令和5(行ウ)165 政務活動費返還請求事件(住民訴訟)

裁判年月日・裁判所
令和7年3月27日 大阪地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-94073.txt

判決文本文16,039 文字)

主文 1 被告は、被告補助参加人に対し、27万0956円及びこれに対する令和5年5月1日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払うよう請求せよ。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用(補助参加費用を除く。)はこれを4分し、その1を被告の負担とし、その余は原告の負担とし、補助参加費用はこれを4分し、その1を被告補助参加人の負担とし、その余は原告の負担とする。 事実 及び理由請求 被告は、被告補助参加人に対し、108万3825円及びこれに対する令和5年5月1日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払うよう請求せよ。 事案の概要堺市議会の会派である被告補助参加人(以下、訴訟行為以外は「C市議団」 と表記する。)は、令和4年度の政務活動費(広報費)として、「Cプレス堺Vol.3」と題する広報チラシ(別紙のチラシ。以下「本件チラシ」という。)の作成等に係る費用合計108万3825円を支出した(以下「本件支出」という。)。 本件は、堺市の住民である原告が、本件支出は堺市議会政務活動費の交付に 関する条例(平成13年堺市条例第2号。以下「本件条例」という。)に違反しており、堺市はC市議団に対し不法行為に基づく損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を有するにもかかわらず、堺市の執行機関である被告がその行使を怠っていると主張して、被告を相手に、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、C市議団に対して不法行為に基づく損害賠償又は不当利得返還とし て108万3825円及びこれに対する令和5年5月1日(本件支出に係る収 支報告の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金又は民法704条前段所定の利息を支払うよう請求することを求め 5円及びこれに対する令和5年5月1日(本件支出に係る収 支報告の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金又は民法704条前段所定の利息を支払うよう請求することを求める住民訴訟の事案である。 1 関係法令等の定め(1) 地方自治法 地方自治法100条14項は、普通地方公共団体は、条例の定めるところにより、その議会の議員の調査研究その他の活動に資するため必要な経費の一部として、その議会における会派又は議員に対し、政務活動費を交付することができ、この場合において、当該政務活動費の交付の対象、額及び交付の方法並びに当該政務活動費を充てることができる経費の範囲は、条例で定 めなければならない旨規定する。 (2) 本件条例(乙1)ア本件条例5条1項は、政務活動費は、会派及び議員が行う調査研究、研修、広報、広聴、住民相談、要請、陳情、各種会議への参加等市政の課題及び市民の意思を把握し、市政に反映させる活動その他住民福祉の増進を 図るために必要な活動(以下「政務活動」という。)に要する経費に対して交付する旨規定する。 イ本件条例5条2項は、政務活動費は、本件条例の別表で定める政務活動に要する経費に充てることができるものとする旨規定し、同別表は、「広報・広聴費」として、以下のとおり定めている(以下、同別表を「使途基 準」といい、広報費に係る後記1の使途基準を「本件使途基準」という。)。 1 会派若しくは議員が行う活動又は市政を住民に報告し、又は宣伝するために要する経費 2 会派又は議員が行う、市政及び会派若しくは議員の活動に対する 住民からの要望及び意見の聴取、住民相談等の活動のために要する 経費ウ本件条例5条3項は、政務活動費は、同項各号に掲げる経費に充 員が行う、市政及び会派若しくは議員の活動に対する 住民からの要望及び意見の聴取、住民相談等の活動のために要する 経費ウ本件条例5条3項は、政務活動費は、同項各号に掲げる経費に充ててはならない旨規定し、同項2号は「選挙活動経費」を、同項3号は「政党活動経費」を掲げている。 エ本件条例8条2項は、市長は、政務活動費の交付を受けた会派又は議員 の政務活動費の使途が本件条例5条の規定に明らかに違反していると認める場合は、当該違反して支出された額に相当する額の政務活動費の返還を当該会派又は議員に命じなければならない旨規定する。 (3) 令和3年4月堺市議会「政務活動費の運用指針」(甲6。以下「本件指針」という。) ア按分の考え方(本件指針2(3))「按分による支出の原則」として、「議員活動は、政務活動、選挙活動、政党活動、後援会活動等と多面的であり、各々の活動を明確に区分することは困難です。このことから、活動に要した費用の全額に政務活動費を充当することが不適切であることが明らかな場合は、政務活動に 要した部分の時間割合や面積割合等に基づき按分を行うことが必要となります。」とされている。 「広報紙及びホームページにかかる経費」の按分例として、「紙面等の面積や文字数など、政務活動が掲載内容全体に占める割合で按分する。」とされている。 イ充当してはいけない経費(本件指針3(2))本件条例5条3項の政務活動費を充ててはならない経費(充当禁止経費)の主な例示として、以下のものが挙げられている。 充当禁止経費主な例示 ・選挙運動に要する経費 選挙活動経費・各種選挙時の各種団体への支援依頼活動に要する経費 政党活動経費・党大会への出席に要する経費及び党大 充当禁止経費主な例示 ・選挙運動に要する経費 選挙活動経費・各種選挙時の各種団体への支援依頼活動に要する経費 政党活動経費・党大会への出席に要する経費及び党大会賛助金等に要する経費・政党組織の事務所の設置及び維持に要する経費・他の議員の後援会や政治資金パーティーに出席する経費ウ使途項目別経費の取扱い(本件指針3(3))使途項目「広報・広聴費」の内容「広報紙、調査票等の印刷費、送料、配布料」の取扱いについては、「内容、実態に応じて充当できる」とされている。 2 前提事実(当事者間に争いがないか、掲記の証拠又は弁論の全趣旨により容 易に認められる事実。なお、証拠番号は特記なき限り枝番号を含む。)(1) 当事者等ア原告は、堺市の住民である。 イ被告は、堺市の執行機関である。 ウ C市議団は、堺市議会の会派である権利能力なき社団である。 C市議団の構成員である議員及び堺市長であるB(以下「B市長」という。)は、令和4年8月当時、いずれも地域政党であるC党(以下「本件政党」という。)に所属していた。 (2) 本件チラシの記載内容C市議団は、令和4年8月1日付けで、表裏両面カラー印刷の本件チラシ を発行した。本件チラシの記載内容は、要旨以下のとおりである。(甲1)ア表面(ア) 最上段(縦幅約3㎝。以下「題字部分」という。)「Cプレス堺 Vol.3」とのタイトルが記載され、発行元がC市議団 である旨が記載されている。 (イ) 上段(縦幅約9㎝。以下「集合写真部分」という。)C市議団を構成する議員らの集合写真が掲載され、その集合写真に重ねて「C市議団は新体制でさらなる改革に臨みます!」「今年度は若い執行部がチャレンジ!」と記載され 。以下「集合写真部分」という。)C市議団を構成する議員らの集合写真が掲載され、その集合写真に重ねて「C市議団は新体制でさらなる改革に臨みます!」「今年度は若い執行部がチャレンジ!」と記載されている。 (ウ) 中段(縦幅約6㎝。以下「グラフ部分」という。)「堺市の財政状況」と記載された上、「ハコモノ・バラマキ政治が続いた結果、R3年には市の貯金がゼロ(-16億円)になる見込みでしたが、改革の成果によって大きく改善しています。」などと記載されている。これらの記載の下に、「市の貯金残高」と題するグラフが掲載さ れ、平成31年までのE前市長(以下「前市長」という。)による予算編成時は下落傾向にあった貯金残高が、令和2年以降におけるB市長による予算編成時は上昇傾向にあることを示す矢印等が記載されている。 (エ) 下段(縦幅約10㎝。以下「提案実現部分」という。)「Cの提案!さらなる改革!」と記載された上、①報酬・政務活動 費の日割計算の導入や、②物価高騰に対する支援策が実現した旨記載されている。 イ裏面(ア) 上段(縦幅約13㎝。以下「提案否決部分」という。)「本当に市民感覚?堺市議会はこのままでいいのでしょうか!」と記 載された上、①「議員報酬・議員定数の削減案には一致団結して反対! 責任を取らない堺市議会の議員たち」、②「投票率の上昇と経費削減が見込まれる、市長選挙と市議会選挙の同日化意見書も否決!」と記載されている。 (イ) 下段(縦幅約15㎝。以下「市長写真部分」という。) 「Cは新しい堺を創る!-各区で新しい街づくりを進めています-」 との記載の下に、ガッツポーズをしているB市長の上半身写真が掲載され、この写真の右に、堺市各区に対する政策方針が記載されている。また、 い堺を創る!-各区で新しい街づくりを進めています-」 との記載の下に、ガッツポーズをしているB市長の上半身写真が掲載され、この写真の右に、堺市各区に対する政策方針が記載されている。