令和6(行ケ)4 選挙無効請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年2月12日 広島高等裁判所 棄却
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判決文本文24,393 文字)

令和7年2月12日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和6年(行ケ)第4号選挙無効請求事件口頭弁論終結日令和6年12月25日判決当事者の表示別紙1当事者目録記載のとおり(省略) 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 令和6年10月27日施行の衆議院議員総選挙について、広島県第1区における選挙を無効とする。 2 令和6年10月27日施行の衆議院議員総選挙について、広島県第2区における選挙を無効とする。 第2 事案の概要 1 本件は、令和6年10月27日施行の衆議院議員総選挙(以下「本件選挙」という。)について、広島県第1区及び同第2区の選挙人である原告らが、衆議院小選挙区選出議員の選挙(以下「小選挙区選挙」という。)の選挙区割りに関する公職選挙法の規定は憲法に違反し無効であるから、これに基づき行われた本件選挙の上記各選挙区における選挙も無効であるなどと主張して、公職選挙法204条に 基づき提起した選挙無効訴訟である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる事実)⑴ 当事者ア原告Aは本件選挙において広島県第1区の選挙人であり、原告B及び原告C は同選挙において広島県第2区の選挙人であった。 イ被告は上記各選挙区における本件選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会である(以下、本件選挙の上記各選挙区における小選挙区選挙をあわせて「本件小選挙区選挙」という。)。 ⑵ 本件選挙ア令和6年10月9日に衆議院が解散され、同月27日に本件選挙が施行され た。 (以下、本件選挙の上記各選挙区における小選挙区選挙をあわせて「本件小選挙区選挙」という。)。 ⑵ 本件選挙ア令和6年10月9日に衆議院が解散され、同月27日に本件選挙が施行され た。 イ本件選挙の施行時点における公職選挙法は、衆議院議員の選挙制度につき、小選挙区比例代表並立制を採用しており、衆議院議員の定数は465人とされ、そのうち289人が小選挙区選出議員、176人が比例代表選出議員とされていた(同法4条1項)。小選挙区選挙については、全国に289の選挙区を設け、各選 挙区において1人の議員を選出するものとされ(同法13条1項、別表第1)、比例代表選出議員の選挙(以下「比例代表選挙」という。)については、全国に11の選挙区を設け、各選挙区において所定数の議員を選出するものとされていた。衆議院議員総選挙においては、小選挙区選挙と比例代表選挙とを同時に行い、投票は小選挙区選挙及び比例代表選挙ごとに1人1票とされていた(同法31条、36 条)。 ウ本件選挙の施行時点における公職選挙法の規定中、小選挙区選挙の選挙区割りに関する部分は、その時点において当該部分について施行されていた最終改正である令和4年法律第89号(以下「令和4年改正法」という。)による改正(以下「令和4年改正」という。)後のものであった(以下、公職選挙法13条1項及び 令和4年改正後の同別表第1をあわせて「本件区割規定」といい、本件区割規定に基づく改定後の選挙区割りを「本件選挙区割り」という。)。 エ本件選挙当日において、令和4年改正後の定数配分(以下「本件定数配分」という。)による選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差は、鳥取県第1区と北海道第3区との間の1対2.059(以下、較差に関する数値は全て 令和4年改正後の定数配分(以下「本件定数配分」という。)による選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差は、鳥取県第1区と北海道第3区との間の1対2.059(以下、較差に関する数値は全て 概数である。)であり、鳥取県第1区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区 は10選挙区であった。(乙3)⑶ 本件訴訟の提起原告らは、令和6年10月28日に本件訴訟を提起した。 ⑷ 本件選挙に至るまでの公職選挙法の改正等の経過の概要ア平成24年法律第95号(以下「平成24年改正法」という。)による改 正前の衆議院議員選挙区画定審議会設置法(以下「旧区画審設置法」という。)2条は、衆議院議員選挙区画定審議会(以下「区画審」という。)は衆議院小選挙区選出議員の選挙区の改定に関し、調査審議し、必要があると認めるときは、その改定案を作成して内閣総理大臣に勧告する旨を、同法3条は、1項において、上記改定案の作成は、各選挙区の人口の均衡を図り、各選挙区の人口のうち、その最も多 いものを最も少ないもので除して得た数が2以上とならないようにすることを基本とし、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならない旨を、2項において、改定案の作成に当たっては、各都道府県の区域内の選挙区の数は、各都道府県にあらかじめ1を配当することとし(以下、この方式を「1人別枠方式」という。)、この1に、小選挙区選出議員の定数に相当する数か ら都道府県の数を控除した数を人口に比例して各都道府県に配当した数を加えた数とする旨を、同法4条は、1項において、2条による勧告は統計法5条2項本文の規定により10年ごとに行われる国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に行う旨を、2項において、1項の規 る旨を、同法4条は、1項において、2条による勧告は統計法5条2項本文の規定により10年ごとに行われる国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に行う旨を、2項において、1項の規定にかかわらず区画審は各選挙区の人口の著しい不均衡その他特別の事情があると認めるときは上記勧告を 行うことができる旨を、それぞれ規定していた(以下、3条の区割基準を含む上記各規定による選挙区の改定の仕組みを「旧区割基準」という。)。 イ平成21年8月30日施行の衆議院議員総選挙(以下「平成21年選挙」という。)は、平成24年改正法による改正前の区割規定(以下「旧区割規定」という。)の定める選挙区割りの下で行われたものであり、同日における選挙区間の 選挙人数の最大較差は1対2.304、選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差 が2倍以上となっている選挙区は45選挙区であった。(乙4の1)平成21年選挙につき、最高裁平成22年(行ツ)第207号同23年3月23日大法廷判決・民集65巻2号755頁(以下「平成23年大法廷判決」という。)は、旧区画審設置法3条1項は投票価値の平等の要請に配慮した合理的な基準を定めたものであると評価する一方、同選挙時において、選挙区間の投票価値の 較差が拡大していたのは、1人別枠方式がその主要な要因となっていたことは明らかであり、かつ、人口の少ない地方における定数の急激な減少への配慮等の視点から導入された1人別枠方式は、既に立法時の合理性が失われていたものというべきであるから、旧区割基準のうち1人別枠方式に係る部分及び同基準に従って改定された旧区割規定の定める選挙区割りは、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態 に至っていたと判示した。