- 1 -平成24年9月28日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成23年(ワ)第6904号職務発明対価請求事件口頭弁論終結日平成24年7月13日判決神奈川県鎌倉市<以下略>亡X訴訟承継人原告 A1東京都品川区<以下略>亡X訴訟承継人原告 A2神奈川県鎌倉市<以下略>亡X訴訟承継人原告 A3上記3名訴訟代理人弁護士笠原基広同中村京子東京都中央区<以下略>被告株式会社Y同代表者代表取締役 B 同訴訟代理人弁護士寺島秀昭同牧野英之 主文 1 被告は,亡X訴訟承継人原告A1に対し,28万4944円及びこれに対する平成23年3月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,亡X訴訟承継人原告A2に対し,14万2472円及びこれに対する平成23年3月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支 - 2 -払え。 3 被告は,亡X訴訟承継人原告A3に対し,14万2472円及びこれに対する平成23年3月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 割合による金員を支 - 2 -払え。 3 被告は,亡X訴訟承継人原告A3に対し,14万2472円及びこれに対する平成23年3月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用は,これを10分し,その9を原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。 6 この判決は,第1ないし第3項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,亡X訴訟承継人原告A1(以下「原告A1」という。)に対し,金425万円及びこれに対する平成23年3月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,亡X訴訟承継人原告A2(以下「原告A2」という。)に対し,金212万5000円及びこれに対する平成23年3月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は,亡X訴訟承継人原告A3(以下「原告A3」という。)に対し,金212万5000円及びこれに対する平成23年3月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,被告の従業員であった訴訟承継前の原告(訴訟被承継人)亡X(平成23年12月9日死亡。以下「亡X」という。)が,被告に在職中の平成20年9月3日,被告の業務範囲に属し,かつ,亡Xの職務に属する「LED照明装置」に関する後記発明をし,同日,その特許を受ける権利を被告に承継させたとして,亡Xの相続人である原告らが,特許法35条3項に基づく対価9467万9479円をそれぞれの相続割合(後記のとおり,原告A1 - 3 -が2分の1,原告A2 及び原告A3 がそれぞれ4分の1)により相続した額の一部請求として,被告に対し,原告A1 が425万円,原告A2 及び原告A3がそ 合(後記のとおり,原告A1 - 3 -が2分の1,原告A2 及び原告A3 がそれぞれ4分の1)により相続した額の一部請求として,被告に対し,原告A1 が425万円,原告A2 及び原告A3がそれぞれ212万5000円,並びに,これらに対する平成23年3月25日(訴状送達の日の翌日)から各支払済みまでそれぞれ民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払を求める事案である。 2 前提事実(証拠を掲げていない事実は当事者間に争いがない。以下,証拠の番号の掲記に当たり,枝番の表示を省略することがある。)(1) 当事者ア被告は,LED(発光ダイオード)照明等を製造販売している株式会社である。 イ亡Xは被告の元従業員であり,その在職期間は平成20年4月から平成22年8月3日までである。〔乙1〕亡Xは,平成23年3月1日,本件訴訟を提起したが,本件訴訟係属中の平成23年12月9日に死亡した。 原告A1は亡Xの妻であり,原告A2及び原告A3は,亡Xの子である。 原告らは,亡Xの遺産につき,原告A1につき相続分2分の1,原告A2及び原告A3につきそれぞれ相続分4分の1の割合で,それぞれ承継した。 (2) 亡Xの職務発明ア亡Xは,平成20年9月3日,後記イの発明をした。同発明は,LED照明装置に関するものであり,被告の業務範囲に属し,かつ,亡Xの職務に属する発明であった。亡Xは,同日,同発明について特許を受ける権利を被告に譲渡した。 イ被告は,次の発明を特許出願し,特許登録を経た(請求項の数6。以下「本件特許」といい,特許請求の範囲請求項1に係る発明を「本件発明」という。)。 (ア) 特許番号第4334013号 - 4 -(イ) 発明の名称 LED照明装置(ウ) 出願日平成20年9月 請求の範囲請求項1に係る発明を「本件発明」という。)。 (ア) 特許番号第4334013号 - 4 -(イ) 発明の名称 LED照明装置(ウ) 出願日平成20年9月29日(エ) 登録日平成21年7月3日(オ) 発明者亡X(カ) 特許請求の範囲【請求項1】複数のLEDと,前記複数のLEDを支持する基板と,前記基板を覆うように配設される導光カバーとを有し,前記導光カバーは,円筒形に形成するとともに,その一端から他端までの軸直角方向における内壁の断面形状を,前記複数のLEDが発する光の等光照射強度形状に従って成型された楕円形状としたことを特徴とするLED照明装置。 ウ構成要件の分説本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,各記号に従い,順に「構成要件ⅰ」などという。)。 ⅰ 複数のLEDと,ⅱ 前記複数のLEDを支持する基板と,ⅲ 前記基板を覆うように配設される導光カバーとを有し,ⅳ 前記導光カバーは,円筒形に形成するとともに,ⅴ その一端から他端までの軸直角方向における内壁の断面形状を,前記複数のLEDが発する光の等光照射強度形状に従って成型された楕円形状としたことを特徴とするLED照明装置。 エ被告の行為及び被告製品の構成被告は,「アプラ」又は「APLA」ピュアミルキーという商品上の表示を付したLED照明装置を販売している(以下「被告製品」という。)。 被告製品の構成は,次のとおりである(以下,各記号に従い,順に「構成 - 5 -a」などという。)。 a 複数のLEDを備えている。 b 基板上に前記LEDが支持されている。 c 前記基板を覆うように導光カバーが配設されている。 d 前記導光カバーは,円筒形に形成されてい a」などという。)。 a 複数のLEDを備えている。 b 基板上に前記LEDが支持されている。 c 前記基板を覆うように導光カバーが配設されている。 d 前記導光カバーは,円筒形に形成されている。 e 前記導光カバーの一端から他端までの軸直角方向における内壁の断面形状は,前記複数のLEDが発する光の等光照射強度形状に従って成型された楕円形状である。 オ対比(ア) 構成要件ⅰについて被告製品の構成aと本件発明の構成要件ⅰを対比すると,被告製品は,構成要件ⅰを充足する。 (イ) 構成要件ⅱについて被告製品の構成bと本件発明の構成要件ⅱを対比すると,被告製品は,構成要件ⅱを充足する。 (ウ) 構成要件ⅲ被告製品の構成cと本件発明の構成要件ⅲを対比すると,被告製品は,構成要件ⅲを充足する。 (エ) 構成要件ⅳ及びⅴ被告製品の構成d及びeと本件発明の構成要件ⅳ及びⅴをそれぞれ対比すると,被告製品の導光カバーは円筒形であり,その断面形状は楕円形状であり,このような楕円形状は,複数のLEDが発する光の等光照射強度形状に従って成型されているから,被告製品は,構成要件ⅳ及びⅴをそれぞれ充足する。 