平成13(行ウ)51 自動車新規登録申請不受理処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成13年10月29日 名古屋地方裁判所 警察関係
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判決文本文10,603 文字)

主文 1 被告が原告に対して平成13年9月13日付けでした原告の同日付け別紙自動車目録記載の自動車に関する自動車新規登録申請に対する不受理処分を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要本件は,原告が被告に対して自動車の新規登録申請をしたところ,被告が同申請を不受理とする処分をしたことから,原告がその取消しを求めた抗告訴訟である。 1 前提事実(争いのない事実,当裁判所に顕著な事実及び証拠により容易に認定可能な事実)(1) 当事者ア原告は,エムケイタクシーの名称で,京都市域交通圏において一般乗用旅客自動車運送事業を営む会社である。 イ被告は,道路運送車両法(以下「車両法」という。)105条1項,2項及び同法施行令8条1項1号,同条2項3号によって国土交通大臣(旧運輸大臣,以下同じ。)から中部運輸局長に委任された自動車の登録に関する権限について,さらに権限の再委任を受けている者である。 (2) 無償旅客自動車運送事業の届出原告は,平成13年5月10日,中部運輸局長(道路運送法(以下「運送法」という。)88条2項及び同法施行令1条2項によって国土交通大臣から無償旅客自動車運送事業に関する所定の権限の委任を受けた者)に対し,予定する事業区域を名古屋交通圏とし,経営期間を同月21日から平成14年5月20日までとする無償旅客自動車運送事業経営届出書(甲5。以下「本件届出書」という。)を提出した(以下「本件届出」という。)。本件届出書には,運送法施行規則34条1項所定の事項が漏れなく記載されており,同条2項所定の書類が添付されていた。 (3) 本件届出書の不受理中部運輸局長は,平成13年5月17日,本件届出に係る事業(以下「本件事業」という。)は運送法44条1項所 が漏れなく記載されており,同条2項所定の書類が添付されていた。 (3) 本件届出書の不受理中部運輸局長は,平成13年5月17日,本件届出に係る事業(以下「本件事業」という。)は運送法44条1項所定の無償旅客自動車運送事業に該当しないとの理由で,本件届出書及びその添付書類を原告に返付した。 (4) 本件届出書の不受理の取消訴訟これに対して,原告は,本件届出を不受理とした行為の取消しを求めて,平成13年5月25日,当裁判所に対して提訴した(当庁平成13年(行ウ)26号)。 これに対して,当裁判所は,同年8月29日,本件届出は,本件届出書が中部運輸局の事務所に提出された時点で効力が生じており,中部運輸局長が原告に本件届出書を返付した行為は,事実上の行為にすぎず,取消訴訟の対象となる処分その他公権力の行使に当たる行為に該当しないから,原告の上記訴えは不適法であるとして,同訴えを却下するとの判決をし(甲6),同判決は同年9月13日に確定した。 (5) 自動車の新規登録申請上記判決を受けて,原告は,平成13年9月13日,被告に対し,車両法7条,自動車登録令、(以下「登録令」という。)14条ないし16条に基づき,別紙自動車目録記載の自動車(以下「本件自動車」という。)について,所定の事項が漏れなく記載された自動車新規登録申請書(甲1。以下「本件申請書」という。)に所定の書類(甲2,3,5ないし12)を添付し,かつ本件自動車の提示に代えて自動車予備検査証(甲4)を提出して自動車の新規登録申請(以下「本件申請」という。)を行った。なお,原告は,本件申請と同時に自動車予備検査証を提出して,自動車検査証の交付申請を行っている(車両法7条4項,71条4項)。 (6) 本件申請の不受理処分被告は,平成13年9月13日,本件事業は無料で行うタクシー事業であ 時に自動車予備検査証を提出して,自動車検査証の交付申請を行っている(車両法7条4項,71条4項)。 (6) 本件申請の不受理処分被告は,平成13年9月13日,本件事業は無料で行うタクシー事業であって,法の容認しないものであり,運送法に定める無償旅客自動車運送事業には当たらないので,登録令21条1項2号に規定する「登録の申請をした事項が登録をすべきものでないとき。」に該当するとの理由で,本件申請を受理しない旨の処分(以下「本件処分」という。)をした。 2 争点及び争点に関する当事者の主張本件処分の適法性。すなわち,本件申請に不受理事由が存在するか。 (被告の主張)登録令21条1項2号は,自動車の登録申請が,「登録の申請をした事項が登録をすべきものでないとき。」に該当するときは,当該申請を受理してはならないと規定しているところ,原告の本件申請は,以下の理由により同号の事由に該当することから,これを受理しなかったものであり,本件処分は適法である。 (1) 原告は,平成12年12月14日,中部運輸局長に対し,名古屋地区における一般乗用旅客自動車運送事業(ハイヤー及びジャンボタクシー)の免許申請を行った(以下「別件申請」という。)が,同局長は,原告が免許基準の法令遵守要件を満たしていないことから,平成13年4月27日に同申請を却下した。その後,原告は,同年5月7日,ハイヤー及びジャンボタクシーの旅客を相手とする無償旅客自動車運送事業の届出に及んだものの,タクシーの事業内容そのものを無償旅客自動車運送事業として行うべく,上記届出を取り下げ,改めて本件届出を行ったものである。 原告は,このように,有償で一般乗用旅客自動車運送事業を営むことを希望していたが,別件申請が却下されたことから,無償事業が届出制であることを奇貨として,本件届出書を提出 件届出を行ったものである。 原告は,このように,有償で一般乗用旅客自動車運送事業を営むことを希望していたが,別件申請が却下されたことから,無償事業が届出制であることを奇貨として,本件届出書を提出したものであり,本件届出によって原告が予定している事業は,無料のタクシー事業であるから,本件届出は一般乗用旅客自動車運送事業を免許制とした運送法の趣旨を潜脱する目的の下になされた違法なものであり,無償旅客自動車運送事業の届出としての効力は認められない。 (2) 法律上,タクシーとは,運送法3条1号ハに規定する一般乗用旅客自動車運送事業を経営する者がその事業に供する自動車(ハイヤーを除く。)をいうと規定されており(タクシー業務適正化臨時措置法(以下「臨時措置法」という。)2条1項),タクシー事業とは,タクシーを使用して行う一般乗用旅客自動車運送事業をいう(臨時措置法2条3項)とされているところ,上記の一般乗用旅客自動車運送事業を経営しようとする者は,国土交通大臣の免許を受け(運送法4条1項),旅客の運賃その他運輸に関する料金を定め,国土交通大臣の認可を受けなければならない(同9条1項)。このことから,タクシー事業は有料で行う事業であることが当然に予定されているものであり,無料のタクシー事業というのは,法律上認められないものである。 (3) また,運送法44条1項が予定する無償旅客自動車運送事業は,その対象として特定の旅客を想定したものであって,不特定多数の旅客を想定したものではなく,需要者と事業者本来の事業との間に特殊な関係が存する旅館やゴルフ場が行う送迎バスのような事業形態に限定されるというべきである。 原告が本件届出により実施しようとする事業は,需要者との間に上記のような特別な関係を伴わないもので,運送法44条1項が予定する無償旅客自動車運送 迎バスのような事業形態に限定されるというべきである。 原告が本件届出により実施しようとする事業は,需要者との間に上記のような特別な関係を伴わないもので,運送法44条1項が予定する無償旅客自動車運送事業には該当しないというべきである。 (4) 仮に,原告が行おうとする事業がタクシー事業ではなく,原告の主張する無償旅客自動車運送事業に含まれるものであるとするならば,無料のタクシー事業は不特定多数の旅客を対象とする点で一般旅客自動車運送事業とその事業形態が何ら差異がないにもかかわらず,一般旅客自動車運送事業について種々の規制をしている法の趣旨が潜脱されることとなり,安全な旅客の運送と適正なサービスの確保の点において,重大な問題がある。 