- 1 -平成24年7月25日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成23年(行ケ)第10388号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成24年7月11日判決原告株式会社アート・ラボ同訴訟代理人弁理士小林良平中村泰弘開本亮市岡牧子谷口聡被告株式会社香彩堂同訴訟代理人弁護士宝賀寿男和田宏徳同弁理士中井信宏 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求特許庁が無効2011-400004号事件について平成23年10月17日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要本件は,原告が,下記1のとおりの手続において,原告の下記2の本件考案に係る実用新案登録に対する被告の無効審判請求について,特許庁が当該実用新案登録を無効とした別紙審決書(写し)記載の本件審決(その理由の要旨は下記3のとおり)には,下記4の取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。 - 2 - 1 本件訴訟に至る手続の経緯(1) 原告は,考案の名称を「室内芳香器」とする登録第3134691号実用新案(平成19年6月7日出願,同年8月1日設定登録。平成22年10月26日に提出された訂正後の請求項の数は,全5項である。)に係る実用新案権を有する者である 香器」とする登録第3134691号実用新案(平成19年6月7日出願,同年8月1日設定登録。平成22年10月26日に提出された訂正後の請求項の数は,全5項である。)に係る実用新案権を有する者である(以下「本件実用新案登録」といい,上記訂正後の明細書(甲20,21)を「本件明細書」という。)。 (2) 被告は,平成23年4月4日,本件実用新案登録の請求項1ないし5に係る考案について,実用新案登録無効審判を請求し,無効2011-400004号事件として係属した。 (3) 特許庁は,平成23年10月17日,「実用新案登録第3134691号の請求項1ないし5に係る考案についての実用新案登録を無効とする。」旨の本件審決をし,同月27日,その謄本が原告に送達された。 2 実用新案登録請求の範囲の記載本件実用新案登録の請求項1ないし5に係る考案(以下「本件考案1」ないし「本件考案5」という。)の実用新案登録請求の範囲の記載(平成22年10月26日付けの訂正書によって訂正されたもの)は,以下のとおりである。文中の「/」は,原文の改行箇所を示す。 【請求項1】a)液体芳香剤を収容する,上部に開口を有する容器と,/b)前記開口の上に配置された,ソラの木の皮で作製した造花と,/c)下端が前記液体芳香剤中に配置され,上部において前記造花と接続されている浸透性の紐と,/を備えることを特徴とする室内芳香器【請求項2】前記液体芳香剤が有色であり,前記造花が淡色であることを特徴とする請求項1に記載の室内芳香器【請求項3】前記紐が綿糸を編んだ綿コードであることを特徴とする請求項1又は2に記載の室内芳香器【請求項4】前記綿コードの中にワイヤが挿入されていることを特徴とする請求項- 3 -3に記載の室内芳香器【請求項5】前記容器が透明であ あることを特徴とする請求項1又は2に記載の室内芳香器【請求項4】前記綿コードの中にワイヤが挿入されていることを特徴とする請求項- 3 -3に記載の室内芳香器【請求項5】前記容器が透明であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の室内芳香器 3 本件審決の理由の要旨(1) 本件審決の理由は,要するに,本件考案1ないし5は,下記引用例に記載された考案(以下「引用考案」という。)及び周知例1ないし7に記載された周知の事項等に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり,実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであって,本件実用新案登録は,実用新案法37条1項2号の規定により無効にすべきものである,というものである。 ア引用例:特開2004-329794号公報(甲1)イ周知例1:「Saisonde かおん」(株式会社主婦と生活社,平成17年(2005年)11月1日発行)44頁(甲3)ウ周知例2:「SpiralBeauty」(インターネット<URL:http://beauty.ti-da.net/e781488.html>)に投稿された投稿記事(投稿日:平成18年(2006年)5月3日)(甲5)エ周知例3:「mederu日記人にやさしい雑貨店」(インターネット<URL:http://mederu.jp/step_blog/archive_172.htm>)に投稿された投稿記事(投稿日:平成18年(2006年)11月24日)(甲6)オ周知例4:「スーパーデリバリーボタニカルプラネット」(インターネット<URL:http://www.superdelivery.com/p/r/pd_p/772260/>)に投稿された投稿記事(投稿日:平成19年 パーデリバリーボタニカルプラネット」(インターネット<URL:http://www.superdelivery.com/p/r/pd_p/772260/>)に投稿された投稿記事(投稿日:平成19年(2007年)1月23日)(甲7)カ周知例5:「中部レプブログ」(インターネット<URL:http://chuburep.jugem.jp/?month=200703>)に投稿された投稿記事(投稿日:平成19年(2007年)3月27日)(甲8)キ周知例6:「スーパーデリバリーボタニカルプラネット」(インターネット- 4 -<URL:http://www.superdelivery.com/p/r/pd_p/796974/>)に投稿された投稿記事(投稿日:平成19年(2007年)4月26日)(甲9)ク周知例7:「生活スケッチ」(インターネット<URL:http://hazukiaa.exblog.jp/3490715/>)に投稿された投稿記事(投稿日:平成18年(2006年)10月6日)(甲10)(2) なお,本件審決が認定した引用考案並びに本件考案1ないし5と引用考案との一致点及び相違点は,それぞれ次のとおりである。 