を伝えてはいない。また,被告P1が自宅でCADシステムを利用した製図- 17 -業務を行う場合に使用しているパソコンもインターネットに接続されていないものの,その理由が,CADデータが原告の営業秘密であると被告P1が認識し 1が自宅でCADシステムを利用した製図- 17 -業務を行う場合に使用しているパソコンもインターネットに接続されていないものの,その理由が,CADデータが原告の営業秘密であると被告P1が認識していることにあるとまでは認められない(被告P1本人)。したがって,本件PCがインターネットに接続されていなかったことをもって,本件図面データにアクセスした者に本件図面データが営業秘密であることを認識できるようにしていたと評価する ことはできない。なお,原告では,客先に詳細図面を交付しなかったが,その趣旨は必ずしも明らかではなく,社内で何らかの説明がされたともうかがわれないから,その点をもって,本件図面データが営業秘密であることを認識できるようにしていたと評価することもできない。 次に,③についてみると,本件図面データは,原告における業務分担からして, CADシステムを利用した製図業務を担当しない被告P1以外の者が見る必要はないものであったにすぎない上,パスワードの設定状況からして,被告P1以外の者が見ることができないものではなかったのであるから,本件図面データに被告P1以外の従業員がアクセスしなかったとしても,それは事実上のことにすぎず,被告P1以外の者が見ることを禁止されていたと認めるに足りる証拠はない。したがっ て,本件図面データへのアクセス権限が被告P1に限定されていたという原告の主張は前提を誤るものである。また,原告代表者は,その陳述書(甲87)において,他の従業員らは本件PCには重要な情報が入っているから触ろうとしなかったと述べるが,設計図の重要性は,それを修正しながら新たな設計図を作成することにより作業の省力化を図ることができるという点や,メンテナンス時の資料となるとい う点にもあるのであり,原告の従業員が 述べるが,設計図の重要性は,それを修正しながら新たな設計図を作成することにより作業の省力化を図ることができるという点や,メンテナンス時の資料となるとい う点にもあるのであり,原告の従業員が上記のような行動をとった理由も,操作を誤って消去する可能性をおそれたためであるというのであるから,それをもって他の従業員のアクセスが制限されていたとも認められない。 続いて,④についてみると,本件図面データは,原告の下で作成された設計図等の電子データであり,本件設計製造情報が化体しているものである。しかし,先に 見たとおり,本件設計製造情報には,同業他社の間で公知のものや,同業他社も適- 18 -宜設定し得る性質のものが多く含まれている上,被告P1が本件図面データを作成するに当たっては,力工業の図面を参考にしたものもあるから,内容的に同業他社に対して当然に秘密とすべきものとの認識が生じるものであるとはいい難い。また,被告P1が設計した本件ボイラ等は,原告が製造したボイラの半分程度の性能しか有しなかったが,その理由は,使用する燃焼材料がバークやタンコロといった含水 率の高く燃焼しにくいものであるにもかかわらず,それに対する配慮を欠いたまま原告におけるのと同様の設計をしたためであり(甲89,原告代表者),このことからすると,被告P1の逆燃式燃焼炉やボイラについての技術的理解はさほど高いものではなかったことがうかがわれるから,本件設計製造情報の中には原告独自のものも若干含まれているものの,それが当然に秘密にするほど重要なものであると の認識が生じていなかったとしても不合理ではない。さらに,そもそも不正競争防止法が営業秘密のうち法の保護に値するものを区別するための要件として秘密管理性を特に要求していることに照らせば,本件図面データ 認識が生じていなかったとしても不合理ではない。さらに,そもそも不正競争防止法が営業秘密のうち法の保護に値するものを区別するための要件として秘密管理性を特に要求していることに照らせば,本件図面データの性質から本件図面データが原告の営業秘密であることを当然認識できたはずであるというだけでは,法の保護を求めるための事情としては不十分である。 最後に,⑤についてみると,確かに被告P1は,従業員に就業規則を遵守させるべき取締役の地位にあったが,それは,社内で営業秘密として取り扱われている事項についてのことである。そして,その就業規則でも対象となる秘密を特定しているわけではなく,被告P1自身も本件図面データが秘密であるとの認識を有していたとも認められず,他に原告の社内において本件図面データが営業秘密であること を認識できるようにする措置を採っていたとも認められないから,被告P1が取締役であった点や就業規則が営業秘密の漏洩等を禁止していたことをもって,秘密管理のための措置を採っていた事情として評価できるものではない。 