令和6(わ)1942 住居侵入、強盗致傷、逮捕監禁、窃盗、詐欺被告事件

裁判年月日・裁判所
令和7年10月14日 千葉地方裁判所
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判決文本文5,503 文字)

令和6年(わ)第1942号、同第2122号、令和7年(わ)第75号、同第132号住居侵入、強盗致傷、逮捕監禁、窃盗、詐欺被告事件令和7年10月14日千葉地方裁判所刑事第1部宣告 主文 被告人を懲役16年に処する。 未決勾留日数中200日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)第1 1 被告人は、共犯者D及び氏名不詳者らと共謀の上、金品強取の目的で、令和6年10月16日午前1時30分頃、千葉県白井市内のA方に、南東側洋室の割られた北東側腰高窓から侵入し、その頃から同日午前4時28分頃までの間に、同所において、A(当時42歳)及びB(当時71歳)に対し、こもごも、同人らの顔面等を拳で多数回殴り、同人らの背中をベルト様のもので多数回た たき、同人らの両手首等にガムテープを巻き付けて縛り、同人らの左手の小指をつかんで手の甲側に折り曲げるなどの暴行を加えるとともに、「金はどこにある。」「金出せ。」などと言って脅迫し、同人らの反抗を抑圧した上、同人ら所有又は管理の現金合計約26万円、キャッシュカード6枚及びエンジンキー1本(時価約1000円相当)を強取し、さらに、A方敷地内に駐車中のB所有 の軽乗用自動車1台(時価約70万円相当)に乗り込んで発進させてこれを強取し、前記一連の暴行により、Aに全治まで約3週間を要する顔面打撲及び背部打撲の傷害を、Bに全治まで約6週間を要する左小指基節骨骨折及び背部打撲の傷害をそれぞれ負わせた。 2 被告人は、氏名不詳者らと共謀の上、令和6年10月16日午前4時46分 頃、東京都足立区(住所省略)a店において、強取したB名義のクレジットカード機能付きキャッシュカードを同店に設置された会計機に挿 者らと共謀の上、令和6年10月16日午前4時46分 頃、東京都足立区(住所省略)a店において、強取したB名義のクレジットカード機能付きキャッシュカードを同店に設置された会計機に挿入して、通常の会計処理の外見を装い、同店店長E管理の衣服等5点(販売価格合計1万3161円)を窃取した。 第2 1 被告人は、共犯者D、共犯者F及び氏名不詳者らと共謀の上、金品強取の目的で、令和6年10月17日午前1時26分頃から同日午前2時46分頃までの間に、千葉県市川市内のC方に、1階南東側居間の割られた出窓から侵入し、その頃、同所において、C(当時50歳)に対し、その顔面等を拳で多数回殴り、同人の腹部を多数回蹴るなどの暴行を加えるとともに、「金を出せ。」「殺す ぞ。」などと言って脅迫し、その反抗を抑圧した上、同人ほか1名所有又は管理の現金合計約4万8000円及びキャッシュカード4枚等在中の財布1点等合計14点(時価合計約8万7010円相当)を強取し、さらに、C方敷地内に駐車中の同人所有の軽乗用自動車1台(時価約20万円相当)に乗り込んで発進させてこれを強取し、前記一連の暴行により、Cに全治まで約2か月間を要 する見込みの右肋骨多発骨折、右眼窩底骨折、顔面打撲血腫等の傷害を負わせた。 2 被告人は、共犯者D、共犯者F及び氏名不詳者らと共謀の上、同日午前2時46分頃、C方において、Cに対し、その両手首や両足等にガムテープを巻き付けて縛り、ガムテープで目隠しをするなどした上で同人を抱えて屋外に運び 出し、その頃、同人方敷地内において、同人を前記自動車後部座席に押し込み、同車を同所から発進させ、同人に対し、「動くな。」「動いたら殺すぞ。」などと言い、その頃から同日午前7時38分頃までの間、同車を埼玉県川越市( 人方敷地内において、同人を前記自動車後部座席に押し込み、同車を同所から発進させ、同人に対し、「動くな。」「動いたら殺すぞ。」などと言い、その頃から同日午前7時38分頃までの間、同車を埼玉県川越市(住所省略)ホテルb店まで疾走させ、その間、同人が同車から脱出するのを著しく困難にし、さらに、同日午前7時38分頃、同所において、同人を同車から降 ろし、同人に対し、「自分で歩け。」「殺すぞ。」