上記(ア)ないし(エ)のとおり,被告製品は,本件発明の構成要件ⅰないしⅴを全て充足するから,本件発明の技術的範囲に属する。 - 6 -なお,「アプラ」又は「APLA」ピュアミスティ及び同ピュアクリスタルという商品上の表示を付したLED照明装置については,光拡散技術によって蛍光灯と同等の照度分布を実現しているものではない。 カ本件特許権の譲渡被告は,平成22年5月25日,O株式会社(以下「O」という。)に対し,本件特許権を譲渡した( ,光拡散技術によって蛍光灯と同等の照度分布を実現しているものではない。 カ本件特許権の譲渡被告は,平成22年5月25日,O株式会社(以下「O」という。)に対し,本件特許権を譲渡した(以下「本件特許権譲渡」という。)。 (3) 被告における職務発明規定の内容ア被告における就業規則である「正社員就業規則」(乙2)には,その第62条において職務発明に関する規定があり,その内容は,下記のとおりである(以下「本件職務発明規定」という。)。 記「 従業員が会社における自己の現在又は過去における職務に関連して発明,考案をした場合で会社の要求があれば,特許法,実用新案法,意匠法等により特許,登録を受ける権利又はその他の権利は,発明者及び会社が協議のうえ定めた額を会社が発明者である従業員に支払うことにより,会社に譲渡又は継承されるものとする。」イ亡Xは,被告を退職するに当たって職務発明の対価を請求し,これに対し被告は,解決金の趣旨で20万円を支払うことを提案したが,亡Xが承諾しなかったため,本件職務発明規定に定める「協議」は調っていない。 ウその他,本件において,職務発明の対価についての契約,勤務規則その他の定めはない〔弁論の全趣旨〕。 3 争点本件の争点は,亡Xが職務発明について本件特許を受ける権利を被告に承継させたことに対する相当の対価として支払を受けるべき額の有無及びその数額であり,具体的には,次のとおりである。 (1) 被告が本件発明の実施許諾によって他社から受けた実施料の有無及びその - 7 -額(2) 被告が本件特許権譲渡より前の期間において本件発明を自ら実施したことにより受けるべき利益の有無及びその額(3) 被告が本件特許権譲渡を行ったことにより受けるべき利益 - 7 -額(2) 被告が本件特許権譲渡より前の期間において本件発明を自ら実施したことにより受けるべき利益の有無及びその額(3) 被告が本件特許権譲渡を行ったことにより受けるべき利益の有無及びその額(4) 被告が本件特許権譲渡以後の期間において本件発明を自ら実施することにより受けるべき利益の有無及びその額(5) 被告の貢献度等第3 争点に関する当事者の主張 1 争点(1)(被告が本件発明の実施許諾によって他社から受けた実施料の有無及びその額)〔原告らの主張〕(1) 被告は,平成20年6月1日から平成21年5月31日までの間に,他社に対して本件特許の実施を許諾した。被告の損益計算書(甲3,乙3)によれば,当該期間中の「ロイヤリティ売上高」は合計943万2000円である。被告は,本件特許以外にはライセンス可能なめぼしい知的財産等を有していなかったから,決算書類中の損益計算書に記載された上記「ロイヤリティ売上高」は全て本件特許のライセンスによるものである。 したがって,その全額が,本件特許によって現実に得られた利益になるというべきである。 すなわち,被告は,P株式会社(以下「P」という。)及び被告製品の委託製造業者であるQ株式会社(以下「Q」という。)に本件特許を実施させていたものである。しかるに,被告には信用力がない上に,Qに対する保証金を支払う資力もなかったため,Pが受注及び製造委託をした上で売上金を取得し,被告に対しては売上金から,本件発明を実施するPらが負担すべき特許実施許諾の対価である特許ロイヤリティを支払うという商 - 8 -流が形成された。このように,ロイヤリティ売上高として計上されている収入は,当初から当事者間でも特許ロイヤリティであると理解されており,それゆえに,勘定科目にもそ ィを支払うという商 - 8 -流が形成された。このように,ロイヤリティ売上高として計上されている収入は,当初から当事者間でも特許ロイヤリティであると理解されており,それゆえに,勘定科目にもそのように記載されていたものであり,「新商品の生産による新事業分野開拓者認定申請書」(甲10)の9頁4項,10頁5項の記載もこれに沿うものである。 (2) 被告の主張に対する反論被告は,「ロイヤリティ売上高」に記載された金額は本件特許の実施許諾等の対価ではない旨主張する。 しかし,「ロイヤリティ」という言葉は,一般に「特許権・著作権などの使用料」(新明解国語辞典第5版),「特許権・著作権の使用料」(広辞苑第5版)を意味する。また,会計実務において,ロイヤリティ勘定が使用されることは多いが,通常は実施料やフランチャイズ料といった売上げに使用されるのであり,被告が主張するように,それがロイヤリティとしての性質を有さないにもかかわらず,専門家である会計士が「ロイヤリティ」という勘定科目で計上すること自体不自然である。 被告の主張によれば,被告は被告製品の製造も販売もしないまま,これらをすべてPらにさせた上で,同社より,売上げから製造業者への支払を控除した額を収受したことになる。被告が何ら活動もしていないのに,このような不労所得のような収入が発生するはずはなく,結局,「ロイヤリティ」はその名称どおり,何らかの無体財産の使用料であったとしか合理的な説明のしようがない。 このような無体財産としては,一般的には工業所有権,のれん代,デザイン料,ノウハウ等が考えられるが,本件特許の通常実施権がロイヤリティに含まれないとする事情はない。そして,本件において他にみるべき無体財産は存在しないので 所有権,のれん代,デザイン料,ノウハウ等が考えられるが,本件特許の通常実施権がロイヤリティに含まれないとする事情はない。そして,本件において他にみるべき無体財産は存在しないのであるから,独占的排他権であり対世的な効力を有する特許権が「ロイヤリティ」の大きな部分を占めることは明らかであり,その占め - 9 -る割合は,少なく見積もっても「ロイヤリティ売上高」の50%を下ることはあり得ない。 そうすると,仮に被告の主張を前提としても,「ロイヤリティ」には実質的に本件特許の通常実施権を許諾することについての対価が含まれることは明らかであり,943万2000円のうち,同対価は低くともその50%である471万6000円を下回ることはない。 〔被告の主張〕被告の平成20年度の損益計算書等(甲3,乙3)における「ロイヤリティ売上高」という勘定科目は,次のような事情で設けられたものであって,本件特許の実施許諾等の対価ではない。 すなわち,被告は,設立後まだ日の浅いいわゆるベンチャー企業であって,信用力が必ずしも十分でないため,顧客から受注したり,製造業者に製造を委託するに当たり,Pを間に介して取引を行っている。そのため,売上金も基本的にはすべてPから被告に支払われる。ただ,平成21年初め頃,被告の経理の都合で,ある特定の顧客の取引に関して,Pの了承を得て同社を介さずに顧客が直接被告に支払うという形を取ったことがあった。その際,被告においては,その売上金について後に調整が必要となることから,他の取引にかかる売上金と区別しておく必要があり,顧問会計士が「ロイヤリティ売上高」という名称の勘定科目を使用して区別するに至ったものである(乙3,13~15)。なお,「新商品の生 となることから,他の取引にかかる売上金と区別しておく必要があり,顧問会計士が「ロイヤリティ売上高」という名称の勘定科目を使用して区別するに至ったものである(乙3,13~15)。なお,「新商品の生産による新事業分野開拓者認定申請書」(甲10)の9頁目には「ライセンス」という言葉が用いられているが,実際は,Pを介して製造を委託しているのであって,被告の認識からすれば適切な表現ではなかった。 2 争点(2)(被告が本件特許権譲渡より前の期間において本件発明を自ら実施したことにより受けるべき利益の有無及びその額)〔原告らの主張〕 - 10 -(1) 本件特許権譲渡より前の期間(平成21年6月から平成22年4月までの期間)の本件発明の実施により受けるべき利益の額と評価される額は,次のとおり,被告製品の売上高1億75万8500円に,超過売上率50パーセント,仮想実施料率10パーセントを乗じた額を下回ることはない。 