そして、同判決は、この状態につき憲法上要求される 別枠方式に係る部分及び同基準に従って改定された旧区割規定の定める選挙区割りは、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態 に至っていたと判示した。そして、同判決は、この状態につき憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず、旧区割基準を定めた規定及び旧区割規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものということはできないとした上で、事柄の性質上必要とされる是正のための合理的期間内に、できるだけ速やかに旧区割基準中の1人別枠方式を廃止し、旧区画審設置法3条1項の趣旨に 沿って旧区割規定を改正するなど、投票価値の平等の要請にかなう立法的措置を講ずる必要があると判示した。 ウ平成23年大法廷判決を受けて、平成24年11月16日、旧区画審設置法3条2項の削除及びいわゆる0増5減の措置(各都道府県の選挙区数を増やすことなく議員1人当たりの人口の少ない5県の選挙区数を1ずつ減ずる措置)を内容と する平成24年改正法が成立したが、同日に衆議院が解散されたため、同年12月16日施行の衆議院議員総選挙(以下「平成24年選挙」という。)は平成21年選挙と同じく旧区割規定の定める選挙区割りの下で行われた。(乙5の1、6)平成24年選挙につき、最高裁平成25年(行ツ)第209号、第210号、第211号同年11月20日大法廷判決・民集67巻8号1503頁(以下「平成2 5年大法廷判決」という。)は、同選挙時において旧区割規定の定める選挙区割り は平成21年選挙時と同様に憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったが、憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず、旧区割規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものということはできないとした上で、国会においては今後も平成24年改正 ったが、憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず、旧区割規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものということはできないとした上で、国会においては今後も平成24年改正法による改正後の区画審設置法3条(旧区画審設置法3条1項と同内容の規定)の趣旨に沿った選挙制度の整備に向けた取 組が着実に続けられていく必要があると判示した。 エ平成24年改正法の附則の規定に基づく区画審の勧告を受けて、平成25年6月24日、0増5減の措置を前提に、選挙区間の人口の較差が2倍未満となるように17都県の42選挙区において区割りを改定することを内容とする同年法律第68号(以下「平成25年改正法」という。)が成立した。平成25年改正法によ る改正後の平成24年改正法によって区割規定が改正され、平成22年に行われた大規模国勢調査(以下「平成22年国勢調査」という。)の結果によれば選挙区間の人口の最大較差は1対1.998となるものとされたが、平成26年12月14日施行の衆議院議員総選挙(以下「平成26年選挙」という。)の当日においては、選挙区間の選挙人数の最大較差は1対2.129であり、選挙人数が最も少ない選 挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は13選挙区であった。(乙4の3、5の2、6)平成26年選挙につき、最高裁平成27年(行ツ)第253号同年11月25日大法廷判決・民集69巻7号2035頁(以下「平成27年大法廷判決」という。)は、0増5減の措置における定数削減の対象とされた県以外の都道府県について旧 区割基準に基づいて配分された定数の見直しを経ておらず、上記のような投票価値の較差が生じた主な要因は、いまだ多くの都道府県において1人別枠方式を定めた旧区画審設置法3条2項が削除された後の区割基準 区割基準に基づいて配分された定数の見直しを経ておらず、上記のような投票価値の較差が生じた主な要因は、いまだ多くの都道府県において1人別枠方式を定めた旧区画審設置法3条2項が削除された後の区割基準に基づいて定数の再配分が行われた場合とは異なる定数が配分されていることにあり、このような投票価値の較差が生じたことは、全体として平成24年改正法による改正後の区画審設置法3条の 趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていたとはいえないことの表れというべき であるとして、平成25年改正法による改正後の平成24年改正法により改定された選挙区割りはなお憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったものといわざるを得ないと判示した。そして、平成27年大法廷判決は、同条の趣旨に沿った選挙制度の整備については、漸次的な見直しを重ねることによってこれを実現していくことも国会の裁量に係る現実的な選択として許容されていると解されるとし、 上記の選挙区割りの改定後も国会において引き続き選挙制度の見直しが行われていること等を併せ考慮すると、平成23年大法廷判決の言渡しから平成26年選挙までの国会における是正の実現に向けた取組は、立法裁量権の行使として相当なものでなかったということはできず、憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえないと判示した。 オ平成25年改正法の成立の前後を通じて、国会においては、今後の人口異動によっても憲法の投票価値の平等の要求に反する状態とならないようにするための制度の見直し等について検討が続けられ、平成26年9月以降、有識者により構成される衆議院議長の諮問機関として設置された「衆議院選挙制度に関する調査会」(以下「選挙制度調査会」という。)において調査、検討等が行われた。(乙6、 れ、平成26年9月以降、有識者により構成される衆議院議長の諮問機関として設置された「衆議院選挙制度に関する調査会」(以下「選挙制度調査会」という。)において調査、検討等が行われた。(乙6、 10の1~4、12)選挙制度調査会が平成28年1月14日に衆議院議長に提出した答申(以下「平成28年答申」という。)は、衆議院議員の定数を10削減して465人(小選挙区選出議員の定数につき6削減して289人、比例代表選出議員の定数につき4削減して176人)とする案が考えられるとした上、投票価値の較差の是正について は、小選挙区選挙における各都道府県への議席配分方式が満たすべき条件として、比例性のある配分方式に基づいて配分すること、選挙区間の投票価値の較差を小さくするために各都道府県間の投票価値の較差をできるだけ小さくすること、各都道府県の配分議席の増減変動が小さいこと、一定程度将来にわたっても有効に機能し得る方式であることを挙げ、これらの条件に照らして検討した結果として、各都道 府県への議席配分をいわゆるアダムズ方式(各都道府県の人口を一定の数値で除し、 それぞれの商の整数に小数点以下を切り上げて得られた数の合計数が小選挙区選挙の定数と一致するようにする方式)により行うものとした。