主文 1 控訴人らの本件各控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要(略称は、原判決の例による。) 1 事案の要旨 (1) 本件は、管工事の設計・施工、空気環境調和設備工事、冷暖房設備及び冷凍装置工事の設計・施工、合成樹脂の加工等を目的とする会社である控訴人らで勤務していた被控訴人が、肺がん及び振動障害を発症したのは、控訴人らの不法行為ないし安全配慮義務違反により、大量の石綿粉じんにばく露し、また、長時間の振動作業に従事したためであるとして、不法行為ないし債務 不履行に基づく損害賠償請求権に基づき、控訴人らに対し、連帯して3300万円(包括請求)並びにこれに対する肺がん及び振動障害の発症日のうちより遅い平成28年3月9日から、又は催告の日の翌日である令和2年11月13日から、民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 (2) 原審は、被控訴人の請求のうち、控訴人らに対して連帯して2772万円及びこれに対する平成28年3月9日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で認容したところ、これを不服とする控訴人らが控訴した。 2 前提事実、関係法規等、争点及び争点に関する当事者の主張は、原判決「事 実及び理由」欄の第2の2ないし5に記載のとおりであるから、これを引用 する。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も被控訴人の請求は、控訴人らに対して連帯して2772 判決「事 実及び理由」欄の第2の2ないし5に記載のとおりであるから、これを引用 する。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も被控訴人の請求は、控訴人らに対して連帯して2772万円及びこれに対する平成28年3月9日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があると判断するが、その理由は、原判決「事実及び 理由」欄の第3に記載のとおりであるから、これを引用する。 2 なお、控訴人らは、被控訴人の石綿暴露の具体的態様が不明であるなどと主張するが、前記引用する原判決認定のとおり、被控訴人が、類型的に石綿暴露が推認される造船工場における保温工事に従事していた上、石綿を含む材質のパテを扱い、研磨などを含む作業にも従事していたことが認められ、石綿暴露 が原因と認められる原発性の肺粘液性腺がんを発症している一方で、本件全証拠によっても他に、被控訴人が石綿に暴露した可能性がうかがわれないことからすれば、それ以上に石綿暴露の具体的態様の詳細が認定できないからといって、被控訴人が控訴人らにおける就労期間中に石綿に暴露したとの認定を左右するものではない。 また、控訴人らは、A工場と少なくとも同一の作業内容であったB株式会社において、パテに対する研磨作業によってがんにり患したことを理由とする損害賠償請求を受けた事実がないことを指摘するが、作業内容が同一であるとしても、安全教育の徹底など粉塵予防の状況、その他の条件がすべて同一というわけでもない以上、控訴人ら指摘の事実の存在は、引用する原判決認定を左右 するものではない。 さらに、控訴人らは、被控訴人に対して防塵マスク・防毒マスクを支給し、これを装着するよう注意もしていたのに、これを自らの判断で装着していなかった点を過失相殺事由として考慮すべ するものではない。 さらに、控訴人らは、被控訴人に対して防塵マスク・防毒マスクを支給し、これを装着するよう注意もしていたのに、これを自らの判断で装着していなかった点を過失相殺事由として考慮すべきであると主張するが、他方、引用する原判決で認定説示のとおり、控訴人らは、被控訴人に対し、石綿の危険性に係 る教育を実施しておらず、そのことが被控訴人が上記のとおりマスクを装着し ないという行動に出たことの遠因となったと考えられるから、控訴人ら指摘の点を考慮しても、引用する原判決認定の過失相殺割合を維持するのが相当である。 3 よって、被控訴人の請求を一部認容した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所第2民事部 裁判長裁判官新谷晋司 裁判官平井健一郎 裁判官石川千咲
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