【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理 由 上告人の上告理由一について。 本件記録に徴するに、昭和四〇年六月一日の原審口
主文本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理由上告人の上告理由一について。 本件記録に徴するに、昭和四〇年六月一日の原審口頭弁論において陳述された上告人の同日附準備書面には、原判決事実の摘示(二)に記載されたところに相当する記述が認められる。されば、そのような主張をしたことを否定する論旨は根拠を欠く。原判決は、その理由(二)において、上告人の右の主張の理由のないことのみならず、所論の一三、七五七円にのぼる被上告人の否認行為についても、それが本件更正処分を無効ならしめるものでない旨を判示しているのであるから、これに所論の違法は存せず、論旨は理由がない。 同二について。 その(1)にいう上告人の主張に対する誤認が原判決に存しないことは、前叙のとおりである。その(2)は、原審の専権に属する証拠の採否を非難するに帰し、もとより理由がない。その(3)において論旨が趣旨不明という「叙上のような理由」とは、上告人の係争事業年度の前年度分の所得についての更正処分が否認額三六、三四三円の存在を理由としたのを指すこと判文上明らかであり、原判決は、右の事実その他挙示の証拠に基づき、被上告人が何ら理由もないのに五〇、一〇〇円(それは、上記否認額と係争事業年度における否認額一三、七五七円の合計額にあたる。)を益金加算額に水増しをした事実はない旨を判示したのである。されば、原判決が所論のような憶測によつたものとは到底認められず、これを違憲とする主張は前提を欠く。このことは、(4)の論旨についても同様である。その(5)は、原判決が、挙示の証拠に基づき、単に被上告人が係争事業年度の益金に加算した金額中には被- 1 -上告人において同年度の経費その他につき否認した金額一三、七五七円が含まれる 同様である。その(5)は、原判決が、挙示の証拠に基づき、単に被上告人が係争事業年度の益金に加算した金額中には被- 1 -上告人において同年度の経費その他につき否認した金額一三、七五七円が含まれるという事実を認定したのにとどまるのに対し、その否認行為を失当と論ずるものであつて、正鵠を失する。しかも、所論は結局原審の専権に属する採証を非難するにすぎない。そして、以上説示したところからすれば、その(6)、(7)の理由のないこともまた明らかである。 同三および四について。 被上告人が本件更正処分をするにあたつて、係争事業年度の前年度における所得計算上の否認金額三六、三四三円を「利益処分によらない表現積立金の増加」として一旦係争事業年度の益金に加算したうえ課税済のものとして減算したのは、上告人が右否認による帳簿の修正を損益計算書に計上する方法によらず、直接前期繰越益金勘定、税金引当金勘定を増額させる方法により修正しているため、課税所得の計算上所得金額の計算と積立金額の計算とを関連させるためとられた措置と認められ、その超過所得算定上必要な期首積立金額の内容を明確にするためにも、これを所論のように無用の操作とはいいがたい。また、右否認金額と係争事業年度における経費その他の否認金額一三、七五七円の合計がたまたま五〇、一〇〇円となるにしても、所論のように、上記の操作が右係争事業年度の否認金額を理由あるよう見せかけるための被上告人側の計画的作為とは到底推認しえない。 ところで、課税庁による経費等の否認があり、その否認が違法である場合に、それを理由とした更正処分に瑕疵があることになるのであるが、その瑕疵が更正処分を当然無効ならしめるのには、それが重大かつ明白なものでなければならない。そして、その瑕疵の明白とは、処分の外形上客観的に処分庁の誤認が一見看 処分に瑕疵があることになるのであるが、その瑕疵が更正処分を当然無効ならしめるのには、それが重大かつ明白なものでなければならない。そして、その瑕疵の明白とは、処分の外形上客観的に処分庁の誤認が一見看取できる程度のものでなければならず、またそのような処分の無効原因は、無効を主張する者において具体的事実に基づいて主張すべきであることは、論旨引用の当裁判所の裁判例によつて明らかである。