平成14年9月27日判決言渡平成13年(行ウ)第9号特別土地保有税保有分決定等取消請求事件口頭弁論終結日平成14年6月18日判決 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 千葉県印旛郡A町長が平成12年10月13日付けで原告に対してした,平成8年度から平成12年度の特別土地保有税の決定及び不申告加算金の決定を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 第2 事案の概要本件は,千葉県印旛郡A町長(以下「A町長」という。)の行った特別土地保有税の決定等について違法があるとして原告が争った事案である。 1 争いのない事実等(1) 原告(旧商号・株式会社第一勧業銀行)は,平成5年3月29日,千葉県印旛郡A町a丁目b番地所在の宅地4万1060.81㎡(以下「本件土地」という。)を売買代金105億1156万7360円で千葉県及び住宅・都市整備公団(以下「公団ら」という。)から買い受けたが(以下「本件契約」という。),本件契約については買戻特約が付されており,原告が公団らの承諾した施設建設計画に基づいて3年以内に施設の建設を完了しないときは,本件土地を買い戻すことができるものとされていた。 公団らは,原告が上記期間内に施設の建設をしなかったとして,平成12年3月22日,原告に対し,本件土地について買戻しの意思表示をした。 (2) A町長は,平成12年10月13日,原告に対し,本件土地に関する平成8年度から平成12年度までの特別土地保有税の決定及び不申告加算金の決定を行った。原告は,同年11月29日,これらに対して異議申立てをしたが, 平成12年10月13日,原告に対し,本件土地に関する平成8年度から平成12年度までの特別土地保有税の決定及び不申告加算金の決定を行った。原告は,同年11月29日,これらに対して異議申立てをしたが,A町長は,同年12月27日,異議申立てを棄却する旨の決定をした。原告は,平成13年3月12日,本件訴えを提起した。 なお,A町は,平成13年4月1日,市制移行によりA市となった。 (以上の事実は,当事者間に争いがないか,証拠〔甲1,2,3の1ないし5,4,乙1〕及び弁論の全趣旨によって認める。)(関係法令の定め)(1) 特別土地保有税は,土地又はその取得に対し,当該土地所在の市町村において当該土地の所有者又は取得者に課される地方税であり(地方税法〔以下「法」という。〕585条1項),法599条1項の規定により特別土地保有税を申告納付すべき日の属する年の1月1日(基準日)時点における当該土地の所有者は,同項所定の期限までに特別土地保有税の申告納付をしなければならないとされている(法598条)。 (2) 法586条2項は,特別土地保有税の用途非課税について規定している。 同項21号は,新住宅市街地開発法2条8項に規定する特定業務施設(事務所,事業所その他の業務施設で,居住者の雇用機会の増大及び昼間人口の増加による事業地の都市機能の増進に寄与し,かつ,良好な居住環境と調和するもののうち,公益的施設以外のもの。以下「特定業務施設」という。)で政令で定めるものの用に供する土地(以下「特定業務施設用地」という。)を用途非課税土地と定めており,この「政令で定めるもの」について,地方税法施行令54条の27第2項,同施行規則16条の13の2第2号は,「その施設の用に供する土地の譲渡契約において,当該施設を整備すべき期間(中略)及び当該期間内 この「政令で定めるもの」について,地方税法施行令54条の27第2項,同施行規則16条の13の2第2号は,「その施設の用に供する土地の譲渡契約において,当該施設を整備すべき期間(中略)及び当該期間内に当該施設が整備されなかった場合に新住宅市街地開発法第2条第3項の施行者が当該土地を買い戻すことができる旨の定めのあるもの」と定めている。 なお,用途非課税土地に該当するかどうかは,特別土地保有税を申告納付すべき日の属する年の1月1日の現況によるものとされている(法586条4項)。 2 争点(1) 本件土地は用途非課税土地か。 ア原告の主張本件土地は,原告が公団らから特定業務施設用地として買い受けたものである。特定業務施設用地は,一定の政策目的のために当該土地を有効利用することが買戻権により制度上担保されていることから,買戻権が実際に行使されたかどうかを問わず,当然に用途非課税土地に該当する。 すなわち,特定業務施設用地については,当該土地を譲り受けた者は一定の期間内に特定業務施設を建設しなければならず,これに反した場合は買戻権が行使されることとされているため,当該土地が有効利用されることが制度上担保されている。このため,法586条2項21号は,基準日に当該土地が現実に非課税の用途に供されているか否かを問わず当然に用途非課税土地とされているものである。ところが,本件決定は用途非課税の本件土地について特別土地保有税の課税をしているものであり,違法である。 イ被告の主張原告が本件土地を買い受けた平成5年3月から平成12年3月の買戻しまでの間,本件土地には特定業務施設が全く整備されていないから,法586条2項21号所定の用途非課税土地の要件を具備していない。 (2) 買戻しによって特別土地保有 3月から平成12年3月の買戻しまでの間,本件土地には特定業務施設が全く整備されていないから,法586条2項21号所定の用途非課税土地の要件を具備していない。 (2) 買戻しによって特別土地保有税の課税要件を欠くことになるか。 