【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理 由 上告代理人立石定夫名義の上告理由一、二について。 原判決は、被上告人が本件仮
主文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理由 上告代理人立石定夫名義の上告理由一、二について。 原判決は、被上告人が本件仮換地の占有を開始した昭和二七年四月三日から一〇年間を経過した同三七年四月三日をもつて、時効により本件従前の土地たる大阪市a区bc丁目d番地のe、宅地三三〇・五八平方メートル(以下「本件従前の土地」という。)の所有権を取得したものであつて、その間、上告人が本件従前の土地を訴外Dから買い受け、昭和三六年二月二日、本件従前の土地について上告人宛に所有権移転登記が経由された事実は、被上告人の右時効取得を妨げる事情たりえない旨判断するところである。 ところで、不動産所有権の時効による取得については、第三者のなした所有権取得登記後に時効が完成した場合には、該第三者に対しては、登記を経由しなくても時効による所有権の取得をもつてこれに対抗することができるものと解すべきところ(最高裁昭和三八年(オ)五一六号同四一年一一月二二日第三小法廷判決・民集二〇巻九号一九〇一頁)、これと同旨の原審の判断は正当であつて、原判決には所論の違法はない。それ故、論旨は理由がない。 同三について。 原審の確定する事実は、次のとおりである。本件従前の土地はもと訴外Dの所有であつたところ、昭和二五年三月九日、大阪市区画整理事業の施行者である大阪市長から、右D所有の本件従前の土地を含む大阪市a区bc丁目d番地宅地四五八・五八平方メートルについて、その換地予定地として同区、ブロツク番号一〇、符号七、面積三二八・五〇平方メートルが指定された。右換地予定地の所在場所は、従- 1 -前の土地たる前記d番地と殆んど同一場所で、換地予定地の範囲も当時の本件建物(第一審判決添付目録記載の建物、以 七、面積三二八・五〇平方メートルが指定された。右換地予定地の所在場所は、従- 1 -前の土地たる前記d番地と殆んど同一場所で、換地予定地の範囲も当時の本件建物(第一審判決添付目録記載の建物、以下「本件建物」という。)の敷地ではない部分できわめて僅かに右従前の土地からはみ出たところがあつたが、右換地予定地に含まれた当時の本件建物敷地に当る部分はすべて右従前の土地に含まれていた。その後、昭和二七年四月一日、被上告人は、訴外Eから前記d番地とその隣地にまたがつて所在していた本件建物を買い受けてその所有権を取得し、右建物の引渡しを受け、同月三日、前記Dから前記d番地の宅地のうち被上告人が買い受けた当時の本件建物の敷地となつていた部分三三〇・五八平方メートルを買い受け、右家屋を所有し、かつ占有することによつてその敷地も占有するに至つた。その後、昭和三一年八月頃、大阪市区画整理事業の施行者である大阪市長は、訴外Dの申告に基づいて前記従前の土地d番地を三三〇・五八平方メートル、七一・四七平方メートルおよび五六・二三平方メートルの三筆に分筆する場合は、右従前の土地の分筆に対応する仮換地の分割として、右従前の土地d番地の仮換地ブロツク番号一〇、符号七、三二八・四九平方メートルを、(A)同番号同符号A二三二・〇七平方メートル、(B)同番号同符号B五三・八八平方メートルおよび(C)同番号同符号C四三・一四平方メートルに分割すべきものとし、右のとおりに仮換地の具体的な分割指定をして、その具体的な位置範囲を記載した図面を添えて関係者に通知したので、訴外Dは、従前の土地d番地について前記三筆に分筆する登記手続を終つたが、その頃、本件従前の土地(三三〇・五八平方メートル)の仮換地(二三二・〇七平方メートル)の範囲外にはみ出ていた本件建物の一部分は撤去されたので 土地d番地について前記三筆に分筆する登記手続を終つたが、その頃、本件従前の土地(三三〇・五八平方メートル)の仮換地(二三二・〇七平方メートル)の範囲外にはみ出ていた本件建物の一部分は撤去されたので、被上告人は右仮換地上の残存建物をアパートとして賃貸し、その敷地である右仮換地部分のみを占有使用し、その後、右本件従前の土地の仮換地の一部が道路敷地となることとなつたので、昭和三六年一〇月二四日、大阪市区画整理事業の施行者は、本件仮換地指定を変更して、本件従前の土地の仮換地をその従来の仮換地から右道路敷地- 2 -となる部分を除いた二一四・四八平方メートルに変更し、右変更を同月三〇日から発効することと定め、道路敷地となつた一七・三四平方メートルを前記本件従前の土地の仮換地から削減し、右道路敷地となつた部分上にあつた建物部分を撤去したので、以後、右道路敷地となつた部分に対する被上告人の占有も失われ、被上告人は、以来今日まで右仮換地二一四・四八平方メートル上に建物を所有して右仮換地の占有を継続しているというのである。