令和1(行ヒ)367 地方自治法251条の5に基づく違法な国の関与(裁決)の取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和2年3月26日 最高裁判所第一小法廷 判決 棄却 福岡高等裁判所 那覇支部 令和1(行ケ)2
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判決文本文7,693 文字)

- 1 -令和元年(行ヒ)第367号地方自治法251条の5に基づく違法な国の関与(裁決)の取消請求事件令和2年3月26日第一小法廷判決 主文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理由 上告代理人加藤裕ほかの上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について 1 沖縄防衛局は,沖縄県宜野湾市所在の普天間飛行場の代替施設を同県名護市辺野古沿岸域に設置するための公有水面の埋立て(以下「本件埋立事業」という。)につき同県知事から公有水面埋立法42条1項の承認(以下「本件埋立承認」という。)を受けていたが,事後に判明した事情等を理由として本件埋立承認が取り消されたことから(以下,この取消しを「本件埋立承認取消し」という。),これを不服として被上告人に対し行政不服審査法に基づく審査請求をしたところ,被上告人は,本件埋立承認取消しを取り消す旨の裁決(以下「本件裁決」という。)をした。本件は,上告人が,本件裁決は違法な「国の関与」に当たると主張して,地方自治法251条の5第1項に基づき,被上告人を相手に,本件裁決の取消しを求める事案である。 2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。 (1) 国は,アメリカ合衆国軍隊が使用する普天間飛行場につき,同国との間で,一定の措置を講じた後に返還される旨を合意し,その後,同飛行場の代替施設を名護市辺野古沿岸域に設置することとした。 (2) 沖縄防衛局は,名護市辺野古に所在するキャンプ・シュワブの施設敷地内 - 2 -の辺野古崎地区及びこれに隣接する水域に上記代替施設を設置するため,平成25年3月22日,沖縄県知事に対し,辺野古崎に隣接 衛局は,名護市辺野古に所在するキャンプ・シュワブの施設敷地内 - 2 -の辺野古崎地区及びこれに隣接する水域に上記代替施設を設置するため,平成25年3月22日,沖縄県知事に対し,辺野古崎に隣接する区域の公有水面の埋立て(本件埋立事業)の承認を求めて,公有水面埋立承認願書を提出した。 当時の仲井眞弘多沖縄県知事は,上記の出願につき,公有水面埋立法4条1項各号の要件に適合すると判断して,平成25年12月27日,本件埋立承認をした。 (3)ア翁長雄志前沖縄県知事は,平成30年7月31日,沖縄防衛局長に対し,本件埋立承認の取消しに係る聴聞を同年8月9日に実施する旨を通知した。同聴聞は,同日に実施され,終了した。 イ翁長前知事は,平成30年8月8日,死亡した。これにより沖縄県知事の職務代理者(地方自治法152条1項)となった富川盛武副知事は,同法153条1項に基づき,謝花喜一郎副知事に対し,委任期間を同月16日から同県知事選挙における当選人の告示の日の前日までとして,「普天間飛行場代替施設建設事業に対する公有水面埋立ての承認の取消処分」の事務を委任した。 ウ上記の委任に基づき,謝花副知事は,平成30年8月31日,沖縄防衛局に対し,本件埋立承認後に判明した事情によれば本件埋立事業は公有水面埋立法4条1項1号及び2号の各要件に適合していないこと,本件埋立承認の附款である留意事項に沖縄防衛局が違反していること等を理由として,本件埋立承認取消しをした。 エ平成30年9月30日に行われた沖縄県知事選挙において,玉城康裕が当選し,同年10月4日,その旨の告示がされた。 (4)ア沖縄防衛局は,本件埋立承認取消しに不服があるとして,平成30年10月17日,行政不服審査法2条,地方自治法255条の2第1項1号に基づき,公有水面埋立 月4日,その旨の告示がされた。 (4)ア沖縄防衛局は,本件埋立承認取消しに不服があるとして,平成30年10月17日,行政不服審査法2条,地方自治法255条の2第1項1号に基づき,公有水面埋立法を所管する大臣である被上告人に対し,審査請求をした。 イ被上告人は,平成31年4月5日付けで,本件埋立承認取消しは違法かつ不当であるとして,これを取り消す旨の本件裁決をした。 - 3 -ウ上告人は,本件裁決は「国の関与」(地方自治法250条の7第2項)に当たるものであり,これに不服があるとして,平成31年4月22日付けで,同法250条の13第1項に基づき,国地方係争処理委員会に対し,被上告人を相手方とする審査の申出をした。 