以上によれば,原告が指摘する事情は,本件図面データについて秘密管理性を欠くという結論を左右するものではない。 (4) 本件設計製造情報の秘密管理性について- 19 -原告は,本件設計製造情報について,本件図面データに化体していると主張し,このことを前提としてその秘密管理性についても主張している。 しかし,本件設計製造情報について,本件図面データと離れて,それが営業秘密であることを認識できるようにするための何かしらの措置が採られていたと認めるに足りる証拠がない。したがって,本件図面データと同様に,本件設計製造情報に ついても秘密管理性を欠くというべきである。 (5) 以上より,その余の点につい かしらの措置が採られていたと認めるに足りる証拠がない。したがって,本件図面データと同様に,本件設計製造情報に ついても秘密管理性を欠くというべきである。 (5) 以上より,その余の点について判断するまでもなく,不正競争防止法に基づく主位的請求は理由がない。 2 争点2-1(一般不法行為の成否)について(1) 判断の基礎となる事実関係 前提事実のほか,後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実関係が認められる。 ア本件農水省事業1プレス製品の製造販売業を営んでいた被告オーテックは,しいたけの生産等の事業に乗り出し,平成21年5月には農業生産法人の認定を受けるに至っていたが, そのための新たなボイラの購入資金の調達に悩んでおり,従来からボイラ関係で原告に相談していた。他方,原告は,被告P2がえのきだけの廃菌床等の燃料化を研究していた関係で,それに用いるボイラについて被告P2と関係があり,被告P2は公的機関から補助金を獲得するノウハウを有しているとされていた。そこで,原告が被告オーテックに被告P2を紹介したところ,被告P2は,被告オーテックに 対し,しいたけの生産事業を農水省のバイオマス補助事業にすることを勧めたため,被告オーテックは被告P2を同社の技術顧問とした(被告P2)。そして,平成23年6月,被告オーテックを研究統括者とする「ポリ含有廃菌床の再生燃料化利用によるエネルギー自給型シイタケ生産システムの確立」と題する研究(上記研究に係る事業が本件農水省事業である。)が,農林水産省の研究補助事業である「平成 23年度新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業」に採択された(甲37,- 20 -乙C3)。 本件農水省事業は,ポリエチレン袋を使用したしいたけ栽培に伴って排出される ある「平成 23年度新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業」に採択された(甲37,- 20 -乙C3)。 本件農水省事業は,ポリエチレン袋を使用したしいたけ栽培に伴って排出されるポリ含有廃菌床の燃料化装置とそれを用いた熱媒ボイラの開発・実用化等を研究目的とするものであり,①研究期間は3年間,②原告の役割は,装置の設計・製作,燃料技術の提供する形での支援などと予定されており,岩手大学工学部及び独立行 政法人農業・食品産業技術総合研究機構(東北農業研究センター)が共同研究機関,株式会社北研,岩手県森林組合連合会,花巻農業協同組合,原告及び被告さつきが普及支援担当とされていた(甲37)。また,普及に関する計画として,地域バイオマスの利活用によるエネルギー自給型シイタケ栽培システムの普及を行うこととされていた(甲37)。 これに基づき,関係者による検討会が開催され,同年8月30日の第2回研究会では,同年8月から10月にかけて,原告が熱媒ボイラ等の設計製造を行う予定とされた(甲81)。 イ本件震災瓦礫処理事業等1(ア) 釜石市は,平成23年7月に「釜石市復興まちづくり基本計画」を策 定発表するなど,片岸地区等の唐丹地域を始めとする被災地域の早期復興と新しい町づくりに向けた施策を進めようと考えていた(甲7)ところ,被告オーテック及び被告さつきは,同年8月23日に,釜石市に対し,本件震災瓦礫処理事業等の企画を提案した。