平成26(行ウ)7 給与減額処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成28年7月6日 大阪地方裁判所
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判決文本文31,612 文字)

主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 A教育委員会が原告に対して平成25年3月12日付けでなした,地方公務員法29条1項1号及び3号により1か月間給与及びこれに対する地域手当の合計額の10分の1を減ずる処分を取り消す。 2 被告は,原告に対し,100万円及びこれに対する平成26年3月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 本件事案の概要本件は,A立B高校の教員であった原告が,平成24年度同校卒業式において,同校校長から正門での警備業務を命じられていたにもかかわらず,この職務を無断で放棄した上,式場内に勝手に立ち入り,持参した丸椅子に座り,国歌斉唱時に起立して斉唱しなかったことを理由にA教育委員会から減給1か月の懲戒処分を受けたこと(以下,「本件減給処分」という。)について,同処分が違法であると主張して,その取消しを求めるとともに(以下,この請求を「本件取消請求」という。),被告に対し,国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき,原告が被った精神的苦痛に相当する慰謝料として100万円及びこれに対する平成26年3月8日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(以下,この請求を「本件損害賠償請求」という。)事案である。 2 前提となる事実(争いがない事実及び後掲証拠等により容易に認められる事実)(1) 当事者等 ア原告原告は,昭和50年にA立高等学校の教員に採用され,以後,A立C高校,A立D高校,A立E高校などを経て,平成21年4月からB高校の教諭として勤務していた。 なお,原告は,平成25年3月31日をもって 告は,昭和50年にA立高等学校の教員に採用され,以後,A立C高校,A立D高校,A立E高校などを経て,平成21年4月からB高校の教諭として勤務していた。 なお,原告は,平成25年3月31日をもって,定年退職した。 イ被告(ア) 被告は,地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下「地教行法」という。)2条により,A教育委員会を設置している。 (イ) A教育委員会は,地教行法35条及び地方公務員法(以下「地公法」という。)6条に基づき,原告に対し任命,休職,免職及び懲戒等を行う権限を有している。 (2) 本件に関連する法規及び通達(要旨。以下同じ。)ア国旗及び国歌に関する法律(以下「国旗国歌法」という。)(ア) 国歌は,君が代とする(2条1項)。 (イ) 君が代の歌詞及び楽曲は,別記第二のとおりとする(同条2項。 別記第二は省略。)。 イ Aの施設における国旗の掲揚及び教職員による国歌の斉唱に関する条例(以下「府国旗国歌条例」という。)(ア) 1条(目的)この条例は,国旗国歌法,教育基本法及び学習指導要領の趣旨を踏まえ,府の施設における国旗の掲揚及び教職員による国歌の斉唱について定めることにより,府民,とりわけ次代を担う子どもが伝統と文化を尊重し,それらを育んできた我が国と郷土を愛する意識の高揚に資するとともに,他国を尊重し,国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと並びに府立学校及び府内の市町村立学校における服務規律の厳格化を図ることを目的とする。 (イ) 4条(国歌の斉唱)1項府立学校及び府内の市町村立学校の行事において行われる国歌の斉唱にあっては,教職員は起立により斉唱を行うものとする。ただし,身体上の障がい,負傷又は疾病により起立,若しくは斉唱するのに 1項府立学校及び府内の市町村立学校の行事において行われる国歌の斉唱にあっては,教職員は起立により斉唱を行うものとする。ただし,身体上の障がい,負傷又は疾病により起立,若しくは斉唱するのに支障があると校長が認める者については,この限りでない。 2項前項の規定は,市町村の教育委員会による服務の監督の権限を侵すものではない。 ウ A教育委員会の教育長(以下「教育長」という。)による通達教育長が,平成24年1月17日付けで府立学校の教職員宛に発出した「入学式及び卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱について(通達)」と題する通達(以下「本件通達」という。)の内容は,要旨以下のとおりである。 国旗掲揚及び国歌斉唱は,児童・生徒に国際社会に生きる日本人としての自覚を養い,国を愛する心を育てるとともに,国旗及び国歌を尊重する態度を育てる観点から学習指導要領に規定されているものである。 また,府国旗国歌条例では,府立学校の行事において行われる国歌の斉唱の際に,教職員は起立により斉唱を行うことが定められている。 ついては,入学式及び卒業式等国旗を掲揚し,国歌斉唱が行われる学校行事において,式場内のすべての教職員は,国歌斉唱に当たっては,起立して斉唱すること。 エその他関係法規等(ア) 地公法① 27条(分限及び懲戒の基準)1項すべて職員の分限及び懲戒については,公正でなければならない。 2項職員は,この法律で定める事由による場合でなければ,その意に反して,降任され,若しくは免職されず,この法律又は条例で定める事由による場合でなければ,その意に反して,休職されず,又,条例で定める事由による場合でなければ,その意に反して でなければ,その意に反して,降任され,若しくは免職されず,この法律又は条例で定める事由による場合でなければ,その意に反して,休職されず,又,条例で定める事由による場合でなければ,その意に反して降給されることがない。 3項職員は,この法律で定める事由による場合でなければ,懲戒処分を受けることがない。 ② 29条(懲戒)1項教員が次の各号の一に該当する場合においては,これに対し懲戒処分として戒告,減給,停職又は免職の処分をすることができる。 1号この法律若しくは57条に規定する特例を定めた法律又はこれに基づく条例,地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に違反した場合2号職務上の義務に違反し,又は職務を怠った場合3号全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合② 32条(法令等及び上司の職務上の命令に従う義務)職員は,その職務を遂行するに当つて,法令,条例,地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い,且つ,上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。 (イ) A府職員基本条例(甲15。以下「府職員基本条例」という。)① 27条(職務命令に違反した者に対する処分)1項職務命令(地公法32条に規定する上司の職務上の命令であって,文書によるものに限る。以下同じ。)に違反する行為をした職員に対する標準的な懲戒処分は,戒告とする。 2項任命権者が29条に規定する措置を講じた場合において も,なお職務命令に違反する行為を繰り返し,その累計が5回(職務命令に違反する行為の内容が同じ場合にあっては,3回)となる職員に対する標準的な法28条1項に規定する を講じた場合において も,なお職務命令に違反する行為を繰り返し,その累計が5回(職務命令に違反する行為の内容が同じ場合にあっては,3回)となる職員に対する標準的な法28条1項に規定する処分は,免職とする。 ② 29条(職務命令に違反した職員に対し講ずべき措置)1項任命権者は,27条1項に規定する懲戒処分を受けた職員に対し,指導,研修その他必要な措置を講じなければならない。 2項 27条1項に規定する懲戒処分を受けた職員が,再度職務命令に違反した場合は,地公法28条1項3号の規定により免職することがあることを文書で警告するものとする。 (3) 本件入学式における不起立及び処分等ア平成24年度職務命令及び不起立B高校のF校長は,平成24年4月6日,同校の職員会議において,原告を含む同校の教員に対して,本件通達及び教員の役割分担表を配布した上で,同校の入学式の国歌斉唱時においては,式場内の全ての教職員は起立して斉唱すること及び当日の役割分担表に基づき職務に専念する旨の職務命令を発し,原告には正門警備の職務が割り当てられた(以下「平成24年度職務命令」という。)。 しかしながら,原告は,同月9日に開催された平成24年度入学式(以下「本件入学式」という。)において,正門警備の役割を入学式終了まで果たすことなく,入学式に参列したところ,同校G教頭から正門警備に戻るように指導を受けたが,「騒ぎになりますよ。」などと言ってその指導に従わず式場内に留まり,国歌斉唱時に起立斉唱しなかった(以下「入学式不起立」又は「入学式不起立行為」という。)。 イ原告に対する本件戒告処分 A教育委員会は,平成24年4月25日付けで,原告の入学式不起立が地公法29条1項 かった(以下「入学式不起立」又は「入学式不起立行為」という。)。 イ原告に対する本件戒告処分 A教育委員会は,平成24年4月25日付けで,原告の入学式不起立が地公法29条1項1号及び3号に該当するとして,戒告処分を行った(以下「本件戒告処分」という。)