そして、同答申は、各都道府県への議席配分の見直しについて、制度の安定性を勘案し、10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果による人口に基づき行うものとし、その中間年に行われる国勢調査の結果、選挙区間の人口の較差が2倍以上の選挙区が生じたときは、 区画審において、各都道府県への議席配分の変更は行うことなく、上記較差が2倍未満となるように関係選挙区の区画の見直しを行うものとした。(乙13)カ平成28年答申を受けて、平成28年5月20日、 区画審において、各都道府県への議席配分の変更は行うことなく、上記較差が2倍未満となるように関係選挙区の区画の見直しを行うものとした。(乙13)カ平成28年答申を受けて、平成28年5月20日、衆議院議員の定数を10削減して465人(小選挙区選出議員の定数につき6削減して289人、比例代表選出議員の定数につき4削減して176人)とするとともに、各都道府県への定数 配分の方式としてアダムズ方式を採用すること等を内容とする同年法律第49号(以下「平成28年改正法」という。)が成立した。(乙14の1~8、15の1・2)平成28年改正法による改正後の区画審設置法(以下「新区画審設置法」という。)4条は、区画審による改定案の勧告について、1項において、10年ごとに 行われる大規模国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に行うものと規定し、2項において、1項の規定にかかわらず、統計法5条2項ただし書の規定により大規模国勢調査が行われた年から5年目に当たる年に行われる国勢調査(以下「簡易国勢調査」という。)の結果による各選挙区の日本国民の人口のうち、その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上となった ときは、当該国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に、これを行うものと規定する。また、新区画審設置法3条は、区割基準について、1項において、改定案の作成は、各選挙区の人口(同条において、最近の国勢調査の結果による日本国民の人口をいう。)の均衡を図り、各選挙区の人口のうち、その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上とならないようにするこ ととし、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければ ならないと規定するとともに、2項 多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上とならないようにするこ ととし、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければ ならないと規定するとともに、2項において、同法4条1項の規定による勧告に係る改定案の作成に当たっては、各都道府県の区域内の選挙区の数は、各都道府県の人口を小選挙区基準除数(その除数で各都道府県の人口を除して得た数〔1未満の端数が生じたときは、これを1に切り上げるものとする。〕の合計数が小選挙区選出議員の定数に相当する数と合致することとなる除数をいう。)で除して得た数 (1未満の端数が生じたときは、これを1に切り上げるものとする。)とすると規定し(アダムズ方式)、3項において、同法4条2項の規定による勧告に係る改定案の作成に当たっては、各都道府県の区域内の小選挙区選出議員の選挙区の数は変更しないものと規定する(以下、この区割基準を含む上記各規定による選挙区の改定の仕組みを「新区割制度」という。)。 さらに、平成28年改正法は、アダムズ方式による各都道府県の選挙区数の変更が行われるまでの投票価値の較差是正のための措置として、附則2条1項において、小選挙区選出議員の定数を6削減することを前提に、新区画審設置法4条の規定にかかわらず、区画審において平成27年に行われた簡易国勢調査(以下「平成27年国勢調査」という。)の結果に基づく改定案の作成及び勧告を行うこととした。 そして、同附則2条2項及び3項は、上記改定案の作成について、新区画審設置法3条の規定にかかわらず、各都道府県の選挙区数につき、選挙区数の変更の影響を受ける都道府県を極力減らすことによって選挙制度の安定性を確保する観点から、いわゆる0増6減の措置(平成27年国勢調査の結果に基づき、アダムズ方式により 府県の選挙区数につき、選挙区数の変更の影響を受ける都道府県を極力減らすことによって選挙制度の安定性を確保する観点から、いわゆる0増6減の措置(平成27年国勢調査の結果に基づき、アダムズ方式により得られる選挙区数が改正前の選挙区数より少ない都道府県のうち、当該都道府県 の人口を同方式により得られる選挙区数で除して得た数が少ない順から6都道府県の選挙区数を1ずつ減じ、それ以外の都道府県は改正前の選挙区数を維持する措置)を講じた上で、平成27年国勢調査の結果に基づく選挙区間の人口の較差が2倍未満となるようにし、かつ、次回の大規模国勢調査が実施される平成32年(令和2年)の見込人口に基づく選挙区間の人口の較差が2倍未満であることを基本とする とともに、各選挙区の平成27年国勢調査の結果による人口及び平成32年(令和 2年)の見込人口の均衡を図り、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行うこととした。 区画審は、平成29年4月19日、内閣総理大臣に対し、0増6減の措置を講じることを前提に、19都道府県の97選挙区において区割りを改めることを内容とする改定案の勧告を行った。これを受けて、平成29年6月9日、同年法律第58 号(以下「平成29年改正法」という。)が成立し、同法による改正後の平成28年改正法によって区割規定が改定された(以下、同改正後〔令和4年改正法による改正前〕の区割規定を「平成29年区割規定」といい、平成29年区割規定の定める選挙区割りを「平成29年選挙区割り」という。)(乙16の2)キ平成29年9月28日に衆議院が解散され、同年10月22日、平成29年 選挙区割りの下で衆議院議員総選挙(以下「平成29年選挙」という。)が行われた。平成29年選挙当日における選挙区間の選挙人数 成29年9月28日に衆議院が解散され、同年10月22日、平成29年 選挙区割りの下で衆議院議員総選挙(以下「平成29年選挙」という。)が行われた。平成29年選挙当日における選挙区間の選挙人数の較差は、選挙人数の最も少ない選挙区と最も多い選挙区との間で1対1.979であり、選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は存在しなかった。(乙4の4) 最高裁平成30年(行ツ)第153号同年12月19日大法廷判決・民集72巻6号1240頁(以下「平成30年大法廷判決」という。)は、平成29年選挙区割りについて、各都道府県への定数配分を人口に比例した方式の一つであるアダムズ方式により行うことによって選挙区間の投票価値の較差を相当程度縮小させその状態が安定的に持続するよう立法措置を講じた上で、同方式による定数配分がされ るまでの較差是正の措置として0増6減の措置や選挙区割りの改定を行うことにより、選挙区間の選挙人数等の最大較差を縮小させたものであり、投票価値の平等を確保するという要請に応えつつ、選挙制度の安定性を確保する観点から漸進的な是正を図ったものと評価することができるとした。