令和4(わ)123 公職選挙法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
令和5年10月31日 広島地方裁判所
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判決文本文9,400 文字)

主文 被告人を罰金30万円に処する。 その罰金を完納することができないときは、5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。 被告人から50万円を追徴する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、令和元年7月21日施行の第25回参議院議員通常選挙に際し、広島県選出議員選挙の選挙人であり、かつ、同選挙に立候補する決意を有していたAの選挙運動者であるが、同人に当選を得しめる目的をもって、同人への投票及び投票取りまとめなどの選挙運動をすることの報酬として供与されるものであることを知りながら、第1 平成31年4月8日、広島市B区C丁目D番E号被告人事務所前駐車場において、前記Aの配偶者であるFから、現金30万円の供与を受け、第2 令和元年6月1日、前記被告人事務所前駐車場に駐車中の自動車内において、前記Fから、現金20万円の供与を受けた。 (証拠の標目)省略(事実認定の補足説明)第1 争点被告人がFから判示の日時場所において現金30万円及び現金20万円の供与を受けたことに争いはなく、証拠上も優に認定できる。 本件の争点は、①金銭交付の趣旨、すなわち、被告人がFから供与を受けた各現金が、第25回参議院議員通常選挙の広島県選出議員選挙(以下「本件選挙」という。)において、Aに当選を得しめる目的をもってAへの投票及び投票取りまとめなどの選挙運動をすることの報酬を含むものであったか、②このような金 銭交付の趣旨を被告人が認識していたか、③本件公訴提起が公訴権を濫用してなされたものとして、公訴を棄却すべきかである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実関係証拠によれば、以下の事実が認められる。 (1)被告人、F、Aの立場等被告人は、平成23年から広島市B区 されたものとして、公訴を棄却すべきかである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実関係証拠によれば、以下の事実が認められる。 (1)被告人、F、Aの立場等被告人は、平成23年から広島市B区選出の広島市議会議員に2回当選し、平成31年3月29日告示、同年4月7日投票の広島市議会議員選挙にも立候補して当選した。被告人は、本件当時、広島市議会内のG党系の会派であるHの副幹事長を務めていた。 Fは、本件当時、G党に所属し、広島県第三選挙区(広島市I区及びB区等)から立候補して当選を重ねてきた現職の衆議院議員であった。 Fの配偶者であるAは、広島市I区選出の広島県議会議員等を務め、平成31年4月29日付けで広島県議会議員の任期を終え、本件当時は、後述するように本件選挙に立候補する旨の表明をしていた。 被告人は、Fが広島県議会議員に初当選した平成3年頃にFと知り合い、Fが国会議員に初当選した平成8年頃からFとの親交を深めた。それ以降、被告人は、Fの選挙の際に応援弁士を務めるなどの支援をした。また、被告人は、自らの選挙区で、Fの選挙区でもある広島市B区の住民等のため活動するFに対し、自らの地域活動における助力を得るべく、日頃からFとの良好な人間関係を形成しておきたいと考えていた。そうしたこともあり、被告人は、Fの配偶者であるAが平成21年施行の広島県知事選挙に立候補した際に、選挙カーを先導するなどの支援をした。 被告人は、広島市議会議員となった後の平成24年頃から、夏と冬の年2回程度、Fの事務所に呼び出され、氷代や餅代としてFから現金10万円を受領していた。 被告人は、当初、これらの現金について領収証を発行しておらず、収支報告書に計上していなかったが、平成29年頃以降、F側からの指示で、領収証を交付した上、 Fが支部長を務めるG党 領していた。 被告人は、当初、これらの現金について領収証を発行しておらず、収支報告書に計上していなかったが、平成29年頃以降、F側からの指示で、領収証を交付した上、 Fが支部長を務めるG党広島県第三選挙区支部からの寄附金として計上していた。 これらの現金以外に、被告人が本件以前にFから金銭を受領したことはなかった。 (2)本件選挙をめぐる状況等ア本件選挙は、広島県全域を選挙区とし、令和元年7月4日に公示され、同月21日に施行され、定数は2名であった。G党本部は、G党広島県支部連合会(以下「広島県連」という。)の公認申請を経て、前年の平成30年7月頃、本件選挙の公認候補者として、当時の現職のJを擁立することを決定した。その後、G党本部は、本件選挙における2人目の公認候補者の擁立について広島県連の意見を求め、広島県連は反対の意見を表明したが、G党本部は、平成31年3月13日、Aを2人目の公認候補者として擁立することを決定し、Aは、同月20日、本件選挙への立候補を表明した。なお、この時点で、当時現職の参議院議員であったJら2名を含む複数の候補者が本件選挙への立候補を表明していた。広島県連は、2人目の公認候補者の擁立というG党本部の決定に反発し、同月中旬から下旬頃にかけて、本件選挙においてはJのみを支援してAの支援は行わない方針を決定し、現に、同月下旬頃にFの公設秘書から各種団体名簿の提供を求められた際に、これを拒否するなどした。 イ被告人は、遅くとも平成31年3月下旬頃までには、報道等により、G党の2人目の公認候補者として本件選挙にAが立候補することや、Jを支援する広島県連の方針とAを擁立したG党本部の方針が対立し、Aが広島県連の支援を受けられないことを認識しており、Aにとっては野党の候補者も交えた三つ巴の厳しい選挙になると が立候補することや、Jを支援する広島県連の方針とAを擁立したG党本部の方針が対立し、Aが広島県連の支援を受けられないことを認識しており、Aにとっては野党の候補者も交えた三つ巴の厳しい選挙になると感じていた。その上で、被告人は、自らの選挙区である広島市B区等に甚大な被害をもたらした豪雨災害に際し、Fが国会議員として復興に尽力してくれたことに恩義を感じていたことなどから、Jからの支援要請を断り、Aの支援を行うことを決め、その旨をFに伝えていた。 (3)Fによる現金供与の状況等Fは、相手方の氏名や供与額を記載したリストを作成しながら、広島県内の地方 議会議員らに現金を供与した。当該リストは、遅くとも平成31年3月30日までに新規作成された「陣中見舞い等」と題するデータファイルで、「A参議院議員選挙’19」と題するフォルダに保存されており、当該リスト内には「B区」「被告人30+20」という記載もあった。 (4)被告人への金銭交付の経緯・状況等ア平成31年4月8日の金銭交付被告人は、平成31年4月8日未明、広島市議会議員選挙に当選したことが判明し、同日朝から、被告人の事務所で支援者らへの挨拶等をしていたところ、Fが、同日午前11時半頃、事前の連絡なく来訪した。Fは、被告人に、当選の祝辞やねぎらいの言葉を述べたり、当選を祝う為書きを持参して被告人と写真撮影をしたりした。被告人は、Fが帰る際、Fを見送るため、Fと共に事務所を出て、事務所前駐車場のFの車の傍まで行った。すると、Fは、被告人に対し、本当によかったね、おめでとうなどと声を掛け、現金30万円入りの封筒を内ポケットから出して被告人に差し出した。被告人は、封筒の中身は現金であり、これまでFから受け取った金額よりも多いと感じつつ、これを受け取った。 被告人は、この現金30 け、現金30万円入りの封筒を内ポケットから出して被告人に差し出した。被告人は、封筒の中身は現金であり、これまでFから受け取った金額よりも多いと感じつつ、これを受け取った。 被告人は、この現金30万円について、Fから領収証の交付を求められず、領収証を交付しなかった。また、被告人は、平成31年4月22日から令和元年5月24日までの間に、広島市B区選挙管理委員会事務局に対し、広島市議会議員選挙の選挙運動費用収支報告書を3通提出したが、そのいずれにも、F側から現金30万円を供与された旨の記載をしなかった。 イ令和元年6月1日の金銭交付被告人は、Fの秘書から連絡を受け、訪問の目的を告げられないまま、令和元年6月1日午後2時にFと会う約束をした。 Fは、同日午後2時半頃、被告人の事務所を訪問し、机上に、Aのポスター、Aに関する記事が掲載されたG党の機関紙、Aの後援会入会申込書等を並べ、被告人に対し、被告人が役職を務める地域団体の役員等にAやG党のPRをして欲しい旨 を伝えた。その後、被告人は、Fを事務所前の駐車場まで送り、Fの乗った車のドアを閉めようとすると、Fから車に乗るよう指示され、車内に乗り込んだ。Fは、二人きりの車内で、被告人に対し、いつもの活動費などと述べて、内ポケットから現金20万円入りの封筒を出して被告人に差し出した。