。本件戒告処分の理由の概要は,原告は校長からの再三の指導に反し,F校長から命じられた役割分担の職務を行わず,無断で式場内に入り,国歌斉唱時に起立して斉唱しなかったことは地公法32条の上司の職務上の命令に従う義務に違反するものであり,全体の奉仕者たるにふさわしくない非行であり,その職の信用を著しく失墜するものであるから,地公法29条1項1号及び3号に該当するというものであった。 ウ本件戒告処分に対する不服申立て原告は,本件戒告処分を不服として,平成24年6月,A人事委員会に不服審査を行ったが,同委員会は本件戒告処分を承認するとの裁決を行ったため,当庁に戒告処分取消請求訴訟を提起している(弁論の全趣旨)。 (4) 本件訴訟に至る経緯ア本件職務命令の発令F校長は,平成25年2月25日,B高校の職員会議において,原告を含む同校の教員に対して,本件通達及び教員の役割分担表を配布した上で,同校の卒業式の国歌斉唱時においては,式場内の全ての教職員は起立して斉唱すること及び当日の役割分担表に基づき職務に専念する旨の職務命令を口頭で発し,原告には正門校内外警備・自転車整理の職務が割り当てられた(以下「本件職務命令」という。)。 イ本件不起立原告は,平成25年3月1日に行われたB高校平成24年度卒業式(以下「本件卒業式」という。)において,同僚の教師らと共に正門警備を担当していたが,卒業式開会直前に式場に丸椅子を持ち込み,教員席の横に丸 は,平成25年3月1日に行われたB高校平成24年度卒業式(以下「本件卒業式」という。)において,同僚の教師らと共に正門警備を担当していたが,卒業式開会直前に式場に丸椅子を持ち込み,教員席の横に丸椅子を置いて着席した。 原告は,国歌斉唱時に起立斉唱しなかった(以下,原告の同行為を「本件不起立」又は「本件不起立行為」という。)。 ウ本件減給処分A教育委員会は,同月12日,地公法29条1項1号及び3号に基づき,原告に対し,1か月間の給料及びこれに対する地域手当の合計額の10分の1を減ずる処分(本件減給処分)を行った。本件減給処分の理由の概要は,原告は,校長及び教頭による再三の指導並びに校長及び教頭の職務命令に反して,校長から命じられた正門警備の職務を途中で放棄し,式の会場である体育館内に無断で入室し,その際わざわざ自ら着席するための丸椅子を会場内に持ち込み,国歌斉唱時に着席し,起立して斉唱しなかったことは地公法32条に規定する上司の職務上の命令に従う義務に違反するものであるばかりか,学校の儀式的行事としての式典の秩序や雰囲気を損なうものであり,また,入学式不起立により戒告処分をうけたにもかかわらず,職務命令違反を繰り返したものであって,以上は,学校教育に携わる公立学校職員として,全体の奉仕者たるにふさわしくない非行であり,その職の信用を著しく失墜するものであるから,地公法29条1項1号及び3号に該当するというものであった。 エ本件減給処分に対する不服申立て原告は,本件減給処分に対し,平成25年3月28日付けで不服審査申立てを行った(弁論の全趣旨)。 オ本件訴訟の提起原告は,平成26年1月20日,当庁に対し,本件減給処分の取消等を求める本件訴訟を提起し,同訴状は,同年3月7日に被告に送 日付けで不服審査申立てを行った(弁論の全趣旨)。 オ本件訴訟の提起原告は,平成26年1月20日,当庁に対し,本件減給処分の取消等を求める本件訴訟を提起し,同訴状は,同年3月7日に被告に送達された。 第3 本件の主要な争点 1 本件減給処分の違法性(1)ア府国旗国歌条例,本件通達及び本件職務命令が原告の思想・良心の自由 (憲法19条),法の下の平等(憲法14条)を侵害するものであるか(争点1)イ府国旗国歌条例,本件通達及び本件職務命令が原告の表現の自由(憲法21条)を侵害するものであるか(争点2)ウ府国旗国歌条例,本件通達及び本件職務命令が原告の学問の自由(憲法23条,同26条)を侵害するものであるか(争点3)(2) 本件減給処分が裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものであるか(争点4) 2 本件損害賠償請求の成否並びに損害の有無及び額(争点5)第4 主要な争点に関する当事者の主張 1 争点1(憲法19条[思想・良心の自由],憲法14条[法の下の平等]違反について)(被告の主張)(1) 府国旗国歌条例,それに基づく本件通達及び本件職務命令は,以下のとおり,いずれも原告の思想・良心の自由を侵害するものではなく,本件職務命令は,憲法14条に違反するものではない。 ア最高裁平成23年6月6日判決は,全体の奉仕者として法令等及び上司の職務上の命令に従って職務を遂行すべきこととされている地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性に鑑みた場合,公立学校の教職員は法令上及び職務上の命令に従わなければならない立場にある,また,卒業式における国歌斉唱時の起立斉唱を職務命令とすることは,学校教育の目標や卒業式等の儀式的行事の意義,在り方等を定めた関係法令上等の諸 令上及び職務上の命令に従わなければならない立場にある,また,卒業式における国歌斉唱時の起立斉唱を職務命令とすることは,学校教育の目標や卒業式等の儀式的行事の意義,在り方等を定めた関係法令上等の諸規定の趣旨に沿って,地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性を踏まえ,生徒たちへの配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序の確保とともに式典の円滑な進行を図るものであって,憲法19条に規定する思想・良心の自由の侵害に当たらない旨判示しているし,最高裁平成19年2月27 日判決においても同様に判示している。このように,原告を含む府立学校の教職員に府立学校の卒業式等における国歌斉唱の際に起立して斉唱することを命ずることは,上記各最高裁判決が判示するとおり,原告の思想・良心の自由を直ちに制約するものでないことは明らかであって,府国旗国歌条例,それに基づく本件通達及び本件職務命令はいずれも憲法19条に違反するものではない。 イ本件職務命令は,原告自身が行う可能性が高いと判断された本件卒業式における不起立行為を防止し,同式の適正な運営を確保するために発せられたものであり,憲法14条に違反するものではない。 (2) なお,原告は,府国旗国歌条例1条の「目的」の規定中の文言を捉えて,同条例は,国旗国歌法の立法趣旨を逸脱するものであり,憲法94条に違反する旨主張するが,同条例は,2条から4条までの規定内容から明らかなように,A立学校及びA内市町村立学校の行事において行われる国歌の斉唱の際の教職員の起立斉唱に関する服務に関して規定したものであって,国旗国歌法その他の法令に違反するものではなく,また,憲法94条の「法律の範囲内」や地方自治法の規定を逸脱するものではない。 (原告の主張)(1) 府国旗国歌条例,それに基づく本 って,国旗国歌法その他の法令に違反するものではなく,また,憲法94条の「法律の範囲内」や地方自治法の規定を逸脱するものではない。 (原告の主張)(1) 府国旗国歌条例,それに基づく本件通達及び本件職務命令は,以下のとおり,いずれも原告の思想・良心の自由を侵害し,違憲,違法なものである。 また,本件職務命令は,原告の思想に着目されて発令されたもので,憲法14条に反するものである。 ア(ア) 府国旗国歌条例は,その制定過程や同条例1条の文言も踏まえれば,個々の教職員に対し,学校行事における君が代起立斉唱を強制するよう積極的に意味づけるものであって,儀礼的な所作とはいえず,個々の教職員に対して憲法19条が保障する思想・良心の自由を直接侵害するものであって,違憲,違法なものである。 (イ) 原告は,人権教育に深く関わり,日の丸,君が代が戦前の日本のアジア侵略のシンボルとなり,それらを利用した国家主義的教育が少数者を排除し差別を深刻化されることを感じており,多数派の共有する特定の価値観に基づく社会統合をするためにシンボルとして君が代を強制することは,その価値観に属さないあるいはその価値観に疑問を抱く少数派が排除されることであるとの教員としての学び,実践を積み重ねてきた。 原告は,このような思想に基づき君が代を起立斉唱することはできず,原告に対して君が代斉唱を強制する本件職務命令は,原告の思想・良心の自由を直接侵害するものであり,違憲,違法であって,本件職務命令に従う義務はなく,原告がこれに違反したことを理由としてなされた本件減給処分は取り消されるべきである。 イまた,原告に対する本件職務命令が国歌斉唱をできないという内心を理由に発出されたのであれば,それは信条を理由とした不合理な差別であり,憲法14 た本件減給処分は取り消されるべきである。 イまた,原告に対する本件職務命令が国歌斉唱をできないという内心を理由に発出されたのであれば,それは信条を理由とした不合理な差別であり,憲法14条に明確に違反するものである。 (2) 府国旗国歌条例は,その第1条の文言に照らすと,君が代の起立斉唱を特定の思想の表明として積極的意味のある行為として捉えており,君が代の斉唱について何らの強制もしないという国旗国歌法の立法趣旨に反して,これを強制するものであり,同法の趣旨に反する内容といえる。したがって,同条例は,憲法94条の「法律の範囲内」を超える条例として無効であって,これに基づく本件通達も,その内容において実質的に無効である。 2 争点2(憲法21条[表現の自由]違反)(被告の主張)原告は,本件職務命令等が憲法21条に反すると主張するが,上記1(被告の主張)(2)で指摘した最高裁判決の判示内容は,憲法21条の表現の自由にもそのまま妥当するものである。