エ国地方係争処理委員会は,令和元年6月17日付けで,本件裁決は上記「国の関与」に当たらず同委員会の審査の対象とならないから,上記審査の申出は不適法であるとして,同申出を却下する旨の決定をした。 オ上告人は,上記決定に不服があるとして,令和元年7月17日,地方自治法251条の5第1項に基づき,被上告人を相手に,本件裁決の取消しを求めて本件訴えを提起した。 3(1) 地方自治法251条の5第1項の訴えの対象は,「国の関与」(同法250条の7第2項)とされているところ,同法245条3号括弧書きにより,「審査請求その他の不服申立てに対する裁決,決定その他の行為」(以下「裁決等」という。)は上記「国の関与」から除かれている。そして,行政不服審査法に基づく審査請求に対する裁決が裁決等に含まれることは明らかである。 もっとも,行政不服審査法7条2項は,国の機関又は地方公共団体その他の公共団体若しくはその機関(以下「国の機関等」という。)に対する処分で,国の機関等がその「固有の資格」において当該処分の相手方 もっとも,行政不服審査法7条2項は,国の機関又は地方公共団体その他の公共団体若しくはその機関(以下「国の機関等」という。)に対する処分で,国の機関等がその「固有の資格」において当該処分の相手方となるものについては,同法の規定は適用しない旨を規定している。そうすると,同法上,国の機関等が「固有の資格」において相手方となる処分に対して審査請求がされ,これに対する応答として何らかの裁決がされることは予定されていないから,そのような処分について,同法に基づくものとして審査請求がされ,これに対して裁決がされたとしても,当該裁決は,同法に基づく審査請求に対する裁決とはいえず,法令上の根拠を欠くものであって,上記「国の関与」から除かれる裁決等には当たらないというべきである。 - 4 -そのため,本件裁決が上記「国の関与」に当たるものとして地方自治法251条の5第1項の訴えの対象となるか否かに関し,本件埋立承認取消しが,国の機関である沖縄防衛局がその「固有の資格」において相手方となった処分であるか否かが問題となる。 (2) 所論は,公有水面埋立法42条1項に基づく埋立ての承認(以下「埋立承認」という。)は国の機関がその「固有の資格」において相手方となる処分であるから,その取消しである本件埋立承認取消しも国の機関である沖縄防衛局がその「固有の資格」において相手方となった処分というべきであるにもかかわらず,原審が,これを否定し,本件裁決は上記「国の関与」から除かれる裁決等に当たるとして,本件裁決の取消しを求める本件訴えは不適法であると判断したことには,法令の解釈の誤りがあるというものである。 4(1)ア行政不服審査法は,国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより,国民 には,法令の解釈の誤りがあるというものである。 4(1)ア行政不服審査法は,国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより,国民の権利利益の救済を図るとともに,行政の適正な運営を確保することを目的とする(1条1項)。そして,同法7条2項は,国の機関等に対する処分のうち,国民の権利利益の救済等を図るという上記目的に鑑みて上記制度の対象とするのになじまないものにつき,同法の規定を適用しないこととしているものと解される。このような同項の趣旨に照らすと,同項にいう「固有の資格」とは,国の機関等であるからこそ立ち得る特有の立場,すなわち,一般私人(国及び国の機関等を除く者をいう。 以下同じ。)が立ち得ないような立場をいうものと解するのが相当である。 イ行政不服審査法は,行政庁の処分に対する不服申立てに係る手続(当該処分の適否及び当否についての審査の手続等)を規定するものであり,上記「固有の資格」は,国の機関等に対する処分がこの手続の対象となるか否かを決する基準であることからすれば,国の機関等が一般私人が立ち得ないような立場において相手方となる処分であるか否かを検討するに当たっては,当該処分に係る規律のうち,当 - 5 -該処分に対する不服申立てにおいて審査の対象となるべきものに着目すべきである。 所論にいう埋立承認のような特定の事務又は事業を実施するために受けるべき処分について,国の機関等が上記立場において相手方となるものであるか否かは,当該事務又は事業の実施主体が国の機関等に限られているか否か,また,限られていないとすれば,当該事務又は事業を実施し得る地位の取得について,国の機関等が一般私人に優先するなど特別に取り扱われているか否か等を考慮して判断すべきである。