令和7(ネ)37 損害賠償請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和7年10月31日 高松高等裁判所 その他 徳島地方裁判所 令和5(ワ)38
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判決文本文6,625 文字)

- 1 - 主文 1 一審原告の控訴及び請求の拡張並びに一審被告B及び一審被告Cの控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。 ⑴ 一審被告Aは、一審原告に対し、1039万6632円及びこれに対する令和3年7月31日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支 払え。 ⑵ 一審原告の一審被告Aに対するその余の請求並びに一審被告B及び一審被告Cに対する請求をいずれも棄却する。 2 一審原告のその余の控訴及び一審被告Aの控訴をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は、第1、2審を通じて、一審原告に生じた費用の2分の1及び一 審被告Aに生じた費用の全部を3分し、その2を一審原告の、その余を一審被告Aの各負担とし、一審原告に生じた費用の2分の1並びに一審被告B及び一審被告Cに生じた費用の全部を一審原告の負担とする。 4 この判決は、第1項⑴に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 当事者の求める裁判 1 一審原告の控訴の趣旨⑴ 原判決を次のとおり変更する。 ⑵ 一審被告らは、一審原告に対し、連帯して3043万7205円及びこれに対する令和3年7月31日から支払済みまで年3パーセントの割合による 金員を支払え。 ⑶ 訴訟費用は、第1、2審とも、一審被告らの負担とする。 ⑷ 上記⑵につき仮執行宣言 2 一審被告らの控訴の趣旨⑴ 原判決中、一審被告らの敗訴部分を取り消す。 ⑵ 上記⑴の部分に係る一審原告の請求をいずれも棄却する。 - 2 -⑶ 訴訟費用は、第1、2審とも、一審原告の負担とする。 第2 事案の概要(略語は原判決の例による。) 1 本件は、一審原告の従業員であった一審被告Aが退職の際に一審原告の管 。 - 2 -⑶ 訴訟費用は、第1、2審とも、一審原告の負担とする。 第2 事案の概要(略語は原判決の例による。) 1 本件は、一審原告の従業員であった一審被告Aが退職の際に一審原告の管理するサーバーに保存されたファイルを削除したことについて、一審原告が、一審被告Aに対し、主位的に不法行為に基づき、予備的に雇用契約上の債務不履 行に基づき、3043万7205円及びこれに対する不法行為に基づく請求については不法行為日(ファイルの削除日)である令和3年7月31日から、債務不履行に基づく請求については支払催告日(訴状送達日)の翌日である令和5年3月16日から各支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払(身元保証人である一審被告B及び一審被告Cとの連帯支払) を求め、また、一審被告Aの妻である一審被告B及び一審被告Aの母である一審被告Cに対しては、身元保証ニ関スル法律(以下「身元保証法」という。)1条に規定する身元保証契約(連帯保証)に基づき、一審被告Aと三者連帯して上記と同じ支払を求める事案である。 原審は、①不法行為及び身元保証契約に基づく請求について、577万42 12円及びこれに対する令和3年7月31日から支払済みまで年3パーセントの割合による遅延損害金の連帯支払を求める限度で認容し、その余をいずれも棄却し、②債務不履行及び身元保証契約に基づく請求(上記①の請求棄却部分に対応する部分のみが審判の対象)については、いずれも棄却した。 一審原告及び一審被告らの双方が、自身の敗訴部分を不服として控訴した。 2 前提事実、争点及び当事者の主張は、原判決を次のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の2及び3に記載のとおりであるから、これを引用する。 て控訴した。 2 前提事実、争点及び当事者の主張は、原判決を次のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の2及び3に記載のとおりであるから、これを引用する。 ⑴ 原判決6頁1行目の「原告の権利等を侵害していない」を「故意ではなく過失によるものにすぎない」に改め、6頁2行目の冒頭から3行目の「ま た、」まで、6頁6行目の「したがって」から8行目の末尾まで及び6頁1 - 3 -2行目の「から、」から14行目の「できない」までを削り、6頁14行目の末尾を改行して次のとおり加える。 「 以上のとおり、本件ソフトウェア①及び本件ソフトウェア②(以下「本件各ソフトウェア」という。)は、これらを使用することにより一審原告に莫大な損害賠償責任が発生するという深刻なリスクを内包するものであった上、 引継ぎの指示もなかったことから、一審被告Aは、一審原告の財産である本件各ソフトウェアのデータを毀損すべきでないとは認識しながらも、上記リスクの回避をより優先すべきと考え、ファイルの削除を行った。今思えば、一審原告の財産を毀損すべきではなかったが、それは優先すべき事柄の判断を誤ったものにすぎない。