そして、平成30年大法廷判決は、平成29年改正法までの立法措置の内容やその結果縮小した較差の状況を考慮する と、平成29年選挙において、1人別枠方式を含む旧区割基準に基づいて配分され た定数に変更がなく、これとアダムズ方式により各都道府県の定数配分をした場合に配分されることとなる定数を異にする都道府県が存在していることをもって平成29年選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反するということはできず、平成29年選挙当時には新区画審設置法3条1項の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていたということができるか とをもって平成29年選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反するということはできず、平成29年選挙当時には新区画審設置法3条1項の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていたということができるから、平成28年改正法及び平成29年改正法に よる選挙区割りの改定等は、国会の裁量権の行使として合理性を有するというべきであり、平成27年大法廷判決が平成26年選挙当時の選挙区割りについて判示した憲法の投票価値の平等の要求に反する状態は、平成29年改正法による改正後の平成28年改正法によって解消されたものと評価することができるとし、平成29年選挙当時において、平成29年選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反す る状態にあったということはできないと判示した。 ク令和3年10月14日に衆議院が解散され、同月31日、平成29年選挙区割りの下で衆議院議員総選挙(以下「令和3年選挙」という。)が行われた。平成29年選挙区割りの下では、令和2年に行われた大規模国勢調査(以下「令和2年国勢調査」という。)の結果に基づく選挙区間の人口の最大較差は1対2.096 となり、令和3年選挙当日における選挙区間の選挙人数の較差は、選挙人数の最も少ない選挙区と最も多い選挙区との間で1対2.079であり、選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は29選挙区であった。 (乙4の5)最高裁令和4年(行ツ)第130号同5年1月25日大法廷判決・民集77巻1 号1頁(以下「令和5年大法廷判決」という。)は、令和3年選挙は平成29年選挙と同じく平成29年選挙区割りの下で行われたものであり、その後更なる較差是正の措置は講じられず、令和3年選挙当時には選挙区間の較差は平成29年選挙当時よりも拡大していたものの、新区割制度は、選挙区の と同じく平成29年選挙区割りの下で行われたものであり、その後更なる較差是正の措置は講じられず、令和3年選挙当時には選挙区間の較差は平成29年選挙当時よりも拡大していたものの、新区割制度は、選挙区の改定をしてもその後の人口異動により選挙区間の投票価値の較差が拡大し得ることを当然の前提としつつ、選 挙制度の安定性も考慮して、10年ごとに各都道府県への定数配分をアダムズ方式 により行うこと等によってこれを是正することとしているのであり、新区割制度と一体的な関係にある平成29年選挙区割りの下で拡大した較差も、新区割制度の枠組みの中で是正されることが予定されているということができ、同制度には合理性が認められるとした上で、上記のような平成29年選挙区割りの下で較差が拡大したとしても、当該較差が憲法の投票価値の平等の要求と相いれない新たな要因によ るものというべき事情や、較差の拡大の程度が当該制度の合理性を失わせるほど著しいものであるといった事情がない限り、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至ったものということはできないとした。そして、令和5年大法廷判決は、令和3年選挙当時における選挙区間の投票価値の較差は、自然的な人口異動以外の要因によって拡大したものというべき事情はうかがわれないし、その程度も著しいも のとはいえないから、上記の較差の拡大をもって、平成29年選挙区割りが令和3年選挙当時において憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたものということはできないと判示した。 ケ令和3年選挙に先立つ令和3年6月25日に令和2年国勢調査の結果(速報値)が官報で公示されたことを受け、区画審は令和3年7月2日から区割改定案に 係る審議を開始し、所要の調査審議を経た上で、区割改定案(以下「本件区割改定案」 5日に令和2年国勢調査の結果(速報値)が官報で公示されたことを受け、区画審は令和3年7月2日から区割改定案に 係る審議を開始し、所要の調査審議を経た上で、区割改定案(以下「本件区割改定案」という。)を取りまとめ、令和4年6月16日、内閣総理大臣に対して本件区割改定案の勧告(以下「本件勧告」という。)を行った。本件区割改定案は、アダムズ方式を適用して初めて選挙区の区割りの見直しを図ったもので、小選挙区選出議員の定数を5都県で合計10増加させ、10県で合計10減少させる10増10 減の措置をとるとともに、同措置の対象となった都県を含む25都道府県の合計140の選挙区において区割りを改め、令和3年選挙における当日有権者数を基準としても、較差が2倍未満となるように作成されたものであった。(乙26の1及び2、27の1、28の1)本件勧告を受け、本件区割改定案のとおりに小選挙区の区割改定を行うことなど を内容とする令和4年改正法が成立した。本件選挙区割りによれば、令和2年国勢 調査による日本国民の人口を基準とした各都道府県間の議員1人当たりの最大較差は1.697倍となり、選挙区間の選挙人数の最大較差は1.999倍となった。 (乙27の1、28の2) 3 争点及びこれに関する当事者の主張本件の争点は、本件選挙区割りが投票価値の較差において憲法の投票価値の平等 の要求に反する状態に至っていたか、これが肯定される場合に、本件区割規定が憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったといえるか、以上を前提として本件小選挙区選挙を無効とすべきか否かである。これらの争点に関する当事者の主張は以下のとおりである。 ⑴ 原告らの主張 以下のとおり、本件定数配分及び本件区割規定は、合理的な根拠なく選挙権の価 小選挙区選挙を無効とすべきか否かである。これらの争点に関する当事者の主張は以下のとおりである。 ⑴ 原告らの主張 以下のとおり、本件定数配分及び本件区割規定は、合理的な根拠なく選挙権の価値に不平等を生じさせており、この状態は憲法前文、13条、14条1項、15条1項、44条ただし書及び47条に違反し、憲法98条1項及び99条により無効な立法である。したがって、これに基づいて行われた本件小選挙区選挙は無効である。 ア民主主義の要求する配分原則日本国憲法は代表民主制を採用し、公務員の選定罷免権を国民固有の権利とし、普通選挙、平等選挙を保障している。