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主文 原判決を取り消す。本件につき、山口地方裁判所が昭和三九年六月二三日なした仮処分決定を取り消す。被控訴人の仮処分申請を棄却する。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。事実 控訴人等代理人は、主文同旨の判決を求め、被控訴代理人は、「本件控訴を棄却する、控訴費用は、控訴人の負担とする」との判決を求めた。当事者双方の主張と疏明は、次に掲げるところのほか原判決の事実摘示と同一であるから、これを引用する。被控訴代理人は、次のように述べた。控訴人等の主張事実のうち、控訴人宝泉寺と控訴組合との間に控訴人等主張の如き採石権設定契約の締結された事実並びに控訴人等とAとの間の採石契約に要素の錯誤のあつたことは否認する。昭和三九年五月当時における控訴人宝泉寺の責任役員は、B、CおよびDの三名であつた。控訴人等代理人は、次のように述べた。被控訴人が先代Aを単独相続したこと、昭和三九年五月当時における控訴人宝泉寺の責任役員が被控訴人主張のとおりであつたことは認める。仮に控訴人宝泉寺とAとの間に被控訴人主張の如き採石契約が成立したとしても、控訴人宝泉寺は、右採石契約の対象である「はんれい岩」が当時産地駅ホーム渡で一屯当り金一八、〇〇〇円以上で取引されていることを知らなかつたので、採石料を採石の数量に制限なく年間一〇、〇〇〇円と定めて本件採石契約をなしたものであるから、本件採石契約は、その要素に錯誤があるから無効である。疏明として、被控訴代理人は、甲第九号証から第一二号証までを提出し、当審証人Eの証言を援用し、乙第七号証の一、二、第八、第九号証の成立は認めるが、第一〇号証の一、二、三の成立は知らないと述べ、控訴人等代理人は、乙第七号証の一、二、第 から第一二号証までを提出し、当審証人Eの証言を援用し、乙第七号証の一、二、第八、第九号証の成立は認めるが、第一〇号証の一、二、三の成立は知らないと述べ、控訴人等代理人は、乙第七号証の一、二、第八、第九号証、第一〇号証の一、二、三、第一一号証を提出し、当審証人Bの証言を援用し、甲第一二号証の成立を否認すると述べた。 一〇号証の一、二、三の成立は知らないと述べ、控訴人等代理人は、乙第七号証の一、二、第 から第一二号証までを提出し、当審証人Eの証言を援用し、乙第七号証の一、二、第八、第九号証の成立は認めるが、第一〇号証の一、二、三の成立は知らないと述べ、控訴人等代理人は、乙第七号証の一、二、第八、第九号証、第一〇号証の一、二、三、第一一号証を提出し、当審証人Bの証言を援用し、甲第一二号証の成立を否認すると述べた。理由 昭和三九年五月当時における控訴人宝泉寺の責任役員が、B、CおよびDの三名であつたこと並びに被控訴人が先代Aを単独相続したことは、当事者間に争いがない。被控訴人は、先代Aが、昭和三三年七月三〇日、控訴人宝泉寺と同控訴人所有の山口県阿武郡a町大字b字cd番山林一町三反八畝二〇歩の本件土地において「はんれい岩」全部の採取を目的とし、採石料一ケ年金一〇、〇〇〇円、毎年七月末日までにその年の八月一日から翌年七月末日までの一ケ年分を前納すること、右採石料を前納するときは採取を継続することができる旨の「はんれい岩」採取契約を結び、昭和三四年二月七日、右Aの死亡により、被控訴人において右契約に基づく採石権を単独相続によつて取得したと主張する。しかし成立に争いのない乙第五号証、原審における控訴組合代表者F本人尋問の結果により成立を疏明しうる乙第六号証、当審証人Bの証言、原審における控訴人等代表者D、控訴組合代表者各本人尋問の結果を総合すれば、控訴人須佐石材企業組合は、昭和三九年五月八日頃、控訴人宝泉寺代表役員Dと本件土地における「はんれい岩」の採取契約を結び、その存続期間は契約の日から満五ケ年、全期間の採石料金一〇〇万円を前納のことと定め、同年七月二〇日、山口地方法務局須佐出張所受付第一一七五号をもつてその旨の採石権設定登記をしたこと、右Dは控訴人宝泉寺の当時の他の責任役員B、Cの両名に無断て右採取 料金一〇〇万円を前納のことと定め、同年七月二〇日、山口地方法務局須佐出張所受付第一一七五号をもつてその旨の採石権設定登記をしたこと、右Dは控訴人宝泉寺の当時の他の責任役員B、Cの両名に無断て右採取契約を締結したこと、並びに被控訴人主張の採石権についてはその設定登記のなされていないことを疏明できる。したがつて、控訴人宝泉寺と控訴人須佐石材企業組合との間の前記契約が有効である限り、控訴人須佐石材企業組合は、採石法第四条で準用する民法の地上権に関する規定に従い、登記を経ていることによつて、右契約に基づき取得した採石権を被控訴人に対し対抗することができるわけである。 