令和4(行ケ)10120 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年4月25日 知的財産高等裁判所 4部 判決 請求棄却
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令和5年4月25日判決言渡 令和4年(行ケ)第10120号審決取消請求事件 口頭弁論終結日令和5年3月7日判決 原告タートオプティカルエンタープライゼズエルエルシー 同訴訟代理人弁護士深井俊至 被告株式会社TheLIGHT 同訴訟代理人弁護士三浦修 同訴訟代理人弁理士小菅一弘 同林栄二 同篠田貴子 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 事実 及び理由 第1 請求特許庁が無効2021-890057号事件について令和4年7月25日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない) 被告は、以下の商標(登録第5894128号。以下「本件商標」という。)の商標権者である。 商標 JULIUSTARTOPTICAL(標準文字) 登録出願日平成28年5月9日 登録査定日平成28年10月24日 設定登録日平成28年11月4日 指定商品第9類「サングラス、眼鏡、眼鏡の部品及び附属品」 原告は、以下の 5月9日登録査定日平成28年10月24日設定登録日平成28年11月4日指定商品第9類「サングラス、眼鏡、眼鏡の部品及び附属品」 原告は、以下の商標(登録第5427549号。以下「引用商標」という。) の商標権者である。 商標 TART(標準文字)登録出願日平成23年1月18日設定登録日平成23年7月22日指定商品第9類「眼鏡、眼鏡の部品及び附属品」 原告は、令和3年11月4日、本件商標について、商標登録無効審判(以下「本件審判」という。)を請求した。 特許庁は、上記請求を無効2021-890057号事件として審理を行い、令和4年7月25日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし(出訴期間90日附加)、その謄本は、同年8 月4日、原告に送達された。 原告は、令和4年12月1日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 2 本件審決の要旨本件審決の要旨は、本件商標は、以下のとおり、商標法4条1項11号、1 5号に該当するものではなく、同項の規定に違反して登録されたものではない から、同法46条1項により無効とすることができないというものである。 商標法4条1項11号該当性についてア本件商標本件商標は、「JULIUSTARTOPTICAL」の欧文字を標準文字で表してなるところ、これらの構成文字全体としては辞書等に載録 されている語ではなく、また、特定の意味合いを有するものとして認識されているような事情も見いだせないものであるから、一種の造語として認識されるものである。そうすると、本 体としては辞書等に載録 されている語ではなく、また、特定の意味合いを有するものとして認識されているような事情も見いだせないものであるから、一種の造語として認識されるものである。そうすると、本件商標は、その構成文字に相応し、「ジュリアスタートオプティカル」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。 請求人(原告)は、本件商標は「TART」の部分が要部である旨主張するが、本件商標は、その構成中にスペースがあることから、「JULIUS」、「TART」及び「OPTICAL」の文字(語)を結合してなるものであり、「OPTICAL」の文字が本件商標の指定商品との関係で識別力が弱いといい得るとしても、引用商標が請求人又は請求人等の業務に係 る商品を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されているものと認められないこと、「JULIUS」の文字が識別力が弱いというべき事情を見いだせないこと、本件商標の構成文字は同書同大でまとまりよく一体的に表されていること、「ジュリアスタートオプティカル」の称呼はやや冗長ではあるものの無理なく一連に称呼し得るものであることから すると、本件商標は、取引者及び需要者をして、その構成文字全体をもって一体不可分のものとして認識し、把握されるものとみるのが相当であり、他に、本件商標の構成中「TART」の文字部分を分離抽出し、他の商標と比較検討すべき事情は見いだせない。したがって、請求人の主張は採用することができない。 イ引用商標 引用商標は、「TART」の欧文字を標準文字で表してなり、当該文字に相応し「タート」の称呼を生じ、観念において、当該文字(語)は、「すっぱい、タルト(果物、ジャム等の甘いものが入った丸いパイ)」等の意味を は、「TART」の欧文字を標準文字で表してなり、当該文字に相応し「タート」の称呼を生じ、観念において、当該文字(語)は、「すっぱい、タルト(果物、ジャム等の甘いものが入った丸いパイ)」等の意味を有する英単語であるが、我が国で親しまれた語とはいえないから、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。 