ア原告の主張原告は,平成5年に本件土地を買い受けたが,いわゆるバブル崩壊のため,特定業務用施設の建築を断念せざるを得なくなり,平成12年3月の買戻しによって本件土地の所有権を遡及して喪失した。また,原告は,買戻しに伴い,本件契約に従い,違約金のほか32億円もの土地使用料相当額を公団らに支払った。この土地使用料相当額の支払は,原告が本件土地を所有者ではなく,借地人として使用していたということになる。 このように,原告は,本件土地の所有権を本件契約の当初に遡及して喪失したのであるから,平成8年から平成12年までの各基準日時点において本件土地を所有していなかったものであり,課税要件を欠くから,原告を本件土地の所有者として特別土地保有税の決定をしたのは違法である。 イ被告の主張特別土地保有税のうち,土地の取得に対するものは流通税的性格を,土地の保有に対するものは財産税的性格を有するところ,これらは,土地の取得者がその土地を使用,収益,処分することにより得られるであろう利益に着目して課されるものではなく,土地の移転自体ないし土地の移転後当該土地を保有すること自体に着目して課せられるものである。そして,このような特別土地保有税の目的と性格に照らせば,不動産の「取得」とは,契約内容その他の事情を総合して現実に所有権の移転があったと認められることをもって足りるというべきである。つまり,特別土地保有税における取得,所有の概念は,現実に所有権の得喪に関する法律効果の側面からではなく, の事情を総合して現実に所有権の移転があったと認められることをもって足りるというべきである。つまり,特別土地保有税における取得,所有の概念は,現実に所有権の得喪に関する法律効果の側面からではなく,その経過的事実に即して判断すべきなのである。 本件においては,特別土地保有税との関係では,本件土地の所有権が一旦公団らから原告に移転した後,原告から公団らに移転している。原告主張のように,民法上,解除には遡及効があるとされているが,このことは,公団らから原告に対して売買契約によって所有権が移転した経過的事実まで失わせるものではないというべきである。 (3) 不申告加算金の決定に違法な点があったか。 ア原告の主張法609条2項ただし書によれば,不申告加算金の決定については,申告書の提出がなかったことについて「正当な理由」があるときは課税することが許されないところ,A町長は,平成12年3月まで課税はおろか適切な行政指導もせず放置しておきながら,突然平成8年度まで5年間も遡って課税をし,かつ,高額の延滞金まで徴収しようとしているものであり,これは税負担がないことについて原告に与えた信頼を裏切るもので,信義則に反する。また,A町長と原告との間の法令解釈が異なり,納税者の解釈に相当の理由がある場合には,上記「正当な理由」に該当し,少なくとも不申告加算金の決定をすることは許されないというべきである。 イ被告の主張「正当な理由」とは,納税者の責めに帰すことのできない理由によって申告書の提出が客観的に不可能と認められる場合をいうものであるところ,法令解釈の相違は主観的理由によるものであるから,「正当な理由」に該当しないことは明らかである。 また,A町長は,平成12年6月に千葉地方法務局成田出張所から通 場合をいうものであるところ,法令解釈の相違は主観的理由によるものであるから,「正当な理由」に該当しないことは明らかである。 また,A町長は,平成12年6月に千葉地方法務局成田出張所から通知を受けて,原告が本件土地を買い受けたこと及び買戻しを受けたことを確認した。 また,行政指導など,原告が信頼を寄せるようなA町長の表示行動は全く存在せず,単に課税が行われなかったという事実状態が継続していたに過ぎない。 よって,A町長が不申告加算金の決定をしたことについて信義則違反はない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)について特別土地保有税は,未利用地ないし遊休地のみならず,新規に取得された土地に対しては,利用度の如何を問わず一律に課税する仕組みを採るが,土地の投機的取引を抑制するとともに,土地の有効利用を促進するための政策税制であり,国の施策に沿った一定の事業の用に供する土地については,その施策との整合性を図る見地から非課税とされている。法586条2項はこのような用途非課税について規定し,同項21号は特定業務施設用地についての非課税を定めるが,これが「現に用に供されている土地」との趣旨であることは,その文言,同条4項において同条2項所定の用途非課税土地に該当するか否かは,基準日の「現況による」として,外形的,客観的基準を導入していること,及び法601条が,土地の所有者がその所有する土地を法586条2項の用途非課税土地として使用することについて市町村長の認定を受けた場合には,一定期間同税の徴収を猶予し,その後実際に非課税用途に供された場合に,徴収猶予にかかる徴収金を免除する制度を規定していることから明らかである。 したがって,用途非課税土地に該当するかどうかは,特別土地保有税を申告納付すべき日の属する年の1月1 供された場合に,徴収猶予にかかる徴収金を免除する制度を規定していることから明らかである。 したがって,用途非課税土地に該当するかどうかは,特別土地保有税を申告納付すべき日の属する年の1月1日(基準日)において,実際に一定の事業の用に供しているかどうかを,当該土地利用の現況から外形的,客観的に判断して決定すべきことになる。