被告人は、封筒の中には現金が入っていると認識しつつ、一度は受領を断ったが、Fは、いいから収めとけなどと言うなどし、被告人の内ポケットに現金入りの封筒を差し入れた。 被告人は、この現金20万円についても、Fから領収証の交付を求められず、領収証を交付しなかった。 (5)その後の被告人の行動等被告人は、Fから受領した現金30万円と現金20万円を、現金の保管に用いているポシェット内に他の現金と混ざった状態 収証の交付を求められず、領収証を交付しなかった。 (5)その後の被告人の行動等被告人は、Fから受領した現金30万円と現金20万円を、現金の保管に用いているポシェット内に他の現金と混ざった状態のまま保管し、それらの現金を慶弔費等に使った。 また、被告人は、本件選挙において、前記のとおりAを支援した。すなわち、被告人は、地元である広島市B区K地区でAのポスターを貼ったり、妻と共に記載した公選はがきを合計500枚余りAの選挙事務所に持って行ったり、Aの出陣式や立会演説会に行ったりした。 その後、被告人は、令和3年2月9日、ポシェットから出した現金50万円を、Fの事務所に宛てて現金書留で郵送した。 また、被告人は、令和3年5月25日、広島県選挙管理委員会に対し、自らが代表を務める政治団体の令和元年分の収支報告書を提出したが、F側から現金30万円及び現金20万円の供与を受けた旨の記載をしなかった。 2 判断(1)金銭交付の趣旨についてア認定事実によると、本件選挙には、現職2名を含む複数の者が立候補を予定しており、Aが本件選挙で当選するためには、当時現職だったJら2名のうち少なくとも1名よりも多くの票を獲得する必要があった。しかし、本件選挙の約1年前 にG党の公認候補者となったJと異なり、AがG党の公認候補者となったのは本件選挙の公示日の3か月余り前になってからのことであった。また、Aが公認された経緯からすると、Aの選挙活動において、広島県連からの支援は期待できない状況であった。これらの事情からすれば、本件選挙におけるAの選挙情勢は厳しく、当選を楽観視できる状況にはなく、そのことは、当時、現職の衆議院議員であり、かつ、配偶者としてAの選挙を支援していたFも当然よく理解していたと認められる。 このような状況下で、Fは、 情勢は厳しく、当選を楽観視できる状況にはなく、そのことは、当時、現職の衆議院議員であり、かつ、配偶者としてAの選挙を支援していたFも当然よく理解していたと認められる。 このような状況下で、Fは、配偶者であるAが本件選挙に立候補を表明した約20日後に、広島市議会内のG党系会派の副幹事長を務めるなどの一定の立場にあり、Fの選挙区内の広島市B区から選出された広島市議会議員でもあって、長年の親交があり、過去にはFやAの選挙を支援し、しかも、本件選挙では、広島県連がJのみを支援するという方針の中、Aを支援する意向を示していた被告人の事務所を訪問し、当選直後の被告人に対して現金30万円を交付している。また、Fは、本件選挙の公示日の約1か月前にも、被告人の事務所を訪問し、Aのポスター等を被告人に渡し、AのPR等を依頼した上で、被告人に対し、現金20万円を交付している。 そして、Fは、このような被告人に対する金銭交付と合致する「B区」「被告人30+20」という記載のあるリストを「A参議院議員選挙’19」と題するフォルダ内に保存していた。 これら本件選挙におけるAの置かれた状況、AとFとの関係、金銭交付の時期、交付した金額、リストの保存状況、金銭交付時におけるFの言動等に照らすと、Fが被告人に交付した各金銭に、本件選挙に関し、Aを当選させる目的で、Aへの投票や投票取りまとめなどの選挙運動をすることの報酬が含まれていたことは明らかである。 なお、以上を前提とすると、被告人がAの選挙運動者に該当することも明らかである。 イこの点につき、Fは、本件選挙でAが当選すると思っていた旨や、被告人に 交付した現金30万円は陣中見舞い、現金20万円は当選祝いが主たる趣旨であり、その他党勢拡大活動、地盤培養行為、県政界における政治的影響力の拡大、被告 Aが当選すると思っていた旨や、被告人に 交付した現金30万円は陣中見舞い、現金20万円は当選祝いが主たる趣旨であり、その他党勢拡大活動、地盤培養行為、県政界における政治的影響力の拡大、被告人との社交といった趣旨もあった旨証言している。しかし、Fは、その証言を前提とした言動等からすると、要するに、厳しい選挙情勢であるが、Aには当選の見込みがあり、是非Aを当選させたいと思っていたというにすぎない。