そ に限られているか否か,また,限られていないとすれば,当該事務又は事業を実施し得る地位の取得について,国の機関等が一般私人に優先するなど特別に取り扱われているか否か等を考慮して判断すべきである。そして,国の機関等と一般私人のいずれについても,処分を受けて初めて当該事務又は事業を適法に実施し得る地位を得ることができるものとされ,かつ,当該処分を受けるための処分要件その他の規律が実質的に異ならない場合には,国の機関等に対する処分の名称等について特例が設けられていたとしても,国の機関等が一般私人が立ち得ないような立場において当該処分の相手方となるものとはいえず,当該処分については,等しく行政不服審査法が定める不服申立てに係る手続の対象となると解するのが相当である。この点に関し,国の機関等と一般私人との間で,当該処分を受けた後の事務又は事業の実施の過程等における監督その他の規律に差異があっても,当該処分に対する不服申立てにおいては,直接,そのような規律に基づいて審査がされるわけではないから,当該差異があることは,それだけで国の機関等に対する当該処分について同法の適用を除外する理由となるものではなく,上記の解釈を左右するものではないというべきである。 (2)ア公有水面埋立法は,公有水面の埋立て(以下,単に「埋立て」という。)につき,その実施主体を限定することなく,一般に,埋立てをしようとする者は都道府県知事(地方自治法252条の19第1項の指定都市の区域内においては当該指定都市の長。以下同じ。)の免許(以下「埋立免許」という。)を受けるべきものとするとともに(2条1項),国において埋立てをしようとするときには,これを実施する機関(「当該官庁」)において都道府県知事の承認を受けるべ - 6 -きものとしている(42条1項)。公有水面は国の るとともに(2条1項),国において埋立てをしようとするときには,これを実施する機関(「当該官庁」)において都道府県知事の承認を受けるべ - 6 -きものとしている(42条1項)。公有水面は国の所有に属するものであるから(公有水面埋立法1条1項),国は,本来,公有水面に対する支配管理権能の一部として,自らの判断によりその埋立てをする権能を有すると解されるが,同法が上記のとおり国においても都道府県知事の処分を受けるべきものとしているのは,埋立てにより周囲に生ずる支障の有無等については,その地域の実情に通じた都道府県知事が審査するのが適当であり,このことは国が埋立てをしようとする場合にも妥当すること,国以外の者による埋立ての可否を都道府県知事の埋立免許に係らせる一方で国は自らの判断のみで埋立てをし得るものとすれば,埋立て相互間の整合性を欠くこととなって公有水面の管理に支障が生じかねないこと等から,埋立ての可否の第一次的な判断を都道府県知事が一元的に行うこととするという趣旨に出たものと解される。そして,国の機関が埋立承認を受けることにより,埋立てを適法に行うことができるようになるという効果は,国以外の者が埋立免許を受ける場合と異ならない。 このように,公有水面埋立法は,国の機関と国以外の者のいずれについても,埋立ての実施主体となり得るものとし,また,都道府県知事の処分である埋立承認又は埋立免許を受けて初めて,埋立てを適法に実施し得る地位を得ることができるものとしているのである。 なお,所論は,埋立免許については,工事の竣功後に都道府県知事による竣功認可(公有水面埋立法22条)がされて初めて,公有水面の公用が廃止され,免許を受けた者が埋立地の所有権を取得する(同法24条1項)とされているのに対し,埋立承認には,国の機関に対し,自らが よる竣功認可(公有水面埋立法22条)がされて初めて,公有水面の公用が廃止され,免許を受けた者が埋立地の所有権を取得する(同法24条1項)とされているのに対し,埋立承認には,国の機関に対し,自らが都道府県知事に対して行う竣功の通知(同法42条2項)により,公有水面の公用を廃止して埋立地の所有権を取得することができる法的地位ないし権限を付与するという効果が含まれているから,埋立免許と埋立承認の効果の内容は本質的に異なるという。しかし,国が埋立てをする場合に国の機関において竣功の通知をすれば足りるとされているのは,そもそも公有水 - 7 -面は国の所有に属し,本来的にその支配管理に服するからであると解され,公用を廃止する法的地位ないし権限が,埋立承認によって国の機関に付与されるものと解さなければならない理由はないから,所論は前提を欠くというべきである。 