原審は、右事実を確定のうえ、被上告人は、昭和二七年四月三日以来所有の意思をもつて平穏公然に少くとも本件従前の土地の現在の仮換地二一四・四八平方メートルの占有を現在まで継続し、かつ、その占有を始めるに際し、本件従前の土地が自己の所有に属し、その仮換地である右二一四・四八平方メートルを占有使用できるものと信じ、そのように信じるについて過失もなかつた旨認定・判断する。 ところで、土地区画整理法(その施行前は特別都市計画法)による区画整理事業の施行地域内の土地について、同法による仮換地の指定があつた後に当該仮換地を従前の土地所有の意思をもつて占有しはじめた者は、換地処分が施行され土地区画整理法一〇三条四項所定の公告がなされる日までに民法一 行地域内の土地について、同法による仮換地の指定があつた後に当該仮換地を従前の土地所有の意思をもつて占有しはじめた者は、換地処分が施行され土地区画整理法一〇三条四項所定の公告がなされる日までに民法一六二条所定の要件をみたしたときは、時効によつて右従前の土地の所有権を取得するものと解するのが相当である。 そして、この理は、一筆の従前の土地の特定の一部分を所有する意思をもつて、右一筆の従前の土地の仮換地であつて従前の土地の右特定の一部分に含まれた特定の一部分の占有を開始し、後に、従前の土地の右特定の一部分が分筆され、これに対応して仮換地も分割による変更指定がなされ、前記占有の開始された部分が分筆後の従前の土地に対応する仮換地として指定された場合には、占有者が所有の意思をもつて、平穏公然に仮換地を占有した期間が、右の分割による変更指定の前後を通じ民法一六二条所定の期間に達し、右期間の満了が土地区画整理法一〇三条四項- 3 -所定の公告前であるときは、占有者は、時効によつて、分筆後の従前の土地の所有権を取得すると解するのが相当である。けだし、時効による権利の取得は、権利者たるの外形をそなえた事実的支配状態が一定の期間継続することにより、これに権利取得の効果を認めるものであるところ、変更指定がなされる以前における仮換地の占有は、仮換地のうちの一部分の占有であるから、これに対応する従前の土地部分の特定を欠くことは否定しがたいけれども、仮換地占有の当初から、右占有にかかる仮換地部分が特定し、その部分に対する権利者たるの外形をそなえた事実的な支配状態が現出されているのである。而して、対応する従前の土地部分が確定するまでは、仮換地の当該占有部分は従前の土地のいずれの部分にも対応する可能性があり、したがつて、仮換地の特定の一部分を排他的に占有することに されているのである。而して、対応する従前の土地部分が確定するまでは、仮換地の当該占有部分は従前の土地のいずれの部分にも対応する可能性があり、したがつて、仮換地の特定の一部分を排他的に占有することにより、従前の土地のいずれの部分についても単独の所有権者たりうる外形をそなえているものというべきである。そして、後に仮換地の変更指定処分がなされることによつて、これに対応する従前の土地部分も特定し、所有権者としての外形をそなえた範囲が確定するに至るのであり、このような場合には、その占有の当初より、後に確定された従前の土地部分について支配の外形が存在しているものとみなして妨げない。また、時効取得に必要な要件たる所有の意思についてみても、従前の土地の特定の一部を所有する意思をもつて仮換地の一部の占有がなされるかぎり、当該従前の土地部分についての時効による所有権取得に必要な要件たる所有の意思を肯定して妨げないと解ずべきものであるからである。 してみれば、被上告人が本件仮換地を昭和二七年四月三日から一〇年間占有し、よつて同三七年四月三日をもつて時効により本件従前の土地の所有権を取得したとする原審の判断は正当であり、原判決には所論の違法はない。よつて、論旨は理由がない。 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の- 4 -とおり判決する。 最高裁判所第二小法廷裁判長裁判官城戸芳彦裁判官色川幸太郎裁判官村上朝一裁判官岡原昌男- 5 - 村上朝一裁判官 岡原昌男
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