されば、所論の経費等の否認について被上告人側に- 2 -右のような明白な誤認の存することが具体的事実に基づいて認定できないかぎり、本件更正処分を無効とはなしがたく、原判決が、右否認の当否のごときは原則として事実関係を精査してはじめて判明する性質のもので、たとえ結果において被上告人の認定に誤りがあり、あるいはその手続に疎漏があつたとしても、それをもつて直ちに明白な瑕疵ありとして更正処分を当然無効と認められない旨を判示したのを失当ということはできない。論旨は理由がない。 同五ないし九について。 昭和二五年法律第七二号による改正前の旧法人税法(昭和二二年法律第二八号)が法人の超過所得算定の基礎とした資本金額は、その事業年度において法人が自由に活用しうる状態にあつた払込資本金額と積立金額、すなわち法人の各事業年度の利益のうち社内に留保した金額の合計であるが、右積立金額から「法人税として納付すべき金額」を控除させるのは、それが近い将来において社外に流出するのが確定的であるので、これを利益の留保とみないためと解される(同法一三条、一五条、一六条参照)。また更正処分は、事業年度の終了により課税要件を充足して成立する同年度の法人税納税義務について、納税義務者の申告を失当として法律の定めるところに適合するようこれを訂正確定する処置である。してみれば、本件において、被上告人が 終了により課税要件を充足して成立する同年度の法人税納税義務について、納税義務者の申告を失当として法律の定めるところに適合するようこれを訂正確定する処置である。してみれば、本件において、被上告人が上告人の前事業年度の所得に関する更正処分により追徴した不足税額二九、九〇〇円は、前年度に係る法人税として、すでに係争事業年度期首において存在していたわけであるから、これを期首積立金額の計算上控除したのは正当であつて、これと趣旨を同じくする原判決の判断を違法とは認められない。論旨は、原判示を法的根拠不明というが、判決における法律上の見解の説示には、必ずしも所論のように一々根拠法条の掲記を要するものではない。論旨が国税の徴収または収納に関する規定をあげて論難するのは正鵠を失し、その他の所論もすべて前叙の判断を動かすに足りない。 - 3 -つぎに、被上告人が前記積立金額から控除すべき「法人税として納付すべき金額」のうちに三、一八四円の加算税額をも計上した点についてみると、右加算税額は、正当な申告と納期限によつた納税者との均衡上追徴税額に加算してその事業年度の所得に対する法人税の一部として納付すべきことの確定した税額であるから、前記追徴税額とその取扱いを別異にすべきでないとする見解も一理ないではない。しかし、積立金額の計算はその事業年度の期首における金額によるのであるから、利益の留保とみない未払法人税額もまた期首において客観的に成立していると考えられる前事業年度分までの未納法人税額に限られ、その以後における納税の遅延の状態に基づいて課せられる加算税額には及ばないと解するのが相当であつて、この点については論旨を肯認することができる。 しかし、右の場合、積立金額から控除すべき法人税のうちに加算税が含まれるか否かは、法人税法またはその関係法令上必ずしも ばないと解するのが相当であつて、この点については論旨を肯認することができる。 しかし、右の場合、積立金額から控除すべき法人税のうちに加算税が含まれるか否かは、法人税法またはその関係法令上必ずしも明らかとはいいがたく、また本件において三、一八四円の加算税額を積立金額より控除しない結果を被上告人の更正処分における計算と比較するも、その税額の減少は些少のものといわざるをえない。 (更正処分の計算に対し税額の減少は、前記加算税額をはるかに下回わる程度のものにすぎない。)されば、本件被上告人の更正処分には叙上の誤算が認められるとしても、その瑕疵は所論のように右処分の全部または一部を当然無効ならしめるに足りる重大かつ明白なものとは到底解しがたく、これと結論を同じくする原判決の判断は相当であつて、結局論旨は採用できない。 なお、このほか論旨の主張するところがいずれも理由のないことは、本判決のすでに説示したところに徴し明らかであり、論旨はすべて理由がない。 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第一小法廷- 4 -裁判長裁判官松田二郎裁判官入江俊郎裁判官長部謹吾裁判官岩田誠裁判官大隅健一郎- 5 -
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