ア引用考案:香料及び色素を含む溶液を収容する,上部に開口部を有する容器と,前記開口部の上に配置された,花弁部を複数集めた集合体で構成された濾紙からなる揮散体と,下端が前記溶液中に配置され,上部において前記揮散体と接続されている,ポリプロピレン・ポリエチレン複合繊維からなる吸液部材と,を備える揮散器イ本件考案1ないし5と引用考案との一致点:a)液体芳香剤を収容する,上部に開口を有する容器と,b)前記開口の上に配置された,造花と,c)下端が前記液体芳香剤中に配置され,上部において前記造花と接続されている 1ないし5と引用考案との一致点:a)液体芳香剤を収容する,上部に開口を有する容器と,b)前記開口の上に配置された,造花と,c)下端が前記液体芳香剤中に配置され,上部において前記造花と接続されている浸透材と,を備える室内芳香器ウ本件考案1ないし5と引用考案との相違点1:造花に関して,本件考案1ないし5では,「ソラの木の皮で作製した」ものであるのに対して,引用考案は,花弁部を複数集めた集合体で構成された濾紙からなる揮散体からなる点エ本件考案1ないし5と引用考案との相違点2:浸透材に関して,本件考案1ないし5では,「浸透性の紐」であるのに対して,引用考案は,ポリプロピレン・ポリエチレン複合繊維からなる吸液部材である点オ本件考案2ないし5と引用考案との相違点3:本件考案2ないし5は,「液体芳香剤が有色であり,造花が淡色である」のに対し,引用考案では,溶液が色素を含むものの,揮散体の花弁部の色については不明な点カ本件考案3ないし5と引用考案との相違点4:浸透材に関して,本件考案3- 5 -ないし5は,「紐が綿糸を編んだ綿コードである」と特定しているのに対して,引用考案は,ポリプロピレン・ポリエチレン複合繊維からなる吸液部材である点キ本件考案4及び5と引用考案との相違点5:綿コードに関して,本件考案4及び5は,「綿コードの中にワイヤが挿入されている」のに対して,引用考案では,吸液部材の補強について不明な点ク本件考案5と引用考案との相違点6:容器に関して,本件考案5では,「透明である」としているのに対して,引用考案では,容器が透明かどうか不明な点 4 取消事由(1) 本件考案1の容易想到性に係る判断の誤り(取消事由1)(2) 本件考案2の容易想到性に係る判断の誤り(取消事由2)(3) 本件考案4 ,容器が透明かどうか不明な点 4 取消事由(1) 本件考案1の容易想到性に係る判断の誤り(取消事由1)(2) 本件考案2の容易想到性に係る判断の誤り(取消事由2)(3) 本件考案4の容易想到性に係る判断の誤り(取消事由3)第3 当事者の主張 1 取消事由1(本件考案1の容易想到性に係る判断の誤り)について〔原告の主張〕(1) 相違点1に係る判断の誤りア本件審決は,周知例1ないし7に基づき,「造花をソラの木の皮で作製することは従来周知の事項である」と認定したが,そのうち,周知例2ないし7は,いずれも個人的な体験や特定のトピックに関するニュース等を掲載する,いわゆる「ブログ」に投稿された記事である。そもそもインターネット上の情報については,掲載日時にその内容のとおりに掲載されたことに疑義がある場合が少なくないから(甲35),証拠として採用すべきでなく,上記証拠に基づき上記認定をした本件審決には誤りがある。 イまた,周知例1によれば,ソラフラワーとリフレッシャーオイルなる物が別売されている事実が認められるだけであり,周知例1のみをもって上記のように周知と認定することには,明らかに論理の飛躍がある。造花であるソラフラワーと芳香剤を別体として販売し,ユーザーがソラフラワーに芳香剤を染み込ませて使うも- 6 -のであることは周知でない。 ウ本件審決は,従来周知の造花であるソラフラワーを引用考案の造花に適用できないとする阻害要因は格別見当たらないと認定したが,ソラフラワーは従来周知の造花でない。 また,引用例は,造花の材質として,数多くの例を挙げながら,天然素材については一つも挙げていない。ソラは別として,造花として天然素材のものがあることは従来周知である以上,そのような従来周知である天然素材を例として挙げ 花の材質として,数多くの例を挙げながら,天然素材については一つも挙げていない。ソラは別として,造花として天然素材のものがあることは従来周知である以上,そのような従来周知である天然素材を例として挙げていないことこそ,まさに,ソラを含む天然素材を引用考案の造花に適用できないとする阻害要因の存在を推認させる事実である。 したがって,ソラを含む天然素材の造花が従来周知であると認定しつつ,同時に,上記のような阻害要因は格別見当たらないと認定することには論理の矛盾があり,ソラは別として,天然素材の造花が従来周知である以上,天然素材であるソラフラワーを引用考案の造花に適用できないとする阻害要因が存在する。 エさらに,本件考案1の時間に関する観念は,視覚の面だけでなく嗅覚の面でも考慮している。これに対し,引用考案における時間に関する観念は,視覚の面に限定されたものであり,本件考案1の時間に関する観念は存在しない。そして,本件考案1は,その時間に関する観念に最も適した素材としてソラの木の皮を採用したのであり,このような観念の存在しない引用考案において,揮散体の素材としてソラを採用する動機はない。 したがって,引用考案において,濾紙からなる揮散体に代え,ソラフラワーを用いることは,当業者がきわめて容易になし得たものでなく,この点で本件審決には誤りがある。 (2) 本件考案1の作用ないし効果についての判断の誤り本件審決は,引用考案に時間に関する観念が存在することから,本件考案1の作用ないし効果は,引用考案及び周知例1ないし7に記載の従来周知の事項等から当業者が十分予測できる範囲内のものであって,顕著なものでないと判断した。 - 7 -しかしながら,本件考案1の時間に関する観念は,引用考案に存在せず,さらに,周知例のいずれにも開示されていない以上 業者が十分予測できる範囲内のものであって,顕著なものでないと判断した。 - 7 -しかしながら,本件考案1の時間に関する観念は,引用考案に存在せず,さらに,周知例のいずれにも開示されていない以上,本件考案1の作用ないし効果は,引用考案及び周知例1ないし7に記載の事項等から当業者が十分予測できる範囲内のものでなく,顕著なものである。 〔被告の主張〕(1) 相違点1に係る判断の誤りについてア周知例2ないし7について(ア) 周知例2に係るブログには,周知例1の雑誌におけるソラフラワーについて掲載されている。さらに,当該ブログには,掲載日時が明記されているとともに,掲載者の顔写真等のプロフィールのほか,当該掲載者へ問合せができるように当該ブログ記事に対してコメントを書き込めるコメント欄もある。 (イ) 周知例3に係るブログは,雑貨セレクトショップ「Mederu」の店主が日々の営業情報を綴っているものであり,当該店舗の新しいブログ(乙50)には,店舗住所や電子メールアドレスが掲載されている。 (ウ) 周知例4に係るWebサイトは,株式会社ラクーンが運営し,全国のメーカーと小売店との間で企業間取引を行うことのできる小売店専用の仕入れサイトである(乙52)。また,周知例4には,ソラフラワーの商品ページが更新掲載された日が明記されている。 (エ) 周知例5に係るブログは,株式会社中部レプ(乙53)が運営していた商品紹介等を目的としたブログであり,その紹介記事の掲載された日が明記されている。 (オ) 周知例6は,前記周知例4と同様のウェブサイトであり,ソラフラワーの商品ページの更新掲載された日が明記されている。 (カ) 周知例7に係るブログは,現在閉鎖されており,コメント欄も削除されているが,掲載日時が明記されている。 (キ) 以 トであり,ソラフラワーの商品ページの更新掲載された日が明記されている。 (カ) 周知例7に係るブログは,現在閉鎖されており,コメント欄も削除されているが,掲載日時が明記されている。 (キ) 以上のとおり,周知例2ないし7は,いずれも問合せ先や掲載日時の疑義- 8 -を解消する可能性が少ないホームページには該当せず,先行技術として引用することができることは明らかである。また,全く関わりのない他者同士が本件考案1の出願日前に,ソラフラワーに関する記事を少なくとも6つ以上のホームページにそれぞれ掲載していることを鑑みれば,前記疑義が生じる可能性は極めて低い。さらに,前記ホームページ以外にも,ソラフラワーが掲載されていることを鑑みれば(甲3,4),ソラの木の皮で造花を作製することが従来周知の事項であることは,何ら疑いの余地もない。 イ周知例1について周知例1には,ソラフラワーとリフレッシャーオイルの画像の説明文として,ユーザーがソラフラワーに芳香剤を染み込ませて使うものであることが記載されている。また,周知例2及び3にも,ソラフラワーに芳香剤を染み込ませることが記載されている。そもそも,ソラフラワーにリフレッシャーオイルを別売しているということは,当該オイルをソラフラワーに染み込ませて使い切った後に,改めて追加で当該オイルを購入し得るようにも販売しているのである。原告の主張は,周知例1から都合良く抽出しただけのものであり,本件審決の認定に誤りはない。 ウ阻害要因についてソラフラワーは従来周知の造花であって,造花として天然素材のものがあることも周知である。従来周知の造花であるソラフラワーを引用考案の造花に適用できないとする阻害要因は格別見当たらないとする本件審決の認定に,誤りはない。 エ時間に関する観念について引用考案の ることも周知である。従来周知の造花であるソラフラワーを引用考案の造花に適用できないとする阻害要因は格別見当たらないとする本件審決の認定に,誤りはない。 エ時間に関する観念について引用考案の揮散器においても,揮散体に芳香剤を吸収させてから香気を揮散させるまでに時間が掛かるから,当然に,視覚だけでなく嗅覚に関しても時間の観念が存在している。また,周知例1記載のソラフラワーの天然ポプリも同様に,ソラの木の皮で作製した造花に芳香剤を吸収させてから香気を徐々に揮散させるものであり,時間の観念において嗅覚に関するものが存在している。本来,ポプリとは植物の花や茎等を乾燥させて香料を染み込ませることによってその香気をゆっくりと揮- 9 -散させて長く楽しむものであり,原告が主張する嗅覚の時間の観念による作用ないし効果は,芳香器にとって従来周知のものである。したがって,原告が新たに主張する嗅覚に関する時間の観念が本件考案1に存在していても,本件審決の判断に誤りはない。 ソラフラワーは従来周知の造花であり,ソラフラワーを引用考案の造花に適用できないとする阻害要因も格別見当たらない。したがって,引用考案において,濾紙からなる揮散体に代え,ソラフラワーを用いることは,当業者がきわめて容易に想到できたものであり,本件審決の判断に誤りはない。 (2) 本件考案1の作用ないし効果についての判断の誤りについて本件考案1の作用ないし効果は,時間に関する観念が引用考案にも存在し,周知のソラフラワーの天然ポプリにおいても時間に関する観念が存在するため,引用考案,周知例1ないし6から当業者が十分予測できる範囲のものであって顕著なものではない。 2 取消事由2(本件考案2の容易想到性に係る判断の誤り)について〔原告の主張〕(1) 相違点3に係る判断の誤 例1ないし6から当業者が十分予測できる範囲のものであって顕著なものではない。 2 取消事由2(本件考案2の容易想到性に係る判断の誤り)について〔原告の主張〕(1) 相違点3に係る判断の誤りア本件審決は,引用考案において,変色する前のもとの色を,溶液の色素の色と異なる色とすること,すなわち,淡色系の色とすることは,当業者がきわめて容易に想到し得た程度の事項であると判断した。 