そして、普通選挙制度、平等選挙制度の発展の歴史的経過からすると、選挙権の憲法的保障は、国民の人種、信条、性別、社会的身分、門地、その他具体的能力、資質及び居住地域の差異にかかわらず、形式的 に一人に一票の保障を要請し、かつ、その選挙権の内容においても等価性の保障を要求するものである。国民主権と代表民主制の本来の姿からすれば、このような投票価値の平等は、他に優先する唯一かつ絶対的な基準でなければならない。 上記のような一人一票、一票等価に基づく選挙権の憲法的保障の要請は、国会が選挙区制を有する選挙制度を採用する場合には、各選挙区から選出される議員数の 配分を均等になすべく、人口分布に比例した配分をなすよう国会の立法権限を覊束 する。投票価値の平等が、国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由のために制限されてもやむを得ないといえるか否かは、①区別を設ける必要が真にあるか、つまり立法目的が必要不可欠なものか否か、②仮に理由があるとしても立法目的を達成する手段が是非とも必要な最小限度のものであるか、つまり区別の範囲は必要最低限であるかとい 別を設ける必要が真にあるか、つまり立法目的が必要不可欠なものか否か、②仮に理由があるとしても立法目的を達成する手段が是非とも必要な最小限度のものであるか、つまり区別の範囲は必要最低限であるかという厳格な基準で判断すべきである。 イ本件定数配分は人口分布に比例していないこと(ア) 現行憲法施行後、①昭和22年の衆議院議員選挙法改正における議員総数(定数)の都道府県への配分、②同年の参議院議員選挙法制定における議員総数(定数)の各都道府県への配分、③平成6年の公職選挙法改正における衆議院議員の比例代表選出議員の各比例区への配分、④上記③の改正における衆議院議員の選 挙区選出議員のうち「1人別枠配分」以外の議員の各都道府県への配分、⑤平成12年の公職選挙法改正において衆議院議員の比例代表選出議員を20名減員したことに伴う各比例区への議員(定数)の配分及び⑥平成14年に公職選挙法別表第2で衆議院議員の比例代表選出議員の比例区への配分を「1増1減」したものにおいては、国会議員の総数が国民に平等に配分された。 これらの配分の計算式にはヘア式最大剰余法が採用されていたところ、同方式は民主主義の要求する配分原則に最も適合しているものであり、総務省自治行政局住民制度課が作成した「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(令和6年7月24日公表)のうち同年1月1日現在の各都道府県人口(外国人住民を含む総人口)の資料に基づき小選挙区選出議員定数289人をヘア式最大剰余法により 都道府県に配分する再計算を行うと別紙2「人口比例による定数配分の検証」の「人口比例配分定数(F)」欄のとおりとなる。 (イ) 本件定数配分を上記(ア)の再計算結果と比較すると、別紙2の「過不足(G)」欄記載のとおり、47都道府県のうち人口比 例による定数配分の検証」の「人口比例配分定数(F)」欄のとおりとなる。 (イ) 本件定数配分を上記(ア)の再計算結果と比較すると、別紙2の「過不足(G)」欄記載のとおり、47都道府県のうち人口比例により配分されるべき定数より多い「過剰代表」の状態であるものが9、配分されるべき定数より少ない「代 表の欠缺」状態であるものが8発生している。さらに、人口の多い福岡県よりも人 口の少ない北海道の配分定数が多いという逆転現象も生じている。 このように、本件区割規定は人口分布に比例した定数配分を根拠とせず、憲法が規定する代表民主制(憲法前文、1条、43条1項)及びその基礎となる公正な代表を選出する契機である選挙権の平等の保障(憲法15条1項、14条1項)に反する定数配分を根拠としており、憲法に違反する。 よって、本件区割規定は無効であり、同規定により施行された本件小選挙区選挙は無効である。 ウ 1人別枠制度は残存していること平成23年大法廷判決は、1人別枠方式につき、既に立法時の合理性が失われていたものというべきであると判示し、その趣旨を平成25年大法廷判決及び平成2 7年大法廷判決においても維持している。 国会は、形式上は平成24年改正法により1人別枠方式に係る規定を廃止したが、後記のとおり、アダムズ方式の採用により、本件定数配分及び本件区割規定においても、実質的に1人別枠方式は残存している。 エ国会はあえて投票価値の平等を損なう方法を採用したこと (ア) 新区画審設置法3条2項はアダムズ方式を採用しているところ、同方式によれば、人口を小選挙区基準除数で除して得られた商のうち1未満の余りの部分については、これが1に近いものであっても0に近いものであっても1に切り上げられるから、自動的に本来与え いるところ、同方式によれば、人口を小選挙区基準除数で除して得られた商のうち1未満の余りの部分については、これが1に近いものであっても0に近いものであっても1に切り上げられるから、自動的に本来与えられる定数より1大きい定数が最低限与えられることになり、実質的に1人別枠方式が残っていることとなる。特に、配分定数が少ない、 つまり人口が少ない都道府県ほど余りの切上げによる配分定数1の影響が大きいため、人口の少ない都道府県ほど、配分定数が割合的に多くなるという恩恵が与えられることになる。 実際にも、ヘア式最大剰余法により算出した都道府県定数に基づいた場合、議員1人当たりの人口が最小の島根県と最大の鳥取県の比率は1.6606となる(別 紙2「H1」参照)のに対し、本件選挙の小選挙区選挙における都道府県定数に基 づいた場合は最小の鳥取県と最大の滋賀県の比率は1.7407となっており(別紙2「H2」参照)、アダムズ方式は人口比例配分の実現においてヘア式最大剰余法に比べて劣っている。 (イ) 平成28年改正法は、選挙制度調査会による平成28年答申に依拠するものである。選挙制度調査会においては定数配分に関して諸外国で検討されている9 つの算定方式を数値的に比較した形跡が見られ、そのうちまずラウンズ方式とアダムズ方式を候補として残し、最終的にアダムズ方式を採用しているところ、上記2方式による試算では定数配分1の都道府県が発生しないのに対し、他の7方式による試算では定数配分1の都道府県が発生する点において決定的に異なっている。また、定数配分がどの程度人口に比例しているかを見るLH指標(ルーズモア・ハン ビー指標。指標の値は0から100の範囲をとり、0に近いほど配分された定数と人口とのかい離が少ない。)においても、令和 、定数配分がどの程度人口に比例しているかを見るLH指標(ルーズモア・ハン ビー指標。指標の値は0から100の範囲をとり、0に近いほど配分された定数と人口とのかい離が少ない。)においても、令和2年推計人口試算で、アダムズ方式は9方式中最も高く、ラウンズ方式と並んで配分された定数と人口とのかい離が大きい。これらの事情に加え、選挙制度調査会において委員から「ラウンズ方式やアダムズ方式採用の議論は、定数1の団体をつくらないというだけでなく、なるべく 少数県に有利な傾向を持つ方式を採用しようとするものだ。『少数県になるべく有利に』とはいえないので、『定数1の県をなるべくつくらない』となるのではないか。」との発言があり、議論全体を通じて定数1の県を作らないことについて否定的な方針は特に示されなかったことなども踏まえれば、国会は平成28年改正法制定において、人口比例配分による選挙よりも、定数配分1の都道府県を回避するこ とを優先したものというべきであり、このような改正の経緯に合理性はない。以上によれば、平成28年改正法に係る制度自体にも、これを本件選挙までに改正しなかったことにも、合理的理由は存在しない。 