ウ本件商標と引用商標の類否本件商標と引用商標は、外観において構成文字、構成文字数が明らかに異なり、相紛れるおそれがないものである。また、本件商標と引用商標は、称呼において構成音、構成音数が明らかに異なり、相紛れるおそれのないものである。そして、観念において、両商標は共に特定の観念を生じない ものであるから、比較することができない。 そうすると、本件商標と引用商標は、外観、称呼において相紛れるおそれがなく、観念において比較することができないものであるから、両者の外観、称呼、観念等によって取引者及び需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れることのない非類似の商 標であって、別異の商標であるというべきものである。 エ小括以上によれば、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、両商標の指定商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法4条1項11号に該当するものではない。 商標法4条1項15号該当性について引用商標は、請求人(原告)又は請求人等の業務に係る商品を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、また、前記のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であって別異の商標であるから、類似性の程度は低いものである。 そうすると、本件商標は、商標 ているものと認められないものであり、また、前記のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であって別異の商標であるから、類似性の程度は低いものである。 そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品に使用したとし ても、取引者及び需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(請求人又は請求人等)又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものとはいえない。 したがって、本件商標は、商標法4条1項15号に該当するものとはいえ ない。 3 取消事由本件審決の取消事由は、①商標法4条1項11号該当性の判断の誤り、②商標法4条1項15号該当性の判断の誤りである。 第3 当事者の主張 1 取消事由1(商標法4条1項11号該当性の判断の誤り)について 原告の主張ア引用商標の周知性について 【A】(【A】。以下「【A】氏」という。)は、眼鏡フレームの伝説的職人であり、1948年にアメリカ合衆国ニューヨーク州にTartO pticalEnterprises,Inc.(以下「原タート社」という。)を設立した。原タート社及び【A】氏の「TART」ブランドの眼鏡フレーム及びその眼鏡フレームを利用した眼鏡は、眼鏡関係の商品の分野において優れたデザインを有し、高品質で価値が高いビンテージ商品として、日本を含めて世界的に需要者間で知られており、憧れの 商品である。 原告は、原タート社の眼鏡フレーム事業(「TART」ブランドを含む。)を承継した。原告は、米国において、眼鏡類、眼鏡フレーム等を指定商品とする「TAR 商品である。 原告は、原タート社の眼鏡フレーム事業(「TART」ブランドを含む。)を承継した。原告は、米国において、眼鏡類、眼鏡フレーム等を指定商品とする「TART」に係る米国商標、眼鏡類、眼鏡フレーム等を指定商品とする「TARTOPTICALENTERPRISES」に 係る米国商標を、それぞれ保有しており、使用主義の米国において19 48年12月31日を最初の商業使用日として登録されていることから、原タート社に係る商標の権利について原告が承継したことは、原タート社の母国である米国でも認められている。 なお、被告は、原タート社又は【A】氏のブランド(「TART」を含む。)に係る権利や眼鏡フレーム事業を承継していないにもかかわらず、 製造及び販売する眼鏡商品(以下「被告商品」という。)に「TART」の名称を使用し、自らを「JULIUSTARTOPTICAL」と称してウェブページ上で【A】氏及び原タート社を承継したかのような説明をし、原タート社が存したニューヨーク州で被告商品が製造されたかのような虚偽の表示をして需要者を誤認させている。 原告は、日本を含む世界において、「TART」ブランドの眼鏡フレームを製造し、販売してきた(以下、原告が製造及び販売する眼鏡フレームを「原告商品」という。)。なお、原告は、2017年に権利保有会社となり、原タート社と同じ名称のTartOpticalEnterprises,Inc.