イそして,公有水面埋立法は,国の機関が受けるべき埋立承認について,国の機関に対する処分であることや,国が公有水面について本来的な支配管理権能を有していることに鑑み,「免許」に代えて「承認」としているものの(42条1項),出願手続(2条2項,3項),審査手続(3条),免許基準(4条,5条),水面の権利者に対する補償履行前の工事着手の禁止等(6条~10条),処分の告示(11条)等の埋立免許に係る諸規定を準用している(42条3項)。また,国の機関と国以外の者との間で同一区域における埋立ての出願が競合する場合であっても,国の機関による埋立承認の出願を国以外の者による埋立免許の出願に優先する仕組みは採られておらず,両者は所定の基準に従い同列に審査すべきものとされている(同法施行令3条,30条)。すなわち,埋立承認及び埋立免許を受けるための手続や要件等に差異は設けられていない。 このように 採られておらず,両者は所定の基準に従い同列に審査すべきものとされている(同法施行令3条,30条)。すなわち,埋立承認及び埋立免許を受けるための手続や要件等に差異は設けられていない。 このように,埋立てを適法に実施し得る地位を得るために国の機関と国以外の者が受けるべき処分について,「承認」と「免許」という名称の差異にかかわらず,当該処分を受けるための処分要件その他の規律は実質的に異ならないものといえる。 ウ他方,公有水面埋立法は,国が埋立承認に基づいて埋立てをする場合について,国以外の者が埋立免許に基づいて埋立てをする場合に適用される規定のうち,免許料の徴収に係る規定(12条),指定期間内における工事の着手及び竣功の義務に係る規定(13条),埋立権の譲渡及び承継に係る規定(16条~21条),竣功認可に係る規定(22条~24条),違法行為等に対する監督に係る規定(32条,33条),埋立免許の失効に係る規定(34条,35条)等を準用していない。 - 8 -しかし,これらは,埋立免許がされた後の埋立ての実施の過程等を規律する規定であるところ,公有水面埋立法は,特定の区域の公有水面について一旦埋立承認がされ,国の機関が埋立てを適法に実施し得る地位を得た場合における,その埋立ての実施の過程等については,国が公有水面について本来的な支配管理権能を有していること等に鑑み,国以外の者が埋立てを実施する場合の規定を必要な限度で準用するにとどめたものと解される。そして,そのことによって,国の機関と国以外の者との間で,埋立てを適法に実施し得る地位を得るための規律に実質的な差異があるということはできないから,上記のような規定の準用がないからといって,国の機関が一般私人が立ち得ないような立場において埋立承認の相手方となるものということはできな 得るための規律に実質的な差異があるということはできないから,上記のような規定の準用がないからといって,国の機関が一般私人が立ち得ないような立場において埋立承認の相手方となるものということはできない。 エ以上のとおり,埋立ての事業については,国の機関と国以外の者のいずれについても,都道府県知事の処分(埋立承認又は埋立免許)を受けて初めて当該事業を適法に実施し得る地位を得ることができるものとされ,かつ,当該処分を受けるための規律が実質的に異ならないのであるから,処分の名称や当該事業の実施の過程等における規律に差異があることを考慮しても,国の機関が一般私人が立ち得ないような立場において埋立承認の相手方となるものとはいえないというべきである。 したがって,埋立承認は,国の機関が行政不服審査法7条2項にいう「固有の資格」において相手方となるものということはできない。 (3) そして,埋立承認の取消しである本件埋立承認取消しについて,これと別異に解すべき理由は見当たらない。そうすると,本件埋立承認取消しにつき,国の機関である沖縄防衛局がその「固有の資格」において相手方となったものということはできない。 5 以上によれば,本件埋立承認取消しは沖縄防衛局が行政不服審査法7条2項にいう「固有の資格」において相手方となった処分とはいえないとした原審の判断 - 9 -は,是認することができる。原判決に所論の違法はなく,論旨は採用することができない。なお,その余の上告受理申立て理由は,上告受理の決定において排除された。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官深山卓也裁判官池上政幸裁判官小池裕裁判官木澤克之裁判官山口厚) 主文 の意見で、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官深山卓也裁判官池上政幸裁判官小池裕裁判官木澤克之裁判官山口厚)

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