などと言って同人を前記ホテル b店に入室させ、同室において、同人に対し、改めてその両手首や両足等にガムテープを巻き付けて縛るなどし、その頃から同日午後9時41分頃までの間、同人が同所から脱出することを著しく困難にし、もって同人を不法に逮捕監禁した。 3 被告人は、強取したC名義のクレジットカード2枚を使用して商品をだまし 取ろうと考え、氏名不詳者らと共謀の上、別表記載のとおり、令和6年10月17日午後2時28分頃から同日午後2時41分頃までの間、2回にわたり、埼玉県熊谷市(住所省略)c店において、同店従業員G及びHに対し、真実は、前記クレジットカード2枚の正当な使用権限も各クレジットカードシステム所定の方法により代金を支払う意思もないのに、これらがあるように装い、同ク レジットカード2枚を提示するなどしてネックレス合計2点(販売価格合計226万5000円)の購入を申し込み、同人らにその旨誤信させ、よって、その頃、同所において、同人らから前記ネックレス合計2点の交付を受け、もって人を欺いて財物を交付させた。 (量刑の理由) 本件は、被告人が、インターネットを介して匿名流動型犯罪グループの求人に自ら応募し、指示役である氏名不詳者の指示に従い、被害者2名に対する住居侵入、強盗致傷及び強取したクレジットカード機能付きキャッ 本件は、被告人が、インターネットを介して匿名流動型犯罪グループの求人に自ら応募し、指示役である氏名不詳者の指示に従い、被害者2名に対する住居侵入、強盗致傷及び強取したクレジットカード機能付きキャッシュカードを使用した窃盗(判示第1の1及び2。以下「白井事件」という。)に実行役として関与し、その翌日、再び指示役である氏名不詳者の指示に従い、被害者1名に対する住居侵入、強 盗致傷、逮捕監禁及び強取したクレジットカードを使用した詐欺(判示第2の1ないし3。以下「市川事件」という。)に実行役として関与した事案である。 被告人は、自動車購入等により無計画に借金を重ねてその返済や子の養育費の支払等に窮し、手っ取り早く高額な報酬を得ようと考えて、犯罪に加担すると認識しながらSNSの求人に応募し、金欲しさからさしたる躊躇もなく指示役の指示に従 い、白井事件に実行役として関与するに至った。さらに、被告人は、白井事件の報 道によってその犯罪の重大性に気付きながらも思いとどまることなく、報酬を得るために続けて市川事件に実行役として関与し、被害者を連れ去り監禁するまでに至っている。本件各犯行の動機は利欲的、短絡的かつ身勝手で酌量の余地がなく、前記の経緯や連日にわたり重大事犯に及んだことに照らし、被告人には犯罪に対する抵抗感が見受けられず、強い非難に値する。 白井事件についてみるに、被告人は直前に合流した初対面の実行役共犯者1名とともに、深夜、指示された民家に侵入し、住人である当時42歳の女性と、その母である当時71歳の女性に対し、こもごも、苛烈極まりない暴行に及んだ。被告人らは、突然家屋に侵入されて驚愕する被害者らに対し、頭部や顔面を繰り返し殴打するなど激しい暴行を加えて制圧し、家に大金はない旨必死に説明する被害者らか も、苛烈極まりない暴行に及んだ。被告人らは、突然家屋に侵入されて驚愕する被害者らに対し、頭部や顔面を繰り返し殴打するなど激しい暴行を加えて制圧し、家に大金はない旨必死に説明する被害者らか ら金銭のありかや銀行口座の暗証番号を聞き出すため、その顔面等を拳で多数回殴打し、衣服を捲り上げて鞭のようなもので背中の素肌を多数回叩き、指を折るなどと怒鳴って左手の小指を手の甲側に折り曲げるなどの暴行を、被害者らが痛みで泣き叫ぶ様子を目の当たりにしてもなお、躊躇することなく執拗に行っており、その暴行態様は拷問に近いものであった。被害者らは、被告人らの暴行により、それぞ れ全治まで約3週間、約6週間を要する顔面、背部打撲や小指骨折の傷害を負い、助けを求めることもできない中、このまま殴られ続けて殺されてしまうかもしれないとの恐怖に襲われたと述べており、その絶望と恐怖は計り知れない。被害者両名の怪我の状況は痛々しく、また、少なくない財産的被害も負っており、犯行により生じた結果は重大である。当時42歳の被害者は当公判廷において、ずっと当時の 状況が頭の中で再現されて消えない、安心や平穏というものはどこにもなくなってしまったなどと訴えており、被害者らが厳しい処罰感情を示すのは当然といえる。 