任役員B、Cの両名に無断て右採取契約を締結したこと、並びに被控訴人主張の採石権についてはその設定登記のなされていないことを疏明できる。したがつて、控訴人宝泉寺と控訴人須佐石材企業組合との間の前記契約が有効である限り、控訴人須佐石材企業組合は、採石法第四条で準用する民法の地上権に関する規定に従い、登記を経ていることによつて、右契約に基づき取得した採石権を被控訴人に対し対抗することができるわけである。ところが、被控訴人は控訴人須佐石材企業組合と控訴人宝泉寺との間の右「はんれい岩」採取契約が宗教法人法第一九条、第二三条、宗教法人宝泉寺規則第一〇条によつて定められた責任役員による決議を経ていないから無効であると主張するので、この点たついて考えてみる。右契約は、採石権の設定を目的とし、所有権に<要旨>対する制限を加えることになるから、前記第二三条にいう不動産の処分行為にあたると解すべきであるが、右</要旨>第二三条によれば、宗教法人が不動産の処分をするには規則で定めるところ(規則に別段の定めがないときは、第一九条の規定)によるほか、所定の公告をしなければならないことになつており、同法第二四条が宗教法人の境内建物若しくは境内地である不動産又は財産目録に掲げる宝物について第二三条の規定に違反してした行為は無効とする旨定め、第二三条に違反する行為のうち無効となる場合を限定している趣旨から考えれば、境外地である不動産の処分については、宗教法人の代表役員がたとえ、第二三条の規定に違反して、所定の公告を経ず又は前記第一九条或は宗教法人の規則所定の責任役員の決議を経ないで処分した場合にも、第二 、境外地である不動産の処分については、宗教法人の代表役員がたとえ、第二三条の規定に違反して、所定の公告を経ず又は前記第一九条或は宗教法人の規則所定の責任役員の決議を経ないで処分した場合にも、第二四条の規定の適用がなく、その代表役員が過料の制裁を受け或は法人に対し内部的な責任を負う場合があるとしても、その処分行為は無効とはならないと解される右の場合、民法第五三条、第五四条を準用する余地はない。そうだとすると、控訴人須佐石材企業組合と控訴人宝泉寺との本件「はんれい岩」採取契約について、控訴人宝泉寺の責任役員の決議を経ていないことは前示認定のとおりであり、また右第二三条所定の公告のなされていないことは弁論の全趣旨により明白であるけれども、本件不動産が控訴人宝泉寺の境外地であることは当事者間に争いのないところであるから、右契約の有効であることは、前に説示したところから明らかであつて、これと異なる被控訴人の主張は理由がない。 業組合と控訴人宝泉寺との本件「はんれい岩」採取契約について、控訴人宝泉寺の責任役員の決議を経ていないことは前示認定のとおりであり、また右第二三条所定の公告のなされていないことは弁論の全趣旨により明白であるけれども、本件不動産が控訴人宝泉寺の境外地であることは当事者間に争いのないところであるから、右契約の有効であることは、前に説示したところから明らかであつて、これと異なる被控訴人の主張は理由がない。もつとも、控訴組合の前示採石権設定登記は、本件仮処分のなされた昭和三九年六月二三日以後になされたものではあるが、前示のとおり控訴人宝泉寺と控訴組合との間の「はんれい岩」採取契約は、本件仮処分の以前である同年五月八日頃締結されたものであり、右採石権設定登記は本件仮処分に牴触するものとはいえず、右登記自体は本件仮処分によりその効力を左右されるものではない。そうしてみると、控訴人須佐石材企業組合は、本件土地について完全な採石権を取得したものといわねばならない。したがつて、仮に被控訴人が控訴人宝泉寺との間に本件土地につきその主張の如き「はんれい岩」採取契約を締結した事実があるとしても、被控訴人の主張する採石権は物権として存続し得ないことになるから、被控訴人は、控訴人須佐石材企業組合に対する関係においては固より、控訴人宝泉寺に 「はんれい岩」採取契約を締結した事実があるとしても、被控訴人の主張する採石権は物権として存続し得ないことになるから、被控訴人は、控訴人須佐石材企業組合に対する関係においては固より、控訴人宝泉寺に対する関係においても、本件土地における「はんれい岩」の採石権を主張することができないので、その保全を目的とする本件仮処分申請の許されないことは明らかである。結局、被控訴人の本件仮処分申請は、その余の争点について判断を加えるまでもなく、理由のないものとして棄却を免れない。しかるに、これと異なる見解のもとに、本件仮処分決定を認可した原判決は相当でなく、本件控訴は理由がある。そこで、民事訴訟法第三八六条、第九六条、第八九条の各規定を適用して主文のとおり判決する。(裁判長裁判官松本冬樹裁判官浜田治裁判官長谷川茂治)
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