ア本件発明の実施による売上高本件発明の実施品である被告製品の,平成21年6月から平成22年4月までの売上高は,1億75万8500円である(乙39)。 イ被告製品の超過売上高被告製品は,市場におけるLED照明装置の中でも,蛍光灯と同等の配向特性,照度分布を実現しているため(甲5),使用者の違和感が少なく,本件発明を実施することにより他のメーカーに対する性能上の優位性があった(甲5,6)。この点に鑑みると,上記売上高に占める超過売上高の割合は,50%を下ることはない。 ウ仮想実施料率LED照明の分野は,近年成長が著しく,マーケットの成長及び特許出願件数も急増している(甲9)。そうすると,上記のような本件発明の独創性,市場性を重視すれば,本件発明にふさわしい実施料率は,10%を下る 照明の分野は,近年成長が著しく,マーケットの成長及び特許出願件数も急増している(甲9)。そうすると,上記のような本件発明の独創性,市場性を重視すれば,本件発明にふさわしい実施料率は,10%を下ることはない。 (2) 被告の主張に対する反論ア被告は,被告製品は市場における優位性がなく,およそ被告に利益をもたらさなかったから,超過売上高はないと主張する。 しかし,本件発明に技術的な優位性があったことは事実である。 すなわち,被告製品の有する光拡散性は,LED照明にとって重要な特性であり,このことは,被告自身がそれをカタログ等で標榜していることからも明らかであり(乙6),そのような重要な特性を早期に達成した被告製品には,本件発明が寄与する性能上の優位性があったもので - 11 -ある。 被告は,被告製品に技術的優位性がない証拠として亡Xのメール(乙5)の内容について主張するが,これは,もともと広角のランバート拡散LEDを使用すれば,本件発明を使用するまでもなくLEDの光が広角に拡散するため,それを前提にすれば,本件発明の実施では競合他社を牽制できる機会は少ないと述べているにすぎない。 したがって,被告の上記主張は失当である。 イまた,被告は,被告においては多額の販売費及び一般管理費をかけ,営業担当が多大な労力を費やすことでようやく一定の売上げを得たが,利益を生み出すには至らなかったと主張する。 しかし,使用者の利益率は超過売上げについて考慮すべきものとは考えられず,そもそも被告の利益率の低さは被告製品の販売に直接関係はなく,役員報酬といった経費が高いことに起因するコスト高体質によるものであり,超過売上げの算定に際して考慮すべきではない。また,市場に代替技術が存在する場合でも,技術の優劣といった格別の 直接関係はなく,役員報酬といった経費が高いことに起因するコスト高体質によるものであり,超過売上げの算定に際して考慮すべきではない。また,市場に代替技術が存在する場合でも,技術の優劣といった格別の事情のない限り超過利益は認められ,その場合,超過利益率は原則的には50%を基本とすべきである。そして,本件では,技術の優劣等の格別の事情は認められないのであるから,少なくとも超過利益率は50%であることは明らかである。 ウさらに,被告は,仮想実施料率が一般的な値を超えると解すべき理由はないと主張する。 しかし,本件発明に技術上の優位性があったことは前記のとおりであり,仮に被告の主張を前提としても,本件発明の実施料率が一般的な値を下回るとする理由もないのであり,少なくとも仮想実施料率が4%を下ることはあり得ない。 〔被告の主張〕 - 12 -(1) 本件特許を使用した被告製品は,市場における優位性がなく,およそ被告に利益をもたらさなかったものであり,被告は本件発明の実施品によって利益を上げていないから,本件発明の実施によって既に受けた利益と評価されるものは生じておらず,超過売上高はない。 すなわち,蛍光灯と同等の特性,照度分布を実現しているLED照明装置は被告製品に限られないのであって,そのような競合他社の同種の製品と比べても,本件特許に格別の優位性はなったものである(乙4)。この点,亡X自身も被告代表者に宛てた電子メールの中で,「敢えてカバーを楕円形状にする必要はなく,カバーの形状で競合他社を牽制できる機会は少ないと考えます。」と述べ,本件特許が競合他社製品と比べて優位性がないことを自ら認めていた(乙5)。被告製品の強みとなっていたのは消費電力が少ないこと,信頼性の高いS製のLEDを使用していること,生産工場が国内 。」と述べ,本件特許が競合他社製品と比べて優位性がないことを自ら認めていた(乙5)。被告製品の強みとなっていたのは消費電力が少ないこと,信頼性の高いS製のLEDを使用していること,生産工場が国内であったこと,被告がLED照明推進協議会に加盟していることなどであったが,結局それらの事情は売上げにつながらなかったものである。 (2) また,被告においては多額の販売費及び一般管理費をかけ,営業担当が多大な労力を費やすことでようやく一定の売上げを得たものの,利益を生み出すには至らなかった。 すなわち,被告は,平成21年5月31日の決算において売上総利益が1371万7384円であったのに対し,販売費及び一般管理費が8308万0923円であったため,6936万3539円の営業損失を計上し(甲3),また,平成22年5月31日の決算においても売上総利益が5444万8559円であったのに対し,販売費及び一般管理費が5703万9796円であったため,結局,259万1237円の営業損失を計上しているのであって,営業利益は存在しないものである(甲7)。 (3) なお,仮想実施料率についても,上記のとおり,本件特許を使用した被 - 13 -告製品において市場における優位性がないことに照らせば,仮想実施料率が一般的な値を超えると解すべき理由はない。 3 争点(3)(被告が本件特許権譲渡を行ったことにより受けるべき利益の有無及びその額)〔原告らの主張〕(1) 被告は,平成22年5月,Oに対し,本件特許権を対価2500万円で譲渡している(甲1,乙8)。かかる対価は,その全額が本件特許によって現実に得られた利益であり,譲渡日から特許期間満了日までの実施料相当額と等価であって,同2500万円は,被告が,本件特許権譲渡を行ったことに係る本件発明の実 かかる対価は,その全額が本件特許によって現実に得られた利益であり,譲渡日から特許期間満了日までの実施料相当額と等価であって,同2500万円は,被告が,本件特許権譲渡を行ったことに係る本件発明の実施により受けるべき利益の額というべきである。 (2) 被告の主張に対する反論被告は,本件特許権譲渡において,譲渡契約上の対価は2500万円とされていたとしても,それは,本件特許の財産的価値を2500万円と評価したものではなく,被告のOに対する債務を消すことを主眼に代物弁済的な処理をしたものである旨主張する。 しかし,被告が主張するような,Oから借入れがあった事実や,代物弁済であった事実は客観的証拠により裏付けられているものではない。 なお,本件特許権譲渡に関する譲渡契約書(以下「本件譲渡契約書」という。 乙8)において,1200万円が内金として支払われていることが記載されており,これが被告の主張と一致するかのようであるが,特許権譲渡契約において内金の支払があったからといって,事前の消費貸借契約があったとか,これが代物弁済であったなどと認定するにはあまりにも証拠と要証事実との関連性が希薄すぎるというべきであるから,このような記載は被告の主張を裏付ける証拠とはなりえない。また,Oのような会社が,契約書が存しているにもかかわらず,そのような虚偽・仮装取引をしたとするのも不自然である。 - 14 -仮にこの譲渡が代物弁済的なものであったとしても,被告は本件特許によって2500万円の対価を現実に得ているのであり,これは特許によって得られた利益としかいいようがないはずである。 