したがって,同条例は,憲法21条に違反する ものとはいえない。 (原告の主張)府国旗国歌条例,それに基づく本件通達及び本件職務命令は,君が代の起立斉唱の強制の表裏一体として,君が代を斉唱せず着席する行為を禁止するものであり,憲法21条が保障する表現の自由の制約となるところ,その制限には明らかに差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要となり,特に,物理的な危険性がもとより低い思想信条についての一般的表現については,より一層に厳格な場合にしかその制限は許されないというべきである。ところが,上記条例等は,そのような具体的な危険を回避するものとはいえず,原告の表現の自由を侵害するもので,憲法21条に反するものといえる。 3 争点3( かその制限は許されないというべきである。ところが,上記条例等は,そのような具体的な危険を回避するものとはいえず,原告の表現の自由を侵害するもので,憲法21条に反するものといえる。 3 争点3(憲法23条及び同26条[学問の自由]違反)(被告の主張)(1) 原告は,府国旗国歌条例が憲法23条に反すると主張するが,上記1(被告の主張)(2)で述べたように,同条例は,府立学校及び府内の市町村学校の教職員の卒業式等の儀礼的行事における服務に関して規定したものであり,「教育権」又はこれに関連する事項について定めたものではなく,上記した最高裁平成23年6月判決の判示内容からも十分に理解されるとおり,教員の教育実践に国歌の起立斉唱を強制することにより介入するものでもなければ,卒業式の在り方という教育内容について公権力による介入を行うものでもない。 (2) なお,原告は,本件通達について正当な職務命令ではないと主張するが,本件通達は,卒業式等に参列する地方公務員たる教育職員の服務規律の厳格化のために発出されたもので,生徒に対する教育内容や方法に関して発出されたものでなく,教育長は原告の上司として服務監督について職務命令を発出する権限を有しているから,本件通達は有効な職務命令である。 (原告の主張)(1) 府国旗国歌条例,それに基づく本件通達及び本件職務命令は,公立学校の行事における国歌斉唱時の起立斉唱を義務付けるもので,これは一定の教育権が認められた教員の教育実践に君が代の起立斉唱を強制することにより介入すると同時に卒業式の在り方という教育内容についての公権力による介入というべきであって,これは教育内容について国家的介入は抑制的であるべきとする昭和51年5月21日最高裁判決に反するものといえ,憲法23 と同時に卒業式の在り方という教育内容についての公権力による介入というべきであって,これは教育内容について国家的介入は抑制的であるべきとする昭和51年5月21日最高裁判決に反するものといえ,憲法23条及び同26条に違反するというべきである。 (2) また,そもそも本件通達は,教育内容又は教育方法に関する事項であり,権限ある職務上の上司ではない教育長が発出することができないものであるから,本件減給処分の前提となる有効な職務命令と捉えることはできない。 4 争点4(本件減給処分が裁量権の範囲を逸脱又は濫用するものか)(原告の主張)(1) 本件減給処分が違憲無効な府職員基本条例に基づきなされたこと被告は,本件減給処分に当たり,原告に対して警告書を交付しているところ,被告の同対応からすれば,本件減給処分は,府職員基本条例に基づく累進加重処分であり,被告は,原告に対し,次の段階で自動的に裁量の余地なく免職となることを明らかにしたものである。したがって,本件減給処分は,府職員基本条例27条2項に依拠してなされたものである。そして,減給以上の処分を選択するに当たっては事案の性質等を踏まえた慎重な考慮が必要であるとする最高裁平成24年1月16日判決の趣旨を踏まえれば,地公法27条は個別事情を十分に斟酌して適切な処分を選択すべきという趣旨であると解すべきところ,機械的累進加重による懲戒処分を定めた府職員基本条例27条2項は,地公法27条の趣旨に反するもので,憲法94条に反し,違憲無効であるというべきである。したがって,同条例に依拠する本件減給処分は,裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用するものであるというべき である。 (2) 本件減給処分に裁量権の逸脱濫用があることア原告が本件卒業式において君が代を起立 給処分は,裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用するものであるというべき である。 (2) 本件減給処分に裁量権の逸脱濫用があることア原告が本件卒業式において君が代を起立斉唱しなかったことについては,最高裁昭和52年12月20日判決が示すように,当該行為の原因,動機,性質,態様,結果,影響等の諸事情に十分に考慮して,処分が選択されなければならない。 イこれを本件についてみると,原告については,以下の各個別事情が十分に考慮されたものとはいえないことは明らかである。 (ア) 原告は,上記1(原告の主張)(1)ア(イ)で述べたとおり,君が代を強制すべきではないという教員としての学び,実践を積み重ねてきており,いかに本件職務命令があろうとも,君が代を起立斉唱しないことこそが,教員としての使命であり,当然の行動であった。また,原告が本件卒業式に出席したのは,定年を迎える前の自身の教員生活の締めくくりとして,卒業式に出席したいという強い思いがあった上,原告の教え子であるB高校の卒業生を送り出したいという思いはひとしおであり,卒業式に参列したいという真摯な思いを抱いていた。 しかしながら,上記1(原告の主張)で述べたとおり,原告が君が代の起立斉唱をしないという思想内容に着目し,原告を排除する目的で,違憲,違法な本件職務命令が出されたところ,原告は本件職務命令に係る業務(正門警備)を適切に果たした。すなわち,本件卒業式においては,午前9時40分までには保護者の来場が完了することになっており,卒業式の施行時間を含めて正門警備に従事するように命令されたものではないところ,原告は,同時刻まで正門警備の役割を果たした上で,上記の真摯な思いから卒業式会場に入場したもので,正門警備の職務を途中で放棄し 施行時間を含めて正門警備に従事するように命令されたものではないところ,原告は,同時刻まで正門警備の役割を果たした上で,上記の真摯な思いから卒業式会場に入場したもので,正門警備の職務を途中で放棄したというものではない。また,従前からB高校においては,会場外業務をしている教職員に対してはむしろ「手が空いた者から積極 的に卒業式に参列するように。」という指示がなされていたものである。 (イ) 原告の本件不起立は,本件卒業式の式次第を一切阻害するものではないし,他人の行動に何ら干渉するものでもなく,卒業式の主体たる生徒に何らの影響も与えなかった。また,原告が自ら丸椅子を持ち込み教員席の列に加わったのは,その他の教員の座る席がなくなることに配慮したためであり,本件卒業式の秩序や雰囲気を損なわないように配慮したためであり,やむを得ない行為である。 (ウ) なお,原告は,本件戒告処分を受けているが,平成24年4月当時においても,原告には,卒業式等において,君が代を起立して斉唱する義務はなく,同処分をもって,本件卒業式における原告の行動について悪質であると評価することはできない。 ウ以上のように,原告は,B高校3年生の卒業を祝福したいという真摯な思いから,正門警備の役割を果たした後,卒業式の秩序や雰囲気を害さない態様で参列したにすぎない。しかしながら,被告は,機械的累進加重を定める違憲無効な府職員基本条例27条2項に依拠し,また,上記各事情について十分に考慮することなく,本件減給処分を行っており,同処分については,裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用していることが明らかである。 (被告の主張)(1) 本件減給処分が府職員基本条例に依拠するものではないこと原告は,本件減給処分が,府職員基本 権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用していることが明らかである。 (被告の主張)(1) 本件減給処分が府職員基本条例に依拠するものではないこと原告は,本件減給処分が,府職員基本条例27条2項に依拠した機械的累進加重として選択されたと主張する。しかしながら,同項が規定する地公法28条1項の処分は分限処分であって,懲戒処分ではない。したがって,上記条例27条2項は,懲戒処分の一種である減給処分を行うことができると規定したものではないから,本件減給処分においては,同項は適用されていない。そうすると,原告の主張はその前提を欠き,失当である。 (2) 本件減給処分が裁量権の範囲を逸脱又は濫用しているとはいえないことア地公法に定められた懲戒事由がある場合に,懲戒処分を行うかどうか,懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは,懲戒権者の裁量に任されており,懲戒権者がその裁量の行使としてした懲戒処分は,それが社会通念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し,これを濫用したと認められる場合でない限り,その裁量権の範囲内にあるものとして,違法とはならない。そして,最高裁平成24年1月16日判決は,減給以上の処分について,本件事案の性質等を踏まえた慎重な考慮が必要となるとして,これが許容されるのは,過去の非違行為による懲戒処分等の処分歴や不起立行為等の前後における態度等(以下,併せて「過去の処分歴等」という。)