本件震災瓦礫処理事業等の企画は,①事業主体として設立する予定である被告バイオパワーが釜石市から震災瓦礫処理事業を受注した上で,購入する 予定である片岸地区の土地の瓦礫を木質バイオマス,コンクリ塊及び汚泥の3種類に分別し,ⅰコンクリ塊については,これを破砕して農地整備のため が釜石市から震災瓦礫処理事業を受注した上で,購入する 予定である片岸地区の土地の瓦礫を木質バイオマス,コンクリ塊及び汚泥の3種類に分別し,ⅰコンクリ塊については,これを破砕して農地整備のための盛土原料とし,ⅱ汚泥については,コンクリ塊と同様に盛土原料としたり,煉瓦を作るための原料としたりし,ⅲ木質バイオマスについては,これをバイオマス発電の燃料とし,その熱エネルギーを利用したしいたけ栽培を行ったり,他と同様に盛土原料や煉瓦 を作るための原料としたりする,②震災瓦礫処理事業後においては,廃菌床,間伐- 21 -材及びバーグ材等を燃料とするバイオマス発電事業を行うとともに,パームヤシ廃棄物の有効活用が課題となっているインドネシアに技術提供を行うなどという内容であり,被告オーテック及び被告さつきが中心となって設立する被告バイオパワー及び釜石きのこ産業株式会社が事業主体,岩手大学工学部,独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構,株式会社北研及び原告が技術支援,釜石市,岩手県及び 国(林野庁)が行政支援,株式会社三菱総合研究所(以下「三菱総研」という。)及び蔵建築設計事務所等が企画コンサルを担当するとされていた(甲9)。 被告オーテック及び被告さつきは,同年10月31日,釜石市との間で,釜石市が,被告バイオパワーが片岸地区の浸水地に菌床シイタケの栽培工場を円滑に建設できるよう協力するなどという内容の「工場立地に関する協定書」を取り交わし (乙C4),工場の発電や植え付け前の菌床の殺菌に木質バイオマスボイラを使用し,燃料に廃菌床や瓦礫を使用することや,浸水地の造成には瓦礫等の産業廃棄物を活用する見込みとされた(甲33)。この数日前の同月27日,被告オーテックの被告P3は,原告,被告さつきの被告P4及び被告P5らに対し, 床や瓦礫を使用することや,浸水地の造成には瓦礫等の産業廃棄物を活用する見込みとされた(甲33)。この数日前の同月27日,被告オーテックの被告P3は,原告,被告さつきの被告P4及び被告P5らに対し,「とうとう始まります。皆様のご協力をお願い致します。」とのメールを送った(甲38)。 その後,被告バイオパワーは,同年11月24日に設立され,被告P3,被告P4,被告P1,被告P5らが取締役に就任した。 (イ) しかし,被告オーテック,被告さつき及び被告バイオパワーは,事前の見込みに反して同年12月26日に実施された釜石市災害廃棄物処理事業の入札について入札資格がなかったことから,これを落札することができなかった(落札 業者は,大成建設グループであった。乙B4)。 ウその後1(ア) (契約締結に至る経緯については争いがあるものの)被告さつきは,平成24年1月6日,原告に対し,RV三重連式ボイラ(ボイラ部のみ)小型貫流式ボイラ3台×2式(以下「本件ボイラ部」という。)を2400万円(単価12 00万円)で注文した(甲12)。 - 22 -(イ) 三菱総研の担当者は,平成24年1月11日,「釜石プロジェクト」に関するメーリングリストを作成したとして,被告さつきの担当者,被告オーテックの被告P3,原告の被告P1,蔵建築設計事務所の担当者及び三菱総研の複数の担当者宛てにメールを送信した(甲41,42)。 エ本件農水省事業2 被告バイオパワーは,平成24年2月22日には用地賃貸契約を締結し,同月29日には釜石市片岸地区地権者協議会との間で業務協定書を締結し,震災瓦礫の木質バイオマスの発電や津波堆積物の利活用施設の同意を得ることができた。これは,本件農水省事業による研究を普及するため 同月29日には釜石市片岸地区地権者協議会との間で業務協定書を締結し,震災瓦礫の木質バイオマスの発電や津波堆積物の利活用施設の同意を得ることができた。これは,本件農水省事業による研究を普及するための事業展開と位置付けられている(甲73)。 原告は,本件農水省事業に利用する熱媒ボイラ等を設計製作し,同月頃までに据付けを完了させた(甲73の3,86)。 オその後2(ア) 平成24年4月6日,被告P3,被告P5,被告P2らを取締役とするさつき企画設計株式会社(以下「さつき企画設計」という。)が設立された(甲 5)。 (イ) 原告は,同年4月から5月にかけて,被告さつきに本件ボイラ部を納品した(甲31)(ウ) スチームスターという発電機を取り扱う神鋼商事株式会社(以下「神鋼商事」という。)の担当者は,同年5月12日,被告P2に対し,スチームスタ ーという発電機を用いてバイナリー発電を行うことについて,被告さつきへの見積書を作成しているが,問題があるとして,ボイラ及び発電機に関する方針を問い合わせた(甲44)。 (エ) 被告P2は,同月28日,発明の名称を「放射性物質を含有した焼却灰の処理方法及び処理固形物」とする特許の出願をした(乙B6)。 (オ) 神鋼商事は,同年6月11日,被告P2に対し,会議結果として平成- 23 -25年2月までに稼働させる方針を明示した上,被告P1と打ち合わせてボイラ及び発電機に関する方針を確認するよう再度問い合わせた(甲44)。 カ本件経産省事業被告オーテックは,平成24年7月頃,提案していた「シラスバルーンを用いた省エネ施設でエネルギー自給型菌床シイタケ通年栽培の確立」という実証事業(以 下「本件経産省事業」という。 件経産省事業被告オーテックは,平成24年7月頃,提案していた「シラスバルーンを用いた省エネ施設でエネルギー自給型菌床シイタケ通年栽培の確立」という実証事業(以 下「本件経産省事業」という。)が経済産業省の補助事業に採用された(乙B9,弁論の全趣旨)。本件経産省事業は,シラスバルーンという断熱効果を有する軽量の鋼材を用いた省エネ施設でしいたけの栽培を行うという事業である(被告P2)。 なお,この事業のためのボイラは原告が設置しており,原告は,同年9月24日,被告バイオパワーの担当者の求めに応じて,ボイラの設置届に関する資料として, 「ばい煙発生施設変更届出書」を送付した(甲29,35,原告代表者,被告P2)。 キその後3神鋼商事の担当者は,平成24年7月27日,原告本社を訪問した(甲45)。 九州産業株式会社は,同年8月21日付けで,原告の被告P1宛てに,「釜石向け 集塵機の見積書と参考図」を送付した(甲80)。原告は,同年9月10日,被告さつきに対し,納品場所を「釜石市内」として,RVS5000型三重連式ボイラ2式の代金が1億7000万円(単価8500万円)などとする見積書を送付した(甲77)。原告は,同月16日,被告さつきに対し,納品場所を「釜石市内」として,RG5000型3t/hバイオマスボイラ1式の代金が6000万円などと するとともに,参考と記載した見積書を送付した(甲78)。神鋼商事の担当者は,同月19日,被告バイオパワーの担当者に対し,原告の被告P1から受領した「釜石発電機付きボイラー設備図面」を基に,発電機のフロー案(スチームスターという発電機を用いてバイナリ―発電を行うことなどを内容とするもの)を作成したとして,被告P1作成名義に係る同月13日付けの「釜石発電機付きボイラー図面」 ,発電機のフロー案(スチームスターという発電機を用いてバイナリ―発電を行うことなどを内容とするもの)を作成したとして,被告P1作成名義に係る同月13日付けの「釜石発電機付きボイラー図面」 などを送付した(甲47)。 - 24 -被告バイオパワーの担当者は,平成24年9月21日,被告オーテックに対し,前日の「作業日報」を送付して確認を求めており,その「作業日報」には,被告P1との関係では,被告P1に連絡を取ってボイラの台数,金額,工場の図面等を送付するよう記載されていた(甲48)。被告P1は,同日,被告バイオパワーの担当者に対し,同月10日に被告さつきに対して送付した見積書とボイラ及び関係設 備の配置図を送付した(甲49)。神鋼商事の関係者は,同月28日にはバイオマス発電ボイラを建設予定地とされている場所を訪れ,同月30日には被告バイオパワーの担当者に対して発電機(スチームスターという発電機を用いてバイナリ―発電を行う。)については同年11月中旬の発注予定であると聞いていると伝えており(甲50),被告P1の予定も踏まえて調整された同年10月30日及び同月3 1日に,被告バイオパワーの担当者,三菱総研の担当者,原告の被告P1らが集まって,神鋼商事の関係先で発電機(スチームスターという発電機を用いてバイナリ―発電を行う。)の見学等が行われた(甲51,52)。原告の被告P1に対し,同年11月7日には,神鋼商事の担当者が作成した発電機の仕様書及び見積書を送付して検討を依頼し(甲53),同月15日には,被告オーテックが「釜石片岸地 区しいたけ生産試験施設」の図面を送付して検討を依頼した(甲54)。原告は,同日,被告さつきに対し,納品場所を「釜石市内」として,RVS3500型三重連式ボイラ2式の代金が1億4400万円(単 区しいたけ生産試験施設」の図面を送付して検討を依頼した(甲54)。原告は,同日,被告さつきに対し,納品場所を「釜石市内」として,RVS3500型三重連式ボイラ2式の代金が1億4400万円(単価7200万円)などとする見積書を送付した(甲11)。 しかし,同月16日,被告バイオパワーの担当者,原告の被告P1,三菱総研の 担当者,神鋼商事の関係者等が話合いの場を持った結果,関係者の認識に齟齬があることが分かり,原告の担当がボイラ等の製造であることで良いかなど,それぞれの役割分担を確認することとした(甲55)。