〔被告の主張〕(1) 本件特許は,競合他社との熾烈な販売競争において優位性がなかったので,平成22年初め頃,被告の会社運営は厳しい状況になり,運転資金 利益としかいいようがないはずである。 〔被告の主張〕(1) 本件特許は,競合他社との熾烈な販売競争において優位性がなかったので,平成22年初め頃,被告の会社運営は厳しい状況になり,運転資金としてOから合計1500万円を借り受け,同年5月末までになお追加で1000万円を借り入れる必要が生じた。ただ同年5月末は被告にとって決算期であり,赤字決算となることを避けたいという事情もあったため,追加で1000万円を借り入れるに当たってOに本件特許権を譲渡することとし,それで合計2500万円の借入金を消すことにした(乙8)。 すなわち,本件特許権譲渡がなされた時点で本件特許は市場における優位性,競争力がなく,被告はその価値が2500万円に到底見合うものではないと考えていたし,Oも本件特許自体に価値を認めていたわけではなかったが,同社は被告の経営状況を理解して,債務を消すことを主眼に代物弁済的な処理として受け入れてくれたものである。また,当事者が特許に市場価値を認めて譲渡したのであれば,当然特許価値の査定を行ったはずであるが,本件特許権譲渡の当事者間では譲渡に際し本件特許の価値を査定したこともない。 (2) 以上によれば,本件特許権譲渡において,譲渡契約上の対価が2500万円とされていたとしても,それは,本件特許の財産的価値を2500万円と評価したものでないことは明らかである。 4 争点(4)(被告が本件特許権譲渡以後の期間において本件発明を自ら実施することにより受けるべき利益の有無及びその額)〔原告らの主張〕(1) 被告製品の平成22年5月から平成23年5月までの売上げに係る利益 - 15 -について被告が本件特許をOに譲渡した平成22年5月からOから被告への本件特許の無償通常実施権許諾期間が満了する平成23 の平成22年5月から平成23年5月までの売上げに係る利益 - 15 -について被告が本件特許をOに譲渡した平成22年5月からOから被告への本件特許の無償通常実施権許諾期間が満了する平成23年5月までの売上げは,合計2097万円である(乙39)。この無償通常実施権の許諾は,本件特許の譲渡契約の特約としてなされたものである。すなわち,被告は,本件特許の排他的効力によって一定の利益を得るにもかかわらず,かかる特約によって本件特許の実施料は無償とされているのであるから,本件特許の譲渡によって,上記期間の売上げより算出する仮想実施料相当額の利益を得ているといえる。 (2) 被告製品の平成23年6月から本件特許の存続期間満了までの売上げに係る利益について本件発明の実施品の平成21年6月から平成23年5月までの売上高は,1億2172万8500円を下らず,同期間の平均年間売上高は,6086万4250円を下らない。そうすると,被告が受けるべき1年あたりの利益は,次のとおり,304万3213円を下ることはない。 6086万4250円×0.5(超過売上率)×0.1(仮想実施料率)=304万3213円そして,平成23年6月から本件特許が満了する平成40年9月29日までは約16年間であり,上記1年あたりの利益に16年に対応するライプニッツ係数10.8378を乗じると,被告が受けるべき利益は,次のとおり,3298万1728円を下ることはない。 304万3213円×10.8378=3298万1728円〔被告の主張〕原告は,被告の利益として権利満了日までの超過売上高を漫然と計上しているが,本件特許に市場における優位性はなく,またそれゆえに次世代の新製品には使用されていないのであって,今後220か月もの間同じような売上げを 利益として権利満了日までの超過売上高を漫然と計上しているが,本件特許に市場における優位性はなく,またそれゆえに次世代の新製品には使用されていないのであって,今後220か月もの間同じような売上げをもたらすことはあり得ない。 - 16 -また,前記のように,本件特許は既に譲渡済みであり,本件譲渡契約書(乙8)における無償実施権の許諾も平成23年5月20日で期間が満了したため,そもそも被告は本件発明を実施する権利を有さないから,被告製品が被告に利益をもたらすことはない。 したがって,本件特許権譲渡より後の期間の本件発明の実施により被告が受けるべき利益は存在しない。 5 争点(5)(被告の貢献度等)〔原告らの主張〕(1) 被告は,当初,従来品と同様な円筒状カバーによる試作品で何ら問題はないとの理由により本件発明を実施する必要はないとの判断を示していた。 これに対して,亡Xは,照射角の小さいLEDを用いるLED照明装置を光源に用いた場合に輝度分布に明確な明暗差が生じるという問題意識から,独自に研究を続けて本件発明に至り,特許出願手続についても自ら外部の特許事務所に依頼するなど,その権利化までの作業を全て単独で行ったものである。 このように,本件発明は,主に亡Xが着想したものであり,発明の完成にも被告従業員の関与はうかがわれないのであって(甲14及び15),少なくとも本件発明は亡Xが主導したものである。 このような事情を考慮すれば,本件発明は専ら亡X主導の下で行われたというべきであるから,被告の貢献度は低いといわざるを得ず,50%を上回ることはない。 (2) 被告の主張に対する反論被告は,本件発明の特徴は光を拡散するためにカバーを楕円形状にしている点にあるところ,この着想はもともとC(以下「C」という。)の研 %を上回ることはない。 (2) 被告の主張に対する反論被告は,本件発明の特徴は光を拡散するためにカバーを楕円形状にしている点にあるところ,この着想はもともとC(以下「C」という。)の研究の結果によりもたらされたものであって,本件発明は,Cの上記発明をベースに被告が継続して研究開発を行ってきた成果であって,亡Xは最後 - 17 -のまとめ段階に関わっていたにすぎない旨主張する。 しかし,本件発明の着想に具体的にCらが関わったとする証拠は何ら存在せず,また,これらを評価するとしても,せいぜい発明の課題を示し,発明のきっかけを与えたにすぎず,発明の中核的な主題,具体的な課題解決方法は何ら示唆も教示もされていない。 この点,Cが,乙19及び乙31に記載されているような構造のカバーを発注していたとしても,これらの構造は,単なるLEDの導光体ないしレンズとして機能するにすぎず,これらの構造は,導光カバーの内壁の断面形状を,LEDが発する光の投光照射強度形状に従って形成するという本件発明の特徴と何ら関係がなく,これらによって導光カバーにより十分な光の拡散を得るというような本件発明の効果が得られるともいえない。むしろ,Cの先行研究の結果は,本件発明の先行技術として認識されていたものである(甲1,段落【0008】)。また,被告代表者のメール(乙21),全体会議資料(乙23)も,あくまでも発明行為ではなく,事前ないし事後の業務活動に対する関与があったことを示すにとどまり,仮にこれらが発明の完成に関するものであったとしても,本件発明に対する貢献度は極小であり,依然として亡Xが本件発明の中核的部分を完成させたことは明らかである。 また,本件特許の権利化,すなわち特許事務所との連絡及び調整(甲16,17),関係者への報告(甲18)も主に 献度は極小であり,依然として亡Xが本件発明の中核的部分を完成させたことは明らかである。 また,本件特許の権利化,すなわち特許事務所との連絡及び調整(甲16,17),関係者への報告(甲18)も主に亡Xが行ったのであり,他者の関与をうかがわせる客観的証拠は存在しない。 以上の事情からすれば,被告の貢献度が50%を上回ることはなく,仮に被告が主張するとおりに被告が本件発明に関与していたとしても,亡Xが本件発明について主導的な役割を果たしたことは明らかであるから,本件発明について仮に被告の寄与があったとしても,それが格別大きいとはいえず,使用者貢献度が95%を上回ることはあり得ないというべきである。 〔被告の主張〕 - 18 -次の(1)ないし(4)に述べるような本件特許開発の経緯に鑑みれば,本件発明は,発明そのものにしても権利化にしても被告の主導の下に行われていたものであり,また,被告の営業努力があって被告製品の売上げにつながったものであるから,被告の貢献度は限りなく100%に近いというべきである。 (1) Cは,長年に渡り,光及び照明に関する研究を行ってきた発明家であり,近年はLED照明の研究開発を行っていた。被告は,このCの開発したLED照明を製造販売する会社として平成19年6月1日に設立されたものである(乙28,29)。 C及び被告においては,信頼性の高いS製のLED素子を使用した製品の開発を行っていたが,同社のLED素子は照射角が狭かった。そのため,従来の蛍光灯のように光を拡散させるために照射角をいかに広げるかが重要な研究課題となっていた。 Cは,平成19年3月2日,乳白色のアクリル樹脂製カバーによってLED素子から射出された光を周囲に均一に拡げ効率的に利用することができるLED照明について特許出願し(乙26), 題となっていた。 Cは,平成19年3月2日,乳白色のアクリル樹脂製カバーによってLED素子から射出された光を周囲に均一に拡げ効率的に利用することができるLED照明について特許出願し(乙26),さらに同年5月30日には特許出願後の研究開発をふまえて実用新案の出願を行い,同年7月25日に実用新案として登録を受けた(乙27)。この実用新案の出願に際して,Cは考案を適用した具体的な実施の形態として,カバーに中空部を設けて二重構造にし,レンズ効果で光の拡散を図ることを提示している(乙27図9,図10)。 Cはこの二重構造のアイデアを基に研究を続け,試作品の製作にかかり,平成19年11月,そのアクリルカバーに関する発注を行っている(乙31)。ただ,この試作品は非常に重量があるのが欠点で,商品化することはできなかった。 そのため,この欠点を克服して光の拡散を図る技術の研究が続けられ,Cは,平成20年5月ころ,図面「図番070625-2」(乙19)に - 19 -示されるような形状のカバーを開発した。ここではすでにカバーの内側を楕円にすることで光を拡散するという発想が示されている。 本件発明の特徴は光を拡散するためにカバーを楕円形状にしている点であるが(甲2),これはもともとCにより着想されていたものである。 (2) 亡Xは,平成20年4月21日に被告に入社したが,被告に入社するまではR株式会社及びその関連会社において,主に無線通信システム機器等の設計開発に携わっていたものであって,照明機器の開発とは無縁であり(乙35),照明機器開発の経験は全くなかった。 被告は,Cを中心に開発を進めていたLED照明について,開発や特許出願などの上で研究成果を理論づけてまとめることが必要になると考えていたところ,亡XがCAD(コンピュータを使 験は全くなかった。 被告は,Cを中心に開発を進めていたLED照明について,開発や特許出願などの上で研究成果を理論づけてまとめることが必要になると考えていたところ,亡XがCAD(コンピュータを使用して設計や製図をするシステム)の実務経験を有していたので,研究成果を理論づけCADでまとめてゆくために有用な人材と判断して亡Xを採用したものである。 (3) 被告における当初のLED照明の試作品は照射角が80度しかなく,商品化及び量産化のためにいかにして蛍光灯のように光を拡散させるかということが重要な課題として社内で認識されていた。この点,カバーを楕円形にして光の拡散を図るという発想がすでにCによって提示されていたところ,平成20年7月ころからPと商品開発の打合せを重ねる中,同社より示されたポリカーボネート製の楕円形のカバーのサンプルを応用すれば光が拡散して照射角が広がるのではないかという話になり,このテーマで開発を進めることとなった。これは,Cが,「図番070625-1」の図面(乙31)で示されたモデルを発展させた「図番070625-2」の図面(乙19)における着想を,楕円形のカバーに基づいて具体化するものであった。 (4) その後,被告は,楕円形のカバーを利用して光の拡散を図る製品を作り上げ(乙21,23),このテーマを理論づけるため亡XがCADを使っ - 20 -てまとめを担当し,その結果を特許として申請することとなった。 そして,社内で技術担当のトップにいたCが平成20年8月末に被告を退社していたこともあり,同年9月の特許申請に当たっては,理論的なまとめをした亡Xが発明者ということになったが(甲2),以上に述べた経緯のとおり,本件発明はCの発明をベースに被告が継続して研究開発を行ってきた成果であって,亡Xが本件特許を全部 たっては,理論的なまとめをした亡Xが発明者ということになったが(甲2),以上に述べた経緯のとおり,本件発明はCの発明をベースに被告が継続して研究開発を行ってきた成果であって,亡Xが本件特許を全部発明したわけではなく,同人は最後のまとめ段階に関わっていたにすぎない。 第4 当裁判所の判断 1 争点(1)(被告が本件発明の実施許諾によって他社から受けた実施料の有無及びその額)について(1) 本件職務発明規定においては,職務発明の対価については発明者と会社が協議の上定めるとの文言があるものの,従業者等がした職務発明について支払われるべき相当な対価の額,算定方法及び支払の時期に関する定めはなく,他にこれを定めた契約,勤務規則その他の定めは存在しない。そして,亡Xと被告間で協議が調っていないことは前記のとおりである。 したがって,本件において,被告が原告らに対して支払うべき特許法35条3項に規定する職務発明の相当な対価の額を定めるに当たっては,「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」(同条5項)を算定する必要がある。 この点,上記「使用者等が受けるべき利益」とは,職務発明の対象となる発明を実施することによって得られた利益の全てを指すのではなく,使用者等は職務発明に係る特許発明について無償の法定通常実施権を有する(同法35条1項)ことから,この通常実施権を超えたものの承継により得た法的独占権に由来する利益(以下「独占の利益」という。)を意味すると解されるところ,職務発明に係る特許発明の実施を許諾した場合の実施料収入は,当該特許発明の排他権の結果得られた利益と評価し得るから,実施料収入は, - 21 -原則として,上記独占の利益に該当するというべきである。 (2) 本件における実施料収入の有無証拠(甲3,10,乙3)に 他権の結果得られた利益と評価し得るから,実施料収入は, - 21 -原則として,上記独占の利益に該当するというべきである。 (2) 本件における実施料収入の有無証拠(甲3,10,乙3)によれば,被告の平成20年度の事業年度(平成20年6月1日から平成21年5月31日まで)の損益計算書において,「売上高」という勘定科目で2465万3944円と記載されている一方,「ロイヤリティ売上高」という勘定科目で943万2000円と記載されていること,同事業年度の残高試算表においても,同様の記載がされていること,被告が東京都知事宛に提出した平成22年4月27日付け「新商品の生産による新事業分野開拓者認定申請書」(甲10)の9頁及び10頁に,被告のQに対する「ライセンス」との記載及び新商品の売上高の欄に括弧書きで「ロイヤリティー収入」との記載があることがそれぞれ認められる。しかし,上記の記載は,あくまで「ロイヤリティ売上高」あるいは「ライセンス」及び「ロイヤリティー収入」という抽象的な記載であり,被告の同年度の会計帳簿上,それが具体的に本件特許にかかる特定の第三者に対する実施許諾の対価であることを示すものではない。 他方,証拠(乙13ないし15)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,信用力を得る観点から,顧客からの受注や製造業者への委託をPを介して行っていたものの,平成21年初め頃,被告の経理の都合で,ある特定の顧客の取引に関して,Pの了承を得て同社を介さずに顧客が直接被告に支払うという形を取ったことが認められる。ただし,そのことは,上記特定の顧客からの支払をもって「ロイヤリティ売上高」と記載されたこと,それが全て実施料収入でなかったことを意味するものではなく,他にそれを裏付けるに足りる証拠はない。 