イ本件考案2におけるソラの木の皮は,非常に細かい繊維組織を有するため,液体芳香剤をゆっくりと花弁の根本から先端の方へ浸透させていくことができる。 そして,本件考案2の相違点3に係る構成は,造花の素材としてソラの木の皮を用いてこそ,その技術的意義を発揮することができるものであり,そうである以上,ソラの木の皮を用いていない引用考案において,本件考案2の相違点3に係る構成を採用する動機はない。 ウしたがって,引用考案において,変色する前のもとの色を,溶液の色素と異- 10 -なる色とすること,すなわち,淡色系の色とすることは,当業者がきわめて容易に想到し得た程度の事項でない。 (2) 本件考案2の作用ないし効果についての判断の誤り本件考案2によれば,液体芳香剤が花弁を浸透していく間に,花弁の色の変化を楽しむことができる。このとき,花弁の素材であるソラの木の皮は,非常に細かい繊維組織を有するため,色は,花弁の中心から周辺へと徐々に広がって行く。その様はまるで,花が少しずつ開花していくように見えるため,利用者は,液体芳香剤の香気に加えて,視覚からの美感によりいやされる(【0011】【0016】)。 このように,本件考案2は,造花の素材としてソラの木の皮を用いることを前提に,有色の液体芳香剤と淡色の造花という組合せを採用することで,より自然環境に近 りいやされる(【0011】【0016】)。 このように,本件考案2は,造花の素材としてソラの木の皮を用いることを前提に,有色の液体芳香剤と淡色の造花という組合せを採用することで,より自然環境に近い,繊細かつ微妙な花の開花の様子を再現するようにしたものである。そして,これが利用者に与える視覚による美感は,引用考案のようなソラの木の皮を用いていない芳香器によっては得られないものであり,また,単なる花弁の色の変化が利用者に与える美感からは隔絶された,際立って優れたものである。 したがって,本件考案2の作用ないし効果は,引用考案及び周知例1ないし7に記載の事項等から当業者が十分予測できる範囲内のものでなく,顕著なものである。 〔被告の主張〕(1) 相違点3に係る判断の誤りについて造花をソラの木の皮で作製すること及び当該造花に芳香剤を染み込ませることは従来周知の事項であり,相違点3に係る構成の技術的意義について,造花の素材としてソラの木の皮を用いることを阻害する要因は特にない。また,被染色物を染料よりも淡色系の色とすることは至極当然の事項である。 したがって,引用考案において,変色する前のもとの色と,溶液の色素の色と異なる色とすること,すなわち,淡色系の色とすることは,当業者がきわめて容易に想到し得た程度の事項である。 (2) 本件考案2の作用ないし効果についての判断の誤りについて- 11 -造花をソラの木の皮で作製すること及び当該造花に芳香剤を染み込ませることは従来周知の事項であることから,本件審決の効果についての判断に誤りはない。 3 取消事由3(本件考案4の容易想到性に係る判断の誤り)について〔原告の主張〕(1) 相違点5に係る判断の誤りア本件審決は,造花において,茎となる部分にワイヤを挿入して自立できるようにす 取消事由3(本件考案4の容易想到性に係る判断の誤り)について〔原告の主張〕(1) 相違点5に係る判断の誤りア本件審決は,造花において,茎となる部分にワイヤを挿入して自立できるようにすることは従来周知の事項であるから,引用考案において,吸液部材の中にワイヤを挿入することは,当業者がきわめて容易に想到し得たものであると判断した。 イ引用考案の吸液部材は,ポリプロピレン・ポリエチレン複合繊維からなり,芯径は例えばφ13㎜とされる(【0020】)。また,その外観は,図1に示されるとおりである。このように,比較的強度の高い合成繊維を素材に,芯径を大きくすることで安定した円柱形状とした場合に,本件審決が述べるような「補強」のためにワイヤを用いることは,通常,必要でなく,引用考案において,吸液部材の中にワイヤを挿入する動機はない。 ウしたがって,引用考案において,吸液部材の中にワイヤを挿入することは,当業者がきわめて容易に想到し得たものでない。 (2) 本件考案4の作用ないし効果についての判断の誤り引用考案において,吸液部材の中にワイヤを挿入することは,当業者がきわめて容易に想到し得たものでない。 したがって,本件考案4の作用ないし効果(【0012】)は,引用考案及び周知例1ないし7に記載の事項等から当業者が予測できる範囲内のものでなく,顕著なものである。 〔被告の主張〕(1) 相違点5に係る判断の誤りについて引用例の吸液部材は,芯径φ13㎜に限られるものではなく,芯径3㎜で長さが10㎝というように芯径を小さくした場合には(【0048】【図9】),吸液部- 12 -材が安定せず,補強のため吸液部材の中にワイヤを挿入する動機は十分にある。一般的な造花の作製方法において,造花の芯茎にワイヤを挿入することは,従来周知の 【0048】【図9】),吸液部- 12 -材が安定せず,補強のため吸液部材の中にワイヤを挿入する動機は十分にある。一般的な造花の作製方法において,造花の芯茎にワイヤを挿入することは,従来周知の事項である(甲16)。したがって,引用考案において,吸液部材の中にワイヤを挿入することは,当業者がきわめて容易に想到し得たものである。 (2) 本件考案4の作用ないし効果についての判断の誤りについて造花において,茎となる部分にワイヤを挿入して自立できるようにすることは従来周知の事項であり,本件考案4の効果は,引用考案及び周知例1ないし7の記載の従来周知の事項等から当業者が十分予想できる範囲のものであって,顕著なものでない。 第4 当裁判所の判断 1 本件考案について(1) 本件考案1ないし5の実用新案登録請求の範囲の記載は,前記第2の2のとおりであり,本件明細書には,以下の記載がある(甲20)。 ア技術分野本件考案は,液体芳香剤を吸い上げて揮発させることにより設置空間を適度な芳香で満たすことができる,扱いやすくインテリア性にも優れた室内芳香器に関する(【0001】)。 