また,無料タクシーという法の予定しない違法な事業形態が行われた場合には,旅客による無料タクシーの奪い合いが容易に想定されるだけでなく,タクシー事業として参入する前宣伝と称して無料タクシーを運行させる事業を開始し,既存の一般旅客自動車運送事業者を駆逐した後にタクシー事業に参入することとして,市場の独占をする手段として用いられる可能性があり,特に保有するタクシーの台数が少ない中小のタクシー事業者の経営を脅かす可能性が相当程度ある。この点,運送法44条2項又は同条3項で準用する同法43条7項の事後的規制によってそうした事態を防止することができるとの考え方もあり得るが,無償旅客自動車運送事業には自動車事故報告規則(昭和26年運輸省令第104号)に基づく「自動車事故報告書」についてのみ報告義務が課されているにすぎず,被告による監督が十分に及ばないために,経営基盤の弱いタクシー事業への影響が回復不可能なものになることが容易に予想される。さらに本件届出書によると,原告は,通常料金1500円から2000円に相当する区間に対 監督が十分に及ばないために,経営基盤の弱いタクシー事業への影響が回復不可能なものになることが容易に予想される。さらに本件届出書によると,原告は,通常料金1500円から2000円に相当する区間に対して無料運行を行うとしているが,利用者の運送の要求が上記料金の距離以上の場合にあっては,利用者の運送の要求を満たすことができず,利用者は移動途中で下車せざるを得なくなる状況が生じ,不本意な場所で下車を余儀なくされた利用者との間でトラブルに発展する可能性が非常に高い。 (原告の主張)(1) 被告が不受理の理由として主張する,本件事業が無償旅客自動車運送事業に当たらないといった事由は,そもそも登録令21条1項2号の事由に該当しない。 (2) 仮にそうでないとしても,以下の理由により,本件事業が無償旅客自動車運送事業に該当しないことを理由とした本件処分が違法であることは明らかである。 本件申請に先立ってなされた本件届出は,平成13年5月10日に本件届出書が中部運輸局長の事務所に提出されたことにより,無償旅客自動車運送事業の届出として効力を生じている。 被告は,本件事業が運送法44条1項所定の無償旅客自動車運送事業に該当しないと主張するが,①被告が無償旅客自動車運送事業の典型例として挙げる旅館等の送迎バスに係る無償運送事業は,その役務の提供が結果として他の事業(宿泊業や飲食業等)に何らかの良好な影響をもたらすとの経営判断の下になされるものであるから,動機,目的の点では本件事業と何ら異ならず,当該運送事業以外の事業の収益によって当該運送事業に必要な経費を捻出するものである点でも両者に相違はないこと,②無償旅客自動車運送事業の定義規定である運送法3条3号は,事業の内容につき被告主張のような限定は全く加えていないこと,③運送法40条1号や43条7項の 捻出するものである点でも両者に相違はないこと,②無償旅客自動車運送事業の定義規定である運送法3条3号は,事業の内容につき被告主張のような限定は全く加えていないこと,③運送法40条1号や43条7項の規定が44条3項によって無償旅客自動車運送事業に準用されていることからすると,むしろ,運送法は,一般旅客自動車運送事業の経営を困難なものとさせるような形態の旅客自動車運送事業についても,それが無償でなされるものである限り,一応無償旅客自動車運送事業に該当するものとして届出により事業を行うことを許容し,例外的に,当該事業の経営によって運送法43条7項所定のおそれがあると認められるような場合等に限って,事業の実施方法の変更を命じたり,これに違反した事業者に対して事業の停止等を命ずる権限を国土交通大臣に与えたものであると解すべきであることからすると,無償旅客自動車運送事業が一定の類型のものに限定される旨の被告の主張は誤りである。 第3 当裁判所の判断 1 被告は,原告が予定している本件事業は,無料で行うタクシー事業であって,法の容認しないものであり,運送法に定める無償旅客自動車運送事業には当たらないので,本件申請は登録令21条1項2号に規定する「登録の申請をした事項が登録をすべきものではないとき。」