を事業会社(以下「原告事業会社」といい、 原告及び原告事業会社を「原告ら」という。)として、「TART」ブランドの眼鏡関係商品の製造及び販売をしている。 原告らの「TART」ブランドの眼鏡フレーム及び眼鏡は、優れたデザイン性、 原告及び原告事業会社を「原告ら」という。)として、「TART」ブランドの眼鏡関係商品の製造及び販売をしている。 原告らの「TART」ブランドの眼鏡フレーム及び眼鏡は、優れたデザイン性、高品質で価値が高いビンテージ商品としての原タート社の商品性を継承するため、米国及びイタリアで手作りされており、こうした ビンテージ商品の知名度は、単に販売数量や眼鏡分野におけるシェアという基準で評価されるべきものではない。 原タート社及び原告らの「TART」の眼鏡フレームを使用した眼鏡は、【B】、【C】、【D】、【E】、【F】等の、日本を含め世界的に知られた映画スターやエンターテイナーに使用された。また、原告らの「TAR T」ブランドの眼鏡フレーム及びその眼鏡は、日本の雑誌にも度々紹介 されているほか、「歴史にこだわる」眼鏡フレームとして、メガネ3選のうちの一つに選ばれている。需要者のツイートをみると、映画スター等の著名人に愛用された原告らの「TART」ブランドの眼鏡フレーム及びその眼鏡は、需要者の羨望の的になっていたことがうかがわれるところである。 このように、原告らの「TART」ブランドは、日本を含めて世界的に知られたブランドである。 イ本件商標の要部について本件商標は、「JULIUSTARTOPTICAL」の欧文字を標準文字で表してなるものであり、「JULIUS」と「TART」の間、「T ART」と「OPTICAL」の間には、それぞれ1文字分の空白が置かれており、「JULIUS」と「TART」の部分、「TART」と「OPTICAL」の部分は、分離して観察することができる。 そして、「OPTICAL」は、「目の」、「視力の」、「視力を助ける ており、「JULIUS」と「TART」の部分、「TART」と「OPTICAL」の部分は、分離して観察することができる。 そして、「OPTICAL」は、「目の」、「視力の」、「視力を助ける」、「光学(上)の」等の意味を有する英語であり、本件商標の指定商品との関係 において商品の種類、用途又は機能を示すものにすぎないから、識別力がないか、少なくとも識別力が弱い。 また、本件商標の「JULIUSTART」の部分は、【A】氏の氏名であり、前記アのとおり、本件商標の指定商品の分野では、【A】氏を想起させるものである。そして、「JULIUS」が【A】氏のファーストネー ム、「TART」が【A】氏のラストネームであるところ、人を呼ぶときそのラストネームで呼ぶことが多いことに加え、「JULIUS」は、欧米系の人のファーストネームとして特別なものではなく、一般の男性のファーストネームであり、ファーストネームの部分はさほど注意が惹かれるものではないから、「JULIUSTART」との表記は、「TART」の部 分が要部であるといえる。 なお、被告は、「JULIUSTARTOPTICAL」の中の「TART」の部分を強調して被告商品の広告及び宣伝をしており、このことは本件商標中「TART」が主要部分であることを示すものである。 ウ本件商標と引用商標の類否について前記イのとおり、本件商標は「TART」が要部であるから、引用商標 の「TART」と外観及び称呼が共通する。 また、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品は同一又は類似する。 エ小括以上によれば、本件商標は、引用商標と類似する商標であって、引用商標と同一又は類似する指定商品に使用す また、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品は同一又は類似する。 エ小括以上によれば、本件商標は、引用商標と類似する商標であって、引用商標と同一又は類似する指定商品に使用するものであるから、商標法4条1 項11号に該当するものである。 被告の主張ア引用商標の周知性について原告が引用商標の周知性立証のために提出する証拠(甲38ないし46)によれば、2009年頃から2017年頃までの間、日本在住の個 人や眼鏡販売店等が原告から商品を輸入していたことは認められるものの、その数量はわずか数百本程度である。 原告は、ウェブサイトの写し(甲10、13ないし19)、フェイスブックの写し(甲12)を証拠として提出するが、全て英語で表示され、又は投稿されているものであり、また、原告が提出するオンラインショ ッピングサイトの写し(甲11)、眼鏡販売店等のウェブサイトやブログ(甲32ないし37、75ないし88)、ツイッターにおける不特定の者によるツイート(甲89、90)については、これらに表示されている眼鏡の写真や「TARTの眼鏡」なるものが原告の製造及び販売に係る商品であることを確認することができる証左はない。