平成30年7月18日宣告平成3065号判決主文被告人を懲役6年に処する。 未決勾留日数中60日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,札幌市a区・・・・・所在のAビル(鉄骨鉄筋コンクリート造陸屋根地下1階付8階建,床面積合計約3259.61平方メートル)3階で飲食店を経営する者であるが,同店従業員のBと共謀の上,同店の設備什器等を対象とした火災保険金を取得するため,現に多数の飲食客及び従業員がいる同ビルに放火しようと企て,平成30年1月15日午前4時42分頃,株式会社C代表取締役Dが看守する同ビルの西側出入口から,あらかじめ購入していたガソリンを携えて侵入し,同日午前5時18分頃,同ビル3階の同店舗付近通路において,少なくとも7か所にガソリンをまいた上,何らかの方法で火を放ち,同ビルを焼損しようとしたが,天井に設置されたスプリンクラーの放水により消火されたため,同通路の壁面等を焦がすなどしたにとどまり,同ビルの焼損に至らなかったものである。 (法令の適用)罰条建造物侵入の点刑法60条,130条前段現住建造物等放火未遂の点刑法60条,112条,108条科刑上一罪の処理刑法54条1項後段,10条(一罪として重い現住建造物等放火未遂罪の刑で処断)刑種の選択有期懲役刑を選択未決勾留日数の算入刑法21条 訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由) 1 本件犯行の悪質性被告人らは,火災保険金を取得するという身勝手な動機から,繁華街の中にあり,多数の飲食店が入っているビルの3階において,被告人経営の店舗の出入口付近だけでなく,他の店舗の出入口付近など,少なく 性被告人らは,火災保険金を取得するという身勝手な動機から,繁華街の中にあり,多数の飲食店が入っているビルの3階において,被告人経営の店舗の出入口付近だけでなく,他の店舗の出入口付近など,少なくとも7か所にガソリンをまいた上で放火した。このような行為は,本件ビル全体を焼損しかねない非常に危険で悪質なものである。火はスプリンクラーの放水によって短時間で消し止められたが,複数の店舗のドアや壁等が焦げて,ビル内に臭いや煙が立ち込め,建物の中にいた多数の従業員や飲食客が一時避難せざるを得なくなった。さらに,ビルの修理費として多額の出費が必要となったほか,1か月近く休業を余儀なくされた店舗もあることからすると,被害結果はかなり大きいといえる。 2 犯行の計画性,被告人が本件犯行において果たした役割の重み被告人らは,平成29年12月から本件犯行までの間,「火災保険お店」,「ビルを燃やすには」,「灯油とガソリンどっちが燃えるか」,「ガソリン引火」等の用語で多数回インターネット検索をし,本件犯行の2日前に燃料として使用するガソリンや携行缶等を購入するなど,十分な準備を整えた上で本件犯行に及んだと認められる。被告人は,火災保険金の受取人であり,火災保険金を取得するという最終目的を達成するためには被告人の関与が不可欠であったほか,上記のインターネット検索を多数回行い,ガソリンや携行缶等の購入費用を全て支出し,本件犯行当日には自らガソリン入りの携行缶を背負って本件ビルへ向かったことなどからすると,犯行に積極的に関与し,重要な役割を果たしたといえる。 この点,被告人は,共犯者のBと放火について事前に話し合ったことはなく,上記のインターネット検索は,Bが過去に火災保険金目的で放火をしたことがあると話したので興味本位で検索したに過ぎないし,ガソリン この点,被告人は,共犯者のBと放火について事前に話し合ったことはなく,上記のインターネット検索は,Bが過去に火災保険金目的で放火をしたことがあると話したので興味本位で検索したに過ぎないし,ガソリン携行缶は自動車に給 油するためにBに言われて買ったものである,本件犯行当日Bから本件ビルに行くなどと言われ,すぐに放火の意図を察したがこれを受け入れ,一緒に本件ビルに行ったなどと述べる。しかしながら,被告人は,火災保険金の手続や放火の手段,燃料等について多数回検索しており,これらが興味本位での検索とは考えられない。また,本件犯行当日まで火災保険金目的の放火を全く考えていなかったという一方で,Bから本件ビルに行くことを誘われると,直ちに火災保険金目的での放火の意図を察して本件犯行への関与を決めたというのは余りにも唐突であり不自然である。このように,被告人の供述は不自然,不合理な点が多く,到底信用することができない。 3 総括以上の事情に照らすと,被告人の刑事責任は,現住建造物等放火未遂罪の事案の中でも重い部類に属するといえ,実刑を科すべきである。 その上で,その他の事情も検討すると,被告人は,本件犯行を行ったこと自体は認めているものの,責任逃れの供述をしており,自ら犯した罪に向き合っているとは評価できない。一方,被害にあった店舗に対して一部弁償を行っていること,被告人の実母が被告人と同居してその立ち直りに協力する旨述べていることなどの事情は,被告人の刑を軽減する事情として一定程度考慮できる。 そこで,これらの事情も考慮して,主文の刑が相当であると判断した。 (求刑懲役7年)平成30年7月18日札幌地方裁判所刑事第2部 裁判長裁判官中桐圭一 裁判官結城 主文 あると判断した。 理由 (求刑懲役7年)平成30年7月18日札幌地方裁判所刑事第2部 裁判長裁判官中桐圭一 裁判官結城真一郎 裁判官川口寧
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