また、これらの記載の下に、「B市政で産み出した改革効果は、約130億円!これからも持続可能な力強い堺を創っていきます!」と記載され、右下隅に、発行元がC市議団である旨記載されている。 (3) 本件支出及び収支報告ア C市議団は、令和4年9月28日、令和4年度の政務活動費(広報・広聴費)として、本件チラシに係るチラシデザイン、原稿作成、印刷、新聞折込の費用合計108万3825円を支出した(甲2~4)。 イ C市議団は、令和5年4月30日付けで、堺市議会議長に対し、収支報 告書を提出した。その「広報・広聴費」123万1455円には、本件支出に係る108万3825円が含まれていた。(甲5)(4) 本件訴えの提起原告は、令和5年10月30日、本件訴えを提起した(顕著な事実)。 (5) 住民監査請求等 原告は、令和5年9月21日、本件チラシの発行は政務活動ではなく、政党活動、選挙活動であるとして、本件支出相当額の返還請求をするよう求める旨の住民監査請求をしたが、堺市監査委員は、同月29日付けで、違法又は不当な事由が具体的に特定されていないなどとして、これを却下した(甲7、8)。 そこで、原告は、本件訴え提起後の令和5年12月1日、堺市監査委員に対し、主張を補充して同様の住民監査請求を行ったところ、堺市監査委員は、令和6年1月29日付けで、原告の監査請求を棄却した(甲9、10)。 3 争点(1) 争点1(本件支出が本件使途基準に違反するか否か) (2) 争点2(損害額等) 4 争点に関する 年1月29日付けで、原告の監査請求を棄却した(甲9、10)。 3 争点(1) 争点1(本件支出が本件使途基準に違反するか否か) (2) 争点2(損害額等) 4 争点に関する当事者の主張(1) 争点1(本件支出が本件使途基準に違反するか否か)について(原告の主張)ア判断枠組み広報費は、専ら会派の議会における活動又は市政についての報告等 の経費として支出したとみるべき事情がない限り、政務活動に要する経費とは認められず、本件使途基準に適合しない。また、選挙活動及び政党活動の一環と認められる場合には、これが政務活動に要する経費と認められる余地はない。 本件条例8条2項は、使途基準に「明らかに違反していると認める 場合」に政務活動費の返還を命じなければならないとしているが、政務活動費を選挙活動経費や政党活動経費に充ててはならないことは本件条例に明記されている以上、使途基準に反して政務活動費を充てることは本件条例違反となるのであり、同項に「明らかに」とあることが、不当利得返還請求権等の発生に影響を及ぼすことはない。また、 債権があればこれを回収すべきことは地方自治法240条2項から直接導かれるのであり、本件条例8条2項は、明らかな違反がある場合は必ず返還を命ずるべきものとした注意規定にすぎず、明白でない違反があった場合は返還させなくてもよい旨を定めた規定ではない。 イ本件チラシの内容を踏まえた検討 本件チラシ裏面の市長写真部分には、B市長の上半身写真が大きく掲載され、堺市各区についての行政方針が記載された上、「B市政で産み出した改革効果は、約130億円!これからも持続可能な力強い堺を創っていきます!」と大きく記載されるなど、C市議団ではなく、その構成員と政党を同じくす ついての行政方針が記載された上、「B市政で産み出した改革効果は、約130億円!これからも持続可能な力強い堺を創っていきます!」と大きく記載されるなど、C市議団ではなく、その構成員と政党を同じくするB市長の施政方針や成果が広報されて いる。 本件チラシ表面のグラフ部分には、B市長の予算編成を前市長のものと比較し、堺市の財政状況が改善したと喧伝するグラフが掲載されるなど、B市長の成果が宣伝されている。 本件チラシ表面の集合写真部分は、C市議団の構成員の集合写真に、キャッチコピー程度の文章が記載されたものにすぎず、市政を報告す るものではない。 以上のように、本件チラシの内容は、市政を報告するものと考え得る部分(提案実現部分及び提案否決部分)よりも、B市長やC市議団の構成員を宣伝する部分(市長写真部分、グラフ部分及び集合写真部分)の分量の方が大きく、市政報告と主従が逆転しており、本件チラ シは、全体として、専ら選挙活動又は政党活動のために発行されたものである。したがって、本件支出は本件使途基準に違反している。 また、仮に、本件チラシ全体を選挙活動又は政党活動のためのものとみることができないとしても、上記の選挙活動又は政党活動といえる部分の面積に応じて、按分して返還させるべきである。 (被告の主張)ア判断枠組みについて広報費は、専ら選挙活動の経費又は政党活動の経費として支出したとみるべき事情がない限り、本件条例5条3項により政務活動費の充当が禁止される選挙活動経費や政党活動経費には当たらないと解するのが相 当である。 