に鑑み,学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から当該処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情が認められる場合であることを要すると判示している。 イこれを本件についてみると,原告は,本件卒業式の当日,F校長から,正門の警備等を行うよう職務命令を受けたにも の相当性を基礎付ける具体的な事情が認められる場合であることを要すると判示している。 イこれを本件についてみると,原告は,本件卒業式の当日,F校長から,正門の警備等を行うよう職務命令を受けたにもかかわらず,自らの独断により途中で上記職務を放棄した上,卒業式の会場内での役割分担を受けていないために会場に入場する理由及び必要性がないにもかかわらず,無断で卒業式会場である同校の体育館内に丸椅子を持ち込んで入場し,教員席の横にその丸椅子を置いて座った上で,国歌斉唱時に着席して,起立して斉唱しなかった。このような原告の行為は,本件通達及び本件職務命令のいずれにも違反するのみならず,学校の儀式的行事としての卒業式の式典の秩序や雰囲気を著しく損なうものであった。また,原告は,平成24年入学式においても,同様に本件通達や正門警備を担当する職務命令に違反した非違行為により本件戒告処分を受けている。 ウ以上のとおり,本件卒業式における本件不起立前後における原告の態 度は,非常に悪質であって,上記最高裁平成24年1月16日判決が判示する「学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から当該処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情が認められる場合」に相当することから,A教育委員会は,その裁量の範囲内において本件減給処分したものであって,本件減給処分については,裁量権の範囲を逸脱したり,又はこれを濫用したとはいえない。 5 争点5(本件国家賠償請求の成否及び損害の内容)について(原告の主張)(1) 上記のとおり,本件減給処分は,取り消されるべき違法な行政処分であるところ,原告は自らの思想・良心にしたがって,平成24年卒業式において君が代の起立斉唱ができず,敢えて本件職務命令に従わなかったにもかか のとおり,本件減給処分は,取り消されるべき違法な行政処分であるところ,原告は自らの思想・良心にしたがって,平成24年卒業式において君が代の起立斉唱ができず,敢えて本件職務命令に従わなかったにもかかわらず,本件減給処分がなされたことにつき,強い精神的苦痛を受けた。したがって,被告は,違法な本件減給処分をしたことについて,原告に対して,国賠法1条1項に基づき,損害賠償義務を負う。 (2) 本件減給処分によって原告が受けた精神的苦痛は,少なく見積もって100万円を下らない。 (被告の主張)いずれも否認ないし争う。 F校長やA教育委員会が原告に対してした行為は,いずれも適法なものであって,被告に対する本件損害賠償請求は理由がない。 第5 当裁判所の判断 1 争点1(憲法19条[思想・良心の自由],憲法14条[法の下の平等]違反)について(1)ア原告は,学校行儀における国歌斉唱時に起立斉唱を行えない理由として,教員として人権教育に深く関わり,日の丸,君が代が戦前の日本 のアジア侵略のシンボルとなり,それらを利用した国家主義的教育が少数者を排除し差別を深刻化されることを感じ,また,君が代の斉唱を多数派の共有する特定の価値観に基づく社会統合をするためにシンボルとして強制することは,その価値観に属さないあるいはその価値観に疑問を抱く少数派が排除されることであるとの教員としての学び,実践を積み重ねてきたことに由来するものであり,府国旗国歌条例,それに基づく本件通達及び本件職務命令は原告の思想・良心の自由を侵害するものである旨主張する。原告の同主張は,自己の歴史観ないし世界観から生じる教育上の信念等に基づくものであると捉えることができる。 しかしながら,本件通達や本件職務命令が発令された当時,公立学校にお のである旨主張する。原告の同主張は,自己の歴史観ないし世界観から生じる教育上の信念等に基づくものであると捉えることができる。 しかしながら,本件通達や本件職務命令が発令された当時,公立学校における卒業式等の学校行事において,国歌としての君が代の斉唱が広く行われていたことは周知の事実であって,学校の儀式的行事である卒業式等の式典における国歌斉唱の際の起立斉唱行為は,一般的,客観的に見て,これらの式典における慣例上の儀礼的な所作としての性質を有するものであり,かつ,そのような所作として外部からも認識されるものというべきである。したがって,上記起立斉唱行為は,その性質からみて,原告の有する歴史観ないし世界観を否定することと不可分に結び付くものとはいえず,原告に起立斉唱を求める本件通達や本件職務命令は,上記の歴史観ないし世界観それ自体を否定するものということはできない。また,上記起立斉唱行為は,その外部からの認識という点から見ても,特定の思想又はこれに反する思想の表明として外部から認識されるものと評価することは困難であり,職務上の命令に従ってこのような行為が行われる場合には,上記のように評価することは一層困難であるといえるのであって,本件通達や本件職務命令は,特定の思想を持つことを強制したり,これに反する思想を持つことを禁止したりするものではなく,特定の思想の有無について告白することを強要するものとい うこともできない。そうすると,本件通達及び本件職務命令は,これらの観点において,個人の思想・良心の自由を直ちに制約するものと認めることはできないというべきである。 もっとも,上記起立斉唱行為は,一般的,客観的に見ても,国旗及び国歌に対する敬意の表明の要素を含む行為であるということができる。 そうすると,自らの歴史観ないし世界観 とはできないというべきである。 もっとも,上記起立斉唱行為は,一般的,客観的に見ても,国旗及び国歌に対する敬意の表明の要素を含む行為であるということができる。 そうすると,自らの歴史観ないし世界観との関係で否定的な評価の対象となる日の丸や君が代に対して敬意を表明することには応じ難いと考える者が,これらに対する敬意の表明の要素を含む行為を求められることは,その行為が個人の歴史観ないし世界観に反する特定の思想の表明に係る行為そのものではないとはいえ,個人の歴史観ないし世界観に由来する行動(敬意の表明の拒否)と異なる外部的行為(敬意の表明の要素を含む行為)を求められることとなり,その限りにおいて,その者の思想・良心の自由について間接的な強制となる面があることは否定し難い。他方で,個人の歴史観ないし世界観には多種多様なものがあり得るのであり,それが内心にとどまらず,それに由来する行動の実行又は拒否という外部的行動として現れ,当該外部的行動が社会一般の規範等と牴触する場面において制限を受けることがあるところ,その制限が必要かつ合理的なものである場合には,その制限を介して生ずる上記の間接的な制限も許容され得るものというべきである。そして,このような間接的な制約が許容されるか否かは職務命令等の目的及び内容並びに上記制限を介して生ずる制約の態様等を総合的に衡量して,上記の制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められるか否かという観点から判断するのが相当である(最高裁平成23年5月30日第二小法廷判決・民集65巻4号1780頁,同平成23年6月6日第一小法廷判決・民集65巻4号1855頁,同平成23年6月14日第三小法廷判決・民集65巻4号2148頁,同平成23年6月21日第三小法廷判 決・裁判集民事237号53頁参照)。 イ(ア 小法廷判決・民集65巻4号1855頁,同平成23年6月14日第三小法廷判決・民集65巻4号2148頁,同平成23年6月21日第三小法廷判 決・裁判集民事237号53頁参照)。 イ(ア) 以上を踏まえて本件について検討すると,確かに,国歌斉唱時に起立斉唱することは,原告の歴史観ないし世界観との関係で否定的な評価の対象となるものに対する敬意の表明の要素との関係において,その歴史観や世界観に由来する行動との相違を生じさせることになるという点では原告の思想・良心の自由を間接的に制約する面があることは否定できない。 (イ) しかしながら,他方で,学校の卒業式等という教育上の特に重要な節目となる儀式的行事においては,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序を確保して式典の円滑な進行を図ることが必要であるといえる。そして,法令等においても,学校教育法が高等学校教育の目的として我が国と郷土の現状や歴史についての正しい理解や伝統文化の尊重,他国の尊重や国際社会の平和と発展に寄与する態度の滋養涵養を掲げ(同法72条,51条1号,21条3号),同法52条及び平成19年文部科学省令第40号による同法施行規則82条に基づく高等学校学習指導要領も学校の儀式的行事の意義を踏まえて国旗国歌条項(入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するように指導するものとする。)