に該当すると主張するところ,原告は,被告主張の事由はそもそも登録令21条1項2号に該当しないと主張するので,まずこの点について判断する。 自動車登録申請の不受理事由を定める登録令21条1項各号のうち,2号の「登録の申請をした事項」とは,本件で問題となっている新規登録においては,車両法9条の規定する「(同法)第7条第1項第1号から第5号までに掲げる事項」,「新規登録の年月日」及び「自動車登録番号」を指すと解される。このような形式的記載事項であって,登録す 登録においては,車両法9条の規定する「(同法)第7条第1項第1号から第5号までに掲げる事項」,「新規登録の年月日」及び「自動車登録番号」を指すと解される。このような形式的記載事項であって,登録すべき事項か否かが容易に判明することを考慮して,上記事由は法律事項とされず,政令である登録令に委ねられたものと解される。このことは,登録令21条1項各号で定める他の不受理事由が,いずれも外形的,形式的事由であって,陸運支局長が容易に判断し得るものと考えられること(それ故に,「申請が次に掲げる場合に該当するとき」に不受理とされる。),これに対し,車両法8条の定める新規登録拒絶事由は実質的審査を要する事項を含むこと(なお,これについても,登録令21条2項に基づき陸運支局長が不受理とすることができるが,そのためには,車両法8条の規定によって「登録すべきものでないと認めるとき」が必要となる。)からも裏付けられる。なお,新規登録申請書には,自動車登録規則5条1項に掲げる事項を記載することとなっており,同申請書の様式及び記載方法について規定した自動車の登録及び検査に関する申請書等の様式等を定める省令(以下「様式令」という。)第2条に基づき定められた申請書(本件の場合,同条1項4号の第2号様式)には,当該申請に係る自動車の用途として,自家用,事業用等の別を記載することとなっているが,用途として事業用と記載する際にその事業の種類を記載することは要求されていない(様式令3条1号の第10号様式による新規登録に係る登録事項等通知書も同様である。)。 そうすると,被告は,そもそも不受理事由に該当しない事由を理由として本件申請を不受理としたものであり,それだけで本件処分は違法なものとして取消しを免れない。 2 なお,念のために,被告主張に係る事由が他の申請不受理事由に もそも不受理事由に該当しない事由を理由として本件申請を不受理としたものであり,それだけで本件処分は違法なものとして取消しを免れない。 2 なお,念のために,被告主張に係る事由が他の申請不受理事由に該当し得るかについて判断するに,登録令21条1項5号は,新規登録申請は車両法71条4項の交付の申請と同時にしなければならないことを定めた同法7条4項の規定に違反する場合を不受理事由としているところ,同法71条4項の交付申請については,車両法施行規則43条,36条2項1号によって,「一般旅客自動車運送事業の免許若しくは許可」を受けたことを証する書面等の提示が必要とされている。前記のとおり,本件申請に際し,原告は無償旅客自動車運送事業の届出書(甲5)を添付しているから,被告が主張するように,仮に原告の予定している本件事業が無償旅客自動車運送事業ではなく,一般旅客自動車運送事業に該当するのであれば,本件申請に際して提示すべき書面を欠いていたと解する余地がある(被告は,本件申請が法の規定する形式的要件を満たしていることを自認しているが,上記の点については留保していると解されなくもない。)。 しかしながら,以下のとおり,本件事業は運送法上の無償旅客自動車運送事業に当たり,本件申請が前記不受理事由に該当しないことは明らかというべきである。 (1) まず,原告は,前提事実(2)のとおり,運送法44条1項に基づき,運輸省(現国土交通省,以下同じ。)令の定めるところによって,その旨を中部運輸局長に届け出ているところ,被告は,本件届出の効力について,原告は当初から法の認めていない無料のタクシー事業を行うことを目的として無償事業の届出をなしたものであるから,運送法44条1項の届出としては無効であると主張する。 しかしながら,運送法上,当該届出につき実質的な審査が 認めていない無料のタクシー事業を行うことを目的として無償事業の届出をなしたものであるから,運送法44条1項の届出としては無効であると主張する。 