なお,原告は,買戻権付の土地売買については,土地が有効利用されることが制度上担保されているのであり,現実に有効利用されたかどうかを問わず用途非課税土地とされるべきであると主張するが,用途非課税土地に該当するかどうかは基準日の現況により決するとの法586条4項の文言が特に例外の定めをしてはいないこと,そもそも,原告のような解釈は,土地の有効利用を促進するという特別土地保有税の制度趣旨に反することに照らし,採用することができない。 そして,平成5年3月に原告が本件土地を買い受けてから,平成12年3月に買戻しがされるまでの間,本件土地上に特定業務施設が全く整備されなかったことは当事者間に争いがないから,本件土地が用途非課税土地に該当するとの原告の主張は採用できない。 2 争点(2)について原告は,買戻しにより本件土地の所有権を本件契約の当初に遡及して喪失したのに,原告を本件土地の所有者として特別土地保有税の決定をしたのは違法であると主張する。 しかしながら,特別土地保有税は,土地の取得者がその土地を使用,収益,処分することにより得られるであろう利益に着目して課せられるものではなく,土地の移転という事実自体ないし土地の移転後当該土地を引き続き保有するという事実自体に着目して課せられるものと解するのが相当であり,そうであれば,法585条1項にいう「土地又はその取得」とは,所有権の得喪に関する法律効果の側面か 土地の移転後当該土地を引き続き保有するという事実自体に着目して課せられるものと解するのが相当であり,そうであれば,法585条1項にいう「土地又はその取得」とは,所有権の得喪に関する法律効果の側面からではなく,土地所有権の移転の経過に関する社会的事実,すなわちその経過的事実に即してとらえられた不動産の所有権取得又は保有の事実をいうものと解すべきである。そうすると,買戻権が民法上は解除権の留保と構成され,その効果に遡及効が認められているとしても,本件において,売買契約から買戻しに至る経過的事実に即してみれば,一旦買主たる原告に土地所有権が移転し,原告が土地を保有していたことは明らかである。 原告は,特別土地保有税の関係では平成5年3月29日から平成12年3月22日まで,本件土地の所有者であったというべきであるから,特別土地保有税の決定に原告主張のような違法はない。 3 争点(3)について(1) 正当な理由について法609条2項ただし書によれば,不申告加算金の決定については,申告書の提出がなかったことについて「正当な理由」があるときは課税することが許されないとされているが,「正当な理由」とは,納税者の責めに帰すことのできない理由によって申告書の提出が客観的に不可能と認められる場合をいうものであるところ,本件においては,原告が申告書を提出しなかったのはひとえに原告とA町長との特別土地保有税に関する法令解釈の相違の故であることが明らかであり,このような主観的理由は,「正当な理由」に該当しない。 よって,原告のこの点に関する主張は理由がない。 (2) 信義則違反について原告は,A町長が適切な行政指導もせず放置しておきながら,突然5年間も遡って課税をしたことが信義則に反すると主張するので,以下検討する。 弁論の全趣旨によれ ない。 (2) 信義則違反について原告は,A町長が適切な行政指導もせず放置しておきながら,突然5年間も遡って課税をしたことが信義則に反すると主張するので,以下検討する。 弁論の全趣旨によれば,A町長は,平成12年6月に千葉地方法務局成田出張所から通知を受けたことにより,原告が本件土地を買い受けたこと及び買戻しを受けたことを確認したことが認められ,A町長が原告に,本件土地の課税に関して何らかの公権的な表示をしたという事情を窺うことができない。これらによると,不申告加算金の決定が信義則に反するということはできない。 4 本件の当てはめ(1) A町長は,本件土地に関して原告から特別土地保有税の申告書の提出がなかったことから,法606条2項に基づき,以下のとおり申告すべき課税標準額及び税額を決定した。 平成8年度分及び平成9年度分については,本件土地の取得価額である105億1156万7360円を課税標準とし(法593条1項),平成10年度から平成12年度分については,地価の変動を勘案した修正取得価額(法附則31条の2の3第1項)である92億7120万2411円(平成10年度),88億4022万8149円(平成11年度)及び84億0925万3888円(平成12年度)を課税標準とし,いずれもこれらの価額に税率100分の1.4を乗じ(法594条),そこから当該年度分の固定資産税の課税標準となるべき価格に税率100分の1.4を乗じた額を控除して(法596条1号)税額を算出した。 (2) また,A町長は,法609条2項1号の規定に基づき,平成8年度から平成12年度分の各税額に100分の15を乗じて不申告加算金額を算出し,その決定をした。 (3) 以上によれば,A町長が原告に対して行った,本件土地に関する平成8年度から平成12 平成8年度から平成12年度分の各税額に100分の15を乗じて不申告加算金額を算出し,その決定をした。 (3) 以上によれば,A町長が原告に対して行った,本件土地に関する平成8年度から平成12年度までの特別土地保有税の決定及び不申告加算金の決定に違法はない。 第4 結論よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却し,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条に従い,主文のとおり判決する。 千葉地方裁判所民事第三部裁判長裁判官園部秀穗裁判官弓場佳多子裁判官向井邦生・
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