イ背景技術近年,生活空間をより快適にする方法として,また心身の疲れを癒すリラクゼーションの方法として,香りの効能が注目を浴びている(【0002】)。 芳香発散装置としてばかりではなく,室内装置品としての観点から,見た目も自然な感じを与えるために造花を用いた室内芳香器も多数提案されている(【0004】)。 ウ考案が解決しようとする課題従来の造花を用いた室内芳香器は,造花は単に見た目を華やかにするための観賞対象としてのみ用いられており,芳香発散装置としては用いられていなかった- 13 -(【0006】)。 本件考案が解決しようとする を用いた室内芳香器は,造花は単に見た目を華やかにするための観賞対象としてのみ用いられており,芳香発散装置としては用いられていなかった- 13 -(【0006】)。 本件考案が解決しようとする課題は,造花を観賞対象として用いるほか,芳香発散装置としても用いる,実用性及びインテリア性に共に優れた性能を持つ室内芳香器を提供することである(【0007】)。 エ考案の効果本件考案に係る室内芳香器は,造花をソラの木の皮で作製する。ソラ(Sola)は,タイ原産のマメ科ツノクサネム属の低木である。その幹(茎)を一皮むくと,光沢のある茎実が現れる。この光沢のある茎実の皮を薄くむき,乾燥させたものがポプリとして販売されているが,本件考案ではそれを花びらの形にして造花を作製する(【0009】)。 乾燥させたソラの皮は繊維が非常に細かく,浸透性の紐が吸い上げた液体芳香剤を十分に吸収し,それをゆっくりと揮発させる。そのため,本件考案に係る室内芳香器では,芳香の揮散が長時間安定的に持続する(【0010】)。 なお,前記液体芳香剤に有色の(色の強い)ものを使用し,造花には淡色の(色の薄い)ものを用いることが望ましい。ソラの皮は,そのままでは白色であるため,模擬しようとする花の種類に応じて各種の着色をすることができる。しかし,造花はあまり強い色で着色せずに白色のまま,あるいは着色をしても薄い色としておき,液体芳香剤に強い色のものを用いると,液体芳香剤が造花の中(花弁)を浸透してゆく間に,花の色の変化を楽しむことができる。なお,このとき,造花の形は,その色に合うものとしておくことが好ましい。例えば,赤の液体芳香剤の場合はバラやチューリップ,カーネーション等,青い液体芳香剤の場合はアジサイやアサガオ等とすることができる(【0011】)。 前記浸透性 合うものとしておくことが好ましい。例えば,赤の液体芳香剤の場合はバラやチューリップ,カーネーション等,青い液体芳香剤の場合はアジサイやアサガオ等とすることができる(【0011】)。 前記浸透性の紐としては,綿糸を編んだ綿コードが適している。綿コードも,その造花の茎に似た形状・色としておくと,造花全体がより自然に近くなる。また,その中にワイヤを通しておくと,造花が容器の開口よりも上で自立できるようになり,造花の配置の自由度が高まる(【0012】)。 - 14 -前記容器には,不透明な陶磁器を用いてもよいし,透明なものを用いてもよい。 透明である場合には,液体芳香剤の減り具合が分かるという実用的な効果のほか,造花を茎部を含めた全体で観賞することができるという美観上の効果も得られる(【0013】)。 オ考案を実施するための最良の形態本実施形態の室内芳香器では,造花の茎部の綿コードが液体芳香剤を吸い上げ,花弁に供給する。ソラの木の皮から成る花弁部では,その細かい組織により,液体芳香剤が緩やかな速度で根本から先端の方へ浸透してゆくが,その間,液体芳香剤が着色されていることにより,それが花弁を浸透してゆくのを目で見ることができる。このとき,茎部が花弁部の中心に接続されているため,色は花の中心から付き始め,徐々に周辺に広がって行くようになる。その様はまるで花が少しずつ開花してゆくように見え,利用者は,液体芳香剤の香気に加えて,その花の色の変化という視覚からの美感によりいやされることとなる(【0016】)。 本件考案に係る室内芳香器では,造花の花弁部からの液体芳香剤の揮散の速度が遅いため,周囲に強い芳香ではなく,微弱な香気を漂わせ,上品な香気空間を形成する。また,そのような安定した香気を長時間楽しむことができる(【0017】)。 花の花弁部からの液体芳香剤の揮散の速度が遅いため,周囲に強い芳香ではなく,微弱な香気を漂わせ,上品な香気空間を形成する。また,そのような安定した香気を長時間楽しむことができる(【0017】)。 (2) 本件明細書の上記記載によれば,本件考案によれば,浸透性の紐を介して液体芳香剤が供給される造花として,ソラの木の皮で作製されたものを用いることにより,造花に吸収された液体芳香剤をゆっくり揮散させることができ,芳香の揮散を長時間安定的に持続できるという作用効果を奏するものと認められる。 2 引用考案について(1) 引用例には,以下の記載がある(甲1)。 ア発明の属する技術分野本発明は,揮散器に関し,特に,供給される芳香液に応じて色彩や模様が付与される揮散体を有する揮散器に関する。また,揮散体が特定の形状を有する揮散器に- 15 -関する(【0001】)。 イ課題を解決するための手段このような構成を有する揮散器とすれば,上記の揮散器と同様の効果を奏するだけでなく,使用者は時間の経過に伴う揮散体の色や模様の変化を楽しむことができるため,より一層装飾性が向上する。 上記構成の揮散器において,揮散体の少なくとも一部は花型の形状を有する構造とすれば,揮散体に芳香液が供給された際に,あたかも実際の花が色づくように見えるため,より一層装飾性が向上する(【0006】【0007】)。 揮散体は,その材質として,上記の溶液を保持でき,且つ,溶液中の有効成分(揮散成分)を揮散させることができるものであればいずれのものでも使用でき,具体的には,樹脂,パルプ等の有機材料やガラス等の無機材料の多孔性材料を用いることができる。揮散体の材質として,例えば,紙,布である。紙としては,例えば,濾紙,クレープペーパ,書道用紙,和紙,洋紙,特殊紙(すいとり ,パルプ等の有機材料やガラス等の無機材料の多孔性材料を用いることができる。