加えて、原告が提 出する雑誌等(甲26ないし31)は、眼鏡の紹介、眼鏡に関する記事 (漫画)が掲載されているが、これらで紹介されている眼鏡等についても、原告の製造及び販売に係る商品であることを確認することができる証左はない。 なお、原告は、商品箱の写真(甲20)、商品箱・保護ケースの写真(甲21、22)、米国特許商標庁のデータベースの写し(甲23)、プロパ ティ画面(甲24、25)を証拠として提出するが、これらは、商標「TART」の米国での使用を示すものであると ケースの写真(甲21、22)、米国特許商標庁のデータベースの写し(甲23)、プロパ ティ画面(甲24、25)を証拠として提出するが、これらは、商標「TART」の米国での使用を示すものであるとしても、我が国における引用商標に関するものではないことはもとより、本件商標の出願時及び登録査定時に引用商標が原告の業務に係る商品を表すものとして、取引者及び需要者の間で広く認識されていたことを立証するものではない。 このように、原告が我が国における原告商品の販売数、売上高、宣伝広告物(販促物)、宣伝広告費等を一切明らかにしていない以上、引用商標が本件商標の出願時及び登録査定時において原告の業務に係る商品を表すものとして、取引者及び需要者の間に広く認識されていたものとはいえない。 なお、原告は、【A】氏及び原タート社の眼鏡フレーム事業(「TART」ブランドを含む。)を承継した旨主張するが、原告は、【A】氏の正当な承継者ではなく、米国において原タート社の保有する登録商標「TART」が更新されなかったことを奇貨として米国で「TART」を登録し、あたかも原タート社の承継者であるかのごとく「TART」の名 の下に眼鏡関連商品を販売しているにすぎない。被告は、【A】氏の唯一の生存する遺族である甥の【G】氏との間で、同氏が、その保有する眼鏡のデザイン等を被告に提供すること、被告の商品に係るデザイン、製造、マーケティングへの協力、ブランドアンバサダーを務めることを約し、被告が同氏に相応の対価を支払うことを約して、本件商標を登録し、 我が国において「JULIUSTARTOPTICAL」のブラン ドに係る眼鏡フレーム等の販売事業を行っている。 イ本件商標の要部について複数の構成部分 、 我が国において「JULIUSTARTOPTICAL」のブラン ドに係る眼鏡フレーム等の販売事業を行っている。 イ本件商標の要部について複数の構成部分を組みわせた結合商標と解されるものについて、商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものを類否判断することは、その部分が取引者及び需要者に対し、商品又 は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念を生じないと認められる場合等を除き、許されないものというべきところ、本件商標は、外観上、「JULIUSTARTOPTICAL」の欧文字を横書きしてなるところ、構成文字は、全て同じ書体、同じ大きさで外観上ま とまりよく一体的に表示されており、しかも、称呼においても、本件商標の全体より自然に生じる「ジュリアスタートオプティカル」の称呼は語呂が良く、一気一連に淀みなく発音されるものであり、観念においても、その構成中の「JULIUSTART」の部分が【A】氏の氏名であることからすると、本件商標は、全体が一体的な商標としてのみ認識されるの が普通であり、少なくとも、取引者及び需要者が、ことさら中間に位置し17文字中4文字にすぎない「TART」の文字部分だけに出所識別標識として強く支配的な印象を受けるものとはいえない。 また、「TART」は、「タルト(果物入りの小型で薄いパイの一種)」を意味する語として知られており、「JULIUSTART」が【A】氏の 氏名であることを踏まえると、取引者及び需要者が「TART」の文字部分だけに着目して商品又は役務の出所を識別するとは考え難いし、前記アのとおり、引用商標は、本件商 START」が【A】氏の 氏名であることを踏まえると、取引者及び需要者が「TART」の文字部分だけに着目して商品又は役務の出所を識別するとは考え難いし、前記アのとおり、引用商標は、本件商標の出願時及び登録査定時において原告の業務に係る商品を表すものとして需要者の間に広く認識されていたものではないから、「TART」の文字部分のみを抽出し、引用商標と比較して 商標の類否判断をすることは許されない。 のみならず、「JULIUS」の文字が自他商品を識別する機能を果たし得るものであることは、本件商標の登録査定時の前後において「JULIUS」の文字からなる商標が登録されていることから明らかであるし、「OPTICAL」の文字は、「眼鏡」を表すものとして一般に用いられている言葉ではないから、本件商標の指定商品との関係において一般的、普遍的 な文字であるとはいえない。 したがって、本件商標は、全体をもって一体不可分の商標として認識されるものであり、少なくとも「TART」の文字部分に出所識別標識として強く支配的な印象を受けるとはいえない。 