オ国会に自浄作用はないこと令和4年改正法制定に際して、衆議院特別委員会において、同法施行後も議員定 数や地域の実情を反映した選挙区割りの在り方等に関し抜本的な検討を行うものと し、当該検討に当たっては速やかに与野党で協議の場を設置するなどとの附帯決議がされたが、その後に与野党が国会外において協議会を設け、選挙制度改革に向け報告書を作成したものの、国会内に正式な協議会、特別委員会等の機関は設置されておらず、国会は選挙制度改革について抜本的な検討や努力をしていない。 カ合理的期間は問題にすべきでないこと 改革に向け報告書を作成したものの、国会内に正式な協議会、特別委員会等の機関は設置されておらず、国会は選挙制度改革について抜本的な検討や努力をしていない。 カ合理的期間は問題にすべきでないこと 以上のとおり憲法の投票価値の平等の要求に反する状態で施行された本件小選挙区選挙は違憲無効である。このような民主主義の根幹である選挙の有効性の判断について、別途、合理的期間論等で国会に裁量権を与えるべきではない。 キ 「選挙区間の投票価値の較差は、自然的な人口異動以外の要因によって拡大したものというべき事情」があること アダムズ方式は都道府県ごとの議員1人当たりの人口較差を招いており、通常の人口異動があっても、ヘア式最大剰余法などの他の方式よりも人口較差が拡大する要素が組み込まれている。このため、本件選挙の小選挙区選挙における較差拡大は、人口異動によるもの以外、すなわち本件区割規定そのものが要因となっている。 ク選挙無効判決による不都合は生じないこと 衆議院が構成されていない場合は憲法54条2項ただし書により参議院の緊急集会によって人口比例配分による公職選挙法改正を含む法律制定等国会の行為を実施することが憲法上予定されている。また、憲法に適合した改正公職選挙法に基づく総選挙とその後の国会召集、内閣総理大臣の指名・任命までは従前の内閣がその職務を執行するため、内閣の助言と承認による憲法に適合した総選挙の公示、施行も 可能である。さらに、本件選挙を即時無効とするだけでなく、憲法に適合する区割規定を策定するに必要な期間、当該判決の効力を停止する将来効判決により予想される不都合を回避することも可能である。 なお、令和3年選挙は、衆議院議員の任期が満了する予定であった令和3年10月21日よりも後に実施されたものであり、衆 決の効力を停止する将来効判決により予想される不都合を回避することも可能である。 なお、令和3年選挙は、衆議院議員の任期が満了する予定であった令和3年10月21日よりも後に実施されたものであり、衆議院解散の有無にかかわらず、公職 選挙法も任期満了後の選挙実施を想定している。このように、衆議院議員が一時的 に存在しない状態は憲法も各法令も想定しており、選挙無効判決による不都合は国政上生じない。 ⑵ 被告の主張ア衆議院議員総選挙に関する選挙無効訴訟における区割規定及びそれに基づく選挙区割りの合憲性の判断枠組みについて 憲法は、投票価値の平等を要求しているが、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する唯一、絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものである。 そのため、国会において小選挙区制度における具体的な選挙区割りや、その前提となる区割規定を定めるに当たっては、投票価値の平等を最も重要かつ基本的な基 準としつつも、較差という客観的かつ形式的な数値だけでなく、当該較差の数値の背後にある選挙制度の仕組みや、当該較差を生じさせる要因等も含めて種々の政策的考慮要素を総合的に考慮した上で、国政遂行のための民意の的確な反映の実現と投票価値の平等の要請との調和を図ることが求められるが、選挙制度の仕組みの決定については国会の広範な裁量に委ねられていることから、これらの調和が保たれ る限り、当該選挙制度の仕組みを決定したことが、国会の合理的な裁量の範囲を超えるということにはならないというべきである。 したがって、選挙制度の憲法適合性は、以上のような国会に与えられた裁量権の行使として合理性を有するといえるか否かによって判断されることにな 量の範囲を超えるということにはならないというべきである。 したがって、選挙制度の憲法適合性は、以上のような国会に与えられた裁量権の行使として合理性を有するといえるか否かによって判断されることになる。すなわち、国会が選挙制度の仕組みについて具体的に定めたところが、憲法の投票価値の 平等の要求に反するため、国会に認められる裁量権を考慮してもなおその限界を超えており、これを是認することができない場合に初めてこれが憲法に違反することになると解すべきである。 イ本件選挙時において、本件区割規定の定める本件選挙区割りは、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていないこと 上記アの判断枠組みの下で、本件区割規定の定める本件選挙区割りが違憲状態に 至っているかについて見ると、新区割制度は、投票価値の平等の要請を、国会が正当に考慮することができる他の政策目的ないし理由との関連において調和的に実現させるとともに、これを安定的に継続させることのできるものであるから、合理的なものであるということができる。また、新区割制度の整備は、平成23年から平成27年までの各大法廷判決が国会に対して求めてきた立法措置の内容に適合する ものであって、新区割制度が合理性を有することは、平成30年大法廷判決及び令和5年大法廷判決も肯定しているところである。 このように合理性の認められる新区割制度により改定された選挙区割りについては、原則として憲法の投票価値の平等の要求に反するものとはいえず、選挙区間の較差が憲法の投票価値の平等の要求と相いれない新たな要因によるものというべき 事情や、較差の拡大の程度が当該制度の合理性を失わせるほど著しいものであるといった事情があるときに初めて憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至ったものと い新たな要因によるものというべき 事情や、較差の拡大の程度が当該制度の合理性を失わせるほど著しいものであるといった事情があるときに初めて憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至ったものというべきである。 しかし、新区割制度により改定された本件選挙区割りについて、上記のような事情があるということはできない。 したがって、本件区割規定の定める本件選挙区割りが、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたということはできない。 ウ仮に違憲状態にあったとの評価をするとしても、憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえないこと令和5年大法廷判決は、令和3年選挙当時の選挙区割りについて憲法の投票価値 の平等の要求に反する状態にあったとはいえない旨判断している。本件選挙は、令和5年大法廷判決後に初めて行われた衆議院議員総選挙であり、令和3年選挙施行後には、較差の是正のために令和4年改正が実施されていることも考慮すれば、仮に何らかの理由により本件区割規定の定める本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていると判断されるとしても、国会において、そのこ とを認識すべき契機が存在したとはいえず、その状態を認識し得ない状況であった ことは明らかである。 