揮散体の材質として,例えば,紙,布である。紙としては,例えば,濾紙,クレープペーパ,書道用紙,和紙,洋紙,特殊紙(すいとり紙等)を用いることができる。布としては,例えば,ポリエステル,綿,アクリルを用いることができる。また,揮散体が複数の材質からなっていてもよい。揮散体の複数の材質としては,例えば,合成繊維,ポリエステル,ナイロン,アセトン等の単品またはこれらを複合したものである(【0010】)。 ウ発明の実施の形態図1に示す揮散器は,内部に有効成分を含有する溶液を収納した容器と,溶液に浸漬された吸液部と,この吸液部材に取り付けられた揮散体とを備えている(【0016】)。 図2に示すように,容器は中空の円筒状に形成され,上方に開口部が設けられている。開口部には,長尺の円柱状に形成された吸液部材が嵌挿されている。吸液部材は,一方の端部が溶液に浸漬され,容器の内部底面に接近又は接触した状態で配され,他方の端部が開口部から容器の外部に露呈した状態で配されている(【0017】)。 - 16 -図1に示すように,揮散体は,円形の濾紙を適当に湾曲させることで略花弁状に形成された部材(花弁部)を複数集めた集合体で構成されている。それぞれの花弁部は,図2に示すように,吸液部材の外部に露呈した側の端部の外周面に接触するように取り付けられている。そして,それぞれの花弁部は揮散器の上面視(図1に向かって上側から見た場合)において,吸液部材を中心とし,その中心から外周側へ花弁部の先端(吸液部材に取り付けられた側とは反対側の縁部)を向けた花を模るように配されている。 なお,揮散体は,その材質として,クレープペーパ,書道用紙,布,合成繊維,不織布等を用いてもよい(【0018 先端(吸液部材に取り付けられた側とは反対側の縁部)を向けた花を模るように配されている。 なお,揮散体は,その材質として,クレープペーパ,書道用紙,布,合成繊維,不織布等を用いてもよい(【0018】)。 本実施の形態の揮散体は,重量を91g/㎡とし,総揮散面積を337㎠とした。 また,吸液部材は,材質がポリプロピレン・ポリエチレン複合繊維で,芯径をφ13㎜とし,長さを10㎝とし,気孔率を77%とした(【0020】)。 吸液部材は,揮散体に供給する溶液の量を調整可能で,揮散体は,供給された溶液によって着香及び着色した箇所が模様として識別可能であるように構成されている。つまり,図1に示すように,容器に収納された溶液は吸液部材に吸収され,吸液部材と揮散体が接触する箇所を介して揮散体に供給される。揮散体において,供給された溶液に含まれる,不揮発性の色素を除く,溶媒,香料が揮発する。すると,揮散体における,色素が残留した箇所(着色部)が色づく。言い換えれば,着色部からは香料が揮散されていると捉えることができる。このため,揮散体に基づいて揮散器における揮散成分(芳香成分)の揮散状態を確認することができる (【0021】)。 本実施の形態において,図1に示すように,揮散体の色づく箇所は,花弁部の先端から濃く着色し,使用開始から所定時間(90分)経過後には花弁部の全体が着色される。言い換えれば,着色部の形状(模様)は,揮散体に供給される溶液の量に応じて流動的に面積が変化し,また,時間の経過によって大きくなる(【0022】)。 - 17 -揮散体(花弁部)に付与される模様は,揮散体の吸液性と溶媒の揮発性とによって,形状及び形状の変化が決定される。溶液が揮散体に吸収されて花弁部の先端に行き届く前に,溶媒が揮発してしまうと溶液に含まれる色素が花弁部の )に付与される模様は,揮散体の吸液性と溶媒の揮発性とによって,形状及び形状の変化が決定される。溶液が揮散体に吸収されて花弁部の先端に行き届く前に,溶媒が揮発してしまうと溶液に含まれる色素が花弁部の先端まで達することがない。このとき,花弁部の先端で濃い着色を付与することができない。 言い換えれば,溶媒の揮発する速度が速すぎる場合,揮散体の吸液する速度を上回り,色素が先端に行き届く前に溶媒が揮発してしまい,花弁部の途中で着色を付与することとなる。一方,溶液が揮散するよりも先に花弁部の先端に達するまで吸液されると,色素は花弁部の先端に十分な量だけ供給されるため,花弁部の先端で濃い着色が付与されることとなる。つまり,色素は不揮発性であり,溶媒が揮発するまで溶媒とともに吸液部材及び揮散体の内部を移動する。したがって,吸液の速度と揮発の速度とを適宜調整することで,揮散体に付与される模様を決定することができる(【0023】)。 実施例1ないし5の吸液部材の芯径はφ2㎜,φ3㎜又はφ13㎜,長さはいずれも10㎝である(【0044】)。 (2) 引用考案の認定及び本件考案1ないし5と引用考案との一致点及び相違点が,前記第2の3(2)のとおりであることは,当事者間に争いがない。 3 取消事由1(本件考案1の容易想到性に係る判断の誤り)について(1) 相違点1について本件考案1と引用考案との相違点1は,造花に関して,本件考案1では,「ソラの木の皮で作製した」ものであるのに対して,引用考案は,花弁部を複数集めた集合体で構成された濾紙からなる揮散体からなる点である。 (2) ソラフラワーの周知性についてア周知例1について周知例1には,ソラフラワーとリフレッシャーオイルの画像の説明文として,「植物繊維で作った花にバラの香りを染み込ませて」及 である。 (2) ソラフラワーの周知性についてア周知例1について周知例1には,ソラフラワーとリフレッシャーオイルの画像の説明文として,「植物繊維で作った花にバラの香りを染み込ませて」及び「ローズの香りの花ポプリ。ソラという植物の茎をスライスして作った花に,オイルを染み込ませています。 - 18 -ほかにヒヤシンスやシクラメンも。」との記載がある。それによれば,ユーザーが,ソラフラワーに芳香剤を染み込ませて使うものであることが理解できる。また,そもそも,ソラフラワーにリフレッシャーオイルを別売しているということは,当該オイルをソラフラワーに染み込ませて使い切った後に,改めて追加で当該オイルを入手できるように販売しているものである。