- 1 -主文 本件控訴をいずれも棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1当事者の求める裁判 控訴の趣旨(1)原判決を取り消す。 (2)被控訴人横浜市長に対する請求被控訴人横浜市長は,原判決別紙1物件目録記載の建物に係る平成16年度固定資産課税台帳の登録価格を21億1626万9413円に修正し,これを固定資産課税台帳に登録する処分をせよ。 (3)被控訴人横浜市に対する請求ア主位的請求被控訴人横浜市は,控訴人に対し,7875万5850円並びに,うち787万5585円に対する平成7年3月1日から支払済みまで,うち787万5585円に対する平成8年3月1日から支払済みまで,うち787万5585円に対する平成9年3月1日から支払済みまで,うち787万5585円に対する平成10年3月1日から支払済みまで,うち787万5585円に対する平成11年3月1日から支払済みまで,それぞれ年5分の割合による金員,及び,うち787万5585円に対する平成12年3月1日から支払済みまで,うち787万5585円に対する平成13年3月1日から支払済みまで,うち787万5585円に対する平成14年3月1日から支払済みまで,うち787万5585円に対する平成15年3月1日から支払済みまで,うち787万5585円に対する平成16年3月1日から支払済みまで,それぞれ年7.3パーセントの割合による金員を支払え。 - 2 -イ予備的請求被控訴人横浜市は,控訴人に対し,7875万5850円並びに,うち787万5585円に対する平成7年3月1日から支払済みまで,うち787万5585円に対する平成8年3月1日から支払済みまで,うち787万5585円に対する平成9年3月1日から支払済みまで,うち787万5585円に対する平成1 7年3月1日から支払済みまで,うち787万5585円に対する平成8年3月1日から支払済みまで,うち787万5585円に対する平成9年3月1日から支払済みまで,うち787万5585円に対する平成10年3月1日から支払済みまで,うち787万5585円に対する平成11年3月1日から支払済みまで,うち787万5585円に対する平成12年3月1日から支払済みまで,うち787万5585円に対する平成13年3月1日から支払済みまで,うち787万5585円に対する平成14年3月1日から支払済みまで,うち787万5585円に対する平成15年3月1日から支払済みまで,うち787万5585円に対する平成16年3月1日から支払済みまで,それぞれ年5分の割合による金員を支払え。 (4)訴訟費用は第1,2審とも被控訴人らの負担とする。 控訴の趣旨に対する答弁主文同旨第2事案の概要 事案の要旨(1)本件は,原判決別紙1物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)を所有する控訴人が,被控訴人横浜市長(以下「被控訴人市長」という。)が平成16年度の固定資産課税台帳に登録した本件建物の価格(以下「本件登録価格」という。)に重大な錯誤があって「適正な時価」(地方税法(以下「法」という。)341条5号)を上回ると主張し,ア被控訴人市長に対して本件登録価格の修正処分及び修正された価格の登録処分をするよう求める(以下「本件義務付けの訴え」という。)とともに,イ本件登録価格における上記錯誤によって発生した本件建物に係る固定資産税及び都- 3 -市計画税(以下「固定資産税等」という。)の過納金と同程度以上の過納金が,平成15年度以前の固定資産税等においても発生していたとして,被控訴人横浜市(以下「被控訴人市」という。)に対して,(ア)平成11年度から 固定資産税等」という。)の過納金と同程度以上の過納金が,平成15年度以前の固定資産税等においても発生していたとして,被控訴人横浜市(以下「被控訴人市」という。)に対して,(ア)平成11年度から平成15年度に係る固定資産税等についての還付金及びこれに対する還付加算金の請求(以下「本件還付金等請求」という。)並びに平成6年度から平成10年度に係る固定資産税等についての過納金及びこれに対する利息の不当利得としての返還請求,(イ)上記(ア)の予備的請求として,平成6年度から平成15年度に係る固定資産税等についての過納金及びこれに対する利息の不当利得としての返還請求,(ウ)上記(イ)の予備的請求として,国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づく,平成6年度から平成15年度に係る固定資産税等についての過納金相当額及びこれに対する遅延損害金の賠償請求(以下「本件国家賠償請求」という。)を求める事案である。 (2)原審は,ア本件登録価格決定に対して不服があれば,固定資産評価審査委員会に対する審査の申出及び同委員会の決定に対する取消訴訟を提起する方法によってのみ争うことができるとされているのであって,法は,本件義務付けの訴えのような被控訴人市長を相手として本件登録価格の修正等の義務付けを求める訴えを許容していないものと解するのが相当であるとして,控訴人の上記訴えを却下し,イ(ア)本件各課税処分等(控訴人を本件建物の所有者として,平成6年度から平成15年度に至るまで,原判決別紙2別表D及びE欄記載のとおり本件建物に係る固定資産税等を課税した処分及び上記期間における本件建物の登録価格の決定)を無効とするほどの重大な瑕疵はないから,無効な課税処分を前提とする控訴人の本件還付金等請求及び平成6年度から平成15年度に係る固定資産税等につ た処分及び上記期間における本件建物の登録価格の決定)を無効とするほどの重大な瑕疵はないから,無効な課税処分を前提とする控訴人の本件還付金等請求及び平成6年度から平成15年度に係る固定資産税等についての過納金の不当利得としての返還請求は理由がなく,(イ)控訴人は本件各課税処分を取り消した上でなければ国賠法に基づいてその過納金相当額及びこれに対する遅延- 4 -損害金の損害賠償請求をすることはできないとして,上記各請求をいずれも棄却した。 (3)そこで控訴人が,この認定判断を不服として本件控訴を提起した。 基礎となる事実原判決6頁末行の「決定をした」の次に「が,その理由は,平成16年度は評価替えの年度に当たらないため,家屋については,改築又は損壊その他これらに類する特別の事情を原因とする事項を除いては,審査の申出をすることができないとされているところ,本件家屋について平成16年度価格の算定において,改築又は損壊その他これらに類する特別の事情による価格の見直しはなく,また,特別な事情があることを理由とする申出ではないため審査の対象とはならないというものであった」を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第2事案の概要」2項(原判決4頁11行目から6頁末行まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 争点及び争点に関する当事者の主張次のとおり原判決を補正し,「控訴人の補足主張」を付加するほかは原判決の「事実及び理由」中の「第3争点」及び「第4争点に関する当事者の主張」(原判決7頁1行目から41頁13行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1)原判決の補正ア原判決12頁12行目及び16頁13行目の「「管財」」をいずれも「「管材」」に改める。 イ同40頁3行目の「両社」を「両者」に改める。 ウ りであるから,これを引用する。 (1)原判決の補正ア原判決12頁12行目及び16頁13行目の「「管財」」をいずれも「「管材」」に改める。 イ同40頁3行目の「両社」を「両者」に改める。 ウ同41頁4行目の「785万5585円」及び6行目の「7875万5850円」をいずれも「787万5585円」に改める。 エ同別紙3(58頁)末行の合計欄の「149,175,199」を「1,840,624,829」に,「148,242,403」を「468,568,452」に,「297,417,602」を「2,30- 5 -9,193,281」にそれぞれ改める。 (2)控訴人の補足主張ア争点1(本件義務付けの訴えの適法性)について(ア)審査委員会への審査請求制度は,納税者のために簡易,迅速な制度として,審査委員会が行った裁決に対する争い方を示したにすぎず,同手続以外によって固定資産の評価を争うことを否定するものではないと解すべきであり,このような解釈が租税法律主義,審査委員会による審査請求制度の本則に適うものである。3年に1度の基準年度に,極めて限られた期間にしか申立てが認められない審査委員会による審査請求によってしか固定資産の評価を争えないとすることは余りに行政の便宜に偏している。したがって,審査請求の制度の存在は,本件義務付けの訴えを否定する理由にはならない。 (イ)義務付け訴訟については,行訴法上,「重大な損害が生ずるおそれ」が要件となるところ,固定資産評価基準による在来家屋の評価については,土地のように基準年度毎に一から評価を行う場合と異なり,次々と再建築費評点補正率を乗じていく方法で行われるために,現在の本件建物の評価がいくらであるかが,本件建物が存在して課税が続く限り重大な要素となり,現在の評価が高額であれば今後継続的に損 異なり,次々と再建築費評点補正率を乗じていく方法で行われるために,現在の本件建物の評価がいくらであるかが,本件建物が存在して課税が続く限り重大な要素となり,現在の評価が高額であれば今後継続的に損害が生じかねず,重大な損害が生ずるおそれがある。 イ争点3(本件各課税処分等の無効原因の有無)について(ア)平成6年度市取扱要領について平成6年度市取扱要領の補正項目の欠落等は,本件建物に関係する範囲でも極めて多岐にのぼり,その結果,本件建物は高額に評価され,竣工以来,高額な固定資産税等を賦課され続けている。