しかしながら,運送法上,当該届出につき実質的な審査がなされることを前提とした規定は存在せず,また,運送法施行規則は,34条等で上記届出に関する具体的方式を定めているが,その内容としては届出書に記載すべき事項及び添付を要する書面について規定するのみであって,届出を受理するか否かについて一定の審査が行われ,当該審査の結果として受理又は不受理が決定され,そのことによって届出による法律効果が発生する旨の条項又はこれを前提とした条項は存しないし,運送法施行令にもそのような規定はない。このように,運送法,同法施行令及び運送法施行規則が,いずれも運送法44条1項の届出の効力の発生要件について別段の定めを置いておらず,行政手続法37条が,形式上の要件に適合した届出が当該届出の提出先とされている機関の事務所に到達したときは,当該届出をすべき手続上の義務が履行されたものとする旨定めていることからすると,運送法44条1項に基づく届出は,運送法施行規則34条の定める形式上の要件に適合するものである限り,行政手続法37条所定の時期,すなわち,提出先機関の事務所への到達時に効力を生ずると解すべきところ,本件においては,本件届出が運送法施行規則34条の定める形式上の要件に適合するものであることは当事者間に争いがないから,原告による本件届出は,本件届出書が中部運輸局長の事務所に提出された平成13年5月10日に無償旅客自動車運送事業の届出としてその効力を生じたものと解される。 (2) 次に被告は,原告が予定している本件事業は無料のタクシー事業であり,タクシー事業が有償であることを前提とする運送法等の規定に反するものであって, 届出としてその効力を生じたものと解される。 (2) 次に被告は,原告が予定している本件事業は無料のタクシー事業であり,タクシー事業が有償であることを前提とする運送法等の規定に反するものであって,法律上認められないものであると主張する。しかしながら,以下に述べるとおり,かかる主張は採用することができない。 ア運送法は,2条3項で「他人の需要に応じ,自動車を使用して旅客を運送する事業」を旅客自動車運送事業と規定し,3条で同事業を一般旅客自動車運送事業(1号),特定旅客自動車運送事業(2号)及び無償旅客自動車運送事業(3号)の3種類に大別し,さらに1号を一般乗合旅客自動車運送事業(イ),一般貸切旅客自動車運送事業(ロ)及び一般乗用旅客自動車運送事業(ハ)に細分している。 そして,3号の無償旅客自動車運送事業は,「無償で旅客を運送する旅客自動車運送事業」とされているところ,1号の一般旅客自動車運送事業は,2号及び3号以外の旅客自動車運送事業を指すと定義されているから,1号は,無償でない事業,すなわち有償による事業を指すことはいうまでもない。このことは,1号ハの一般乗用旅客自動車運送事業(1個の契約により乗車定員10人以下の自動車を貸し切って旅客を運送する一般旅客自動車運送事業)については,免許制が採用されており(運送法4条),旅客の運賃その他運輸に関する料金を定め,国土交通大臣の認可を受けなければならず(同9条),運賃及び料金に関する規定(同10条,11条)が置かれているなどの有償事業であることを前提とする規定が整備されていることからも明白である。 そして,有償か無償かは,当該旅客運送という役務の提供に対し,その利益を受ける者が対価の支払義務を負うか否かによって定まることは,法律解釈を云々するまでもなく,日本語の用語例として当然である。 。 そして,有償か無償かは,当該旅客運送という役務の提供に対し,その利益を受ける者が対価の支払義務を負うか否かによって定まることは,法律解釈を云々するまでもなく,日本語の用語例として当然である。そうすると,原告が予定している本件事業は,対価の徴収を前提としないものであるから,運送法3条3号の無償旅客自動車運送事業に当たるというべきである。 イこの点,被告は,原告が予定している本件事業は「無料タクシー」事業であるとの前提に立って,有償であるタクシー事業に関する法の規制を潜脱するものであるから,このような事業は法律上認められないと主張するところ,なるほど,証拠(乙2ないし7,13)によれば,原告あるいはマスメディアが本件事業を「無料タクシー」と呼称している事実が認められる。 