を定め,国旗国歌法は,従来の慣習を法文化して国旗は日の丸とし,国歌は君が代とする旨定め,府国旗国歌条例は,国旗国歌法や学習指導要領等の趣旨を踏まえ,伝統と文化の尊重,我が国と郷土を愛する意識の高揚,国際社会の平和と発展に寄与する態度の滋養及び府立学校等における服務規律の厳格化を目的として,国歌斉唱の際に起立して斉唱することを定めてい 踏まえ,伝統と文化の尊重,我が国と郷土を愛する意識の高揚,国際社会の平和と発展に寄与する態度の滋養及び府立学校等における服務規律の厳格化を目的として,国歌斉唱の際に起立して斉唱することを定めている(前提事実(2)ア,イ)。 なお,原告は,府国旗国歌条例について,君が代の起立斉唱を義務付けるものであり,国旗国歌法の制定経緯や学習指導要領の内容,教 育の本質・実践の観点等からして,憲法94条に違反する旨主張する。 しかしながら,府国旗国歌条例は,伝統と文化の尊重,我が国と郷土を愛する意識の高揚,国際社会の平和と発展に寄与する態度の滋養及び府立学校等における服務規律の厳格化を目的として,国歌斉唱の際に起立して斉唱することを定めているところ,かかる定めは,上記学校教育法及び国旗国歌法の趣旨とするところに従い,かつ,卒業式等教育上の特に重要な節目となる儀式的行事においては,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序を確保して式典の円滑な進行を図ることが必要であるという観点から,上記のとおり,儀礼的な所作としての国歌斉唱時の起立を行うこととしたものと認めることができる。したがって,憲法94条に違反する旨の府国旗国歌条例に関する原告の主張は理由がないといわざるを得ない。 (ウ) そして,全体の奉仕者として法令等及び上司の職務上の命令に従って職務を遂行すべきこととされている地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性(憲法15条,地公法30条,32条)に鑑み,B高校の教員である原告は,法令等及び職務上の命令に従わなければならない立場にあり,地公法に基づき,学習指導要領を踏まえて,その勤務する学校の校長から学校行事である本件卒業式に関して本件職務命令を受けたものである。 (エ) 以上の点に照らすと,本件通達及び本件職務命令 場にあり,地公法に基づき,学習指導要領を踏まえて,その勤務する学校の校長から学校行事である本件卒業式に関して本件職務命令を受けたものである。 (エ) 以上の点に照らすと,本件通達及び本件職務命令は,高等学校教育の目標や卒業式等儀式的行事の意義,在り方等を定めた関係法令等の諸規定の趣旨に沿って,地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性を踏まえ,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序の確保とともに当該式典の円滑な進行を図る目的を有するものということができる。 ウ以上認定説示した点からすれば,本件通達及び本件職務命令は,上記 (1)イで述べたように外部的行動の制限を介して原告の思想・良心の自由についての間接的な制約となる面があることは否定できないものの,その目的及び内容並びに上記制限を介して生ずる制約の態様等を総合的に衡量すれば,上記制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められ,これらの根拠となった府国旗国歌条例についても,違憲・違法であるということはできないというべきである。 (2) 原告は,式場外での職務を命じる本件職務命令が,原告の思想・良心に着目した不合理な差別であり,憲法14条に違反するものである旨主張する。 確かに,正門校内外警備・自転車整理の職務が割り当てられれば,本件卒業式には出席できなくなる。しかしながら,原告は,本件卒業式に際して,突如として,国歌斉唱時に不起立とする意向を示したものではなく,本件卒業式に先立つ本件入学式においても,職務命令に反して入学式不起立を行い,本件戒告処分を受けていること,その際,入学式開始直前に,G教頭から正門警備に戻るように指導を受けたが,「騒ぎになりますよ。」などと言ってその指導に従わなかった(前記前提事実(4))ことなどから,F校長は,本件 受けていること,その際,入学式開始直前に,G教頭から正門警備に戻るように指導を受けたが,「騒ぎになりますよ。」などと言ってその指導に従わなかった(前記前提事実(4))ことなどから,F校長は,本件卒業式においても原告が国歌斉唱時に起立斉唱しない可能性が高く,そのような事態となれば,再度の職務命令違反や卒業式場内での混乱が生じるおそれがあることから,そのような混乱を避けるため,本件職務命令を発したことがうかがわれる。そして,既に説示したように国歌斉唱時における起立斉唱を命じた本件通達や本件職務命令が府立学校の教職員の思想・良心の自由を侵害するものとは認められないこと,卒業式等という重要な学校行事における教職員による国歌斉唱時における不起立不斉唱行為という職務命令違反行為は,その結果,学校の儀式的行事としての式典の秩序や雰囲気を一定程度損なう作用(影響)をもたらすことは否定し難く,それにより式典に参列する生徒への影響も伴うことについても否定し難いこと,卒業式においては式場内のみならず式場外の業務も不可欠の業務として存在するのであって, これらを担当する教職員を配置することが必要となること,そもそも校長は,B高校の校務を掌理し,卒業式等の学校行事における教員の職務担当を決定する広い裁量を有していることなどの事情をも併せ鑑みると,本件職務命令は,卒業式の儀式的行事の意義,在り方等を定めた関係法令等の諸規定の趣旨に沿って,地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性を踏まえ,生徒等への配慮を含め,卒業式という教育上の行事にふさわしい秩序の確保とともに式典の円滑な進行を図ることを目的として発出されたものであり,合理的かつ正当な理由に基づくものであると認められる。したがって,本件職務命令が憲法14条に違反する旨の原告の上記主張は採用できな ともに式典の円滑な進行を図ることを目的として発出されたものであり,合理的かつ正当な理由に基づくものであると認められる。したがって,本件職務命令が憲法14条に違反する旨の原告の上記主張は採用できない。 (3) 以上のとおり,本件通達及び本件職務命令は,その根拠ないし前提となった府国旗国歌条例も含めて,原告の思想・良心の自由を侵害し,憲法19条及び同14条に違反するとはいえないと解するのが相当であり,本争点に関する原告の主張は,いずれも採用することができない。 2 争点2(憲法21条[表現の自由]違反)原告は,府国旗国歌条例及び本件職務命令によって,原告が国歌斉唱時に起立せず着席するという行為が禁止されることとなり,これは憲法21条が保障する表現の自由を侵害するものであると主張する。 しかしながら,上記1(1)において認定説示したとおり,卒業式等の学校行事における国歌の起立斉唱行為は,特定の思想又はこれに反する思想の表明として外部から認識されるものとして評価することは困難であり,しかも職務上の命令等に従ってこのような行為が行われる場合には,上記のように評価することは一層困難であって,消極的な原告の表現の自由を侵害するものと評価することはできない。したがって,原告の上記主張を採用することはできない。 3 争点3(憲法23条[学問の自由],同26条[教育を受ける権利]違反)(1) 原告は,府国旗国歌条例及び本件職務命令は,公立学校の行事における国歌斉唱時の起立斉唱を義務付けるもので,これは一定の教育権が認められた 教員の教育実践に君が代の起立斉唱を強制することにより介入すると同時に卒業式の在り方という教育内容についての公権力による介入であるとして,憲法23条及び同26条に違反すると主張する。 (2) 普通 の教育実践に君が代の起立斉唱を強制することにより介入すると同時に卒業式の在り方という教育内容についての公権力による介入であるとして,憲法23条及び同26条に違反すると主張する。 (2) 普通教育の場において,教師が公権力によって特定の意見のみを教授されないという意味において,また,子どもの教育が教師と子どもとの間の直接の人格的接触を通じ,その個性に応じて行われなければならいという本質的要請に照らし,教授の具体的内容及び方法についてある程度の自由な裁量が認めなければならないという意味において,教員にも一定の範囲おける教授の自由が認められる。しかしながら,大学教育の場合には,学生が一応教授内容を批判する能力を備えていると考えられるのに対し,普通教育においては,児童・生徒については,このような能力がないか,あるいは,制限されており,教師が児童・生徒に対して強い影響力,支配力を有していること,普通教育では,児童,生徒の側に学校や教師を選択する余地が乏しく,教育の機会均等を図る上からも全国的に一定の水準を確保すべき要請があることなどからすると,普通教育において,教師に完全な教授の自由を認めることはできないと解するのが相当である(最高裁昭和51年5月21日大法廷判決・刑集30巻5号615頁参照)。 (3) そして,上記1(1)において認定説示したとおり,本件通達,本件職務命令及びその根拠及び前提となった府国旗国歌条例は,高等学校教育の目標や卒業式等儀式的行事の意義,在り方等を定めた関係法令等の諸規定の趣旨に沿って,地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性を踏まえ,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序の確保とともに当該式典の円滑な進行を図る目的を有するものであって,直接に児童・生徒に対する教育内容や方法に関して発出され の職務の公共性を踏まえ,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序の確保とともに当該式典の円滑な進行を図る目的を有するものであって,直接に児童・生徒に対する教育内容や方法に関して発出されたものとはいえないことに加えて,卒業式等の学校行事は,個々の教員が行う授業等とは異なり,全卒業生,全在学生及び教職員並びに保護者等も含めた参加者が,一定の式次第に従って行う教育課 程における特別活動の一部として実施される儀式である点も併せ考慮すれば,本件通達等が児童・生徒に対して誤った知識や一方的な観念を植え付け,児童・生徒の自由かつ独立した人格形成を妨げるかのような内容の教育を施すことを教員に強制するものとはいえず,教員の教育の自由に対する侵害や教育内容に対する介入であるとは認められない。したがって,原告の上記主張を採用することはできない。 (4) なお,原告は,本件通達は,教育内容又は教育方法に関する事項であり,権限ある職務上の上司ではない教育長が発出することができないものであるから,同通達に基づく本件職務命令は,本件減給処分の前提となる有効な職務命令と捉えられない旨主張する。 しかしながら,上記3(3)で説示した事情に加えて,教育長はA教育委員会の指揮監督の下にA教育委員会の権限に属するすべての事務をつかさどると規定されているところ(平成26年法律第76号による改正前の地教行法17条1項),A教育委員会の権限には教職員の服務の監督に関する事務が含まれているから,教育長は,府立学校の教職員に対する服務の監督について執行権限を付与されており,地方公務員法32条の「上司」(当該地方公務員との関係において,これを指揮監督する権限を有する者)として,府立学校の教職員に対して本件通達を発する権限を有するものと解するのが相当である。 れており,地方公務員法32条の「上司」(当該地方公務員との関係において,これを指揮監督する権限を有する者)として,府立学校の教職員に対して本件通達を発する権限を有するものと解するのが相当である。そうすると,原告の上記主張は理由がなく,本件通達は,原告に対する関係で正当な職務命令であると認められる。 4 争点4(本件減給処分が裁量権の範囲を逸脱又は濫用するものか)(1) 認定事実前記前提事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実を認めることができる。 ア本件戒告処分に至る経緯(ア) 原告は,本件入学式に先立つ平成24年4月2日,校長室に赴き,F 校長に対して,式場内での役割分担を与えるよう求めたが,これを拒否され,さらに,F校長から本件通達にあるように同入学式の国歌斉唱時において起立して斉唱するなどの指導を受けるなどした。 また,原告は,同月4日にも校長室に赴き,F校長に対して,式場外の役割を与えられた場合に式場内に入ったらどのようになるか問うたところ,同校長からそれが職務命令違反に該当し,式場内に入って国歌斉唱時に不起立不斉唱であった場合には二重の職務命令違反になるので,職務命令に従うようにとの指導を受けた。 (イ) F校長は,同月6日,同校の職員会議において,原告を含む同校の教員に対して,本件通達及び役割分担表を配布した上で,国歌斉唱時においては,式場内の全ての教職員は起立して斉唱すること及び当日の役割分担表に基づき職務に専念する旨の平成24年度職務命令を発した。上記役割分担表によれば,教員それぞれについて役割が割り振られ,その役割が式場内のものか,それとも式場外のものであるかについてはそれぞれ「○」の記号が付されるなどして区別されて記載されているほか,いずれの役割につい れば,教員それぞれについて役割が割り振られ,その役割が式場内のものか,それとも式場外のものであるかについてはそれぞれ「○」の記号が付されるなどして区別されて記載されているほか,いずれの役割についてもそれを果たした後に入学式への参列を認める旨の記載は存在しない。原告は,上記役割分担表においては,その余の数名の教員と共に正門警備を担当することとなった。なお,上記職員会議において,原告は,F校長に対し,役割分担を変更することは可能かという質問をしたところ,同校長は,G教頭と相談するようにと返答したが,その後,原告が同教頭に役割分担の変更を求めることはなかった。 (ウ) 原告は,同月9日,当初は正門警備に従事していたものの,本件入学式が開始される10分ほど前には,その余の正門警備を行う教員に何ら告げることなく正門から離れて,入学式会場である体育館に入り,職員用に用意されていた椅子に着席した。G教頭は,原告が着席したことを確認したことから,同人のそばまで行き,原告に対して,「持ち場に戻 るように。」などと言って,同人に対する職務命令(正門警備)を果たすように指示したが,原告は「騒ぎになりますよ。」などと答えて,正門に戻ることはなく,着席したままであった。 原告は,その後始まった同式中の国歌斉唱時において,起立斉唱しなかった(入学式不起立)。 (エ) 入学式不起立について,同月18日に事実の確認及び弁明の機会の付与のための事情聴取が原告に対して行われることになったが,原告は,この事情聴取を辞退する旨の文書(乙3)を提出して,これに出席しなかった。原告は,被告に対して,同月13日付けで入学式不起立に至った理由を説明する顛末書を提出し,その後23日付けで顛末書追加資料と題する書面(乙4)を提出した。原告は,上記顛末書追 これに出席しなかった。原告は,被告に対して,同月13日付けで入学式不起立に至った理由を説明する顛末書を提出し,その後23日付けで顛末書追加資料と題する書面(乙4)を提出した。原告は,上記顛末書追加資料において入学式で起立しなかった理由について説明しているほか,その態様について「正門には多数の教員が待機しており,万が一何かが起こっても対処する体制はあると判断できました。つまり,私が14時から始まる入学式に参列しても支障はないと判断したわけです。私は,そのまま,体育館の入学式式場に向かいました。開式の5分前のことです。私は迷わず参列者の席に座りました。保護者はその時点で大半が着席されていました。私が座ってまもなく,教頭から「自分の持ち場にもどってください。」と声をかけられました。参列を決めていた私は,保護者を前にしてその場で言い争いになることは何としても避けたいと思っていました。おそらく教頭も同じ気持ちであったろうと思います。着席したまま,「騒ぎになりますよ」と答え,そしてそのまま式は始まりました。開式の辞の後,国歌斉唱の号令時,黙ってそのまま座りました。」などと記載している。 (オ) 原告は,入学式不起立について,本件戒告処分を受けた。 イ原告がF校長に対して本件卒業式の参列を求めたこと 原告は,平成25年2月25日の職員会議の前に,校長室に赴き,F校長に対して,本件卒業式に式場内で参列したい旨の希望を伝えたところ,同校長は国歌斉唱時に起立する旨を原告が言明しない限りは同人に式場内の役割を振ることはできないと伝える一方で,仮に,それが真意に基づくものか否かはさておき,原告が国歌斉唱時に起立する旨言明した場合に,式場内の役割を割り当て,原告がやはり起立できなかったという形にして原告の希望を叶える ないと伝える一方で,仮に,それが真意に基づくものか否かはさておき,原告が国歌斉唱時に起立する旨言明した場合に,式場内の役割を割り当て,原告がやはり起立できなかったという形にして原告の希望を叶えるのも一つの方策である旨を原告に伝えた。原告は,これに対して,考えてみる旨返答したものの,その場でF校長に対して国歌斉唱時に起立する意思があるということを伝えたことはなく,F校長は,同日昼頃には上記提案を撤回した。また,F校長は,原告に対して,仮に,上記方策に従って原告が起立をしなかった場合には,やはり職務命令に違反することになることを伝えたが,これに対して原告は分かっている旨発言した。 この際,原告は,F校長に対し,正門警備等の職務に割り当てられた教員が多数いることについて疑問を呈したが,同校長は,何があるか分からないため,それだけの人数を割り振っている旨回答した。 なお,原告は,所持していた携帯電話の録音機能を使用して上記会話を録音していたが,その旨をF校長に伝えることはなく,同校長は上記会話が録音されていることを認識していなかった。 ウ本件職務命令の発令F校長は,平成25年2月25日に開催された職員会議において,原告を含む同校の教員に対して,本件通達及び教員の役割分担表を配布した上で,同校の卒業式の国歌斉唱時においては,式場内の全ての教職員は起立して斉唱すること及び当日の役割分担表に基づき職務に専念する旨の本件職務命令を発した。上記役割分担表は,本件入学式(上記ア(イ))と同様に,式場内の職務と式場外のそれとが区分されたものであり,原告はその他の 教員数名と共に,正門校内外警備・自転車整理の職務(以下「正門警備等」という。)が割り当てられた。上記役割分担表においても,上記ア(イ)のものと同 が区分されたものであり,原告はその他の 教員数名と共に,正門校内外警備・自転車整理の職務(以下「正門警備等」という。)が割り当てられた。上記役割分担表においても,上記ア(イ)のものと同様の形式によって式場内の職務と式場外のそれとは区別されて記載されているほか,当該役割を果たした後は卒業式に参列することを認める記載は存在しない。 エ原告がG教頭に対して本件卒業式の参列を求めたこと原告は,同月27日,G教頭に対して,本件卒業式において参列したいなどと発言したところ,同教頭は原告に対し,式場内には原告の席がなく,本件職務命令に従うように告げた。 