原告の被告P1は,同月20日,三菱総研の担当者に対し,同月15日に被告さつきに送付した見積書とボイラの配置図を送付した(甲18,57,58)。神鋼商事の担当者は,同月22日,原告本 社を訪問した(甲56)。 - 25 -ク本件震災瓦礫処理事業等に関する報告及び被告P1の原告からの退職平成24年12月20日,原告代表者,被告P1及び被告P2による話合いが行われた。その結果,①発電用ボイラについては,前売り納品済みである貫流ボイラ6缶分の前炉及び後処理施設を原告が製造し,平成25年3月に2基,同年5月に1基,同年9月に2基の予定で納品する,②被告P1については,平成25年1月 1日から移籍することとするものの,少なくとも同年3月末までは引継ぎ期間とすることが協議された(甲61。なお,被告P1及び被告P2は,同日におけるこれらのやり取りを否定するが,この直後に被告P2が原告に対して送った後記甲13のメールにおいて,原告への発注を前提としていることから,甲61は信用することができる。)。 なお,被告P2は,従前,被告P1から,原告代表者が癌のために余命がないと聞かされたことから,東北にワールド熱 ,原告への発注を前提としていることから,甲61は信用することができる。)。 なお,被告P2は,従前,被告P1から,原告代表者が癌のために余命がないと聞かされたことから,東北にワールド熱学株式会社という新会社を設立し,被告P1を中心として東北での事業を継続するという構想を立て,原告代表者にも話をしていた。しかし,原告代表者は実際には癌ではなく,平成24年9月に甲状腺疾患で入院したものの,手術により回復した。そこで,上記同年12月20日の協議で は,原告代表者は全快したとしてこの構想を拒否した。そのため,被告P2は,同月22日,原告に対し,①被告P1の退職理由は上記のように新会社を設立するためであったが,現在,釜石市では営業活動がなく,被告P1の給与は不安定であるので,被告さつきで被告P1を迎えるようにする,②新会社は,現在も釜石市との覚書や大成建設との合意書の締結ができない状態であることや,原告代表者の全快 等を考慮して,時間をかけて考慮することとし,被告さつきに東北支店を設置し,各種装置製造担当部を設置して,業務遂行に被告P1が当たり,原告への発注を一本化するのが最適であると考えるとのメールを送った(原告代表者,被告P1,被告P2,甲13。なお,上記のように被告P2が原告代表者の健康不安から新会社の設立を考え,それを原告代表者に話していたことは,甲13のメールや甲61の 打合録から認められる。)。 - 26 -被告P1は,平成24年12月31日をもって,原告の取締役を退任し,さつき企画設計に入社した。原告は,この時期以降,被告らと関わることがなくなった。 ケ本件林野庁事業林野庁は,平成25年6月7日,「平成25年度木質バイオマスエネルギーを活用したモデル地域づくり推進事業」の公募を発表した この時期以降,被告らと関わることがなくなった。 ケ本件林野庁事業林野庁は,平成25年6月7日,「平成25年度木質バイオマスエネルギーを活用したモデル地域づくり推進事業」の公募を発表した(乙B2)。そこで,被告オ ーテックは,平成25年7月4日に,同事業に応募したところ,提案した実証事業(本件林野庁事業)が採用されたことから,同年9月10日に,林野庁との間で委託契約を締結した。 本件林野庁事業の企画書(乙C5の1)では,被告オーテックが事業主体となって,被告バイオパワーが賃借している片岸地区の土地に,大量の未利用木質バイオ マス(高含水バーク[樹皮]や大きな木の根)を活用した熱電供給システム等(スチームスターを用いたバイナリ―発電)を構築するなどとされ,被告バイオパワー,岩手大学,独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構,三菱総研及び蔵建築設計事務所,神鋼商事,さつき企画設計等が関与するとされ,さつき企画設計の被告P1がバイオマスボイラの設計を担当するとされていた。 そして,被告P1が,本件林野庁事業におけるバイオマスボイラ及びその関連設備に相当する本件ボイラ等を設計し,被告オーテックが,平成25年12月20日に,メイワテックに対し,ボイラ制御盤等を発注した後,本件ボイラ等は,平成26年2月中旬から製造が開始され(ボイラ部には本件ボイラ部を利用した。甲31),同年3月4日には被告オーテックが岩手県知事に対してばい煙発生施設設置 届出書を提出するに至った。 コその後4被告バイオパワーのグループ企業であるビー・エス・ティー社は,平成26年10月,廃棄パーム殻を燃焼して発電するバイオマスボイラを輸出した(甲30)。 (2) 検討 以上の事実関係を前提に,原告が主張するような一般不法行 であるビー・エス・ティー社は,平成26年10月,廃棄パーム殻を燃焼して発電するバイオマスボイラを輸出した(甲30)。 (2) 検討 以上の事実関係を前提に,原告が主張するような一般不法行為の成否を検討する。 - 27 -ア以上の事実経過を見ると,まず,平成23年6月に開始した本件農水省事業は,ポリエチレン袋を使用したしいたけ栽培に伴って排出されるポリ含有廃菌床を燃料として利用して,それを熱媒ボイラ等で燃焼してエネルギーの有効利用を図るという補助事業であった。これに対し,同年8月に構想した本件震災瓦礫処理事業等は,震災瓦礫を用いて盛土をしたり,バイオマス発電の燃料として用いてしい たけ栽培を行い,震災瓦礫処理事業後においては,廃菌床,間伐材及びバーグ材等を燃料とするバイオマス発電事業を行うという構想であったから,その主眼は瓦礫の処理ないしその利用にあったものの,将来的には本件農水省事業との接合を図るものであったといえる。 ところが,被告らが瓦礫処理のための釜石市災害廃棄物処理事業を落札すること ができなかったことから,本件震災瓦礫処理事業等の構想は,同年12月に頓挫することとなった。しかし,被告オーテック,被告さつき及び被告バイオパワーは,それ以降も,原告(被告P1),蔵建築設計事務所及び三菱総研という本件震災瓦礫処理事業等を協力して進めていこうとしていたメンバーに神鋼商事を新たに加えて,「釜石プロジェクト」という名の下,本件震災瓦礫処理事業等を実施する予定 にしていた片岸地区の土地で,本件震災瓦礫処理事業等と同様にバイオマス発電事業等を実施すべく,協議検討を行い,その中で,原告ではボイラ関連設備の見積書や配置図面を提出して設備の具体化に向けた作業も行っていたから,上記のとおり本件震災瓦礫処理事業等は 同様にバイオマス発電事業等を実施すべく,協議検討を行い,その中で,原告ではボイラ関連設備の見積書や配置図面を提出して設備の具体化に向けた作業も行っていたから,上記のとおり本件震災瓦礫処理事業等は頓挫したものの,本件農水省事業も含むバイオマス発電を利用したしいたけ栽培事業の構想は継続されていたということができる。 そして,本件林野庁事業は,そのメンバーに被告オーテック,被告さつき,被告バイオパワー,被告P1が従業員であったさつき企画設計,蔵建築設計事務所,三菱総研及び神鋼商事が含まれ,本件震災瓦礫処理事業等を実施する予定にしていた片岸地区の土地で,「釜石プロジェクト」の下で導入が検討されていた発電機(スチームスター)等を利用した未利用木質バイオマス発電事業が核となった事業であ る。利用する燃料の原料が樹皮や木の根である点で異なるが,これも本件震災瓦礫- 28 -処理事業等における将来的な構想に入っていたものであり,このような本件林野庁事業に至る経緯や本件林野庁事業の内容等に照らせば,本件林野庁事業は,本件農水省事業,本件震災瓦礫処理事業等及び本件経産省事業の延長線上にあるというべきである。 そして,原告は,本件農水省事業だけでなく本件震災瓦礫処理事業等や本件経産 省事業でもバイオマスボイラの設計製造を担当しており,本件震災瓦礫処理事業等が頓挫した後の協議検討においても,そのような役割で参加してきたものが,被告P1が原告を退社した平成24年12月末以降は事業への関与がなくなり,そのまま原告が関与することなく本件林野庁事業が実施されるに至っている。このように,本件では原告が,バイオマス発電事業の実現に向けた継続的な検討協議の途中から 外れる一方,被告P1が原告の本件図面データを用いて設計した本件ボイラを用いて 実施されるに至っている。このように,本件では原告が,バイオマス発電事業の実現に向けた継続的な検討協議の途中から 外れる一方,被告P1が原告の本件図面データを用いて設計した本件ボイラを用いて本件林野庁事業が実施されたということができる。原告の一般不法行為に関する主張は,このような原告の排除行為が不法行為を構成すると主張するものと解される。 イしかし,原告の主張は,本件震災瓦礫処理事業等の延長線上にあるバイ オマス発電事業において用いられるボイラ等の製造を必ず受注できる利益を侵害利益としていうに等しいというべきところ,原告が,本件農水省事業や本件震災瓦礫処理事業等のメンバーに入るに際して,被告オーテック又は被告さつきとの間で,それらの事業の構想を生かした形で後に展開されることになる事業において用いられるボイラ等の製造についても原告が必ず受注できるようにするという合意が取り 交わされていたわけではない。 もっとも,契約自由の原則の下でも,契約の協議が成熟し,当事者が契約の成立を信頼して多大な負担をするなどして,契約成立に関する合理的な期待を保護すべき状況に至った場合には,相手方が合理的な理由なく契約の成立を阻害することが信義則上の義務に反するというべき場合もある。