しかしながら,臨時措置法2条1項は,「タクシー」とは運送法3条1号ハの一般乗用旅客自動車運送事業を経営する者がその当該事業に供する自動車をいうと定義し,同条3項は,「タクシー事業」とはその「タクシー」を使用して行う一般乗用旅客自動車運送事業をいうと定義している。そうすると,本件自動車が法律上の「タクシー」に該当せず,また,原告が予定している本件事業が法律上の「タクシー事業」に該当しないことは明らかであり,被告の主張は,出発点となる認識に誤りがあり,それを前提として立論するという循環論法に陥っているといわざるを得ない。 (3) さらに,被告は,運送法44条1項が予定する無償旅客自動車運送事業は,不特定多数の利用者を想定したものではなく,需要者と事業者本来の事業との間に特殊な関係が存する旅館やゴルフ場が行う送迎バスのような事業形態に限定されると主張するところ,同制度の立法ないし改正時に同主張に沿った見解が存在したこと及びそれらの見解に沿った行政運用がなされてきたこと な関係が存する旅館やゴルフ場が行う送迎バスのような事業形態に限定されると主張するところ,同制度の立法ないし改正時に同主張に沿った見解が存在したこと及びそれらの見解に沿った行政運用がなされてきたことを示す証拠(乙14の1,2,15の1,2,16ないし18)が存在する。 しかしながら,これらの事業形態は,他の事業に付随し,そこから利益を得て経費に充てるのでなければ経営的に成立するのが困難であるとの考えを基礎として,典型例として例示されたものと考えられる(現に,本件事業も期間,台数,範囲を限定して届出されている。)から,上記の事実をもって直ちに無償旅客自動車運送事業はこれらに限定されていると解することはできないし,不特定多数の利用者を相手とする点も,被告が無償旅客自動車運送事業の典型例として挙げる旅館等の送迎バスに係る無償運送事業についても,本来の事業である旅館等の客である限り,不特定多数の者をその対象とするものと考えられ,また,同事業は,その役務の提供が結果として他の事業(宿泊業や飲食業等)に何らかの良好な影響をもたらすとの経営判断の下になされるものであるから,動機,目的の点では本件事業と何ら異ならず,当該運送事業以外の事業(他の地域における運送事業を含む。)の収益によって当該運送事業に必要な経費を捻出するものである点でも共通であるから,両者の間に本質的な違いがあるとは認め難い。 そして,無償旅客自動車運送事業の定義規定である運送法3条3号は,事業の内容につき被告主張のような限定は全く加えていない上,同法40条1号や43条7項の規定が同法44条3項によって無償旅客自動車運送事業に準用されていることからすると,むしろ,運送法は,一般旅客自動車運送事業に類似した形態の旅客自動車運送事業についても,それが無償でなされるものである限り,一応,無 3項によって無償旅客自動車運送事業に準用されていることからすると,むしろ,運送法は,一般旅客自動車運送事業に類似した形態の旅客自動車運送事業についても,それが無償でなされるものである限り,一応,無償旅客自動車運送事業に該当するものとして届出により事業を行うことを許容するが,当該事業の経営によって運送法43条7項所定のおそれがあると認められるような場合等に限って,事業の実施方法の変更を命じたり,これに違反した事業者に対して事業の停止等を命ずる権限を国土交通大臣に与えたものであると解するのが相当であり(被告が縷々主張する本件事業を認めた場合に予想されるトラブル等についても,このような権限の行使によって対応することを法は予定していると考えられる。),被告の前記主張は採用できない。 3 以上の次第で,本件処分は違法であり,原告の本訴請求は理由があるから,これを認容することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部裁判長裁判官加藤幸雄裁判官橋本都月裁判官富岡貴美

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