市川事件についてみるに、被告人は白井事件の実行役共犯者及び初対面の実行役共犯者と直前に合流し、深夜に3人で指示された民家に侵入し、住人である当時50歳の女性が驚愕して無抵抗であったにもかかわらず、共犯者が二人がかりで数え きれないほどその顔面等を拳で殴り、自宅に多額の現金はない旨説明する被害者に 対し、指示役から指示されるままに、更にその顔面等を拳で多数回殴り、身体を蹴り、左右の手指を1本ずつ反対方向に折り曲げるなどの凄惨な暴行を執拗に加え 自宅に多額の現金はない旨説明する被害者に 対し、指示役から指示されるままに、更にその顔面等を拳で多数回殴り、身体を蹴り、左右の手指を1本ずつ反対方向に折り曲げるなどの凄惨な暴行を執拗に加えた。 被害者は一連の暴行によって全治まで約2か月間を要する見込みの右肋骨多発骨折、右眼窩底骨折等の重い傷害を負ったが、被告人らは、そのような被害者の両手両足等をガムテープで拘束し、目隠しをした上で2階から3人がかりで運び出して被害 車両の後部座席に押し込み、被告人が運転する車両内に5時間近く監禁した上でホテルに連行し、更に、共犯者において同ホテル内に約14時間にわたって監禁した。 被害者は強盗発生時から約20時間にわたって被告人らの支配下に置かれたが、その間、苛烈な暴行を受けたことで殺されるかもしれないとの恐怖に襲われ、更に家から連れ出されたことにより、生きて帰れるか分からない、殺されて捨てられるか もしれないといった極限の恐怖を味わったと認められ、その肉体的、精神的苦痛は察するに余りある。財産的被害も少なくなく、犯行により生じた結果は重大である。 被害者は、体の傷は治っても心の傷は一生消えない、今回のような凶悪な事件を起こした犯人を絶対に許すことはできないと述べており、被害者が厳しい処罰感情を示すのは当然といえる。 両事件における被告人の役割についてみるに、被告人は、白井事件においては被害者に対して手加減のない暴力を振るっており、市川事件においても被害者を押し倒す暴行をしたほか、被害者方を物色し、他の共犯者と共に被害者を車両に乗せて同車を運転し、監禁先のホテルまで連行した。また、両事件につき、被害品のクレジットカード等を用いた窃盗、詐欺の犯行に及び、とりわけ詐欺の犯行は被害額が 約226万円と高額で、犯罪グループに多額 同車を運転し、監禁先のホテルまで連行した。また、両事件につき、被害品のクレジットカード等を用いた窃盗、詐欺の犯行に及び、とりわけ詐欺の犯行は被害額が 約226万円と高額で、犯罪グループに多額の利益をもたらすことに寄与している。 以上からすれば、各事件において被告人が果たした役割は大きい。被告人は、終始指示役の指示に従う立場であったと認められるものの、報酬欲しさに自ら犯罪グループと接触し、犯罪グループが集めた他の実行犯と協力し合い、犯罪グループの情報収集能力や組織力等を利用して主体的に本件各犯行に及んでいるのであるから、 指示に従う立場にあったことを被告人のために斟酌するとしても限度がある。 以上を総合すると、本件各犯行は、匿名流動型犯罪グループによって組織的、計画的、連続的に敢行されたもので、何ら非のない強盗致傷の各被害者に対し、その尊厳を顧みることなく執拗に激しい暴行を加えたなどといった点において、悪質性が際立っている。このような重大事犯に、さしたる躊躇もなく主体的に実行犯として関与した被告人の刑事責任は重大である。 他方で、被告人が市川事件の後、周囲に促されるなどして自ら警察に出頭したことは、法律上の自首は成立しないまでも、被告人にとって有利な情状である。その他、被告人が本件を認めて被告人なりの反省の言葉を述べていること、被告人の母と雇用主が出廷し、それぞれ社会復帰後の被告人の監督や雇用を約束していること、被告人が犯行時21歳と若年で前科・前歴がないことなどの事情も認められる。 しかしながら、すでに犯情として指摘した本件各犯行の悪質性や重大性に鑑みると、被告人のために酌むべき一般情状等を考慮してもなお、被告人の刑事責任は重いというほかなく、同種事案の量刑傾向も参照した上で、主文の刑が相当で に犯情として指摘した本件各犯行の悪質性や重大性に鑑みると、被告人のために酌むべき一般情状等を考慮してもなお、被告人の刑事責任は重いというほかなく、同種事案の量刑傾向も参照した上で、主文の刑が相当であると判断した。 (求刑:懲役20年) 令和7年10月23日千葉地方裁判所刑事第1部 裁判長裁判官水上周裁判官西澤恵理 裁判官佐 々 木佳穂

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