そして,確かに,原告は,平成2 4年の間は本件震災瓦礫処理事業等の構想を生かした形で展開される事業のための- 29 -協議検討の一員であり,同年末の原告代表者と被告P2のやり取りや被告P2のメールの内容からすると,その時点でもなお,原告が平成25年以降もそのメンバーの一員であることを前提とされていたことがうかがわれるにもかかわらず,同年以降はそのメンバーから外れており,その理由は証拠上必ずしも明らかではない。しかし,本件震災瓦礫処理事業等が頓挫 そのメンバーの一員であることを前提とされていたことがうかがわれるにもかかわらず,同年以降はそのメンバーから外れており,その理由は証拠上必ずしも明らかではない。しかし,本件震災瓦礫処理事業等が頓挫した後のバイオマス発電事業の構想について は,関係者がその実現に向けて協議検討していたとはいえても,その実施時期が具体化していたわけではない。被告さつきは,平成24年1月に,その後に本件林野庁事業に使用する本件ボイラ部を購入しており,その経緯については争いがあるが,いずれにせよ,この時点で何らかの事業計画が熟していたとは認められない。また,同年12月20日の協議ではボイラ等の具体的な発注予定が協議されているかに見 えるものの,2日後の同月22日の被告P2のメール内容を見ると,釜石地区で営業活動を開始する具体的な目途は立っていなかったと認められ,本件林野庁事業が具体化していくのはこの後のことであるから,原告が被告らと関わっていた最後の時期である同月の時点では,バイオマス発電事業を開始する具体的目途までは立っていなかったというべきである(この間に唯一具体化したものは,本件経産省事業 であったといえ,これについては原告によるボイラの設置が現になされている。)。 また,この間に原告は,見積書や図面を作成しているが,事業が具体化されていない検討の段階において,発注者の立場になり得る者が受注者の立場になり得る者に対してとりあえずの見積りや設計の概略を出すよう依頼することはままあることである。そして,被告さつきにボイラの見積りを出した原告が,その後実際にその製 造準備に入り,多大な費用を支出するなどといった行動を取ったという事情もうかがわれない。そうすると,原告と被告オーテックの交渉が大詰めの段階に至っていて,原告がボイラ等の受注につい にその製 造準備に入り,多大な費用を支出するなどといった行動を取ったという事情もうかがわれない。そうすると,原告と被告オーテックの交渉が大詰めの段階に至っていて,原告がボイラ等の受注についての期待権を有するに至ったと評価してもよいほどに形式的作業を残すだけになった段階ではないことはもとより,被告オーテックが原告の信頼を誘発する一定の態度を示し,原告がその態度を信頼することにより 大きな準備行動をするなどした段階でもないから,被告オーテックが,正当な理由- 30 -なく契約の成立を阻害する行為をしたり,契約交渉を一方的に打ち切ったりしない信義則上の義務を負うとか,自己の先行行為に基づき,原告の行動を是正する信義則上の義務を負うなどという特段の事情は認められない。 ウこれに対し,原告は,まず,本件震災瓦礫処理事業等自体が頓挫した後の原告の関与状況に着目して,同事業の構想を生かした形で展開される事業におけ るボイラ等を受注して得られる利益も法的保護に値する旨主張する。しかし,このような原告の主張は,要するに,原告が本件震災瓦礫処理事業等の構想を生かした形で展開される事業におけるボイラ等を受注できるという期待権を有するに至ったと評価すべきであるという主張と同旨の主張であるから,上記イのとおり採用できない。 エ原告は,次に,①被告P1は原告に本件震災瓦礫処理事業等が頓挫したという嘘の報告をして原告を本件林野庁事業のメンバーから除外した,②被告P1を原告から引き抜いた上,原告が保有する設計図等のデータを盗用したり,原告の取引先の技術等も盗用したりして本件ボイラ等を製造したなどとして,被告オーテックが原告に本件ボイラ等の発注しなかったことが不法行為を構成すると主張する。 しかし,①についてみると,確か 告の取引先の技術等も盗用したりして本件ボイラ等を製造したなどとして,被告オーテックが原告に本件ボイラ等の発注しなかったことが不法行為を構成すると主張する。 しかし,①についてみると,確かに,原告代表者は,平成24年11月頃に被告P1の報告により,本件震災瓦礫処理事業等から継続するバイオマス発電事業の構想も頓挫したとの認識を持ったとの趣旨を述べるが,その後の同年12月にも,原告がボイラ等の設計製造を担当することを前提とするかのようなやり取りを被告P2と行っており,バイオマス発電事業が完全に頓挫したという印象を確定的に抱い たのかについては疑問を持たざるを得ない。