本件条例8条2項が、使途基準に「明らかに違反していると認める場合」に政務活動費の返還を命じなければならないとしていることからすれば、堺市の会派又は議員 らないと解するのが相 当である。 本件条例8条2項が、使途基準に「明らかに違反していると認める場合」に政務活動費の返還を命じなければならないとしていることからすれば、堺市の会派又は議員は、政務活動費を使途基準に「明らかに」違反する経費に支出した場合に、堺市に対し、その「明らかに」違反する 支出相当額につき、不当利得の返還義務等を負うことになるものと解さ れる。 イ本件チラシの内容を踏まえた検討について被告補助参加人の主張を前提にすると、本件チラシに記載された内容のうち、本件政党の情報等が記載されている部分については、広報活動としての効果を上げるための工夫として合理性を有するものと評価する ことができる。したがって、本件支出につき、専ら選挙活動の経費又は政党活動の経費としての支出とみるべき事情はなく、本件使途基準に「明らかに」違反する支出とは認められないから、C市議団は、堺市に対し、不当利得返還義務や不法行為に基づく損害賠償義務を負うものではない。 本件指針2(3)は、活動に要した費用のうち、政務活動費を充てることができる部分とできない部分とが明確に区別できる場合については、政務活動費を充てることができる部分とできない部分とを按分して、政務活動費を充てることができる部分についてのみ政務活動費を交付するという考え方を示したものである。本件チラシは、被告補助参加人が主 張するとおり、その全体が、C市議団が行う活動又は市政を住民に報告し又は宣伝するためのものであるといえ、政務活動以外の活動であると明確に評価される部分は存在しない。また、仮に、本件政党の存在を認識させる付随的・副次的な効果を伴うものであったとしても、本件使途基準に「明らかに」違反する支出と評価することはできない。よって ると明確に評価される部分は存在しない。また、仮に、本件政党の存在を認識させる付随的・副次的な効果を伴うものであったとしても、本件使途基準に「明らかに」違反する支出と評価することはできない。よって、 本件支出相当額を按分して返金させるべきであるとする原告の主張は、失当である。 (被告補助参加人の主張)ア判断枠組みについて広報費は、専ら選挙活動の経費又は政党活動の経費として支出したと みるべき事情がない限り、本件条例が禁止する選挙活動経費あるいは政 党活動経費には当たらない。また、会派の発行する会報誌に、当該会派に所属する議員が所属する政党等の情報等が記載されていたとしても、その記載内容や体裁が、広報活動としての効果を上げるための工夫として合理性を有すると評価することができる限り、当該情報に係る記載は、会派としての議会活動の基礎となる広報活動との合理的関連性があると いえる。 イ本件における検討本件チラシ表面上段の集合写真部分には、C市議団の構成員全員の写真とともに、C市議団の執行部が若手議員による新体制に改められたことが記載されている。これは、C市議団がどのような構成員からなり、 どのような組織体制をとっているかを示すことで、本件チラシの発信者の理解を促すものであり、広報活動として効果を上げるための工夫として合理性を有する。 本件チラシ表面中段のグラフ部分には、C市議団を構成する議員の活動により、堺市の収支状況が大幅に改善している旨、B市長の在任時 期と、前市長の在任時期とで区別して記載されている。これは、C市議団を構成する議員が所属する政党と同じ地域政党(本件政党)に所属するB市長と協力することにより、本件チラシに記載された成果を上げていることを示したものであり、広報 して記載されている。これは、C市議団を構成する議員が所属する政党と同じ地域政党(本件政党)に所属するB市長と協力することにより、本件チラシに記載された成果を上げていることを示したものであり、広報活動として効果を上げるための工夫として合理性を有する。 本件チラシ裏面下段の市長写真部分には、堺市各区で新しい街づくりを進めているとの記載に加え、B市長の上半身の写真が示されているが、これは、C市議団を構成する議員が、B市長と共に、各区で特色のある新しい街づくりを行っていくことを示したものであり、会派としての議会活動の基礎となる広報活動との合理的関連性がある。また、当該 記載の下には、C市議団を構成する議員の活動により、B市長と協力し て約130億円の改革効果を実現した旨記載されており、会派としての議会活動の基礎となる広報活動との合理的関連性がある。 ウ按分すべきとの主張について本件チラシは表裏一体の書面であり、広報活動としての効果を上げるための工夫として合理性を有する以上、按分して返金すべきとはいえな い。 (2) 争点2(損害額等)について(原告の主張)上記(1)原告の主張のとおり、本件支出は本件使途基準に違反するものであるから、C市議団は、堺市に本件支出相当額の損害を与え、又は堺 市の損失の下に不当に利得したといえる。また、C市議団は、遅くとも、収支報告をした令和5年4月30日の翌日から履行遅滞に陥り、同日に法律の原因なく利得したことにつき悪意となったから、遅延損害金又は遅延利息の支払義務を負う。 (被告及び被告補助参加人の主張) 否認ないし争う。 当裁判所の判断 1 争点1(本件支出が本件使途基準に違反するか否か)について(1) 判断枠組みア政務活動費に 負う。 (被告及び被告補助参加人の主張) 否認ないし争う。 当裁判所の判断 1 争点1(本件支出が本件使途基準に違反するか否か)について(1) 判断枠組みア政務活動費につき不当利得返還義務等が発生する場合 (ア) 政務活動費は、使途を限定して交付される公金であるから(地方自治法100条14項、本件条例5条、8条)、堺市の会派又は議員が、交付を受けた政務活動費を、使途基準が定める政務活動に要する経費以外の経費に支出した場合(使途基準に違反する支出)は、当該会派又は議員は、堺市に対し、その支出相当額について、不当利得の返還義務を 負い、当該会派又は議員に故意又は過失がある場合には、不法行為によ る損害賠償義務をも負うと解される。 (イ) この点に関し、被告は、本件条例8条2項が、「市長は、政務活動費の交付を受けた会派又は議員の政務活動費の使途が第5条の規定に明らかに違反していると認める場合は、当該違反して支出された額に相当する額の政務活動費の返還を当該会派又は議員に命じなければならない」 と規定していることから、会派又は議員は、政務活動費を使途基準に「明らかに」違反する経費に支出した場合に、不当利得返還義務等を負うことになると主張する。 しかし、本件条例5条2項は、政務活動費は、本件条例別表(使途基準)で定める政務活動に要する経費に充てることができるとしている のであるから、会派又は議員が、政務活動費を使途基準に違反する経費(政務活動に要する経費以外の経費)に支出した場合には、堺市に対する不当利得返還義務等が発生し、被告はその返還を求めなければならないというべきであって(地方自治法240条2項参照)、上記規定は、その違反が「明らか」でなければ不当利得返還義務等が発生し 堺市に対する不当利得返還義務等が発生し、被告はその返還を求めなければならないというべきであって(地方自治法240条2項参照)、上記規定は、その違反が「明らか」でなければ不当利得返還義務等が発生しない旨を いうものではなく、また、その違反が「明らか」でなければ請求をしてはならない旨をいうものでもないと解される。 したがって、本件訴訟において、本件支出が本件使途基準に違反すると認められれば、その違反が「明らか」かどうかにかかわらず、C市議団はその不当利得返還義務等を負うというべきである。被告の上記主 張は採用することができない。 イ広報費についての考え方(ア) 本件条例において、広報費が政務活動費に含まれているのは、会派又は議員が市政及びこれに関する市議会での審議状況、市議会での当該会派又は議員の活動状況、その活動の前提である当該会派又は議員の市政 に対する認識、主張等に関する事項を広報する活動が、市政の課題を解 決し、又は市民の意思を市政に反映させ、あるいは市民からの市政及び会派又は議員の活動に対する要望及び意見を聴取することの端緒となるからであると考えられる。 (イ) 本件使途基準は、広報費について、「会派…が行う活動又は市政を住民に報告し、又は宣伝するために要する経費」としているところ、この ような政務活動としての広報活動(会派が行う活動又は市政の住民に対する報告又は宣伝)は、その性質上、同時に当該会派の構成員である議員やその所属政党の宣伝としての効果を有することがある。しかし、広報活動がそのような効果を有するとしても、それが飽くまで広報活動に伴う付随的・副次的なものにとどまる限り、政務活動としての広報活動 の本来的な役割や効果(上記(ア))を損なうものではないから、当該広 がそのような効果を有するとしても、それが飽くまで広報活動に伴う付随的・副次的なものにとどまる限り、政務活動としての広報活動 の本来的な役割や効果(上記(ア))を損なうものではないから、当該広報活動の一部又は全部を選挙活動や政党活動とみるべきではなく、その全部が政務活動に該当するというべきである(すなわち、主たる目的が政務活動としての広報活動である場合は、選挙活動や政党活動に類する付随的・副次的効果があるとしても、その広報活動に要した経費は全て 政務活動に要する経費といえる。)