ウ本件商標と引用商標の類否について 前記イのとおり、本件商標は、全体が一体的な商標であるから、「TART」の文字からなる引用商標とは、外観において、構成文字及び構成文字数の差異により、両者は一見して判然と区別することができ、相紛れるおそれはない。また、称呼においても、本件商標より生じる「ジュリアスタートオプティカル」の称呼と、引用商標の「タート」の称呼とは、構成音 数が明らかに異なることから明瞭に聴別でき、両者は相紛れるものではない。さらに、観念においても、引用商標の「TART」は、「タルト(果物入りの小型で薄いパイの一種)」等の の称呼とは、構成音 数が明らかに異なることから明瞭に聴別でき、両者は相紛れるものではない。さらに、観念においても、引用商標の「TART」は、「タルト(果物入りの小型で薄いパイの一種)」等の意味を有する英単語であるのに対し、本件商標は、「JULIUSTART」の文字部分が【A】氏の氏名であるから、観念において類似しない。 エ小括以上によれば、本件商標と引用商標は、外観、称呼及び観念を総合的に考察しても、互いに相紛れることのない非類似の商標であり、これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。 2 取消事由2(商標法4条1項15号該当性の判断の誤り)について 原告の主張 引用商標である「TART」は、本件商標の出願時及び登録査定時において、眼鏡関係商品において日本を含め世界的に周知なブランドであることは前記1アのとおりである。 前記1アのとおり、被告は、【A】氏又は原タート社から「TART」ブランドに係る権利や眼鏡フレーム事業を承継していないにもかかわらず、 製造及び販売する眼鏡商品に「TART」の部分を大きく目立つように表示して使用し、「JULIUSTARTOPTICAL」と称して、あたかも【A】氏又は原タート社を承継し、又はライセンスを受けているかのように需要者を誤認させている。 創業者のラストネーム「TART」をその眼鏡関係商品について商標登録 し、原告及び原告事業会社(TartOpticalEnterprises,Inc.)が「TART」を使用して眼鏡関係商品を製造及び販売している中で、創業者のラストネームの前にファーストネームを付けた商標を、同じく眼鏡関係商品に使用するならば、需要者が商品の出所について誤認混同 )が「TART」を使用して眼鏡関係商品を製造及び販売している中で、創業者のラストネームの前にファーストネームを付けた商標を、同じく眼鏡関係商品に使用するならば、需要者が商品の出所について誤認混同を生じさせるおそれがある。 そうすると、本件商標が指定商品である眼鏡関係商品に使用されると、需要者は、原タート社の承継者である原告の商品と誤認混同するおそれがあり、又は原告からライセンスを受けた商品であると誤認するおそれがあるといえる。 以上によれば、本件商標は、商標法4条1項15号に該当するものである。 被告の主張前記1アのとおり、引用商標は、本件商標の出願時及び登録査定時において、原告の業務に係る商品を表すものとして、取引者及び需要者の間に広く認識されていたものとはいえず、また、前記1ウのとおり、本件商標と引用商標は、相紛れることのない非類似の商標であるから、本件商標が指定 商品である眼鏡関係商品に使用されたとしても、原告商品と誤認混同するお それはない。 なお、被告は、2016年以降、直営店、オンラインショップ、眼鏡小売店等で本件商標を付した眼鏡フレーム等の製造及び販売を開始し、2022年度の合計売上額は3億3600万円に上っており、相当の発行部数を誇る複数のファッション雑誌等に宣伝広告を積極的に行うなどしており、本件商 標は、被告の業務に係る商品であることを表示するものとして、一定の知名度を獲得している。 したがって、本件商標は、商標法4条1項15号に該当するものではなく、これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。 第4 当裁判所の判断 1 認定事実当事者間に争いがない事実に加え、証拠(甲10、12の5ないし10、1 号に該当するものではなく、これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。 第4 当裁判所の判断 1 認定事実当事者間に争いがない事実に加え、証拠(甲10、12の5ないし10、13、15ないし19、23、33、35、36、38ないし48、59、61、63、75ないし90、乙3ないし6、24、25、28、29)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる(なお、原告は、周知性を立証する ための書証として、上記掲記したもの以外に、本件商標の商標出願時及び登録査定時以後に関するもの又は時期が特定されていないもの、米国における周知性に関するもの等を多数提出するが、本件では本件商標の商標登録出願時及び登録査定時において我が国における引用商標の周知性が問題となるべきところ、これらの書証はこの点の立証に結びつくものとはいえないので、これらの書証 に基づく個別の事実認定は行わない。)