以上によれば,本件において,被告が,平成 の支払をもって「ロイヤリティ売上高」と記載されたこと,それが全て実施料収入でなかったことを意味するものではなく,他にそれを裏付けるに足りる証拠はない。 以上によれば,本件において,被告が,平成20年6月1日から平成21年5月31日までの間に本件発明の実施によって受けた実施許諾の対価に関し,上記期間のうち具体的にいつのどのような取引についての対価であるか - 22 -につき明らかではないものの,上記認定の事実を総合考慮すれば,被告の上記損益計算書における「ロイヤリティ売上高」という勘定科目及び同事業年度の残高試算表に記載されている943万2000円のうち,その20パーセントに当たる額である188万6400円をもって本件発明の実施料収入と認めるのが相当である。 (3) 原告らの主張についてア原告らは,被告は本件特許以外にはライセンス可能なめぼしい知的財産等は有していなかったから,決算書類中の損益計算書に記載された同ロイヤリティ売上高はすべて本件特許のライセンスによるものであると主張する。 しかし,仮に,本件特許が被告にとって唯一のめぼしいライセンス可能な知的財産であったとの原告らの上記主張を前提としても,上記(2)で認定した事情に照らせば,そのことをもって当然に,損益計算書の「ロイヤリティ売上高」欄の金額の全てが,本件特許にかかる特定の第三者に対する実施許諾の対価であるとの結論を導けることにはならない。 したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 イ原告らは,Pから被告に対し,本件発明の実施許諾の対価である特許ロイヤリティを支払うという商流が形成されており,「新商品の生産による新事業分野開拓者認定申請書」(甲10)の9頁4項及び10頁5項の記載もこれに沿う旨主張する。 しかし,前記(2)の説示に照ら ロイヤリティを支払うという商流が形成されており,「新商品の生産による新事業分野開拓者認定申請書」(甲10)の9頁4項及び10頁5項の記載もこれに沿う旨主張する。 しかし,前記(2)の説示に照らせば,原告らが主張するようなPを介した取引の存在から直ちに,本件発明の実施許諾の対価である特許ロイヤリティを支払うという商流が形成されており,それがそのまま「ロイヤリティ売上高」943万2000円として計上されたとの事実を導くことは困難であり,このことは,上記「新商品の生産による新事業分野開拓者認定申請書」(甲10)の9頁及び10頁の記載があることを考慮しても,左 - 23 -右されるものではない。 したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 ウ原告らは,「ロイヤリティ」という言葉の語義や,会計実務においてロイヤリティとしての性質を有しないものを「ロイヤリティ」という勘定科目で計上することは不自然である旨主張する。 しかし,前記(2)の説示に照らせば,同(2)に説示した限度を超えて,「ロイヤリティ」という抽象的な記載のみをもって,具体的に,本件発明にかかる特定の第三者に対する実施許諾の対価が存在することを根拠付けることは困難である。 したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 エ原告らは,仮に被告の主張を前提としても,被告が何ら製造・販売等の活動をしていないのに不労所得のような収入が発生するはずはなく,「ロイヤリティ」には実質的に本件発明の実施許諾の対価が含まれることは明らかであり,943万2000円のうち,本件発明の実施許諾の対価は低くともその50%である471万6000円を下回ることはないと主張するが,前記(2)の説示に照らし,同(2)に説示した限度を超える部分については,採用の限りでない。 本件発明の実施許諾の対価は低くともその50%である471万6000円を下回ることはないと主張するが,前記(2)の説示に照らし,同(2)に説示した限度を超える部分については,採用の限りでない。 (4) 被告の主張について被告は,平成20年度の損益計算書等(甲3,乙3)における「ロイヤリティ売上高」という勘定科目は,本件特許の実施許諾等の対価ではないと主張する。 しかし,前記(2)で説示したとおり,「ロイヤリティ売上高」という勘定科目において,本件発明の実施許諾の対価が全く含まれないと認定することは困難である。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 2 争点(2)(被告が本件特許権譲渡より前の期間において本件発明を自ら実施 - 24 -したことにより受けるべき利益の有無及びその額)について(1) 特許権者が他社に実施許諾をせずに,職務発明の対象となる特許発明を自ら実施している場合における独占の利益は,他社に対して職務発明の実施を禁止できることにより,他社に実施許諾していた場合に予想される売上高と比較して,これを上回る売上高(超過売上げ)を得たことに基づく利益(超過利益)をいうものと解される。 ここで超過売上げとは,仮に第三者に実施許諾された事態を想定した場合に使用者が得たであろう仮想の売上高(法定通常実施権に基づく売上げ)と現実に使用者が得た売上高とを比較して算出された差額に相当するものというべきであるが,具体的には,職務発明対象特許の価値,ライセンスポリシー,ライセンス契約の有無,市場占有率,市場における代替技術の存在等の諸般の事情を考慮して定められる独占的地位に起因する一定の割合(超過売上げの割合)を乗じて算出すべきである。 そして,超過利益は,上記方法により算出された超過売 場における代替技術の存在等の諸般の事情を考慮して定められる独占的地位に起因する一定の割合(超過売上げの割合)を乗じて算出すべきである。 そして,超過利益は,上記方法により算出された超過売上高に,仮想実施料率を乗じて算出するのが相当である。 (2) 本件特許権譲渡より前の独占の利益(超過利益)の額証拠(乙39)及び弁論の全趣旨によれば,平成21年6月から本件特許権譲渡より前である平成22年4月までの間の被告製品の売上高は,1億75万8500円であると認められる。 この点,被告の平成21年度(平成21年6月1日から平成22年5月31日まで)の売上高合計は1億8527万7555円であるが(甲7),本件発明の実施品というべき被告製品の売上高としては,1億75万8500円を超える部分についてこれを認めるに足りる証拠がない。 そして,証拠(甲2,4ないし6,9,乙23,31,38)及び弁論の全趣旨によれば,本件発明の実施品である被告製品は,本件発明を採用することによってLED照明装置であるにもかかわらず蛍光灯と同等の特性,照 - 25 -度分布を実現しているという有意な特性を有すること,しかし,蛍光灯と同等の特性,照度分布を実現しているLED照明装置は被告製品に限られず,競合他社の同種の製品が複数存在すること,それにもかかわらず,被告製品が上記のような売上高を上げているのは,被告製品が消費電力が少なく,かつ信頼性が高いとされるS製のLEDを使用している点が主要な要因であると認められること,以上の事実を総合すると,本件における超過売上げの割合は30パーセントであると認めるのが相当である。 次に,甲8(発明協会研究センター編「実施料率」[第5版])によれば,本件発明の属する技術分野である民生用電気機械・電球・照明器具製造 過売上げの割合は30パーセントであると認めるのが相当である。 次に,甲8(発明協会研究センター編「実施料率」[第5版])によれば,本件発明の属する技術分野である民生用電気機械・電球・照明器具製造技術分野における平成4年度から平成10年度における実施料率の平均値は,イニシャル・ペイメント条件無しで4.6%であり,過去に比べて僅かに上昇傾向にあることが認められる。 そうすると,仮想実施料率はこれを5パーセントと認めるのが相当である。 (3) 原告らの主張について原告らは,LED照明の分野は,近年成長が著しく,マーケットの成長及び特許出願件数も急増しており,このような本件発明の独創性,市場性を重視すれば,本件特許の実施料率は10%を下ることはないと主張する。 しかし,原告らも主張するとおり,もともと広角のランバート拡散LEDを使用する場合には,本件発明の実施では競合他社を牽制できる機会は少ないといわざるを得ない。したがって,本件において,本件特許の実施料率が,その属する分野における平均値に近い5パーセントを超えることを基礎付ける事実は認められないというほかない。 (4) 被告の主張についてア被告は,蛍光灯と同等の特性,照度分布を実現しているのは被告製品に限らず,競合他社の同種の製品と比べたとき,本件特許が格別の優位性をもたらすことはなかったと主張する。 - 26 -しかし,被告の上記主張を前提としても,前記のとおり,平成21年6月から本件特許権譲渡より前である平成22年4月までの間の被告製品の売上高が1億75万8500円にまで達しているのであって,同売上げについては,被告製品が消費電力が少なく,S製のLEDを使用していることが主要な要因であったとしても,前記(2)に説示した限度において,蛍光灯と同 5万8500円にまで達しているのであって,同売上げについては,被告製品が消費電力が少なく,S製のLEDを使用していることが主要な要因であったとしても,前記(2)に説示した限度において,蛍光灯と同等の特性,照度分布を実現しているLED照明装置として,本件発明の実施品であることが寄与していることは否定できないというべきである。 イ被告は,被告製品は,多額の販売費及び一般管理費をかけ,営業担当が多大な労力を費やすことでようやく一定の売上げを得たが,利益を生み出すには至らなかったと主張する。 確かに,証拠(甲7)によれば,被告は,平成21年度の事業年度(平成21年6月1日から平成22年5月31日まで)において,売上高1億8527万7555円,売上原価1億3082万8996円,売上総利益5444万8559円に対し,販売費及び一般管理費が合計5703万9796円に達しており,結局,営業利益がなかったことが認められる。しかし,同販売費及び一般管理費の内訳(科目や金額)を具体的に検討すると,被告製品の売上げに応じて変動するいわゆる変動経費以外の経費が相当額含まれていると認められるから,1億75万8500円の売上高を上げている被告製品が,何ら利益を生み出しておらず本件発明の実施によって受けた利益と評価される額を零であるということはできない。 したがって,被告の上記主張も採用することはできない。 3 争点(3)(被告が本件特許権譲渡を行ったことにより受けるべき利益の有無及びその額)について(1) 前記第2,2(2)カ記載のとおり,被告は,平成22年5月25日,Oに対し,本件特許権を譲渡したところ,証拠(甲1,乙8)及び弁論の全趣 - 27 -旨によれば,その譲渡価格は2500万円であること,本件特許権の譲渡の登録,譲渡価格の代金支払の処 月25日,Oに対し,本件特許権を譲渡したところ,証拠(甲1,乙8)及び弁論の全趣 - 27 -旨によれば,その譲渡価格は2500万円であること,本件特許権の譲渡の登録,譲渡価格の代金支払の処理等,その履行は終了していることがそれぞれ認められる。以上によれば,上記時点において,被告及びOの双方とも,当事者の合理的意思として,本件特許を実施することによって得られる利益の全てをもって,これを2500万円と評価していたというべきである。 そして,本件譲渡契約書(乙8)において,平成22年5月21日から平成23年5月20日までの1年間の非独占的な実施許諾期間が経過した後であっても,被告において引き続き通常実施権の行使ができると解する根拠となる規定は見当たらない。 そうすると,被告は,Oに対し,上記特許権譲渡にあたって,留保された平成22年5月21日から平成23年5月20日までの1年間の非独占的な実施権のほかは,平成40年9月29日までの本件特許の存続期間における上記法定通常実施権の部分をも譲渡しているといわざるを得ない。 そこで,上記譲渡価格2500万円のうち上記独占の利益の部分に該当する金額を算定するためには,上記2500万円から上記通常実施権の部分を控除する必要があるところ,1年間の許諾期間の後は17年あまりの間通常実施権が行使できなくなること,同1年間の許諾期間である平成22年5月から平成23年5月までの間,被告製品はある程度の売上高(2097万円)があったことなどの諸事情を考慮すれば,本件特許権譲渡における独占の利益は800万円と認めるのが相当である。 なお,証拠(乙6,16,17,39)によれば,被告においては,平成23年1月頃から本件特許を使用しない新製品の販売を開始し,被告製品の売上げは大きく減少したことが認められ 認めるのが相当である。 なお,証拠(乙6,16,17,39)によれば,被告においては,平成23年1月頃から本件特許を使用しない新製品の販売を開始し,被告製品の売上げは大きく減少したことが認められるが,本件特許権譲渡により,Oが被告に対し譲渡価格である2500万円相当の経済的利益を与えたことに変わりはないから,上記事実は,当事者の合理的意思として,同譲渡時点にお - 28 -いて,本件発明を実施することによって得られる利益を2500万円と評価していたとの認定を左右するものではない。 (2) 原告らの主張について原告らは,本件特許権譲渡の対価は,その全額が本件特許によって現実に得られた利益であり,譲渡日から特許期間満了日までの実施料相当額と等価であって,同2500万円は,被告が,本件特許権譲渡を行ったことに係る本件発明の実施により受けるべき利益の額であると主張する。 しかし,上記(1)のとおり,被告は,Oに対し,上記独占の利益を譲渡するとともに,留保された平成22年5月21日から平成23年5月20日までの1年間の非独占的な実施権のほかは,平成40年9月29日までの本件特許の存続期間における上記法定通常実施権の部分をも譲渡しているといわざるを得ないから,本件特許権譲渡の対価の全額が,譲渡日から特許期間満了日までの実施料相当額と等価であるとか,独占の利益として本件発明の実施により受けるべき利益の額であるということはできない。 したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 (3) 被告の主張について被告は,本件特許権譲渡は,被告のOに対する借入金に対する代物弁済的な処理として行われたもので,本件特許権譲渡において,譲渡契約上の対価は2500万円とされていたとしても,それは,本件特許の財産的価値を2500万円と 渡は,被告のOに対する借入金に対する代物弁済的な処理として行われたもので,本件特許権譲渡において,譲渡契約上の対価は2500万円とされていたとしても,それは,本件特許の財産的価値を2500万円と評価したものではないから,これを特許法35条5項の「受けるべき利益」の算定の基礎とはできない旨主張する。 しかし,仮に被告の上記主張を前提としても,それは,本件特許権譲渡の譲渡代金支払の処理につき,通常の送金等でなく代物弁済等により行われたことをいうにすぎず,上記譲渡によって,被告が1年間の非独占的な実施権の留保付きで本件特許を譲渡する対価として2500万円の経済的利益を得たことに変わりはないというべきである。 - 29 -したがって,被告の上記主張は採用することができない。 4 争点(4)(被告が本件特許権譲渡以後の期間において本件発明を自ら実施することにより受けるべき利益の有無及びその額)について(1) 被告製品の平成22年5月から平成23年5月までの売上げに係る利益について原告らは,無償通常実施権の許諾は,本件譲渡契約書の特約としてなされたものであり,被告は,本件特許の排他的効力によって一定の利益を得るにもかかわらず,かかる特約によって本件特許の実施料は無償とされているのであるから,本件特許の譲渡によって,上記期間の売上げより算出される仮想実施料相当額の利益を得ていると主張する。 