。 他方、本件条例5条3項は、政務活動費は、選挙活動経費(2号)や政党活動経費(3号)に充ててはならない旨規定するところ、広報活動が当該会派の構成員である議員やその所属政党の宣伝としての効果を主たる目的とするものである場合は、その効果は政務活動としての広報活 動に伴う付随的・副次的なものとはいえず、正に選挙活動や政党活動としての広報活動が行われたものというべきであって、その経費は、政務活動費を充てることができない選挙活動経費や政党活動経費に該当するというべきである。 そして、広報活動が、①政務活動としての広報活動であるか、②選挙 活動や政党活動としての広報活動であるかは、その主たる目的により決 すべきところ、その判断に当たっては、当該広報活動の内容や性質に照らし、社会通念に従って客観的に判断すべきである。 (ウ) 広報誌の発行は、会派や議員が行う広報活動として重要なものであるが、広報誌の記事や写真等には様々なものがあり得るため、一つの広報誌の中に、①政務活動としての広報活動(会派が行う活動又は市政の住 民に対する報告又は宣伝)とみるべき記事等と、②選挙活動や政党活動としての広報活動(会派の構成員である議員 得るため、一つの広報誌の中に、①政務活動としての広報活動(会派が行う活動又は市政の住 民に対する報告又は宣伝)とみるべき記事等と、②選挙活動や政党活動としての広報活動(会派の構成員である議員やその所属政党の宣伝)とみるべき記事等が混在する場合がある。 このような場合、当該広報誌の作成等に要した経費については、一方の記事等がごく僅かであるような場合を除き、全体として政務活動費を 充てることができる(又はできない)とするのではなく、本件指針2(3)の「活動に要した費用の全額に政務活動費を充当することが不適切であることが明らかな場合」に該当するものとして、「紙面等の面積や文字数など、政務活動が掲載内容全体に占める割合で按分する」(広報誌等にかかる経費の按分例)ことが必要というべきである。すなわち、 広報誌に選挙活動や政党活動としての広報活動とみるべき記事等の部分(②)が一定程度含まれていると認められる場合には、当該部分が広報誌全体に占める割合により按分した経費の額については、政務活動費を充てることができないと解するのが相当である。 そして、上記(イ)で説示したところによれば、広報誌の記事等が、政 務活動としての広報活動(①)であるか、選挙活動や政党活動としての広報活動(②)であるかは、その主たる目的により決すべきであり、その判断に当たっては、当該記事等の内容や性質に照らし、社会通念に従って客観的に判断すべきである。 (2) 本件チラシの内容を踏まえた検討 ア本件チラシの表面について (ア) 題字部分及び集合写真部分について前提事実(2)アによれば、本件チラシ表面最上段の題字部分(縦幅約3㎝)には、「Cプレス堺 Vol.3」との本件チラシのタイトルに加え、発行元がC市議団で (ア) 題字部分及び集合写真部分について前提事実(2)アによれば、本件チラシ表面最上段の題字部分(縦幅約3㎝)には、「Cプレス堺 Vol.3」との本件チラシのタイトルに加え、発行元がC市議団である旨記載されており、その下の集合写真部分(縦幅約9㎝)には、C市議団を構成する議員らの集合写真が掲載され、そ の集合写真に重ねて、「C市議団は新体制でさらなる改革に臨みます!」「今年度は若い執行部がチャレンジ!」と記載されている。 題字部分の「C」の文言は、C市議団の構成員である議員が所属する本件政党(C党)を想起させる面があるが、C市議団の広報誌であることを示すものであるから、題字部分が選挙活動や政党活動としての広報 活動を主たる目的とするものとは認められない。 また、集合写真部分は、本件チラシ表面の3分の1程度を占めており(なお、令和3年度の広報誌〔丙1〕の集合写真部分と比較すると、その面積は2倍以上となっている。)、C市議団を構成する議員らの宣伝を主たる目的とするものとみる余地もある。しかし、冒頭の題字部分の 直下に、議員らの集合写真を掲げるとともに、C市議団の執行部が新体制に改められたことや執行部が若手議員によって構成されていることを知らせ、本件チラシの発行者(C市議団)がどのような者であるかを市民に視覚的に理解してもらうことは、政務活動としての広報活動の効果を高める工夫として許容し得るというべきであり、個々の議員らの氏名 が記載されていないことも考慮すると、集合写真部分が選挙活動や政党活動としての広報活動を主たる目的とするものとは認められない。以上に反する原告の主張は採用することができない。 (イ) グラフ部分について前提事実(2)アによれば、本件チラシ表面中段のグラフ部分(縦幅約 6㎝)には 目的とするものとは認められない。