よって,周知例1には,本件審決が認定した,「造花であるソラフラワーと芳香剤とを別体として販売し,ユーザーがソラフラワーに芳香剤を染み込ませて使うもの」であることが記載されている。 周知例1は,株式会社主婦と生活社が一般の主婦を対象として出版した雑誌「Saisonde かおん」にソラフラワーという商品の概要や用途が紹介されているというものであるところ,室内芳香器やソラフラワーのユーザーである主婦を対象とした雑誌に掲載された事項については,本件考案の属する技術分野の出願時の技術水準にあるものを全て自らの知識とすることができる当業者としても,ユーザーのニーズや商品の評価などには相当な関心を払うはずである。そうすると,当業者は,ユーザー向けの雑誌に掲載された事項についても,当然,自らの知識としているものと考えられ,そこに掲載された事項は,当業者にとっても周知な事項といって差し支えない。 よって,周知例1の上記記載をもって,そこに紹介されたソラフラワーも,当業者に周知のものということができる。 イ れ,そこに掲載された事項は,当業者にとっても周知な事項といって差し支えない。 よって,周知例1の上記記載をもって,そこに紹介されたソラフラワーも,当業者に周知のものということができる。 イ周知例2ないし7について原告は,周知例2ないし7は,インターネット上に投稿された投稿記事であり,その掲載日時にその内容どおり掲載されたかどうかの疑義を完全に解消できるものではないなどと主張する。 しかしながら,互いに関係のない複数の投稿者が,本件考案の出願日前に,ソラフラワーに関する記事を複数掲載していることに照らせば,上記周知例1の周知性を補強するという面において一定の意義が認められ,周知例1に紹介されたソラフラワーが,ユーザー層の興味を喚起し,浸透していったことを裏付けるものである。 - 19 -ウよって,ソラフラワーの周知性に関する本件審決の判断に,誤りはない。 (3) 容易想到性についてア引用例には,本件考案1の「造花」に相当する揮散体は,「その材質として,上記の溶液を保持でき,かつ,溶液中の有効成分(揮散成分)を揮散させることができるものであればいずれのものでも使用でき」と記載され,その具体例として,「樹脂,パルプ等の有機材料やガラス等の無機材料の多孔性材料」を用いることができることが記載されている(【0010】)。 引用例には,ソラの木の皮等の天然素材については明記されていないが,ソラの木の皮等の天然素材も,造花に吸収された液体芳香剤をゆっくり揮散させることができ,芳香の揮散を長時間安定的に持続できるという作用効果を有することは明らかであり,上記のとおり,ソラフラワーは,従来周知の造花である。そうすると,ソラの木の皮等の天然素材が記載されていないとしても,引用考案における花弁部の集合体である揮散体に代えて,ソラフラ とは明らかであり,上記のとおり,ソラフラワーは,従来周知の造花である。そうすると,ソラの木の皮等の天然素材が記載されていないとしても,引用考案における花弁部の集合体である揮散体に代えて,ソラフラワーを適用することができる。 イこのように,引用考案の「揮散体」を,これと同様の作用・機能を有する周知のソラフラワーに置き換える動機は十分に存在し,それを阻害する要因も存在しないから,相違点1に係る構成は,きわめて容易に想到できるものである。 そして,本件考案1が奏する作用効果,すなわち,ソラの木の皮で作製されたものを用いることにより,造花に吸収された液体芳香剤をゆっくり揮散させることができ,芳香の揮散を長時間安定的に持続できるという作用効果も,引用考案等から予測できる範囲内のものにすぎず,格別のものとは認められない。 ウよって,本件考案1は,引用考案及び周知例1に基づき,きわめて容易に想到し得るものである。 (4) 原告の主張についてア原告は,引用例は,造花の材質として,数多くの例を挙げながら,従来周知の天然素材については一つも挙げていないことを理由に,ソラを含む天然素材を引用考案の造花に適用できないとする阻害要因が存在する旨主張する。 - 20 -確かに,引用例(【0010】)には,揮散体の材質として,ソラを含む天然素材について明示されていないが,「揮散体は,その材質として,上記の溶液を保持でき,かつ,溶液中の有効成分(揮散成分)を揮散させることができるものであればいずれのものでも使用でき」るとした上で,紙や布を例示しているにすぎないから,それ以外の材質を何ら排除するものではない。そして,従来周知のソラを含む天然素材も,造花に吸収された液体芳香剤をゆっくり揮散させることができ,芳香の揮散を長時間安定的に持続できるとい すぎないから,それ以外の材質を何ら排除するものではない。そして,従来周知のソラを含む天然素材も,造花に吸収された液体芳香剤をゆっくり揮散させることができ,芳香の揮散を長時間安定的に持続できるという作用効果を有するもので,「溶液を保持でき,かつ,溶液中の有効成分(揮散成分)を揮散させることができる」ものであるから,天然素材が例示されていないことをもって阻害事由があるとはいえない。 イ原告は,本件考案1の時間に関する観念は,視覚の面だけでなく嗅覚の面でも考慮しているのに対して,引用考案は,視覚の面に限定される点で相違すると主張する。 しかしながら,引用考案の揮散器でも,揮散体に芳香剤を吸収させることによって,揮散体から香気を発するもので,揮散体内への吸収の度合いが進むにつれて,揮散体から発する香気が強くなることは明らかである。また,引用例の記載,すなわち,「着色部の形状(模様)は,揮散体に供給される溶液の量に応じて流動的に面積が変化し,また,時間の経過によって大きくなる」「吸液の速度と揮発の速度とを適宜調整することで,揮散体に付与される模様を決定することができる」(【0022】【0023】)から,時間に関する観念が視覚の面でも考慮されていることも明らかである。 なお,周知例1のソラフラワーも,一般的な天然ポプリと同様,植物の花や茎等を乾燥させて香料を染み込ませることによって,香気をゆっくりと揮散させて長く楽しむものであるから,嗅覚の面での時間に関する観念を有するものである。 (5) 小括よって,取消事由1は,理由がない。 4 取消事由2(本件考案2の容易想到性に係る判断の誤り)について- 21 -(1) 相違点3について本件考案2と引用考案との相違点3は,本件考案2は,「液体芳香剤が有色であり,造花が淡色である」 事由2(本件考案2の容易想到性に係る判断の誤り)について- 21 -(1) 相違点3について本件考案2と引用考案との相違点3は,本件考案2は,「液体芳香剤が有色であり,造花が淡色である」のに対し,引用考案では,溶液が色素を含むものの,揮散体の花弁部の色については不明な点である。 (2) 容易想到性についてア前記3のとおり,引用考案は,引用考案も時間に関する観念が視覚の面でも考慮されており,具体的には,香料に含まれた色素が揮散体に残留して揮散体本来の色を香料に含まれた色素により着色させて,使用者は時間の経過に伴う揮散体の色や模様の変化を楽しむことができるものであって,あたかも実際の花が色づくように見せるものである。 ところで,色や模様の変化を明瞭にするためには,同色系よりも色味が大きく異なるものを選択した方が好ましく,淡色と有色とを選択することは常套手段にすぎない。また,引用考案において,揮散体の色は変化前の色に相当し,これに溶液の色を混ぜた混合色が変化後の色となるが,有色に淡色を混ぜるよりも淡色に有色を混ぜた方が色や模様の変化が明瞭になることは明らかである。よって,色や模様の変化を楽しむという引用考案の着眼に基づき,揮散体を淡色とし,溶液を有色とすることによって,色や模様の変化を明瞭にすることは,当業者が適宜選択することができる事項である。 イそして,本件考案2が奏する作用効果,すなわち,液体芳香剤が造花の中(花弁)を浸透していく間に,花の色の変化を楽しむことができるという作用効果(【0011】)も格別のものではない。 ウよって,本件考案2は,引用考案及び周知例1に基づき,きわめて容易に想到し得るものである。 (3) 原告の主張についてア原告は,本件考案2の相違点3に係る構成は,造花の素材としてソ ウよって,本件考案2は,引用考案及び周知例1に基づき,きわめて容易に想到し得るものである。 (3) 原告の主張についてア原告は,本件考案2の相違点3に係る構成は,造花の素材としてソラの木の皮を用いてこそ,その技術的意義を発揮することができるものである以上,ソラの- 22 -木の皮を用いていない引用考案において,本件考案2の相違点3に係る構成を採用する動機はないと主張する。 しかしながら,相違点3に係る構成の技術的意義は,液体芳香剤が造花の中(花弁)を浸透してゆく間に,花の色の変化を楽しむことができる点にあると認められるところ,この点は引用考案でも意図されており,ソラの木の皮を用いずに,引用例に例示された素材を用いても十分に発揮されるものである。 イ原告は,本件考案2は,造花の素材としてソラの木の皮を用いることを前提に,有色の液体芳香剤と淡色の造花という組合わせを採用することで,より自然環境に近い,繊細かつ微妙な花の開花の様子を再現するようにしたものであり,引用考案等からは予測できない顕著なものであると主張する。 しかしながら,上記のとおり,引用考案も,使用者は時間の経過に伴う揮散体の色や模様の変化を楽しむことができるものであって,あたかも実際の花が色づくように見せるものであるから(【0006】【0007】),本件考案2の作用効果は,引用考案等の作用効果の総和以上のものではない。 (4) 小括よって,取消事由2は理由がない。 5 取消事由3(本件考案4の容易想到性に係る判断の誤り)について(1) 相違点5について本件考案4と引用考案との相違点5は,綿コードに関して,本件考案4は,「綿コードの中にワイヤが挿入されている」のに対して,引用考案では,吸液部材の補強について不明な点である。 (2) について本件考案4と引用考案との相違点5は,綿コードに関して,本件考案4は,「綿コードの中にワイヤが挿入されている」のに対して,引用考案では,吸液部材の補強について不明な点である。 (2) 容易想到性についてア原告は,引用考案の吸液部材の芯径は例えばφ13㎜とされ,比較的強度の高い合成繊維を素材に,芯径を大きくすることで安定した円柱形状とした場合に,補強のためにワイヤを用いることは,通常必要でないと主張する。 しかし,引用例には,実施例として,芯径φ2㎜又は3㎜で長さ10㎝の場合も- 23 -示されていることから(【0044】),芯径φ13㎜は一例にすぎない。また,芯径φ13㎜であっても,長さによっては芯の剛性を高めることが必要な場合もあるし,多少の剛性を有する素材・形状でもより高い剛性を求める場合もあるから,引用考案において,補強のためにワイヤを用いる必要がないとはいえない。 そして,保形性と剛性強化とを図るべく芯にワイヤを挿入することは,技術常識であることに照らせば,引用考案の吸液部材の中にワイヤを挿入することは,当業者であればきわめて容易に想到し得るものである。 イそして,本件考案4が奏する作用効果,すなわち,綿コードの中にワイヤを通しておくと,造花が容器の開口よりも上で自立できるようになり,造花の配置の自由度が高まるという作用効果(【0012】)も,格別のものではない。 ウよって,本件考案4は,引用考案及び周知例1に基づき,きわめて容易に想到し得るものである。 (3) 小括よって,取消事由3は理由がない。 6 結論以上の次第であるから,原告の請求は棄却されるべきものである。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官髙部眞規子 6 結論 以上の次第であるから,原告の請求は棄却されるべきものである。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官髙部眞規子 裁判官井上泰人 裁判官齋藤巌
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