したがって、仮に本件選挙区割りが違憲状態に至っていたとしても、国会が、憲法上要求される合理的期間にその是正をしなかったということはできない。 第3 当裁判所の判断 1 憲法は、選挙権の内容の平等、換言すれば投票価値の平等を要求しているも のと解される。他方、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現さ 等を要求しているも のと解される。他方、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであるところ、国会の両議院の議員の選挙については、憲法上、議員の定数、選挙区、投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとされ(43条2項、47条)、選挙制度の仕組みの決定につ いて国会に広範な裁量が認められている。 衆議院議員の選挙につき全国を多数の選挙区に分けて実施する制度が採用される場合には、選挙制度の仕組みのうち定数配分及び選挙区割りを決定するに際して、憲法上、議員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平等に保たれることを最も重要かつ基本的な基準とすることが求められているというべきであるが、それ 以外の要素も合理性を有する限り国会において考慮することが許容されているものと解されるのであって、具体的な選挙区を定めるに当たっては、都道府県を細分化した市町村その他の行政区画などを基本的な単位として、地域の面積、人口密度、住民構成、交通事情、地理的状況などの諸要素を考慮しつつ、国政遂行のための民意の的確な反映を実現するとともに、投票価値の平等を確保するという要請との調 和を図ることが求められているところである。したがって、このような選挙制度の合憲性は、これらの諸事情を総合的に考慮した上でなお、国会に与えられた裁量権の行使として合理性を有するといえるか否かによって判断されることになり、国会がこのような選挙制度の仕組みについて具体的に定めたところが、上記のような憲法上の要請に反するため、上記の裁量権を考慮してもなおその限界を超えており、 これを是認することができない場合に、初めてこれが憲法に違反 度の仕組みについて具体的に定めたところが、上記のような憲法上の要請に反するため、上記の裁量権を考慮してもなおその限界を超えており、 これを是認することができない場合に、初めてこれが憲法に違反することになるも のと解すべきである(最高裁昭和49年(行ツ)第75号同51年4月14日大法廷判決・民集30巻3号223頁、最高裁昭和56年(行ツ)第57号同58年11月7日大法廷判決・民集37巻9号1243頁、最高裁昭和59年(行ツ)第339号同60年7月17日大法廷判決・民集39巻5号1100頁、最高裁平成3年(行ツ)第111号同5年1月20日大法廷判決・民集47巻1号67頁、最高 裁平成11年(行ツ)第7号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1441頁、最高裁平成11年(行ツ)第35号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1704頁、最高裁平成18年(行ツ)第176号同19年6月13日大法廷判決・民集61巻4号1617頁、平成23年大法廷判決、平成25年大法廷判決、平成27年大法廷判決、平成30年大法廷判決及び令和5年大法廷判決参照)。 上記と異なり、原告らは、投票価値の平等は他に優先する唯一かつ絶対的な基準である旨を主張するが、以上に説示した憲法の諸規定及び上記各大法廷判決に照らし、同主張は採用することができない。 また、原告らは、定数配分や選挙区割りの決定に際し、投票価値の平等の他に国会が正当に考慮することができる政策目的等があったしても、当該政策目的等を考 慮した立法の立法目的が必要不可欠なものであり、かつ、当該立法目的を達成する手段として必要最小限度のものでない限りは、当該立法は違憲と判断されるべきであるとの趣旨の主張もするが、投票価値の平等を最も重要かつ基本的な基準とした上でその のであり、かつ、当該立法目的を達成する手段として必要最小限度のものでない限りは、当該立法は違憲と判断されるべきであるとの趣旨の主張もするが、投票価値の平等を最も重要かつ基本的な基準とした上でその他に考慮すべき政策目的の内容やこれを達成するための手段の相当性につき判断するに際しても、選挙制度の仕組みの決定について国会に広範な裁量を認め た上記憲法の諸規定の趣旨は及ぶものというべきであるから、同趣旨に反して国会の裁量権を厳しく制限することとなる同主張は採用できない。 2 上記1で述べた見地から、本件選挙当時の本件区割規定及びこれに基づく本件選挙区割りの合憲性につき検討する。 ⑴ 選挙制度調査会において平成28年答申の提出に当たり行われた調査審議に おいては、新たな議席配分ルールの基本原則として、都道府県を配分単位とするこ と、都道府県への配分は比例性のある配分方式に基づくこと、配分の見直しは10年ごとの大規模国勢調査によること、配分は有権者数ではなく人口を基準とすることとした上で、満たすべき条件として、比例性のある配分方式に基づいて都道府県に配分すること、選挙区間の一票の較差を小さくするために都道府県間の一票の較差をできるだけ小さくすること、都道府県に配分される議席数の増減変動が小さい こと、一定程度将来にわたっても有効に機能し得る方式であることを確認し、上記条件に照らして検討対象となった9方式についての試算を踏まえ、基数方式であるラウンズ方式と除数方式であるアダムズ方式が望ましい方式であるとした上で、基数方式に共通する説明困難な逆転現象発生の可能性や平成22年国勢調査の結果による人口においてアダムズ方式が都道府県間の議員1人当たりの人口の最大較差を 最も縮小させるとの試算結果等を総合的に考慮し、最終 通する説明困難な逆転現象発生の可能性や平成22年国勢調査の結果による人口においてアダムズ方式が都道府県間の議員1人当たりの人口の最大較差を 最も縮小させるとの試算結果等を総合的に考慮し、最終的にアダムズ方式が望ましいとの結論が示されている(乙11の2、13)。上記調査審議において基本原則及び満たすべき条件とされたところは、いずれも投票価値の平等又は国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由と合理的な関連性を有するものであるといえる。そうすると、これらの事情を総合的に考慮して提出された平成28 年答申に基づいて、平成28年改正法がアダムズ方式を採用したことには、十分な合理性があったものというべきである。 原告らは、アダムズ方式の採用は、平成23年大法廷判決において既に立法時の合理性が失われたとされた1人別枠方式を実質的に残存させるものである旨主張する。しかしながら、アダムズ方式は、人口数とは無関係に各都道府県にあらかじめ 定数1を配分する1人別枠方式とは、配分方法の枠組み及び較差抑制の効果の点において異なるものというべきであり、アダムズ方式が端数処理の方法として小数点以下を切り上げる方式を採用した結果、定数1人の都道府県が生じないとの限りにおいて1人別枠方式を前提とした定数配分と同様の結果を生じることとなったとしても、そのことをもって、アダムズ方式の採用が平成23年大法廷判決の趣旨に反 するものということはできない。 