また、現金に陣中見舞いや当選祝いの趣旨が含まれているとしても、前記の報酬の趣旨が含まれていることとは矛盾しない。むしろ、Fは、被告人への金銭交付に際し、Aを当選させてほしい気持ちがあったことは否定できない旨も証言している。加えて、Fの現金の趣旨に関する証言は、主たる趣旨につき、現金30万円の交付時のFの言動とも整合的とはいえず、後述の被告人の供述する趣旨とも食い違う。この点のFの証言は、前記認定に影響しない。 ウ弁護人は、そもそも、政治家間での現金授受は日常的なものであるし、政治家である以上は常に選挙のことは頭から離れないのであるから、選挙のことが少しでも頭にあれば買収目的が認められるとすると、政治家間の現金授受はおよそ許されなくなるから、処罰されるべき買収目的の金銭授受は、特定の選挙について、具体的な選挙支援を明示で依頼して、その趣旨を明確にした場合など、明確に買収目的が認定できる場合に限られると主張する。しかし、政治家のみを特別視して公職選挙法上の買収罪の成立をそのような場合に限定すべき理由は全く見出せない。仮にその主張を買収目的の認定は政治家間での現金授受の実態を踏まえてなされるべきであるとの主張と善解するとしても、Fが被告人に対してこれまで毎年氷代や餅代として現金10万円を渡していたとはいえ、時期や金額、渡し方等は今回の現金 政治家間での現金授受の実態を踏まえてなされるべきであるとの主張と善解するとしても、Fが被告人に対してこれまで毎年氷代や餅代として現金10万円を渡していたとはいえ、時期や金額、渡し方等は今回の現金交付と明らかに異なっているのであって、前記認定は揺るがない。 (2)被告人の認識についてア認定事実のとおり、被告人は、本件選挙に立候補したAが厳しい選挙情勢に立たされることを認識した上で、Fに対し、Aを支援する意向を伝えていたのであるから、自らが、AやFからAの当選に向けた支援を期待されていることは当然認 識していた。そのような状況において、被告人は、従前は、Fから夏と冬に各10万円の現金を受領していたにとどまるのに、Aが本件選挙に立候補を表明してから約20日後というそれほど間がない時期に現金30万円を、本件選挙の公示日が約1か月後に迫った時期に現金20万円をそれぞれ受領している。特に、被告人は、現金20万円の受領の際、FからAのポスター等を渡された上でAのPRの依頼もされていた。 また、被告人は、Fから受領した現金30万円及び現金20万円のいずれについても、Fから近年定期的に受領していた現金とは異なり、領収証を交付せず、収支報告書にF側からの供与として記載しておらず、これは、被告人が、Fから受領した各金銭が買収目的を含む違法なものであったとの認識を有していたことと整合する。 これらによると、被告人において、Fが被告人に交付した各金銭に、本件選挙に関し、Aを当選させる目的で、Aへの投票や投票取りまとめなどの選挙運動をすることの報酬が含まれていたことを認識していたことは明らかである。 イこれに対し、被告人は、現金30万円については、被告人自身の選挙の当選祝いとして、現金20万円については、G党の党勢拡大に必要な経費として交付を まれていたことを認識していたことは明らかである。 イこれに対し、被告人は、現金30万円については、被告人自身の選挙の当選祝いとして、現金20万円については、G党の党勢拡大に必要な経費として交付を受けたものであり、Aの当選に向けた選挙運動の報酬を含むものとは認識していなかった旨供述し、弁護人もこれと同旨の主張をする。 しかし、各現金に当選祝いや党勢拡大の趣旨が含まれているとしても、前記報酬の趣旨が含まれていることは否定されない。個別にみても、現金30万円については、被告人は、それまで被告人の選挙に際してFから金銭を受け取ったことがない中で、本件選挙において厳しい情勢に立つことが予想されていたAの配偶者であるFから、Aが立候補を表明して間もない時期に30万円というこれまでに比して多額の金銭の交付を受けたのであるから、その際、Fから、Aの選挙の話はなく、当選祝いの言葉を掛けられたとしても、その金銭にAの当選に向けた選挙運動の報酬が含まれていることを全く認識していなかった旨を言う被告人の弁解は不自然不合 理であり、信用できない。また、現金20万円についても、被告人は、本件選挙が迫った時期に、Fから、Aのポスター等を渡され、AのPRを依頼された上で、20万円という多額の金銭の交付を受けたのであるから、その金銭が本件選挙におけるAへの支援とは無関係であると考えた旨を言う被告人の供述はおよそ不自然不合理であり、全く信用できない。 (3)公訴権濫用について弁護人は、本件選挙におけるF又はAの一連の現金供与に関し、検察官が、F及びAを公職選挙法違反で起訴するために、被告人を含む受供与者らに対し、不起訴を示唆した違法な司法取引を持ち掛け、これにより買収目的の認識を認める各地方議会議員らの虚偽の自白調書や、Fの公判における虚偽の公判供述が 法違反で起訴するために、被告人を含む受供与者らに対し、不起訴を示唆した違法な司法取引を持ち掛け、これにより買収目的の認識を認める各地方議会議員らの虚偽の自白調書や、Fの公判における虚偽の公判供述が作出され、更には、これらの虚偽の証拠により、検察審査会における起訴相当の議決をさせ、約束を反故にしていわば詐欺ともいうべき起訴をしているのであるから、その違法性は重大であり、公訴権の濫用として公訴を棄却すべきである旨主張する。 関係証拠によると、検察官は、不起訴を前提として被告人を取り調べ、被告人は、不起訴となることを期待して検察官の意に沿う供述をした上、Fの公判においても検察官の意に沿う証言をしたことは否定できない。しかし、本件公訴提起の経緯をみると、検察官は、その後、被告人に対する本件事件につき不起訴(起訴猶予)処分をし、検察審査会はその検察官の不起訴の判断は不当であり被告人を起訴するのが相当であるとの議決をし、本件公訴提起はその検察審査会の判断を踏まえてなされたものである。そうすると、本件公訴提起が公訴を棄却すべきほどの違法性を有するとはいえず、ましてや公訴の提起自体が職務犯罪を構成するような極限的な場合に当たるとはいえない。 弁護人の主張には理由がない。 3 結論以上のとおり、①金銭交付の趣旨は、本件選挙においてAに当選を得しめる目的をもってAへの投票及び投票取りまとめなどの選挙運動をすることの報酬を含むも のであり、かつ、②このことを被告人も認識していたと認められる。また、③本件公訴提起が公訴権を濫用してなされたものとして、公訴を棄却すべきであるとはいえない。 (法令の適用)罰条いずれも公職選挙法221条1項4号、1号刑種の選択いずれも罰金刑を選択併合罪の処理刑法45条前段、48条2項( 、公訴を棄却すべきであるとはいえない。 (法令の適用)罰条いずれも公職選挙法221条1項4号、1号刑種の選択いずれも罰金刑を選択併合罪の処理刑法45条前段、48条2項(各罪所定の罰金の多額を合計)労役場留置刑法18条追徴いずれも公職選挙法224条後段(被告人が、判示第1の犯行により取得した現金30万円、判示第2の犯行により取得した現金20万円は、いずれも公職選挙法224条前段の収受した利益に該当するが、既に費消してその全部を没収することができないので、その価額を追徴する。)(量刑の理由)本件は、当時現職の市議会議員であった被告人が、国政選挙である参議院議員選挙に際して、選挙買収のための現金の供与を受けた事案である。 被告人が受領した現金は、合計50万円と相当に高額であり、本件は選挙の公正を害するおそれの高い犯行である。従前からのFとの関係からすれば、被告人は、自らの選挙区を含む選挙区選出の現職衆議院議員であり恩義も感じていたFからの現金供与を拒みにくいとの心情があったことは否定できない上、現金受領前には既にAへの支援を決意しており、本件現金を受領したことからAの支援をしたとはいえない。しかし、被告人は、当時、現職の市議会議員であり、公職選挙法の遵守が強く求められる立場にあったにもかかわらず、2度にわたりFから現金を受領して おり、その意思決定には相応の非難がされるべきである。被告人の刑事責任は軽視できない。 これらに加え、被告人は、本件発覚後、受領した金額と同額の現金をF側に送付している一方、検察審査会の起訴相当議決を受けてもなお任期満了まで議員を続けたこと、さらには、Fから金銭を供与された他の地方議会議員らとの均衡も考慮し、被告人に対しては、主文の罰金 現金をF側に送付している一方、検察審査会の起訴相当議決を受けてもなお任期満了まで議員を続けたこと、さらには、Fから金銭を供与された他の地方議会議員らとの均衡も考慮し、被告人に対しては、主文の罰金刑を科すのが相当であると判断した。 よって、主文のとおり判決する。 (検察官の求刑-罰金50万円、主文同旨の追徴)令和5年11月7日広島地方裁判所刑事第2部裁判長裁判官後藤有己 裁判官櫻井真理子 裁判官林宏樹

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