。 ア 【A】(【A】氏)は、1948年にアメリカ合衆国ニューヨーク州で、TartOpticalEnterprises,Inc.(原タート社)を設立した。同社が製造する眼鏡フレーム及びその眼鏡フレームを利用した眼鏡は、「TART」のブランド名で販売されたが、同社は、1 990年代に入り事業を停止した。【A】氏は、2008年3月31日、 米国で死亡した。 原タート社が製造及び販売する眼鏡フレーム等は、同社が事業を停止する以前から米国の著名な俳優等に愛用されていた。 イ原タート社及び【A】氏が保有していた眼鏡関連事業(「TART」の商標を含む。)に関する権利について、原告は、2000年10月25日、 【H】(以下「【H】氏」という。)が取得し、同人が2009年8月11日に設立された原告にこれら 鏡関連事業(「TART」の商標を含む。)に関する権利について、原告は、2000年10月25日、 【H】(以下「【H】氏」という。)が取得し、同人が2009年8月11日に設立された原告にこれらの権利を移転した旨主張している。 これに対して、被告は、【A】氏ないし原タート社はその保有に係る眼鏡関連事業に関する権利を【H】氏に譲渡しておらず、【A】氏の甥である【G】氏が遺言により同権利を承継し、2016年7月1日、【G】氏 との間で、被告が「JULIUSTART」商標ブランドに係る眼鏡等のデザイン、製造及び販売等に関する全世界的な独占権についてライセンス許諾を得た旨主張している。 ア原告は、2009年8月11日、アメリカ合衆国カリフォルニア州で設立され、同年頃から、その眼鏡フレームを、アメリカ合衆国カリフォ ルニア州でデザインし、同国及びイタリアで製造した上、アメリカにおいて、「TART」(引用商標)を使用して販売した。 なお、原告は、2016年1月21日にアメリカ合衆国デラウェア州で設立された「TARTLLC」との間で、「TART」関連商標に関してライセンス契約を締結し、「TARTLLC」は、2017年 4月27日に同州で設立された原告事業会社との間で、「TART」関連商標のサブライセンス契約を締結し、以後、原告事業会社が「TART」ブランドの眼鏡関係商品の製造及び販売をしている。 原告らが製造する眼鏡フレームは、2009年(平成21年)頃から我が国に輸出されて眼鏡販売店やセレクトショップ等で発売されており、 これらのショップのウェブページ上では、米国の著名な俳優が愛用して いるブランドであり、「伝説の眼鏡ブランド『TART』」又は「TartOptic トショップ等で発売されており、 これらのショップのウェブページ上では、米国の著名な俳優が愛用して いるブランドであり、「伝説の眼鏡ブランド『TART』」又は「TartOptical(タート)」、「TARTOPTICAL」などと紹介されているほか、著名人を話題にしたウェブページ上で「【B】愛用メガネのブランドその①TARTOPTICAL(タート・オプティカル)のメガネ」などと紹介され、ツイッター上でも著名人が愛用 している原告商品のことが取り上げられている。 原告らが製造及び販売する眼鏡フレーム部分には「TARTOPTICAL」の文字と、会社名「TartOpticalEnterprises」の3語の最初の文字(TとOとE)を組み合わせたロゴ()が刻印されており、また、自社のホームページ上でも、会社名 とロゴが使用されている。 原告らが製造及び販売する眼鏡フレーム及びその関連商品が我が国に輸出され販売された個数は、2009年(平成21年)から2016(平成28年)年にかけて合計約750個程度であり、そのうち2014年(平成26年)は450個を超えるもの(その大半は一社の眼鏡販売店 が大量に注文したもの)であったが、2015年(平成27年)は9個、2016年(平成28年)は14個とごくわずかな個数しか輸出及び販売されていない。 イ原告は、我が国において、2011年(平成23年)1月18日、引用商標について、指定商品を第9類「眼鏡、眼鏡の部品及び附属品」として 登録出願し、同年7月22日、設定登録を受けた。 また、原告は、米国において、2016年1月28日、米国特許商標庁に対し、「TART」の商標について、指定商品を第9類「眼鏡」等として登 登録出願し、同年7月22日、設定登録を受けた。 また、原告は、米国において、2016年1月28日、米国特許商標庁に対し、「TART」の商標について、指定商品を第9類「眼鏡」等として登録出願し、2017年10月31日、設定登録を受けた。 ウ原告らが開設しているフェイスブック(ただし、米国におけるものであ り、日本語翻訳機能があるもの)には、原告が製造及び販売する眼鏡フレ ームは、米国の俳優、ミュージシャン等の著名人が着用している姿が多数掲載されているほか、日本の雑誌に「伝説のブランド Tart 華麗なる復活」と大々的に取り上げられたことを掲載している(時期は特定されていないが、6200人がフォロー中となっている。)。 