また、原告らは、民主主義の要求する人口に比例した配分原則に最も適合するのはヘア式最大剰余法であることを前提として、同方式に基づく算定結果とのかい離を生じるアダムズ方式は定数配分の方式として劣っている旨を主張する。しかしながら、上記のとおり選挙制度調査会においてはヘア はヘア式最大剰余法であることを前提として、同方式に基づく算定結果とのかい離を生じるアダムズ方式は定数配分の方式として劣っている旨を主張する。しかしながら、上記のとおり選挙制度調査会においてはヘア式最大剰余法を含む9方式に基づく試算等を経て、総合的な考慮の結果としてアダムズ方式を採用したものであり、 本件選挙施行前の特定の時点における最大較差の比較結果や、過去の議員定数配分においてヘア式最大剰余法が採用されていたとの事情を踏まえても、人口に比例した配分の実現のための方式としてアダムズ方式がヘア式最大剰余法よりも劣るものということはできない。 原告らは、アダムス方式は選挙制度調査会において検討対象となった9方式の中 でLH指標が最も高くなること、同調査会における検討の過程において、委員から「定数1人の県をなるべくつくらない」との発言があったことなどからすれば、平成28年改正法は定数1人の都道府県が生じることを回避して人口の少ない地域の議席を温存するなどの動機に基づきアダムズ方式を採用したものであるとも主張する。しかしながら、選挙制度調査会においては、検討対象となった9方式につき将 来の推計人口等も踏まえた議席配分試算等を行った上で、基本原則及び満たすべき条件に照らして検討した結果として最終的にアダムズ方式を採用するとの平成28年答申が作成されているのであって(乙13)、その検討過程において上記のような発言があったこと(甲2、乙10の5)や、特定の指標において定数と人口のかい離が最大となるという結果をもって、平成28年改正法が原告らの主張するよう な動機に基づいてアダムズ方式を採用したものと認めることはできない。他に原告らの主張を裏付ける事情は認められない。 以上によれば、原告らの主張する諸点を踏まえても、平成28 らの主張するよう な動機に基づいてアダムズ方式を採用したものと認めることはできない。他に原告らの主張を裏付ける事情は認められない。 以上によれば、原告らの主張する諸点を踏まえても、平成28年改正法がアダムズ方式を採用したことに十分な合理性があったとの判断が左右されることはない。 ⑵ 新区割制度においては、区画審による改定案の作成に際しては選挙区間の最 大較差が2倍以上とならないようにすることとしている。都道府県別の議席配分段 階において投票価値の較差を1に近づけようとするためには小選挙区選出議員の定数を相当程度増加させなければならないとの制約及び、都道府県内における個々の選挙区割りについては単一の市区町村が複数の選挙区に分割されることによる弊害を考慮する必要性があることなどの事情を踏まえれば、新区割制度が改定案の作成に際しての選挙区間の最大較差につき上記のとおり定めていることについては十分 な合理性があると認められる。 また、区画審による改定案の勧告は10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に行うものとしつつ、大規模国勢調査が行われた年から5年目に当たる年に行われる簡易国勢調査の結果による各選挙区の日本国民の人口を基準とした選挙区間の最大較差が2倍以上となったと きは、同結果が最初に官報で公示された日から1年以内に同勧告を行うものとしている(新区画審設置法4条1項・2項)。投票価値の平等を実現するための選挙区割りについては確度の高い国勢調査の結果に基づいて行う必要があることからすれば、改定案作成の時期に関する上記の定めは十分に合理的なものであり、選挙制度の安定にも資するものと認められる。 ⑶ 以上によれば、新区割制度におけるアダムズ方式の採 う必要があることからすれば、改定案作成の時期に関する上記の定めは十分に合理的なものであり、選挙制度の安定にも資するものと認められる。 ⑶ 以上によれば、新区割制度におけるアダムズ方式の採用、最大較差及び改定案作成の時期に関する定めは、いずれも十分な合理性があるものである。 3⑴ 上記2⑵で説示したところを踏まえれば、新区割制度は選挙区割り後の人口異動等により選挙区間の投票価値の較差が拡大し得ることを想定しており、そのような場合には新区画審設置法4条1項・2項所定の時期に区画審による改定案の 勧告が行われることによって同較差を是正する枠組みがとられている。このような新区割制度は、アダムズ方式に基づく各都道府県への定数配分により選挙区間の投票価値の較差を相当程度縮小させた上で、その状態を安定的に持続させるための立法措置として、合理的なものであるということができる。そうすると、本件選挙区割りを前提とする選挙区間の選挙人数の最大較差が、令和2年国勢調査時点では、 1.999倍であったものの(前提事実⑷ケ)、本件選挙日時点においては2.0 59倍(前提事実⑵エ)にまで拡大していたとしても、当該較差が憲法の投票価値の平等の要求と相いれない新たな要因によるものというべき事情や、較差の拡大の程度が当該制度の合理性を失わせるほど著しいものであるといった事情がない限り、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至ったものということはできないというべきである。 ⑵ 上記2⑴において説示したところによれば、新区割基準において採用されたアダムズ方式自体が都道府県間の較差拡大を招来する要因となったものとは認められず、上記⑴の較差拡大が自然的な人口異動によるもの以外の要因によるものであったというべき事情はうかがわれない。 採用されたアダムズ方式自体が都道府県間の較差拡大を招来する要因となったものとは認められず、上記⑴の較差拡大が自然的な人口異動によるもの以外の要因によるものであったというべき事情はうかがわれない。 また、本件選挙当日における選挙区間の最大較差及び較差が2倍以上となってい る選挙区数(前提事実⑵エ)は、令和3年選挙当日におけるそれ(前提事実⑷ク)をいずれも下回っており、較差の拡大の程度が当該制度の合理性を失わせるほど著しいものとは認められない。なお、原告らは、令和6年1月1日時点での人口を前提とすると人口の多い福岡県よりも人口の少ない北海道の配分定数が多いという逆転現象が生じている旨も主張するが、令和2年国勢調査における日本国民の人口及 び本件選挙当日における選挙人数においてはいずれも北海道が福岡県を上回っていること(乙3、28の2)に照らせば、原告らの主張する上記事実をもってしても、上記認定判断が左右されることはない。 ⑶ 以上によれば、本件選挙当時において、本件区割規定の定める本件選挙区割りは、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできず、本 件区割規定が原告らの主張する憲法の諸規定に違反するものということはできない。 第4 結論以上の次第で、本件小選挙区選挙を無効とすることを求める原告らの請求はその余の点につき判断するまでもなく理由がない。よって、これらをいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 広島高等裁判所第3部 裁判長裁判官倉地真寿美 裁判官阿保賢祐 裁判官岸田二郎 別紙1当事者目録省略 地真寿美 裁判官 阿保賢祐 裁判官 岸田二郎 別紙1 当事者目録省略

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