つまり、一審被告Aによるファイルの削除は、故 意ではなく、過失によるものにすぎない。」⑵ 原判決6頁17行目の「2581万4785円」を「3043万7205円」に改め、6頁26行目の末尾を改行して次のとおり加える。 「 加えて、本件ソフトウェア①を再開発するためには、新たなレンズを購入する必要がある。なぜなら、一審被告Aが本件装置に取り付けたレンズは、 再利用できないからである。その購入に要する費用は、462万2420円である。」⑶ 原判決7頁16行目の「原告の行為」の次に「(本件業務①~本 、一審被告Aが本件装置に取り付けたレンズは、 再利用できないからである。その購入に要する費用は、462万2420円である。」⑶ 原判決7頁16行目の「原告の行為」の次に「(本件業務①~本件業務④に関するファイルを削除した行為)」を加える。 ⑷ 原判決8頁6行目を改行して次のとおり加える。 「 なお、本件ファイル①-❺は、デモンストレーションルームのレイアウトに関する資料にすぎず、財産的価値はない。」⑸ 原判決9頁15行目の末尾を改行して次のとおり加える。 「⑷ 身元保証法5条による減免(一審被告B及び一審被告Cの主張) ファイルの削除に関する過失は一審原告にもあることに加え、一審被告 - 4 -B及び一審被告Cが身元保証契約の締結に至った事情及びその締結に当たって用いた注意の程度に照らせば、身元保証法5条による免責が認められるべきである。 (一審原告の主張)ファイルの削除は一審被告Aの故意によるものであり、一審原告には過 失や帰責性がないことに加え、一審被告B及び一審被告Cは一審被告Aから保証責任の範囲や内容について説明を受けたはずであることに照らせば、身元保証法5条による減免は認められない。」第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は、原審と異なり、①一審原告の一審被告Aに対する不法行為に基 づく請求を1039万6632円及びこれに対する令和3年7月31日から支払済みまで年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余の不法行為に基づく請求を棄却するとともに、債務不履行に基づく請求(不法行為に基づく請求の棄却部分に対応する部分のみが審判の対象)を棄却し、また、②一審原告の一審被告B及び一審被告Cに対する請求をいずれ も棄却するのが相当と判 もに、債務不履行に基づく請求(不法行為に基づく請求の棄却部分に対応する部分のみが審判の対象)を棄却し、また、②一審原告の一審被告B及び一審被告Cに対する請求をいずれ も棄却するのが相当と判断する。その理由は、原判決を次のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の1から5までに記載のとおりであるから、これを引用する。 ⑴ 原判決13頁2行目の「令和2年9月30日」を「令和2年4月30日」に、18頁5行目の冒頭から9行目の「この頃」までを「Anaconda のプレスリリース等(乙8、9)によれば、令和2年4月30日頃」に、18頁19~20行目の「令和2年9月30日」を「令和2年4月30日」に改める。 ⑵ 原判決20頁2行目の「により原告の権利等が侵害されたか」を「が故意ではなく過失によるものか」に、20頁4行目の「本件各」から8行目の末 尾までを「本件各ファイルのデータは、一審原告に帰属する財産である。し - 5 -たがって、一審原告の同意を得ることなくその財産を消滅させる行為は、不法行為法上の加害行為に当たる。一審被告Aは、本件各ファイルを削除した際、上記のとおり一審原告の同意を得ることなくその財産を消滅させることを認識し、認容していた。したがって、本件各ファイルの削除は、確定的故意によるものである。これに対し、一審被告らは、一審被告Aが本件各ファ イルを削除した理由について、本件各ソフトウェアは、いわゆる無償版を使用したものであったから商用には利用できず、これらを今後も使用することにより一審原告に莫大な損害賠償責任が発生するという深刻なリスクを内包するものであった上、引継ぎの指示もなかったことから、一審原告の財産を毀損すべきでないとは認識しながらも、上記リスクの回避を ことにより一審原告に莫大な損害賠償責任が発生するという深刻なリスクを内包するものであった上、引継ぎの指示もなかったことから、一審原告の財産を毀損すべきでないとは認識しながらも、上記リスクの回避をより優先すべき と考えた旨主張する。しかし、本当にそのように考えていたのであれば、秘密裡に削除することはない(なお、業務上作成されたデータは基本的に引き継ぐべきものであるから、引継ぎ不要と指示・回答されたとの一審被告Aの供述は採用できず、その他にこの事実を裏付ける客観的な資料がない以上、上司からそのような指示・回答は得ていなかったと推認されるところ、当該 データの削除の可否を上司に確認・相談することは、それほど時間も労力も要しないから、その手順を踏まなかったことについての合理的な理由は見出し難いことに加え、一審被告Aの最終出勤日から1か月後に自動的に削除されるプログラムを秘密裡に作成して組み込むまでの事情があったとは認め難い。)し、仮にそのように考えていたとしても、上記の確定的故意を否定す る理由にはならない。一審被告らの主張は採用できない。」に改める。 ⑶ 原判決20頁9行目の冒頭から13行目の「ⅱ」までを「イなお、一審被告らは、」に、20頁17行目の「検討する」を「損害論に関することとして検討する」に改め、20頁18行目から21頁25行目まで及び22頁22行目から26行目までを削る。 ⑷ 原判決23頁1行目の「被告らは、」を「ウ一審被告らは、本件各ファ - 6 -イルの削除が全て故意ではなく過失によるものにすぎない旨の主張が仮に認められないとしても、」に改め、23頁1行目の「内に」から2行目の「それ」まで及び23頁19行目から20行目までを削り、23頁21行目及び22行目の「本件各ファイル」を「▲▲ ぎない旨の主張が仮に認められないとしても、」に改め、23頁1行目の「内に」から2行目の「それ」まで及び23頁19行目から20行目までを削り、23頁21行目及び22行目の「本件各ファイル」を「▲▲▲▲▲▲フォルダの下層フォルダ以外のフォルダ内のファイル」に改める。 ⑸ 原判決23頁25行目の「削除し、」から26行目の「被告Aの」までを「削除した」に改める。 ⑹ 原判決24頁25行目の「供述をする」から25頁3行目の「うかがわれず」までを「供述をするが、その主張を認めるには足りない。したがって、本件ファイル①-➊~❺は」に、25頁15行目の「❷」を「➊」に改める。 ⑺ 原判決25頁15行目の「再構築するには、」の次に「再利用が困難なレンズを新たに購入するとともに、」を、17行目の「人件費」の次に「及びレンズの購入に要する費用(462万2420円。甲20、27~29)」を加え、26頁3行目の「と認められる」を削り、26頁4行目の「4月)」の次に「及びレンズ購入費用462万2420円の合計729万7475円 と認められる」を加える。 ⑻ 原判決27頁20行目の末尾に「なお、一審被告らは、本件業務④に関するファイルが削除されたことによる損害の主張はない旨主張するが、補正の上引用した原判決第2の3⑵イにある。」を加える。 ⑼ 原判決27頁23行目の「577万4212円」を「1039万6632 円」に改める。 ⑽ 原判決29頁2行目の末尾を改行して次のとおり加える。 「6 争点⑷(身元保証法5条による減免)について⑴ 証拠(甲1、2、5)及び弁論の全趣旨によれば、一審原告と一審被告B及び一審被告Cとの間の身元保証契約(以下「本件各身元保証契約」と いう。)に関する事情として、次の事実が認められる。 証拠(甲1、2、5)及び弁論の全趣旨によれば、一審原告と一審被告B及び一審被告Cとの間の身元保証契約(以下「本件各身元保証契約」と いう。)に関する事情として、次の事実が認められる。 - 7 -ア一審原告は、一審被告Aの入社(令和元年9月2日)に当たって、一審被告Aに対し、入社に必要な書類一式を郵送した上で、入社時に提出するよう指示した。 その書類一式の中には、労働契約書(兼雇入通知書)や誓約書兼同意書のほかに、身元保証書があった。身元保証書の保証人欄には2名分の 署名押印欄があった。極度額の定めはなく、保証期間は5年と定められていた。 イ一審被告Aは、妻の一審被告B及び母の一審被告Cに対し、入社時に必要な書類である旨説明して、上記身元保証書への署名押印を依頼した。 一審被告B及び一審被告Cは、入社時に必要な形式的な書類という程度 の認識で、上記身元保証契約書に署名押印した。 一審被告Aは、一審原告に対し、労働契約書(兼雇入通知書)や誓約書兼同意書と共に、上記身元保証書を提出した。 ウ一審原告は、上記イの身元保証書により本件各身元保証契約を締結するに当たって、一審被告B及び一審被告Cに対し、保証意思の確認をし なかった。また、極度額の定めがないことや保証期間を5年と定めていることを含め、本件各身元保証契約により想定し得る保証責任の範囲や内容について、説明を現実にはしなかった。そもそも、言葉を交わすことすらなく、上記イのとおり一審被告Aを通じて身元保証書の提出を受けたにすぎない。 ⑵ 以上の事実によれば、本件各身元保証契約は、典型的な情誼による軽率な保証契約であって、一審被告B及び一審被告Cは、夫又は息子である一審被告Aの依頼を受け、保証責任の範囲や内容やこれによるリスクを十分に検討 実によれば、本件各身元保証契約は、典型的な情誼による軽率な保証契約であって、一審被告B及び一審被告Cは、夫又は息子である一審被告Aの依頼を受け、保証責任の範囲や内容やこれによるリスクを十分に検討しないまま、本件各身元保証契約を締結したものと認められる。また、このような情誼による軽率な保証契約の締結に至った主な原因は、契 約の相手方(主債務者たる被保証人の使用者)である一審原告が、本件各 - 8 -身元保証契約に関する保証意思の確認をせず、必要な説明を現実にはしなかった点にある。以上に加え、一審原告が青色半導体レーザー分野で大きな世界シェアを有する会社であることその他本件にあらわれた一切の事情に照らせば、身元保証法5条による免責を認めるのが相当である。 よって、一審原告の一審被告B及び一審被告Cに対する請求は、いずれ も理由がない。 2 以上のとおり、原判決は一部相当でないから主文第1項のとおり変更し、一審原告のその余の控訴及び一審被告Aの控訴はいずれも理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。 高松高等裁判所第2部 裁判長裁判官 藤田昌宏 裁判官 金洪周 裁判官石原和孝は差し支えのため署名押印することができない。 裁判長裁判官 - 9 -藤田昌宏 裁判長裁判官 藤田昌宏

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