ア被告は、2016年(平成28年)5月9日、本件商標について、指定 商品を「サングラス、眼鏡、眼鏡の部品及び付録品」として商標登録出願し、同年10月24日、登録査定を受け、同年11月4日、設定登録を受けた。 イ被告は、2016年(平成28年)以降、「JULIUSTARTOPTICAL」のブランド名で、眼鏡フレーム等を国内及び海外で発売し ている。被告が発売する眼鏡フレームは、福井県鯖江市内で製造され、オンラインショップのほか、日本国内の直営店、眼鏡小売店、セレクトショップ等で販売されて年々売上げを伸ばしており、2022年(令和4年)度は、国内に限っても、約2億2600万円の売上高となっている。 2 取消事由1(商標法4条1項11号該当性の判断の誤り)について 引用商標の周知性について前記1の認定事実によれば、【A】氏及び原タート社が販売する眼鏡フレーム等は、米国の著名な俳優等に愛用されてきたが、同社は1990年代には事業を 引用商標の周知性について前記1の認定事実によれば、【A】氏及び原タート社が販売する眼鏡フレーム等は、米国の著名な俳優等に愛用されてきたが、同社は1990年代には事業を停止していたところ、原告及び原告事業会社は、米国において「TART」の商標を付した眼鏡フレームの販売を開始し、その製造及び販売す る眼鏡フレームは、2009年頃から我が国に輸出され、一部の雑誌には、米国の著名人に愛用されてきた【A】氏の事業を承継したブランドに係る眼鏡フレームであると紹介する記事等が掲載されていることが認められる。しかし、我が国に輸出された数量は、証拠上裏付けられる期間(2009年から2016年までの間)で合計約750個程度であって、我が国の眼鏡フレ ームの市場において主要な割合を占めているとは到底いえず、また、一部の 雑誌媒体や眼鏡販売店等のウェブページ等において、原告らが製造販売する眼鏡フレームがかつて著名な俳優が愛用したブランドであり、復活したなどと取り上げられたり、原告らが開設するフェイスブック(ただし、英語版)において米国の著名な俳優や歌手等が愛用していることが取り上げられたりしているものの、頻繁に我が国のファッション関係の雑誌等で原告商品が取 り上げられているといった事実や、「TART」ブランドに係る眼鏡フレームが原告らによる商品であるとの効果的な広告宣伝を行っており、これにより我が国の需要者等の認知度が高まっているといった事実を認めるに足りる証拠もない。 したがって、少なくとも我が国においては、本件商標の登録出願時及び登 録査定時において、「TART」の商標を付した眼鏡フレーム(原告商品)が原告らの業務に係る商品を表示するものとして取引者及び需要者の間において広く認識されている 、本件商標の登録出願時及び登 録査定時において、「TART」の商標を付した眼鏡フレーム(原告商品)が原告らの業務に係る商品を表示するものとして取引者及び需要者の間において広く認識されているものと認めることはできない。 本件商標の要部についてア複数の構成部分を組み合わせた結合商標については、その構成部分全体 によって他人の商標と識別されるから、その構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断することは原則として許されないが、取引の実際においては、商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は、必ずしも常に構成部分全体によって称呼、 観念されるとは限らず、その構成部分の一部だけによって称呼、観念されることがあることに鑑みると、商標の構成部分の一部が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などには、商標の構成部分の一部を要部と して取り出し、これと他人の商標とを比較して商標そのものの類否を判断 することも、許されると解するのが相当である(最高裁昭和37年第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁、最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁、最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。 これを前提として本件商標についてみると、本件商標の構成中「JULIUS」、「TART」、「OPTICAL」の単語の間には、そ 8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。 これを前提として本件商標についてみると、本件商標の構成中「JULIUS」、「TART」、「OPTICAL」の単語の間には、それぞれ空白部分があるが、それぞれの文字は同書同大で、「TART」の文字部分は強調されていないのみならず、前記のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、「TART」(引用商標)は、本件商標の指 定商品である「眼鏡フレーム」等との関係で周知な商標であるとはいえないから、本件商標の構成のうち「TART」が取引者及び需要者に商品等の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものではない。また、「OPTICAL」は、「目の」、「光学上の」と訳される(甲8、9)が、一般になじみのある英語であるとまではいえないから、指定商品との関係 で識別力がないとまではいえない。むしろ、本件商標は、「JULIUSTARTOPTICAL」の欧文字(標準文字)を同書同大でまとまりよく一体的に構成されているものであり、「ジュリアスタートオプティカル」とよどみなく称呼することが可能である。したがって、「TART」を要部として抽出することはできず、本件商標は一体不可分の構成の 商標としてみるのが相当である。 イ原告は、前記第3の1イのとおり、被告が本件商標中の「TART」の部分を強調して被告商品の広告及び宣伝をしている事実(甲4、51ないし55)を挙げて、「TART」が要部であることを示している旨主張するが、そもそも被告のウェブページ(乙3ないし5)では「TART」 の文字部分を強調した構成で表記されていないし、この点を措くとしても、 商標の構成を離れて実際の商品の宣伝広告の方法から要部を認定すべきとする原告 (乙3ないし5)では「TART」 の文字部分を強調した構成で表記されていないし、この点を措くとしても、 商標の構成を離れて実際の商品の宣伝広告の方法から要部を認定すべきとする原告の主張は当を得たものではなく、本件において、仮に被告が「TART」の文字部分を強調した宣伝等を行っていたとしても、前記認定を左右するものではない。 本件商標と引用商標の類否について 本件商標と引用商標は、外観において構成する文字数が明らかに異なり、称呼においても構成音、構成音数が明らかに異なるものであるから、外観及び称呼において相紛れるおそれはなく、また、両商標は、特定の観念を生じさせるものではないから、観念において比較することができない。 そうすると、本件商標と引用商標は、明確に区別することができる商標で あり、類似性は低いといえる。 小括以上によれば、本件商標と引用商標は、外観及び称呼において明瞭に区別することができ、非類似の商標であるといえるから、両商標の指定商品が同一又は類似するものであるとしても、本件商標は、商標法4条1項11号に 該当するものとはいえない。 3 取消事由2(商標法4条1項15号該当性の判断の誤り)について 前記2のとおり、本件商標と引用商標は、明確に区別することができる商標であり、類似性は低く、また、引用商標である「TART」を付した眼鏡フレームは、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、取引者及び需 要者の間で原告らの業務に係る商品を表示するものとして広く認識されていたものとはいえない。 そうすると、原告商品は眼鏡フレームであり、本件商標の指定商品はこれを含むものであって、需要者及び取引者が共通しているものの、本件商標 示するものとして広く認識されていたものとはいえない。 そうすると、原告商品は眼鏡フレームであり、本件商標の指定商品はこれを含むものであって、需要者及び取引者が共通しているものの、本件商標が指定商品に使用された場合、需要者及び取引者において、本件商標から引用 商標を連想し、原告の業務に係る商品、又は原告と経済的若しくは組織的に 何らかの関係を有する者の業務に係る商品であると認識するものとは認め難いから、その商品の出所の混同を生じるおそれがあるものと認めることはできない。 したがって、本件商標は、商標法4条1項15号に該当するものではないというべきである。 なお、原告は、前記第3の2において、原告が【A】氏又は原タート社から「TART」ブランドに係る権利や眼鏡フレーム事業を承継した旨主張し、被告がその製造及び販売する眼鏡商品に「TART」の部分を強調して使用し、あたかも【A】氏又は原タート社の事業を承継し、又はライセンス契約を受けているかのように需要者を誤認させている旨主張するが、本件訴 訟において問題となるのは本件商標が商標法4条1項15号に該当するか否かであって、前示したところに照らせば、【A】氏又は原タート社の事業承継者が誰であるか等については、本件結論に影響を与え得るものとはいえないから、原告の上記主張は当を得ない。 4 原告は、その他、本件事案の背景や経緯等を含めて種々の主張をするが、い ずれも本件結論を左右し得ない 5 結論以上によれば、原告主張の取消事由はいずれも理由がないから、原告の請求は棄却されるべきである。 よって、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官 理由 がないから、原告の請求は棄却されるべきである。よって、主文のとおり判決する。 主文 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官 菅野雅之 裁判官 中村恭 裁判官 岡山忠広

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