オ本件不起立の経緯及び態様等原告は,本件卒業式が開催された同年3月1日,正門付近において,その警備等を行っていたが,本件卒業式の開式前頃になって,正門警備等を行っていたその余の教員に何ら告げることなく,その場から離れ,式場外にあった丸椅子を携えて式場内に入り,式場内で参列する職員の席の隣に丸椅子を置き,着席した。なお,式場内における教員の着席位置は,事前に決められており,原告を含めて式場外の役割を命じられた教員の席は準備されていなかった。 原告は,国歌斉唱時,上記丸椅子に着席したままで,起立斉唱しなかった(本件不起立)。 なお,原告の本件不起立行為により,本件卒業式の進行自体が妨げられるということはなかった。 カ原告による顛末書の提出等A教育委員会は,原告に対して,本件不起立について事実の確認と弁明の機会を与えるために同月6日に事情聴取を行うことしたが,原告はこれに対して「事情聴取の辞退について」と題する書面を提出してこれに出席せず,本件不起立に至った理由等を記載した顛末書を提出した。上記顛末 書には, 6日に事情聴取を行うことしたが,原告はこれに対して「事情聴取の辞退について」と題する書面を提出してこれに出席せず,本件不起立に至った理由等を記載した顛末書を提出した。上記顛末 書には,「私は,3年間,いろんな形でかかわってきた第7期生の卒業式に参列したいと考えました。本来なら,校長を説得する必要があったかもしれません。誰かに役割分担を変更してもらう道もあったかもしれません。 しかし,役割分担と起立斉唱の職務命令が出ている以上は,私は,できるだけ他の現場の教員に被害が及ばない形で参列したいと考えました。」などの記載がある。 (2) 本件減給処分と府職員基本条例との関係原告は,機械的累進加重による懲戒処分を定めた府職員基本条例27条2項は,地公法27条の趣旨に反するもので,憲法94条に反し,違憲無効であるところ,本件減給処分は,同条例27条2項に基づいてされたものであるから,違憲無効である旨主張する。 しかしながら,同項は,府職員に職務命令違反があり,任命権者による研修等の措置が講じられたにもかかわらず,なお職務命令に違反する行為を繰り返し,それが5回(同一の職務命令の場合は3回)に達した場合の標準的な処分は,分限免職処分と定める規定であるのに対して,本件減給処分は本件職務命令に違反する懲戒処分であるから,そもそも本件に府職員基本条例27条2項は適用されない。したがって,同項が憲法94条に反するか否かを検討するまでもなく,原告の主張はその前提を欠き,主張自体失当である。 (3) 本件減給処分に係る裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に関する判断枠組みアそもそも公務員に対する懲戒処分について,懲戒権者は,懲戒事由に該当すると認められる行為の原因,動機,性質,態様,結果,影響等のほか,当該公務員の前記行為の前後における態度, する判断枠組みアそもそも公務員に対する懲戒処分について,懲戒権者は,懲戒事由に該当すると認められる行為の原因,動機,性質,態様,結果,影響等のほか,当該公務員の前記行為の前後における態度,懲戒処分等の処分歴,選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等,諸般の事情を考慮して,懲戒処分をすべきかどうか,また,懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきかを決定する裁量権を有しており,その判断は,そ れが社会通念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したと認められる場合に,違法となるものと解される(最高裁昭和52年12月20日第三小法廷判決・民集31巻7号1101頁,最高裁平成2年1月18日第一小法廷判決・民集44巻1号1頁参照)。 イところで,上記1ないし3において認定説示したとおり,本件職務命令等は,憲法19条等憲法の規定に違反するものではなく,学校教育の目的や卒業式の儀式的行事の意義,在り方等を定めた関係法令等の諸規定の趣旨に沿って,地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性を踏まえ,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序の確保とともに式典の円滑な進行を図るものであって,このような観点から,その遵守を確保する必要性があるものということができる。 もっとも,本件で問題となっている減給という処分は,処分それ自体によって教員の法的地位に一定期間における本給の一部の不支給という直接の給与上の不利益が及び,将来の昇給等にも相応の影響が及ぶ上,毎年度2回以上の卒業式や入学式等の式典において当該教員が式場内での役割が与えられ,国歌斉唱の不起立を繰り返した場合には,そのたびに懲戒処分が累積して加重されると短期間で反復継続的に不利益が拡大していくことが懸念されるところである。なお,原告は,本件 が式場内での役割が与えられ,国歌斉唱の不起立を繰り返した場合には,そのたびに懲戒処分が累積して加重されると短期間で反復継続的に不利益が拡大していくことが懸念されるところである。なお,原告は,本件卒業式直後に定年退職しているものであるが,上記の各不利益が及ぶ可能性があることは否定できない。また,府職員基本条例は,職務命令に違反した職員の標準的な懲戒処分は戒告とする旨規定している(前提事実(2)エ(イ))。 そうすると,懲戒処分として戒告を超えて減給の処分を選択することが許容されるのは,過去の非違行為における懲戒処分等の処分歴や不起立行為等の前後における態度(以下,併せて「過去の処分歴等」という。)に鑑み,学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容 との権衡の観点から当該処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情が認められる場合であることを要すると解すべきである。 そして,上記の相当性を基礎付ける具体的な事情が認められるためには,例えば過去の1回の卒業式等における不起立行為等による懲戒処分の処分歴がある場合に,これのみをもって直ちにその相当性を基礎付けるには足りず,上記の場合に比べて過去の処分歴に係る非違行為がその内容や頻度等において規律や秩序を害する程度の相応に大きいものであるなど,過去の処分歴等が減給処分による不利益の内容との権衡を勘案しても規律や秩序の保持等の必要性の高さを十分に基礎付けるものであることを要するというべきである(最高裁平成24年1月16日第一小法廷判決・裁判集民事239号253頁参照)。 (4) 裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に関する検討以上の点を踏まえて,本件減給処分について,裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるか否かについて検討する。 ア(ア) まず,過去の 。 (4) 裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に関する検討以上の点を踏まえて,本件減給処分について,裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるか否かについて検討する。 ア(ア) まず,過去の懲戒歴である本件戒告処分についてみると,その態様は,原告が,正門警備に従事するという職務命令を受けていたにもかかわらず,正門警備の役割を独自の判断で放棄した上で,参列することが予定されていなかった入学式会場に無断で入り,G教頭から本来の持ち場である正門警備の職務に戻るように指示を受けたにもかかわらず,「騒ぎになりますよ。」などと申し向けて会場内に留まり,国歌斉唱時に起立斉唱しなかったというものである。 この点,原告は,上記のとおり,式場内での役割を与えられていなかったのであるから,正門警備に従事するという職務命令に従っていれば,国家斉唱時に起立斉唱を求められるということもなかったにもかかわらず,同職務命令に違反するものであることを明確に認識しながら,あえて同役割を放棄して,式場内に立ち入ったと認められる。また,その後, 式場内において,G教頭から,本来の役割である正門警備に戻るよう指示を受けたにもかかわらず,これに従わなかったばかりか,「騒ぎになりますよ」などと申し向けている点は,F校長あるいはG教頭が,原告に対して,本来の役割である正門警備に就くように指示,指導を継続すれば,それに対して無用の混乱を招くような態様で応対することを示唆したものであると認められ,他方,原告が上記のような言動に及んだのが入学式の開始直前であったことも相まって,F校長らとしても,これ以上,原告に対する指示,指導を継続すれば,かえって入学式の円滑な開始・進行を妨げることになりかねないことから,原告に対する指示,指導を打ち切ることもやむを得ないとの認識に ,F校長らとしても,これ以上,原告に対する指示,指導を継続すれば,かえって入学式の円滑な開始・進行を妨げることになりかねないことから,原告に対する指示,指導を打ち切ることもやむを得ないとの認識に至らせたものであると認められる。そして,原告は,上記のようにして本来の職務(正門警備)に従事することなく,式場内に居座った上で,国歌斉唱時には起立せず,斉唱もしなかったのである。 