また,「適正な時価」の算定において,当時の自治省が定めた固定資産評価基準こそが根幹的な唯一の基準であるところ,課税関係の全国的な統一,平等取扱を- 6 -念頭に同基準が限定的に各自治体独自の取扱要領を定めることを委任している範囲を超えて定められた上記要領の瑕疵の重大性は明らかである。 横浜市において上記要領こそが実務の基準として通用している以上,上記要領の瑕疵の問題は本件建物に関する一部の評価の誤りに留まらず,横浜市全域における問題であって,租税法律主義の観点からも到底容認できるものではなく,その瑕疵は重大であるというべきである。 (イ)設備に係る規模補正について規模補正に係る係数の誤りは,単に個別の設備に関する判断の誤りではなく,本件事務所棟の存否や所有権帰属主体の判断に相当するような基本的な誤りであり,その結果,多岐にわたって規模補正の誤りが生じているのであり,かかる瑕疵が重大であることは明らかである。 ウ争点4(本件各課税処分等の違法を理由とする国家賠償請求は認められるか)について固定資産の評価,これを前提とした課税の適正が問題となっている本件において,根本的に重要なのは,憲法に定められた租税法律主義とその目指すところ 違法を理由とする国家賠償請求は認められるか)について固定資産の評価,これを前提とした課税の適正が問題となっている本件において,根本的に重要なのは,憲法に定められた租税法律主義とその目指すところの課税行政に対する納税者の信頼確保,納税者間の平等取扱である。国賠法1条1項の規定からすると,課税処分の無効や取消訴訟による取消は国家賠償請求の要件ではなく,国賠法自体の解釈として違法性や過失が問われなければならない。 被控訴人市による本件建物の評価については,根本準則である固定資産評価基準に反する取扱要領の定めと同要領による評価,多岐にわたる規模補正の誤りがあり,違法性及び過失が認められることは明らかである。 第3当裁判所の判断 次項に「控訴人の補足主張に対する判断」を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第5当裁判所の判断」(原判決41頁14行目から53頁15行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 - 7 - 控訴人の補足主張に対する判断(1)争点1(本件義務付けの訴えの適法性)について控訴人は,審査請求制度は,納税者のために簡易,迅速な制度として,審査委員会が行った裁決に対する争い方を示したにすぎず,審査請求手続以外の手続によって固定資産の評価を争うことを否定するものではないと解すべきであり,このような解釈が租税法律主義,審査委員会による審査請求制度の本則に適うものである旨主張する。 しかし,控訴人主張のような点だけを取り上げて審査請求制度の趣旨,役割を論じるのは相当ではない。課税処分に対する不服申立制度には,比較的短期間に大量的になされるところの課税処分を可及的速やかに確定させることにより徴税行政の安定とその円滑な運営を確保しようという要請が働いている(最高裁昭和42年(行ツ)第57号昭和48年4月2 較的短期間に大量的になされるところの課税処分を可及的速やかに確定させることにより徴税行政の安定とその円滑な運営を確保しようという要請が働いている(最高裁昭和42年(行ツ)第57号昭和48年4月26日第一小法廷判決・民集27巻3号629頁参照)。このような不服申立制度の一つである審査請求制度における法の定め(法432条1項,434条1項,2項)からすれば,法が争訟方法を限定することなく審査請求手続以外の手続によって固定資産の評価を一般的に争えることを許容しているなどと解することは著しく相当性を欠くものである。また,行訴法が改正され,義務付け訴訟を提起できる要件が定められたとはいえ,同訴訟においても「その損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り」提起することができるにすぎない(同法37条の2第1項)。そして,審査請求制度は正に上記「適当な方法」というべきであって,このことからしても,本件義務付けの訴えは不適法なものといわなければならない。 なお,控訴人は,基準年度が3年に1度とされ,極めて限られた期間の申立てが認められているだけの審査請求によってしか固定資産の評価を争えないとすることはあまりに行政の便宜に偏している旨主張するが,上記基準年度の制度等は,短期間に大量の固定資産に対する評価が必要となる固定資産- 8 -税の制度において,税負担の安定と行政事務の簡素化の観点から採用されているもので現実に即した合理性があり,前記審査請求制度の趣旨,目的も考慮すると,現行の審査請求制度が行政の便宜に偏しているとの批判は当たらないのであり,上記主張は本件義務付けの訴えが適法性を欠くとする前記認定判断を左右するものではない。 (2)争点3(本件各課税処分等の無効原因の有無)について控訴人は,平成6年度市取扱要領の補正項目の欠落等は,本件建 張は本件義務付けの訴えが適法性を欠くとする前記認定判断を左右するものではない。 (2)争点3(本件各課税処分等の無効原因の有無)について控訴人は,平成6年度市取扱要領の補正項目の欠落等は,本件建物に関係する範囲でも極めて多岐にのぼることなどから,租税法律主義の観点からも到底容認できるものではなく,上記要領の瑕疵の問題は本件建物に関する一部の評価の誤りに留まらず,横浜市全域における問題であって,その瑕疵は重大であるなどと主張する。しかし,上記要領による限り横浜市内の固定資産については同一の基準によって評価され課税されているのであって,そもそも固定資産税が地方税として規定されていること,評価基準においても一定の事情がある場合には市町村長が評価基準と異なる評点基準表を作成して適用することを認めていることなどを考慮すると,上記要領中に評価基準に沿わない部分があるとしても,それをもって本件課税処分等を無効とすべきほどの重大な瑕疵であるとはいえない。また,規模補正の誤りについても前記(原判決引用部分)のとおり重大な瑕疵とはいえない。 (3)争点4(本件各課税処分等の違法を理由とする国家賠償請求は認められるか)について控訴人は,国賠法1条の規定からすると,課税処分の無効や取消訴訟による取消は国家賠償請求の要件ではなく,国賠法自体の解釈として違法性や過失が問われなければならない旨主張するところ,本件各課税処分等が取り消されることなく国賠法に基づいてその過納金相当額及びこれに対する遅延損害金の損害賠償請求を認めることはできないと解するのが課税処分をめぐる争訟方法の在り方として相当であることは前記(原判決引用部分)のとおり- 9 -であり,控訴人の上記主張は採用できない。 なお,仮に,上記の点を措いて検討を加えてみても,本件各課税処分等について 争訟方法の在り方として相当であることは前記(原判決引用部分)のとおり- 9 -であり,控訴人の上記主張は採用できない。 なお,仮に,上記の点を措いて検討を加えてみても,本件各課税処分等についてこれを国賠法上違法なものと認めることはできない。その理由は以下のとおりである。 控訴人は,本件における平成6年度評点数は,本件建物の性状に関して事実を誤認するなどして固定資産評価基準の適用を誤ったものとして違法であり,これに基づいてされた本件各課税処分等は国賠法上違法である旨主張する。 しかし,まず,課税処分は仮に取り消すべき違法部分があるとしてもこれが取り消されない限り適法な行政処分として法的拘束力を有するものと解されるのであるから,本件各課税処分等は国賠法上も適法な課税ないし徴税作用と扱われ違法性を認めることはできず,そこに不当利得や損害賠償を認めることはできない。 さらに,固定資産の評価において,固定資産評価基準により難い事情ないしこれによることが困難,不適当と認められる事情もないのに,評価基準と異なる基準を定めて固定資産の価格を評価,決定することは許されず,その結果として算定された価格が適正な時価ないし評価基準に基づいて算定される価格を超える場合には当該価格決定が違法とされることはあるとしても,それは,課税処分として違法であるというにすぎず,その違法は広く行政争訟手続において是正され救済されるべく法体制の整備がされているのであり,課税処分上の違法があることから直ちに当該価格決定に基づく課税処分が国賠法上違法であるとまではいえない。したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 また,控訴人が違法行為の前提として主張する点についてみても,前記(2)において判示したところからすれば,平成6年度市取扱要領に基づいて固定資産の評価が 控訴人の上記主張は採用することができない。 また,控訴人が違法行為の前提として主張する点についてみても,前記(2)において判示したところからすれば,平成6年度市取扱要領に基づいて固定資産の評価がされたことをもって本件各課税処分等を国賠法上違法であ- 10 -るとは認めることは困難である。また,補正係数の選択に係る誤りは個別的な誤りであり補正が前提とされていること,本件建物の各部分の構造や材質等の評価に瑕疵があると主張している点については,固定資産評価員が上記要領を適用するに際しての専門的判断に係る事項であることを考慮すると,未だ本件各課税処分等が国賠法上違法であるとは認めるに足りないというべきである。 以上によれば,原判決は相当であって,控訴人の本件控訴はいずれも理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第15民事部裁判長裁判官藤村啓裁判官佐藤陽一裁判官古久保正人
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