しかし,前記のとおり,職務発明における使用者は,特許を受ける権利を承継することがなくても当然に当該発明について特許法35条1項が規定する法定通常実施権を有することを考慮すれば,上記無償通常実施権の許諾についても,もともと職務発明における使用者が有しているものと同様の権利関係が続いたことを意味するにすぎず,これは,職務発明の相当対価の算定基礎 権を有することを考慮すれば,上記無償通常実施権の許諾についても,もともと職務発明における使用者が有しているものと同様の権利関係が続いたことを意味するにすぎず,これは,職務発明の相当対価の算定基礎となる,単なる通常実施権を超えたものの承継により得た法的独占権に由来する独占の利益とは関係がないというべきであり,このことは,本件譲渡契約書の特約として上記無償通常実施権の許諾がなされていることによって左右されるものではない。 したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 (2) 被告製品の平成23年6月から本件特許の存続期間満了までの売上げに係る利益について原告らは,被告製品の平成23年6月から本件特許の存続期間満了までの売上げに係る利益についても職務発明の相当な対価として算定すべきであると主張する。 しかし,特許権が譲渡された場合は,譲受人から使用者が得た譲渡対価が - 30 -「受けるべき利益」として考慮されるが,使用者が特許権を第三者に譲渡した後は,使用者が当該特許を実施することにより上記独占の利益を上げることはできないから,使用者は相当対価の支払を要しないというべきである。 そうすると,本件においても,被告における本件特許権譲渡の後の本件特許の存続期間についての売上高を予想してこれを「受けるべき利益」として考慮することはできない。 したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 5 争点(5)(被告の貢献度等)について(1) 証拠(乙21,23,26ないし29,31)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,Cの開発したLED照明を製造販売する会社として平成19年6月1日に設立された会社であること,被告においてはS製のLED素子を製品に使用していたが,同社製のLED素子は信頼性が高いものの照 被告は,Cの開発したLED照明を製造販売する会社として平成19年6月1日に設立された会社であること,被告においてはS製のLED素子を製品に使用していたが,同社製のLED素子は信頼性が高いものの照射角が狭かったため,蛍光灯のように光を拡散させるためにその照射角をいかに広げるかが被告における重要な研究課題となっていたこと,Cは,この課題を解決するため研究を続け,平成19年3月2日,同課題を解決する手段に関する特許出願(乙26)を,さらに,同年5月30日,同様の実用新案登録出願(乙27)を行い,その具体的な手段として,LED照明装置のカバーに中空部を設けて二重構造にし,レンズ効果で光の拡散を図ることを提示していたこと,Cはこの二重構造のアイデアを基に研究を続け,平成19年11月,アクリルカバーに関する発注を行い(乙31),さらに,平成20年5月頃,これを改良した部品の発注を行ったが,ここにおいて,既にカバーの内側を楕円形状にすることで光を拡散するという発想が示されていたこと,亡Xは,こうしたCの先行研究を基に本件発明を完成させたものであり,その研究のための場所,費用,機器及び資材は被告が提供したこと,本件発明の完成後,亡Xと被告代表者は,特許事務所との協議や特許庁の審査官面接に出席し,特許の手続費用は被告が - 31 -負担したこと,以上の事実が認められる。 上記事実によれば,亡Xが被告の従業員として本件発明を完成させ権利化するに当たっては,Cの相当程度の貢献があったというべきであって,これに被告における営業努力(甲7)等の本件における一切の事情を考慮すると,被告の貢献度を95パーセントと認めるのが相当である。 (2) 原告らの主張について原告らは,本件発明は,主に亡Xが着想したものであり,本件発明の着想に具体的にCらが 切の事情を考慮すると,被告の貢献度を95パーセントと認めるのが相当である。 (2) 原告らの主張について原告らは,本件発明は,主に亡Xが着想したものであり,本件発明の着想に具体的にCらが関わったとする証拠は何ら存在せず,また,これらを評価するとしても,せいぜい発明の課題を示し,発明のきっかけを与えたにすぎないのであって,発明の中核的な主題,具体的な課題解決方法は何ら示唆も教示もされていないのであるから,被告の貢献度は50%を上回ることはないと主張する。 しかし,前記(1)のとおり,Cの先行研究において,既にカバーの内側を楕円形状にすることで光を拡散するという発想が示されており,亡Xは,こうしたCの先行研究を基に本件発明を完成させ,これらが被告製品に結実したものと認められ,被告製品の開発に当たっては,少なくとも,Cが発明の課題を示し課題解決手段の示唆を与えるという関与をしているものと評価すべきであるから,亡Xが被告の従業員として本件発明を完成させ権利化するに当たっては,Cひいては被告の相当程度の貢献があったというべきである。 したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 (3) 被告の主張について被告は,本件発明はCの発明をベースに被告が継続して研究開発を行ってきた成果であって,亡Xが本件特許を全部発明したわけではなく,同人は最後のまとめ段階に関わっていたにすぎず,被告の貢献度は100パーセントに近いと主張する。 しかし,前記(1)のとおり,本件発明の完成等についてのCひいては被告 - 32 -が重要な役割を果たしていたことを前提としても,亡Xが最終段階において本件発明の着想及び具体化に貢献していたことは明らかであり,本件特許の特許公報に被告自らが亡Xを発明者として記載していたことも上記事 要な役割を果たしていたことを前提としても,亡Xが最終段階において本件発明の着想及び具体化に貢献していたことは明らかであり,本件特許の特許公報に被告自らが亡Xを発明者として記載していたことも上記事実を裏付けているというべきである。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 6 相当対価の額(1) 以上の認定によると,亡Xが職務発明について本件特許を受ける権利を被告に承継させたことに対する相当の対価として支払を受けるべき額は,次のとおり,56万9888円と認められる。 188万6400円×(1-0.95)=9万4320円1億0075万8500円×0.3(超過売上率)×0.05(仮想実施料率)×(1-0.95)=7万5568円800万円×(1-0.95)=40万円9万4320円+7万5568円+40万円=56万9888円(2) 原告らの請求に対する認容額そして,職務発明の相当対価支払請求権56万9888円は亡Xの遺産に該当するところ,原告らの相続割合は前記第2,2(1)イ記載のとおりであるから,原告A1は,相続分2分の1に相当する28万4944円を,原告A2及び原告A3は相続分各4分の1に相当する各14万2472円を,それぞれ承継するものと認められる。 7 結論以上によれば,原告らの請求は,上記6(2)の金額及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払の限度において理由があるからこれを認容し,その余は失当であるから棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 - 33 - 裁判長裁判官 東海林 主文 ととして,主文のとおり判決する。 理由 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 東海林保 裁判官 田中孝一 裁判官 足立拓人
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