以上のような経緯等に鑑みれば,本件戒告処分の対象となった入学式不起立行為は,式場内の役割を与えられて式場内にいた教員が国歌斉唱時に不起立不斉唱であったという事案とは,職務命令違反の態様及びその程度等を大きく異にするものであるといわざるを得ない(イ) この点につき,原告は,正門警備は適宜果たせばよく,入学式が挙行されている時間を含めたものではないのであって,その役割を途中で放棄したものではないと主張し,原告及び証人Hも同旨の供述等をする。 しかしながら,本件入学式における役割分担表においては,式場外と式場内との役割が明確に区分されており,原告もこのことを十分に認識していたと認められること(認定事実ア(ア),同(イ)),そもそも不測の事態に備えるという正門警備という役割の性質に照らして,入学式の適宜の時点でその役割果たせばよいものとはおよそ捉えられないこと,原告は同じく正門警備を担当しているその余の教員に対して持ち場を離れ ることを告げることはなかったこと(認定事実ア(ウ)),原告が入学式会場に入ったのは入学式が開始される前の時点であり,入ってからもG教頭から本来の持ち場である正門に戻るように指示を受けていること(認定事実ア(ウ)),以上の各事情に鑑みれば,原告に与えられた正門警備の役割は平成24年入学式が終了するまで継続して果たされるべきもので 頭から本来の持ち場である正門に戻るように指示を受けていること(認定事実ア(ウ)),以上の各事情に鑑みれば,原告に与えられた正門警備の役割は平成24年入学式が終了するまで継続して果たされるべきものであったものと認めるのが相当であり,そのことを原告においても,その作成にかかる顛末書等の記載等(認定事実ア(エ))に照らして,十分に認識していたものと認められる。そうすると,原告は,独自の判断によって正門警備の職務役割を放棄したものといわざるを得ない。 (ウ) 以上の各事情に照らすと,本件戒告処分の対象となった原告の行為については,本件通達及び正門警備を行う旨の職務命令にいずれも違反するものであり,式場内の役割を与えられて式場内にいた教員が,国歌斉唱時に不起立を行った事案と比して,地方公務員として期待される規律や秩序を害する程度は相応に大きいものがあったといえる。 イ(ア) 次に,本件減給処分の対象となった本件不起立行為についてみると,原告は,本件卒業式においても,本件入学式と同様に,予め職務命令として正門警備等の役割を与えられていたこと,原告は,F校長あるいはG教頭と面談した際に,同校長らから,国歌斉唱時に起立する旨を言明しない原告に式場内の役割を割り当てることはできないから,式場内に原告の席はなく,職務命令に従って正門警備等の役割に従事するよう,再三にわたり指示,指導されていたこと(認定事実イないしエ),原告は,本件戒告処分を受けていたのであるから,本件卒業式において,職務命令に反して,正門警備等の役割を放棄して式場内に立ち入り,国歌斉唱時に起立しないというような行為に及べば,懲戒処分を受けることになることを明確に認識していたと認められ,F校長あるいはG教頭が,原告に式場外での役割を与え,あるいは式場外での役割に従事するよう 斉唱時に起立しないというような行為に及べば,懲戒処分を受けることになることを明確に認識していたと認められ,F校長あるいはG教頭が,原告に式場外での役割を与え,あるいは式場外での役割に従事するよう 伝えたのも,原告が国家斉唱時に起立斉唱しない意向を明らかにしていたことから,原告に式場内に立ち入ることとなれば,原告が懲戒処分を受けることとなるから,そのような事態を回避するために配慮したものといえること,他方,原告は,本件卒業式においては,本件入学式とは異なり,式場内に原告の席がないことが事前に告知されており(認定事実エ),式場内に立ち入ったとしても,座ることができる席等がないことを十分に認識していたにもかかわらず,原告は,正門警備等の役割を独自の判断で勝手に放棄した上,式場内に立ち入る際には,わざわざ式場外にあった丸椅子を持ち込み,自らの席を作り出して着席し,国歌斉唱時に起立斉唱しなかったこと,以上の事実が認められ,これら原告の行動は,本件通達に反するばかりか,本件職務命令にも明確に違反するものであり,規律や秩序を害する程度が相当大きいものであると評価することができる。 (イ) 原告は,上記アで検討した本件入学式と同様に,本件職務命令についても本件卒業式の挙行時間を含めて従事することが含まれているものではなく,その職務を途中で放棄したものではないと主張し,原告及び証人Hも同旨の供述等をする。 しかしながら,原告が本件入学式における職務命令に反して本件戒告処分を受けていること(前記前提事実(3)),上記アで認定説示した各事情と同様に,本件卒業式においても,役割分担表においては式場外と式場内との業務が明確に区分されており,原告もこのことを十分に認識理解していたと認められること(認定事実ウ),不測の事態に備えるという正 と同様に,本件卒業式においても,役割分担表においては式場外と式場内との業務が明確に区分されており,原告もこのことを十分に認識理解していたと認められること(認定事実ウ),不測の事態に備えるという正門警備等という役割の性質からして,そもそも卒業式の適宜の時点で果たせばよいものとはおよそ捉えられない上,かえって原告がF校長に本件卒業式への参列を求めた際の会話においても,F校長から何が起きるか分からないので,それだけの人数を正門警備等に割り当てている との発言があり,原告も特段これに異を唱えていないこと(認定事実イ),式場外の職務を分担する教員については座ることができる席等が用意されておらず,原告は,同事情を認識していたこと(認定事実オ),以上の各事情に鑑みれば,本件職務命令は本件卒業式が終了するまでその役割を果たすということを内容とするものであることは明らかである。したがって,原告の上記主張は採用できない。 また,原告は,入学式及び卒業式における警備はその他の文化祭などの学校行事等と性格が異なり適宜役割を果たせばよい旨主張し,同主張に沿った供述をするが,上記各事情に照らして,採用できない。 (ウ) なお,原告は,本件卒業式に参列する意義について述べるが,上記した原告の行動及びその経緯等に照らせば,原告の上記行動は,卒業式に参列することに意義があるとか,卒業式の主役である生徒あるいはその保護者のことを第一に考えたものであるとは認め難い。 また,F校長から原告に対しては,原告の上記希望を満たすように起立する旨言明すれば式場内での役割に転換する旨の方策が一時提案されているが,そのような提案を行うことの是非はさておくとしても,F校長においても,本件卒業式において原告の不起立をした場合においては,これを不問にするようこの の役割に転換する旨の方策が一時提案されているが,そのような提案を行うことの是非はさておくとしても,F校長においても,本件卒業式において原告の不起立をした場合においては,これを不問にするようこのような方策を伝えたものではなく,不起立自体が職務命令に違反するものであることや正門警備等の意義,性質なども併せて伝達したものであって,原告も,同校長の意図を認識していたものと認められる。 ウ(ア) 以上検討したところによれば,本件減給処分の対象となった原告の非違行為は,本件卒業式における国歌斉唱時の不起立不斉唱という本件通達に反するだけにとどまらず,原告に与えられた職務命令に明確に違反するものであること,その態様を見ても,式場内の役割を与えられておらず,また,式場内に自らの席がないことを認識しながら, 無断で卒業式場に座るための椅子を持ち込み,自らの席を作り出した上で,国歌斉唱時に同椅子に座ったままで国歌斉唱しなかったというものであること,以上の点に鑑みると,式場内の役割を与えられて式場内にいた教員が式場内で起立斉唱しなかった態様のものとは到底同視することができず,原告は本件不起立に積極的かつ意図的に及んだものといえる。しかも,原告は,本件減給処分の対象となった本件不起立と同様の行為を,本件入学式でも行い,本件戒告処分を受けているのに,再度職務命令に反して,その本来の職務を放棄して,無断で式場内に立ち入り,本件不起立に及んだもので,同行為は,地方公務員として期待される規律や秩序を保持する義務や学校行事の厳粛性よりも原告自らの世界観ないし価値観を優先させたものであるといわざるを得ない。 (イ) 以上認定説示した諸事情を総合すると,本件減給処分による不利益の内容をいかに考慮してもなお,規律や秩序の保持の必要性は高く,本件減給 いし価値観を優先させたものであるといわざるを得ない。 (イ) 以上認定説示した諸事情を総合すると,本件減給処分による不利益の内容をいかに考慮してもなお,規律や秩序の保持の必要性は高く,本件減給処分を選択することの相当性を十分に基礎付ける具体的な事情があるものと認めることができるのであって,本件通達及び本件職務命令の違反を理由として原告に対して減給処分をしたA教育委員会の判断は,懲戒権者としての裁量権の範囲を超え又はこれを濫用したものとして違法であるいうことはできない。 5 争点5(本件損害賠償請求の成否及び損害の内容)について原告は,本件減給処分は取り消される違法な処分であり,このような違法な処分を受けたことで強い精神的な苦痛を受けたなどと主張するが,上記4で認定説示したとおり本件減給処分は違法なものと認めることはできないから,その限りにおいて,原告の請求は理由がないといわざるを得ない。 第6 結論以上のとおり,原告の本件各請求はいずれも理由がないから,いずれも棄却 することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第5民事部 裁判長裁判官内藤裕之 裁判官佐々木 隆 憲 裁判官三重野真人

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