以上に反する原告の主張は採用することができない。 (イ) グラフ部分について前提事実(2)アによれば、本件チラシ表面中段のグラフ部分(縦幅約 6㎝)には、「堺市の財政状況」と記載された上、「ハコモノ・バラマ キ政治が続いた結果、R3年には市の貯金がゼロ(-16億円)になる見込みでしたが、改革の成果によって大きく改善しています。」などと記載されている。これらの記載の下に、「市の貯金残高」と題するグラフが掲載され、平成31年までの前市長による予算編成時は下落傾向にあった貯金残高が、令和2年以降におけるB市長による予算編成時は上 昇傾向にあることを示す矢印等が記載されている。 確かに、グラフ部分は、B市長による改革の成果を強調しているように見え、原告が主張するように、B市長の宣伝が主たる目的であるとみる余地もないではない。しかし、堺市の現在の財政状況と将来の財政収支見通しを示すことは、C市議団の活動そのものではなくとも、市民に 市政の課題を認識させるとともに、その意思を市政に反映させるための情報提供として合理性があるといえるし、財政状況の改革は、予算を編成する市長と予算を承認する議会とが共同して行うものであり、議会におけるC市議団の活動の成果を報告しているものともいい得る。したがって、グラフ部分が、選挙活動や政党活動としての広報活動を主たる目 的とするものとは認められない。これに反する原告の主張は採用することができない。 (ウ) 提案実現部分について前提事実(2)アによれば、本件チラシ表面下段の提案実現部分(縦幅約10㎝)には、「Cの提案!さらなる改革!」と記載された上、①報 酬・政務活動費の日割計算の導入や、②物価高騰に対する支援策が実現した旨記載されて ば、本件チラシ表面下段の提案実現部分(縦幅約10㎝)には、「Cの提案!さらなる改革!」と記載された上、①報 酬・政務活動費の日割計算の導入や、②物価高騰に対する支援策が実現した旨記載されているところ、C市議団の議会における活動内容を住民に報告するものといえ、選挙活動や政党活動としての広報活動を主たる目的とするものとは認められない(なお、提案実現部分の政務活動該当性については、原告も特に争っていない。)。 イ本件チラシの裏面について (ア) 提案否決部分について前提事実(2)イによれば、本件チラシ裏面上段の提案否決部分(縦幅約13㎝)には、「本当に市民感覚?堺市議会はこのままでいいのでしょうか!」と記載された上、①「議員報酬・議員定数の削減案には一致団結して反対!責任を取らない堺市議会の議員たち」、②「投票率の上 昇と経費削減が見込まれる、市長選挙と市議会選挙の同日化意見書も否決!」と記載されているところ、C市議団の議会における活動内容を住民に報告するとともに、議会に対する住民からの要望等を求める内容となっており、選挙活動や政党活動としての広報活動を主たる目的とするものとは認められない(なお、提案否決部分の政務活動該当性について は、原告も特に争っていない。)。 (イ) 市長写真部分について前提事実(2)イによれば、本件チラシ裏面下段の市長写真部分(縦幅約15㎝)には、「Cは新しい堺を創る!-各区で新しい街づくりを進めています-」との記載の下に、ガッツポーズをしているB市長の上半 身写真が掲載され、この写真の右に、堺市各区に対する政策方針が記載されている。また、これらの記載の下に、「B市政で産み出した改革効果は、約130億円!これからも持続可能な力強い堺を創っていきます!」と記 が掲載され、この写真の右に、堺市各区に対する政策方針が記載されている。また、これらの記載の下に、「B市政で産み出した改革効果は、約130億円!これからも持続可能な力強い堺を創っていきます!」と記載され、右下隅に、発行元がC市議団である旨記載されている。また、市長写真部分に用いられているガッツポーズをしているB市 長の上半身写真は、令和元年に行われた堺市長選挙におけるB市長の宣伝写真と同一である(弁論の全趣旨)。 上記のとおり、市長写真部分には、「Cは新しい堺を創る!-各区で新しい街づくりを進めています-」というキャッチフレーズや、ガッツポーズをしているB市長の上半身写真や、「B市政で産み出した改革効 果は、約130億円!」といった記載があり、これらを社会通念に照ら して客観的に見れば、全体として、B市長が新しい街づくりや財政改革を進めていることをアピールする旨の、B市長の選挙ポスターや宣伝ポスターのように見えるのであって、右下隅に発行元がC市議団である旨が記載されていることを考慮しても、その主たる目的は、B市長やその所属政党である本件政党を宣伝する目的のものと評価せざるを得ない。 したがって、市長写真部分については、選挙活動又は政党活動としての広報活動を主たる目的とするものと認めるのが相当である。 (ウ) 被告補助参加人(C市議団)の主張について市長写真部分に関し、被告補助参加人(C市議団)は、①B市長とC市議団を構成する議員らは、協力して新しい街づくりに取り組んでおり、 市長写真部分は、B市長と共に進める堺市各区の新しい街づくりの方向性を説明するものであるから、会派としての議会活動の基礎となる広報活動との合理的な関連性が認められるとか、②「B市政で産み出した改革効果は、約130億円!」とい 進める堺市各区の新しい街づくりの方向性を説明するものであるから、会派としての議会活動の基礎となる広報活動との合理的な関連性が認められるとか、②「B市政で産み出した改革効果は、約130億円!」といった記載は、C市議団を構成する議員らが、B市長と協力して約130億円の改革効果を実現したことを説明 したものであり、会派としての議会活動の基礎となる広報活動との合理的な関連性が認められるなどと主張する。 しかし、上記①については、堺市各区に対する政策方針は、その上にある「Cは新しい堺を創る!-各区で新しい街づくりを進めています-」といったキャッチフレーズや、その左にあるガッツポーズをしているB 市長の写真と一体となっており、他方で、C市議団の議会活動等との関連性は具体的に明らかでないため、全体として、B市長の政策方針を記載したもののように見えるのであって、C市議団の主観的な目的や意図はともかく、市民の目線から客観的に見れば、市長写真部分は堺市各区に対するいわゆるマニフェストを記載したB市長の選挙ポスターや宣伝 ポスターと何ら変わるところがなく、前述のとおり、B市長やその所属 政党である本件政党を宣伝する目的のものと評価せざるを得ない。 また、上記②については、本件チラシ裏面の最下段の部分は、同表面のグラフ部分とは異なり、「B市政で産み出した改革効果は、約130億円!」という改革効果のみを強調したキャッチフレーズ的なものであって、C市議団の議会活動やその成果等の報告とみることは困難であり、 B市長の改革成果の宣伝を主たる目的とするものとみるほかはない。 したがって、被告補助参加人の上記主張は、いずれも採用することができない。また、上記認定判断に反する被告及び被告補助参加人のその他の主張についても、いずれも採 たる目的とするものとみるほかはない。 したがって、被告補助参加人の上記主張は、いずれも採用することができない。また、上記認定判断に反する被告及び被告補助参加人のその他の主張についても、いずれも採用することができない。 ウまとめ 以上によれば、本件チラシのうち市長写真部分(縦幅約15㎝)は、選挙活動又は政党活動としての広報活動というべきであるが、その余の部分は、いずれも政務活動としての広報活動というべきである。 2 争点2(損害額等)について(1) 本件チラシのうち市長写真部分の面積は、本件チラシ表裏全体の面積の4 分の1をやや超える程度(裏面の縦幅約29㎝のうち約15㎝)であるが、市長写真部分の右下隅に発行元がC市議団である旨が記載されていることなどを考慮し、本件チラシの作成等の経費(本件支出)のうち政務活動費を充てることができない部分は、その4分の1と認めるのが相当である。 したがって、C市議団は、堺市に対し、不当利得として本件支出108万 3825円の4分の1に相当する27万0956円(1円未満切捨て)を返還する義務を負うとともに、C市議団には本件支出のうち上記金額部分に政務活動費を充てたことにつき過失があると認められるから、同額の不法行為による損害賠償義務をも負うと解される。 (2) また、不法行為による損害賠償債務は、不法行為の時に発生し、かつ、何 らの催告を要することなく遅滞に陥るものであるから(最高裁昭和37年9 月4日第三小法廷判決・民集16巻9号1834頁参照)、C市議団は、堺市に対し、27万0956円に対する令和5年5月1日(本件支出に係る収支報告の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払義務を負うと解される。 結論 よって、原 に対し、27万0956円に対する令和5年5月1日(本件支出に係る収支報告の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払義務を負うと解される。 結論 よって、原告の請求は主文第1項の限度で理由があるからこれを認容し、その余はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官 徳地淳 裁判官 中村雅人 裁判官 牛濵裕輝 (別紙の掲載省略)

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る