そして,これらの点はおくとしても,原告がボイラ等の受注についての期待権を有するに至ったと評価してもよいほどの状況であったと認められないことは上記イのとおりであるから,この点が,原告が主張する利益を侵害するという意味で不法行為の違法性を基礎付けるとはいえない。 次に,②についてみると,ある会社が他の会社の取締役に対して転職を勧誘し, 自社側の従業員とする行為は,自由競争の原理や個人の転職の自由からすれば,単- 31 -なる転職の勧誘等に留まるものは違法とはいえず,上記勧誘等の行為が社会的相当性を逸脱するような背信的方法によって行われるべき場合に限って,違法性を帯びるというべきであるところ,被告P1自身は,原告代表者と一緒に働くことに嫌気が差していたために退職したと述べている(乙A16)ところ,これを否定するだけの証拠はなく,被告P2の勧誘行為が社会的相当性を逸脱するような背信的方法 であったと認めるに足りる証拠がない。そして,この点が,原告が主張する利益を侵害するという意味で不法行為の違法性を基礎付けるとはいえないことは,上記①と同様である。 また, ような背信的方法 であったと認めるに足りる証拠がない。そして,この点が,原告が主張する利益を侵害するという意味で不法行為の違法性を基礎付けるとはいえないことは,上記①と同様である。 また,上記1のとおり,本件技術情報は不正競争防止法上の営業秘密には該当しないところ,市場における競争は本来自由であるべきことに照らせば,不正競争行 為に該当しない行為については,当該行為が,市場において利益を追求するという観点を離れて,殊更に相手方に損害を与えることのみを目的としてなされたような営業の自由の濫用と見るべき特段の事情が存在しない限り,一般不法行為を構成することはないというべきである。これを本件についてみると,本件ボイラ等の製造に本件技術情報が使用されていたとしても,上記特段の事情があるとはいえない。 さらに,原告は,本件ボイラ等には原告の取引先の技術等も使用されているとして,このことも問題視している。しかし,それらが原告の営業秘密であるとは認めるに足りないから,上記と同様,それが一般不法行為を構成するとはいえない。 エ以上によれば,被告オーテックが原告に対して本件ボイラ等の製造を発注しなかったことは不法行為を構成せず,これを前提とすれば,このことに関連し て,他の被告についても不法行為やその成立を前提とする責任は成立しない。 (3) 以上より,その余の点について判断するまでもなく,一般不法行為に基づく予備的請求も理由がない。 第4 結論以上の次第で,原告の不正競争防止法4条に基づく損害賠償請求及び一般不法行 為に基づく損害賠償請求は,その余の点を判断するまでもなくいずれも理由がない- 32 -から棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長 為に基づく損害賠償請求は,その余の点を判断するまでもなくいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 主文 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官 髙松宏之 裁判官 野上誠一 裁判官 大門宏一郎 (別紙)当事者目録 原告ワールド熱学有限会社 同訴訟代理人弁護士松尾友寛 同松嶋依子 同森瑛史 同訴訟復代理人弁護士飯田亮真 被告P1 同訴訟代理人弁護士中井克洋 同甲斐野正行 被告P2 同訴訟代理人弁護士大西賢一 被告株式会社オーテック 被告P3 被告さつき株式会社 被告P4 被告P5 被告株式会社バ 告 P3 被告さつき株式会社被告 P4被告 P5被告株式会社バイオ・パワー・ジャパン上記6名訴訟代理人弁護士疋田淳 同團潤子以上- 34 -(別紙)営業秘密目録1 ( 省略 ) - 35 -(別紙)営業秘密目録2 原告の逆燃式バイオマスボイラーに関する以下の各図面の電子データ ① 甲第18号証釜石発電ボイラー設備(全体図)② 甲第23号証の1 RV2000廃ガス貫流ボイラー姿図③ 甲第23号証の2 RV2000廃ガス貫流ボイラー姿図④ 甲第23号証の3 RV型内部煉瓦図⑤ 甲第24号証内部レンガ図(熱発生炉「RG-3500」) ⑥ 甲第25号証の1 二重扉投入装置⑦ 甲第25号証の2 RG35002重扉組み立て図⑧ 甲第26号証集塵機「1000型W-ダブルサイクロン」⑨ 甲第27号証釜石発電設備(全体図)以上
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